説明

電気機器キャビネット

【課題】 フロントパネルの底板部に位置合わせ用の凸部を形成する場合に、その凸部のの形成箇所に目立つような「ひけ」や凹所が存在しないような対策を講じることによって電気機器キャビネットの外観を良好に保つ。
【解決手段】 キャビネット本体2を形成するシャーシ3とフロントパネル5とを有し、シャーシ3に、フロントパネル5の底板部55が重なり合う前向き突片31が備わり、その前向き突片31の凹入部7に嵌合してシャーシ3とフロントパネル5とを横方向で位置合わせする凸部6がフロントパネル5の底板部55に備わっている。凸部6に肉盗み凹所63を形成することにより、凸部63の形成箇所での「ひけ」の発生を抑え、かつ、目立つような凹所の存在をなくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器キャビネット、詳しくは、横長箱形のキャビネット本体の一要素であるシャーシと樹脂成形体でなるフロントパネルとの横方向での位置決めに用いられる凸部がフロントパネルに一体成形されている場合に、その凸部の形成箇所が外部から見えることによるフロントパネルの外観の低下を防ぐ対策を講じた電気機器キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は電気機器キャビネットの全体外観図である。同図の電気機器キャビネット1は、ディスク状のメディアを使用対象とする光ディスク装置やテープカセットを使用対象とする磁気テープ装置などを内蔵したオーディオビジュアル複合機(AV複合機)についてのキャビネットである。このキャビネット1は、シャーシ3の上にトップカバー4を合わせることによって形成された横長箱形のキャビネット本体2と、このキャビネット本体2の開放した前端に装備された樹脂成形体でなるフロントパネル5とを備えていて、フロントパネル5には、光ディスク装置のトレイが出退されるトレイ出入口51や磁気テープ装置に対してテープカセットを出し入れするカセット着脱口52のほか、光ディスク装置や磁気テープ装置についての各種のモード設定ボタンを含むボタン群53などが装備されている。
【0003】
この電気機器キャビネット1において、シャーシ3とフロントパネル5とは、フロントパネル5側に設けられている凸部(図4に現れていない)をシャーシ側に設けられている凹入部(図4に現れていない)に嵌合させることによって両者を横方向で位置合わせした上で、フロントパネル5に設けられた左右の係合片(図4に現れていない)などをシャーシ3側の係合突起(図4に現れていない)に係合させることによってフロントパネル5をシャーシ3に結合している。
【0004】
図5に参考例としての電気機器キャビネットに採用されたフロントパネル5の概略縦断側面図で示してある。このフロントパネル5は、その底板部55の横方向1箇所に上記した位置合わせ用の凸部6を備えていて、その凸部6が、底板部55の1箇所を肉厚にすることによって中実に形成されている。
【0005】
一方、図6は他の参考例としての電気機器キャビネットに採用されたフロントパネル5の凸部6の形成箇所を拡大して示した概略縦断側面図である。同図の事例では、凸部6の形成箇所でフロントパネル5の底板部55の下面側に肉盗み凹所61を形成してある。
【0006】
これに対し、従来より、電気機器キャビネットをシャーシとトップカバーとフロントパネルとによって構成することは周知である(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。また、従来より、フロントパネルとシャーシとを係合構造によって結合することが知られ(たとえば、特許文献3参照)、さらにフロントパネル取付枠に対するフロントパネルの上下方向の取付基準面を定めることについての研究も行われている(たとえば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−217556号公報
【特許文献2】特開2005−136040号公報
【特許文献3】特開2002−324982号公報
【特許文献4】特開平6−89559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5を参照して説明したような形態で凸部6を形成すると、凸部6の形成箇所で底板部55の下面56に成形材料である樹脂の収縮などに起因する「ひけ」と呼ばれる微小凹みが発生し、その「ひけ」が目立ってフロントパネル5、ひいては電気機器キャビネット1の外観が悪くなることがある。
【0008】
また、図6のように、凸部6の形成箇所でフロントパネル5の底板部55の下面側に肉盗み凹所61を形成することにより、その凸部6の形成箇所でフロントパネル5が厚肉になることを回避しておくと、上記した「ひけ」の発生が抑制されると云えるけれども、その反面で、肉盗み凹所61がフロントパネル5の外面(下面)に露呈するために、その肉盗み凹所61が目立ってフロントパネル5、ひいては電気機器キャビネット1の外観が悪くなることがある。
【0009】
これに対し、上掲の各特許文献には、シャーシとフロントパネルとを横方向で位置合わせするための凸部についての記述が見当たらないことから、それらの特許文献によって開示された事項を適用しても、上記した「ひけ」や肉盗み凹所61が外部から見えることによる電気機器キャビネットの外観の低下を防ぐことはできない。
【0010】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、フロントパネルの大幅な形状変更を伴わずに、上記した「ひけ」を発生や肉盗み凹所が外部から見えるというような状況を回避することのできる対策を講じることによって、それらの「ひけ」や肉盗み凹所が目立って外観が悪くなるという事態の起こらない電気機器キャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電気機器キャビネットは、トップカバーを合わせることによって前端が開放した横長箱形のキャビネット本体を形成するシャーシと、上記キャビネット本体の前端に装備される樹脂成形体でなるフロントパネルとを有している。また、上記シャーシに、上記フロントパネルの底板部の内面が重なり合う前向き突片が備わっていると共に、その前向き突片に具備された凹入部に嵌合して当該シャーシとフロントパネルとを横方向で位置合わせする凸部がフロントパネルの上記底板部に備わっている。そして、上記凸部が中空に形成され、その凸部の形成箇所で上記底板部の下面がその形成箇所の周囲の下面と面一に連続している。
【0012】
この構成であれば、凸部が中空であることにより、フロントパネルの底板部の肉厚がその凸部の形成箇所でその周囲の肉厚よりも厚くなって「ひけ」を発生するという事態が抑制される。また、「ひけ」の発生原因となる厚肉箇所を形作らないための手段として、凸部を中空にするという手段を採用したので、フロントパネルの外面の凸部の形成箇所に、目で見て目立つような凹所が形成されなくなる。以上よりも、この発明によれば、「ひけ」や凹所が目立って外観が悪くなるという事態の起こる余地がなくなり、電気機器キャビネットの外観についての美観が高まる。
【0013】
本発明では、上記凸部にその後向き端面で開放する肉盗み凹所を形成することによってその凸部が中空に形成されていることが望ましい。これによれば、底板部を有するフロントパネルと共に凸部を射出成形で容易に一体成形することが可能になるだけでなく、凸部の形成箇所での厚肉箇所の面積を最少限度に抑えられるようになるために、その厚肉箇所に外観を悪くするほどの目立つような「ひけ」が発生しなくなる。
【0014】
本発明に係る電気機器キャビネットは、トップカバーを合わせることによって前端が開放した横長箱形のキャビネット本体を形成するシャーシと、上記キャビネット本体の前端に装備される樹脂成形体でなるフロントパネルとを有し、上記シャーシに、上記フロントパネルの底板部の内面が重なり合う前向き突片が備わっていると共に、その前向き突片に具備された凹入部に嵌合して当該シャーシとフロントパネルとを横方向で位置合わせする凸部がフロントパネルの上記底板部に備わっている電気機器キャビネットにおいて、上記凸部が平面視略矩形に形成され、その凸部にその後向き端面で開放する肉盗み凹所を形成することによってその凸部が中空に形成されていると共に、その凸部の形成箇所で上記底板部の下面がその形成箇所の周囲の下面と面一に連続している、という構成を採用することによっていっそう具体化される。この発明の作用は、後述する実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る電気機器キャビネットによれば、そのフロントパネルの底板部の凸部の形成箇所に目立つような「ひけ」が存在せず、目立つような凹所も存在しないので、それらの「ひけ」や凹所が目立ってフロントパネルひいては当該電気機器キャビネットの外観を悪くするという状況が起こり得ない。また、凸部をフロントパネルと一体に樹脂で成形することが可能である。したがって、外観が良好な電気機器キャビネットを安価に提供することが可能になるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る電気機器キャビネットに採用されているフロントパネル5の概略縦断側面図、図2は上記キャビネット1の要部の概略水平断面図、図3は位置合わせのための凸部6と凹入部7とを示した概略斜視図である。
【0017】
図1のフロントパネル5は、図4を参照して説明したフロントパネル5と同様に、トップカバー4を合わせることによってキャビネット本体2を形成するシャーシ3に結合される。図1及び図2を併せ見ることによって判るように、フロントパネル5の底板部55には、その横方向Wの1箇所に平面視略矩形の凸部6が形成されている。この凸部6は、その後向き端面62で開放して前方へ向けて凹入している肉盗み凹所63を形成することによって中空となされている。そして、凸部6がそのような肉盗み凹所63を有して中空に形成されているために、その凸部6が図3に示したように、平面視略矩形の天板部64とその天板部64の左右両端に連設された脚片部65,65とを有する偏平な門形形状を形作っている。また、凸部6の形成箇所では、フロントパネル5の底板部55の肉厚が上記した脚片部65,65の形成箇所を除く部分で同一に定められ、さらに、凸部6の形成箇所では、フロントパネル5の底板部55の下面56がその周囲の下面に対して面一に連続している。凸部6がこのような構成を有していると、その凸部6をフロントパネル5の底板部55に樹脂で一体成形した場合に、部分的な厚肉箇所が発生することに起因する「ひけ」が生じないだけでなく、肉盗み凹所63がフロントパネル5の外部から見えることもない。ここで、凸部6の脚片部65,65の形成箇所では、その脚片部65,65の高さ分だけフロントパネル5の底板部55の肉厚が増加しているけれども、それらの脚部65,65の厚さを薄く定めることによって底板部55の下面に「ひけ」が発生することを回避することができた。
【0018】
図2のように、シャーシ3の前端に前向き突片31が備わっていて、その前向き突片31に凹入部7が形成されている。この凹入部7は、上記したフロントパネル5側の凸部6と嵌合することによってシャーシ4とフロントパネル5とを横方向Wで位置合わせすることに用いられる。すなわち、図5のように、フロントパネル5側の凸部6を、シャーシ3側の凹入部7に対向させた状態から、矢印のように、フロントパネル5の底板部55をシャーシ3の下側に差し込んでその底板部55の内面をシャーシ3に重ね合わせることと併せて、凸部6を凹入部7に嵌合させると、凸部6が凹入部7に横方向Wに動かないように位置決めされてシャーシ4とフロントパネル5とが横方向Wで位置合わせされる。こうしてシャーシ4とフロントパネル5とを横方向Wで位置合わせした上で、フロントパネル5の複数箇所に設けられている係合片8(図2参照)をシャーシ3側の係合突起9に係合させることによってフロントパネル5をシャーシ3に結合する。
【0019】
この実施形態によると、上記したようにフロントパネル5側の凸部6の形成箇所で「ひけ」が生じず、凸部6の肉盗み凹所63が外部から見えることもないので、図4に矢印Fで示したようにキャビネット12を正面から見た場合でも、フロントパネル5の下側で「ひけ」や凹所が目立ってフロントパネル5ひいてはキャビネット1の外観が悪くなるという状況が起こり得なくなり、キャビネット1がすっきりとしたデザインに仕上がった。また、凸部6の肉盗み凹所63を隠して外部から見えないようにするために、その凸部6を中空にするという考え方の下で肉盗み凹所63を形成したことにより、その凸部6をフロントパネル5と共に一体成形することも容易に行うができることになり、その結果、フロントパネル5やキャビネット1の量産性を維持することも可能になった。
【0020】
なお、図1〜図6においては、説明の便宜上、同一又は相応する要素には同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る電気機器キャビネットに採用されているフロントパネルの概略縦断側面図である。
【図2】キャビネットの要部の概略水平断面図である。
【図3】位置合わせのための凸部と凹入部とを示した概略斜視図である。
【図4】電気機器キャビネットの全体外観図である。
【図5】参考例としての電気機器キャビネットに採用されたフロントパネルの概略縦断側面図である。
【図6】他の参考例としての電気機器キャビネットに採用されたフロントパネルの凸部の形成箇所を拡大して示した概略縦断側面図である。
【符号の説明】
【0022】
2 キャビネット本体
3 シャーシ
4 トップカバー
5 フロントパネル
6 凸部
7 凹入部
31 前向き突片
55 フロントパネルの底板部
56 底板部の下面
62 凸部の後向き端面
63 肉盗み凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップカバーを合わせることによって前端が開放した横長箱形のキャビネット本体を形成するシャーシと、上記キャビネット本体の前端に装備される樹脂成形体でなるフロントパネルとを有し、上記シャーシに、上記フロントパネルの底板部の内面が重なり合う前向き突片が備わっていると共に、その前向き突片に具備された凹入部に嵌合して当該シャーシとフロントパネルとを横方向で位置合わせする凸部がフロントパネルの上記底板部に備わっている電気機器キャビネットにおいて、
上記凸部が平面視略矩形に形成され、その凸部にその後向き端面で開放する肉盗み凹所を形成することによってその凸部が中空に形成されていると共に、その凸部の形成箇所で上記底板部の下面がその形成箇所の周囲の下面と面一に連続していることを特徴とする電気機器キャビネット。
【請求項2】
トップカバーを合わせることによって前端が開放した横長箱形のキャビネット本体を形成するシャーシと、上記キャビネット本体の前端に装備される樹脂成形体でなるフロントパネルとを有し、上記シャーシに、上記フロントパネルの底板部の内面が重なり合う前向き突片が備わっていると共に、その前向き突片に具備された凹入部に嵌合して当該シャーシとフロントパネルとを横方向で位置合わせする凸部がフロントパネルの上記底板部に備わっている電気機器キャビネットにおいて、
上記凸部が中空に形成され、その凸部の形成箇所で上記底板部の下面がその形成箇所の周囲の下面と面一に連続していることを特徴とする電気機器キャビネット。
【請求項3】
上記凸部にその後向き端面で開放する肉盗み凹所を形成することによってその凸部が中空に形成されている請求項2に記載した電気機器キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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