説明

電気光学装置の製造方法、電気光学装置及び電子機器

【課題】フォトリソグラフィにおけるレジストへの露光時間を短くすることができる電気光学装置の製造方法、電気光学装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】TFTアレイ基板10の内側表面IS上にレジストマスク210aを形成するフォトリソグラフィ工程(b)に先立ち、外側表面OS上に、反射膜としてのWSi膜201及び酸化シリコン膜202を形成する(a)。レジスト210は、フォトリソグラフィ工程における露光光Eと、レジスト210を透過した後にWSi膜201により反射された反射光Rとにより露光されるため、レジスト210へ露光するための露光光Eの強度を弱くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法、電気光学装置及び電子機器に関し、フォトリソグラフィ工程を使用する電気光学装置の製造方法、電気光学装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置である液晶装置の基板の製造方法として、レジストを用いたフォトリソグラフィ及びエッチング処理が一般的に使用されている。フォトリソグラフィでは、基板上にレジストを塗布し、塗布した前記レジストに露光装置により所定パターンを露光し、露光されたレジストを現像処理することでレジストマスクを形成する。
【特許文献1】特開2001−339069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、液晶装置のように透明な基板上において、レジストに所定の形状のパターンを露光する場合、レジストを透過した露光光がそのまま透明な基板を透過し裏面から出射しまうため、レジストへの露光量が落ちてしまい、十分な露光をレジストに与えることができず、露光時間が長くなってしまうと言う問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フォトリソグラフィにおけるレジストへの露光時間を短くすることができる電気光学装置の製造方法、電気光学装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、互いに対向し少なくとも一方が透光性を有する2枚の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、画像表示領域と、該画像表示領域の周辺を規定する額縁領域とを有する電気光学装置の製造方法であって、前記透光性を有する基板の他方の基板と対向しあう面とは反対側の面である第1の面上に、高融点金属又は高融点金属シリサイドからなる反射膜を形成し、さらに該反射膜上に絶縁膜を形成する反射膜形成工程と、前記透光性を有する基板の前記第1の面とは反対側となる第2の面上に、レジストを塗布し、該レジストを所定形状のパターンで露光し、露光された前記レジストを現像してレジストマスクを形成するフォトリソグラフィ工程と、前記透光性を有する基板の前記第1の面上に形成された前記反射膜の少なくとも一部を除去する反射膜除去工程とを有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る電気光学装置は、互いに対向し少なくとも一方が透光性を有する2枚の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、画像表示領域と、該画像表示領域の周辺を規定する額縁領域とを有する電気光学装置であって、前記透光性を有する基板の、他方の基板と対向しあう面とは反対側の面上の前記額縁領域の少なくとも一部に、高融点金属又は高融点金属シリサイドからなる反射膜と、該反射膜上に形成された絶縁膜とが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のこのような構成によれば、フォトレジスト工程において、レジストを透過した露光光を、透明な基板のレジストとは反対側となる裏面に形成された反射膜により反射することにより、レジストの露光に寄与させることが可能となる。したがって、従来に比してレジストにより効率よく露光を与えることが可能となるため、少ない露光量、すなわち短時間でレジストの露光工程を終えることができる。
【0008】
また、本発明は、前記透光性を有する基板の前記第1の面上に形成された前記反射膜の一部を除去することで、前記第1の面上に残された前記反射膜を遮光膜として形成することが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、電気光学装置の製造におけるフォトレジスト工程の露光時間の短縮のために用いた反射膜を、完成後の電気光学装置の遮光膜として使用することができるため、より少ない工数で電気光学装置を製造することができる。
【0010】
また、本発明は、前記透光性を有する基板の前記表示領域内の前記反射膜を除去することにより、前記反射膜の残された領域を前記額縁領域を遮光する額縁遮光膜として形成することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、遮光膜により額縁領域内に形成されている駆動回路への光の入射を遮ることができ、TFTの特性が劣化することがない。
【0012】
また、本発明に係る電気光学装置の製造方法は、互いに対向し少なくとも一方が透光性を有する2枚の基板間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学装置の製造方法であって、前記透光性を有する基板の他方の基板と対向しあう面とは反対側の面である第1の面上に、アルミニウムからなる反射膜を形成する反射膜形成工程と、前記透光性を有する基板の前記第1の面とは反対側となる第2の面上に、レジストを塗布し、該レジストを所定形状のパターンで露光し、露光された前記レジストを現像してレジストマスクを形成するフォトリソグラフィ工程と、前記第1の面上に形成された前記反射膜を全て除去する反射膜除去工程とを有し、前記反射膜形成工程、前記フォトリソグラフィ工程及び前記反射膜除去工程のそれぞれの間においては、前記透光性を有する基板の温度がアルミニウムの融点以下に保たれることを特徴とする。
【0013】
本発明のこのような構成によれば、反射膜がアルミニウムであるため光の反射率が高く、レジストに対して効率よく露光を与えることが可能となるため、少ない露光量、すなわち短時間でレジストの露光工程を終えることができる。
【0014】
また、本発明に係る電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1から図12を参照して説明する。
[電気光学装置の構成]
まず、本発明の第1の実施形態に係る電気光学装置の構成について、図1から図5を参照して説明する。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。ここで、図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図である。図2は、図1のH−H´断面図である。図Xは、電気光学装置をTFTアレイ基板側から見た背面図である。図4は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図5は、各画素毎に形成されている画素スイッチング用のTFTの断面図である。なお、本実施形態の説明に用いる各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0016】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。本実施形態の電気光学装置は、TFTアレイ基板10及び対向基板20に挟持された液晶の配向や秩序を制御することにより光を変調し、画像表示領域10aにおいて画像の表示を行うものである。TFTアレイ基板10及び対向基板20は、石英基板、ガラス基板等の透光性を有する矩形状の板状部材により構成されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には電気光学物質である液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0017】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散らばって設けられている。なお、当該液晶装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層50中に含まれてもよい。
【0018】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの周辺を規定する額縁領域に、遮光性の周辺遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。なお、このような周辺遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。本実施形態においては、額縁領域とは、TFTアレイ基板10及び対向基板20のそれぞれの画像表示領域10aより外側となる領域のことを指す。
【0019】
シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記周辺遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記周辺遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0020】
また、対向基板20上の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10上にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。上下導通材106及び上下導通端子によって、TFTアレイ基板10と対向基板20との間の電気的な導通がなされる。
【0021】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23が設けられており、更には最上層部分に配向膜22が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0022】
なお、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104は、画素スイッチング用のTFTと同時形成された駆動回路用のTFTを用いて構成されている。図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0023】
また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード、D−STN(ダブル−STN)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
【0024】
また、本実施形態の電気光学装置では、図2及び図3に示すように、TFTアレイ基板10の、対向基板20と対向しあう面とは反対側の面である第1の面上の額縁領域に、遮光性を有する額縁遮光膜200が、画像表示領域10aの周辺を囲うように形成されている(図3の右上がりのハッチングで示した領域)。額縁遮光膜200は、本実施形態の電気光学装置をTFTアレイ基板10側から見た場合、額縁領域内に形成されているデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路104を覆い隠す形状に形成されている。このように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104を額縁遮光膜200により覆うことにより、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104を構成するTFTのチャネル領域に光が入射することを防ぐことができる。よって、光が入射することに起因した光電流の発生により、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104のTFTの特性が劣化することがない。また、額縁遮光膜200が存在することによって、例えば電気光学装置を固定するための筐体により反射された光等の本来の透過光ではない迷光が、画像表示領域10a内へ進入することを防ぐことも可能となる。よって、画像のコントラストが向上し画像品質を向上させることが可能となる。
【0025】
なお、額縁遮光膜200は、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104へ入射される光を遮光する目的を有して設けられる場合、少なくともデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路104を覆う領域に形成されればよい。すなわち、額縁遮光膜200は、額縁領域の少なくとも一部に形成されていればよく、必ずしも画像表示領域10aを囲むように形成される必要はない。また、TFTアレイ基板10と同様に、対向基板20のTFTアレイ基板10と対向しあう面とは反対側の面の額縁領域に、額縁遮光膜を設けてもよい。
【0026】
図4において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0027】
また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3a及び走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで選択された走査線3aの画素に書き込まれる。
【0028】
画素に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極9aと対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0029】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に容量素子70を付加する。この容量素子70は、走査線3aに並んで設けられ、固定電位側容量電極が、一定電位に固定された容量線3bに接続されている。
【0030】
図5を参照して、以下にデータ線6a、走査線3a、容量線3b及びTFT30等からなる、上述のような回路動作が実現される電気光学装置の具体的な構成について説明する。
電気光学装置は、前述したように、例えば、石英基板、ガラス基板等からなる透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される、例えばガラス基板や石英基板からなる透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10上には、図5に示すように、前記の画素電極9a及び配向膜16の他、TFT30等の各種の構成が積層構造をなして備えられている。TFTアレイ基板10の液晶層50側表面上には凹部である溝12gが形成されており、この溝12gの底面部上にデータ線6a、走査線3a、容量線3b及びTFT30等が積層されて形成されている。
【0031】
TFTアレイ基板10の第2の面である液晶層50側の表面上には、下側遮光膜11aを有する第1層と、第1層の上に形成されTFT30、走査線3a及び容量線3bを有する第2層と、第2層の上に形成されデータ線6aを有する第3層と、第3層の上に形成され画素電極9aを有する第4層とが形成されている。また、第1層と第2層との間には第1層間絶縁膜12が、また第2層と第3層との間には第2層間絶縁膜4が、さらに第3層と第4層との間には第3層間絶縁膜7が形成されている。これら第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜4、第3層間絶縁膜7は、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜又は酸化シリコン膜により構成されている。
【0032】
第1層の下側遮光膜11aは、各TFT30をTFTアレイ基板10側から見て覆う位置に設けられており、TFT30へのTFTアレイ基板10側からの戻り光に対する遮光機能を有している。下側遮光膜11aは、不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo及びPd等やこれらの金属シリサイド等の金属合金膜により構成され、遮光性を有する。このような材料から構成すれば、TFTアレイ基板10上の下側遮光膜11aの形成工程の後に行われる画素スイッチング用TFT30の形成工程における高温処理により、下側遮光膜11aが破壊されたり溶融されることがない。下側遮光膜11aを含む第1層上には第1層間絶縁膜12が形成されており、第1層と第2層との電気的絶縁が図られている。
【0033】
画素スイッチング用のTFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、半導体層1aの低濃度ソース領域(ソース側LDD領域)1b及び低濃度ドレイン領域(ドレイン側LDD領域)1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。なお、TFT30は、好ましくは図5に示したようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造をもってよいし、ゲート電極3aをマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。なお、このような構造は、基本的には、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104に形成されているTFTも同様に有する。
【0034】
TFT30の高濃度ドレイン領域1eには、複数の画素電極9aのうちの対応する一つが、第2層間絶縁膜4及び第3層間絶縁膜7を貫通して形成されているコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、TFT30の高濃度ソース領域1dには、データ線6aが、第2層間絶縁膜4を貫通して形成されているコンタクトホール5を介して電気的に接続されている。また、高濃度ドレイン領域1eには、容量電極1fが電気的に接続されており、当該容量電極1fと容量線3bとにより誘電体膜としてのゲート絶縁膜2を挟持することにより、蓄積容量70が形成されている。
【0035】
ここで、容量線3bと走査線3aとは、同一のポリシリコン膜からなり、蓄積容量70の誘電体膜と画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜2とは、同一の高温酸化膜からなり、容量電極1fと、画素スイッチング用TFT30のチャネル形成領域1a’、ソース領域1d、ドレイン領域1e等とは、同一の半導体層1aから構成されている。
一方、対向基板20の液晶層50側表面上には、各画素の開口領域以外の領域に設けられた遮光膜と遮光膜53とからなる遮光膜層23が形成されている。遮光膜層23は、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPd等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜により構成され、遮光性を有する。また、遮光膜層23の上には、ITO等の透明導電性薄膜からなる対向電極21が形成されている。
【0036】
[電気光学装置の製造方法]
次に、以上のような構成を持つ電気光学装置の製造方法について、図6から図10を参照して説明する。なお、図6から図10は各工程におけるTFTアレイ基板10側の各層を、図5と同様の断面に対応させて示す工程図である。
【0037】
まず、図6(a)に示すように、反射膜形成工程において、石英、ガラス等からなるTFTアレイ基板10の、第2の面である内側表面ISとは反対側となる第1の面である外側表面OSの全面に、スパッタ処理により、反射膜としてTi、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属膜、もしくはこれら高融点金属とシリコンとの化合物である高融点金属シリサイド膜を形成する。また、これらの高融点金属膜及び高融点金属シリサイド膜は、光を反射する性質を有するとともに、光の少なくとも一部を遮る遮光性を有する。本実施形態では、高融点金属シリサイド膜としてタングステンシリサイド(以下、WSiと称す)膜201を形成する。さらに、WSi膜201上に、絶縁膜である酸化シリコン膜202を形成する。なお、本実施形態における高融点金属とは、融点1500℃以上の金属のことを指す。また、絶縁膜は酸化シリコン膜ではなく、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜又は窒化シリコン膜により構成されてもよい。このように、反射膜として形成したWSi膜201上を酸化シリコン膜202によって覆うことにより、WSiが後の工程で形成されるTFT50を汚染してしまうことを防止することができる。
【0038】
次に、図6(b)に示すように、フォトリソグラフィ工程において、TFTアレイ基板10の対向基板20と対向し液晶層50側となる表面である内側表面ISに、溝12gのパターンに対応した形状を有するレジストマスク210aを形成する。このフォトリソグラフィ工程について、図11を参照して以下に説明する。図11は、図5と同様の断面においてフォトリソグラフィ工程の概要を説明する説明図である。
【0039】
フォトリソグラフィ工程では、まず、図11(a)に示すように、レジスト210をTFTアレイ基板10の内側表面IS上に塗布する。その後、図11(b)に示すように、塗布したレジスト210に対して、TFTアレイ基板10の内側表面ISの方向から溝12gの形状に対応する所定のパターンで露光する。そして、所定の形状のパターンに露光されたレジスト210を現像することにより、TFTアレイ基板10の内側表面IS上に図7(b)に示したレジストマスク210aが形成されるのである。
【0040】
上述のように、TFTアレイ基板10の内側表面IS上のレジスト210を露光する場合、半導体用露光装置が用いられるため、露光光Eの光軸はTFTアレイ基板10の内側表面に対し略直交し、かつ露光光Eの主光線は光軸に対し略平行に進行する。
【0041】
レジスト210は透光性を有するため、露光光Eの一部はTFTアレイ基板10へと透過する。ここで、TFTアレイ基板10は透明であるため、露光光EはTFTアレイ基板10内を透過し、内側表面ISとは反対側の外側表面OSまで到達する。当該外側表面OSまで到達した露光光Eは、反射膜であるWSi膜201と外側表面OSとの界面で反射される(反射光R)。露光光Eは、TFTアレイ基板10に略直交して入射しているため、反射光Rの大部分は露光光Eの進行方向とは反対の方向へ進行し、レジスト210の露光光Eが透過してきた箇所近傍に入射する。このため、本実施形態においては、レジスト210は、露光光E及び、反射光Rによって露光されるのである。
【0042】
従来、透明な基板上におけるフォトリソグラフィ工程では、レジストを透過した露光光はそのまま透明な基板を透過し裏面から出射してしまっていたものであるが、本実施形態によれば、レジストを透過した露光光を、透明な基板の裏面に形成された反射膜により反射することにより、レジストの露光に寄与させることが可能となる。したがって、本実施形態の電気光学装置の製造方法によれば、従来に比してレジストにより効率よく露光を与えることが可能となるため、従来よりも少ない露光量、すなわち短時間でレジストの露光工程を終えることができる。
【0043】
次に、図6(c)に示すように、エッチング工程において、レジストマスク210aが形成されていない箇所にドライ及びウェットエッチング処理を施すことにより、TFTアレイ基板10の内側表面ISにTFT30等を形成する領域に溝12gを形成する。
【0044】
次に、図7(d)に示すように、TFTアレイ基板10を、好ましくはN2(窒素)等の不活性ガス雰囲気且つ約900〜1300℃の高温でアニール処理し、後に実施される高温プロセスにおけるTFTアレイ基板10に生じる歪みが少なくなるように前処理する。すなわち、製造プロセスにおける最高温で高温処理される温度に合わせて、事前にTFTアレイ基板10を同じ温度かそれ以上の温度で熱処理しておく。そして、このように処理されたTFTアレイ基板10の全面に、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPd等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜を、スパッタにより、1000〜5000オングストローム程度の層厚、好ましくは約2000オングストロームの層厚で形成する。さらに、形成された金属合金膜上にフォトリソグラフィにより下側遮光膜11aのパターン(図2参照)に対応するレジストマスクを形成し、該レジストマスクを介して金属合金膜に対しエッチングを行うことにより、下側遮光膜11aを形成する。
【0045】
次に、図7(e)に示すように、下側遮光膜11aの上に、例えば、常圧又は減圧CVD法等によりTEOS(テトラ・エチル・オルソ・シリケート)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第1層間絶縁膜12を形成する。この第1層間絶縁膜12の層厚は、例えば、約5000〜20000オングストローム、好ましくは約5000〜10000オングストロームとする。
【0046】
あるいは、熱酸化膜を形成した後、更に減圧CVD法等により高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜を約500オングストロームの比較的薄い厚さに順次堆積し、厚さ約2000オングストロームの多層構造を持つ第1層間絶縁膜12を形成してもよい。更に、このようなシリケートガラス膜に重ねて又は代えて、SOG(スピンオンガラス:紡糸状ガラス)をスピンコートして又はCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を施すことにより、平坦な膜を形成してもよい。このように第1層間絶縁膜12の上面を平坦化しておけば、後に上側にTFT30を形成し易いという利点が得られる。なお、第1層間絶縁膜12に対し、約900℃のアニール処理を施すことにより、汚染を防ぐと共に平坦化してもよい。
【0047】
次に図7(f)に示すように、第1層間絶縁膜12の上に、約450〜550℃、好ましくは約500℃の比較的低温環境中で、流量約400〜600cc/minのモノシランガス、ジシランガス等を用いた減圧CVD(例えば、圧力約20〜40PaのCVD)により、アモルファスシリコン膜を形成する。その後、窒素雰囲気中で、約600〜700℃にて約1〜72時間、好ましくは、4〜6時間のアニール処理を施することにより、ポリシリコン膜1を約500〜2000オングストロームの厚さ、好ましくは約1000オングストロームの厚さとなるまで固相成長させる。この際、nチャネル型のTFT30を作成する場合には、当該チャネル領域にSb(アンチモン)、As(砒素)、P(リン)などのV族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしても良い。また、TFT30をpチャネル型とする場合には、B(ボロン)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)などのIII族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしても良い。なお、アモルファスシリコン膜を経ないで、減圧CVD法等によりポリシリコン膜を直接形成しても良い。或いは、減圧CVD法等により堆積したポリシリコン膜にシリコンイオンを打ち込んで一旦非晶質化(アモルファス化)し、その後アニール処理等により再結晶化させてポリシリコン膜を形成しても良い。さらに、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、図5に示した如きチャネル領域1a’、容量電極1f等を含む所定パターンを有する半導体層1aを形成する。
【0048】
次に図8(g)に示すように、TFT30を構成するチャネル領域1a’及び蓄積容量70を構成する容量電極1f等を含む半導体層1aを、約900〜1300℃の温度、好ましくは約1000℃の温度により熱酸化することにより、約300オングストロームの比較的薄い厚さの熱酸化シリコン膜を形成し、更に減圧CVD法等により高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜を約500オングストロームの比較的薄い厚さに堆積し、多層構造を持つTFT30のゲート絶縁膜2と共に蓄積容量70用の絶縁膜2を形成する。この結果、半導体層1aの厚さは、約300〜1500オングストロームの厚さ、好ましくは約350〜500オングストロームの厚さとなり、絶縁膜2の厚さは、約200〜1500オングストロームの厚さ、好ましくは約300〜1000オングストロームの厚さとなる。このように高温熱酸化時間を短くすることにより、特に8インチ程度の大型ウエーハを使用する場合に熱によるそりを防止することができる。但し、半導体層1aを熱酸化することのみにより、単一層構造を持つ絶縁膜2を形成してもよい。
【0049】
なお、工程(5)において特に限定されないが、容量電極1fとなる半導体層1a部分に、例えば、Pイオンをドーズ量約3×1012/cmでドープして、低抵抗化させてもよい。
【0050】
次に図8(h)に示すように、減圧CVD法等によりポリシリコン膜を堆積した後、リン(P)を熱拡散し、このポリシリコン膜を導電化する。又は、Pイオンをポリシリコン膜の成膜と同時に導入したドープトシリコン膜を用いてもよい。
【0051】
そして、このように堆積されたポリシリコン膜に対して、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等を施して、図2に示した如き所定パターンの走査線3aと共に容量線3bを形成する。これらの容量線3b及び走査線3aの層厚は、例えば、約3500オングストロームとされる。
【0052】
但し、走査線3aや容量線3bを、ポリシリコン膜ではなく、Al等の金属膜又は金属シリサイド膜から形成してもよいし、若しくはこれらの金属膜又は金属シリサイド膜とポリシリコン膜とを組み合わせて多層に形成してもよい。この場合、走査線3aを、下側遮光膜11aが覆う領域の一分又は全部に対応する遮光膜として配置すれば、金属膜や金属シリサイド膜の持つ遮光性により、対向基板20側の遮光膜23の一部を書略することも可能となる。この場合特に、対向基板20とTFTアレイ基板10との張り合わせずれに画素開口率の低下を防ぐことが出来る利点がある。
【0053】
続いて、図5に示した画素スイッチング用TFT30をLDD構造を持つnチャネル型のTFTとする場合、半導体層1aに、先ず低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成するために、走査線3a(ゲート電極)を拡散マスクとして、PなどのV族元素のドーパントを低濃度で(例えば、Pイオンを1〜3×1013/cmのドーズ量にて)ドープする。これにより走査線3a下の半導体層1aはチャネル領域1a’となる。この不純物のドープにより容量線3b及び走査線3aも低抵抗化される。
【0054】
さらに、TFT30を構成する高濃度ソース領域1b及び高濃度ドレイン領域1cを形成するために、走査線3aよりも幅の広いマスクでレジストを走査線3a上に形成した後、同じくPなどのV族元素のドーパントを高濃度で(例えば、Pイオンを1〜3×1015/cmのドーズ量にて)ドープする。また、TFT30をpチャネル型とする場合、半導体層1aに、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成するために、BなどのIII族元素のドーパントを用いてドープする。
【0055】
このように低濃度及び高濃度の2段階のドープにより、TFT30をLDD構造とすれば、ショートチャネル効果を低減できる利点が得られる。但し、2段階に分けてドープを行わなくてもよい。例えば、低濃度のドープを行わずに、オフセット構造のTFTとしてもよく、走査線3aをマスクとして、Pイオン、Bイオン等を用いたイオン注入技術によりセルフアライン型のTFTとしてもよい。この不純物のドープにより容量線3b及び走査線3aも更に低抵抗化される。
【0056】
また、これらのTFT30の素子形成工程と並行して、nチャネル型TFT及びpチャネル型TFTから構成される相補型構造を持つデータ線駆動回路、走査線駆動回路等の周辺回路(図示せず)をTFTアレイ基板10上の周辺部に形成してもよい。このように、本実施形態において画素スイッチング用のTFT30は半導体層をポリシリコンで形成するので、画素スイッチング用のTFT30の形成時にほぼ同一工程で、周辺回路を形成することができ、製造上有利である。
【0057】
次に、図8(i)に示すように、絶縁膜2、走査線3a及び容量線3bを覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第2層間絶縁膜4を形成する。第2層間絶縁膜4の層厚は、約5000〜15000オングストロームが好ましい。そして、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを活性化するために約1000℃のアニール処理を20分程度行った後、データ線6aに対するコンタクトホール5を反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより開孔する。
【0058】
次に、図9(j)に示すように、第2層間絶縁膜4の上に、スパッタ処理等により、遮光性のAl等の低抵抗金属や金属シリサイド等を、約1000〜5000オングストロームの厚さ、好ましくは約3000オングストロームに堆積した後、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等を施すことにより、データ線6aを形成する。
【0059】
次に、図9(k)に示すように、データ線6a上を覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第3層間絶縁膜7を形成する。第3層間絶縁膜7の層厚は、約5000〜15000オングストロームが好ましい。なお、第3層間絶縁膜7の形成に際し、シリケートガラス膜等の表面にCMP処理を施したり、シリケートガラス膜等に代えて又は重ねて有機膜やSOGを形成して、第3層間絶縁膜7の上面を平坦化してもよい。このように平坦化すれば、第3層間絶縁膜7の表面の凹凸により引き起こされる液晶のディスクリネーション(配向不良)を低減できる。
【0060】
その後、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとを電気的接続するためのコンタクトホール8を、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより形成する。
【0061】
次に、図9(l)に示すように、第3層間絶縁膜7の上に、スパッタ処理等により、ITO膜等の透明導電性薄膜を、約500〜2000オングストロームの厚さに堆積し、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、画素電極9aを形成する。なお、当該液晶装置を反射型の液晶装置に用いる場合には、Al等の反射率の高い不透明な材料から画素電極9aを形成してもよい。
【0062】
続いて、画素電極9aの上にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように且つ所定方向でラビング処理を施すこと等により、配向膜16(図5参照)が形成される。
【0063】
そして、図10(m)に示すように、反射膜除去工程において、TFTアレイ基板10の外側表面OSに形成されている反射膜であるWSi膜201とその上に形成された酸化シリコン膜202との画像表示領域10a内にあたる領域をフォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により除去することで、額縁遮光膜200を形成する。すなわち、反射膜除去工程後に、遮光性を有する反射膜であるWSi膜201とその上に形成された酸化シリコン膜202との残された領域が、電気光学装置の額縁領域を遮光する額縁遮光膜200となる。
【0064】
他方、図5に示した対向基板20については、石英、ガラス基板等がまず用意され、遮光膜23及び周辺見切りとしての周辺遮光膜53が、例えば金属クロムをスパッタした後、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て形成される。なお、これらの遮光膜23及び周辺遮光膜53は、Cr、Ni、Alなどの金属材料の他、カーボンやTiをフォトレジストに分散した樹脂ブラックなどの材料から構成されてもよい。
【0065】
その後、対向基板20の全面にスパッタ処理等により、ITO等の透明導電性薄膜を、約500〜2000オングストロームの厚さに堆積することにより、対向電極21を形成する。更に、対向電極21の全面にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように且つ所定方向でラビング処理を施すこと等により、配向膜22が形成される。
【0066】
最後に、上述のように各層が形成されたTFTアレイ基板10と対向基板20とは、配向膜16及び22が対面するようにシール材52により貼り合わされ、真空吸引等により、両基板間の空間に、例えば複数種類のネマティック液晶を混合してなる液晶が吸引されて、所定層厚の液晶層50が形成される。
以上の結果、図1から図5に示した本実施形態の電気光学装置が製造される。
【0067】
なお、上述のように、本実施形態の電気光学装置の製造方法によれば、レジストにより効率よく露光を与えることが可能となるため、短時間でレジストの露光工程を終えることができるものである。本実施形態では、一例としてTFTアレイ基板10に溝12gを形成する場合においての効果を説明しているが、これ以外のフォトリソグラフィ工程においても同様な効果があることは言うまでもない。
【0068】
また、本実施形態では、TFTアレイ基板10の外側表面OS上に反射膜であるWSi膜201を形成しているが、反射膜は対向基板20に形成してもよい。例えば、対向基板20の製造工程において、フォトリソグラフィ工程が行われる場合は、レジストの露光工程に先立ち、レジストとは反対側の表面に反射膜を形成しておくことにより、レジストの露光工程にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態では、反射膜除去工程において、反射膜であるWSi膜201と絶縁膜である酸化シリコン膜202との一部を除去することで額縁遮光膜200を形成しているが、必要に応じてWSi膜201及び酸化シリコン膜202全部を除去してしまっても構わない。
【0070】
[電子機器]
次に、以上詳細に説明した電気光学装置たる液晶装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例たる投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。図12は、投射型カラー表示装置の構成例を示す断面図である。図12において、本実施形態における投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェ クタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
【0071】
なお、本実施形態に係る電気光学装置は、図12を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型コンピュータ、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末又はタッチパネル等の各種電子機器に適用可能である。
【0072】
また、本発明に係る電気光学装置は、本実施形態に係るアクティブマトリクス駆動の液晶装置の他に、電子ペーパなどの電気泳動装置、EL( Electro-Luminescence )表示装置、電子放出回路素子を備えた装置( Field Emission Display 及び Surface-Conduction Electron-Emitter Display )等の電気光学装置の技術分野に属するものである。
【0073】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態を図13を参照して説明する。図13は各工程におけるTFTアレイ基板10側の各層を、図5と同様の断面に対応させて示す工程図である。第2の実施形態の電気光学装置は、第1の実施形態の電気光学装置に対し、露光光を反射する反射膜の材料が異なる。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0074】
第2の実施形態では、TFTアレイ基板10の外側表面OS上に、反射膜としてアルミニウム膜203が形成される。第2の実施の形態に係る電気光学装置の製造方法について以下に説明する。
【0075】
まず、図13(a)に示すように、反射膜形成工程において、石英、ガラス等からなるTFTアレイ基板10の外側表面OSの全面に、スパッタ処理により、アルミニウム膜203が形成される。
【0076】
次に、図13(b)に示すように、フォトリソグラフィ工程において、TFTアレイ基板10の内側表面ISに、溝12gのパターンに対応した形状を有するレジストマスク210aを形成する。
【0077】
ここで、TFTアレイ基板10の外側表面OSにアルミニウム膜203が形成されていることによる第1の実施形態と同様の効果により、レジストを露光する工程を短時間に行うことが可能となる。特に、アルミニウムは光の反射率が高いため、第1の実施形態に対してより少ない露光量でレジストの露光を完了させることが可能となるのである。
【0078】
次に図13(c)に示すように、エッチング工程において、レジストマスク210aが形成されていない箇所にドライ及びウェットエッチング処理を施すことにより、TFTアレイ基板10の内側表面ISにTFT30等を形成する領域に溝12gを形成する。
【0079】
次に図13(d)に示すように、反射膜除去工程において、TFTアレイ基板10の外側表面OSに形成されているアルミニウム膜203を全て除去する。
以降の工程は、第1の実施形態において図7(d)以降を参照して説明した工程と同様であるため省略する。
【0080】
すなわち、本実施形態では、反射膜であるアルミニウム膜203は、TFTアレイ基板10に対してアニール処理等の高温の処理が施される熱工程の前に除去される。これは、アルミニウムの融点が、およそ660℃とタングステンに比べて低いためである。なお、便宜的にアルミニウム膜203の温度が600度以上となる工程を熱工程と称する。つまり、本実施形態では、アルミニウム膜203が形成され、フォトリソグラフィ工程のレジスト露光工程が完了し、アルミニウム膜203が除去されるまでの間に、TFTアレイ基板10に熱工程が施されなければよい。このため、TFTアレイ基板10に熱工程が施された後であり、かつフォトリソグラフィ工程のレジスト露光工程の前にアルミニウム膜203を形成し、さらにレジスト露光工程後であり、かつ熱工程前にアルミニウム膜203を除去すればよいのである。アルミニウム膜203は単層でよく、またレジストの露光量が少なくて済むため、例えば、図13を用いて説明した工程のみでアルミニウム膜203を形成するのであれば、第1の実施形態よりも短い時間で電気光学装置を製造することが可能となる。
【0081】
また、アルミニウム膜203を形成した後にTFTアレイ基板10に熱工程が施されないのであれば、レジスト露光工程後に、アルミニウム膜203の一部のみを除去することにより、額縁遮光膜200を形成してもよい。
【0082】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の製造方法及び電気光学装置、並びにこれを備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】電気光学装置の平面図である。
【図2】図1のH−H´断面図である。
【図3】電気光学装置の背面図である。
【図4】画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【図5】各画素毎に形成されている画素スイッチング用のTFTの断面図である。
【図6】各工程におけるTFTアレイ基板の各層を示す工程図である。
【図7】各工程におけるTFTアレイ基板の各層を示す工程図である。
【図8】各工程におけるTFTアレイ基板の各層を示す工程図である。
【図9】各工程におけるTFTアレイ基板の各層を示す工程図である。
【図10】各工程におけるTFTアレイ基板の各層を示す工程図である。
【図11】図5と同様の断面においてフォトリソグラフィ工程の概要を説明する説明図である。
【図12】投射型カラー表示装置の構成例を示す断面図である。
【図13】第2の実施形態の各工程におけるTFTアレイ基板の各層を示す工程図である。
【符号の説明】
【0084】
10 TFTアレイ基板、 10g 溝、 201 WSi膜、 202 酸化シリコン膜、 210a レジストマスク、 IS 内側表面、 OS 外側表面、 E 露光光、 R 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向し少なくとも一方が透光性を有する2枚の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、画像表示領域と、該画像表示領域の周辺を規定する額縁領域とを有する電気光学装置の製造方法であって、
前記透光性を有する基板の他方の基板と対向しあう面とは反対側の面である第1の面上に、高融点金属又は高融点金属シリサイドからなる反射膜を形成し、さらに該反射膜上に絶縁膜を形成する反射膜形成工程と、
前記透光性を有する基板の前記第1の面とは反対側となる第2の面上に、レジストを塗布し、該レジストを所定形状のパターンで露光し、露光された前記レジストを現像してレジストマスクを形成するフォトリソグラフィ工程と、
前記透光性を有する基板の前記第1の面上に形成された前記反射膜の少なくとも一部を除去する反射膜除去工程とを有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記透光性を有する基板の前記第1の面上に形成された前記反射膜の一部を除去することで、前記第1の面上に残された前記反射膜を遮光膜として形成することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記透光性を有する基板の前記表示領域内の前記反射膜を除去することにより、前記反射膜の残された領域を前記額縁領域を遮光する額縁遮光膜として形成することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
互いに対向し少なくとも一方が透光性を有する2枚の基板間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学装置の製造方法であって、
前記透光性を有する基板の他方の基板と対向しあう面とは反対側の面である第1の面上に、アルミニウムからなる反射膜を形成する反射膜形成工程と、
前記透光性を有する基板の前記第1の面とは反対側となる第2の面上に、レジストを塗布し、該レジストを所定形状のパターンで露光し、露光された前記レジストを現像してレジストマスクを形成するフォトリソグラフィ工程と、
前記第1の面上に形成された前記反射膜を全て除去する反射膜除去工程とを有し、
前記反射膜形成工程、前記フォトリソグラフィ工程及び前記反射膜除去工程のそれぞれの間においては、前記透光性を有する基板の温度がアルミニウムの融点以下に保たれることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
互いに対向し少なくとも一方が透光性を有する2枚の基板間に電気光学物質が挟持されてなり、画像表示領域と、該画像表示領域の周辺を規定する額縁領域とを有する電気光学装置であって、
前記透光性を有する基板の、他方の基板と対向しあう面とは反対側の面上の前記額縁領域の少なくとも一部に、高融点金属又は高融点金属シリサイドからなる反射膜と、該反射膜上に形成された絶縁膜とが形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−193260(P2007−193260A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13604(P2006−13604)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】