電気音響変換器
【課題】音響性能低下やボイスコイルのリード線の断線を防止しながら、さらなる薄型化を実現できる電気音響変換器を提供する。
【解決手段】磁気回路25と、この磁気回路25のヨーク21に固定されたフレーム29と、このフレーム29に固定された振動板26と、この振動板26に固定されて一部が前記磁気回路25の磁気ギャップ24に配置されたボイスコイル27とを備える電気音響変換器において、前記振動板26の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板26の中央凹部26aと対向する前記磁気回路25のポールピース23の表面も凹形状に形成し、、振動板26の振幅を十分に確保しながら、振動板26の高さを低く抑える。そしてヨーク21とフレーム29との結合部30と振動板26との隙間31の狭小化を伴わない。
【解決手段】磁気回路25と、この磁気回路25のヨーク21に固定されたフレーム29と、このフレーム29に固定された振動板26と、この振動板26に固定されて一部が前記磁気回路25の磁気ギャップ24に配置されたボイスコイル27とを備える電気音響変換器において、前記振動板26の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板26の中央凹部26aと対向する前記磁気回路25のポールピース23の表面も凹形状に形成し、、振動板26の振幅を十分に確保しながら、振動板26の高さを低く抑える。そしてヨーク21とフレーム29との結合部30と振動板26との隙間31の狭小化を伴わない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機等に内蔵される小型のスピーカやレシーバ等電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気音響変換器は図5に示すように磁性材料からなる有底筒状のヨーク1と、このヨーク1の内側底部に固定した柱状のマグネット2と、このマグネット2の上面に固定した磁性材料からなる板状のポールピース3とで、ポールピース3とヨーク1の周側壁端部との間に磁気ギャップ4を形成した磁気回路5を構成すると共に、上方に膨らんだセンタードーム部6aの周縁に環状のエッジ部6bを一体に設けた樹脂や金属のフィルムからなる振動板6と、この振動板6のセンタードーム部6aとエッジ部6bとの境目部分の裏面に上端を固定した筒状のボイスコイル7とで振動系を構成している。そして前記磁気回路5のヨーク1の外側には一対の接続端子8を固定した絶縁材料からなるフレーム9が固定され、このフレーム9の周縁部に前記振動板6の周縁部(エッジ部6bの外周縁部)を固定し、前記ボイスコイル7を前記磁気回路5の磁気ギャップ4内に上下動自在に挿嵌し、ボイスコイル7から引出した2本のリード線7aを接続端子8に半田付けSして構成していた。このように構成した電気音響変換器は外部回路から接続端子8を介してボイスコイル7に電気音響信号を入力することにより、磁気ギャップ4の磁界との電磁作用でボイスコイル7が上下に振動し、それに伴って振動板6が上下に振動して音を発生するものである。
【0003】
この種電気音響変換器は全体の薄型化を図るべく、フレーム9をヨーク1の開口端より一段下げた位置から外側に固定している。つまり磁気回路5の上部をフレーム9から上方に突出し、磁気回路5の電気音響変換器底面側への突出量を抑えるようにしていた。これに伴いフレーム9の固定端にはヨーク1の開口端部外面に沿ってリブ9aが立上げられている(例えば「特許文献1」「特許文献2」参照)。
【特許文献1】特開2003−153382号公報
【特許文献2】特開2004−356713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の電気音響変換器は磁気回路5の電気音響変換器底面側への突出量を抑えることにより全体の薄型化を図ったが、この方法ではボイスコイル7の直ぐ外側のヨーク1とフレームとの結合部10と振動板6(エッジ部6bの内周縁部)との隙間11の狭小化を伴うため、さらなる電気音響変換器の薄型化は望めない。加えて前記隙間11にはボイスコイル7のリード線7aを通すため、狭小化に伴って前記結合部10にリード線7aが接触して断線し易くなることも、上記方法でのさらなる電気音響変換器の薄型化が望めない要因になっている。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みさらなる薄型化を実現できる電気音響変換器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記振動板の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板の中央凹部と対向する前記磁気回路のポールピースの表面も凹形状に形成したことを特徴とするものである。この構成により振動板の振幅を十分に確保しながら、振動板の高さを低く抑えることができるため、音響性能低下を招くことなく、さらなる電気音響変換器の薄型化を実現することができる。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記ヨークと前記フレームの結合部に前記振動板との隙間を部分的に拡大するための切欠きを設けたことを特徴とするものである。この構成によりボイスコイルのリード線を前記切欠きを通して半田付け部まで引出すことにより、前記結合部と前記振動板との隙間に少なくともボイスコイルのリード線が使用していた分の余裕ができるため、この隙間の狭小化を伴う従来の方法で、ボイスコイルのリード線の断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化を実現することができる。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は請求項1に記載の電気音響変換器と請求項2に記載の電気音響変換器とを組み合わせたことを特徴とするもので、請求項1に係る発明と請求項2に係る発明の両面から、音響性能低下を招くことなく、またボイスコイルのリード線の断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記のように本発明は電気音響変換器のさらなる薄型化を実現することができると共に、それに伴う音響性能低下やボイスコイルのリード線の断線を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る電気音響変換器の断面図、図2は同電気音響変換器の外観図、図3は同電気音響変換器のバッフル及び振動板を除去した状態の外観図(ただし振動板リングは残す)、図4は同電気音響変換器の接続端子基部の平面図である。
【0011】
本実施の形態の電気音響変換器は磁性材料からなる有底円筒状のヨーク21と、このヨーク21の内側底部に固定した円柱状のマグネット22と、このマグネット22の上面に固定した磁性材料からなる円板状のポールピース23とで、ポールピース23とヨーク21の周側壁端部との間に磁気ギャップ24を形成した内磁型の磁気回路25を構成すると共に、円形の振動板リング26aに周縁部を接着固定した樹脂や金属のフィルムからなる円形の振動板26と、この振動板26の裏面に上端を固定した円筒状のボイスコイル27とで振動系を構成している。そして前記磁気回路25のヨーク21の外側には一対の接続端子28を固定した絶縁材料からなるフレーム29が固定され、このフレーム29の周縁部に前記振動板26の周縁部を振動板リング26aを介して接着固定し、前記ボイスコイル27を前記磁気回路25の磁気ギャップ24内に上下動自在に挿嵌し、ボイスコイル27から引出した2本のリード線27aを接続端子28に半田付けS(スポット溶接でも可)して構成している。このように構成した電気音響変換器は外部回路から接続端子28を介してボイスコイル27に電気音響信号を入力することにより、磁気ギャップ24の磁界との電磁作用でボイスコイル27が上下に振動し、それに伴って振動板26が上下に振動して音を発生するものである。
【0012】
ここで前記フレーム29は一端が磁気回路25と同芯の半円形に丸められ、他端を角張らせた平面視略かまぼこ形の板状に形成されており、このフレーム29の周縁部には外壁面がフレーム29の外周縁に沿って立上り、かつ内壁面が振動板26の外周縁に沿って立上がり、かつフレーム29の角張った端部側の一部が破られた段付きの平面視略C形の側壁29aが立設されており、この側壁29aの内壁段差面29a'に前記振動板26の周縁部が振動板リング26aを介して接着固定されている。つまり振動板26は前記フレーム29の表面よりやや持ち上げられて固定されている。またフレーム29の側壁29aの内側には振動板26を保護するための金属製のバッフル32が嵌着されており、このバッフル32は縁部32aを有し、この縁部32aの端部を振動板26の周縁部の表面に固定し、振動板26の周縁部を振動板リング26aと共にフレーム29の側壁29aの内壁段差面29a'とバッフル32の縁部32aの間に挟込んでいる。バッフル32の天板部表面はフレーム29の側壁29aの端面と略面一になっている。このバッフル32の縁部32aもフレーム29の側壁29aと同様にフレーム29の角張った端部側の一部が破られている。この構成により本実施の形態の電気音響変換器はフレーム29の角張った端部側面に放音孔33が開設され、この放音孔33から振動系の振動方向と直交する側方に向かって音を放射するように構成されている。放音孔33は電気音響変換器の角角張った端部側の表面からその放音孔33を開設した側面に貼付ける補償布(制動布)34により塞がれている。なお天板部に小さい放音孔を多数開設した周知のバッフルを使用し、電気音響変換器の表面側から振動系の振動方向に沿って音を放射することもできる。
【0013】
また前記フレーム29の周縁部には磁気回路25と同芯円上に略等間隔に配設する複数の位置決め孔29bが開設され、この位置決め孔29bは電気音響変換器を携帯電話機等の筺体に取付ける時の位置決めに用いられる。前記磁気回路25のヨーク21の底面周縁部にもこのヨーク21と同芯円上に略等間隔に配設する複数の位置決め孔21aが開設され、この位置決め孔21aは電気音響変換器を組立てる時の構成部品の位置決めに用いられる。
【0014】
また前記フレーム29はインサート成形加工により磁気回路25のヨーク21及び一対の接続端子28と一体に成形されており、この接続端子28は薄板金属を打抜き加工して形成したもので、この接続端子28には一端に設ける横向きの基部28aと、この基部28aの一側端部から直角に延出する細長い可動接片28bと、この可動接片28bの先端部に設ける接点部28cとが連続一体に連設形成されている。各接続端子28は基部28aがフレーム29の角張った端部側に左右対称に埋込み固定され、フレーム29の角張った端部の左右側端部から各接続端子28の可動接片28bが突出されている。図2の実線に示した各接続端子28の可動接片28bはフレーム29の成形後の半製品状態のもので、フレーム29の角張った端部の左右側端部から真っ直ぐに延出されているが、この各接続端子28の可動接片28bは図2の仮想線に示すように電気音響変換器の組立て工程における例えば最終工程において曲げ加工されてフレーム29の裏面側に折返され、電気音響変換器の裏面側の左右側部に先端部に機器側基板との接点部28cを設けた片持ち梁状の可動接片28bを設けるように構成している。
【0015】
また前記フレーム29の角張った端部表面の左右中央部にはその左右外側の側壁29aの端部より高さの低い隔壁29cが設けられ、この隔壁29cとその左右外側の側壁29aの端部との間のフレーム29の表面(図4に斜線で示す部分)に接続端子28の基部28aの一部を略面一に露出し、フレーム29の角張った端部表面の左右側部にボイスコイル27から引出した2本のリード線27aの端部を半田付けSするための一対の半田付け部29dを設けている。なお前記隔壁29cは側壁29aの内壁段差面29a'と略同じ高さに設けられ、この隔壁29cの内側端部上面にて側壁29aの端部間(側壁29aが破られた部分)における前記振動板26の周縁部を振動板リング26aを介して接着固定し、振動板26を前記フレーム29の表面よりやや持ち上げて固定している。
【0016】
本実施の形態の電気音響変換器はこれを薄型化するために以下のような構成を採用している。
【0017】
先ず図1に示すようにフレーム29をヨーク21の開口端より一段下げた位置から外側に固定している。つまり磁気回路25の上部をフレーム29から上方に突出し、磁気回路25の電気音響変換器底面側への突出量を抑えるように構成している。
【0018】
上記構成に伴いフレーム29の固定端にはヨーク21の開口端部外面に沿ってリブ29eが立上げられている。このためヨーク21の開口端部とその外側のフレーム29のリブ29b、つまりヨーク21とフレーム29の結合部20がフレーム29の表面から一段突出し、この結合部20と振動板26との隙間31が狭くなっている。つまりボイスコイル27の直ぐ外側に前記結合部20が土手のように突出し、振動板26との隙間31が狭くなっている。
【0019】
また図1に示すように前記振動板26を磁気回路25側に向かって下方に膨らんだセンター逆ドーム部26aと、このセンター逆ドーム部26aの周縁に一体に設けた環状のエッジ部26bとで構成し、前記振動板26の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板26の中央凹部であるセンター逆ドーム部26aと対向する磁気回路25のポールピース23の中央部表面に球面の一部でなる凹部23aを設け、振動板26の中央凹部であるセンター逆ドーム部26aと対向する磁気回路25のポールピース23の中央部表面も凹形状に形成している。この構成により振動板26の振幅を十分に確保しながら、振動板26の高さを低く抑えることができるため、音響性能低下を招くことなく、さらなる電気音響変換器の薄型化が可能になっている。またこの方法では結合部20と振動板26との隙間31の狭小化も伴わないため、ボイスコイル27のリード線27aの断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化が可能になっている。なおボイスコイル27は前記振動板26のセンター逆ドーム部26aとエッジ部26bとの境目部分の裏面に上端が固定されている。ここで振動板26のセンター逆ドーム部26の表面又は裏面にセンター逆ドーム部26と同じ形状のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを重ね合わせ、センター逆ドーム部26を二重構造に構成することにより、共振周波数を下げると共に、振動板26の剛性を高め、耐入力低下を防止できるため、電気音響変換器の低音再生能力を高めることができる。
【0020】
さらに図3に示すようにボイスコイル27の直ぐ外側に土手のように存在するヨーク21とフレーム29の前記結合部30に前記振動板26(エッジ部26bの内周縁部)との前記隙間31を部分的に拡大するためこの結合部30の左右2箇所に切欠き30aを設け、ボイスコイル27の一方のリード線27aをボイスコイル本体からその直ぐ左側に設けた切欠き30aを通して前記結合部30の外周側のフレーム29の周縁部と振動板26のエッジ部26bとの広い隙間に引出した後、その広い隙間からさらに隔壁29cとその左外側の側壁29aの一端部との間における前記振動板リング26aと前記フレーム29との隙間を通して左側の前記半田付け部29dまで引出し、一方のリード線27aの端部を左側の前記半田付け部29dに半田付けSすると共に、ボイスコイル27の他方のリード線27aをボイスコイル本体からその直ぐ右側に設けた切欠き30aを通して前記結合部30の外周側のフレーム29の周縁部と振動板26のエッジ部26bとの広い隙間に引出した後、その広い隙間からさらに隔壁29cとその右外側の側壁29aの他端部との間における前記振動板リング26aと前記フレーム29との隙間を通して右側の前記半田付け部29bまで引出し、他方のリード線27aの端部を右側の前記半田付け部29dに半田付けSするように構成している。この構成により前記結合部30と前記振動板26との隙間31に少なくともボイスコイル27のリード線27aが使用していた分の余裕ができるため、この隙間31の狭小化を伴う上記した磁気回路25の電気音響変換器底面側への突出量を抑える方法で、ボイスコイル27のリード線27aの断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化が可能になっている。ここでボイスコイル27のリード線27aは図1に示すようにボイスコイル本体から半田付け部29dまでを振動板26の裏面に沿わせることが望ましい。この構成によりボイスコイル27のリード線27aを上記切欠き30aを通過する引出し経路でボイスコイル本体から半田付け部29dに引出すことができ、電気音響変換器の薄型化に伴うボイスコイル27のリード線27aの断線をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気音響変換器の断面図である。
【図2】同電気音響変換器の外観図である。
【図3】同電気音響変換器のバッフル及び振動板を除去した状態の外観図(ただし振動板リングは残す)である。
【図4】同電気音響変換器の接続端子基部の平面図である。
【図5】従来の電気音響変換器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
21 ヨーク
22 マグネット
23 ポールピース
23a 凹部
24 磁気ギャップ
25 磁気回路
26 振動板
26a センター逆ドーム部
27 ボイスコイル
29 フレーム
30 結合部
30a 切欠き
31 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機等に内蔵される小型のスピーカやレシーバ等電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気音響変換器は図5に示すように磁性材料からなる有底筒状のヨーク1と、このヨーク1の内側底部に固定した柱状のマグネット2と、このマグネット2の上面に固定した磁性材料からなる板状のポールピース3とで、ポールピース3とヨーク1の周側壁端部との間に磁気ギャップ4を形成した磁気回路5を構成すると共に、上方に膨らんだセンタードーム部6aの周縁に環状のエッジ部6bを一体に設けた樹脂や金属のフィルムからなる振動板6と、この振動板6のセンタードーム部6aとエッジ部6bとの境目部分の裏面に上端を固定した筒状のボイスコイル7とで振動系を構成している。そして前記磁気回路5のヨーク1の外側には一対の接続端子8を固定した絶縁材料からなるフレーム9が固定され、このフレーム9の周縁部に前記振動板6の周縁部(エッジ部6bの外周縁部)を固定し、前記ボイスコイル7を前記磁気回路5の磁気ギャップ4内に上下動自在に挿嵌し、ボイスコイル7から引出した2本のリード線7aを接続端子8に半田付けSして構成していた。このように構成した電気音響変換器は外部回路から接続端子8を介してボイスコイル7に電気音響信号を入力することにより、磁気ギャップ4の磁界との電磁作用でボイスコイル7が上下に振動し、それに伴って振動板6が上下に振動して音を発生するものである。
【0003】
この種電気音響変換器は全体の薄型化を図るべく、フレーム9をヨーク1の開口端より一段下げた位置から外側に固定している。つまり磁気回路5の上部をフレーム9から上方に突出し、磁気回路5の電気音響変換器底面側への突出量を抑えるようにしていた。これに伴いフレーム9の固定端にはヨーク1の開口端部外面に沿ってリブ9aが立上げられている(例えば「特許文献1」「特許文献2」参照)。
【特許文献1】特開2003−153382号公報
【特許文献2】特開2004−356713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の電気音響変換器は磁気回路5の電気音響変換器底面側への突出量を抑えることにより全体の薄型化を図ったが、この方法ではボイスコイル7の直ぐ外側のヨーク1とフレームとの結合部10と振動板6(エッジ部6bの内周縁部)との隙間11の狭小化を伴うため、さらなる電気音響変換器の薄型化は望めない。加えて前記隙間11にはボイスコイル7のリード線7aを通すため、狭小化に伴って前記結合部10にリード線7aが接触して断線し易くなることも、上記方法でのさらなる電気音響変換器の薄型化が望めない要因になっている。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みさらなる薄型化を実現できる電気音響変換器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記振動板の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板の中央凹部と対向する前記磁気回路のポールピースの表面も凹形状に形成したことを特徴とするものである。この構成により振動板の振幅を十分に確保しながら、振動板の高さを低く抑えることができるため、音響性能低下を招くことなく、さらなる電気音響変換器の薄型化を実現することができる。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記ヨークと前記フレームの結合部に前記振動板との隙間を部分的に拡大するための切欠きを設けたことを特徴とするものである。この構成によりボイスコイルのリード線を前記切欠きを通して半田付け部まで引出すことにより、前記結合部と前記振動板との隙間に少なくともボイスコイルのリード線が使用していた分の余裕ができるため、この隙間の狭小化を伴う従来の方法で、ボイスコイルのリード線の断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化を実現することができる。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は請求項1に記載の電気音響変換器と請求項2に記載の電気音響変換器とを組み合わせたことを特徴とするもので、請求項1に係る発明と請求項2に係る発明の両面から、音響性能低下を招くことなく、またボイスコイルのリード線の断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記のように本発明は電気音響変換器のさらなる薄型化を実現することができると共に、それに伴う音響性能低下やボイスコイルのリード線の断線を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る電気音響変換器の断面図、図2は同電気音響変換器の外観図、図3は同電気音響変換器のバッフル及び振動板を除去した状態の外観図(ただし振動板リングは残す)、図4は同電気音響変換器の接続端子基部の平面図である。
【0011】
本実施の形態の電気音響変換器は磁性材料からなる有底円筒状のヨーク21と、このヨーク21の内側底部に固定した円柱状のマグネット22と、このマグネット22の上面に固定した磁性材料からなる円板状のポールピース23とで、ポールピース23とヨーク21の周側壁端部との間に磁気ギャップ24を形成した内磁型の磁気回路25を構成すると共に、円形の振動板リング26aに周縁部を接着固定した樹脂や金属のフィルムからなる円形の振動板26と、この振動板26の裏面に上端を固定した円筒状のボイスコイル27とで振動系を構成している。そして前記磁気回路25のヨーク21の外側には一対の接続端子28を固定した絶縁材料からなるフレーム29が固定され、このフレーム29の周縁部に前記振動板26の周縁部を振動板リング26aを介して接着固定し、前記ボイスコイル27を前記磁気回路25の磁気ギャップ24内に上下動自在に挿嵌し、ボイスコイル27から引出した2本のリード線27aを接続端子28に半田付けS(スポット溶接でも可)して構成している。このように構成した電気音響変換器は外部回路から接続端子28を介してボイスコイル27に電気音響信号を入力することにより、磁気ギャップ24の磁界との電磁作用でボイスコイル27が上下に振動し、それに伴って振動板26が上下に振動して音を発生するものである。
【0012】
ここで前記フレーム29は一端が磁気回路25と同芯の半円形に丸められ、他端を角張らせた平面視略かまぼこ形の板状に形成されており、このフレーム29の周縁部には外壁面がフレーム29の外周縁に沿って立上り、かつ内壁面が振動板26の外周縁に沿って立上がり、かつフレーム29の角張った端部側の一部が破られた段付きの平面視略C形の側壁29aが立設されており、この側壁29aの内壁段差面29a'に前記振動板26の周縁部が振動板リング26aを介して接着固定されている。つまり振動板26は前記フレーム29の表面よりやや持ち上げられて固定されている。またフレーム29の側壁29aの内側には振動板26を保護するための金属製のバッフル32が嵌着されており、このバッフル32は縁部32aを有し、この縁部32aの端部を振動板26の周縁部の表面に固定し、振動板26の周縁部を振動板リング26aと共にフレーム29の側壁29aの内壁段差面29a'とバッフル32の縁部32aの間に挟込んでいる。バッフル32の天板部表面はフレーム29の側壁29aの端面と略面一になっている。このバッフル32の縁部32aもフレーム29の側壁29aと同様にフレーム29の角張った端部側の一部が破られている。この構成により本実施の形態の電気音響変換器はフレーム29の角張った端部側面に放音孔33が開設され、この放音孔33から振動系の振動方向と直交する側方に向かって音を放射するように構成されている。放音孔33は電気音響変換器の角角張った端部側の表面からその放音孔33を開設した側面に貼付ける補償布(制動布)34により塞がれている。なお天板部に小さい放音孔を多数開設した周知のバッフルを使用し、電気音響変換器の表面側から振動系の振動方向に沿って音を放射することもできる。
【0013】
また前記フレーム29の周縁部には磁気回路25と同芯円上に略等間隔に配設する複数の位置決め孔29bが開設され、この位置決め孔29bは電気音響変換器を携帯電話機等の筺体に取付ける時の位置決めに用いられる。前記磁気回路25のヨーク21の底面周縁部にもこのヨーク21と同芯円上に略等間隔に配設する複数の位置決め孔21aが開設され、この位置決め孔21aは電気音響変換器を組立てる時の構成部品の位置決めに用いられる。
【0014】
また前記フレーム29はインサート成形加工により磁気回路25のヨーク21及び一対の接続端子28と一体に成形されており、この接続端子28は薄板金属を打抜き加工して形成したもので、この接続端子28には一端に設ける横向きの基部28aと、この基部28aの一側端部から直角に延出する細長い可動接片28bと、この可動接片28bの先端部に設ける接点部28cとが連続一体に連設形成されている。各接続端子28は基部28aがフレーム29の角張った端部側に左右対称に埋込み固定され、フレーム29の角張った端部の左右側端部から各接続端子28の可動接片28bが突出されている。図2の実線に示した各接続端子28の可動接片28bはフレーム29の成形後の半製品状態のもので、フレーム29の角張った端部の左右側端部から真っ直ぐに延出されているが、この各接続端子28の可動接片28bは図2の仮想線に示すように電気音響変換器の組立て工程における例えば最終工程において曲げ加工されてフレーム29の裏面側に折返され、電気音響変換器の裏面側の左右側部に先端部に機器側基板との接点部28cを設けた片持ち梁状の可動接片28bを設けるように構成している。
【0015】
また前記フレーム29の角張った端部表面の左右中央部にはその左右外側の側壁29aの端部より高さの低い隔壁29cが設けられ、この隔壁29cとその左右外側の側壁29aの端部との間のフレーム29の表面(図4に斜線で示す部分)に接続端子28の基部28aの一部を略面一に露出し、フレーム29の角張った端部表面の左右側部にボイスコイル27から引出した2本のリード線27aの端部を半田付けSするための一対の半田付け部29dを設けている。なお前記隔壁29cは側壁29aの内壁段差面29a'と略同じ高さに設けられ、この隔壁29cの内側端部上面にて側壁29aの端部間(側壁29aが破られた部分)における前記振動板26の周縁部を振動板リング26aを介して接着固定し、振動板26を前記フレーム29の表面よりやや持ち上げて固定している。
【0016】
本実施の形態の電気音響変換器はこれを薄型化するために以下のような構成を採用している。
【0017】
先ず図1に示すようにフレーム29をヨーク21の開口端より一段下げた位置から外側に固定している。つまり磁気回路25の上部をフレーム29から上方に突出し、磁気回路25の電気音響変換器底面側への突出量を抑えるように構成している。
【0018】
上記構成に伴いフレーム29の固定端にはヨーク21の開口端部外面に沿ってリブ29eが立上げられている。このためヨーク21の開口端部とその外側のフレーム29のリブ29b、つまりヨーク21とフレーム29の結合部20がフレーム29の表面から一段突出し、この結合部20と振動板26との隙間31が狭くなっている。つまりボイスコイル27の直ぐ外側に前記結合部20が土手のように突出し、振動板26との隙間31が狭くなっている。
【0019】
また図1に示すように前記振動板26を磁気回路25側に向かって下方に膨らんだセンター逆ドーム部26aと、このセンター逆ドーム部26aの周縁に一体に設けた環状のエッジ部26bとで構成し、前記振動板26の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板26の中央凹部であるセンター逆ドーム部26aと対向する磁気回路25のポールピース23の中央部表面に球面の一部でなる凹部23aを設け、振動板26の中央凹部であるセンター逆ドーム部26aと対向する磁気回路25のポールピース23の中央部表面も凹形状に形成している。この構成により振動板26の振幅を十分に確保しながら、振動板26の高さを低く抑えることができるため、音響性能低下を招くことなく、さらなる電気音響変換器の薄型化が可能になっている。またこの方法では結合部20と振動板26との隙間31の狭小化も伴わないため、ボイスコイル27のリード線27aの断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化が可能になっている。なおボイスコイル27は前記振動板26のセンター逆ドーム部26aとエッジ部26bとの境目部分の裏面に上端が固定されている。ここで振動板26のセンター逆ドーム部26の表面又は裏面にセンター逆ドーム部26と同じ形状のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを重ね合わせ、センター逆ドーム部26を二重構造に構成することにより、共振周波数を下げると共に、振動板26の剛性を高め、耐入力低下を防止できるため、電気音響変換器の低音再生能力を高めることができる。
【0020】
さらに図3に示すようにボイスコイル27の直ぐ外側に土手のように存在するヨーク21とフレーム29の前記結合部30に前記振動板26(エッジ部26bの内周縁部)との前記隙間31を部分的に拡大するためこの結合部30の左右2箇所に切欠き30aを設け、ボイスコイル27の一方のリード線27aをボイスコイル本体からその直ぐ左側に設けた切欠き30aを通して前記結合部30の外周側のフレーム29の周縁部と振動板26のエッジ部26bとの広い隙間に引出した後、その広い隙間からさらに隔壁29cとその左外側の側壁29aの一端部との間における前記振動板リング26aと前記フレーム29との隙間を通して左側の前記半田付け部29dまで引出し、一方のリード線27aの端部を左側の前記半田付け部29dに半田付けSすると共に、ボイスコイル27の他方のリード線27aをボイスコイル本体からその直ぐ右側に設けた切欠き30aを通して前記結合部30の外周側のフレーム29の周縁部と振動板26のエッジ部26bとの広い隙間に引出した後、その広い隙間からさらに隔壁29cとその右外側の側壁29aの他端部との間における前記振動板リング26aと前記フレーム29との隙間を通して右側の前記半田付け部29bまで引出し、他方のリード線27aの端部を右側の前記半田付け部29dに半田付けSするように構成している。この構成により前記結合部30と前記振動板26との隙間31に少なくともボイスコイル27のリード線27aが使用していた分の余裕ができるため、この隙間31の狭小化を伴う上記した磁気回路25の電気音響変換器底面側への突出量を抑える方法で、ボイスコイル27のリード線27aの断線防止を図りながら、さらなる電気音響変換器の薄型化が可能になっている。ここでボイスコイル27のリード線27aは図1に示すようにボイスコイル本体から半田付け部29dまでを振動板26の裏面に沿わせることが望ましい。この構成によりボイスコイル27のリード線27aを上記切欠き30aを通過する引出し経路でボイスコイル本体から半田付け部29dに引出すことができ、電気音響変換器の薄型化に伴うボイスコイル27のリード線27aの断線をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気音響変換器の断面図である。
【図2】同電気音響変換器の外観図である。
【図3】同電気音響変換器のバッフル及び振動板を除去した状態の外観図(ただし振動板リングは残す)である。
【図4】同電気音響変換器の接続端子基部の平面図である。
【図5】従来の電気音響変換器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
21 ヨーク
22 マグネット
23 ポールピース
23a 凹部
24 磁気ギャップ
25 磁気回路
26 振動板
26a センター逆ドーム部
27 ボイスコイル
29 フレーム
30 結合部
30a 切欠き
31 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記振動板の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板の中央凹部と対向する前記磁気回路のポールピースの表面も凹形状に形成したことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記ヨークと前記フレームの結合部に前記振動板との隙間を部分的に拡大するための切欠きを設けたことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項3】
請求項1に記載の電気音響変換器と請求項2に記載の電気音響変換器とを組み合わせたことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項1】
磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記振動板の中央部を凹形状に形成すると共に、この振動板の中央凹部と対向する前記磁気回路のポールピースの表面も凹形状に形成したことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
磁気回路と、この磁気回路のヨークに固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板に固定されて一部が前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルとを備える電気音響変換器において、前記ヨークと前記フレームの結合部に前記振動板との隙間を部分的に拡大するための切欠きを設けたことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項3】
請求項1に記載の電気音響変換器と請求項2に記載の電気音響変換器とを組み合わせたことを特徴とする電気音響変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2007−104541(P2007−104541A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294701(P2005−294701)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】
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