説明

電気掃除機

【課題】電源基板を金属材料で覆っても騒音が増大することのない電気掃除機を得る。
【解決手段】吸引風を発生する電動送風機20の上方に設けられた電源基板30と、電源基板30を覆うカバー部40とを備え、カバー部40は金属製の上部カバー42と樹脂製の下部カバー41とから構成され、上部カバー42の上面部には機能性ポリエステルにより形成された制振部材50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機の本体には、吸引風を発生させる電動送風機が内蔵されている。また、電動送風機の上方や側方には、電動送風機の回転数(吸引力)等を制御する電源基板が設けられている。この電気基板には、電動送風機への通電制御等を行うために電解コンデンサ等の電気部品が配置されている。これら電気部品は経年劣化等によって発火する可能性がある。経年劣化等によって電気部品(電源基板)が発火した場合、その周囲に類焼することを防止するため、従来の電気掃除機では、例えば「本体に箱状のリブ体を形成し消費電力を可変にさせるコントロール回路部を箱状部材の中に収納して、一つの組立品として構成し、本体内に取付けるか、あるいは箱状のリブ体内に直接取付けることにより達成される。また、類焼の程度が激しいと見込まれる場合には、箱状部材を難燃性の材料で製作すればよく、…」(例えば特許文献1参照)というものが提案されている。
【0003】
しかしながら、電源基板(コントロール回路部)を難燃性樹脂で覆うだけでは、難燃性樹脂の溶融に伴ってガスや煙等が本体外に放散し、十分な対策とはいえない。このため、電源基板を金属材料で覆うことにより、周囲への類焼やガス・煙等の放散を防止した電気掃除機も提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭2−233134号公報(第2頁、図1,19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源基板と電動送風機との間の送電損失を抑制するため、つまり電源基板と電動送風機とを接続する配線長さを短くするため、電源基板は電動送風機の上方や側方に設けられる。しかしながら、電源基板を金属材料で覆う構造にすると、電動送風機の振動が金属材料に伝わり、電気掃除機の騒音が増大してしまうという課題があった。また、金属材料は電動送風機が発する熱によって熱せられるため、高温状態において損失係数が低下してしまうブチルゴム等の従来の防音部材では騒音対策が行えないという課題があった。
【0006】
本発明は上述のような課題を解消するためになされたものであり、電源基板を金属材料で覆っても騒音が増大することのない電気掃除機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気掃除機は、吸引風を発生する電動送風機の上方及び側方の少なくとも一方に設けられた電源基板と、該電源基板を覆うカバー部とを備え、前記カバー部は、少なくとも前記電動送風機と対向しない面が金属により形成され、前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部には、機能性ポリエステルにより形成された制振部材が設けられているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、カバー部における金属部分の少なくとも一部に機能性ポリエステルにより形成された制振部材が設けられている。この機能性ポリエステルは損失係数がピークとなる温度を高温にして生成することが可能なので、電動送風機の振動が金属部分に伝わることで発生する騒音の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の全体構成を示す斜視図である。なお、以下では、掃除機本体の吸込口が形成されている側を前側として説明する。
後述の電動送風機20や電源基板30等を内蔵した掃除機本体10は、前面側に吸込口11が設けられている。この吸込口11には、例えば蛇腹状のホース1の一端が着脱可能に接続されており、ホース1の他端には手元グリップ2が設けられている。そして、手元グリップ2には伸縮自在の延長管3の一端が着脱可能に接続されており、延長管3の他端には吸込口本体4が着脱可能に接続されている。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態1に係る掃除機本体の縦断面模式図である。
掃除機本体10は、本体カバー12、電動送風機20、電源基板30、及び電源基板30を覆うカバー部40等から構成されている。本体カバー12は例えば中空の略卵型形状をしており、その内部は隔壁13によって2つの空間に分割されている。これら2つの空間は、前側の空間が集塵室14となっており、後側の空間が電動送風機室15となっている。集塵室14は、前部が吸込口11と連通しており、後部が隔壁13に形成された電動送風機吸込口13aを介して電動送風機室15と連通している。電動送風機室15は、前部が電動送風機吸込口13aを介して集塵室14と連通しており、後部が本体カバー12の後部に形成された排気口17を介して外部と連通している。
【0011】
また、本体カバー12は集塵室14の上方が開口しており、この開口部は上蓋(図示せず)によって開閉可能となっている。そして、本体カバー12の底部には複数の車輪16が回動自在に設けられている。
【0012】
集塵室14には、ごみパック18が着脱可能に収容されている。このごみパック18は、その開口部が吸込口11と対向するように収容されている。電動送風機20が発生させる吸引風によって吸引された塵埃は、ごみパック18によって捕集される。
【0013】
電動送風機室15には、電動送風機20が設けられている。この電動送風機20は、モータケース21、前部クッション部材22及び後部クッション部材23に保持されて収容されている。モータケース21は、例えば開口部が階段状に拡開した箱形状をしており、開口部が電動送風機吸込口13aと対向するように設けられている。モータケース21の各面部には通風口が形成されており、電動送風機20の排気風はこれら通気風を通ってモータケース21外へ排出される。
【0014】
このモータケース21の開口部には、外周形状がこの開口部と略同形状に形成された前部クッション部材22が挿入されている。この前部クッション部材22には電動送風機吸込口13aと対向する範囲に貫通孔22aが形成されている。また、貫通孔22aの後部側には、電動送風機20のファン部20aの外周形状と略同形状の凹部22bが形成されている。
【0015】
モータケース21の後面部の略中央には後部クッション部材23が設けられている。この後部クッション部材は、モータケース21の後面部に形成された開口部に嵌入されて設けられている。電動送風機20は、ファン部20aが前部クッション部材22の凹部22bに保持され、モータ部20bの後部が後部クッション部材23に支持されて、モータケース21内に収容されている。前部クッション部材22及び後部クッション部材23により、電動送風機20の振動の外部への伝播を低減している。
【0016】
これら電動送風機20、モータケース21、前部クッション部材22及び後部クッション部材23は、本体カバー12の底部内側に形成されたリブ12aに後部クッション部材23が支持され、隔壁13に前部クッション部材22が支持されて、電動送風機室15内に設けられている。前部クッション部材22はパッキンとしての機能も有している。
また、モータケース21の上面部(電動送風機20の上方)には電源基板30が設けられており、この電源基板30は、カバー部40によって覆われている。
【0017】
次に、電源基板30及びカバー部40の詳細について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る電源基板及びカバー部の一部分解斜視図である。この図はカバー部40の上部カバー42を取り外した状態の斜視図である。
電源基板30は略直方体の板形状をしている。この電源基板30の上面部には、電動送風機20に接続された配線24を電源基板30に接続するためのコネクタ31、電動送風機20の回転数等を制御するための電解コンデンサ32及びトライアック33等の電気部品が設けられている。また、発熱しやすいトライアック33には、放熱板34が取り付けられている。電源基板30がカバー部40に覆われている状態において、この放熱板34はカバー部40から突出する形状となっている。これにより、放熱板34は電動送風機20の排気風によって冷却され、トライアック33の温度上昇を防止している。なお、本実施の形態1ではトライアック33のみに放熱板34を取り付けているが、その他の電気部品に放熱板34を取り付けてももちろんよい。
【0018】
カバー部40は下部カバー41及び上部カバー42等から構成されている。下部カバー41は上部が開口した略箱形状をしており、例えばPP(ポリプロピレン)等の難燃性樹脂で形成されている。また、下部カバー41は、前面部に配線24を引き回すための切り欠き41aが形成されており、側面部に放熱板34との干渉を回避するための切り欠き41bが形成されている。
【0019】
上部カバー42は下部が開口した略箱形状をしており、例えば炭素鋼やアルミニウム等の金属で形成されている。また、上部カバー42は、前面部に配線24を引き回すための切り欠き42aが形成されており、側面部に放熱板34との干渉を回避するための切り欠き42bが形成されている。
【0020】
本実施の形態1では、電源基板30の上面部及び側面部を金属製の上部カバー42で覆う構成となっている。これにより、電源基板30から発火又は発煙した際、この火又は煙は上部カバー42の内部に貯えられ外部に漏れることはない。なお、上部カバー42の側面には切り欠き42a及び42bが形成されているが、本発明では電源基板30の側面を覆うと称する。
【0021】
なお、本実施の形態1では下部カバー41を樹脂で形成しているが、上部カバー42と同様に金属で下部カバー41を形成してもよい。また、カバー部40の金属部分(本実施の形態1では上部カバー42)の内面に、電源基板との絶縁用の樹脂を設けてもよい。
【0022】
上部カバー42の上面部外側には、略直方体の板形状をした制振部材50が設けられている。この制振部材50は、機能性ポリエステルにより形成されており、損失係数のピーク値が高温となるように生成されている。本実施の形態1では、機能性ポリエステルとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、及びPBN(ポリブチレンフタレート)を、単一又は混合して用いている。
【0023】
なお、本実施の形態1では制振部材50を略直方体の板形状としたが、制振部材50の板形状は任意である。また、制振部材50は、上部カバー42の上面部に限らず、側面部に設けてもよい。また、制振部材50は、上部カバー42の内側に設けてもよいし、上部カバー42の内側及び外側の両面に設けてもよい。制振部材50を上部カバー42の内側に設ける場合、制振部材50に難燃性を付与するとなおよい。
【0024】
(騒音発生原理)
次に、金属製である上部カバー42での騒音発生原理について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る上部カバーでの騒音発生原理を示す概念図であり、(a)は電動送風機から上部カバーへの振動伝播経路を示す経路図、(b)は上部カバーでの騒音発生過程を示すモデル図である。なお、図4(a)は、モータケース21等を省略して振動伝播経路を示している。また、図4(b)は、上部カバー42のある一面を示している。
【0025】
電動送風機20から上部カバー42への主な振動伝播経路としては、例えば図4(a)に示す(1)〜(3)の伝播経路が考えられる。伝播経路(1)は、モータケース21等を介して、電動送風機20から上部カバー42へ直接伝播する経路である。伝播経路(2)は、モータケース21等を介して電動送風機20の振動が樹脂製の下部カバー41へ伝播し、この振動が上部カバー42へ伝播する経路である。伝播経路(3)は、配線24等を介して電動送風機20の振動が電源基板30へ伝播し、この振動が上部カバー42へ伝播する経路である。
【0026】
図4(b)に示すように、このように上部カバー42へ伝播した振動によって、上部カバー42の各面は振動する(図4(b)に示す破線の矢印)。そして、図4(b)の実線の輪で示すように、この振動は振動波として面上に広がる(以下、この振動波を面内振動という)。そして、図4(b)の実線の矢印で示すように、面内振動は騒音となって周囲に放射される。
【0027】
(制振部材の作用)
続いて、制振部材50の作用について説明する。
図5は、本発明の実施の形態1に係る制振部材の特性を示す特性図である。この図5は、横軸に温度を示し、縦軸に損失係数ηを示している。ここで、損失係数ηは振動を抑制する性能を表す係数である。この値が大きいほど、制振性能が高いことを表す。なお、図5には、比較としてブチルゴム等の従来の防音部材の特性も示す。
【0028】
図5に示すように、従来の防音部材は、例えば20℃という低温で損失係数ηがピークとなっている(以下、損失係数がピークとなる温度をピーク温度という)。また、従来の防音部材は損失係数ηのピーク温度を高温にして生成することはできない。しかしながら、上部カバー42は、電動送風機20の熱によって熱せられるため、例えば60℃という高温状態となる。このため、上部カバー42の面内振動を抑制することができず、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができない。
【0029】
一方、機能性ポリエステルは損失係数ηのピーク温度を高温(例えば60℃)にして生成することが可能である。このため、機能性ポリエステルにより形成された制振部材50を上部カバー42に設けることにより、上部カバー42の面内振動を抑制することができ、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。なお、本実施の形態1では制振部材50のピーク温度を60℃としたが、このピーク温度は上部カバー42の周囲温度に合わせて適宜調整すればよい。
【0030】
このように構成された電気掃除機においては、機能性ポリエステルにより形成された制振部材50を上部カバー42に設けたので、上部カバー42の面内振動を抑制することができ、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。つまり、電動送風機の騒音の増大を抑制することができる。
【0031】
なお、本実施の形態1ではモータケース21の上面部に電源基板30を設けたが、例えば電動送風機20の上方に直接電源基板30を設けてもよい。また、電源基板30を電動送風機20(モータケース21)の側方に設けてもよい。このとき、カバー部40の電動送風機20と対向する面は樹脂により形成されてもよい。電動送風機20と対向する面を樹脂で形成することにより、電動送風機20からの振動の伝播を抑制することができる。
【0032】
また、本実施の形態1では制振部材50を機能性ポリエステルのみで形成したが、機能性ポリエステルにフィラーを混練して制振部材50を形成してもよい。制振部材50に伝播した振動が機能性ポリエステルとフィラーとの界面で熱エネルギーに変換されるので、上部カバー42の面内振動をさらに抑制することができる。つまり、電動送風機の騒音の増大をさらに抑制することができる。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1では、上部カバー42に制振部材50を設けることにより、上部カバー42での騒音の発生を抑制した。上部カバー42に制振部材50以外の構成を付加することによっても、上部カバー42での騒音の発生を抑制することが可能である。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態2に係る電源基板及びカバー部の縦断面模式図である。上部カバー42の上面部には略直方体の凸部51が形成されている。
【0035】
上部カバー42の上面部に略直方体の凸部51を形成することにより、上部カバー42の曲げモーメントが増加する。このため、上部カバー42の面内振動を抑制することができ、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。つまり、電動送風機の騒音の増大を抑制することができる。
【0036】
なお、凸部51の形状は略直方体に限らず、例えば略X字形状に凸部51を形成してもよい。また、凸部51は、上部カバー42の上面部に限らず、側面部に設けてもよい。また、凸部51の突方向も任意であり、例えば上部カバー42の内側方向に突出した凹部としてもよい。
【0037】
実施の形態3.
上部カバー42の材質によっても、上部カバー42での騒音の発生を抑制することが可能である。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1又は実施の形態2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0038】
図7は、本発明の実施の形態3に係る電源基板及びカバー部の縦断面模式図である。上部カバー42は制振合金により形成されている。本実施の形態3では、制振合金として、鉄とアルミニウムの合金を用いている。
【0039】
(作用)
続いて、上部カバー42の作用について説明する。
図8は、本発明の実施の形態3に係る上部カバーの特性を示す特性図である。この図8は、横軸に振動周波数を示し、縦軸に損失係数ηを示している。なお、図8には、比較として炭素鋼等の従来のカバー部材の特性も示す。
図8に示すように、従来のカバー部材に比べ、制振合金は損失係数ηが高くなっている。
【0040】
上部カバー42を制振合金で形成することにより、上部カバー42の面内振動を抑制することができ、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。つまり、電動送風機の騒音の増大を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施の形態3では上部カバー42を制振合金のみで形成したが、上部カバー42の一部に制振合金を用いても本発明を実施することが可能である。また、鉄とアルミニウムの合金以外の制振合金を用いてもよい。
【0042】
実施の形態4.
また、上部カバー42を金属多孔体により形成してもよい。なお、本実施の形態4において、特に記述しない項目については実施の形態1〜実施の形態3と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0043】
本実施の形態4に係る上部カバー42は、金属多孔体により形成されている。この金属多孔体は、例えば鉄やアルミニウムの粉末を圧縮した後、焼結することで形成される。
【0044】
(作用)
続いて、このように形成された上部カバー42の作用について説明する。
図9は、本発明の実施の形態4に係る上部カバーの特性を示す特性図であり(a)が振動周波数と損失係数ηとの関係を示す特性図、(b)が騒音周波数と吸音率αとの関係を示す特性図である。ここで、吸音率αは音を吸収する性能を表す係数である。この値が大きい程、吸音性能が高いことを表す。なお、図9には、比較として炭素鋼等の従来のカバー部材の特性も示す。
【0045】
図9(a)に示すように、従来のカバー部材に比べ、金属多孔体は損失係数ηが高くなっている。これは、金属多孔体が有する空隙で、面内振動が減衰されるためである。上部カバー42を金属多孔体で形成することにより、上部カバー42の面内振動を抑制することができ、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。つまり、電動送風機の騒音の増大を抑制することができる。
【0046】
また、図9(b)に示すように、騒音周波数が1000Hz以上の範囲において、金属多孔体の吸音率α(吸音性能)が上昇している。これは、金属多孔体が有する空隙で、空気の振動が減衰するためである。電動送風機20から発生する騒音は、一般的に1000Hz以上の周波数域である。図9(b)より、金属多孔体は、電動送風機20から発生する騒音を効果的に吸音できることがわかる。
【0047】
このように構成された上部カバー42を用いることで、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができるとともに、電動送風機20から発生する騒音を効果的に吸音できる。
【0048】
なお、本実施の形態4では上部カバー42を金属多孔体のみで形成したが、上部カバー42の一部に金属多孔体を用いても本発明を実施することが可能である。また、鉄やアルミニウム以外で金属多孔体を形成してももちろんよい。
【0049】
実施の形態5.
電動送風機20から上部カバー42への振動伝播経路にエラストマー系の衝撃吸収部材を設けても、上部カバー42での騒音の発生を抑制することが可能である。なお、本実施の形態5において、特に記述しない項目については実施の形態1〜実施の形態4と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0050】
図10は、本発明の実施の形態5に係る電源基板及びカバー部の縦断面模式図である。本実施の形態5では、モータケース21と下部カバー41との間に、エラストマー系(スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系等)の衝撃吸収部材52が設けられている。
【0051】
(作用)
続いて、衝撃吸収部材52の作用について説明する。
図11は、本発明の実施の形態5に係る衝撃吸収部材の特性を示す特性図である。この図11は、横軸に振動周波数を示し、縦軸に損失係数ηを示している。なお、図11には、比較として天然ゴム等の従来の衝撃吸収部材の特性も示す。
【0052】
図11に示すように、従来の衝撃吸収部材は、損失係数ηのピーク温度が例えば20℃と低温になっている。しかしながら、上部カバー42は、電動送風機20の熱によって熱せられるため、例えば60℃という高温状態となる。このため、従来の衝撃吸収部材は電動送風機20から上部カバー42への振動の伝播を抑制できず、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができない。
【0053】
一方、エラストマー系の衝撃吸収部材52は損失係数ηのピーク温度を高範囲(例えば20℃から60℃の範囲)にして生成することが可能である。このため、エラストマー系の衝撃吸収部材52を電動送風機20から上部カバー42への振動伝播経路に設けることにより、電動送風機20から上部カバー42への振動の伝播を抑制でき、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。
【0054】
このように構成された電気掃除機においては、エラストマー系の衝撃吸収部材52を電動送風機20から上部カバー42への振動伝播経路に設けることにより、電動送風機20から上部カバー42への振動の伝播を抑制でき、上部カバー42からの騒音の発生を抑制することができる。つまり、電動送風機の騒音の増大を抑制することができる。
【0055】
なお、衝撃吸収部材52の設置位置は本実施の形態5に係る位置に限定されず、例えば下部カバー41と上部カバー42との間等、電動送風機20から上部カバー42への振動伝播経路内であればよい。
【0056】
以上、実施の形態1〜実施の形態5ではそれぞれ異なる構成により上部カバー42からの騒音の発生を抑制したが、各実施の形態に係る構成を適宜組み合わせることにより、上部カバー42からの騒音の発生を効果的に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態1に係る電気掃除機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る掃除機本体の縦断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係る電源基板及びカバー部の一部分解斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る上部カバーでの騒音発生原理を示す概念図であり、(b)は電動送風機から上部カバーへの振動伝播経路を示す経路図、(a)は上部カバーでの騒音発生過程を示すモデル図である。
【図5】実施の形態1に係る制振部材の特性を示す特性図である。
【図6】実施の形態2に係る電源基板及びカバー部の縦断面模式図である。
【図7】実施の形態3に係る電源基板及びカバー部の縦断面模式図である。
【図8】実施の形態3に係る上部カバーの特性を示す特性図である。
【図9】実施の形態4に係る上部カバーの特性を示す特性図である。
【図10】実施の形態5に係る電源基板及びカバー部の縦断面模式図である。
【図11】実施の形態5に係る衝撃吸収部材の特性を示す特性図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ホース、2 手元グリップ、3 延長管、4 吸込口本体、10 掃除機本体、11 吸込口、12 本体カバー、12a リブ、13 隔壁、13a 電動送風機吸込口、14 集塵室、15 電動送風機室、16 車輪、17 排気口、18 ごみパック、20 電動送風機、20a ファン部、20b モータ部、21 モータケース、22 前部クッション部材、22a 貫通孔、22b 凹部、23 後部クッション部材、24 配線、30 電源基板、31 コネクタ、32 電解コンデンサ、33 トライアック、34 放熱板、40 カバー部、41 下部カバー、41a 切り欠き、41b 切り欠き、42 上部カバー、42a 切り欠き、42b 切り欠き、50 制振部材、51 凸部、52 衝撃吸収部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引風を発生する電動送風機の上方及び側方の少なくとも一方に設けられた電源基板と、
該電源基板を覆うカバー部とを備え、
前記カバー部は、少なくとも前記電動送風機と対向しない面が金属により形成され、
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部には、機能性ポリエステルにより形成された制振部材が設けられていることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記機能性ポリエステルにフィラーが混練されていることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部には、凸部及び凹部のうち少なくとも一方が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部は、制振合金により形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部は、金属多孔体により形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記電動送風機から前記カバー部における前記金属部分への振動伝播経路の途中に、エラストマー系の衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電気掃除機。
【請求項7】
吸引風を発生する電動送風機の上方及び側方の少なくとも一方に設けられた電源基板と、
該電源基板を覆うカバー部とを備え、
前記カバー部は、少なくとも前記電動送風機と対向しない面が金属により形成され、
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部には、凸部及び凹部のうち少なくとも一方が形成されていることを特徴とする電気掃除機。
【請求項8】
吸引風を発生する電動送風機の上方及び側方の少なくとも一方に設けられた電源基板と、
該電源基板を覆うカバー部とを備え、
前記カバー部は、少なくとも前記電動送風機と対向しない面が金属により形成され、
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部は、制振合金により形成されていることを特徴とする電気掃除機。
【請求項9】
吸引風を発生する電動送風機の上方及び側方の少なくとも一方に設けられた電源基板と、
該電源基板を覆うカバー部とを備え、
前記カバー部は、少なくとも前記電動送風機と対向しない面が金属により形成され、
前記カバー部における前記金属部分の少なくとも一部は、金属多孔体により形成されていることを特徴とする電気掃除機。
【請求項10】
吸引風を発生する電動送風機の上方及び側方の少なくとも一方に設けられた電源基板と、
該電源基板を覆うカバー部とを備え、
前記カバー部は、少なくとも前記電動送風機と対向しない面が金属により形成され、
前記電動送風機から前記カバー部における前記金属部分への振動伝播経路の途中に、エラストマー系の衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−82039(P2010−82039A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252338(P2008−252338)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】