説明

電気接続箱

【課題】電気接続箱の内部の水滴を円滑に排出できる一方、外部からの水等の侵入を確実に防止できる簡素な排水構造を提供する。
【解決手段】電気接続箱は、ハウジング2と、排水路形成部材5と、を備える。排水路形成部材5は、ハウジング2の底壁3に装着される。排水路形成部材5には、第1開口11と、第2開口12と、排水路6と、が形成されている。ハウジング2の内部に配置された第1開口11と、ハウジング2の外部に配置された第2開口12とは、排水路6によって繋がれている。排水路6の内部において、当該排水路6の側壁から突出するように複数のリブ21,22が形成されている。そして、第1開口11、第2開口12、及びリブ21,22を上下方向(第1開口11と第2開口12とが接続される方向)で投影したときに、第1開口11と第2開口12との間には重複部分が形成され、その重複部分の全部が何れかのリブ21,22によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に備えられる電気接続箱の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電気接続箱においては、その内部で結露等により水滴が発生することがある。この水滴が電気接続箱の内部に長時間留まっていると、内部の電気部品を腐食させたり、回路間でのリークを発生させたりするため、水滴を外部に適切に排出する必要がある。従って、そのための排水構造を有する電気接続箱の構成が従来から提案されている。
【0003】
特許文献1は、この種の電気接続箱を開示する。特許文献1の電気接続箱においては、ケース底面部の略中央の下端に排水穴を設ける一方、その排水穴の周囲に外周枠をケース底壁より突設し、外周枠内に邪魔板部を突設している。特許文献1は、この構成により、排水穴への外部からの浸水を防止できるとしている。
【0004】
また、特許文献2に開示される電気接続箱においては、底壁に設けた水抜き孔に、弾性変形可能な樹脂製のクランプが組み付けられている。このクランプは、水抜き孔の開口部及びその周辺を広く覆う板部を有している。また、このクランプは上下にスライド可能に構成されており、クランプを押し上げる力が作用すると、板部が底壁の外面に密着して水抜き孔を閉鎖するように構成されている。特許文献2は、この構成により、泥等が掛かった場合でも水抜き孔が詰まることがなく、安定して排水ができ、かつ外部からの水の侵入を防止できるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4063020号公報
【特許文献2】特開2001−95129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成は、外部からの水等が邪魔板部にぶつかるようにはなっているものの、水や泥等が排水穴を介して内部に侵入することを確実に防止できるとは言いがたい。従って、車両が跳ね上げる水や泥が排水穴の開口部に大量に掛かるような場合は、水や泥の侵入を防止し切れず、内部の電気部品に悪影響を与えるおそれがあった。
【0007】
一方、上記特許文献2は、可動部品であるクランプを有しているため、可動部分に泥等を噛み込むことでスライド動作が不安定になることがあり、耐久性の点で課題があった。また、クランプが有する板部が水抜き孔の開口から大きく周囲に張り出すように構成されているため、コンパクトな構成を実現する上で限界があり、周囲の部材と干渉させないようにレイアウトを設計することが困難な場合があった。更には、クランプが有する板部に水が跳ね返って、その跳ね返った水が水抜き穴から内部に侵入するおそれもあり、より確実な防水を実現する観点からも改善の余地が残されていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、電気接続箱の内部の水滴を円滑に排出できる一方、外部からの水等の侵入を確実に防止できる簡素な排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の電気接続箱が提供される。即ち、この電気接続箱は、ハウジングと、弾性部材と、を備える。前記ハウジングは、底壁を有する。前記弾性部材は、前記底壁に装着される。前記弾性部材には、第1開口と、第2開口と、排水路と、が形成されている。前記第1開口は、前記ハウジングの内部に配置される。前記第2開口は、前記ハウジングの外部に配置される。前記排水路は、前記第1開口と前記第2開口とを繋ぐように構成される。前記排水路の内部において、当該排水路の側壁から突出するように1又は複数のリブが形成されている。前記第1開口、前記第2開口、及び前記リブを、前記第1開口と前記第2開口とが接続される方向である開口接続方向で投影したときに、前記第1開口と前記第2開口との間には重複部分が形成され、その重複部分の全部が前記リブによって覆われている。
【0011】
これにより、第2開口から排水路を通じて水がハウジング内へ逆流することを防止できる、簡素でコンパクトな排水構造を実現できる。また、弾性部材の内部に排水構造を作り込むことができるので、排水まわりの構成を小型化でき、周辺レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0012】
前記の電気接続箱においては、前記リブは、前記第1開口から前記排水路に入ってきた水を受けるために、先端に近づくに従って前記第2開口に近づくように傾斜した伝い面を有していることが好ましい。
【0013】
これにより、第1開口から排水路に入ってリブに当たった水を、第2開口へスムーズに排出することができる。
【0014】
前記の電気接続箱においては、前記リブは、前記第2開口から前記排水路に入ってきた水を受けるために、先端に近づくに従って前記第2開口に近づくように傾斜した返し面を有していることが好ましい。
【0015】
これにより、第2開口から排水路に入ってリブに当たった水を、第2開口へスムーズに戻すことができる。
【0016】
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記リブは高さを異ならせて複数配置されている。複数の前記リブは、前記開口接続方向で投影したときに互いに重複する部分を有する。
【0017】
これにより、水の逆流の防止を確実にするとともに、排水構造のコンパクト化を実現することができる。
【0018】
前記の電気接続箱においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1開口はL字状に形成される。前記第2開口は、前記第1開口とは向きを180°異ならせたL字状に形成される。前記第1開口、前記第2開口、及び前記リブを前記開口接続方向で投影したときに、前記第1開口の端部と前記第2開口の端部とが互いに重複しており、当該重複部分に前記リブが配置されている。
【0019】
これにより、第1開口及び第2開口の形状を余り複雑化させることなく、逆流を確実に防止できる排水構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】電気接続箱における排水構造を詳細に示す拡大斜視図。
【図3】排水路形成部材の構造を示す拡大図。
【図4】排水路形成部材の第1開口、第2開口及びリブ等を上下方向に投影した投影図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る電気接続箱1の全体的な構成を示す斜視図、図2は電気接続箱1の排水構造を詳細に示す拡大斜視図である。図3は排水路形成部材5の構造を示す拡大図、図4は排水路形成部材5の第1開口11、第2開口12及びリブ21,22等を上下方向に投影した投影図である。
【0022】
図1に示す電気接続箱1は、例えば自動車のエンジンルーム内に配置されるジャンクションボックスとして構成されている。この電気接続箱1はハウジング2を備えており、このハウジング2は、上カバーと下カバーを備えている。なお、図1には下カバーのみが描かれている。
【0023】
ハウジング2(下カバー)は、合成樹脂を成形することで構成されている。このハウジング2は、電気接続箱1の収容物の下側を覆う底壁3を有している。この底壁3には取付孔4が形成されている。また、この取付孔4には排水路形成部材(弾性部材)5が装着されており、この排水路形成部材5の部分において電気接続箱1の排水構造が構成されている。
【0024】
排水路形成部材5は、ゴム等の弾性を有する素材で構成されており、角丸4角形の断面を有する柱状に成形されている。排水路形成部材5の外周面の上端部分は、前記取付孔4の内壁に密着するように取り付けられている。従って、排水路形成部材5は、前記底壁3から若干の長さだけ下方へ突出するように配置される。
【0025】
また、この排水路形成部材5の内部には、排水路6が上下方向に形成されている。この排水路6により、ハウジング2内部の水を外部に排出することができるようになっている。
【0026】
図2には、図1における取付孔4及び排水路形成部材5の構成が詳細に示されている。なお、図2はハウジング2の内側からやや下向きに見た図であり、底壁3の一部のみが描かれている。また、図2においては、排水路形成部材5の構成等を明確に示すために、本来は実線で描かれるべきハウジング2(底壁3)を鎖線で透視的に図示している。
【0027】
図2に示すように、排水路形成部材5の上面には第1開口11が形成され、下面には第2開口12が形成されている。そして、前記排水路6は、第1開口11と第2開口12とを上下方向に繋ぐように構成されている。第1開口11はハウジング2の内側に露出しており、第2開口12はハウジング2の外部に露出している。
【0028】
第1開口11はL字状に形成されており、第2開口12もL字状に形成されている。ただし、第1開口11及び第2開口12は、互いに180°向きが異なるように配置されている。また、第1開口11と第2開口12は、上下方向に位置がほぼ対応するように配置されている(第2開口12が第1開口11の真下に配置されている)ので、上下方向にほぼ真っ直ぐに形成した排水路6によって両者を接続することができる。
【0029】
排水路6の上下方向中途部において、その内壁(側壁)からは、2つのリブ、即ち第1リブ21及び第2リブ22が突出されている。2つのリブ21,22は互いに高さを異ならせて配置されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、第1リブ21は、L字状に屈曲された第1開口11の一端部に相当する位置に配置され、第2リブ22は、第1開口11の他端部に相当する位置に配置されている(図4も併せて参照)。また、第2開口12との位置関係について言えば、第1リブ21は、L字状に屈曲された第2開口12の一端部に相当する位置に配置され、第2リブ22は、第2開口12の他端部に相当する位置に配置されている。
【0031】
それぞれのリブ21,22の上面(伝い面25)は、先端に近づくに従って下方となる傾斜状に形成されている。これにより、第1開口11から伝い面25に落下した水滴を下方の第2開口12側へスムーズに流すことができる。また、それぞれのリブ21,22の下面(返し面26)についても、先端に近づくに従って下方となる傾斜状に形成されている。これにより、第2開口12から上方へ侵入し、返し面26に付着した水滴を、下方の第2開口12側へスムーズに戻すことができる。
【0032】
なお、L字状に形成された第1開口11の屈曲部分に相当する位置において、前記排水路6の下端部には受け面31が形成されている。この受け面31は、第2開口12に近づくに従って下方となるように緩やかな傾斜状に形成されている。従って、第1開口11の折れ曲がっている角の部分からリブ21,22をすり抜けるようにして排水路6を落下した水滴は、上記受け面31によって受け止められ、第2開口12に導かれて排出される。
【0033】
図4は、排水路形成部材5に形成された、第1開口11、第2開口12、第1リブ21、第2リブ22、及び受け面31について、水平面に対して上下方向に投影した投影図である。なお、第1開口11と第2開口12とが上下方向に接続されていることは前述のとおりであるので、図4は、第1開口11と第2開口12とが接続される方向(以下、「開口接続方向」という)に沿って投影した図であると表現することもできる。
【0034】
この投影図で考えると、第1開口11(太い実線)と第2開口12(太い破線)とは、それぞれの端部同士が重複するように配置されている。そして、その重複部分を必ず何れかのリブ21,22が覆うように、それぞれのリブ21,22(鎖線)が配置されている。なお、図4において、リブ21,22の領域には点線によるハッチングが施されている。
【0035】
このようなレイアウトにより、自動車の走行によって跳ね上げられた水や泥等が第2開口12から排水路6内に入り込んだとしても、第1開口11を通過できないか、リブ21,22に当たって落下することとなるので、水や泥が第1開口11からハウジング2内に侵入することを確実に防止できる。また、第1開口11及び第2開口12の形状や、排水路6内の構成を特に複雑にすることなく、上記のような防水効果を得ることができる。
【0036】
また、前記リブ21,22は上述のとおり高さを異ならせて配置され、また、上下方向で投影したときに、リブ21,22の先端同士が一部重複する位置関係にある(図4を参照)。従って、ハウジング2内への水や泥の侵入を防止する効果が一層優れたものとなっており、また、コンパクトな排水構造を実現することができる。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態の電気接続箱1は、ハウジング2と、排水路形成部材5と、を備える。ハウジング2は、底壁3を有する。排水路形成部材5は、底壁3に装着される。排水路形成部材5には、第1開口11と、第2開口12と、排水路6と、が形成されている。第1開口11は、ハウジング2の内部に配置される。第2開口12は、ハウジング2の外部に配置される。排水路6は、第1開口11と第2開口12とを繋ぐように構成されている。排水路6の内部において、当該排水路6の側壁から突出するように複数のリブ21,22が形成されている。そして、第1開口11、第2開口12、及びリブ21,22を上下方向(前記開口接続方向)で投影したときに、第1開口11と第2開口12との間には重複部分が形成されており、その重複部分の全部が何れかのリブ21,22によって覆われている。
【0038】
これにより、第2開口12から排水路6を通じて水がハウジング2内へ逆流することを防止できる、簡素でコンパクトな排水構造を実現できる。また、短い柱状に形成された排水路形成部材5の内部に排水構造を作り込むことができるので、排水まわりの構成を小型化でき、周辺レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態の電気接続箱1において、リブ21,22は、第1開口11から排水路6に入ってきた水を受けるために、先端に近づくに従って下方の第2開口12に近づくように傾斜した伝い面25を有している。
【0040】
これにより、第1開口11から排水路6に入ってリブ21,22に当たった水を、自重により、下方の第2開口12へスムーズに落下させて排出することができる。
【0041】
また、本実施形態の電気接続箱1において、リブ21,22は、第2開口12から排水路6に入ってきた水を受けるために、先端に近づくに従って下方の第2開口12に近づくように傾斜した返し面26を有している。
【0042】
これにより、第2開口12から排水路6に入ってリブ21,22に当たった水や泥を、下方の第2開口12へスムーズに落下させて戻すことができる。
【0043】
また、本実施形態の電気接続箱1において、リブ21,22は高さを異ならせて複数配置されている。そして、複数のリブ21,22は、上下方向で投影したときに互いに重複する部分を有する。
【0044】
これにより、水や泥等の逆流の防止を確実にするとともに、排水構造のコンパクト化を実現することができる。
【0045】
また、本実施形態の電気接続箱1において、第1開口11はL字状に形成され、第2開口12は、第1開口11とは向きを180°異ならせたL字状に形成される。第1開口11、第2開口12、及びリブ21,22を上下方向で投影したときに、第1開口11の端部と第2開口12の端部とが互いに重複しており、当該重複部分にリブ21,22が配置されている。
【0046】
これにより、第1開口11及び第2開口12の形状を余り複雑化させずに、逆流を確実に防止できる排水構造を実現することができる。
【0047】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、例えば、排水路形成部材5、排水路6、第1開口11、第2開口12の形状は、上記の実施形態に限定されず事情に応じて適宜変更することができる。また、リブ21,22の形状、個数、配置についても適宜変更することができる。
【0048】
特に、上記実施形態においては、第1開口11の真下に第2開口12が配置され、両者が排水路6によって鉛直上下方向で接続されるレイアウトとなっているが、これに限定されず、第1開口と第2開口とが排水路によって若干斜め方向に接続される構成に変更しても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 電気接続箱
2 ハウジング
3 底壁
4 取付孔
5 排水路形成部材(弾性部材)
6 排水路
11 第1開口
12 第2開口
21,22 リブ
25 伝い面
26 返し面
31 受け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を有するハウジングと、
前記底壁に装着される弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材には、
前記ハウジングの内部に配置される第1開口と、
前記ハウジングの外部に配置される第2開口と、
前記第1開口と前記第2開口とを繋ぐ排水路と、
が形成されており、
前記排水路の内部において、当該排水路の側壁から突出するように1又は複数のリブが形成されており、
前記第1開口、前記第2開口、及び前記リブを、前記第1開口と前記第2開口とが接続される方向である開口接続方向で投影したときに、
前記第1開口と前記第2開口との間には重複部分が形成されており、
その重複部分の全部が前記リブによって覆われていることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱であって、
前記リブは、前記第1開口から前記排水路に入ってきた水を受けるために、先端に近づくに従って前記第2開口に近づくように傾斜した伝い面を有していることを特徴とする電気接続箱。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気接続箱であって、
前記リブは、前記第2開口から前記排水路に入ってきた水を受けるために、先端に近づくに従って前記第2開口に近づくように傾斜した返し面を有していることを特徴とする電気接続箱。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の電気接続箱であって、
前記リブは高さを異ならせて複数配置されており、
複数の前記リブは、前記開口接続方向で投影したときに互いに重複する部分を有することを特徴とする電気接続箱。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の電気接続箱であって、
前記第1開口はL字状に形成され、
前記第2開口は、前記第1開口とは向きを180°異ならせたL字状に形成され、
前記第1開口、前記第2開口、及び前記リブを前記開口接続方向で投影したときに、前記第1開口の端部と前記第2開口の端部とが互いに重複しており、当該重複部分に前記リブが配置されていることを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−211852(P2011−211852A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78233(P2010−78233)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】