説明

電源ケーブルの収容装置および収容方法

【課題】簡単な構成で、電源ケーブルを繰出しおよび繰込み可能に収容することができる電源ケーブルの収容装置等を提供する。
【解決手段】建物11の外壁12に固定され鉛直方向に延在するマスト2に沿って自走式で昇降する昇降機構4に接続された電源ケーブル45を、昇降機構4の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容する電源ケーブル45の収容装置であって、電源ケーブル45を上下方向に螺旋状に収容するケーブル収容部61と、ケーブル収容部61の直上位置に配設され、電源ケーブル45のケーブル収容部61からの繰出しをガイドすると共に、電源ケーブル45のケーブル収容部61への繰込みをガイドする収容ガイド62と、を備え、電源ケーブル45は、撚りが加わりながらケーブル収容部61に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に沿って自走式で昇降する昇降機構に接続された電源ケーブルを、昇降機構の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容する電源ケーブルの収容装置および収容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜した一対の柱体に沿って複数のレールサポートを介して取り付けられた昇降レールに沿って昇降するゲージと、ゲージに備えた昇降機構に対する給電・制御用のケーブルと、ケーブルの基端部に配設され、巻取りばねによりケーブルを常に巻き取る方向に付勢したドラムを有するケーブルリールと、を備えたケーブルの振れ止め装置が知られている(特許文献1参照)。
この振れ止め装置では、ケーブルリール(電源ケーブルの収容装置)により、ケーブルに対して巻き取り方向への張力を与えつつ、ケーブルをケージの昇降移動に追従させて、繰出し/繰込みを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−171432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のケーブルリール(電源ケーブルの収容装置)では、ゲージの昇降に伴って、ケーブルをドラムから繰出し/繰戻し可能とするために、ケーブルを常に巻き取る方向に付勢させるための機構を設ける必要があった。また、昇降機構の昇降に対して、巻取りばねの力は抵抗となるため、昇降機構の動力源に余分な負荷がかかる問題もあった。
【0005】
本発明は、簡単な構成で、電源ケーブルを繰出しおよび繰込み可能に収容することができる電源ケーブルの収容装置および収容方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電源ケーブルの収容装置は、建物の外壁に固定され鉛直方向に延在する支持体に沿って自走式で昇降する昇降機構に接続された電源ケーブルを、昇降機構の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容する電源ケーブルの収容装置であって、電源ケーブルを上下方向に螺旋状に収容するケーブル収容部と、ケーブル収容部の直上位置に配設され、電源ケーブルのケーブル収容部からの繰出しをガイドすると共に、電源ケーブルのケーブル収容部への繰込みをガイドする収容ガイドと、を備え、電源ケーブルは、撚りが加わりながらケーブル収容部に収容されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、昇降機構、収容ガイドおよびケーブル収容部は、鉛直方向同軸上に並ぶこととなる。そして、昇降機構の上昇に伴い、電源ケーブルは、収容ガイドを介してケーブル収容部から撚りが解かれながら繰出され、他方、昇降機構の下降に伴い、電源ケーブルは、収容ガイドを介してケーブル収容部内に繰込んで撚りが加わりながら螺旋状に巻回して収容される。これにより、ケーブル収容部において電源ケーブルに対し張力を作用させる機構を設ける必要がなく、その構造を単純化することができ、電源ケーブルの繰込みが適切に行われなくなる要因となる機構の故障等を考慮する必要がない。また、昇降の際の電源ケーブルには、自重以外の負荷はかからないため、昇降機構の可搬重量の低下を招くこともない。なお、「撚り」とは、電源ケーブルの軸回りの「ねじれ」を指す。
【0008】
この場合、電源ケーブルは、初期設置状態において、延伸させて巻癖および撚りを除去した状態からケーブル収容部に螺旋状に収容することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、電源ケーブルは、予め繰出した状態で、巻癖および撚りを除去されているため(巻癖および撚りが無い若しくは少ない状態)、ケーブル収容部内において撚りを有した状態で巻回した電源ケーブルは、上昇に伴って、その撚りは少なく(無く)なる。このため、繰出した電源ケーブルの撚りに基づく「暴れ」を抑制することができ、昇降機構の昇降を阻害することが無い。なお、「暴れ」とは、繰出された電源ケーブルが、支持体に接触する等、鉛直性を失する状態を指す。
【0010】
この場合、収容ガイドの直上位置において、支持体に設けられ、昇降機構の昇降に伴う電源ケーブルの昇降をガイドする複数のケーブルガイド、を更に備えていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、各ケーブルガイドと収容ガイドとが、鉛直方向同軸上に並ぶこととなり、ケーブル収容部に電源ケーブルを的確に導くことができる。また、電源ケーブルは、ケーブルガイドにガイドされて昇降するため、風の影響等により振れることなく支持体に沿って昇降する。これにより、繰出された電源ケーブルが、風の影響等により、建物の外壁に衝突することを防ぐことができる。
【0012】
また、この場合、支持体は、延在方向に所定間隔で複数設けられた支持アンカーにより、外壁と所定の間隙を存して固定されており、ケーブルガイドは、支持アンカーが設けられた位置において、支持体に固定されていることが好ましい。
【0013】
ところで、昇降機構に足場を設け外壁に対して作業を行う場合、作業者にとっては、支持アンカーやケーブルガイドは、作業を阻害するものである。
しかし、この構成によれば、各支持アンカーの配設位置に各ケーブルガイドを配設することで、壁面に対する作業の邪魔になる箇所を最小限に抑えることができる。また、電源ケーブルが、風に煽られて、支持アンカーに衝突することを防ぐこともできる。なお、各支持アンカーおよび各ケーブルガイドは、建物の高さにもよるが、6m程度の間隔で支持体に固定されていることが好ましい。これにより、ケーブルガイド等の配設数を最小限に抑えつつ、適切に電源ケーブルの振れを防止することができる。
【0014】
さらに、この場合、複数のケーブルガイドは、支持アンカーが設けられた位置の他に、収容ガイドに近づくにつれて設置間距離を短くして更に配設されていることが好ましい。
【0015】
ところで、収容ガイドの近傍においては、ケーブル収容部から繰出された電源ケーブルには、撚りが残っており、電源ケーブルの撚りに基づく「暴れ」が大きくなる。
しかし、この構成によれば、収容ガイドの近傍において、より多くのケーブルガイドを設けることで、収容ガイドの近傍における電源ケーブルの「暴れ」を抑え、収容ガイドおよびケーブル収容部に対して電源ケーブルを確実に導くことができる。
【0016】
この場合、電源ケーブルの昇降機構への接続部分は、ケーブルガイドの位置から昇降機構に向って湾曲して延びており、ケーブルガイドは、電源ケーブルが遊挿される環状の環状部と、環状部の一部に設けられ、電源ケーブルの水平方向への挿脱を阻止すると共に鉛直方向への挿脱を許容する挿脱部と、を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、昇降機構が昇降する際に、湾曲した接続部分で挿脱部を鉛直方向に押上げまたは押下げることで、電源ケーブルは、環状部に挿脱する。これにより、電源ケーブルは、複数のケーブルガイドに確実かつ適切にガイドされるため、繰出された電源ケーブルの「暴れ」を有効に抑制し、かつ、ケーブル収容部への繰込みを適切に行うことできる。
【0018】
また、この場合、ケーブルの表面には、潤滑剤が塗布されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、電源ケーブルが、摺接する収容ガイドやケーブル収容部との摩擦を低減することができる。また、ケーブル収容部内に巻回した電源ケーブル同士が絡まることがない。これにより、電源ケーブルは、ケーブル収容部内に適切な巻回状態で収容される。
【0020】
本発明の電源ケーブルの収容方法は、建物に沿って自走式で昇降する昇降機構の直下位置において、昇降機構に接続された電源ケーブルを、昇降機構の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容するための電源ケーブルの収容方法であって、初期設置状態において、昇降機構を上昇端位置に上昇させ、巻回状態の電源ケーブルを繰出して、電源ケーブルの巻癖および撚りをとる巻癖等除去工程と、巻癖等除去工程において巻癖および撚りを除去した電源ケーブルの表面に潤滑剤を塗布し潤滑被膜を形成する被膜形成工程と、被膜形成工程において潤滑被膜を形成した電源ケーブルを、昇降機構の直下位置に配設したケーブル収容部内に上下方向に螺旋状に収容させる再巻回工程と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、巻癖等除去工程により電源ケーブルは、あらかじめ繰出した状態で、巻癖および撚りが除去され(巻癖および撚りが無い若しくは少ない状態)、被膜形成工程により潤滑被膜が形成された電源ケーブルは、ケーブル収容部内で巻回して収容される際に絡まることがない。これにより、電源ケーブルは、ケーブル収容部内に適切な巻回状態で収容される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る昇降式足場の側面図である。
【図2】(a)は昇降式足場および収容装置の平面図、(b)は収容装置の側面図である。
【図3】電源ケーブルが螺旋状に収容されたケーブル収容部および収容ガイドの斜視図である。
【図4】(a)はケーブルガイドの平面図、(b)はケーブルガイドの側面図である。
【図5】電源ケーブルの収容方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電源ケーブルの収容装置を適用した昇降式足場について説明する。この昇降式足場は、建物の外壁に対し鉛直方向に延在して固定されたマスト(支持体)に沿って、昇降装置を備えた自走式の昇降ステージを昇降自在に設けたものである。
【0024】
図1および図2に示すように、昇降式足場1は、建物11の外壁12に沿って鉛直方向に延在し、支持アンカー21により外壁12と所定の間隙を存して固定されたマスト2と、マスト2(支持体)の配置エリアを除いて水平方向に延在すると共に、マスト2に沿って昇降する自走式の昇降ステージ3と、昇降ステージ3を昇降させる昇降機構4と、昇降機構4等を制御する制御装置5と、昇降機構4に接続された電源ケーブル45を、昇降機構4の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容する収容装置6と、を備えている。
【0025】
マスト2は、トラス構造を有する所定の長さ(本実施形態では1.5m)のユニットを積み重ねて連結された架設の支柱であり、地上に配設されたベース22上に立設し、建物11の最上部まで延在している。建物11の外壁12とマスト2との間には、鉛直方向に所定の間隔(本実施形態では6m間隔)で複数の支持アンカー21が配設されている。マスト2は、平面視、二等辺三角形に形成されており、頂角を建物11側に向けて、複数の支持アンカー21を介して外壁12に支えられている。なお、マスト2の構成数は、建物11の大きさや昇降ステージ3の長さによって異なるが、本実施形態では、説明を簡単にするために、1本のマスト2を有する昇降式足場1について説明する。
【0026】
昇降ステージ3は、作業者の主要な足場となる作業床31と、作業床31の外周を囲むように立設する手摺32と、を有している。作業床31は、平面視矩形に形成されており、外壁12側から矩形に切り込まれ、マスト2が臨む配置エリアとなる凹部33を有している。なお、凹部33の縁部分にも手摺32が立設している。
【0027】
昇降機構4は、マスト2の昇降ステージ3側の面において鉛直方向に延在したラック41と、ラック41に噛み合うピニオン42と、ピニオン42を出力軸に軸着した昇降モーター43(ギヤードモーター)と、マスト2と昇降ステージ3との間に介設され、昇降ステージ3の昇降をガイドするガイド部(図示省略)と、を有している。昇降モーター43は、作業床31の床下に組み込まれており、地上に設けられた電源設備44に電源ケーブル45および制御装置5を介して接続されている。
【0028】
制御装置5には、作業者が昇降機構4の駆動等を手動操作するための操作盤51が、昇降ステージ3の手摺32に取り付けられている。また、制御装置5には、収容装置6から繰出された電源ケーブル45が接続されている。電源ケーブル45は、収容装置6から鉛直方向に繰出され、作業床31の床下に取り付けられた湾曲管52を通って、作業床31の床下に配線されている。なお、本実施形態では図1(b)において右寄りに操作盤51を配置しているが、操作盤51の取り付け位置は任意である。
【0029】
収容装置6は、電源ケーブル45を上下方向に螺旋状に収容するケーブル収容部61と、ケーブル収容部61の直上位置に配設され、電源ケーブル45のケーブル収容部61からの繰出しをガイドすると共に、電源ケーブル45のケーブル収容部61への繰込みをガイドする収容ガイド62と、収容ガイド62の直上位置において、マスト2に設けられ、昇降機構4の昇降に伴う電源ケーブル45の昇降をガイドする複数のケーブルガイド63、を備えている。
【0030】
この収容装置6は、昇降ステージ3(昇降機構4)の上昇に伴い、ケーブル収容部61から、撚りを解きつつ電源ケーブル45を繰出し、他方、昇降ステージ3の下降に伴い、ケーブル収容部61に、撚りを加えながら電源ケーブル45を螺旋状に繰込んで収容する。
【0031】
図1ないし図3に示すように、ケーブル収容部61は、有底の中空円筒形をなしており、巻回した状態で電源ケーブル45を収容する。ケーブル収容部61は、地上に配置されており、詳細には、マスト2の近傍において、ケーブルガイド63の環状部65(後述する。)の直下に、かつ、同軸上となるように配置されている。なお、ケーブル収容部61は、有底の円筒状の籠の形態を有するものであってもよい。
【0032】
収容ガイド62は、ケーブル収容部61と同軸上に、かつ、水平に配設された環状のリングガイド62aと、リングガイド62aを支持する棒状の複数(本実施形態では3本)の支持部62bと、を有している。リングガイド62aには、等間隔に3本の支持部62bの一方の端部が固定されており、放射状に延在した各支持部62bの他方の端部は、ケーブル収容部61の上端縁部に固定されている。リングガイド62aは、各支持部62bによって、ケーブル収容部61と同軸上で、かつ、ケーブル収容部61の上端よりも上方に支持されている。なお、支持部62bの配設数は任意である。
【0033】
図2および図4に示すように、各ケーブルガイド63は、マスト2に一方の端部を固定したアーム部64と、アーム部64の他方の端部に固定され、電源ケーブル45が遊挿される環状の環状部65と、環状部65の一部に設けられ、電源ケーブル45の水平方向への挿脱を阻止すると共に鉛直方向への挿脱を許容する挿脱部66と、を有している。
【0034】
アーム部64は、マスト2を支持する各支持アンカー21の上部において、マスト2側の一端に固定された「L」字型のアングル材64aと、「U」字型の固定具64bとにより、マスト2の建物11側の支柱を挟み込んで固定されている。すなわち、各ケーブルガイド63は、各支持アンカー21が設けられた位置に6m間隔で配設されている。このように各ケーブルガイド63を配設することで、昇降ステージ3を足場として作業を行う作業者にとって作業の邪魔になるケーブルガイド63の配設箇所を最小限に抑えることができる。また、電源ケーブル45が、風に煽られて、支持アンカー21に衝突することを防ぐこともできる。
【0035】
ところで、ケーブル収容部61内には撚りが加えられた電源ケーブル45が螺旋状に収容されているため、ケーブル収容部61から繰出された電源ケーブル45は、収容ガイド62の近傍において残った撚りに基づき「暴れ」が大きくなるという問題がある。
そこで、本実施形態では、複数のケーブルガイド63を、収容ガイド62(ケーブル収容部61)に(地上に)近づくにつれて、その配設間隔が短く(小さく)なるように配設している。詳細には、3つのケーブルガイド63が、収容ガイド62から2m間隔で設けられている(図1参照)。なお、これらよりも上方に設けられたケーブルガイド63は、上述したように6m間隔で設けられている。このように、収容ガイド62の近傍において、より多くのケーブルガイド63を設けることで、収容ガイド62の近傍における電源ケーブル45の「暴れ」を抑え、収容ガイド62およびケーブル収容部61に対して電源ケーブル45を確実に導くことができる。
【0036】
各環状部65は、「U」字型に形成されており、その開放部分を外側(昇降ステージ3側)に向けた状態で、アーム部64の先端部分に固定されている。各環状部65は、ケーブル収容部61、収容ガイド62および作業床31の床下に設けた湾曲管52と、それぞれ鉛直方向同軸上に配置されており、電源ケーブル45を遊挿して、その昇降をガイドする。
【0037】
各挿脱部66は、環状部65の「U」字の開放部分に、それぞれ一方の端部を固定し、他方の端部が重なり合った一対の板状部材66aで構成されている。各板状部材66aは、ゴム等の弾性を有する材料で構成されており、鉛直方向にのみ大きく湾曲するようになっている。そして、各挿脱部66は、昇降ステージ3の昇降する際に、作業床31の床下に設けた湾曲管52が上方または下方から接触するように配設されている。このため、湾曲管52が、各挿脱部66(の各板状部材66a)を鉛直方向に押上げまたは押下げることで、電源ケーブル45は、各環状部65(ケーブルガイド63)に遊挿され、確実かつ適切にガイドされる。このため、繰出された電源ケーブル45の「暴れ」を有効に抑制し、かつ、ケーブル収容部61への繰込みを適切に行うことできる。なお、一対の板状部材66aは、互いに重なり合っており、水平方向には湾曲し難い形状となっているため、環状部65に遊挿された電源ケーブル45が、風に煽られる等して、環状部65から外れてしまうことはない。
【0038】
次に、図5を参照して、電源ケーブル45を上下方向に螺旋状に巻回させながらケーブル収容部61に収容するための収容方法について説明する。
この電源ケーブル45の収容方法は、初期設置状態において、昇降ステージ3(昇降機構4)を上昇端位置に上昇させ、巻回状態の電源ケーブル45を繰出して、電源ケーブル45の巻癖および撚りをとる巻癖等除去工程S1と、巻癖および撚りを除去した電源ケーブル45の表面に潤滑剤を塗布し潤滑被膜(潤滑剤の膜)を形成する被膜形成工程S2と、潤滑被膜を形成した電源ケーブル45を、ケーブル収容部61内に上下方向に螺旋状に収容させる再巻回工程S3と、を備えている。
【0039】
収容方法を実施する前段階として、電源ケーブル45は、ドラム等に巻回した状態で昇降式足場1の設置現場に搬入され、一端を上記の昇降モーター43に接続され、他端を電源設備44(ケーブル収容部61の近傍に配設した制御盤側のコンセント)に接続されているものとする。
まず、巻癖等除去工程S1では、昇降ステージ3を建物11の最上階(上昇端位置)まで移動させ、電源ケーブル45を繰出した状態とし、電源ケーブル45に付いている巻癖および撚りを、電源ケーブル45の自重と作業者の手作業とにより除去する。なお、巻癖等除去工程S1を実施に際して、電源ケーブル45は、電源設備44から外しておく。
【0040】
被膜形成工程S2では、電源ケーブル45の表面に、例えば、ワックス(蝋)等の潤滑剤を塗布する。電源ケーブル45の表面に潤滑被膜を形成することにより、電源ケーブル45が摺接する収容ガイド62やケーブル収容部61の内周面との摩擦を低減することができる。また、ケーブル収容部61内に巻回した電源ケーブル45同士が絡まってしまうことを防止することができる。これにより、電源ケーブル45は、ケーブル収容部61の内部に適切な巻回状態で収容される。なお、本実施形態では、ワックス(蝋)として植物系ワックス(カルナバ蝋等)を使用しているが、石油系ワックス、合成ワックスまたはその他の潤滑剤(油)を用いてもよい。
【0041】
そして、再巻回工程S3では、昇降ステージ3を下降させながら、作業者の手作業により、電源ケーブル45をケーブル収容部61内に螺旋を描くように繰込んで行く。これにより、電源ケーブル45は、撚りが加わりながらケーブル収容部61に収容される。
【0042】
以上の構成によれば、電源ケーブル45は、予め繰出した状態で、巻癖および撚りを除去されているため(巻癖および撚りが無い若しくは少ない状態)、ケーブル収容部61の内部において撚りを有した状態で巻回した電源ケーブル45は、上昇に伴って、その撚りは少なく(無く)なる。このため、繰出した電源ケーブル45の撚りに基づく「暴れ」を抑制することができる。また、潤滑被膜が形成された電源ケーブル45は、適切な撚りを与えられ、絡まることなくケーブル収容部61内に巻回して収容される。
さらに、電源ケーブル45をケーブル収容部61内に巻回させるために、電源ケーブル45に対し張力を作用させる機構を別途設ける必要がなく、その構造を単純化することができる。また、昇降の際の電源ケーブル45には、自重以外の負荷はかからないため、昇降機構4の可搬重量の低下を招くこともない。
【符号の説明】
【0043】
2:マスト、6:収容装置、11:建物、12:外壁、21:支持アンカー、45:電源ケーブル、61:ケーブル収容部、62:収容ガイド、63:ケーブルガイド、65:環状部、66:挿脱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に固定され鉛直方向に延在する支持体に沿って自走式で昇降する昇降機構に接続された電源ケーブルを、前記昇降機構の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容する電源ケーブルの収容装置であって、
前記電源ケーブルを上下方向に螺旋状に収容するケーブル収容部と、
前記ケーブル収容部の直上位置に配設され、前記電源ケーブルの前記ケーブル収容部からの繰出しをガイドすると共に、前記電源ケーブルの前記ケーブル収容部への繰込みをガイドする収容ガイドと、を備え、
前記電源ケーブルは、撚りが加わりながら前記ケーブル収容部に収容されることを特徴とする電源ケーブルの収容装置。
【請求項2】
前記電源ケーブルは、初期設置状態において、延伸させて巻癖および撚りを除去した状態から前記ケーブル収容部に螺旋状に収容することを特徴とする請求項1に記載の電源ケーブルの収容装置。
【請求項3】
前記収容ガイドの直上位置において、前記支持体に設けられ、前記昇降機構の昇降に伴う前記電源ケーブルの昇降をガイドする複数のケーブルガイド、を更に備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の電源ケーブルの収容装置。
【請求項4】
前記支持体は、延在方向に所定間隔で複数設けられた支持アンカーにより、前記外壁と所定の間隙を存して固定されており、
前記ケーブルガイドは、前記支持アンカーが設けられた位置において、前記支持体に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の電源ケーブルの収容装置。
【請求項5】
前記複数のケーブルガイドは、前記支持アンカーが設けられた位置の他に、前記収容ガイドに近づくにつれて設置間距離を短くして更に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の電源ケーブルの収容装置。
【請求項6】
前記電源ケーブルの前記昇降機構への接続部分は、前記ケーブルガイドの位置から前記昇降機構に向って湾曲して延びており、
前記ケーブルガイドは、
前記電源ケーブルが遊挿される環状の環状部と、
前記環状部の一部に設けられ、前記電源ケーブルの水平方向への挿脱を阻止すると共に鉛直方向への挿脱を許容する挿脱部と、を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電源ケーブルの収容装置。
【請求項7】
前記ケーブルの表面には、潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電源ケーブルの収容装置。
【請求項8】
建物に沿って自走式で昇降する昇降機構の直下位置において、前記昇降機構に接続された電源ケーブルを、前記昇降機構の昇降に伴って繰出しおよび繰込み可能に収容するための電源ケーブルの収容方法であって、
初期設置状態において、
前記昇降機構を上昇端位置に上昇させ、巻回状態の前記電源ケーブルを繰出して、前記電源ケーブルの巻癖および撚りをとる巻癖等除去工程と、
前記巻癖等除去工程において巻癖および撚りを除去した前記電源ケーブルの表面に潤滑剤を塗布し潤滑被膜を形成する被膜形成工程と、
前記被膜形成工程において前記潤滑被膜を形成した前記電源ケーブルを、前記昇降機構の直下位置に配設したケーブル収容部内に上下方向に螺旋状に収容させる再巻回工程と、を備えたことを特徴とする電源ケーブルの収容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116589(P2012−116589A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266503(P2010−266503)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【Fターム(参考)】