説明

電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリ

【課題】正確な電気長を有する高周波同軸ケーブルアセンブリが得られる製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリを提供する。
【解決手段】中心導体の外周に順次、絶縁体、金属箔の螺旋巻きにより形成した内側の外部導体、編組により形成した外側の外部導体、好ましくは前記内側外部導体と外側外部導体の間に介在させた緩衝用の樹脂テープおよびシースからなる高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとを接続した構造の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法であって、
高周波同軸ケーブルのケーブル切断・シース剥離工程;f1と、はんだ処理工程;f2と、段差・螺旋状加工工程;f3と、電気長測定・換算工程;f4と、削り込み加工工程;f5と、接着剤塗布・硬化工程;f6と、からなり電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリに関し、更に詳しくは、電気長の制御を可能にした高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信を含む情報通信機器類及び産業機器類の機器内外配線材、機器リード線として用いられるケーブル類、例えば高周波同軸ケーブルは、これら機器類の性能及び機能の向上に伴って種々の特性が要求されている。特に高周波伝送技術の進展と共に同軸ケーブルアセンブリの適用周波数は数GHzから数十GHzの帯域に及び、さらに広帯域化しつつある。また、上記高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとを接続した構造の高周波同軸ケーブルアセンブリに於いても数十GHzの帯域に適合するものが求められている。
従来の高周波同軸ケーブルアセンブリとしては、例えば下記特許文献1「同軸ケーブル用コネクタ」に開示されており、本発明の図7にその構造を示す。なお図7(a)はプラグタイプの同軸型コネクタの接続構造の縦断面図、同図(b)は接続先端部を設けた同軸ケーブルの斜視図、また同図(c)はシェルの斜視図である。
先ず図7(c)に示すように、ケーブル外径に合わせたシェル11’に半田付け用の穴22’を設け、また同図(b)に示すように、フレキシブル高周波同軸ケーブル21’より端部のシース9’を剥離し、更に編組8’、金属箔6’および絶縁体2を同一面で切断して中心導体1を突出させて接続先端部とし、次いで同図(a)に示すように、接続先端部をシェル11’に挿入し、半田付け用の穴22’より半田付けすることにより接続した構造である。なお図7(a)において、15’はカップリングナット、16’はガスケット、17’はリティニングリング、また23’は熱収縮チューブである。
【特許文献1】米国特許第4,688,876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の図7に示す従来接続構造を用いた高周波同軸ケーブルアセンブリにおいては、半田付けにより高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタが接続されているので、得られた高周波同軸ケーブルアセンブリの電気長が固定された値となり、ケーブル長を最初に合わせても、得られた製品を正確な電気長とすることが出来ないという問題点があり、これは高周波同軸ケーブルの低密度絶縁体は長手方向に比誘電率のバラツキが有る為、物理長で電気長の制御を試みても限界があるからである。なお、正確な電気長を得るためには、出来た製品の特性を測定して規格に合ったものを選別するか、または高価なアダプターを使用して正確な電気長とするしかなく、コストアップの要因となっていた。
本発明は、上記従来技術が有する各種問題点を解決するためになされたものであり、正確な電気長を有する高周波同軸ケーブルアセンブリが得られる製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点として本発明は、中心導体の外周に順次、絶縁体、金属箔の螺旋巻きにより形成した内側の外部導体、編組により形成した外側の外部導体、好ましくは前記内側外部導体と外側外部導体の間に介在させた緩衝用の樹脂テープおよびシースからなる高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとを接続した構造の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法であって、
前記高周波同軸ケーブルを、所定の長さに切断した後、該ケーブルの両端末部のシースを剥離して外側外部導体を露出させるケーブル切断・シース剥離工程;と、
前記内側,外側の外部導体と、好ましくは前記緩衝用の樹脂テープとを一括してはんだ処理により一体化させて一体化外部導体とするはんだ処理工程;と、
前記一体化外部導体の先端要部を中心導体が露出するよう段差加工し、また残部の一体化外部導体の外周表面に螺旋状加工を施して螺旋状外部導体とした接続先端部を設ける段差・螺旋状加工工程;と、
前記接続先端部に、内面に螺旋状加工を施した同軸型コネクタを仮装着して電気長を測定し、電気長実測値と電気長要求値との差分を求めて物理長換算を行う電気長測定・換算工程;と
前記接続先端部に仮装着した同軸型コネクタを取り外し、該接続先端部の中心導体と螺旋状外部導体に物理長換算値分の削り込みを行う削り込み加工工程;と、
前記螺旋状外部導体の外周表面の要部に接着剤を塗布してから再度接続先端部に同軸型コネクタを装着し、接着剤を硬化させて機械的に固着させ電気的に接続して電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを完成させる接着剤塗布・硬化工程;と、
からなることを特徴とする電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法にある。
本発明に用いられる高周波同軸ケーブルとしては、例えば図2の右部に示す構造のフレキシブル高周波同軸ケーブルが挙げられる。
また前記高周波同軸ケーブルの中心導体としては、例えば銀メッキ軟銅線、銀メッキ銅合金線、銀メッキ銅被覆鋼線等が挙げられる。
また前記絶縁体としては、低密度絶縁体が好ましく、例えば多孔質フッ素系樹脂が挙げられる。
また前記金属箔の螺旋巻きにより形成した内側の外部導体は、例えば銀メッキ軟銅箔の螺旋巻きにより形成した内側外部導体である。
また前記編組により形成した外側の外部導体は、例えば銀メッキ軟銅線編組により形成した外部導体である。
また前記緩衝用の樹脂テープとしては、熱溶融性の樹脂テープ、例えばPPS(ポリフェニレンスルフィド)テープが挙げられる。
また前記シースとしては、例えばフッ素系樹脂のFEP(フッ化エチレンプロピレン樹脂)が挙げられる。
また前記はんだ処理としては、錫コート若しくは半田コートが挙げられる。
また前記一体化外部導体の外周表面の螺旋状加工は、例えばGroove DiceによるSpiral Groove加工、すなわち、専用ねじ切りダイスを用いた粗雄ねじ加工を用いることができる。
また本発明に用いられる同軸型コネクタとしては、例えば図3(a)、(b)に示す一体型プラグタイプの同軸型コネクタ(SMA−Maleコネクタ)、或は図4(a)、(b)に示す一体型ジャックタイプの同軸型コネクタ(SMA−Femaleコネクタ)等が挙げられる。これらの図において、(a)は一部切り欠き正面図、また(b)は側面図である。なお、図3、4の(c)は同軸ケーブルの接続先端部である。
上記第1観点の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法によれば、正確な電気長を得るために、出来た製品の特性を測定して規格に合ったものを選別する必要がなく、また高価なアダプターを使用して正確な電気長とする必要がないので、コストを安くして正確な電気長の高周波同軸ケーブルアセンブリを製造することができる。
【0005】
第2の観点として本発明は、上記電気長測定・換算工程において、要求周波数f(GHz)における電気長実測値(deg)から電気長要求値(deg)を引いた電気長(差分)をA(deg)とした場合、電気長(差分)A(deg)から物理長X(mm)への換算は下記(1)式により行い、また削り込み加工工程において、削り込み加工は、換算値分の物理長X(mm)を中心導体および螺旋状外部導体の先端部に対し同長実施したことを特徴とする電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法にある。
X=(300×A)/(360×f×√εr) ‐‐‐(1)
εr‐‐絶縁体の比誘電率
上記第2観点の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法では、上記(1)式により電気長(差分)A(deg)から物理長X(mm)への換算を行い、また上記のように削り込み加工を行うことにより電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを製造することができる。
【0006】
第3の観点として本発明は、第1または第2の観点に記載の製造方法により得られたことを特徴とする電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリにある。
上記第3観点の高周波同軸ケーブルアセンブリでは、上記第1または第2観点の製造方法により得られた同軸ケーブルアセンブリなので、電気長が正確に制御されている高周波同軸ケーブルアセンブリとなっている。
また上記第3観点のアセンブリでは、フレキシブル高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとを接続する際、従来からの半田接続方式ではなく、ねじ接合と接着剤を併用し、一体化外部導体と同軸型コネクタを機械的に固着させ電気的に接続しているので、従来のような半田接続に起因する問題点が生じることはない。更に、ケーブルの接続先端部の内側金属箔と外側編組の外部導体は、はんだ処理により一体化されているため、金属箔と編組とを段階的に剥離する必要が無く、金属箔の巻きが緩み加工性が悪化することがない。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリによれば、正確な電気長を得るために、出来た製品の特性を測定して規格に合ったものを選別する必要がなく、また高価なアダプターを使用して正確な電気長とする必要がないので、コストを安くして正確な電気長の高周波同軸ケーブルアセンブリを製造することができるようになった。従って、本発明は産業上に寄与する効果が極めて大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法を示すチャート図である。
図2は、本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリを構成する高周波同軸ケーブルおよび接続先端部を説明するための略図であり、左方部は段差・螺旋状接続先端部の構成を示し、また右方部はケーブルの構成を示す。図3は、一体型プラグタイプの同軸型コネク(SMA−Maleコネクタ)と同軸ケーブルの接続先端部を示す略図であり、同図(a)は一部切り欠き正面図、同図(b)は側面図、また同図(c)は接続先端部の一部切り欠き正面図である。図4は、一体型ジャックタイプの同軸型コネクタ(SMA−Femaleコネクタ)と同軸ケーブルの接続先端部を示す略図であり、同図(a)は一部切り欠き正面図、同図(b)は側面図、また同図(c)は接続先端部の一部切り欠き正面図である。図5は、本発明の製造方法により得られた高周波同軸ケーブルアセンブリの一例を示す要部縦断面図である(但し、同軸型コネクタは片端のみ示す)。また図6は、本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリの電気長制御の効果を示すグラフ図であり、同図(a)は電気長調整前の位相ばらつき、また同図(b)は電気長調整後の位相ばらつきを示す。
これらの図において、1は中心導体、2は絶縁体、3は内側外部導体(金属箔の螺旋巻き)、4は緩衝用の樹脂テープ、5は外側外部導体(金属線の編組)、6はシース、8は一体化外部導体(錫コートまたは半田コート)、8aは螺旋状外部導体、8bは螺旋状加工面、9は接続先端部(段差・螺旋状接続先端部)、10は高周波同軸ケーブル(フレキシブル高周波同軸ケーブル)、11はカップリングナット、12はガスケット、13はリティニングリング、14は中心導体嵌合部、15は中心コンタクトピン、16は絶縁体、20は同軸型コネクタ(一体型プラグタイプの同軸型コネクタ(SMA−Maleコネクタ))、25は相手側中心コンタクト嵌合部、30は同軸型コネクタ(一体型ジャックタイプの同軸型コネクタ(SMA−Femaleコネクタ))、また50は電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリ、rは螺旋状加工内面、またsは接着剤である。
【実施例1】
【0009】
本発明に係る高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法について図1を用いて説明する。
本発明は、中心導体の外周に順次、絶縁体、金属箔の螺旋巻きにより形成した内側の外部導体、編組により形成した外側の外部導体、好ましくは前記内側外部導体と外側外部導体の間に介在させた緩衝用の樹脂テープおよびシースからなる高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとを接続した構造の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法であって、
先ず高周波同軸ケーブルを、所定の長さに切断した後、該ケーブルの両端末部のシースを剥離して外側外部導体を露出させるケーブル切断・シース剥離工程;f1と、
前記内側,外側の外部導体と、好ましくは前記緩衝用の樹脂テープとを一括してはんだ処理により一体化させて一体化外部導体とするはんだ処理工程;f2と、
前記一体化外部導体の先端要部を中心導体が露出するよう段差加工し、また残部の一体化外部導体の外周表面に螺旋状加工を施して螺旋状外部導体とした接続先端部を設ける段差・螺旋状加工工程;f3と、
前記接続先端部に同軸型コネクタを仮装着して電気長を測定し、電気長実測値と電気長要求値との差分を求めて物理長換算を行う電気長測定・換算工程;f4と
前記接続先端部に仮装着した同軸型コネクタを取り外し、該接続先端部の中心導体と螺旋状外部導体に物理長換算値分の削り込みを行う削り込み加工工程;f5と、
前記螺旋状外部導体の外周表面の要部に接着剤を塗布してから再度接続先端部に同軸型コネクタを装着し、接着剤を硬化させて機械的に固着させ電気的に接続して電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを完成させる接着剤塗布・硬化工程;f6と、
により電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを製造する。
【実施例2】
【0010】
本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法および高周波同軸ケーブルアセンブリの具体的な実施形態について図1〜3を用いて説明する。
本発明に用いる高周波同軸ケーブルとしては、図2の右部に示すように、銀メッキ軟銅線よりなる中心導体(1)の外周に順次、多孔質PTFE樹脂(四フッ化エチレン樹脂)よりなる絶縁体(2)、銀メッキ軟銅箔の螺旋巻きにより形成した内側の外部導体(3)、PPSテープよりなる緩衝用の樹脂テープ(4)、銀メッキ軟銅線編組により形成した外側の外部導体(5)およびFEP(フッ化エチレンプロピレン樹脂)のシース(6)からなるフレキシブル高周波同軸ケーブル(10)を用いた。
先ず前記高周波同軸ケーブル(10)を、完成アセンブリに必要とされる所定の長さに切断し、続いてコネクタとの接続先端部を形成するため、シース(6)を剥離して外側外部導体(5)を露出した。(ケーブル切断・シース剥離工程;f1)
次いで、内側外部導体(3)と、外側外部導体(5)と、内側外部導体と外側外部導体との間に介在された緩衝用樹脂テープ(4)とを一括して錫コートにより一体化させて一体化外部導体(8)とした。(はんだ処理工程;f2)
次いで、前記一体化外部導体(8)を、中心導体(1)が露出するよう同軸端末処理機を用いて段差剥離し(絶縁体(2)と一体化外部導体(8)端面は面一)、また残部の一体化外部導体(8)表面には専用ねじ切りダイス(Groove Dice)を用いた粗雄ねじ加工(Spiral Groove加工)を施し、螺旋状加工面(8b)を設けて螺旋状外部導体(8a)とした段差・螺旋状接続先端部(9)を設けた。(段差・螺旋状加工工程;f3)
次いで、本発明に用いる同軸型コネクタとしては、図3、図5に示すように、前記接続先端部(9)とねじ螺合が可能な螺旋状加工内面(r)を有し、カップリングナット(11)、ガスケット(12)、リティニングリング(13)、中心導体嵌合部(14)、中心コンタクトピン(15)、および絶縁体(16)を備えた一体型プラグタイプの同軸型コネクタ(SMAコネクタ、Maleコネクタ)(20)を、前記高周波同軸ケーブル(10)の両端に設けた接続先端部(9)に仮装着してアセンブリ体(図5で接着剤(s)のない状態)とし、ベクトル・ネットワークアナライザ(図示せず)に接続して電気長を正確に測定して電気長実測値とし、この電気長実測値と電気長要求値との差分を求めて物理長換算を行った。
具体的には、要求周波数f(GHz)における電気長実測値(deg)から電気長要求値(deg)を引いた電気長(差分)をA(deg)とした場合、電気長(差分)A(deg)から物理長X(mm)への換算は下記(1)式により行い、また削り込み加工工程において、削り込み加工は、換算値分の物理長X(mm)を中心導体(1)および螺旋状外部導体(8a)の先端部に対し同長実施した。
X=(300×A)/(360×f×√εr) ‐‐‐(1)
εr‐‐絶縁体の比誘電率
例えば18GHzにおいて、絶縁体の比誘電率εrが1.65の高周波同軸ケーブルの電気長合わせを行う場合、電気長(差分)Aが30deg有ったとすると、これに相当する物理長は
X=(300×30)/(360×18×√1.65)=1.081mmとなる。
なお、上記一連の作業は、電気長制御が必要なアセンブリ本数分実施し、電気長実測値と電気長要求値との差分を求める場合、電気長要求値の値としては、電気長要求値を満たし、かつ電気長実測値のうちの最小値とするのが望ましい。(電気長測定・換算工程;f4)
次いで、前記接続先端部(9)に仮装着した同軸型コネクタ(20)を取り外し、該接続先端部(9)の中心導体(1)と螺旋状外部導体(8a)に物理長換算値分の削り込みを同軸端末処理機により同時に行った。(削り込み加工工程;f5)
次いで、前記接続先端部(9)の螺旋状加工面(8b)の要部に接着剤(s)として、エポキシ系接着剤、例えば、エポキシ・テクノロジー社(ビレリカ.マサチューセッツ)によって「EPO−TEK 353ND」の商品名で市販されている非導電性2液型接着剤を塗布してから再度接続先端部(9)に同軸型コネクタ(20)を装着し、塗布された接着剤(s)を70℃×60分の硬化条件で硬化させて機械的に固着させ電気的に接続して電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリ(50)を完成させた。なお、接着剤(s)は螺旋状外部導体(8a)の先端面付近には塗布しなかった。(接着剤塗布・硬化工程;f6)
ここで、上記実施例2では銀メッキ軟銅線を中心導体(1)とし、多孔質PTFE樹脂を絶縁体(2)とするケーブルを用いているが、これ以外の材質からなるケーブルにも適用可能である。また、内側の外部導体(3)の金属箔は螺旋巻き以外に縦添えでもよく、また緩衝用の樹脂テープ(4)が介在されないケーブルにも適用できる。また、ケーブルの接続先端部の一体化には錫コートの替わりに半田コートも適用できる。また上記エポキシ系接着剤「EPO−TEK 353ND」の硬化条件は、70℃×60分の他150℃×1分、60℃×90分が選択可能である。むろん接着剤には「EPO−TEK 353ND」以外の、これと同等性能以上の機械的強度や耐環境性を有するエポキシ系接着剤(2液タイプの他、1液タイプや導電性タイプ)、その他の接着剤を用いても何ら問題はない。ただし、導電性タイプは非導電性タイプに比べ一般的に接着強度は劣るうえに、本発明の接着箇所は導電性能を必要としない。また本発明に用いる同軸型コネクタとしては、例えば図4に示すような、相手側中心コンタクト嵌合部(25)を有する一体型ジャックタイプの同軸型コネクタ(SMA−Femaleコネクタ)(30)も適用できる。
【0011】
上記第2実施形態により得られた高周波同軸ケーブルアセンブリの51本について、電気長調製前と調製後の電気長測定結果をグラフにしたものを図6に示す。なお電気長実測値としては、位相値(deg)を用いている。
この図6から明らかなように、電気長調整前はアセンブリ51本の電気長のバラツキが18GHzにおいて±25deg強有ったが、電気長調整後は約±5degになり、五分の一以下にバラツキを改善することが出来た。
また同軸ケーブルの低密度絶縁体は長手方向に比誘電率のバラツキが有る為、物理長で電気長の制御を試みても限界があるが、本発明では仮装着したアセンブリ体の電気長を測定したのち、完成アセンブリが正確な電気長となるように削り込み加工を施した為、確実な電気長制御が可能になった。
また、本発明のアセンブリ製造方法は、高周波同軸ケーブルとしてフレキシブル高周波同軸ケーブル、セミフレキシブル高周波同軸ケーブル、或はセミリジッド高周波同軸ケーブルを用いた場合にも適用することができる。すなわち、外部導体が金属線編組一括錫コート若しくは半田コートからなるセミフレキシブル高周波同軸ケーブル、または外部導体が金属管からなるセミリジッド高周波同軸ケーブルの場合は、はんだ処理工程を省略すれば良い。以下に参考実施例として示す。
【0012】
−参考実施例1−
特に図示はしないが、高周波同軸ケーブルとして、例えば銀メッキ銅被覆鋼線よりなる中心導体の外周に順次、充実PTFE樹脂よりなる絶縁体、銅線編組一括半田コートよりなる外部導体からなるセミフレキシブル高周波同軸ケーブルを用い、またはんだ処理工程;f2は用いず、それ以外は上記実施例2と同等として電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを完成させた。なお、段差・螺旋状加工工程;f3では、銅線編組一括半田コートよりなる外部導体を実施例2の一体化外部導体と同様に加工した。
【0013】
−参考実施例2−
特に図示はしないが、高周波同軸ケーブルとして、例えば銀メッキ軟銅線よりなる中心導体の外周に順次、充実PTFE樹脂よりなる絶縁体、銅管よりなる外部導体からなるセミリジッド高周波同軸ケーブルを用い、またはんだ処理工程;f2は用いず、それ以外は上記実施例2と同等として電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを完成させた。なお、段差・螺旋状加工工程;f3では、銅管よりなる外部導体を実施例2の一体化外部導体と同様に加工した。
上記参考実施例1、2により得られた高周波同軸ケーブルアセンブリは上記実施例2により得られた高周波同軸ケーブルアセンブリと同等の特性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、光通信を含む情報通信機器類及び産業機器類において、数GHzから数十GHzの帯域に適合し、正確な電気長を有する高周波同軸ケーブルアセンブリを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法を示すチャート図である。
【図2】本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリを構成する高周波同軸ケーブルおよび接続先端部を説明するための略図であり、左方部は段差・螺旋状接続先端部の構成を示し、また右方部はケーブルの構成を示す。
【図3】一体型プラグタイプの同軸型コネクタ(SMA−Maleコネクタ)と同軸ケーブルの接続先端部を示す略図であり、同図(a)は一部切り欠き正面図、同図(b)は側面図、また同図(c)は接続先端部の一部切り欠き正面図である。
【図4】一体型ジャックタイプの同軸型コネクタ(SMA−Femaleコネクタ)と同軸ケーブルの接続先端部を示す略図であり、同図(a)は一部切り欠き正面図、同図(b)は側面図、また同図(c)は接続先端部の一部切り欠き正面図である。
【図5】本発明の製造方法により得られた高周波同軸ケーブルアセンブリの一例を示す要部縦断面図である(但し、同軸型コネクタは片端のみ示す)。
【図6】本発明の高周波同軸ケーブルアセンブリの電気長制御の効果を示すグラフ図であり、同図(a)は電気長調整前の位相ばらつき、また同図(b)は電気長調整後の位相ばらつきを示す。
【図7】従来の高周波同軸ケーブルアセンブリの一例を示す略図であり、同図(a)は接続構造の縦断面図、同図(b)は接続先端部を設けた同軸ケーブルの斜視図、また同図(c)はシェルの斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 中心導体
2 絶縁体
3 内側外部導体(金属箔の螺旋巻き)
4 緩衝用の樹脂テープ
5 外側外部導体(金属線の編組)
6 シース
8 一体化外部導体(錫コートまたは半田コート)
8a 螺旋状外部導体
8b 螺旋状加工面
9 接続先端部(段差・螺旋状接続先端部)
10 高周波同軸ケーブル(フレキシブル高周波同軸ケーブル)
11 カップリングナット
12 ガスケット
13 リティニングリング
14 中心導体嵌合部
15 中心コンタクトピン
16 絶縁体
20 同軸型コネクタ(一体型プラグタイプの同軸型コネクタ(SMA−Maleコネクタ))
25 相手側中心コンタクト嵌合部
30 同軸型コネクタ(一体型ジャックタイプの同軸型コネクタ(SMA−Femaleコネクタ))
50 電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリ
r 螺旋状加工内面
s 接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周に順次、絶縁体、金属箔の螺旋巻きにより形成した内側の外部導体、編組により形成した外側の外部導体、好ましくは前記内側外部導体と外側外部導体の間に介在させた緩衝用の樹脂テープおよびシースからなる高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとを接続した構造の高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法であって、
前記高周波同軸ケーブルを、所定の長さに切断した後、該ケーブルの両端末部のシースを剥離して外側外部導体を露出させるケーブル切断・シース剥離工程;と、
前記内側,外側の外部導体と、好ましくは前記緩衝用の樹脂テープとを一括してはんだ処理により一体化させて一体化外部導体とするはんだ処理工程;と、
前記一体化外部導体の先端要部を中心導体が露出するよう段差加工し、また残部の一体化外部導体の外周表面に螺旋状加工を施して螺旋状外部導体とした接続先端部を設ける段差・螺旋状加工工程;と、
前記接続先端部に、内面に螺旋状加工を施した同軸型コネクタを仮装着して電気長を測定し、電気長実測値と電気長要求値との差分を求めて物理長換算を行う電気長測定・換算工程;と
前記接続先端部に仮装着した同軸型コネクタを取り外し、該接続先端部の中心導体と螺旋状外部導体に物理長換算値分の削り込みを行う削り込み加工工程;と、
前記螺旋状外部導体の外周表面の要部に接着剤を塗布してから再度接続先端部に同軸型コネクタを装着し、接着剤を硬化させて機械的に固着させ電気的に接続して電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリを完成させる接着剤塗布・硬化工程;と、
からなることを特徴とする電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法。
【請求項2】
上記電気長測定・換算工程において、要求周波数f(GHz)における電気長実測値(deg)から電気長要求値(deg)を引いた電気長(差分)をA(deg)とした場合、電気長(差分)A(deg)から物理長X(mm)への換算は下記(1)式により行い、また削り込み加工工程において、削り込み加工は、換算値分の物理長X(mm)を中心導体および螺旋状外部導体の先端部に対し同長実施したことを特徴とする請求項1記載の電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリの製造方法。
X=(300×A)/(360×f×√εr) ‐‐‐(1)
εr‐‐絶縁体の比誘電率
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られたことを特徴とする電気長制御が可能な高周波同軸ケーブルアセンブリ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−157389(P2007−157389A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348008(P2005−348008)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】