説明

電気炉設備

【課題】 電源装置の稼動効率を向上させて電源容量の低減による設備コストの低下を実現した電気炉設備を提供する。
【解決手段】 3基の電気炉の炉体1A,1B,1Cに対して設けられた2基の電源装置2A,2Bと、各電源装置2A,2Bを各炉体1A〜1Cへ選択的に接続する切替装置3A,3B,3C,3Dと、各炉体1A〜1Cへの通電時間を前後にずらして、各電源装置2A,2Bの非通電むだ時間を最小にするように切替装置3A〜3Dによって各電源装置2A,2Bを互いに異なる各炉体1A〜1Cに順次切替接続する切替制御装置4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気炉設備に関し、特に、電源装置の稼動の効率化を図った電気炉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気炉設備においては、電気炉の炉体1基に対して炉用変圧器等からなる電源装置をそれぞれ1基設けることが多い。なお、特許文献1には、二基のDCアーク炉の炉体に対して二基の電源装置から、スクラップ溶解における加熱期と精錬期をオーバラップさせるように通電することによって、受電変圧器容量の効率的利用を図ったものが示されている。
【特許文献1】特開平6−194051
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電気炉の炉体1基に対して電源装置をそれぞれ1基設ける従来の電気炉設備では、溶鋼の出鋼作業中や次チャージの材料装入作業中等には通電をすることができないため、当該電気炉用の電源装置は休止することになる。一方、近年においては出鋼−出鋼時間(T−T時間)の短い高生産性電気炉が採用されつつあるが、出鋼作業等に伴う止電時間はそれほど短縮できないことから電源装置の稼動効率が悪く、結果として、大容量の電源装置が必要となって設備コストが高くなるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、電源装置の稼動効率を向上させて電源容量の低減による設備コストの低下を実現した電気炉設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の電気炉の炉体(1A,1B,1C)に対してこれら炉体(1A〜1C)の数より少なく設けられた電源装置(2A,2B)と、各電源装置(2A,2B)を各炉体(1A〜1C)へ選択的に接続する切替装置(3A,3B,3C,3D)と、各炉体(1A〜1C)への通電時間を前後にずらして、各電源装置(2A,2B)の非通電むだ時間を最小にするように切替装置(3A〜3D)によって各電源装置(2A,2B)を互いに異なる各炉体(1A〜1C)に順次切替接続する切替制御装置(4)とを具備している。
【0006】
本発明においては、切替制御装置によって電気炉の炉体の数より少なく設けた各電源装置を互いに異なる各炉体に順次切替接続するようにしたから、電源装置の非通電むだ時間を最小にすることができる。この結果、電源装置の稼動効率が向上するから、受電容量を低減させることが可能で、設備コストを小さく抑えることができる。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の電気炉設備によれば、電源装置の稼動効率を向上させて受電容量の低減による設備コストの低下を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1には電気炉としてのDCアーク炉の電気系統図を示す。図1において、受電変圧器52の一次側は主遮断器51を介して三相交流電源53に接続されており、受電変圧器52の二次側には並列に2基の電源装置2A,2Bが接続されている。各電源装置2A,2Bは副遮断器21とこれに直列に接続された炉用変圧器22およびサイリスタ23で構成されている。三相交流は各電源装置2A,2Bのサイリスタ23で直流に変換され、切替装置3A,3B,3C,3Dを介して各アーク炉の炉体1A,1B,1Cの電極棒11と炉底電極12へ供給されている。各切替装置3A〜3Dは一つの共通接点xと3つの切替接点a,b,cを備えており、共通接点xがサイリスタ23の直流出力端子に接続されるとともに、切替接点a,b,cがそれぞれ炉体1A〜1Cの電極棒11と炉底電極12に接続されている。
【0010】
各切替装置3A〜3Dは切替制御装置4によって作動を制御されており、各一対の切替装置3A,3Bおよび切替装置3C,3Dは常に同じ接点x,a,b,c間が導通させられて、給電装置2A,2Bによる給電を炉体1A〜1Cのうちの一つに対して行うように制御されている。また、切替装置3A,3Bと切替装置3C,3Dは両給電装置2A,2Bによる給電が同時に同一の炉体1A〜1Cに対して行われることがないように制御されている。
【0011】
図2には切替制御装置4で作動が制御される上記切替装置3A〜3Dによって実現される、各電源装置2A,2Bによる各炉体1A〜1Cへの給電のタイムチャートを示す。図中「A」は電源装置2Aによる給電を示し、「B」は電源装置2Bによる給電を示す。本タイムチャートは全炉合計の溶鋼生産量を267t/hに設定した場合のものであり、各炉体1A〜1Cの炉容量は100t/チャージ、T−T時間は67.5分とした。T−T(TAP−TAP)時間のうちON−TAP時間は45分、TAP−ON時間は22.5分である。TAP−ON時間のうち10分(斜線部)は出鋼や材料投入等によりどうしても通電不可能な時間であり、残る12.5分は電源切替のタイミングによって非通電となる時間である。この場合の各炉用変圧器22の容量は例えば90MVAとなり、受電容量は90×2=180MVAとなる。
【0012】
本実施形態においては、図2に示すように、45分の通電時間を各炉体1A〜1Cで22.5分づつ前後にずらし、電源装置2Aからの給電を炉体1C→炉体1B→炉体1Aと順次繰り返して切り替えるとともに、電源装置2Aからの給電を炉体1A→炉体1C→炉体1Bと順次繰り返して切り替えることにより、各電源装置2A,2Bの非通電むだ時間を零にしてこれら電源装置2A,2Bを効率的に使用している。
【0013】
これに対して、溶鋼生産量267t/hを、従来のように2基の炉体に対し2基の電源装置を1対1で設けて実現する場合には、アーク炉の炉容量は123t/チャージとなり、T−T時間が55分(ON−TAP時間は45分、TAP−ON時間は10分)、炉用変圧器の容量は上述の例と同様の効率を考慮して110MVAとなる。この場合の受電容量は110×2=220MVAとなり、本実施形態の受電容量が上述のように180MVAであるのに比して設備コストが大幅に増加する。
【0014】
なお、本実施形態において、アーク炉1A〜1Cの1基が炉修等により操業休止となり、残る2基に各電源装置2A,2Bからそれぞれ給電した場合、T−T時間は55分となり、全炉合計の溶鋼生産量は218t/hとなる。これに対して、2基のアーク炉に対し2基の電源装置を1対1で設けた上記例においては、そのうち1基が操業を休止して1炉操業になると、全炉合計の溶鋼生産量は半分の134t/hとなって、その生産性が大きく低下してしまう。このように、本実施形態によれば、操業休止の炉体が出ても生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【0015】
以上の実施形態では電気炉の炉体3基に電源装置2基の例を説明したが、炉体4基に対して電源装置を3基設けるようにしても良く、さらには本発明は、電気炉の炉体の数よりも電源装置の数を少なくした電気炉設備に広く適用して上述の効果を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す電気炉給電設備の電気系統図である。
【図2】操業時のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0017】
1A,1B,1C…DCアーク炉の炉体、11…電極棒、12…炉底電極、2A,2B…電源装置、22…炉用変圧器、23…サイリスタ、3A,3B,3C,3C…切替装置、4…切替制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3炉以上の電気炉の炉体に対してこれら炉体の数より少なく設けられた電源装置と、前記各電源装置を前記各炉体へ選択的に接続する切替装置と、前記各炉体への通電時間を前後にずらして、前記各電源装置の非通電むだ時間を最小にするように前記切替装置によって前記各電源装置を互いに異なる前記各炉体に順次切替接続する切替制御装置とを具備する電気炉設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−170728(P2007−170728A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367558(P2005−367558)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】