説明

電気PTCサーミスタ部品とその製造方法

【課題】特性許容誤差を低くするPTCサーミスタ部品とその製造方法を提供する。
【解決手段】ベース本体1と、それぞれ前記ベース本体1の端面上に配置された第1の導電層と第2の導電層とを有する。第1の導電層は空乏層を破壊するバリア層21、22である。ベースの周面は第1の導電層がなく、第2の導電層はベースの各端面上に配置されたキャップ31、32を形成する。さらに、前記第1の導電層は、部品領域の分割前に基板の主要面上にスパッタを通じて生成される。キャップの形状をした第2の導電層は、分割された部品領域の端面上に、浸漬過程で生成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
セラミック部品は、その製造方法と同様に、例えば、独国特許出願公開第4029681号公報、独国特許出願公開第10218154号公報、及び独国特許出願公開第4207915号公報で知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
1つの達成すべき課題は、電気特性に関して特に低い許容誤差を有するPTCサーミスタ部品を特定することにある。もう1つの達成すべき課題は、そのような部品の製造方法を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
電気PTCサーミスタの要素は、例えばPTCセラミックから形成されるベース本体とともに特定される。PTCは、Positive Temperature Coefficientを表す。前記部品は、前記ベース本体の端面に有利に配置された第1及び第2の導電層から構成される。前記ベース本体の周面は、前記第1の導電層がない。前記第2の導電層は、前記ベース本体の端面を覆い、その縁と重なる1つのキャップ(cap)を形成し、この第2の層は部分的に前記ベース本体の周面上にある。
【0004】
1つの推奨される変形において、第1及び第2の導電層は、各端面上に備えられる。前記部品は、有利に鏡面対称性を有する。
【0005】
前記第1の導電層は、前記ベース本体の対応する端面に限られる。前記第2の導電層と対照的に、前記第1の導電層は、前記縁と重なっていない。前記第1の導電層は、前記ベース本体と接触する。前記第2の導電層の端面領域は、前記第1の導電層上に配置され、前記第2の導電層の別の領域は、前記ベース本体の周面と接触している。
【0006】
前記第1の導電層は、有利には、空乏層(depletion layer)を破壊するバリア層(barrier layer)である。前記第1の導電層と対照的に、前記第2の導電層は、バリア層として備えられておらず、代わりに前記部品の電気端子として備えられている。この端子は、例えばプリント基板とはんだ付けするために備えられ、表面実装に適している。
【0007】
従って、前記部品は、有利に表面実装されうる。前記ベース本体は、有利に長方形の横断面を有するか、又はその周面は少なくとも1つの平坦な側面を有する。
【0008】
前記第1の導電層も前記第2の導電層もともに、様々な材料から形成されたいくつかの副層(sub-layers)を有しうる。各導電層における下層、すなわち前記ベース本体と面している層は、有利に接合層である。前記第1の導電層は、接合層として例えばクロムを含有する副層を有しうる。ニッケルを含有する接合層は、有利にこのクロムを含有する層の上に蒸着する。
【0009】
前記第2の導電層は、例えば、銀を含有する下副層と、ニッケルを含有する中間副層と、そして特に、はんだ付けされうる錫を含有する上副層を有しうる。銀の下層は、ニッケルめっきの前に、Pd活性剤により活性化する。
【0010】
前記第1の導電層の最下副層は、有利にスパッタされ、任意で電気的に強化される。前記第1の導電層の付加的な副層は、例えば、化学的にまたは電気的に、蒸着されうる。しかし、前記第1の導電層の副層は、スクリーン印刷とその後のバーンインによってもまた、生成されうる。
【0011】
前記第2の導電層は、浸漬過程(dipping process)を通して蒸着した少なくとも1つの層、例えば銀を含有する層を有利に有しうる。これは、有利に前記第2の導電層の最下層である。上記で述べたように、少なくとも1つの追加的な層もまた、浸漬過程において、スクリーン印刷で、又は化学的又は電気的な過程で生成され、最下層の上に蒸着しうる。
【0012】
さらに、PTCサーミスタ部品の製造方法が以下の方法で特定される。
A)バリア層(第1の導電層)は、部品領域として備えられている領域を備える大面積基板の主要面上にスパッタにより蒸着され、
B)前記基板は、部品領域によって分割され、各分割された部品領域はベース本体を備え、前記バリア層は前記ベース本体の2つの端面上に配置され、
C)前記端面上に配置された導電性のキャップ(第2の導電層)は、分割された部品領域に、浸漬過程において生成される。
【0013】
前記大面積基板は、規定の性質を有するセラミック含有材料を挿圧し、その後に焼結することにより、有利に生成される。1つ変形において、50%セラミック材料ML151と50%セラミック材料ML251は、乾式または湿式法で均質化される。その混合物は、有利に、一軸乾式プレスで、挿圧され、焼結される。前記基板は、有利に、1つの変形では単に焼結された後に、規定の厚さまで重ねられ、スパッタ層の接合力を改善するため規定の時間硫酸を含む溶液の中に保持され、そして洗浄される。
【0014】
前記バリア層を生成するため、前記基板の主要面は、金属化される。1つの推奨される変形は、有利にクロムを含有する層がスパッタにより最初に蒸着される。Cr層は例えば0.1〜1.0μmの厚さで生成される。そして、ニッケルを含有する層は、例えば0.1〜1.0μmの厚さを有し、有利に、スパッタを通して蒸着され、電気的にまたは化学的に1μmを有利に超え、例えば2〜10μmと等しい厚さとなるまで強化される。金属化の後、前記基板は、有利に分割された部品領域を形成するように切断される。
【0015】
キャップが適用される前、前記ベース本体の端面と周面の間の縁は、水とSiC粉末の添加による摩耗を通して、丸くまたは少なくとも平坦にされる。
【0016】
導電性のキャップは、浸漬過程で蒸着され、各ベース本体は、金属を含有するペースト、有利には、浸漬の後に、有利には空気雰囲気で、かつ最高900℃の温度でバーンインされる銀を含有するペーストの中で、浸漬される。このようにして生成された金属層は、層が一様な厚さになるまで、有利には例えば水とSiC粉末を加えて、摩耗させられ、そして/または磨かれる。
【0017】
前記導電性のキャップは、研磨の後、有利には明示された順序で、Pd活性剤で活性化し、ニッケルめっきをされ、そして錫めっきをされる。ニッケルめっきは、有利には化学的に、すなわち電流なしで実行される。錫めっきは、有利には電気的に実行される。原則として、Pd活性剤はニッケルめっきが電気的に実行されるならば、除かれうる。
【0018】
記載した方法で生成されたPTCサーミスタ部品は、その後測定され、評価され、欠陥部品を排除する間に、テープで貼られる。
【0019】
前記バリア層は、前記部品領域の分割の後よりもむしろ前に、浸漬過程で生成されるため、前記部品の電気的特性を定義する幾何学的寸法と、前記部品の電気的特性に関するこのような製造ばらつきもまた、小さく保たれうる利点がある。前記導電性のキャップは、実際に直接前記ベース本体に接触するが、前記部品の電気抵抗に基本的に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】蒸着されたバリア層とまだ分割されていない部品領域を有する大面積基板
【図2】分割された部品領域
【図3】浸漬過程前の丸い縁をもつ分割された部品領域
【図4】浸漬過程後の分割された部品領域
【図5】完成部品
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定した部品の製造過程は、実施通りの寸法でない概略図を参照して説明される。
【0022】
図1は、2つの主要面上に蒸着されたバリア層21、22を有する大面積基板10を示す。基板10は、まだ分割されていない部品領域101〜106を有する。切断線、すなわち異なる部品領域との境界線は、破線で示される。
【0023】
各部品領域は、ベース本体1と、その端面上に配置されたバリア層21、22を備える。
【0024】
図1では、大面積基板10は長手方向と垂直に切断される棒として構成される。しかし、大面積基板10は、2次元マトリクスとして配置された部品領域もまた有しうる。ここで、切断が、互いに垂直に延びる方向に実行される。
【0025】
図2と図3において、分割された部品領域101が、摩耗の前と後でそれぞれ示される。銀を含有するキャップ31、32を有する浸漬された部品領域が図4に示される。これらのキャップは、この部品領域の端面を覆い、その縁と重なる。その端面と面するベース本体の側面の縁領域は、キャップ31、32により覆われる。
【0026】
キャップ31、32の錫めっき後の完成された部品が図5に示される。バリア層21、22は、スパッタを通して蒸着され任意で電気的に強化された下副層211、221(例えばCr層)と、図には示されておらず、任意で化学的に蒸着される中間副層(例えばNi層)と、電気的に蒸着される上副層212、222(例えばNi層)を有する。
【0027】
はんだ付けされうる錫を含有する層41、42は、浸漬により作り出された銀を含有するキャップ31、32上に配置される。下側に面するキャップ31、32の領域は、表面実装に適した部品接触(SMDcontacts)を形成する。
【0028】
明示した部品と方法も、副層の数及び材料も、図や特にベース本体の示された形状に表された構成に限られない。スパッタにより蒸着された層の全ては、浸漬過程、またはスクリーン印刷方法とその後のバーンインでも生成されうる。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース本体
10 大面積セラミック基板
21、22 バリア層
211、221 スパッタにより蒸着されたバリア層21、22の副層
212、222 電気的に蒸着されたバリア層21、22の副層
31、32 導電性のキャップ
41、42 はんだ付けされる層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合って位置する端面と、周面とを有するベース本体(1)と、
それぞれ前記ベース本体(1)の1つの端面上に配置された第1の導電層及び第2の導電層と、
を備え、
前記ベース本体(1)の周面は、前記第1の導電層がなく、
前記第2の導電層は、前記ベース本体(1)の1つの端面を覆い、その縁と重なるキャップ(31、32)を形成し、
前記第1の導電層は、スパッタされた副層(211、221)と電気的に蒸着された副層(212、222)とを有する、
ことを特徴とする電気PTCサーミスタ部品。
【請求項2】
前記ベース本体(1)はセラミック材料を含み、
前記第1の導電層は空乏層を破壊するバリア層(21、22)である、
ことを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記第2の導電層は、はんだ付けされる表面を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の部品。
【請求項4】
表面実装可能な請求項1乃至3のいずれか1項に記載の部品。
【請求項5】
前記第2の導電層は、浸漬過程により蒸着された少なくとも1つの層を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の部品。
【請求項6】
前記ベース本体の端面と周面の間の縁が、斜め、または丸い、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の部品。
【請求項7】
A)導電性のバリア層(21、22)が、PTCセラミックを含有し、部品領域として備えられる領域(101−106)を備える大面積基板(10)の主要面上でのスパッタを通じて生成された副層(211、221)に、電気的に副層(212、222)が蒸着されることにより、生成されるステップと、
B)前記基板(10)が、前記部品領域によって分割され、
各分割された部品領域は、ベース本体(1)を備え、バリア層(21、22)は前記ベース本体の2つの端面上に配置されるステップと、
C)前記端面上に配置された導電性のキャップ(31、32)が、前記分割された部品領域上に生成され、
前記導電性のキャップは、浸漬過程で蒸着し、その後バーンインされるステップと、
から構成されるPTCサーミスタ部品の製造方法。
【請求項8】
前記バリア層(21、22)が電気的に強化されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記伝導性のキャップ(31、32)は、前記浸漬過程の後に錫がめっきされることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベース本体の端面と周面の間の縁が、前記キャップの適用前に摩耗により丸くされることを特徴とする請求項7乃至9のうちいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212931(P2012−212931A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151930(P2012−151930)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2009−505718(P2009−505718)の分割
【原出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】