説明

電池用電極材料のイオン電流または電子電流の分離測定装置および測定方法

【課題】電池用電極材料のイオン電流及び電子電流を独立に測定可能な測定装置および測定方法を提供すること。
【解決手段】
測定装置は、2つのポテンショスタットとバイアス電源(Ebias)とを備え、
各ポテンショスタットが、作用極(WE)と、参照極(RE)と、対極(CE)と、電流計(A1L〜A2R)と、作用極及び参照極間の電圧を測定する電圧計と、測定された電圧値に応じた電圧を作用極及び対極間に印加する電源とを有し、
イオン伝導体(T)、電子伝導体(C)が形成された電極材料(S)を測定対象とし、
対極及び参照極がイオン伝導体に接続され、作用極が電子伝導体に接続され、電極材料の開回路電位差を設定値としてポテンショスタットを作動させ、且つ、バイアス電源が作用極間に電圧を印加した測定状態において、
電流計の測定値をイオン電流および電子電流として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池(燃料電池を含む)用の電極材料について、「有効イオン伝導度」を求めるためのイオン電流と「有効電子伝導度」を求めるための電子電流とを、それぞれ独立に測定し、さらには、それらを同時に測定するための計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の電極には一般的に、「電子伝導体の粉末とイオン伝導体の粉末が混合されたもの」または「電子伝導体の粉末から成る多孔質体にイオン伝導体である電解液を染み込ませたもの」が使用される。具体的には、通常の電池の場合、反応性を上げるために粉末状にした電極活物質を集電体上にシート状に成型し、これに電解液が染みこんだ状態で作動させる。また、固体高分子型燃料電池の電極は、電子伝導体である触媒粉末とイオン伝導体である高分子電解質を練り合わせたものをシート状に成型して作製する。従って、いずれも、マクロな材料として見た場合、有効イオン伝導度、有効電子伝導度を定義することができ、これは微視的にはイオン伝導体(あるいは電子伝導体)自体の伝導度、含有率、微視的形状(サイズや相互の連結具合)によって決まると考えられている。
【0003】
電極の性能を評価するためにはこれらの値を知ることが有用であるが、このような混合物の内部のイオン伝導度や電子伝導度を測ることは容易ではない。その理由は、電子伝導体とイオン伝導体の界面では容易に電気化学反応が起こるので、材料の内部を通過するイオン電流と電子電流とは相互に変換しうるため、イオン電流のみ、あるいは電子電流のみを流すことは原理的にできないからである。
【0004】
従って、これらの値を求めるには、
(1)このような電気化学反応の「反応抵抗」について何らかの仮定を置き、これを含めた解析(例えば電極の電気化学インピーダンス測定結果の解釈)を行なう
(2)何らかの方法で電気化学反応を起こさせないようにする
のどちらかの方法をとる必要がある。
【0005】
通常の電池の場合、電子伝導性はイオン伝導性に対して充分高いため実用上は問題にはならず、イオン抵抗のみが測定対象となるが、そのような場合であれば(1)の方法が適用できる。
【0006】
固体高分子型燃料電池の場合、反応物質である燃料ガスや酸素ガスを供給しない条件であれば、電気化学反応は起こらないと期待できるため、(2)の方法が適用できる。すなわち、例えば不活性ガスを供給している条件で、試料にイオン電流を通過させればイオン伝導度が測定され、電子電流を通過させれば電子伝導度が測定される。
【0007】
これまでの有効イオン伝導度の測定例としては、固体高分子型燃料電池の酸素極触媒層内の有効イオン伝導度を推定するため、実際のセル内に組み込んだ状態でインピーダンス測定した例が知られている(下記非特許文献1参照)。この測定では、2つの実験および解析を行っている。一つ目は、酸素極に窒素を供給して実験し、実験結果を、酸素極での電気化学反応が無視できると仮定して解析している。二つ目は、酸素極に酸素を供給して発電状態にして実験し、実験結果を、反応抵抗は触媒層の厚さ方向で一様である(発電反応の分布がない)と仮定して解析している。いずれの場合も電子伝導度は充分高いという前提条件の下での解析である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. Makharia et al, Journal of the Electrochemical Society, 152:5 (2005) A970-A977.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、イオン抵抗と電子抵抗のいずれも無視できない大きさを持つ場合、両者を分離することは困難であり、上記の(1)の方法を適用することができない。
【0010】
また、通常の電池の電極であれば上記の(2)の方法は適用できない。
【0011】
また、固体高分子型燃料電池の場合、不活性雰囲気であっても、電極材料(炭素)表面では意図しない若干の電気化学反応電流が存在し(残余電流と呼ばれる)、これが測定誤差になりうる。また、残余電流が無視できるとしても電子伝導体/イオン伝導体界面電位差が変動すれば界面に存在する容量成分(電気二重層)の充放電電流が流れるため、交流を用いて測定する場合、この影響を解析に含めなければならない。
【0012】
また、固体高分子型燃料電池に関する非特許文献1に開示された方法は、特定の仮定の下での解析に過ぎない。
【0013】
いずれにせよ、有効イオン伝導度、有効電子伝導度を個別に正確に測定することは困難であった。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決すべく、電池の電極材料について、「有効イオン伝導度」を求めるためのイオン電流と「有効電子伝導度」を求めるための電子電流とを、それぞれ独立に測定することができ、さらには、それらを同時に測定することができる測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。ここで、本発明の理解を容易にするために符号を記載しているが、これは本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0016】
即ち、本発明に係る第1の測定装置は、電池の電極材料(S)の電子電流を測定する装置であって、
第1ポテンショスタット、第2ポテンショスタット、およびバイアス電源(Ebias)を備え、
前記第1ポテンショスタットが、
第1作用極(WE(L))と、
第1参照極(RE(L))と、
第1対極(CE(L))と、
前記第1作用極に流れる電流を測定する電流計(Ae(L))と、
前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計(V(L))と、
前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源(Eapp(L))とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、
第2作用極(WE(R))と、
第2参照極(RE(R))と、
第2対極(CE(R))と、
前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第2電圧計(V(R))と、
前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第2電源(Eapp(R))とを有し、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加可能に接続されており、
前記電極材料(S)の表面に、第1イオン伝導体(T(L))、第1電子伝導体(C(L))、第2イオン伝導体(T(R))、第2電子伝導体(C(R))が形成された前記電極材料(S)を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間に前記バイアス電圧を印加した測定状態において、
前記電流計の測定値を前記電子電流として決定することを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る第2の測定装置は、電池の電極材料(S)のイオン電流を測定する装置であって、
第1ポテンショスタット、第2ポテンショスタット、およびバイアス電源(Ebias)を備え、
前記第1ポテンショスタットが、
第1作用極(WE(L))と、
第1参照極(RE(L))と、
第1対極(CE(L))と、
前記第1対極に流れる電流を測定する電流計(Aion(L))と、
前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計(V(L))と、
前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源(Eapp(L))とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、
第2作用極(WE(R))と、
第2参照極(RE(R))と、
第2対極(CE(R))と、
前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第2電圧計(V(R))と、
前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第2電源(Eapp(R))とを有し、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加可能に接続されており、
前記電極材料(S)の表面に、第1イオン伝導体(T(L))、第1電子伝導体(C(L))、第2イオン伝導体(T(R))、第2電子伝導体(C(R))が形成された前記電極材料(S)を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間に前記バイアス電圧を印加した測定状態において、
前記電流計の測定値を前記イオン電流として決定することを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る第3の測定装置は、上記の第1または第2の測定装置において、
前記第1ポテンショスタットが、前記第1電源による電圧の印加を制御する第1スイッチ(SW(L))をさらに有し、
前記第2ポテンショスタットが、前記第2電源による電圧の印加を制御する第2スイッチ(SW(R))をさらに有し、
前記開回路電位差が、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが開放された状態における、前記第1電圧計または第2電圧計の測定値であることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る第4の測定装置は、上記の第1〜第3の測定装置の何れかにおいて、
前記第1イオン伝導体および前記第2イオン伝導体が、所定距離だけ離隔されて前記電極材料の一方の表面に配置され、
前記第1電子伝導体が、前記電極材料の他方の表面上において前記第1イオン伝導体に対向する位置に配置され、且つ、
前記第2電子伝導体が、前記電極材料の他方の表面上において前記第2イオン伝導体に対向する位置に配置された前記電極材料を測定対象とすることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る第1の測定方法は、第1ポテンショスタットおよび第2ポテンショスタットを用いて電池の電極材料(S)の電子電流を測定する方法であって、
前記第1ポテンショスタットが、第1作用極(WE(L))と、第1参照極(RE(L))と、第1対極(CE(L))と、前記第1作用極に流れる電流を測定する電流計(Ae(L))と
、前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計(V(L))と、前
記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源(Eapp(L))とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、第2作用極(WE(R))と、第2参照極(RE(R))と、第2対極(CE(R))と、前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第
2電圧計(V(R))と、前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定
値に応じた電圧を印加する第2電源(Eapp(R))とを有し、
前記電極材料(S)の表面に、第1イオン伝導体(T(L))、第1電子伝導体(C(L))、第2イオン伝導体(T(R))、第2電子伝導体(C(R))が形成された前記電極材料(S)を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加した状態において、
前記電流計の測定値を前記電子電流として決定することを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る第2の測定方法は、第1ポテンショスタットおよび第2ポテンショスタットを用いて電池の電極材料(S)のイオン電流を測定する方法であって、
前記第1ポテンショスタットが、第1作用極(WE(L))と、第1参照極(RE(L))と、第1対極(CE(L))と、前記第1対極に流れる電流を測定する第2電流計(Aion(L)
)と、前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計(V(L))と
、前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源(Eapp(L))とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、第2作用極(WE(R))と、第2参照極(RE(R))と
、第2対極(CE(R))と、前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第
2電圧計(V(R))と、前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定
値に応じた電圧を印加する第2電源(Eapp(R))とを有し、
前記電極材料(S)の表面に、第1イオン伝導体(T(L))、第1電子伝導体(C(L))、第2イオン伝導体(T(R))、第2電子伝導体(C(R))が形成された前記電極材料(S)を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加した状態において、
前記電流計の測定値を前記イオン電流として決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電池の電極材料について、有効イオン伝導度を求めるためのイオン電流と有効電子伝導度を求めるための電子電流とを分離して、それぞれ独立に測定することができる。従って、より正確な測定値を得ることができる。よって、電池の電極の性能をより正確に評価することが可能となる。
【0023】
また、イオン電流と電子電流とを同時に測定することができる。従って、1回の実験で、効率的にそれらの測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の測定原理を説明するための概略図である。
【図2】本発明の測定原理を説明するための概略図である。
【図3】ポテンショスタットの原理を説明するための概略図である。
【図4】ポテンショスタットの一例を示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る測定装置の等価回路を示す回路図である。
【図6】図5の等価回路の一例を示す回路図である。
【図7】試料の表面にイオン伝導体および電子伝導体を配置する一例を示す図である。
【図8】棒状または線状の試料に対してイオン伝導体および電子伝導体を配置する一例を示す図である。
【図9】板状の試料に対してイオン伝導体および電子伝導体を配置する一例を示す図である。
【図10】本発明の測定装置を用いて測定されたイオン電流および電子電流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。
【0026】
まず、測定の原理について説明する。一般に、電子伝導体とイオン伝導体界面との電位差(以下、電子伝導体/イオン伝導体界面電位差とも記す)には電気化学電流が流れなくなる点(値)があり、この電位差は「開回路電位差」と呼ばれる。従って、測定材料の内部の至る所で、ミクロな電子伝導体/イオン伝導体界面の電位差が開回路電位差であるように保ちつつ、マクロに(外部から)電位差を印加すれば、イオン電流と電子電流とは相互に変換することなく、それぞれ独立に材料中を流れ続けると期待できる。このような状態を実現できれば、イオン伝導度と電子伝導度とをそれぞれ独立に測定できると期待でき
る。
【0027】
図1に示すように、一様な厚さの試料S(例えば薄膜状)を用意し、その両端部に、イオン電流の供給体として、電解液を含む2つの電解液厚膜T(L)、T(R)を取り付け、電子電流の供給体として、充分伝導度の高い電子伝導体から成る集電体C(L)、C(R)を取り付ける。以下、電解液厚膜T(L)、T(R)をイオン伝導体バルク、集合体C(L)、C(R)を電子伝導体バルクとも記す。試料Sの両端部に形成された構造部の間が測定距離となる。なお、試料Sが塗膜など自立できないほど薄い場合には絶縁性基板などの上に作製すればよい。
【0028】
上記したように、試料Sの両端部に形成された左右それぞれの構造部に対して、ポテンショスタットP(L)、P(R)を用意し、各イオン伝導体バルクT(L)、T(R)に対極CE(counter electrode)と参照極RE(reference electrode)とを設置し、電子伝導体バルクC(L)、C(R)を作用極WE(working electrode)としてポテンショスタットP(L)、P(R)に接続する。
【0029】
開回路電位(電流を流さない状態での参照極REに対する作用極WEの電位。原理的には左右とも同じ値を示すことになる)を測定した後、得られた開回路電位を設定値としてポテンショスタットP(L)、P(R)を作動させる(図1の(a)参照)。
【0030】
この状態での電子伝導体とイオン伝導体の電位差は、図1の(b)に示すように、至る所一定であり、かつそれぞれは場所によらずフラットである。
【0031】
図2の(a)に示すように、左右のポテンショスタットP(L)、P(R)を作動させた状態のまま、左右の作用極WE間にバイアス電圧Ebiasを印加すると、図2の(b)に示すように、試料S中の電子伝導体とイオン伝導体の電位差は至る所一定でありながら、それぞれの内部に、バイアス電圧Ebiasと試料Sの長さで決まる電場が印加される。この状態では、試料S内でイオン電流と電子電流が相互に変換されることなく、イオン伝導体T(L)
、T(R)中では、電場と有効イオン伝導度で決まる一様なイオン電流が流れ、電子伝導体
C(L)、C(R)中では、電場と有効電子伝導度で決まる一様な電子電流が流れる。
【0032】
従って、左右の集電体に電流計A1L、A1Rを設置すれば電子電流Ie,L、Ie,Rを測定することができる。また、左右のポテンショスタットの対極CEに電流計A2L、A2Rを設置すれば、試料S内のイオン電流Iion,L、Iion,Rを測定することができる。原理的にはイ
オン電流、電子電流ともに、左右の構造部のどちらで測定してもそれぞれ同じ値を示すはずである。逆に、左右の構造部についての測定値がよく一致していれば、イオン電流と電子電流は材料S内で相互に変換することなく、理論通りに測定できていることを示すことになる。
【0033】
次に、ポテンショスタットの原理について説明する。
【0034】
電気化学反応の測定には3電極式のセルがよく用いられる。電池に関しても同様である。これは、目的の電気化学反応を起こさせるための作用極WE、電解液の電位をモニターするための参照極RE、および作用極WEに流す電流を回収する対極CEを電解液に浸して行なう実験である。作用極WEに供給した電流(電子電流)は、電気化学反応によってイオン電流に変換され、電解液中を流れた後、対極CE上でふたたび何らかの電気化学反応を介して電子電流に戻り、回路を形成する。
【0035】
ポテンショスタットは、作用極/電解液界面の電位差を所望の値に制御するための電源装置の一種であり、図3はその概念図である。すなわち、参照極REと作用極WEの電位
差を測定し、それが所望の値になるように、作用極WEと対極CE間に印加する電位差を自動的に制御する。この時、参照極REには電流は流さない。
【0036】
実際に作られている装置(ポテンショスタット)の回路としては、一般的には作用極WEが接地(あるいは擬似接地)となるよう設計されており、例えば図4のような回路が用いられている。
【0037】
図4の(a)の回路は、−1倍の反転増幅回路を変形したものであり、参照極REの電位が−Esetとなるように、オペアンプOP1によって対極CEの電流を調節する。OP
2は、参照極REに電流が流れないようにするためのボルテッジフォロワ回路である。
【0038】
図4の(b)の回路は、図4の(a)のボルテッジフォロワ回路を変形したものであり、上記と同様に参照極REの電位が−Esetとなるように、オペアンプOP1によって対
極CEの電流を調節する。OP2は、オペアンプOP1への入力として−Esetを作り出
すための−1倍の反転増幅回路である。
【0039】
なお、既に述べたように、市販のポテンショスタットは、通常作用極WE接地で設計されているため、そのまま図2の(a)のようにバイアス電圧源を接続すると、バイアス電圧源が2つのポテンショスタットのアースを介してショートしてしまうため、そのままでは作動させることはできない。従って、本発明で使用するポテンショスタットは、アースからフローティングしているタイプのポテンショスタットを用いるなど、何らかの対処をする必要がある。
【0040】
上記の説明を基本に、本発明の実施の形態に係る測定装置について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る測定装置を示す等価回路である。図5の等価回路は、図2の(a)に示した測定装置の概念に基づいて構成されている。即ち、本測定装置は、
第1作用極WE(L)及び第2作用極WE(R)と、
第1参照極RE(L)及び第2参照極RE(R)と、
第1対極CE(L)及び第2対極CE(R)と、
第1作用極WE(L)に流れる電流を測定する第1電流計Ae(L)と、
第1対極CE(L)に流れる電流を測定する第2電流計Aion(L)と、
第2作用極WE(R)に流れる電流を測定する第3電流計Ae(R)と、
第2対極CE(R)に流れる電流を測定する第4電流計Aion(R)と、
第1電流計Ae(L)を介して、第1作用極WE(L)および第1参照極RE(L)間の電圧を測定する第1電圧計V(L)と、
第3電流計Ae(R)を介して、第2作用極WE(R)および第2参照極RE(R)間の電圧を測定する第2電圧計V(R)と、
第1電流計Ae(L)及び第2電流計Aion(L)を介して、第1作用極WE(L)および第1対極
CE(L)間に電圧を印加する第1電源Eapp(L)と、
第3電流計Ae(R)及び第4電流計Aion(R)を介して、第2作用極WE(R)および第2対極
CE(R)間に電圧を印加する第2電源Eapp(R)と、
第1電流計Ae(L)及び第3電流計Ae(R)を介して、第1作用極WE(L)および第2作用極
WE(R)間に電圧を印加する第3電源Ebiasと、
第1作用極WE(L)および第1対極CE(L)間への、第1電源Eapp(L)による電圧の印加を制御する第1スイッチSW(L)と、
第2作用極WE(R)および第2対極CE(R)間への、第2電源Eapp(R)による電圧の印加を制御する第2スイッチSW(R)と
を備えて構成されている。
【0041】
ここで、第1電流計Ae(L)、第2電流計Aion(L)、第3電流計Ae(R)、第4電流計Aio
n(R)は、電流経路に直列に接続されているが、これに限定されない。例えば、非接触の電流計を用いる場合には、電流計は直列に接続されない。
【0042】
従って、図5の等価回路が意味することは、
第1電圧計V(L)が、第1作用極WE(L)および第1参照極RE(L)間の電圧を測定し、
第2電圧計V(R)が、第2作用極WE(R)および第2参照極RE(R)間の電圧を測定し、
第1電源Eapp(L)が、第1作用極WE(L)および第1対極CE(L)間に電圧を印加し、
第2電源Eapp(R)が、第2作用極WE(R)および第2対極CE(R)間に電圧を印加し、
第3電源Ebiasが、第1作用極WE(L)および第2作用極WE(R)間に電圧を印加する
ということである。
【0043】
図5に示した測定装置を用いてイオン電流および電子電流を測定するには、次の第1〜第4ステップの順序で測定する。測定は、大きく分けて開回路電位の測定(第1ステップ)と伝導度測定の測定(第2〜4ステップ)とに分類される。なお、試料は、例えば両端部に図1、図2に示したような構造部が形成された試料を使用する。
【0044】
第1ステップ:まず、開回路電位を測定する。即ち、第1および第2スイッチSW(L)
、SW(R)を開き、第3電源Ebiasの出力を0Vにした状態で、第1電圧計V(L)および第2電圧計V(R)によって各電圧を測定する。得られた各電圧をΔEL、ΔERとする。なお
、上記したように、原理的には両者は等しい。
【0045】
第2ステップ:第1スイッチSW(L)を閉じ、第1作用極WE(L)と第1参照極RE(L)
との間の電位差が所望の値(第1ステップで測定された電圧値ΔEL)となるように第1
電源Eapp(L)の出力電圧を自動的に調整する。これは、図2の(a)に示した左側のポテンショスタットP(L)の役割である。
【0046】
第3ステップ:第2スイッチSW(R)を閉じ、第2作用極WE(R)と第2参照極RE(R)
との間の電位差が所望の値(第1ステップで測定された値ΔER)となるように第2電源
Eapp(R)の出力電圧を自動的に調整する。これは、図2の(a)に示した右側のポテンショスタットP(R)の役割である。
【0047】
第4ステップ:第3電源Ebiasによって第1作用極WE(L)および第2作用極WE(R)の間に所望の電位差を生じさせる。この状態で、第1及び第2対極CE(L)、CE(R)の電流値、第1及び第2作用極WE(L)、WE(R)の電流値を測定する。
【0048】
以上の測定によって得られた第1及び第2対極CE(L)、CE(R)の電流値がイオン電流Iion,L、Iion,Rであり、第1及び第2作用極WE(L)、WE(R)の電流値が電子電流Ie,L、Ie,Rである。
【0049】
図5に示した等価回路に対応する具体的な回路の一例を図6に示す。ここで、WE(R)
は擬似接地されており、アースに対する電位は0Vに固定されている。A〜Hは、各ブロック(破線で囲まれた部分)を区別するための符号である。
【0050】
ブロックAは、通常のポテンショスタット(図4の(b)のタイプ)の回路であり、RE(R)の電位がアース(WE(R))に対して−ΔERとなるようにCE(R)の電流量を調節する。この結果、WE(R)の電位はRE(R)に対してΔERとなる。
【0051】
ブロックBは、ボルテッジフォロワ回路であり、WE(L)の電位がアース(WE(R))に対してEbiasとなる電源として働く。この結果、WE(L)の電位はWE(R)に対してEbiasとなる。
【0052】
ブロックCは、増幅率−1の反転増幅器であり、ブロックDへ−Ebiasの電位信号を供給する。
【0053】
ブロックDは、加算機能つきのポテンショスタットであり、設定電位はΔEL−Ebias
となる。よって、RE(L)の電位がアース(WE(R))に対して−(ΔEL−Ebias)とな
る。その結果、WE(L)の電位はRE(L)に対してΔELとなる。
【0054】
ブロックE、F、Gは、計装アンプIA1、LA2、IA3を用いた電流測定回路(図5の電流計Aion(L)、Ae(L)、Aion(R)に対応)であり、それぞれイオン電流(左)Iion,L、電子電流(左)Ie,L、イオン電流(右)Iion,Rを測定する。
【0055】
ブロックHは、カレントフォロワ回路(図5の電流計Ae(R)に対応)であり、電子電流(右)Ie,Rを測定する。
【0056】
なお、図6の回路は、あくまで図5に示した等価回路で表される概念的動作を実現するための一例の回路であり、図6の回路以外の回路によっても、本発明を実現可能である。
【0057】
また、上記では、試料の一方の表面に2つのイオン伝導体を配置し、試料の他方の表面に2つの電子伝導体を配置する場合を説明したが、イオン伝導体および電子伝導体の配置はこれに限定されない。例えば、試料のそれぞれの表面にイオン伝導体および電子伝導体を配置してもよい(図1、2の左右の構造部の何れか一方において、イオン伝導体および電子伝導体の位置が逆転した配置)。その場合でも、イオン伝導体と電子伝導体とは試料を挟んで同じ位置(試料を挟んで対向する位置)に配置することが望ましい。
【0058】
また、上記では、試料の表面にイオン伝導体および電子伝導体を、試料を間に挟んで配置する場合を説明したが、イオン伝導体および電子伝導体の配置はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、試料Sの同じ面に、所定間隔L0を開けて、または接して(
L0=0)イオン伝導体Tおよび電子伝導体Cを配置してもよい。その場合、測定誤差を
抑制するためには、2つの構造部(イオン伝導体および電子伝導体)間の距離L1が、イ
オン伝導体および電子伝導体の寸法(W1、W2)や、各構造部のイオン伝導体および電子伝導体間の間隔L0よりも十分に大きいことが望ましい。即ち、イオン伝導体バルクと電
子伝導体バルクは接して設置する、またはなるべく近くに設置することが望ましい。
【0059】
また、棒状や線状の試料を使用する場合、イオン伝導体バルクおよび電子伝導体バルクは、試料に対して図8に示すように配置されてもよい。試料Sの両端部に、イオン伝導体バルクTおよび電子伝導体バルクCを当接させるには、外力によって押し当てたり、巻きつけたりすればよい。また、接触抵抗が小さければ単に接触させるだけでもよい。
【0060】
また、板状の試料に対して厚さ方向に電場を印加する場合には、図9に示すように配置されることができる。例えば、板状の試料Sの厚さtよりも充分目の細かい金属網Mを試料Sの両面に押し当てて電子伝導体バルクとし、さらにその上からイオン伝導体バルクを押し当てる。図9は、イオン伝導体として溶液を使用する場合の例であり、試料Sの両面に電子伝導体バルクを押し当てた状態で、溶液Q(左右の溶液は分離されている)に浸されている。
【0061】
また、上記では、開回路電位差を測定するために、第1および第2スイッチを備える場合を説明したが、これに限定されない。開回路電位差はイオン伝導体材料、電子伝導体材料、および雰囲気に依存するが、構造には原理的に依存しないので、測定対象である試料の開回路電位差を別の手段で測定しておき、その開回路電位差を設定してポテンショスタ
ットを動作させてもよい。その場合、第1および第2スイッチを備えなくてもよい。
【0062】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
【実施例】
【0063】
図6に示す回路に類似する回路を実際に製作して、イオン電流および電子電流を測定した。実際に製作した装置では、図6と若干異なり、計測アンプ(IA1、IA2、IA3)およびカレントフォロワ回路(OP7)の代わりに市販の電流計を、ボルテッジフォロワ回路(OP3)の代わりに市販の電源装置を用いた。また、開回路電位の測定および設定電位の監視のために、電圧計2台(図6に図示せず)を用いた。
【0064】
また、試料は、図1、2に示した構造と同様に作製した。試料を乗せるための絶縁性基板としてPTFEシートを用意し、この上にスパッタリングにより金薄膜を形成し、1cmの間隙を持つ2個の電極(電子伝導体)を作製した。この上に、固体高分子型燃料電池の触媒層である、カーボンブラックと高分子電解質から成る、厚さ150μm、幅3cmの多孔質体(試料Sに対応)を配置した。さらにその上に、先に形成した金電膜の電極と同じ位置(試料を挟んで対向する位置)に、イオン伝導体バルクとして、厚さ200μmの電解質膜の小片を2枚配置した。2枚の電解質膜片の上面にはそれぞれ対極、参照極として白金箔を配置した。すなわち、測定距離1cm、測定断面積150μm×3cmの試料と電極との接合体を作製した。
【0065】
そして、作製した測定装置を用いて、上記の接合体の電子電流およびイオン電流を測定した。具体的には、固体高分子型燃料電池の運転状況を模擬するため、上記の接合体を温度80℃、湿度RH95%の雰囲気に置いた。ガスは特に制御せず、空気雰囲気とした。
【0066】
開回路電位を測定した後、その電位を2台のポテンショスタットで左右それぞれ制御しながら2つの第1及び第2作用極WE間の電位差を変化させた時の、イオン電流、電子電流の左右での測定値を図10に示す。
【0067】
図10から、イオン電流、電子電流とも、左右での測定値はよく一致しており、また、印加電圧に対し比例していることが分かる。これらの傾きから、イオン抵抗として3kΩ
が、電子抵抗として76Ωが得られた。さらに、測定部分の寸法を考慮すれば、有効イオン伝導度として、
【0068】
【数1】

を得ることができ、有効電子伝導度として、
【数2】

を得ることができた。
【符号の説明】
【0069】
S 試料
T(L)、T(R) イオン伝導体(電解液厚膜)
C(L)、C(R) 電子伝導体(集合体)
WE 作用極
RE 参照極
CE 対極
Ebias バイアス電圧
P(L)、P(R) ポテンショスタット
A1L、A1R、A2L、A2R 電流計
ion,L、Iion,R イオン電流
e,L、Ie,R 電子電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電極材料の電子電流を測定する装置であって、
第1ポテンショスタット、第2ポテンショスタット、およびバイアス電源を備え、
前記第1ポテンショスタットが、
第1作用極と、
第1参照極と、
第1対極と、
前記第1作用極に流れる電流を測定する電流計と、
前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計と、
前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、
第2作用極と、
第2参照極と、
第2対極と、
前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第2電圧計と、
前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第2電源とを有し、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加可能に接続されており、
前記電極材料の表面に、第1イオン伝導体、第1電子伝導体、第2イオン伝導体、第2電子伝導体が形成された前記電極材料を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間に前記バイアス電圧を印加した測定状態において、
前記電流計の測定値を前記電子電流として決定することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
電池の電極材料のイオン電流を測定する装置であって、
第1ポテンショスタット、第2ポテンショスタット、およびバイアス電源を備え、
前記第1ポテンショスタットが、
第1作用極と、
第1参照極と、
第1対極と、
前記第1対極に流れる電流を測定する電流計と、
前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計と、
前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、
第2作用極と、
第2参照極と、
第2対極と、
前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第2電圧計と、
前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第2電源とを有し、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加可能に接続されており、
前記電極材料の表面に、第1イオン伝導体、第1電子伝導体、第2イオン伝導体、第2電子伝導体が形成された前記電極材料を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記バイアス電源が、前記第1作用極および前記第2作用極間に前記バイアス電圧を印加した測定状態において、
前記電流計の測定値を前記イオン電流として決定することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
前記第1ポテンショスタットが、前記第1電源による電圧の印加を制御する第1スイッチをさらに有し、
前記第2ポテンショスタットが、前記第2電源による電圧の印加を制御する第2スイッチをさらに有し、
前記開回路電位差が、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが開放された状態における、前記第1電圧計または第2電圧計の測定値であることを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1イオン伝導体および前記第2イオン伝導体が、所定距離だけ離隔されて前記電極材料の一方の表面に配置され、
前記第1電子伝導体が、前記電極材料の他方の表面上において前記第1イオン伝導体に対向する位置に配置され、且つ、
前記第2電子伝導体が、前記電極材料の他方の表面上において前記第2イオン伝導体に対向する位置に配置された前記電極材料を測定対象とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
第1ポテンショスタットおよび第2ポテンショスタットを用いて電池の電極材料の電子電流を測定する方法であって、
前記第1ポテンショスタットが、第1作用極と、第1参照極と、第1対極と、前記第1作用極に流れる電流を測定する電流計と、前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計と、前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、第2作用極と、第2参照極と、第2対極と、前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第2電圧計と、前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第2電源とを有し、
前記電極材料の表面に、第1イオン伝導体、第1電子伝導体、第2イオン伝導体、第2電子伝導体が形成された前記電極材料を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加した状態において、
前記電流計の測定値を前記電子電流として決定することを特徴とする測定方法。
【請求項6】
第1ポテンショスタットおよび第2ポテンショスタットを用いて電池の電極材料のイオン電流を測定する方法であって、
前記第1ポテンショスタットが、第1作用極と、第1参照極と、第1対極と、前記第1対極に流れる電流を測定する第2電流計と、前記第1作用極および前記第1参照極間の電圧を測定する第1電圧計と、前記第1作用極および前記第1対極間に、前記第1電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第1電源とを有し、
前記第2ポテンショスタットが、第2作用極と、第2参照極と、第2対極と、前記第2作用極および前記第2参照極間の電圧を測定する第2電圧計と、前記第2作用極および前記第2対極間に、前記第2電圧計の測定値に応じた電圧を印加する第2電源とを有し、
前記電極材料の表面に、第1イオン伝導体、第1電子伝導体、第2イオン伝導体、第2電子伝導体が形成された前記電極材料を測定対象として、
前記第1対極および前記第1参照極が前記第1イオン伝導体に接続され、
前記第1作用極が前記第1電子伝導体に接続され、
前記第2対極および前記第2参照極が前記第2イオン伝導体に接続され、
前記第2作用極が前記第2電子伝導体に接続され、
前記電極材料の開回路電位差を設定値として、前記第1ポテンショスタットおよび前記第2ポテンショスタットを作動させ、且つ、
前記第1作用極および前記第2作用極間にバイアス電圧を印加した状態において、
前記電流計の測定値を前記イオン電流として決定することを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230339(P2010−230339A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75411(P2009−75411)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/要素技術開発/低白金化技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】