説明

電気自動車用給電装置

【課題】給電作業の際に、使用者の指や給電コードが挟まるような不具合が生じにくい電気自動車用給電装置を提供する。
【解決手段】収納室7に電気自動車の給電用コンセント35、36が設けられ、給電口34より前記給電用コンセント35、36に給電コードKが取付けられるようになされた筐体1を備えた電気自動車用給電装置Pであって、前記給電口34に該給電口34を開閉するスライド扉33が設けられると共に、前記スライド扉33を下方にスライドして前記給電口34を閉止した状態において、前記スライド扉33の下方に給電口34の下部により形成される、スライド扉33の下端部の横幅より広幅の開口窓34aが残存されるようにすれば、スライド扉33と給電口34との間に使用者の指や給電コードKが挟まれる様な不具合が生じにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内部に電気自動車に搭載したバッテリーに充電するための制御回路や電源装置等を内蔵する電気自動車用給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、その内部に電気自動車に搭載したバッテリーに充電するための制御回路や電源装置等を内蔵する筐体及びそれを用いた電気自動車用給電装置については、例えば特許文献1には、開口を有し該開口内にコンセントを収容する筐体と、該筐体に設けられ上記開口を開閉可能にする蓋状のカバーと、上記カバーの開閉状態を検出する開閉検出手段と、上記コンセントにプラグが装着されているか否かを検出するプラグ検出手段と、プラグ検出手段でプラグが装着されていることを検出し、かつ、上記開閉検出手段でカバーが閉じていることを検出したときに上記コンセントに通電する通電制御手段とを備えた屋外設置式電源供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−347203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電気自動車用給電装置においては、蓋を開く場合、開けた蓋状のカバーに対して強い力が掛かった場合、使用者の不注意によってカバーが不意に閉まった場合等、カバーと筐体との間に使用者の指が挟まれるるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前記の如き課題を解消し、給電作業の際に、使用者の指や給電コードが挟まるような不具合が生じにくい電気自動車用給電装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る電気自動車用給電装置は、収納室に電気自動車の給電用コンセントが設けられ、給電口より前記給電用コンセントに給電コードが取付けられるようになされた筐体を備えた電気自動車用給電装置であって、前記給電口に該給電口を開閉するスライド扉が設けられると共に、前記スライド扉を下方にスライドして前記給電口を閉止した状態において、前記スライド扉の下方に給電口の下部により形成される、スライド扉の下端部の横幅より広幅の開口窓が残存されるようになされたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る電気自動車用給電装置において、前記筐体はその前面部の下端が後方に折曲されて傾斜底面部が形成されると共に、前記前面部から傾斜底面部にかけて給電口が形成され、前記スライド扉の下端には、前記傾斜底面部に沿って後方に折曲された傾斜折曲部が形成されているようにしてもよい。
【0008】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、給電用コンセントが設けられた収納室の床面は、前記開口窓に通じる傾斜床面となされるようにしてもよい。
【0009】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、前記スライド扉は、両側端が後方に折曲されて設けられた側壁部にスライダーが配置されると共に、前記給電口の内側縁部に沿ってスライドレールが設けられ、前記スライダーがスライドレール内をスライドすることにより、前記スライド扉が上下にスライドして給電口を開閉するようにしてもよい。
【0010】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、収納室の天井面に給電用コンセントがその差込口を斜め前方に向けて設けられるようにしてもよい。
【0011】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、収納室の奥部壁面に給電用コンセントがその差込口を斜め前方に向けて設けられ、前記差込口の前方に該差込口を覆う開閉扉を設けられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電気自動車用給電装置によれば、収納室に電気自動車の給電用コンセントが設けられ、給電口より前記給電用コンセントに給電コードが取付けられるようになされた筐体を備えた電気自動車用給電装置であって、前記給電口に該給電口を開閉するスライド扉が設けられると共に、前記スライド扉を下方にスライドして前記給電口を閉止した状態において、前記スライド扉の下方に給電口の下部により形成される、スライド扉の下端部の横幅より広幅の開口窓が残存されるようになされているので、給電作業の際、給電口に使用者の指や給電コードが存在する状態でスライド扉を下ろしても、指や給電コードは開口窓にまで誘導されて、スライド扉と給電口との間に使用者の指や給電コードが挟まれる様な不具合が生じにくくなり、加えて給電する電気自動車の停止位置に応じて、給電用コンセントに接続された給電コードが開口窓内を幅方向に移動できるので、給電コードの捻れや折れ等の物理的な負荷を少なくすることができる。
【0013】
本発明に係る電気自動車用給電装置において、前記筐体はその前面部の下端が後方に折曲されて傾斜底面部が形成されると共に、前記前面部から傾斜底面部にかけて給電口が形成され、前記スライド扉の下端には、前記傾斜底面部に沿って後方に折曲された傾斜折曲部が形成されていれば、スライド扉が設定以上に降下しても、指や給電コードは開口窓に回避できるので、スライド扉と給電口との間に使用者の指や給電コードが挟まれる様な不具合が生じにくく、筐体やスライド扉に付いた雨水等の水分を開口窓に誘導して外に排出し、給電用コンセントのショート等の不具合が起こりにくくなる。
【0014】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、給電用コンセントが設けられた収納室の床面は、前記開口窓に通じる傾斜床面となされていれば、収納室内に雨水が入り込んでも、開口窓へ誘導して、外に排出し、給電用コンセントのショート等の不具合が起こりにくくなる。
【0015】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、前記スライド扉は、両側端が後方に折曲されて設けられた側壁部にスライダーが配置されると共に、前記給電口の内側縁部に沿ってスライドレールが設けられ、前記スライダーがスライドレール内をスライドすることにより、前記スライド扉が上下にスライドして給電口を開閉するようにすれば、スライダーの配置位置によって、正面視においてスライド扉の側端と給電口の内側端縁とが重なる部分の前後方向の隙間を狭くすることができるので、この隙間に使用者の指が挟まれるような不具合がおこりにくくなる。
【0016】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、収納室の天井面に給電用コンセントがその差込口を斜め前方に向けて設けられるようにすれば、差込口にカバー等がなくても差込口に雨水等が直接当たりにくくなると共に、外から差込口が目立ちやすくなる。
【0017】
また本発明に係る電気自動車用給電装置において、収納室の奥部壁面に給電用コンセントがその差込口を斜め前方に向けて設けられ、前記差込口の前方に該差込口を覆う開閉扉を設けられるようにすれば、外から開閉扉が目立ちやすくなると共に、給電時のみ開閉扉を開けばよいので、差込口に雨水等が直接当たりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る筐体を用いて形成した電気自動車用給電装置の一実施形態を示す、斜視図の概略図である。
【図2】図1に示す実施形態の、(イ)は正面図、(ロ)は側面図である。
【図3】図2に示す実施形態の、(イ)はA−A断面の概略図、(ロ)はB−B断面の概略図である。
【図4】図1に示す実施形態の、(イ)は筐体本体を形成する枠材を分解した状態を説明する正面図、(ロ)は筐体本体の側面図である。
【図5】図1に示す実施形態の下部を示す部分断面の概略正面図である。
【図6】図1に示す実施形態の使用状態を示す主要部の斜視図である。
【図7】図1に示す実施形態の下側扉を示す正面図である。
【図8】図7に示す実施形態のC−C端面における概略説明図である。
【図9】図7に示す実施形態のD−D断面図である。
【図10】図1に示す実施形態のアンテナカバーを示す部分切欠正面図である。
【図11】図1に示す実施形態の設置手順を示す説明図である。
【図12】図1に示す実施形態の鋼管支柱の要部を示す、(イ)は正面視断面図、(ロ)は平面図である。
【図13】図1に示す実施形態の要部を示す平面視における説明図であり、(イ)は筐体を左向きに回動した状態、(ロ)は筐体を正対させた状態、(ハ)は筐体を右に回動した状態を示す。
【図14】図1に示す実施形態の表示装置の表示板を示す正面図である。
【図15】図1に示す実施形態の表示装置の表示板とフレーム材と覆いを除いた状態を示す正面図である。
【図16】図1に示す実施形態の表示装置の、(イ)は7セグメント表示を現出させるLEDが取付けられた主要部の一部切欠横断面図、(ロ)は仕切板が取付けられた部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
本発明に係る電気自動車用給電装置Pは、後述する表示装置6が内装されているものであって、支柱カバー23によって、その外面が隠蔽された鋼管支柱2が設置面Gに立設され、該鋼管支柱2上端に、内部に電気自動車に搭載したバッテリーに充電するための給電装置3が設けられた筐体1が取付けられている。
【0020】
筐体1は、図1〜3に示す如く、正面視略矩形となされ、筐体本体11の前面には上下に2個の開口部12、13が設けられ、それぞれの開口部12、13が筐体本体11に取付けられた蝶番Cを介して、前開きの上側扉4a(4)と下側扉4b(4)によって開閉される。
【0021】
前記上側扉4aは、その前面に位置する面部41の周囲より後方に延設された扉側壁42の先端部内面に、該先端部の先端縁から面部41側に偏位した位置に内方に向けて当り止め部43が設けられ、筐体本体11は、前記上側の開口部12の周囲より前方に向けて開口部側壁14が立ち上げられ、該開口部側壁14にはその上端よりフランジ部15が外方に向けて設けられると共に、その下方に底壁16が外方に向けて設けられ、前記上側扉4aが閉じられた状態においては、扉側壁42の先端部と上側の開口部12との間に前記開口部側壁14が位置され、当り止め部43がパッキン5を介してフランジ部15に当接されるようになされて、それぞれが上側の開口部12に周設されている。すなわち、当接される当り止め部43とフランジ部15との間には、当り止め部43側或いはフランジ部15側に外方からの水分の侵入を阻止するパッキン5が上側の開口部12を囲むように取付けられている。
【0022】
かようにすることにより、上側扉41を閉めた状態において、当り止め部43とフランジ部15とが当接する部分を扉側壁42が覆い隠すようになされると共に、フランジ部15と開口部側壁14と底壁16によって形成される略コ字状の空間が排水路Dとなされて、雨水等の水分を筐体1外方に排水するようになされ、筐体1内部に水分が入り難いので、屋外での使用に充分耐え得る筐体1を提供することができる。
【0023】
なお、下側の開口部13及び下側扉4bにおいても、上側の開口部12及び上側扉4aと同様の構造となされている部分の説明は省略し、異なった部分のみ説明を行う。すなわち、上側扉4aは、後述する筐体本体11の上下横枠型材111、112と左右縦枠型材113、114と同様に、断面中空ボックス状の中空枠材を上下左右に枠組して、面部41の周囲に扉側壁42部分を形成し、そして後述するように上側扉4aの面部41は、その背面側に表示装置6が内装され、そして面部41を通してその表示が視認されるようになされているため、透明な合成樹脂板から形成されている。これに対して、下側扉4bは鉄板、アルミ板等の板材を折り曲げ、所謂板金加工した面部41を含めた一体構造の正面視矩形の扉となしている。
【0024】
筐体本体11は、図4に示す如く、断面中空ボックス状の上下横枠型材111,112と左右縦枠型材113,114とで縦長の正面視略矩形に枠組みされてなり、左右縦枠型材113,114には前記フランジ部15及び開口部側壁14が一部切り欠かれた切欠部17が形成され、そしてフランジ部15及び開口部側壁16を備えた中枠材115を、この左右縦枠型材113,114に形成された切欠部17間に差し渡すことにより、前記筐体本体11の上下2個の開口部12,13を形成している。なお、上下横枠型材111,112及び左右縦枠型材113,114は、軽量で耐久性の高いアルミ合金の押出型材が好適に用いられ、中枠材115はそれと同質のアルミ合金製板材を所定の形状に折り曲げ加工、所謂板金加工して形成している。そして、それら枠材は溶接によって枠組みされる。
【0025】
また図5に示す如く、下横枠型材112と左右縦枠型材113、114とが突き合わせられる角部においては、一方の端部が下横枠型材112の中空部116に挿入されると共に他方の端部が左右縦枠型材113、114の中空部117、117に挿入された正面視L字状の補強部材18を介して枠組みされている。
【0026】
かような枠組み構造となすことにより、中空部116、117を備えた下横枠型材112と左右縦枠型材113、114により構造部材を軽量化することができると共に、正面視L字状の補強部材18を筐体1下端の左右側に配置することにより、縦長の形状であっても捻れに対する筐体1の強度を向上させることができる。なお、上横枠型材111と左右縦枠型材113、114とが突き合わせられる角部においても同様に、上横枠型材111の中空部と左右縦枠型材113、114の中空部とにL字状の補強部材17が挿入され筐体本体11が枠組みされるようになされてもよい。
【0027】
本形態に係る電気自動車用給電装置Pにおいては、図2に示す如く、電気自動車のバッテリーに給電する際は、使用者は先ずクレジットカードや電子マネーに用いられるICカードを下側扉4bの上部の傾斜面に設けられたカードリーダー31に認識させ、筐体1の上方に設けられたアンテナ部32を介して必要な情報を送受信して、当該電気自動車用給電装置Pが使用できるようになされている。なお利用者はパスワードやID番号等を給電装置管理センターに携帯電話で送信し、これを受信した給電装置管理センターから当該電気自動車用給電装置Pに送信されてくる装置利用許可信号等がアンテナ部32で受信された後、当該電気自動車用給電装置Pが使用できるようにもなされている。
【0028】
そして、筐体1の内部に設けられている電気自動車のバッテリーに給電するための給電装置3は、図2、6、9に示す如く、前記カードリーダー31、前記アンテナ部32、下側扉4bの下部に設けられた上下方向に開閉するスライド扉33により開口・閉止される給電口34、下側扉4bの内側に取付けられた収納室7に設けられた給電用コンセント35、36、下側扉4bの上部の傾斜面内方に設けられた電力メーター37及び上側扉4aの下部に設けられた給電量等給電時の状況を示すデジタル表示部38を備えており、該アンテナ部32は下方が開口した合成樹脂製の中空状アンテナカバー32aによって外方から隠蔽されている。また上側扉4aの面部41はは透明な合成樹脂板より形成されており、その内方に内装されている前記デジタル表示部38やその他種々の表示装置等を保護すると共に、外方からその表示内容が認識できるようになされている。
【0029】
カードリーダー31は、図9に示す如く、下側扉4bの上部の傾斜面に設けられた切欠窓44より内側に取付けられており、該切欠窓44はアクリル樹脂等からなる透明な板材からなるカバー材45より覆われて内側に雨水等が浸入しないようになされている。使用者は、カバー材45を通してICカードをカードリーダー31に近づけて、給電に必要となる情報を認証させる。
【0030】
電力メーター37も、前記カードリーダー31と同様に、下側扉4bの上部の切欠窓44より内側に取付けられており、本形態では、電力メーター37の表示部37aがカードリーダー31より上方に配置されている。管理者は、切欠窓44から表示部37aの表示内容を確認することができる。
【0031】
アンテナ部32は、図10に示す如く、筐体本体11の上横枠型材111の上面に取付けられており、該アンテナ部32を収納するアンテナカバー32aは、その正面視において、天板32bが頂部からなだらかに傾斜した蒲鉾状の外形となされ、上横枠型材111の上面に取付けられている。ここで、アンテナ部32と筐体1内の制御部(図示せず)はアンテナケーブル32cで繋がっており、アンテナケーブル32cを筐体1内へ導入する開口孔118が断面中空ボックス状の上横枠型材111の上面と下面に形成されており、少なくとも下面の開口孔118は止水コネクタ32dにより止水されており、筐体1内に水分が入り難いようになされている。
【0032】
次に、スライド扉33と給電口34について、図1、6〜9を用いて説明する。
給電口34は、筐体1の下側扉4bの内側に取付けられた収納室7に通じており、給電口34を通って収納室7に取付けられた給電用コンセント35、36に給電コードKを取付けることができる。
【0033】
かかる給電口34は、該給電口34を開閉するスライド扉33が設けられ、前記スライド扉33を下方にスライドして給電口34を閉止した状態において、スライド扉33の下方に給電口34の下部により形成される、スライド扉33の下端部の横幅より広幅の開口窓34aが残存されるようになされている。これにより、給電作業の際、給電口34に使用者の指や給電コードKが存在する状態でスライド扉33を下方にスライドさせても、指や給電コードKは開口窓34aにまで誘導されるので、使用者の指や給電コードが挟まれる様な不具合が生じにくくなり、加えて給電する電気自動車の停止位置に応じて、給電用コンセントに接続された給電コードKが開口窓内を幅方向に移動できるので、給電コードKの捻れや折れ等の物理的な負荷を少なくすることができる。
【0034】
スライド扉33は、本形態では、給電口34の内側縁部に沿って配置されたスライドレール39に支持されており、使用者は、スライド扉33の下部に取付けられた把持部33aを持って上下にスライドさせて給電口34を開閉することができる。
【0035】
かかるスライド扉33は、図8に示す如く、その両側端が後方に曲折されて側壁部33bが設けられている。そして、前記側壁部33にスライダー33cが設けられている。一方、スライドレール39は、平面視蟻溝状で前記側壁部33b側に開口しており、前記スライダー33cがスライドレール39内をスライドすることにより、スライド扉33が上下にスライドして給電口34を開閉される。これにより、例えば、その側端部をスライドレールに挿入して上下にスライドさせるスライド扉と比べて、スライド扉33の側端部前面と給電口34の側端部背面との隙間S1を狭くすることが容易であり、この隙間S1に使用者の指が挟まれることを防ぐことができる。なおスライダー33cは、本形態では、固定ビスB1によって側壁部33bに固定されている。
【0036】
筐体1の下側扉4bの下部は、本形態では、その前面部46の下端が後方に折曲されて傾斜底面部47が形成されると共に、前記前面部46から傾斜底面部47にかけて給電口34が形成され、スライド扉33の下端には、前記傾斜底面部47に沿って後方に折曲された傾斜折曲部33dが形成されている。そしてスライド扉33が閉止された状態において、スライド扉33の下方の斜め後方に給電口34の開口窓34aが残存されるようになされている。これにより、スライド扉33が設定以上に下方にスライドしても、使用者の指や給電コードは開口窓34aに回避できるので、スライド扉33と給電口34との間に挟まれる様な不具合が生じにくく、また筐体1やスライド扉33に付いた雨水等の水分が内側に回り込んでも、開口窓34に誘導して外に排出し、給電用コンセント35、36のショート等の不具合が起こりにくくなる。
【0037】
下側扉4bの前面46と傾斜面47aとの境界付近において、給電口34の傾斜面47a側では、スライド扉33の傾斜折曲部33dと給電口34の内縁部とが重ならないように、該給電口34の横幅が拡げられている。また、この広幅部34bの側端部と略面一となるようにスライドレール39が配置され、かつ広幅部34bの側端部の内面に達している。そしてこれより下方の斜め後方では、給電口34の横幅が更に拡げられて前記開口窓34aとなされている。これにより、給電口34の下部においても、スライド扉33と給電口34の給電口34との間に使用者の指の挟まれる等の不具合は起こりにくい。
【0038】
スライド扉33は、前記の通り側端部33bに設けられたスライダー33cを介してスライドレール39に沿って上下にスライドできるので、前記傾斜折曲部33dを設けてもスライドレール39と干渉することがない。また例えば、単なる板状の扉の場合では、扉が後方に変形して給電口34の背面との間に指が挟まれたり、剪断的な力が指に作用したりするおそれがあるが。本形態では、スライド扉33の側端部33b及び傾斜折曲部33dが設けられているので、スライド扉33は、後方側へは容易には変形せず、使用者の指が挟まれるおそれが更に小さくなる。なおスライド扉33には、ストッパー33e、33fとが設けられており、ストッパー33eは、収納室7の上端に係止されると、スライド扉33はそれ以上下方にスライドしないようになされ、ストッパー33fは、電磁装置(図示せず)によって、スライド範囲が規制されるようになされている。
【0039】
収納室7は、図6、9に示す如く、給電口34側が開口しており、給電用コンセント35、36が設けられている。かかる収納室7は、本形態では、ステンレス合金からなる板材を組み合わせて成形したものであり、筐体1の下側扉4bの内面に固定された固定部材41aに固定ビス3を介して固定さている。そして、奥部壁面71に給電用コンセント35が取付けられ、天井部72に給電用コンセント36が取付けられている。更に、図8に示す如く、側壁部73にスライドレール39が固定ビスB2によって固定されている。収納室7は、前記の通り、ステンレス合金からなる板材を組み合わせて成形したものであるが、雨水等の水分で腐食しにくい材料を用いた方が好ましく、例えば、アルミニウム合金等の他の金属を用いてもよく、合成樹脂等を用いてもよい。
【0040】
また収納室7の床面74は、下斜め前方に傾斜しており、その前端が給電口34の開口窓34aに通じている。これにより、収納室7内に雨水が入り込んでも、床面74から開口窓34aへ誘導して外に排出し、収納室7の錆の発生や、給電用コンセント35、36のショート等の不具合が起こりにくくなる。本形態では、床面74の前端が下方に折曲されて開口窓34aの下端に繋がっているので、給電コードKが床面に引っ掛かかるような不具合は起こりにくくなる。
【0041】
給電用コンセント35は、本形態では、固定ビスB4を介して、収納室7の奥部壁面71に固定され、その差込口35aが下斜め前方に向いて設けられており、更に差込口35aを覆う開閉扉35bが開閉可能に設けられている。これにより、使用者は、利用時のみに開閉扉35bを開けて給電コードKを差込口35aに差し込めばよいので、雨水等が差込口35aに当たりにくくなる。また、収納室7の奥部壁面71が斜め上方に向いているので、給電口34側から給電用コンセント35の差込口35aや開閉扉35bが見えやすくなる。
【0042】
収納室7の天井部72は、本形態では、該天井部72の下方に突出した突出部72aが設けられ、この突出部72a内に給電用コンセント36が配置されている。更に具体的には、突出部72aの下壁部72bに貫通孔72cが形成され、該下壁部72b上に給電用コンセント36が取付けられると共に、該下壁部72bに貫通孔72cが形成され、該貫通孔72cを通って給電用コンセント36の差込口36aが下斜め前方に向けて設けられている。これにより、給電用コンセント36には雨水は掛かりにくくなる。
【0043】
突出部72aの前方には、天井部72から垂下する水切り板72dが該突出部72aと間隔をおいて設けられている。そして、スライド扉33を開けた時に、スライド扉33の傾斜折曲部33dが前記水切り板72dより前方に位置するようになされている。これにより、下側扉4bの前面46からスライド扉33を伝って雨水が収納室7の天井部72に流れ込んだ場合や、スライド扉33の傾斜折曲部33dに雨水が付着したまま開けた場合でも、水切り板72dによって遮られて、給電用コンセント36の差込口36aに雨水が伝わりにくくなる。また、収納室7の床面74を鏡面状としたり、該床面74上に金属箔等の鏡面状材料を取付けたりしておけば、使用者は、前記鏡面状の箇所に写る給電用コンセント36によってその取付位置を確認しやすくなるので好ましい。
【0044】
給電用コンセント35、36は、異なる電気自動車の給電コードKの種類に対応したものであり、それぞれに対応できるよう収納室7に設けたものであるが、どちらか一方のみしか用いない場合は、給電用コンセント35のみ、または給電用コンセント36のみを収納室7に設けた形態としてもよい。また、スライド扉33が閉止した時のみ、スライド扉33のストッパー33fが電磁装置(図示せず)を感知してスライド扉を固定すると共に、給電用コンセント35、36に通電するようにしてもよい。こうすれば、使用者は、給電中にその場所から離れた際、他人が給電コードKを引っ張っても、給電口34の開口窓34aから外に出さないようにすることが可能となり、また、給電中に開口窓34aから手を入れても給電コンセント35、36の差込口35a、35bに触れて感電するようなおそれをなくすことができる。
【0045】
次に電気自動車用給電装置Pの設置手順を図11を用いて説明する。
まず図11(イ)に示す如く、設置面Gに設置されたアンカーボルトBにベースプレート21が下端に溶接された鋼管支柱2を固定し、アンカーボルトB及びベースプレート21とを覆い隠す金属製の略台形状のベースプレートカバー22を外嵌し、次いで図11(ロ)に示す如く、鋼管支柱2の外面を隠蔽する軟質合成樹脂、発泡合成樹脂、及びゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種によって形成された支柱カバー23を鋼管支柱2の外側を覆うように外嵌し、筐体1を鋼管支柱2の上端に取付けるための取付ベース24を隠蔽するための金属製の略台形状の取付ベースカバー25を前記支柱カバー23の外側から嵌め込み、図11(ハ)に示す如く、ベースプレートカバー22上に仮置きして、鋼管支柱2の上端に載置・固定された取付ベース24の上面に、筐体1下面を載置しボルト止めする。そして図11(ニ)に示す如く、ベースプレートカバー22上に仮置きした取付ベースカバー25を上方に移動させ、取付ベース24を隠蔽するようにネジ止めして、図11(ホ)に示す如く、電気自動車用給電装置Pの設置が完了する。
【0046】
なお、図5に示す通り、支柱カバー23は、その上端が取付ベース24の下部に円周方向に設けられた取付溝26に嵌め込まれ、その下端がベースプレートカバー22の上面に載置されて保持されるようになされている。かようになすことにより、鋼管支柱2と支柱カバー23との間に雨水等が侵入しづらいようになされている。
【0047】
また図12−13に示す如く、筐体1を取付ける鋼管支柱2下端に溶接されたベースプレート21には、円周状に4個の長孔211が90°の間隔をあけて穿設されており、該長孔211間に4個の補強リブ212が立設され、該補強リブ212の一端が鋼管支柱2側面に溶接されて、鋼管支柱2が補強されている。かようになすことにより、図13に示す如く、電気自動車用給電装置Pを設置する際、所定の位置にアンカーボルトBを配置した後であっても、筐体1を正対する位置から左方向X1に回動させたり、右方向X2に回動させて、電気自動車用給電装置Pの設置する向きを調整することができ、好ましい。
【0048】
次に、上記電気自動車用給電装置Pにおいて、上側扉4aの面部41の背面側に内装された表示装置6について、図14〜16を用いて説明する。
表示装置6は、後述する表示板61の表示が上側扉4aの面部41を通して視認できるように、上側扉4aの面部41は透明な合成樹脂板より形成され、そしてその上側扉4aの面部41の後方に表示板61が設けられ、この表示板6の背面側に、7セグメント表示を現出させるLED621が取付けられた表示基板62と、前記表示板61を背面側より照射する発光体631が取付けられた発光基板63とが設けられ、前記発光基板63は表示基板62の後方に設けられている。さらに詳細に述べると、面部41の背面側に上下左右に枠組みされたフレーム材64の後端に発光体631であるチップ型LEDが実装された発光基板63が取付られ、該発光基板63に複数の棒体65が立設され、その棒体65の先端に7セグメント表示を現出させるLED621が取付けられた表示基板62が固定されて、発光基板63と表示基板62とが2層構造となされている。そして、7セグメント表示を現出させるLED621の直前に表示板61が位置するように、表示板61が前記フレーム材64に取付けられている。かようにすることにより、7セグメント表示を現出させるLED621が点灯した時、その表示を表示板61近傍で確実に読み取ることができると共に、表示板61とその光源である発光体631との間隔をあけることができ、チップ型LED等の点光源からなる発光体631を用いていても、表示板61の発光むらを抑制することができ、表示板61に描かれた表示が明瞭に視認される。
【0049】
表示板61は透明の合成樹脂板からなり、好適には透明のアクリル板からなるものであって、その表示板61の表示については、表示部611に、詳細は省略するが電気自動車用給電装置Pの使用方法が記載され、その下方に給電量の表示612がなされ、その下方に例えば、ICカードに関して「認証完了」、給電に関して「給電中」、「給電完了」等の表示状態を示す表示613とが並列になされている。また、表示612の隣は、7セグメント表示を現出させるLED621の大きさにシートが切り抜かれている。したがって、前記7セグメント表示を点灯させた時、透明の表示板61を透過して給電量を示す表示が現出されるのである。
【0050】
また、表示板61に並列の表示613の背面側に位置する発光基板63上には、それぞれ異なる色であるオレンジ色・赤色・緑色を発光する発光体631が複数個実装され、前記各表示が異なる色の表示となるように、発光基板63に取付けられた仕切板66で互いに仕切られている。7セグメント表示を現出させるLED621と同様に、仕切板66も、表示板61の近傍まで突設されているため、異なる色の発光体631同士が干渉して色が混じり合うことなく、鮮明な色による給電状況の識別が可能となる。なお、上述のように、表示板61の背面側には発光体631であるチップ型LEDが複数個実装された発光基板63が設けられており、該チップ型LEDは白色光を照射して、表示板61全体(7セグメント表示を現出させるLED621及び表示613以外の部分)が白色に発光するようになされている。
【0051】
そして、当該表示装置6のフレーム材64が、電気自動車用給電装置Pの上側扉4aの面部41の背面に、面部41を上側扉4aに取付けるネジをもって共締めされて取付けられ、表示装置6を用いた電気自動車用給電装置Pが構成されている。なお、面部41としてはポリカーボネート板が好適に用いられ、その背面に位置する表示装置6の表示板61を保護するようになされている。
【0052】
なお、上述のように、上記表示板61の表示については、透明のアクリル板からなる表示板61の表面または裏面に、その表示内容が記載されたり切り抜かれたりしたシートを貼り付けたもので構成してもよいし、シルクスクリーン印刷等の印刷を透明のアクリル板からなる表示板の表面または裏面に施してその表示内容を形成してもよく、表示の形成方法は特に限定されるものではなく、任意の方法が採用できる。
【符号の説明】
【0053】
P 電気自動車用給電装置
1 筐体
11 筐体本体
111 上横枠型材
112 下横枠型材
113 左縦枠型材
114 右縦枠型材
115 中枠材
116 中空部
117 中空部
118 開口孔
12 上側の開口部
13 下側の開口部
14 開口部側壁
15 フランジ部
16 底壁
17 切欠部
18 補強部材
2 鋼管支柱
21 ベースプレート
211 長孔
212 補強リブ
22 ベースプレートカバー
23 支柱カバー
24 取付ベース
25 取付ベースカバー
26 取付溝
3 給電装置
31 カードリーダー
32 アンテナ部
33 スライド扉
33d 傾斜折曲部
34 給電口
34a 開口窓
35 給電用コンセント
36 給電用コンセント
37 電力メーター
38 デジタル表示部
39 スライドレール
4 扉
4a 上側扉
4b 下側扉
41 面部
42 扉側壁
43 当り止め
5 パッキン
6 表示装置
61 表示板
62 表示基板
621 7セグメント表示を現出させるLED
63 発光基板
631 発光体
64 フレーム材
65 棒体
66 仕切板
67 覆い
7 収納室
C 蝶番
G 設置面
D 排水路
B アンカーボルト
K 給電コード
X1 左方向
X2 右方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納室に電気自動車の給電用コンセントが設けられ、給電口より前記給電用コンセントに給電コードが取付けられるようになされた筐体を備えた電気自動車用給電装置であって、前記給電口に該給電口を開閉するスライド扉が設けられると共に、前記スライド扉を下方にスライドして前記給電口を閉止した状態において、前記スライド扉の下方に給電口の下部により形成される、スライド扉の下端部の横幅より広幅の開口窓が残存されるようになされたことを特徴とする電気自動車用給電装置。
【請求項2】
前記筐体はその前面部の下端が後方に折曲されて傾斜底面部が形成されると共に、前記前面部から傾斜底面部にかけて給電口が形成され、前記スライド扉の下端には、前記傾斜底面部に沿って後方に折曲された傾斜折曲部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用給電装置。
【請求項3】
給電用コンセントが設けられた収納室の床面は、前記開口窓に通じる傾斜床面となされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気自動車用給電装置。
【請求項4】
前記スライド扉は、両側端が後方に折曲されて設けられた側壁部にスライダーが配置されると共に、前記給電口の内側縁部に沿ってスライドレールが設けられ、前記スライダーがスライドレール内をスライドすることにより、前記スライド扉が上下にスライドして給電口を開閉するようになされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気自動車用給電装置。
【請求項5】
収納室の天井面に給電用コンセントがその差込口を斜め前方に向けて設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気自動車用給電装置。
【請求項6】
収納室の奥部壁面に給電用コンセントがその差込口を斜め前方に向けて設けられ、前記差込口の前方に該差込口を覆う開閉扉が設けられていることを特徴とする請求項1〜5に記載の電気自動車用給電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−129161(P2012−129161A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282103(P2010−282103)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】