説明

電気掃除機

【課題】
制御部をとコードリールを効率よく冷却すると共に、制御部を電動送風機の排気に含まれる塵埃から保護する。
【解決手段】
前側には塵埃を蓄積する塵埃室が、後側には少なくとも制御部とコードリールと電気送風機を搭載する電気送風機室が形成される下ケースと、前記下ケースの上部を覆う上ケースを有し、電動送風機は、少なくともファン部とモーター部と該モーター部を覆うモーターカバーを有し、該ファン部には空気を吸引する吸引口が開口し、該モーターカバーには吸引した空気を排気する第1の排気口と第2の排気口が開口し、第1の排気口から排出された排気は制御部を冷却し、第2の排気口から排出された排気はコードリールを冷却するように電気掃除機の本体を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機内部の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動送風機の排気を利用して制御部である制御回路基板及び電源コード(コートリール)を冷却する構造として、モーターカバーと仕切り板とで排気風路を構成し、この風路内部に回路基板とこの回路基板に取付けられた放熱板を設け、更に、この排気風路の放熱板の下流で電源コードへの風路を分岐したものがある。
また、排気風路内部の回路基板を保護する為に、基板の排気風路側の表面をシートで覆うものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−167335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、電動送風機の排気風路の内部に制御基板が設けられるので、電動送風機から排出されるカーボン等の微細塵が基板上に蓄積する恐れがあり、制御基板の寿命の短命化や、回路内部での短絡の恐れから信頼性が低下する。
また、排気風側の表面をシートで覆う構成も開示されているが、風路内部は気流が複雑であり、かつ、風圧が強いことから、シートの隙間からの微細塵の進入や基板面からシートが剥離する恐れがある。
更に、電源コードを冷却する排気は、放熱板の下流側で分岐した部分から導入することから、放熱板を冷却して温度が上昇した排気が、電源コードを冷却する為、電源コードを効率よく冷却することが難しい。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、電動送風機内部の冷却性能を向上させる電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する為には、前側には塵埃を蓄積する塵埃室が、後側には少なくとも制御部とコードリールと電気送風機を搭載する電気送風機室が形成される下ケースと、前記下ケースの上部を覆う上ケースを有し、電動送風機は、少なくともファン部とモーター部と該モーター部を覆うモーターカバーを有し、該ファン部には空気を吸引する吸引口が開口し、該モーターカバーには吸引した空気を排気する第1の排気口と第2の排気口が開口し、第1の排気口から排出された排気は制御部を冷却し、第2の排気口から排出された排気はコードリールを冷却するように電気掃除機の本体を構成する。
【発明の効果】
【0007】
以上のように各部を構成すれば、制御部を構成する制御回路基板及び電源コードのいずれも効率よく冷却することができると共に、制御回路基板を電気送風機の排気に含まれるカーボン等の微細塵から隔離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本体側面断面図
【図2】本体下ケース斜視図(左上後方からの斜視図)
【図3】モーターカバーの組立状態断面図
【図4】本体上面図
【図5】電動送風機のユニットの組立状態斜視図(右上後方からの斜視図)
【図6】本体背面図
【図7】モーターカバーの斜視図(左下斜め方向から見た図)
【図8】モーターカバーの斜視図(右斜め上方向から見た図)
【図9】円筒部と遮蔽板の関係を示す模式図
【図10】電気掃除機の全体図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図10を参照すると、電気掃除機Cは、本体1とホース51と延長パイプ52と床用吸引具53から構成されている。
本体1の前側には、塵埃を本体1に案内する蛇腹状のホース51がホース差込口に接続されている。このホース51には、塵埃を本体1に案内する延長パイプ52と結合部で結合接続されている
そして、延長パイプ52の先端に形成された接続部には、被清掃面から直接塵埃を吸引する床ブラシ等を有する床用吸引具53が着脱自在に取り付けられる。
【0010】
次に、図1〜9を参照して、本体1の構成について説明する。
本体1の外郭は、合成樹脂により形成される下ケース7と上ケース8と蓋体6から成り、本体下ケース7の内部に各部が組み込まれた状態で、本体上ケース8と蓋体6が本体下ケース7を覆うように構成されている。
本体下ケース7には、内壁7cを設けて内部を仕切ることにより、前側に吸引した塵埃を集塵する集塵室2が形成され、後ろ側に吸引力を発生させる為の電動送風機3や制御部11等を搭載する電動送風機室4が形成される。
【0011】
集塵室2は、前後左右を下ケース7に形成された壁で囲まれており、前側の壁面には塵埃を取り込む為の取り込み口7hが開口し、後ろ側の集塵室2と電動送風機室4を隔てる内壁7cには、集塵室2で塵埃が取り除かれた空気が電動送風機室4へと流れる風路となる円形の開口部7iが形成されている。
尚、集塵室2には、吸引した空気と塵埃を分離し、塵埃を貯める為の除塵部2aとして、サイクロン部や紙パックを取り付けて使用する。また、集塵室2に対して除塵部2aを着脱するための開口部7kの上部は、蓋体6により開閉自在に覆われている。
【0012】
次に、集塵室2と電動送風機室4とをつなぐ風路である開口部7iの電動送風機室4側の周縁には、電動送風機室4に突出する円筒部7jが形成されている。
そして、この円筒部7jの下側には、内壁7cの一部を後方に突出させることにより、後述する電動送風機3の前部に取付けられる前側防振材9を上方より受けて支持する防振支持体7aが形成されている。
【0013】
この防振支持体7aは、上方からみた場合、左右の端部を残して、前方向に一部弓形に切り欠かれることにより凹部7bが形成されている。
これにより、防振支持体7aの後端壁面7nの所定の部分が、円筒部7jの周縁7mより前側に入り込んだ位置関係となる。つまり、円筒部7jの下側と防振支持体7aに囲まれた、空間が形成される。
【0014】
次に、電動送風機室4には、電源コード16bを収納するコードリール部16と、掃除機の各種制御を行う制御部11と、塵埃を吸引する為の吸引力を発生させる電動送風機3が設けられる。
コードリール部16は、下ケース7に対して回転自在に軸支された巻取り部16aの外周に、電源コード16b巻回することで、電源コード16bを収納するものであり、下ケース7の底部7gに設けられている。
【0015】
そして、コードリール部16の上部前側には、後述する電動送風機3の排気風を上方より取り込む排気取込口16cが形成され、上部後ろ側には、取込んだ排気風をコードリール部16の上方に向かって外部へ排出する排気排出口16dが形成されている。
尚、排気取込口16cは、掃除機を後方より見た場合、中心より左側で、後述する制御部11と上下に重ならない位置に開口している。また、排気排出口16dは、制御部11より、後方に位置する。
【0016】
次に、制御部11は、印刷配線基板11aと、この印刷配線基板上に実装された電子部品と、この電子部品と接続されて電子部品から発生する熱を放熱するための放熱板12から構成される。
この放熱板12は、印刷配線基板11aの面に対して略垂直に設けられ、一辺に対して平行な向きで、一辺側に設けられている、また、先端部分を斜めにカットすることで斜面12aが形成されている。
これは、後述する基板上カバー5cを基板下カバー11bに組み付ける際、基板上カバー5cの開口部5fに放熱板12を通す時に、引っかかり難くするためのものである。
【0017】
そして、制御部11は、コードリール部16の上側に位置するように、基板下カバー11bを介して下ケース7に取り付けられる。この時、放熱板12は、本体の前後方向(つまり、電気掃除機の進行方向)に対して、平行な向きを向いており、掃除機を後方より見た場合、印刷配線基板11aの右端に位置する。
また、印刷配線基板11aの上側は、後述するモーターカバー5に一体に形成されている基板上カバー5cにより覆い、基板下カバーに形成された爪部11cが基板上カバー5cに嵌合することで、制御部11を保護するカバーを構成される。
【0018】
尚、印刷配線基板11aが基板上カバー5cに覆われている状態では、放熱板12は基板上カバー5cに形成された開口部5fを通して、基板上カバー5c及び基板下カバー11bに覆われた空間の外部に露出している。
この時、放熱板12は、後述する電動送風機3の右側に位置するように、開口部5f及び印刷配線基板11a上の放熱板12の位置が構成される。
【0019】
次に、電動送風機3は、ファン部Fとモーター部Mとモーターカバー5から構成されており、モーター部の駆動力によりファン部を動作させることで、吸引力を発生させる。
このファン部Fは、電動送風機3の前側に位置し、吸引力により空気を吸引する吸引口3aが、ファン部Fの前面、つまり電動送風機3の前面に開口している。
【0020】
モーターカバー5は、使用時の防音性や難燃性を確保する為のものであり、モーター部Mを覆うように設けられている。尚、モーターカバー5は、ファン部Fを覆うものであっても良い。
また、モーターカバー5は有底の円筒形状であり、底部に凹部5aが形成され、下側には上述した基板上カバー5cが下側に開口を向けた状態で、合成樹脂により一体成型で形成される。
【0021】
次に、モーターカバー5の壁面には、モーターカバー5を下ケース7に取り付けた状態で、後方から見て右側の面と左側の面に、それぞれ右開口部5d、左開口部5eが形成されている。
この左右開口部5d、5eは、開口部3aから電動送風機3内部に取り込んだ空気を排気するための開口である。
尚、右開口部5dは、放熱板12が臨む開口部5fより、前側に位置している。
【0022】
そして、左開口部5eからは、基板上カバー5の側方を通り下方向に延びる筒部5gが形成されている。
この筒部5gは、コードリール部16に形成された排気取込口16cと連通することで、基板上カバー5c内部に排気が流入しないように、電動送風機3からの排気をモーターカバー5の左下方向に導き、コードリール16の内部に電動送風機の排気を送る排気風路を形成する。
【0023】
また、モーターカバー5の前方に開口する前側開口5hには、この開口5hの下部周縁から前方に突出した遮蔽壁5bが形成されている。この遮蔽壁5bは、外形が曲線形状(弓形)である。
尚、この筒部5gも遮蔽壁5bもモーターカバー5に一体成型されたものである。これにより、モーターカバー5にこれらの機能部品を一体成型してあるので、各部の位置関係を決めることができ、また、部品点数を低減することが可能となる。
【0024】
このように構成されたモーターカバー5の内部には、まず、凹部5aに電動送風機3の振動からの振動を抑える後側防振材10が取り付けられ、この後側防振材10に、前側開口5hから挿入された電動送風機3の後端が嵌合される。
そして、電動送風機3の前部には、その外周面3rと前面3sにまたがる断面形状がL字形であるリング状の前側防振材9が設けられる。
【0025】
尚、上記のように、モーターカバー5に各部が組み付けられた状態のとき、遮蔽壁5bの前側先端位置と前側防振材9の前側端位置の関係は、遮蔽壁5bの先端と前側防振材9の先端が、側方からみて上下に重なっているか、遮蔽壁5bの先端が前側防振材9の先端より、前方に突出するように構成される。
また、本体搭載時に、遮蔽壁5bを下から見ると、遮蔽壁5bが前側防振材9の下側に位置する面9aの一部を覆った状態となる。
【0026】
以上のように、各部が搭載された下ケース7の上部を上ケース8で覆い、集塵部2aを着脱する開口部7kを蓋体6で開閉自在に覆うことにより、本体1が構成される。
また、上ケース8の後部には、左右方向に広がる帯状の領域に、複数の開口を形成することにより、電動送風機3の排気を本体1の外部に排出する為の排気口13が形成されている。尚、この排気口13は、下ケース7の後部に形成しても良い。
【0027】
次に、上記のように構成することで形成される電動送風機3からの排気風路について説明する。
図4を参照すると、電動送風機3は、後方から見て電動送風機室4の中心の位置に、搭載される。そして、モーターカバー5に右側に開口する右開口部5dから本体後部に位置する排気口13に至る部分であって、下ケース7と上ケース8と基板上カバー5cに囲まれた空間に、排気風路14が形成される。
また、この排気風路14内には、本体の前後方向に対して平行な向きを向いた状態で、放熱板12が位置している。
【0028】
以上のように排気風路14を形成することで、右開口部5dから排出された排気風は、放熱板12の熱を冷却して、排気口13から本体外部に排出される。
この時、排気風は、基板上カバー5cの上方を流れるので、制御部11が直接排気風にさらされない。従って、排気風に混入する塵埃から制御部11を保護した状態で、制御部11に実装される電子部品の冷却を行うことが可能である。
また、放熱板12は、排気風の流下方向と同じ、本体の前後方向に対して平行な向きで取り付けられているので、排気風の流れを大きく妨げることなく、冷却を行うことが可能である。
【0029】
次に、図1,図7及び図8を参照すると、モーターカバー5に左側に開口する左開口部5eから、基板上カバー5の側方を通り下方向に延びる筒部5gが形成されている。
そして、この筒部5gの下側開口部と、コードリール部16に形成された排気取込口16cが連通するように、モーターカバー5が下ケース7に取付けられることで、電動送風機3の排気を直接コードリール部16の内部に流下させる排気風路15を形成している。
そして、コードリール部16内部を流下した排気風は、排気排出口16dよりコードリール部16から電動送風機室4へ排出され、排気口13から本体外部に排出される。
【0030】
以上のように排気風路15を形成することで、左開口部5dから排出された排気風は、直接コードリール部16の内部へ流下させることができる。これにより、他の部位の冷却に用いていない排気風を電源コードの冷却に用いることが可能となり、電源コードの冷却効率を向上させることが可能となる。
また、排気風路15は、制御部11から隔絶して形成されているので、排気風による制御部11の汚染を防止できる。
【0031】
次に、本実施の形態において、モーターカバー6と基板上カバー5cは、一体成型により形成されている。このように構成することにより、部品点数を低減できる。
また、左右開口部5d、5e近傍や放熱板12を臨ませる開口部5f近傍や制御部11の電子部品近傍等、モーターカバー6の各部に、温度が異なる部位があっても、モーターカバー6が1つの部品で構成されているので、熱伝導によりモーターカバー6全体的に温度を均一に近づけることが可能である。
これにより、モーターカバー6の熱変形を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 掃除機本体、 2 集塵室、 3 電動送風機、4 電動送風機室、5 モーターカバー体、 5a 電動送風機の後側防振材収容凹部、 5b 遮蔽壁、 5c 制御基板カバー、 5d 側壁切り欠き孔、 5e 排気用孔、 5f 囲い孔、 6 蓋体、
7 本体下ケース、7a 防振材支持体、7b 切り欠き部、 7c 内壁、
8 本体上ケース、 9 電動送風機の前側防振材、10 電動送風機の後側防振材、
11 制御基板、 12 放熱板、 12a 斜面、 13 本体排気口、
16 電源コードリール、16a 電源コード、51 ホース、 52 延長パイプ、 53 吸い込み口体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側には塵埃を蓄積する塵埃室が、後側には制御部と電源コードと電気送風機を搭載する電気送風機室が形成される下ケースと、前記下ケースの上部を覆う上ケースを有し、
前記電動送風機は、少なくともファン部とモーター部と該モーター部を覆うモーターカバーを有し、該ファン部には空気を吸引する吸引口が開口し、該モーターカバーには吸引した空気を排気する第1の排気口と第2の排気口が開口し、
前記第1の排気口から排出された排気は前記制御部を冷却し、前記第2の排気口から排出された排気は前記電源コードを冷却することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記制御部は、印刷配線基板と該印刷配線基板に実装される電子部品と該電子部品の熱を放熱する放熱板を有し、周囲を基板カバーにより覆われており、前記放熱板の一部は該基板カバーで覆われた空間から外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記基板カバーは、前記制御部を上方から覆う基板上カバーと下方から覆う基板下カバーから成り、前記モーターカバーと前記基板上カバーは一体成型により形成されたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかの電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−10933(P2011−10933A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158705(P2009−158705)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】