電源回路
【課題】 広帯域無線通信を行う送信機に用いられ、電源変換効率を向上させることができる電源回路を提供する。
【解決手段】 入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、制御信号によりプッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源112〜115、116〜119の選択接続によって可変とする可変電源部と、制御信号として、入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために複数の電源を選択する選択信号C1〜C8を出力するスイッチ制御部138と、可変電源部における複数の電源112〜115、116〜119の負荷が一定となるよう、選択信号による電源の選択先を変更するスイッチ制御信号変換部139とを備えた電源回路としている。
【解決手段】 入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、制御信号によりプッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源112〜115、116〜119の選択接続によって可変とする可変電源部と、制御信号として、入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために複数の電源を選択する選択信号C1〜C8を出力するスイッチ制御部138と、可変電源部における複数の電源112〜115、116〜119の負荷が一定となるよう、選択信号による電源の選択先を変更するスイッチ制御信号変換部139とを備えた電源回路としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の高周波信号で無線通信を行う送信機の電力増幅器で用いられる電源回路に係り、特に、電力変換効率を向上させることができる電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
送信機の電力増幅器への要求として、設置場所の制約や据付コストの低減のために、小型・軽量化が強く求められている。装置の体積・重量は、電力損失によって発生する熱を放熱するための放熱フィンが多くを占めるが、電力効率を改善することで放熱フィンを小さくすることが可能になり、小型・軽量化に寄与する。
【0003】
[EER方式の電力増幅器:図9]
電力効率を改善する方法として、飽和型の電力増幅器の電源電圧を変動させるEER(Envelop Elimination and Restoration)方式がある。
EER方式の電力増幅器について図9を用いて説明する。図9は、EER方式の電力増幅器の概略構成図である。
図9に示すように、EER方式の電力増幅器は、入力端子1と、分配器2と、包絡線検波器3と、電源回路4と、RFリミット増幅器5と、主増幅器6と、出力端子7とを備えている。
【0004】
具体的には、入力端子1と、分配器2と、RFリミット増幅器5と、主増幅器6と、出力端子7が直列に接続されており、分配器2には包絡線検波器3が接続され、包絡線検波器3には電源回路4が接続され、電源回路4は主増幅器6に接続されて電源を供給する構成となっている。
【0005】
上記構成のEER方式の電力増幅器では、入力端子1から入力されたRF信号は、分配器2で分配され、一方は包絡線検波器3で検波されて包絡線信号が電源回路4に入力される。そして、電源回路4は、主増幅器6の電源電圧を包絡線信号に従って変動させる。
分配器2で分配された他方のRF信号は、RFリミット増幅器5で振幅変動分が除去され、位相情報のみを保ちながら主増幅器6で増幅される。
主増幅器6の電源電圧は、包絡線検波器3からの振幅情報に従って変動するので、振幅情報は復元され、主増幅器6は常に飽和状態で動作するため高効率となる。
【0006】
[高速動作可能な電源回路:図10]
ところで、EER方式の電力増幅器全体における効率を考えた場合、主増幅器6だけでなく、電源回路4の効率も重要になってくる。
W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)信号やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号のような広帯域信号の包絡線信号の帯域は広く、電源回路4は高速に動作する必要がある。
【0007】
高速に動作する電源回路としては、例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されている(非特許文献1,2参照)。
高速に動作する電源回路の構成例について図10を用いて説明する。図10は、高速に動作する電源回路の例を示す構成図である。
図10に示すように、高速に動作する電源回路(高速動作用電源回路)は、主として、入力端子8と、広帯域の電圧源であるプッシュプル増幅器9と、制御回路である電流検出器10及びヒステリシスコンパレータ11と、高効率なDC/DCコンバータ12と、出力端子13とから構成されている。
尚、プッシュプル増幅器9は、請求項に記載したプッシュプル増幅部に相当する。
【0008】
そして、入力端子8は、図9に示した包絡線検波器3の出力段に接続され、出力端子13は、図9に示した主増幅器6の電源端子に接続される。
電流検出器10は、例えば抵抗から構成される。
また、DC/DCコンバータ12は、電圧電源31と、スイッチ素子32と、ダイオード33と、インダクタンス34とから構成されている。
プッシュプル増幅器9については後述する。
【0009】
図10に示す電源回路では、直流成分及び低い周波数成分は、高効率であるDC/DCコンバータ12から供給し、高い周波数成分は、高速動作が可能なプッシュプル増幅器9から供給しており、これにより高効率で高速な動作を可能としている。
【0010】
[DC/DCコンバータの動作モード]
ここで、DC/DCコンバータ12の動作モードについて説明する。
DC/DCコンバータ12の動作モードとしては、追従モードと非追従モードとがある。
【0011】
[追従モード]
まず、追従モードについて説明する。追従モードは、包絡線検波器3の出力がDC成分及び低周波成分の場合のDC/DCコンバータ12の動作である。
図9の包絡線検波器3で検波された信号は、図10の入力端子8に入力され、プッシュプル増幅器9で電圧源に変換される。
包絡線検波器3の出力がDC成分の場合は、電流検出器10のノードP1の電圧が上がり、ヒステリシスコンパレータ11がスイッチ素子32をオンさせるように動く。
その結果、スイッチ素子32とインダクタンス34との接続点のノードPに電源電圧31が印加され、インダクタンス34を経由して出力端子13の電圧は徐々に上昇する。
【0012】
そして、出力端子13の電圧が、プッシュプル増幅器9の出力電圧より高くなると、ノードP2の電圧が高くなり、ヒステリシスコンパレータ11はスイッチ素子32をオフさせる。
その結果、インダクタンス34を流れていた電流はダイオード33経由で流れ、出力端子13の電圧は徐々に低下する。そして、再び、ヒステリシスコンパレータ11はスイッチ素子32をオンさせ、同様の繰り返し動作を行う。つまり、DC/DCコンバータ12は、自ら発振して制御する。
【0013】
この自励周波数は、自由度のあるヒステリシス幅と、インダクタンス34と、電源電圧31と、電流検出器10の抵抗値で決まるが、高く設定するとスイッチング損失が増加し、或いはスイッチ素子24の限界値を超えるので、限度はある。
【0014】
包絡線検波器3の出力がDC成分と低周波のAC成分である場合は、DC入力の場合と同様にDC/DCコンバータ12が追従し、出力電力は効率の良いDC/DCコンバータ12から供給される。
【0015】
[非追従モード]
次に、非追従モードについて説明する。
包絡線検波器3の出力が、CD成分と高い周波数のAC成分になると、インダクタンス34で高い周波数のAC成分は除去されるため、DC/DCコンバータ12からの出力は、DC成分のみとなる。
このとき、電流検出器10のノードP1とP2の両端にDC成分とAC高周波成分が発生し、ヒステリシスコンパレータ11の出力は、AC高周波成分を基本とする周波数でスイッチ素子32を動かす。
また、高い周波数のAC成分はプッシュプル増幅器9から供給される。
【0016】
[電源回路の効率]
図10に示した高速動作用電源回路では、自励周波数を高くして追従できるAC成分を増やすことで、つまり、高効率なDC/DCコンバータ12から出力するエネルギーの割合を増やすことで、電源回路の高効率化を試みることが考えられる。
しかし、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)やLTE(Long Term Evolution)などの広帯域な通信システムでは、包絡線も広帯域になるため、DC/DCコンバータ12のスイッチング周波数を上げると、スイッチング損失が大きくなり、電源回路の効率は低下する。
【0017】
そこで、適切な回路定数を設定することにより、WiMAXやLTE等の広帯域な通信システムでは、周波数の低いAC成分は、効率の高いDC/DCコンバータ12から供給し、周波数の高いAC成分は、プッシュプル増幅器9から供給するようにしている。
【0018】
[電源回路の大電流への対応]
ところで、主増幅器6の出力電力が大きい場合には、電源回路4からも多くの電流を供給する必要がある。
図10の高速動作用電源回路において、DC/DCコンバータ12では、スイッチ素子32、ダイオード33、インダクタンス34として、必要な電流を流せる部品を選択すればよい。
しかしながら、プッシュプル増幅器9に用いられるオペアンプについては、一般的に大電流を流せる部品はない。そこで、オペアンプの出力にNPNトランジスタとPNPトランジスタを接続して、出力できる電流の容量を増やしている。
【0019】
[プッシュプル増幅器の構成:図10]
次に、従来の高速動作用電源回路におけるプッシュプル増幅器(従来のプッシュプル増幅器)の構成について図10を用いて説明する。
図10に示すように、従来のプッシュプル増幅器9は、オペアンプ103と、バイアス回路を構成する抵抗器104、ダイオード105、ダイオード106、抵抗器107と、プッシュプル回路のNPNトランジスタ108、PNPトランジスタ109と、直流電圧源110と、直流電圧源111とで構成されている。
【0020】
そして、上記構成のプッシュプル増幅器9において、入力信号は入力端子8を通ってオペアンプ103の+端子に入力され、オペアンプの−端子へは出力信号がフィードバックされる。
ダイオード105は、NPNトランジスタ108のベース−間の電圧降下を、ダイオード106はPNPトランジスタ109のベース−エミッタ間の電圧降下を補償するためのものであり、抵抗器104、抵抗器107と共にバイアス回路を構成する。
【0021】
直流電圧源111よりも高い電圧値に設定される直流電圧源110に接続されたNPNトランジスタ108と、直流電圧源110よりも低い電圧値に設定される直流電圧源111に接続されたPNPトランジスタ109はプッシュプル回路を構成する。
そして、NPNトランジスタ108は基準電圧よりも高い電圧を出力し、PNPトランジスタ109は基準電圧よりも低い電圧を出力する。
【0022】
[プッシュプル増幅器の出力波形:図11]
次に、プッシュプル増幅器の出力波形について図11を用いて説明する。図11は、プッシュプル増幅器の出力波形を示す説明図であり、(a)は、NPNトランジスタ108と、PNPトランジスタ109の出力波形を示し、(b)は、プッシュプル増幅器9の出力端子の波形を示す。
図11(a)に示すように、実線で示すように、NPNトランジスタ108の出力波形(実線)及びPNPトランジスタ109の出力波形(破線)は、正弦波を半波整流した波形であり、これはB級にバイアスされた増幅器に相当する。
そして、図11(b)に示すように、プッシュプル増幅器9の出力端子からは、NPNトランジスタ108とPNPトランジスタ109の出力を合成した波形が出力される。
【0023】
[B級増幅器の電力変換効率:図12]
ここで、B級増幅器の電力変換効率について説明する。
B級増幅器が正弦波を出力するときの電力変換効率ηは、式1で表されることが知られている。
η=π/4×Vomax/Vdd (式1)
式1をNPNトランジスタ108について説明すると、Vddは直流電圧源110の電源電圧であり、Vomaxは、NPNトランジスタ108の出力電圧の最大値である。
【0024】
式1において、VomaxがVddと同じ電圧の場合、つまり飽和出力時の電圧変換効率ηは78.5%となるが、最大出力電圧Vomaxが下がると電力変換効率ηも低下する。
【0025】
図12は、B級増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
図12では、出力電圧に対する電力変換効率ηを表しており、横軸のバックオフは、Vomax/Vddを対数で表したものである。
バックオフが0の点が飽和出力を示しており、このときの電力変換効率ηは、上述したように78.5%となり、バックオフが大きくなると(最大出力電圧Vomaxが低下すると)電力変換効率ηは低下し、バックオフが−8の時の電力変換効率ηは、30%となる。
【0026】
[プッシュプル増幅器の電力変換効率:図12]
式1及び図12については、NPNトランジスタ108について説明したが、PNPトランジスタ109についても同様のことが言えるため、プッシュプル増幅器9全体の特性も式1及び図12で表すことができるものである。
尚、プッシュプル増幅器9では、オペアンプ103やバイアス回路も電力を消費するが、NPNトランジスタ108及びPNPトランジスタ109の電流増幅率hfeが大きく、オペアンプ103の消費電力はプッシュプル増幅器9のそれと比較すると僅かであるため、プッシュプル増幅器9の電力変換効率は、図12に示した特性とほぼ一致する。
【0027】
[OFDM信号における包絡線信号のスペクトラムの累積確率密度分布例:図13]
ここで、OFDM信号における包絡線信号の累積確率密度分布について図13を用いて説明する。図13は、OFDM信号における包絡線信号の累積確率密度分布の例を示す説明図である。
図13では、帯域幅10MHz、PAPR(Peak to Average Power Ratio):8dBのOFDM変調信号の包絡線を求め、電力の累積確率密度分布をDCから10MHzまでプロットしている。
【0028】
上述したように、電源回路4は、DC成分と低い周波数成分はDC/DCコンバータ12から供給し、高い周波数成分はプッシュプル増幅器9から供給するが、仮に、3MHz未満をDC/DCコンバータ12から供給し、3MHz以上をプッシュプル増幅器9が供給すると、図13から、電源回路4が供給する電力の内、DC/DCコンバータ12から90%の電力を、プッシュプル増幅器9から3MHz以上の10%を供給することになる。
【0029】
[OFDM信号での電源回路の電力変換効率:図12]
OFDM信号での電源回路4の電力変換効率について説明する。
DC成分と低い周波数成分を供給するDC/DCコンバータ12の電力変換効率は、スイッチ素子32のオン抵抗や、スイッチング損失、ダイオードの順方向電圧、インダクタンス34の損失などで決まり、ηdとする。
【0030】
一方、OFDM信号のPAPRは8dBであるから、プッシュプル増幅器9の電力変換効率は、図12からわかるように、バックオフ−8dBのときの電力変換効率となる。ここでは、このときの電力変換効率をηbとする。
【0031】
つまり、電源回路4が主増幅器6に供給する電力の内、10%を電力変換効率ηbのプッシュプル増幅器9から、90%を電力変換効率ηdのDC/DCコンバータ12から供給することになる。よって、電源回路4の電力変換効率ηsは式2で計算できる。
ηs=1/(10%/ηb+90%/ηd) (式2)
仮に、ηb=30%、ηd=90%として計算すると、ηs=75%となる。
電源回路4全体の電力変換効率を改善するためには、電力変換効率の低いプッシュプル増幅器9の効率をあげることが必要である。
【0032】
従来のプッシュプル増幅器9では、NPNトランジスタ108のコレクタ端子及びPNPトランジスタ109のコレクタ端子に接続される直流電圧源110及び直流電圧源111の電圧は、出力レベルに関係なく一定であるため、出力レベルが下がるに従って電力変換効率も低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】"An Improved Power-Added Efficiency 19-dBm Hybrid Envelope Elimination and Restoration Power Amplifier for 802.11g WLAN Applications" , Feipeng Wang et al., IEEE TRANSACTIOINS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL. 54, NO. 12, DECEMBER 2006, P. 4086-4099
【非特許文献2】"A Class B Switch- Mode Assisted Linear Amplifier" , Geoffrey R. Walker, IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL. 18. No. 6, NOVEMBER 2003, p.1278-1285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかしながら、従来のプッシュプル増幅器では、NPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続される直流電圧源の電圧が、出力レベルにかかわらず一定レベルであるため、出力レベルが下がると電力変換効率が低下してしまうという問題点があった。
【0035】
尚、非特許文献1、2には、プッシュプル増幅器のNPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続される直流電圧源の電圧を、出力レベルに応じて調整することは記載されていない。
【0036】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、プッシュプル増幅器のNPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続される直流電圧源の電圧を、出力レベルに応じて調整して、出力レベルが下がっても電力変換効率が低下しない電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、電力増幅器に用いられる電源回路であって、入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、制御信号によりプッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源の選択接続によって可変とする可変電源部と、制御信号として、入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために複数の電源を選択する選択信号を出力する制御部と、可変電源部における複数の電源の負荷が一定となるよう、選択信号による電源の選択先を変更する電源選択先変換部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電力増幅器に用いられる電源回路であって、入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、制御信号によりプッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源の選択接続によって可変とする可変電源部と、制御信号として、入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために複数の電源を選択する選択信号を出力する制御部と、可変電源部における複数の電源の負荷が一定となるよう、選択信号による電源の選択先を変更する電源選択先変換部とを備えた電源回路としているので、入力信号に基づいて、プッシュプル増幅部に出力レベルに追従した電源電圧を供給して、飽和に出力レベルが小さくても近い動作を可能として、プッシュプル増幅器の電力変換効率を改善でき、更に、複数の電源の負荷を一定とし、当該負荷において最も効率が良くなるよう回路を設計することで、電源回路全体の電力変換効率を一層向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
【図2】第1のプッシュプル増幅器におけるスイッチ制御信号の一例と、それに伴うトランジスタのコレクタ電圧及び出力波形を示す説明図である。
【図3】第1のプッシュプル増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
【図4】NPNトランジスタ108のコレクタ端子に直流電圧を供給する直流電圧源回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】直流電圧源の負荷効率特性の例を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
【図7】スイッチ制御信号変換部139におけるスイッチ制御信号の接続状態を示す説明図である。
【図8】第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率を示す説明図である。
【図9】EER方式の電力増幅器の概略構成図である。
【図10】高速に動作する電源回路の例を示す構成図である。
【図11】プッシュプル増幅器の出力波形を示す説明図である。
【図12】B級増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
【図13】OFDM信号における包絡線信号の累積確率密度分布の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る電源回路は、プッシュプル増幅器に、スイッチと直流電圧源が直列に接続され、更にそれらに並列にダイオードが接続された回路部を1つの回路ブロックとして、複数の回路ブロックが直列に接続された第1と第2の電源電圧生成回路を備え、当該第1と第2の電源電圧生成回路が、それぞれNPNトランジスタのコレクタ端子及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続され、スイッチ制御部が、入力信号レベルに応じて、複数のブロックの直流電圧源をNPNトランジスタ又はPNPトランジスタのコレクタ端子に接続するスイッチのオン/オフを制御することで、NPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ電圧を入力信号レベルに応じて制御して、出力レベルに追従したコレクタ電圧とすることができ、出力レベルが低い場合でも飽和に近い動作を可能とし、電源回路全体の電力変換効率を改善することができるものである。
【0041】
また、本発明の実施の形態に係る電源回路は、上記電源回路に、更に、スイッチ制御信号変換部を設け、電源電圧生成回路を構成する複数のブロックの直流電圧源の負荷がほぼ一定となるように、電源電圧制御手段からのスイッチ制御信号の出力先を変換して出力するようにしており、電源回路の電力変換効率を一層向上させることができるものである。
【0042】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る電源回路は、図10に示した従来の電源回路と同様に、プッシュプル増幅器とDC/DCコンバータとを備えている。
本発明の第1の実施の形態に係る電源回路について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電源回路(第1の電源回路)に用いられるプッシュプル増幅器(第1のプッシュプル増幅器)は、図10に示した従来のプッシュプル増幅器と同様の部分として、入力端子1と、出力端子13と、オペアンプ103と、バイアス回路を構成する抵抗器104と、ダイオード105と、ダイオード106と、抵抗器107と、プッシュプル回路を構成するNPNトランジスタ108と、PNPトランジスタ109と、直流電圧源110と、直流電圧源111とを備えている。
【0043】
そして、第1のプッシュプル増幅器の特徴部分として、スイッチ制御部138と、NPNトランジスタ108のコレクタに接続する直流電圧源136及び複数の回路ブロックB1〜B4と、PNPトランジスタ109のコレクタに接続する直流電圧源137及び複数の回路ブロックB5〜B8とを備えている。
直流電圧源136、137の電圧をV0とする。
【0044】
[回路ブロックB1〜B4]
NPNトランジスタ108側の回路ブロックB1〜B4の構成について説明する。
回路ブロックB1〜B4は、それぞれ、直流電圧源(112〜115)と、スイッチ(120〜123)と、ダイオード(128〜131)とを備え、各ブロックにおいて、ダイオードのアノードには直流電圧源の−側(負側)が接続され、カソードにはスイッチを介して直流電圧源の+側(正側)が接続されている。
【0045】
更に、回路ブロックB1のダイオード128のアノードは接地され、カソードは回路ブロックB2のダイオード129のアノードに接続されている。以下同様にして、回路ブロックB3,B4のダイオード130,131が直列に接続されて、回路ブロックB4のカソードは、直列電圧源136の−側(負側)に接続されている。
直列に接続された回路ブロックB1〜B4から成る回路を第1の電源電圧生成回路とする。
【0046】
そして、スイッチ120〜123は、後述するスイッチ制御部138からのスイッチ制御信号C1〜C4によってオン/オフが制御され、スイッチがオンとなった回路ブロックの直流電圧源の電圧と直流電圧源136の電圧が加算されて、基準電圧に対して正の電圧がNPNトランジスタ108のコレクタ端子に印加されるようになっている。
つまり、スイッチで選択された直流電圧源と直流電圧源136が直列接続となる。
尚、回路ブロックB1〜B4の直流電圧源112,113,114,115の電圧を、V1,V2,V3,V4とする。
【0047】
[回路ブロックB5〜B8]
同様に、PNPトランジスタ109側の回路ブロックB5〜B8は、それぞれ、直流電圧源(116〜119)と、スイッチ(124〜127)と、ダイオード(132〜135)とを備え、各ブロックにおいて、ダイオードのアノードには直流電圧源の−側が接続され、カソードにはスイッチを介して直流電圧源のプラス側が接続されている。
【0048】
また、回路ブロックB5のダイオード132のカソードは接地され、アノードは回路ブロックB6のダイオード133のカソードに接続されている。以下同様にして、回路ブロックB7,B8のダイオード134,135が直列に接続されて、回路ブロックB8のアノードは、直列電圧源137の+側に接続されている。
直列に接続された回路ブロックB5〜B8から成る回路を第2の電源電圧生成回路とする。
第1の電源電圧生成回路及び第2の電源電圧生成回路は、請求項に記載した可変電源部に相当する。
【0049】
そして、スイッチ124〜127は、後述するスイッチ制御部138からのスイッチ制御信号C5〜C8によってオン/オフが制御され、スイッチがオンとなった回路ブロックの直流電圧源の電圧と直流電圧源137の電圧が加算されて、基準電圧に対して負の電圧がNPNトランジスタ108のコレクタ端子に印加されるようになっている。
つまり、スイッチで選択された直流電圧源と直流電圧源137が直列接続となる。
尚、回路ブロックB5〜B8の直流電圧源116,117,118,119の電圧を、V1,V2,V3,V4とする。
スイッチ制御信号C1〜C4、C5〜C8は、請求項に記載した選択信号に相当する。
【0050】
[スイッチ制御部138]
次に、第1のプッシュプル増幅器の特徴部分であるスイッチ制御部138について説明する。
スイッチ制御部138は、入力端子8から入力される信号(包絡線信号)に基づいて、NPNトランジスタ108のコレクタ端子に印加される電圧を適切な値とするよう、回路ブロックB1〜B4のスイッチ120,121,122,123のオン/オフを制御するスイッチ制御信号C1,C2,C3,C4を出力する。
【0051】
同様に、スイッチ制御部138は、包絡線信号に基づいて、PNPトランジスタ109のコレクタ端子に印加される電圧を適切な値とするよう、回路ブロックB5〜B8のスイッチ124,125,126,127のオン/オフを制御するスイッチ制御信号C5,C6,C7,C8を出力する。
【0052】
具体的には、スイッチ制御部138は、8種類のスイッチ制御信号のそれぞれを、ハイレベル(Hレベル、オン)又はローレベル(Lレベル、オフ)として出力する制御信号生成回路を備えており、入力された包絡線信号に基づいて、Hレベル又はLレベルの各スイッチ制御信号を出力する。
スイッチ制御部138の各制御信号生成回路は、例えばコンパレータ回路によって構成される。
【0053】
これにより、第1のプッシュプル増幅器では、入力信号の電力レベルに応じたコレクタ電圧をNPNトランジスタ108及びPNPトランジスタ109に印加することができ、プッシュプル増幅器の電力変換効率を向上させ、電源回路全体の効率を向上させることができるものである。
【0054】
[第1のプッシュプル増幅器の動作:図1]
まず、回路ブロックB1〜B4,B5〜B8の動作について簡単に説明する。
各回路ブロックB1〜B4、B5〜B8では、ダイオードのアノード端子は直流電圧源の負側に、カソード端子は直流電圧源の正側に接続されている。このような回路ブロックB1〜B4、B5〜B8を直列に接続し、各スイッチのオン/オフを制御することにより、電圧を加算してNPNトランジスタ108、PNPトランジスタ109のコレクタ端子に印加することが可能となる。
【0055】
スイッチがONの場合には、当該回路ブロックの直流電圧源の電圧が加算され、電流は直流電圧源を流れ、回路が動作する。このとき、ダイオードには順方向の逆電圧があるため電流は流れない。
また、スイッチがオフの場合には、当該回路ブロックの直流電圧源の回路が開放になっているため、電圧は加算されないが、電流はダイオードを流れ、回路は動作する。
【0056】
そして、第1のプッシュプル増幅器では、スイッチ制御部138が、入力端子8から入力される包絡線信号に応じて、スイッチ制御信号C1〜C8をHレベル又はLレベルに切り替えて出力し、対応する回路ブロックのスイッチのオン/オフを制御する。
これにより、入力電力レベルに応じて、基準電圧に対して正のコレクタ電圧をNPNトランジスタ108に印加し、基準電圧に対して負のコレクタ電圧をPNPトランジスタ109に印加するものである。
【0057】
[スイッチ制御信号とトランジスタのコレクタ電圧:図2]
次に、第1のプッシュプル増幅器におけるスイッチ制御信号とトランジスタのコレクタ電圧の関係について図2を用いて説明する。図2は、第1のプッシュプル増幅器におけるスイッチ制御信号の一例と、それに伴うトランジスタのコレクタ電圧及び出力波形を示す説明図である。
図2の(a)には、スイッチ制御信号C1〜C8の例を示しており、スイッチ制御信号C1〜C8のそれぞれについて、各制御信号がスイッチをオンにする状態(Hレベル)であるか、或いはスイッチをオフにする状態(Lレベル)であるかを表している。
【0058】
図2(a)の例では、スイッチ制御信号C1は、時間T1まではLレベルであり、時間T1〜T8の期間はHレベルであり、時間T8以降は再びLレベルとなっている。
また、スイッチ制御信号C8は、時間T12まではLレベルであり、時間T12〜T13の期間はHレベルであり、時間T13以降はLレベルとなっている。
【0059】
図2(b)では、(a)のスイッチ制御信号C1〜C8が与えられた場合のNPNトランジスタ108のコレクタ電圧(ノードA電圧)と、PNPトランジスタ109のコレクタ電圧(ノードB電圧)と、出力電圧波形とを示している。尚、基準電圧としては、例えばゼロ(0)が用いられる。
【0060】
上述したように、第1のプッシュプル増幅器では、スイッチ制御信号C1〜C8がHレベルである場合に、対応するスイッチ120〜127がオンとなる。
図2において、まず、ノードA電圧に着目して説明する。
時間が0からT1までの間は、スイッチ制御信号C1〜C4が全てLレベルであるため、スイッチ120〜123は全てオフである。
従って、電流は、直流電圧源112〜115には流れずダイオード128〜131を流れ、ノードAには直流電圧源136の電圧V0が印加される。
尚、本実施の形態では、ダイオード128〜135の順方向電圧はゼロとして説明する。
【0061】
続いて、時間T1からT2までの間は、スイッチ制御信号C1のみがHレベルで、その他のスイッチ制御信号C2〜C4はLレベルであるので、スイッチ120のみがオンとなる。
スイッチ120に対応する直流電圧源112と直流電圧源136は直列に接続されているので、ノードAの電圧は、V0+V1となる。
つまり、つまりスイッチがオンになる回路ブロックの直流電圧源の電圧が、直流電圧源136の電圧V0に加算され、当該加算された電圧がノードAに印加されることになる。
【0062】
以下同様にして、時間T2,T3,T4で、スイッチ制御信号C2,C3,C4がそれぞれHレベルとなれば、それに応じてスイッチ121,122,123がオンとなり、ノードAの電圧には、更に電圧V2,V3,V4が加算される。
【0063】
更に、時間T5,T6,T7,T8で、スイッチ制御信号C4,C3,C2,C1がLレベルとなり、スイッチ123,122,121,120がオフになると、ノードAの電圧は、図2に示すように電圧V4,V3,V2,V1が減算される。
【0064】
ノードBの電圧についても、ノードAと同様に、スイッチ制御信号C5〜C8で制御されるスイッチ124〜127がオン又はオフに切り替えられることで図2に示すように変化する。時間T9〜T16の期間に変化するノードBの電圧は、時間T1〜T8におけるノードAの電圧に対して正負が逆になっている。
【0065】
[スイッチ制御部138の動作:図1、図2]
次に、スイッチ制御部138の動作について図1及び図2を用いて説明する。
上述したように、スイッチ制御部138は、入力信号から検出された包絡線信号に基づいて、スイッチ制御信号C1〜C8をHレベル又はLレベルとして出力する。
その結果、ノードAの電圧を制御するためのスイッチ120〜123を制御するスイッチ制御信号C1〜C4は、出力波形が正のときに変化する。
【0066】
スイッチ制御部138は、入力される包絡線信号に基づいて、スイッチ制御信号C1を、出力波形の電圧がV0よりも大きいときにHレベルとする。
また、スイッチ制御部138は、スイッチ制御信号C2を出力波形の電圧がV0+V1よりも大きいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C3を出力波形の電圧がV0+V1+V2よりも大きいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C4を出力波形の電圧がV0+V1+V2+V3よりも大きいときにHレベルとする。
その他の条件では、スイッチ制御部138は、スイッチ制御信号C1〜C4をLレベルとする。
【0067】
同様に、ノードBの電圧を制御するためのスイッチ124〜127を制御するスイッチ制御信号C5〜C8は、出力波形が負のときに変化する。
スイッチ制御部138は、入力される包絡線信号に基づいて、スイッチ制御信号C5を、出力波形の電圧が−V0よりも小さいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C6を出力波形の電圧が−V0−V1よりも小さいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C7を出力波形の電圧が−V0−V1−V2よりも小さいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C8を出力波形の電圧が−V0−V1−V2−V3よりも小さいときにHレベルとする。
その他の条件では、スイッチ制御部138は、スイッチ制御信号C5〜C8をLレベルとする。
【0068】
スイッチ制御部138は、このような条件でスイッチ制御信号C1〜C8が動作するよう構成され、コンパレータ回路を用いて容易に実現できる。このコンパレータ回路にはヒステリシス特性を持たせてもよい。
【0069】
図1に示したように、第1のプッシュプル増幅器では、スイッチ制御部138は、入力端子8から入力される包絡線信号からスイッチ制御信号C1〜C8を生成するため、入力レベルに対する出力レベルの利得を考慮して設計されている。
【0070】
また、各電圧V0,V1,V2,V3,V4は同じ電圧値でもよいし、それぞれ異なる電圧値であってもよい。
更に、ここではノードAの電圧及びノードBの電圧はそれぞれ5段階に変化するように構成されているが、何段であっても構わない。
更にまた、第1のプッシュプル増幅器では、出力波形と、V0,V1,V2,V3,V4を組み合わせて加算または減算したしきい値とを比較して各スイッチ制御信号のレベル(H又はL)を決めているが、必ずしもそのようにする必要はない。
【0071】
[第1のプッシュプル増幅器の効率:図3]
次に、第1のプッシュプル増幅器の効率について図3を用いて説明する。図3は、第1のプッシュプル増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
上述したように、第1のプッシュプル増幅器では、NPNトランジスタ108コレクタ端子(ノードA電圧)及びPNPトランジスタ109のコレクタ端子(ノードB)電圧は、出力波形に応じて変化する。
【0072】
つまり、出力波形が小さいときはコレクタ端子電圧の絶対値も小さくなるようにノードA及びノードBの電圧を制御することにより、第1のプッシュプル増幅器は、常に飽和出力に近い状態で動作する。
【0073】
そのため、図3に示すように、第1のプッシュプル増幅器の電力変換効率は、図12に示した従来方式と比較して向上する。特に、飽和出力よりも低い出力において、効率向上が顕著である。
例えば、OFDM信号に相当するバックオフ−8dBのときの電力変換効率は、図12の従来のプッシュプル増幅器では30%であったのが、第1のプッシュプル増幅器では55%に向上している。
【0074】
[直流電圧源回路の構成:図4]
次に、NPNトランジスタ108又はPNPトランジスタ109のコレクタ端子に直流電圧を供給する直流電圧源回路の構成について図4を用いて説明する。図4は、NPNトランジスタ108のコレクタ端子に直流電圧を供給する直流電圧源回路の構成例を示すブロック図である。尚、図1に示した直流112〜115に相当する部分は同一の符号を付してある。
また、ここでは、NPNトランジスタ108側の直流電圧源回路についてのみ説明するが、PNPトランジスタ109側の直流電圧源回路も同様の構成である。
【0075】
図1に示したように、直流電圧源112〜115と直流電圧源136、直流電圧源119〜123と直流電圧源137は、スイッチ120〜123、スイッチ124〜127がオンになった場合に直列接続になるため、絶縁型電源にする必要がある。
【0076】
図4に示すように、第1のプッシュプル増幅器の直流電圧源回路は、電源を供給する入力端子201と、入力端子201から供給された電源電圧を平滑化する平滑回路202と、スイッチ回路203と、入力と複数の出力を絶縁するためのトランス204と、出力電圧の整流と平滑を行う整流平滑回路205〜208と、目標とする出力電圧との誤差を検出する誤差増幅器209と、誤差情報を制御回路に渡す際に絶縁するためのフォトカプラ210と、誤差情報を最小にすることで目標の出力電圧に制御するための制御回路211と、スイッチ回路203を駆動するためのドライバ回路212を備えている。
【0077】
上記構成の直流電圧源回路の動作について説明する。
入力端子201から電圧Vinが入力されると、平滑回路202により平滑化され、スイッチ回路203を介してトランス204の入力側に入力される。
トランス204の出力側には、各直流電圧源112〜115の電圧値に応じた巻き数のコイルが設けられ、巻き数に応じて変換された電圧が整流平滑回路205〜208を介して、それぞれ直流電圧源112〜115の出力電圧となる。
【0078】
直流電圧源112〜115の電圧は、V1〜V4であり、直流電圧源115が目標電圧V4になるように制御する。
具体的には、直流電圧源115を監視し、誤差増幅器209で検出した直流電圧源115の電圧と目標電圧との差分である誤差信号をフォトカプラ210を介して制御回路211に入力し、制御回路211が、誤差信号が小さくなるようスイッチ回路203をオン/オフする信号のデューティー比を変えることにより、目標電圧V4とするよう制御する。
【0079】
直流電圧源112,113,114については監視を行わないが、直流電圧源115の電圧がV4になった場合に直流電圧源112,113,114の電圧がV1,V2,V3となるようにトランス204の巻き数を設計しておけばよい。
【0080】
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る電源回路によれば、プッシュプル増幅器に、スイッチと直流電圧源が直列に接続され、更にそれらに並列にダイオードが接続された回路部を1つの回路ブロックとして、複数の回路ブロックB1〜B4が直列に接続された第1の電源電圧生成回路と、複数の回路ブロックB5〜B8が直列に接続された第2の電源電圧生成回路とを備え、第1の電源電圧生成回路が、NPNトランジスタ108のコレクタ端子に接続され、第2の電源電圧生成回路が、PNPトランジスタ109のコレクタ端子に接続され、スイッチ制御部が、包絡線検波器3からの入力信号の包絡線信号に応じて、複数の回路ブロックB1〜B8のスイッチ120〜127のオン/オフを制御するスイッチ制御信号C1〜C8を出力するようにしているので、NPNトランジスタ108及びPNPトランジスタ109のコレクタ電圧を入力信号レベルに応じて、出力信号レベルに追従するよう制御して、常に飽和に近い動作を可能とし、プッシュプル増幅器の出力レベルが低い場合の電力変換効率を改善し、電源回路全体の電力変換効率を向上させることができる効果がある。
【0081】
更に、第1の電源回路を、例えばEER方式の増幅器に用いることにより、増幅器全体の効率を向上させ、消費電力を低減でき、放熱フィンを小さくして、小型化・軽量化を図ることができる効果がある。
【0082】
尚、上述した例では、直流電圧源136,137は、常時ノードA,ノードBに印加されるよう構成されているが、スイッチ及びダイオードを追加して回路ブロックとし、他の直流電圧源と同様にオン/オフを切り替えられるようにしてもよい。
【0083】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
[各直流電圧源の負荷]
ここで、図1に示した直流電圧源112〜115のそれぞれの負荷について考える。
図1において、スイッチ120〜123がオンのときに、各直流電圧源112〜115から電力を供給する。スイッチ120〜123がオンになる確率は、図10に示した電源回路の入力端子8に入力される信号、つまり図9の包絡線検波器3で検波される振幅の度数分布による。
【0084】
W−CDMAやOFDM信号の確率密度関数は、レイリー分布に近いことが知られているが、これは、スイッチ120〜123がオンする確率に違いがあることを意味する。
つまり、直流電圧源112〜115の負荷に差があることになる。
【0085】
[直流電圧源の負荷効率特性:図5]
次に、直流電圧源の負荷効率特性について図5を用いて説明する。図5は、直流電圧源の負荷効率特性の例を示す説明図である。
図5では、横軸に負荷率(%)を、縦軸に効率(%)を示している。
直流電圧源において、負荷が変わっても効率は変化せず一定であるのが理想的であるが、現実には効率が最大になる負荷があり、それより低いあるいは高い負荷では効率が低下する。
【0086】
図5の例では、a,b,c,dは、それぞれ、異なる直流電圧源(1)(2)(3)(4)の負荷率を示しており、このときの電力変換効率(効率)が、それぞれ、A,B,C,Dとなっている。
つまり、直流電圧源(3)は、負荷率cで効率Cという高い効率が得られており、当該直流電圧源(3)は適切な負荷となっているといえるが、直流電圧源(1)は、負荷率aで効率はかなり低いAとなっており、最適な負荷から外れていることになる。
このような特性の直流電圧源を異なる負荷で使うと効率の低下を招くことになる。
【0087】
[第2の実施の形態の構成:図6]
そこで、本発明の第2の実施の形態に係る電源回路では、プッシュプル増幅器の複数の直流電圧減の負荷をなるべく一定となるように制御し、更に、当該負荷において最大の効率が得られるよう直流電圧源を設計したものである。
本発明の第2の実施の形態に係る電源回路は、第1の電源回路と同様に、プッシュプル増幅器とDC/DCコンバータとを備えている。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る電源回路(第2の電源回路)に用いられるプッシュプル増幅器(第2のプッシュプル増幅器)は、基本的な構成は、図1に示した第1のプッシュプル増幅器と同じであり、図1と同一の符号を付して説明する。
【0088】
第2のプッシュプル増幅器は、第1のプッシュプル増幅器のスイッチ制御部138の出力段に、新たにスイッチ制御信号変換部139を備えている点が特徴となっている。
スイッチ制御信号変換部139は、スイッチ制御部138から出力されたスイッチ制御信号C1〜C8を、固定的に特定のスイッチに出力するのではなく、各直流電圧源112〜119の負荷が一定となるように接続先のスイッチを変換して出力するものである。
第2のプッシュプル増幅器では、スイッチ112〜119における制御信号の入力端子を、CC1〜CC8としている。
スイッチ制御信号変換部139は、請求項に記載した電源選択先変換部に相当する。
【0089】
スイッチ制御信号変換部139の構成及び動作について説明する前に、第2のプッシュプル増幅器のスイッチ制御信号変換部139における制御方法について簡単に説明する。
図2の例では、出力波形の電圧が上がるに従ってスイッチ制御信号C1,C2,C3,C4が順番にオン(Hレベル)になり、逆に電圧が下がるに従ってC4、C3,C2,C1の順でオフ(Lレベル)になる。この制御方法では、C1がオンになっている期間は長いが、C4がオンになっている期間は短い。よって、直流電圧源112の負荷は大きいが、直流電圧源115の負荷は小さくなり、負荷にばらつきが生じている。
【0090】
ところで、第1及び第2のプッシュプル増幅器では、直列に接続された回路ブロックB1〜B4のスイッチ120〜123、又は回路ブロックB5〜B8のスイッチ124〜127の内の何個をオンにするかによってノードA及びノードBの電圧を制御することができ、必ずしも図2に示したように、スイッチ制御信号C1,C2,C3,C4の順で制御する必要はない。
【0091】
例えば、ノードAの電圧をV0+V1に設定する場合には、回路ブロックB1〜B4の直流電圧源112〜115のいずれか1つが直流電圧源136に接続されればよいので、スイッチ制御信号C1〜C4の何れか1つがオンであればよい。
そこで、第2のプッシュプル増幅器のスイッチ制御信号変換部139では、直流電圧源112〜115、116〜119の負荷、つまり各直流電圧源から供給される電力が一定になるようにスイッチ制御信号C1〜C8の接続先(出力先)を変換するようにしている。
【0092】
[スイッチ制御信号変換部139の構成]
スイッチ制御信号変換部139の構成について説明する。
スイッチ制御信号変換部139は、主として、スイッチ回路と、スイッチ回路を制御する制御部とを備えている。
スイッチ回路は、スイッチ制御部138から出力されるスイッチ制御信号C1〜C4を、それぞれ、回路ブロックB1〜B4のスイッチ120〜123(CC1〜CC4)のいずれかに接続し、スイッチ制御信号C5〜C8を、それぞれ、回路ブロックB5〜B8のスイッチ124〜127(CC5〜C8)のいずれかに接続するものであり、制御部からの指示に従って接続する。
【0093】
制御部は、マイコン等で構成され、設定された変換方法でスイッチ制御信号の接続先を変換して、スイッチ回路を切り替えて所定の回路ブロックのスイッチ120〜127に接続する。
また、制御部は、記憶部やタイマを備えている。
【0094】
[スイッチ制御信号の接続状態:図7]
次に、スイッチ制御信号変換部139におけるスイッチ制御信号の接続状態について図7を用いて説明する。図7は、スイッチ制御信号変換部139におけるスイッチ制御信号の接続状態を示す説明図である。
図7(a)は、C1とCC1、C2とCC2、C3とCC3、C4とCC4とを接続した状態を示しており、これは、スイッチ制御信号変換部139がない場合と同様である。
(b)は、(a)の状態から1つずつ接続先をずらした状態、(c)は(b)から1つずつ接続先をずらした状態、(d)は(c)から1つずつ接続先をずらした状態を示している。
【0095】
そして、スイッチ制御信号変換部139では、直流電圧源112〜115の負荷が一定になるように、(a)(b)(c)(d)の状態を、以下に示すような制御方法に従って選択して、スイッチ制御信号の接続先となるスイッチを変換する。
尚、ここでは、NPNトランジスタ108側についてのみ示すが、PNPトランジスタ109側も同様であり、直流電圧源116〜119の負荷が一定になるように、スイッチ制御信号C5〜C8と接続先CC5〜CC8の対応付けを適宜切り替えて接続する。
【0096】
[スイッチ制御信号変換部139における制御方法]
次に、スイッチ制御信号変換部における制御例として、第1の制御方法〜第3の制御方法について説明する。
[第1の制御方法]
第1の制御方法は、制御部が一定時間を計時するタイマを備え、図6の(a)〜(d)の接続状態を切り替える順番を決めておき、ある接続状態に切り替えるとタイマを起動して、タイムアップすると、次の接続状態となるよう接続先を切り替えるものである。
【0097】
例えば、(a)→(b)→(c)→(d)の順で、各接続状態が一定時間となるよう制御する。最後の状態((d)の状態)の後は、また最初の状態((a)の状態)に戻る。
接続状態の順番は、任意に設定可能である。
このようにして、第1の制御方法が行われる。
【0098】
[第2の制御方法]
第2の制御方法は、第1の制御方法と同様にタイマを備えて、一定時間毎に接続常態を切り替えるが、予め接続状態の順番を設定しておくのではなく、切り替えのタイミングになる度に、(a)〜(d)の状態の中から無作為に選択した接続状態とするよう切り替えるものである。
すなわち、制御部は、(a)〜(d)の状態からランダムに1つを選択する選択手段を備え、最初の接続状態から一定時間が経過すると、選択手段が(a)〜(d)の中から無作為に1つの状態を選択し、当該状態とするようにスイッチ回路を切り替えるものである。
このようにして、第2の制御方法が行われる。
【0099】
[第3の制御方法]
第3の制御方法では、制御部に、スイッチ制御信号C1〜C4がどこに接続しているかを監視すると共に、一定時間毎に回路ブロック側の各スイッチ120(CC1)〜123(CC4)がオン状態となった時間を測定して記憶する監視部を備える。
監視部は、初期状態から各スイッチ制御信号の接続先と、CC1〜CC4のオンとなった時間を計測して記憶する。
【0100】
そして、タイマがタイムアップして切り替えのタイミングになると、制御部は、スイッチをオンの時間の長かった順に並べ換え、最もオン状態が長かったスイッチには、最もオン状態が短かったスイッチ制御信号を割り当て、2番目にオン状態が長かったスイッチには、2番目にオン状態が短かったスイッチ制御信号を割り当て、3番目にオン状態が長かったスイッチには、3番目にオン状態が短かったスイッチ制御信号を割り当て、最もオン状態が短かったスイッチには、最もオン状態が長かったスイッチ制御信号を割り当てる。
これにより、各直流電圧源がオンになる時間を平均化できるものである。
このようにして、第3の制御方法が行われる。
【0101】
そして、第1〜第3の制御方法のいずれかによってスイッチ制御部138からのスイッチ制御信号C1〜C4の接続先を、スイッチ制御信号変換部139で切り替えることにより、直流電圧源112〜115の負荷の平均値をほぼ一定とすることができ、プッシュプル増幅器の電力変換効率を改善できるものである。
また、スイッチ制御信号C5〜C8の接続先を同様に切り替えることにより、直流電圧源116〜119の負荷の平均値をほぼ一定とすることができ、プッシュプル増幅器の電力変換効率を改善できるものである。
【0102】
[第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率:図8]
次に、第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率について図8を用いて説明する。図8は、第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率を示す説明図である。
図8に示すように、第2のプッシュプル増幅器では、直流電圧源112〜115、116〜119の負荷率を、x(%)で一定となるよう制御し、負荷率x(%)における電力変換効率が最大となるように直流電圧源の回路を設計することで、高い電力変換効率X(%)が得られるものである。
【0103】
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態に係る電源回路によれば、第1の電源回路のスイッチ制御部138の出力段にスイッチ制御信号変換部139を設け、スイッチ制御信号変換部139が、スイッチ制御部138から出力されるスイッチ制御信号C1〜C4を、回路ブロックB1〜B4の直流電圧源112〜115の負荷が等しくなるように、スイッチ120〜123のいずれかに振り分けて接続すると共に、スイッチ制御信号C5〜C8を、回路ブロックB5〜B8の直流電圧源116〜119の負荷が等しくなるように、スイッチ124〜127のいずれかに振り分けて接続するようにしているので、直流電圧源112〜115、116〜119がオンとなる時間がほぼ一定となり、直流電圧源の負荷のばらつきを抑え、プッシュプル増幅器の電力変換効率を更に改善することができ、電源回路全体の電力変換効率を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、広帯域の高周波信号で無線通信を行う送信機の電力増幅器で用いられ、電力変換効率を向上させることができる電源回路に適している。
【符号の説明】
【0105】
8...入力端子、 2...分配器、 3...包絡線検波器、 4...電源回路、 5...RFリミット増幅器、 6...主増幅器、 7,13...出力端子、 9...プッシュプル増幅器、 10...電流検出器、 11...ヒステリシスコンパレータ、 12...DC/DCコンバータ、 31...電圧電源、 32...スイッチ素子、 33,105,106...ダイオード、 34...インダクタンス、 103...オペアンプ、 104,107...抵抗器、 108...NPNトランジスタ、 109...PNPトランジスタ、 110,111,136,137,112,113,114,115,116,117,118,119...直流電圧源、 120,121,122,123,124,125,126,127...スイッチ、 128,129,130,131,132,133,134,135...ダイオード、 138...スイッチ制御部、 139...スイッチ制御信号変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の高周波信号で無線通信を行う送信機の電力増幅器で用いられる電源回路に係り、特に、電力変換効率を向上させることができる電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
送信機の電力増幅器への要求として、設置場所の制約や据付コストの低減のために、小型・軽量化が強く求められている。装置の体積・重量は、電力損失によって発生する熱を放熱するための放熱フィンが多くを占めるが、電力効率を改善することで放熱フィンを小さくすることが可能になり、小型・軽量化に寄与する。
【0003】
[EER方式の電力増幅器:図9]
電力効率を改善する方法として、飽和型の電力増幅器の電源電圧を変動させるEER(Envelop Elimination and Restoration)方式がある。
EER方式の電力増幅器について図9を用いて説明する。図9は、EER方式の電力増幅器の概略構成図である。
図9に示すように、EER方式の電力増幅器は、入力端子1と、分配器2と、包絡線検波器3と、電源回路4と、RFリミット増幅器5と、主増幅器6と、出力端子7とを備えている。
【0004】
具体的には、入力端子1と、分配器2と、RFリミット増幅器5と、主増幅器6と、出力端子7が直列に接続されており、分配器2には包絡線検波器3が接続され、包絡線検波器3には電源回路4が接続され、電源回路4は主増幅器6に接続されて電源を供給する構成となっている。
【0005】
上記構成のEER方式の電力増幅器では、入力端子1から入力されたRF信号は、分配器2で分配され、一方は包絡線検波器3で検波されて包絡線信号が電源回路4に入力される。そして、電源回路4は、主増幅器6の電源電圧を包絡線信号に従って変動させる。
分配器2で分配された他方のRF信号は、RFリミット増幅器5で振幅変動分が除去され、位相情報のみを保ちながら主増幅器6で増幅される。
主増幅器6の電源電圧は、包絡線検波器3からの振幅情報に従って変動するので、振幅情報は復元され、主増幅器6は常に飽和状態で動作するため高効率となる。
【0006】
[高速動作可能な電源回路:図10]
ところで、EER方式の電力増幅器全体における効率を考えた場合、主増幅器6だけでなく、電源回路4の効率も重要になってくる。
W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)信号やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号のような広帯域信号の包絡線信号の帯域は広く、電源回路4は高速に動作する必要がある。
【0007】
高速に動作する電源回路としては、例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されている(非特許文献1,2参照)。
高速に動作する電源回路の構成例について図10を用いて説明する。図10は、高速に動作する電源回路の例を示す構成図である。
図10に示すように、高速に動作する電源回路(高速動作用電源回路)は、主として、入力端子8と、広帯域の電圧源であるプッシュプル増幅器9と、制御回路である電流検出器10及びヒステリシスコンパレータ11と、高効率なDC/DCコンバータ12と、出力端子13とから構成されている。
尚、プッシュプル増幅器9は、請求項に記載したプッシュプル増幅部に相当する。
【0008】
そして、入力端子8は、図9に示した包絡線検波器3の出力段に接続され、出力端子13は、図9に示した主増幅器6の電源端子に接続される。
電流検出器10は、例えば抵抗から構成される。
また、DC/DCコンバータ12は、電圧電源31と、スイッチ素子32と、ダイオード33と、インダクタンス34とから構成されている。
プッシュプル増幅器9については後述する。
【0009】
図10に示す電源回路では、直流成分及び低い周波数成分は、高効率であるDC/DCコンバータ12から供給し、高い周波数成分は、高速動作が可能なプッシュプル増幅器9から供給しており、これにより高効率で高速な動作を可能としている。
【0010】
[DC/DCコンバータの動作モード]
ここで、DC/DCコンバータ12の動作モードについて説明する。
DC/DCコンバータ12の動作モードとしては、追従モードと非追従モードとがある。
【0011】
[追従モード]
まず、追従モードについて説明する。追従モードは、包絡線検波器3の出力がDC成分及び低周波成分の場合のDC/DCコンバータ12の動作である。
図9の包絡線検波器3で検波された信号は、図10の入力端子8に入力され、プッシュプル増幅器9で電圧源に変換される。
包絡線検波器3の出力がDC成分の場合は、電流検出器10のノードP1の電圧が上がり、ヒステリシスコンパレータ11がスイッチ素子32をオンさせるように動く。
その結果、スイッチ素子32とインダクタンス34との接続点のノードPに電源電圧31が印加され、インダクタンス34を経由して出力端子13の電圧は徐々に上昇する。
【0012】
そして、出力端子13の電圧が、プッシュプル増幅器9の出力電圧より高くなると、ノードP2の電圧が高くなり、ヒステリシスコンパレータ11はスイッチ素子32をオフさせる。
その結果、インダクタンス34を流れていた電流はダイオード33経由で流れ、出力端子13の電圧は徐々に低下する。そして、再び、ヒステリシスコンパレータ11はスイッチ素子32をオンさせ、同様の繰り返し動作を行う。つまり、DC/DCコンバータ12は、自ら発振して制御する。
【0013】
この自励周波数は、自由度のあるヒステリシス幅と、インダクタンス34と、電源電圧31と、電流検出器10の抵抗値で決まるが、高く設定するとスイッチング損失が増加し、或いはスイッチ素子24の限界値を超えるので、限度はある。
【0014】
包絡線検波器3の出力がDC成分と低周波のAC成分である場合は、DC入力の場合と同様にDC/DCコンバータ12が追従し、出力電力は効率の良いDC/DCコンバータ12から供給される。
【0015】
[非追従モード]
次に、非追従モードについて説明する。
包絡線検波器3の出力が、CD成分と高い周波数のAC成分になると、インダクタンス34で高い周波数のAC成分は除去されるため、DC/DCコンバータ12からの出力は、DC成分のみとなる。
このとき、電流検出器10のノードP1とP2の両端にDC成分とAC高周波成分が発生し、ヒステリシスコンパレータ11の出力は、AC高周波成分を基本とする周波数でスイッチ素子32を動かす。
また、高い周波数のAC成分はプッシュプル増幅器9から供給される。
【0016】
[電源回路の効率]
図10に示した高速動作用電源回路では、自励周波数を高くして追従できるAC成分を増やすことで、つまり、高効率なDC/DCコンバータ12から出力するエネルギーの割合を増やすことで、電源回路の高効率化を試みることが考えられる。
しかし、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)やLTE(Long Term Evolution)などの広帯域な通信システムでは、包絡線も広帯域になるため、DC/DCコンバータ12のスイッチング周波数を上げると、スイッチング損失が大きくなり、電源回路の効率は低下する。
【0017】
そこで、適切な回路定数を設定することにより、WiMAXやLTE等の広帯域な通信システムでは、周波数の低いAC成分は、効率の高いDC/DCコンバータ12から供給し、周波数の高いAC成分は、プッシュプル増幅器9から供給するようにしている。
【0018】
[電源回路の大電流への対応]
ところで、主増幅器6の出力電力が大きい場合には、電源回路4からも多くの電流を供給する必要がある。
図10の高速動作用電源回路において、DC/DCコンバータ12では、スイッチ素子32、ダイオード33、インダクタンス34として、必要な電流を流せる部品を選択すればよい。
しかしながら、プッシュプル増幅器9に用いられるオペアンプについては、一般的に大電流を流せる部品はない。そこで、オペアンプの出力にNPNトランジスタとPNPトランジスタを接続して、出力できる電流の容量を増やしている。
【0019】
[プッシュプル増幅器の構成:図10]
次に、従来の高速動作用電源回路におけるプッシュプル増幅器(従来のプッシュプル増幅器)の構成について図10を用いて説明する。
図10に示すように、従来のプッシュプル増幅器9は、オペアンプ103と、バイアス回路を構成する抵抗器104、ダイオード105、ダイオード106、抵抗器107と、プッシュプル回路のNPNトランジスタ108、PNPトランジスタ109と、直流電圧源110と、直流電圧源111とで構成されている。
【0020】
そして、上記構成のプッシュプル増幅器9において、入力信号は入力端子8を通ってオペアンプ103の+端子に入力され、オペアンプの−端子へは出力信号がフィードバックされる。
ダイオード105は、NPNトランジスタ108のベース−間の電圧降下を、ダイオード106はPNPトランジスタ109のベース−エミッタ間の電圧降下を補償するためのものであり、抵抗器104、抵抗器107と共にバイアス回路を構成する。
【0021】
直流電圧源111よりも高い電圧値に設定される直流電圧源110に接続されたNPNトランジスタ108と、直流電圧源110よりも低い電圧値に設定される直流電圧源111に接続されたPNPトランジスタ109はプッシュプル回路を構成する。
そして、NPNトランジスタ108は基準電圧よりも高い電圧を出力し、PNPトランジスタ109は基準電圧よりも低い電圧を出力する。
【0022】
[プッシュプル増幅器の出力波形:図11]
次に、プッシュプル増幅器の出力波形について図11を用いて説明する。図11は、プッシュプル増幅器の出力波形を示す説明図であり、(a)は、NPNトランジスタ108と、PNPトランジスタ109の出力波形を示し、(b)は、プッシュプル増幅器9の出力端子の波形を示す。
図11(a)に示すように、実線で示すように、NPNトランジスタ108の出力波形(実線)及びPNPトランジスタ109の出力波形(破線)は、正弦波を半波整流した波形であり、これはB級にバイアスされた増幅器に相当する。
そして、図11(b)に示すように、プッシュプル増幅器9の出力端子からは、NPNトランジスタ108とPNPトランジスタ109の出力を合成した波形が出力される。
【0023】
[B級増幅器の電力変換効率:図12]
ここで、B級増幅器の電力変換効率について説明する。
B級増幅器が正弦波を出力するときの電力変換効率ηは、式1で表されることが知られている。
η=π/4×Vomax/Vdd (式1)
式1をNPNトランジスタ108について説明すると、Vddは直流電圧源110の電源電圧であり、Vomaxは、NPNトランジスタ108の出力電圧の最大値である。
【0024】
式1において、VomaxがVddと同じ電圧の場合、つまり飽和出力時の電圧変換効率ηは78.5%となるが、最大出力電圧Vomaxが下がると電力変換効率ηも低下する。
【0025】
図12は、B級増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
図12では、出力電圧に対する電力変換効率ηを表しており、横軸のバックオフは、Vomax/Vddを対数で表したものである。
バックオフが0の点が飽和出力を示しており、このときの電力変換効率ηは、上述したように78.5%となり、バックオフが大きくなると(最大出力電圧Vomaxが低下すると)電力変換効率ηは低下し、バックオフが−8の時の電力変換効率ηは、30%となる。
【0026】
[プッシュプル増幅器の電力変換効率:図12]
式1及び図12については、NPNトランジスタ108について説明したが、PNPトランジスタ109についても同様のことが言えるため、プッシュプル増幅器9全体の特性も式1及び図12で表すことができるものである。
尚、プッシュプル増幅器9では、オペアンプ103やバイアス回路も電力を消費するが、NPNトランジスタ108及びPNPトランジスタ109の電流増幅率hfeが大きく、オペアンプ103の消費電力はプッシュプル増幅器9のそれと比較すると僅かであるため、プッシュプル増幅器9の電力変換効率は、図12に示した特性とほぼ一致する。
【0027】
[OFDM信号における包絡線信号のスペクトラムの累積確率密度分布例:図13]
ここで、OFDM信号における包絡線信号の累積確率密度分布について図13を用いて説明する。図13は、OFDM信号における包絡線信号の累積確率密度分布の例を示す説明図である。
図13では、帯域幅10MHz、PAPR(Peak to Average Power Ratio):8dBのOFDM変調信号の包絡線を求め、電力の累積確率密度分布をDCから10MHzまでプロットしている。
【0028】
上述したように、電源回路4は、DC成分と低い周波数成分はDC/DCコンバータ12から供給し、高い周波数成分はプッシュプル増幅器9から供給するが、仮に、3MHz未満をDC/DCコンバータ12から供給し、3MHz以上をプッシュプル増幅器9が供給すると、図13から、電源回路4が供給する電力の内、DC/DCコンバータ12から90%の電力を、プッシュプル増幅器9から3MHz以上の10%を供給することになる。
【0029】
[OFDM信号での電源回路の電力変換効率:図12]
OFDM信号での電源回路4の電力変換効率について説明する。
DC成分と低い周波数成分を供給するDC/DCコンバータ12の電力変換効率は、スイッチ素子32のオン抵抗や、スイッチング損失、ダイオードの順方向電圧、インダクタンス34の損失などで決まり、ηdとする。
【0030】
一方、OFDM信号のPAPRは8dBであるから、プッシュプル増幅器9の電力変換効率は、図12からわかるように、バックオフ−8dBのときの電力変換効率となる。ここでは、このときの電力変換効率をηbとする。
【0031】
つまり、電源回路4が主増幅器6に供給する電力の内、10%を電力変換効率ηbのプッシュプル増幅器9から、90%を電力変換効率ηdのDC/DCコンバータ12から供給することになる。よって、電源回路4の電力変換効率ηsは式2で計算できる。
ηs=1/(10%/ηb+90%/ηd) (式2)
仮に、ηb=30%、ηd=90%として計算すると、ηs=75%となる。
電源回路4全体の電力変換効率を改善するためには、電力変換効率の低いプッシュプル増幅器9の効率をあげることが必要である。
【0032】
従来のプッシュプル増幅器9では、NPNトランジスタ108のコレクタ端子及びPNPトランジスタ109のコレクタ端子に接続される直流電圧源110及び直流電圧源111の電圧は、出力レベルに関係なく一定であるため、出力レベルが下がるに従って電力変換効率も低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】"An Improved Power-Added Efficiency 19-dBm Hybrid Envelope Elimination and Restoration Power Amplifier for 802.11g WLAN Applications" , Feipeng Wang et al., IEEE TRANSACTIOINS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES, VOL. 54, NO. 12, DECEMBER 2006, P. 4086-4099
【非特許文献2】"A Class B Switch- Mode Assisted Linear Amplifier" , Geoffrey R. Walker, IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS, VOL. 18. No. 6, NOVEMBER 2003, p.1278-1285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかしながら、従来のプッシュプル増幅器では、NPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続される直流電圧源の電圧が、出力レベルにかかわらず一定レベルであるため、出力レベルが下がると電力変換効率が低下してしまうという問題点があった。
【0035】
尚、非特許文献1、2には、プッシュプル増幅器のNPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続される直流電圧源の電圧を、出力レベルに応じて調整することは記載されていない。
【0036】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、プッシュプル増幅器のNPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続される直流電圧源の電圧を、出力レベルに応じて調整して、出力レベルが下がっても電力変換効率が低下しない電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、電力増幅器に用いられる電源回路であって、入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、制御信号によりプッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源の選択接続によって可変とする可変電源部と、制御信号として、入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために複数の電源を選択する選択信号を出力する制御部と、可変電源部における複数の電源の負荷が一定となるよう、選択信号による電源の選択先を変更する電源選択先変換部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電力増幅器に用いられる電源回路であって、入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、制御信号によりプッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源の選択接続によって可変とする可変電源部と、制御信号として、入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために複数の電源を選択する選択信号を出力する制御部と、可変電源部における複数の電源の負荷が一定となるよう、選択信号による電源の選択先を変更する電源選択先変換部とを備えた電源回路としているので、入力信号に基づいて、プッシュプル増幅部に出力レベルに追従した電源電圧を供給して、飽和に出力レベルが小さくても近い動作を可能として、プッシュプル増幅器の電力変換効率を改善でき、更に、複数の電源の負荷を一定とし、当該負荷において最も効率が良くなるよう回路を設計することで、電源回路全体の電力変換効率を一層向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
【図2】第1のプッシュプル増幅器におけるスイッチ制御信号の一例と、それに伴うトランジスタのコレクタ電圧及び出力波形を示す説明図である。
【図3】第1のプッシュプル増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
【図4】NPNトランジスタ108のコレクタ端子に直流電圧を供給する直流電圧源回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】直流電圧源の負荷効率特性の例を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
【図7】スイッチ制御信号変換部139におけるスイッチ制御信号の接続状態を示す説明図である。
【図8】第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率を示す説明図である。
【図9】EER方式の電力増幅器の概略構成図である。
【図10】高速に動作する電源回路の例を示す構成図である。
【図11】プッシュプル増幅器の出力波形を示す説明図である。
【図12】B級増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
【図13】OFDM信号における包絡線信号の累積確率密度分布の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る電源回路は、プッシュプル増幅器に、スイッチと直流電圧源が直列に接続され、更にそれらに並列にダイオードが接続された回路部を1つの回路ブロックとして、複数の回路ブロックが直列に接続された第1と第2の電源電圧生成回路を備え、当該第1と第2の電源電圧生成回路が、それぞれNPNトランジスタのコレクタ端子及びPNPトランジスタのコレクタ端子に接続され、スイッチ制御部が、入力信号レベルに応じて、複数のブロックの直流電圧源をNPNトランジスタ又はPNPトランジスタのコレクタ端子に接続するスイッチのオン/オフを制御することで、NPNトランジスタ及びPNPトランジスタのコレクタ電圧を入力信号レベルに応じて制御して、出力レベルに追従したコレクタ電圧とすることができ、出力レベルが低い場合でも飽和に近い動作を可能とし、電源回路全体の電力変換効率を改善することができるものである。
【0041】
また、本発明の実施の形態に係る電源回路は、上記電源回路に、更に、スイッチ制御信号変換部を設け、電源電圧生成回路を構成する複数のブロックの直流電圧源の負荷がほぼ一定となるように、電源電圧制御手段からのスイッチ制御信号の出力先を変換して出力するようにしており、電源回路の電力変換効率を一層向上させることができるものである。
【0042】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る電源回路は、図10に示した従来の電源回路と同様に、プッシュプル増幅器とDC/DCコンバータとを備えている。
本発明の第1の実施の形態に係る電源回路について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電源回路(第1の電源回路)に用いられるプッシュプル増幅器(第1のプッシュプル増幅器)は、図10に示した従来のプッシュプル増幅器と同様の部分として、入力端子1と、出力端子13と、オペアンプ103と、バイアス回路を構成する抵抗器104と、ダイオード105と、ダイオード106と、抵抗器107と、プッシュプル回路を構成するNPNトランジスタ108と、PNPトランジスタ109と、直流電圧源110と、直流電圧源111とを備えている。
【0043】
そして、第1のプッシュプル増幅器の特徴部分として、スイッチ制御部138と、NPNトランジスタ108のコレクタに接続する直流電圧源136及び複数の回路ブロックB1〜B4と、PNPトランジスタ109のコレクタに接続する直流電圧源137及び複数の回路ブロックB5〜B8とを備えている。
直流電圧源136、137の電圧をV0とする。
【0044】
[回路ブロックB1〜B4]
NPNトランジスタ108側の回路ブロックB1〜B4の構成について説明する。
回路ブロックB1〜B4は、それぞれ、直流電圧源(112〜115)と、スイッチ(120〜123)と、ダイオード(128〜131)とを備え、各ブロックにおいて、ダイオードのアノードには直流電圧源の−側(負側)が接続され、カソードにはスイッチを介して直流電圧源の+側(正側)が接続されている。
【0045】
更に、回路ブロックB1のダイオード128のアノードは接地され、カソードは回路ブロックB2のダイオード129のアノードに接続されている。以下同様にして、回路ブロックB3,B4のダイオード130,131が直列に接続されて、回路ブロックB4のカソードは、直列電圧源136の−側(負側)に接続されている。
直列に接続された回路ブロックB1〜B4から成る回路を第1の電源電圧生成回路とする。
【0046】
そして、スイッチ120〜123は、後述するスイッチ制御部138からのスイッチ制御信号C1〜C4によってオン/オフが制御され、スイッチがオンとなった回路ブロックの直流電圧源の電圧と直流電圧源136の電圧が加算されて、基準電圧に対して正の電圧がNPNトランジスタ108のコレクタ端子に印加されるようになっている。
つまり、スイッチで選択された直流電圧源と直流電圧源136が直列接続となる。
尚、回路ブロックB1〜B4の直流電圧源112,113,114,115の電圧を、V1,V2,V3,V4とする。
【0047】
[回路ブロックB5〜B8]
同様に、PNPトランジスタ109側の回路ブロックB5〜B8は、それぞれ、直流電圧源(116〜119)と、スイッチ(124〜127)と、ダイオード(132〜135)とを備え、各ブロックにおいて、ダイオードのアノードには直流電圧源の−側が接続され、カソードにはスイッチを介して直流電圧源のプラス側が接続されている。
【0048】
また、回路ブロックB5のダイオード132のカソードは接地され、アノードは回路ブロックB6のダイオード133のカソードに接続されている。以下同様にして、回路ブロックB7,B8のダイオード134,135が直列に接続されて、回路ブロックB8のアノードは、直列電圧源137の+側に接続されている。
直列に接続された回路ブロックB5〜B8から成る回路を第2の電源電圧生成回路とする。
第1の電源電圧生成回路及び第2の電源電圧生成回路は、請求項に記載した可変電源部に相当する。
【0049】
そして、スイッチ124〜127は、後述するスイッチ制御部138からのスイッチ制御信号C5〜C8によってオン/オフが制御され、スイッチがオンとなった回路ブロックの直流電圧源の電圧と直流電圧源137の電圧が加算されて、基準電圧に対して負の電圧がNPNトランジスタ108のコレクタ端子に印加されるようになっている。
つまり、スイッチで選択された直流電圧源と直流電圧源137が直列接続となる。
尚、回路ブロックB5〜B8の直流電圧源116,117,118,119の電圧を、V1,V2,V3,V4とする。
スイッチ制御信号C1〜C4、C5〜C8は、請求項に記載した選択信号に相当する。
【0050】
[スイッチ制御部138]
次に、第1のプッシュプル増幅器の特徴部分であるスイッチ制御部138について説明する。
スイッチ制御部138は、入力端子8から入力される信号(包絡線信号)に基づいて、NPNトランジスタ108のコレクタ端子に印加される電圧を適切な値とするよう、回路ブロックB1〜B4のスイッチ120,121,122,123のオン/オフを制御するスイッチ制御信号C1,C2,C3,C4を出力する。
【0051】
同様に、スイッチ制御部138は、包絡線信号に基づいて、PNPトランジスタ109のコレクタ端子に印加される電圧を適切な値とするよう、回路ブロックB5〜B8のスイッチ124,125,126,127のオン/オフを制御するスイッチ制御信号C5,C6,C7,C8を出力する。
【0052】
具体的には、スイッチ制御部138は、8種類のスイッチ制御信号のそれぞれを、ハイレベル(Hレベル、オン)又はローレベル(Lレベル、オフ)として出力する制御信号生成回路を備えており、入力された包絡線信号に基づいて、Hレベル又はLレベルの各スイッチ制御信号を出力する。
スイッチ制御部138の各制御信号生成回路は、例えばコンパレータ回路によって構成される。
【0053】
これにより、第1のプッシュプル増幅器では、入力信号の電力レベルに応じたコレクタ電圧をNPNトランジスタ108及びPNPトランジスタ109に印加することができ、プッシュプル増幅器の電力変換効率を向上させ、電源回路全体の効率を向上させることができるものである。
【0054】
[第1のプッシュプル増幅器の動作:図1]
まず、回路ブロックB1〜B4,B5〜B8の動作について簡単に説明する。
各回路ブロックB1〜B4、B5〜B8では、ダイオードのアノード端子は直流電圧源の負側に、カソード端子は直流電圧源の正側に接続されている。このような回路ブロックB1〜B4、B5〜B8を直列に接続し、各スイッチのオン/オフを制御することにより、電圧を加算してNPNトランジスタ108、PNPトランジスタ109のコレクタ端子に印加することが可能となる。
【0055】
スイッチがONの場合には、当該回路ブロックの直流電圧源の電圧が加算され、電流は直流電圧源を流れ、回路が動作する。このとき、ダイオードには順方向の逆電圧があるため電流は流れない。
また、スイッチがオフの場合には、当該回路ブロックの直流電圧源の回路が開放になっているため、電圧は加算されないが、電流はダイオードを流れ、回路は動作する。
【0056】
そして、第1のプッシュプル増幅器では、スイッチ制御部138が、入力端子8から入力される包絡線信号に応じて、スイッチ制御信号C1〜C8をHレベル又はLレベルに切り替えて出力し、対応する回路ブロックのスイッチのオン/オフを制御する。
これにより、入力電力レベルに応じて、基準電圧に対して正のコレクタ電圧をNPNトランジスタ108に印加し、基準電圧に対して負のコレクタ電圧をPNPトランジスタ109に印加するものである。
【0057】
[スイッチ制御信号とトランジスタのコレクタ電圧:図2]
次に、第1のプッシュプル増幅器におけるスイッチ制御信号とトランジスタのコレクタ電圧の関係について図2を用いて説明する。図2は、第1のプッシュプル増幅器におけるスイッチ制御信号の一例と、それに伴うトランジスタのコレクタ電圧及び出力波形を示す説明図である。
図2の(a)には、スイッチ制御信号C1〜C8の例を示しており、スイッチ制御信号C1〜C8のそれぞれについて、各制御信号がスイッチをオンにする状態(Hレベル)であるか、或いはスイッチをオフにする状態(Lレベル)であるかを表している。
【0058】
図2(a)の例では、スイッチ制御信号C1は、時間T1まではLレベルであり、時間T1〜T8の期間はHレベルであり、時間T8以降は再びLレベルとなっている。
また、スイッチ制御信号C8は、時間T12まではLレベルであり、時間T12〜T13の期間はHレベルであり、時間T13以降はLレベルとなっている。
【0059】
図2(b)では、(a)のスイッチ制御信号C1〜C8が与えられた場合のNPNトランジスタ108のコレクタ電圧(ノードA電圧)と、PNPトランジスタ109のコレクタ電圧(ノードB電圧)と、出力電圧波形とを示している。尚、基準電圧としては、例えばゼロ(0)が用いられる。
【0060】
上述したように、第1のプッシュプル増幅器では、スイッチ制御信号C1〜C8がHレベルである場合に、対応するスイッチ120〜127がオンとなる。
図2において、まず、ノードA電圧に着目して説明する。
時間が0からT1までの間は、スイッチ制御信号C1〜C4が全てLレベルであるため、スイッチ120〜123は全てオフである。
従って、電流は、直流電圧源112〜115には流れずダイオード128〜131を流れ、ノードAには直流電圧源136の電圧V0が印加される。
尚、本実施の形態では、ダイオード128〜135の順方向電圧はゼロとして説明する。
【0061】
続いて、時間T1からT2までの間は、スイッチ制御信号C1のみがHレベルで、その他のスイッチ制御信号C2〜C4はLレベルであるので、スイッチ120のみがオンとなる。
スイッチ120に対応する直流電圧源112と直流電圧源136は直列に接続されているので、ノードAの電圧は、V0+V1となる。
つまり、つまりスイッチがオンになる回路ブロックの直流電圧源の電圧が、直流電圧源136の電圧V0に加算され、当該加算された電圧がノードAに印加されることになる。
【0062】
以下同様にして、時間T2,T3,T4で、スイッチ制御信号C2,C3,C4がそれぞれHレベルとなれば、それに応じてスイッチ121,122,123がオンとなり、ノードAの電圧には、更に電圧V2,V3,V4が加算される。
【0063】
更に、時間T5,T6,T7,T8で、スイッチ制御信号C4,C3,C2,C1がLレベルとなり、スイッチ123,122,121,120がオフになると、ノードAの電圧は、図2に示すように電圧V4,V3,V2,V1が減算される。
【0064】
ノードBの電圧についても、ノードAと同様に、スイッチ制御信号C5〜C8で制御されるスイッチ124〜127がオン又はオフに切り替えられることで図2に示すように変化する。時間T9〜T16の期間に変化するノードBの電圧は、時間T1〜T8におけるノードAの電圧に対して正負が逆になっている。
【0065】
[スイッチ制御部138の動作:図1、図2]
次に、スイッチ制御部138の動作について図1及び図2を用いて説明する。
上述したように、スイッチ制御部138は、入力信号から検出された包絡線信号に基づいて、スイッチ制御信号C1〜C8をHレベル又はLレベルとして出力する。
その結果、ノードAの電圧を制御するためのスイッチ120〜123を制御するスイッチ制御信号C1〜C4は、出力波形が正のときに変化する。
【0066】
スイッチ制御部138は、入力される包絡線信号に基づいて、スイッチ制御信号C1を、出力波形の電圧がV0よりも大きいときにHレベルとする。
また、スイッチ制御部138は、スイッチ制御信号C2を出力波形の電圧がV0+V1よりも大きいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C3を出力波形の電圧がV0+V1+V2よりも大きいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C4を出力波形の電圧がV0+V1+V2+V3よりも大きいときにHレベルとする。
その他の条件では、スイッチ制御部138は、スイッチ制御信号C1〜C4をLレベルとする。
【0067】
同様に、ノードBの電圧を制御するためのスイッチ124〜127を制御するスイッチ制御信号C5〜C8は、出力波形が負のときに変化する。
スイッチ制御部138は、入力される包絡線信号に基づいて、スイッチ制御信号C5を、出力波形の電圧が−V0よりも小さいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C6を出力波形の電圧が−V0−V1よりも小さいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C7を出力波形の電圧が−V0−V1−V2よりも小さいときにHレベルとし、スイッチ制御信号C8を出力波形の電圧が−V0−V1−V2−V3よりも小さいときにHレベルとする。
その他の条件では、スイッチ制御部138は、スイッチ制御信号C5〜C8をLレベルとする。
【0068】
スイッチ制御部138は、このような条件でスイッチ制御信号C1〜C8が動作するよう構成され、コンパレータ回路を用いて容易に実現できる。このコンパレータ回路にはヒステリシス特性を持たせてもよい。
【0069】
図1に示したように、第1のプッシュプル増幅器では、スイッチ制御部138は、入力端子8から入力される包絡線信号からスイッチ制御信号C1〜C8を生成するため、入力レベルに対する出力レベルの利得を考慮して設計されている。
【0070】
また、各電圧V0,V1,V2,V3,V4は同じ電圧値でもよいし、それぞれ異なる電圧値であってもよい。
更に、ここではノードAの電圧及びノードBの電圧はそれぞれ5段階に変化するように構成されているが、何段であっても構わない。
更にまた、第1のプッシュプル増幅器では、出力波形と、V0,V1,V2,V3,V4を組み合わせて加算または減算したしきい値とを比較して各スイッチ制御信号のレベル(H又はL)を決めているが、必ずしもそのようにする必要はない。
【0071】
[第1のプッシュプル増幅器の効率:図3]
次に、第1のプッシュプル増幅器の効率について図3を用いて説明する。図3は、第1のプッシュプル増幅器の電力変換効率特性を示す説明図である。
上述したように、第1のプッシュプル増幅器では、NPNトランジスタ108コレクタ端子(ノードA電圧)及びPNPトランジスタ109のコレクタ端子(ノードB)電圧は、出力波形に応じて変化する。
【0072】
つまり、出力波形が小さいときはコレクタ端子電圧の絶対値も小さくなるようにノードA及びノードBの電圧を制御することにより、第1のプッシュプル増幅器は、常に飽和出力に近い状態で動作する。
【0073】
そのため、図3に示すように、第1のプッシュプル増幅器の電力変換効率は、図12に示した従来方式と比較して向上する。特に、飽和出力よりも低い出力において、効率向上が顕著である。
例えば、OFDM信号に相当するバックオフ−8dBのときの電力変換効率は、図12の従来のプッシュプル増幅器では30%であったのが、第1のプッシュプル増幅器では55%に向上している。
【0074】
[直流電圧源回路の構成:図4]
次に、NPNトランジスタ108又はPNPトランジスタ109のコレクタ端子に直流電圧を供給する直流電圧源回路の構成について図4を用いて説明する。図4は、NPNトランジスタ108のコレクタ端子に直流電圧を供給する直流電圧源回路の構成例を示すブロック図である。尚、図1に示した直流112〜115に相当する部分は同一の符号を付してある。
また、ここでは、NPNトランジスタ108側の直流電圧源回路についてのみ説明するが、PNPトランジスタ109側の直流電圧源回路も同様の構成である。
【0075】
図1に示したように、直流電圧源112〜115と直流電圧源136、直流電圧源119〜123と直流電圧源137は、スイッチ120〜123、スイッチ124〜127がオンになった場合に直列接続になるため、絶縁型電源にする必要がある。
【0076】
図4に示すように、第1のプッシュプル増幅器の直流電圧源回路は、電源を供給する入力端子201と、入力端子201から供給された電源電圧を平滑化する平滑回路202と、スイッチ回路203と、入力と複数の出力を絶縁するためのトランス204と、出力電圧の整流と平滑を行う整流平滑回路205〜208と、目標とする出力電圧との誤差を検出する誤差増幅器209と、誤差情報を制御回路に渡す際に絶縁するためのフォトカプラ210と、誤差情報を最小にすることで目標の出力電圧に制御するための制御回路211と、スイッチ回路203を駆動するためのドライバ回路212を備えている。
【0077】
上記構成の直流電圧源回路の動作について説明する。
入力端子201から電圧Vinが入力されると、平滑回路202により平滑化され、スイッチ回路203を介してトランス204の入力側に入力される。
トランス204の出力側には、各直流電圧源112〜115の電圧値に応じた巻き数のコイルが設けられ、巻き数に応じて変換された電圧が整流平滑回路205〜208を介して、それぞれ直流電圧源112〜115の出力電圧となる。
【0078】
直流電圧源112〜115の電圧は、V1〜V4であり、直流電圧源115が目標電圧V4になるように制御する。
具体的には、直流電圧源115を監視し、誤差増幅器209で検出した直流電圧源115の電圧と目標電圧との差分である誤差信号をフォトカプラ210を介して制御回路211に入力し、制御回路211が、誤差信号が小さくなるようスイッチ回路203をオン/オフする信号のデューティー比を変えることにより、目標電圧V4とするよう制御する。
【0079】
直流電圧源112,113,114については監視を行わないが、直流電圧源115の電圧がV4になった場合に直流電圧源112,113,114の電圧がV1,V2,V3となるようにトランス204の巻き数を設計しておけばよい。
【0080】
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る電源回路によれば、プッシュプル増幅器に、スイッチと直流電圧源が直列に接続され、更にそれらに並列にダイオードが接続された回路部を1つの回路ブロックとして、複数の回路ブロックB1〜B4が直列に接続された第1の電源電圧生成回路と、複数の回路ブロックB5〜B8が直列に接続された第2の電源電圧生成回路とを備え、第1の電源電圧生成回路が、NPNトランジスタ108のコレクタ端子に接続され、第2の電源電圧生成回路が、PNPトランジスタ109のコレクタ端子に接続され、スイッチ制御部が、包絡線検波器3からの入力信号の包絡線信号に応じて、複数の回路ブロックB1〜B8のスイッチ120〜127のオン/オフを制御するスイッチ制御信号C1〜C8を出力するようにしているので、NPNトランジスタ108及びPNPトランジスタ109のコレクタ電圧を入力信号レベルに応じて、出力信号レベルに追従するよう制御して、常に飽和に近い動作を可能とし、プッシュプル増幅器の出力レベルが低い場合の電力変換効率を改善し、電源回路全体の電力変換効率を向上させることができる効果がある。
【0081】
更に、第1の電源回路を、例えばEER方式の増幅器に用いることにより、増幅器全体の効率を向上させ、消費電力を低減でき、放熱フィンを小さくして、小型化・軽量化を図ることができる効果がある。
【0082】
尚、上述した例では、直流電圧源136,137は、常時ノードA,ノードBに印加されるよう構成されているが、スイッチ及びダイオードを追加して回路ブロックとし、他の直流電圧源と同様にオン/オフを切り替えられるようにしてもよい。
【0083】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
[各直流電圧源の負荷]
ここで、図1に示した直流電圧源112〜115のそれぞれの負荷について考える。
図1において、スイッチ120〜123がオンのときに、各直流電圧源112〜115から電力を供給する。スイッチ120〜123がオンになる確率は、図10に示した電源回路の入力端子8に入力される信号、つまり図9の包絡線検波器3で検波される振幅の度数分布による。
【0084】
W−CDMAやOFDM信号の確率密度関数は、レイリー分布に近いことが知られているが、これは、スイッチ120〜123がオンする確率に違いがあることを意味する。
つまり、直流電圧源112〜115の負荷に差があることになる。
【0085】
[直流電圧源の負荷効率特性:図5]
次に、直流電圧源の負荷効率特性について図5を用いて説明する。図5は、直流電圧源の負荷効率特性の例を示す説明図である。
図5では、横軸に負荷率(%)を、縦軸に効率(%)を示している。
直流電圧源において、負荷が変わっても効率は変化せず一定であるのが理想的であるが、現実には効率が最大になる負荷があり、それより低いあるいは高い負荷では効率が低下する。
【0086】
図5の例では、a,b,c,dは、それぞれ、異なる直流電圧源(1)(2)(3)(4)の負荷率を示しており、このときの電力変換効率(効率)が、それぞれ、A,B,C,Dとなっている。
つまり、直流電圧源(3)は、負荷率cで効率Cという高い効率が得られており、当該直流電圧源(3)は適切な負荷となっているといえるが、直流電圧源(1)は、負荷率aで効率はかなり低いAとなっており、最適な負荷から外れていることになる。
このような特性の直流電圧源を異なる負荷で使うと効率の低下を招くことになる。
【0087】
[第2の実施の形態の構成:図6]
そこで、本発明の第2の実施の形態に係る電源回路では、プッシュプル増幅器の複数の直流電圧減の負荷をなるべく一定となるように制御し、更に、当該負荷において最大の効率が得られるよう直流電圧源を設計したものである。
本発明の第2の実施の形態に係る電源回路は、第1の電源回路と同様に、プッシュプル増幅器とDC/DCコンバータとを備えている。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る電源回路に用いられるプッシュプル増幅器の構成図である。
図6に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る電源回路(第2の電源回路)に用いられるプッシュプル増幅器(第2のプッシュプル増幅器)は、基本的な構成は、図1に示した第1のプッシュプル増幅器と同じであり、図1と同一の符号を付して説明する。
【0088】
第2のプッシュプル増幅器は、第1のプッシュプル増幅器のスイッチ制御部138の出力段に、新たにスイッチ制御信号変換部139を備えている点が特徴となっている。
スイッチ制御信号変換部139は、スイッチ制御部138から出力されたスイッチ制御信号C1〜C8を、固定的に特定のスイッチに出力するのではなく、各直流電圧源112〜119の負荷が一定となるように接続先のスイッチを変換して出力するものである。
第2のプッシュプル増幅器では、スイッチ112〜119における制御信号の入力端子を、CC1〜CC8としている。
スイッチ制御信号変換部139は、請求項に記載した電源選択先変換部に相当する。
【0089】
スイッチ制御信号変換部139の構成及び動作について説明する前に、第2のプッシュプル増幅器のスイッチ制御信号変換部139における制御方法について簡単に説明する。
図2の例では、出力波形の電圧が上がるに従ってスイッチ制御信号C1,C2,C3,C4が順番にオン(Hレベル)になり、逆に電圧が下がるに従ってC4、C3,C2,C1の順でオフ(Lレベル)になる。この制御方法では、C1がオンになっている期間は長いが、C4がオンになっている期間は短い。よって、直流電圧源112の負荷は大きいが、直流電圧源115の負荷は小さくなり、負荷にばらつきが生じている。
【0090】
ところで、第1及び第2のプッシュプル増幅器では、直列に接続された回路ブロックB1〜B4のスイッチ120〜123、又は回路ブロックB5〜B8のスイッチ124〜127の内の何個をオンにするかによってノードA及びノードBの電圧を制御することができ、必ずしも図2に示したように、スイッチ制御信号C1,C2,C3,C4の順で制御する必要はない。
【0091】
例えば、ノードAの電圧をV0+V1に設定する場合には、回路ブロックB1〜B4の直流電圧源112〜115のいずれか1つが直流電圧源136に接続されればよいので、スイッチ制御信号C1〜C4の何れか1つがオンであればよい。
そこで、第2のプッシュプル増幅器のスイッチ制御信号変換部139では、直流電圧源112〜115、116〜119の負荷、つまり各直流電圧源から供給される電力が一定になるようにスイッチ制御信号C1〜C8の接続先(出力先)を変換するようにしている。
【0092】
[スイッチ制御信号変換部139の構成]
スイッチ制御信号変換部139の構成について説明する。
スイッチ制御信号変換部139は、主として、スイッチ回路と、スイッチ回路を制御する制御部とを備えている。
スイッチ回路は、スイッチ制御部138から出力されるスイッチ制御信号C1〜C4を、それぞれ、回路ブロックB1〜B4のスイッチ120〜123(CC1〜CC4)のいずれかに接続し、スイッチ制御信号C5〜C8を、それぞれ、回路ブロックB5〜B8のスイッチ124〜127(CC5〜C8)のいずれかに接続するものであり、制御部からの指示に従って接続する。
【0093】
制御部は、マイコン等で構成され、設定された変換方法でスイッチ制御信号の接続先を変換して、スイッチ回路を切り替えて所定の回路ブロックのスイッチ120〜127に接続する。
また、制御部は、記憶部やタイマを備えている。
【0094】
[スイッチ制御信号の接続状態:図7]
次に、スイッチ制御信号変換部139におけるスイッチ制御信号の接続状態について図7を用いて説明する。図7は、スイッチ制御信号変換部139におけるスイッチ制御信号の接続状態を示す説明図である。
図7(a)は、C1とCC1、C2とCC2、C3とCC3、C4とCC4とを接続した状態を示しており、これは、スイッチ制御信号変換部139がない場合と同様である。
(b)は、(a)の状態から1つずつ接続先をずらした状態、(c)は(b)から1つずつ接続先をずらした状態、(d)は(c)から1つずつ接続先をずらした状態を示している。
【0095】
そして、スイッチ制御信号変換部139では、直流電圧源112〜115の負荷が一定になるように、(a)(b)(c)(d)の状態を、以下に示すような制御方法に従って選択して、スイッチ制御信号の接続先となるスイッチを変換する。
尚、ここでは、NPNトランジスタ108側についてのみ示すが、PNPトランジスタ109側も同様であり、直流電圧源116〜119の負荷が一定になるように、スイッチ制御信号C5〜C8と接続先CC5〜CC8の対応付けを適宜切り替えて接続する。
【0096】
[スイッチ制御信号変換部139における制御方法]
次に、スイッチ制御信号変換部における制御例として、第1の制御方法〜第3の制御方法について説明する。
[第1の制御方法]
第1の制御方法は、制御部が一定時間を計時するタイマを備え、図6の(a)〜(d)の接続状態を切り替える順番を決めておき、ある接続状態に切り替えるとタイマを起動して、タイムアップすると、次の接続状態となるよう接続先を切り替えるものである。
【0097】
例えば、(a)→(b)→(c)→(d)の順で、各接続状態が一定時間となるよう制御する。最後の状態((d)の状態)の後は、また最初の状態((a)の状態)に戻る。
接続状態の順番は、任意に設定可能である。
このようにして、第1の制御方法が行われる。
【0098】
[第2の制御方法]
第2の制御方法は、第1の制御方法と同様にタイマを備えて、一定時間毎に接続常態を切り替えるが、予め接続状態の順番を設定しておくのではなく、切り替えのタイミングになる度に、(a)〜(d)の状態の中から無作為に選択した接続状態とするよう切り替えるものである。
すなわち、制御部は、(a)〜(d)の状態からランダムに1つを選択する選択手段を備え、最初の接続状態から一定時間が経過すると、選択手段が(a)〜(d)の中から無作為に1つの状態を選択し、当該状態とするようにスイッチ回路を切り替えるものである。
このようにして、第2の制御方法が行われる。
【0099】
[第3の制御方法]
第3の制御方法では、制御部に、スイッチ制御信号C1〜C4がどこに接続しているかを監視すると共に、一定時間毎に回路ブロック側の各スイッチ120(CC1)〜123(CC4)がオン状態となった時間を測定して記憶する監視部を備える。
監視部は、初期状態から各スイッチ制御信号の接続先と、CC1〜CC4のオンとなった時間を計測して記憶する。
【0100】
そして、タイマがタイムアップして切り替えのタイミングになると、制御部は、スイッチをオンの時間の長かった順に並べ換え、最もオン状態が長かったスイッチには、最もオン状態が短かったスイッチ制御信号を割り当て、2番目にオン状態が長かったスイッチには、2番目にオン状態が短かったスイッチ制御信号を割り当て、3番目にオン状態が長かったスイッチには、3番目にオン状態が短かったスイッチ制御信号を割り当て、最もオン状態が短かったスイッチには、最もオン状態が長かったスイッチ制御信号を割り当てる。
これにより、各直流電圧源がオンになる時間を平均化できるものである。
このようにして、第3の制御方法が行われる。
【0101】
そして、第1〜第3の制御方法のいずれかによってスイッチ制御部138からのスイッチ制御信号C1〜C4の接続先を、スイッチ制御信号変換部139で切り替えることにより、直流電圧源112〜115の負荷の平均値をほぼ一定とすることができ、プッシュプル増幅器の電力変換効率を改善できるものである。
また、スイッチ制御信号C5〜C8の接続先を同様に切り替えることにより、直流電圧源116〜119の負荷の平均値をほぼ一定とすることができ、プッシュプル増幅器の電力変換効率を改善できるものである。
【0102】
[第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率:図8]
次に、第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率について図8を用いて説明する。図8は、第2のプッシュプル増幅器の電力変換効率を示す説明図である。
図8に示すように、第2のプッシュプル増幅器では、直流電圧源112〜115、116〜119の負荷率を、x(%)で一定となるよう制御し、負荷率x(%)における電力変換効率が最大となるように直流電圧源の回路を設計することで、高い電力変換効率X(%)が得られるものである。
【0103】
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態に係る電源回路によれば、第1の電源回路のスイッチ制御部138の出力段にスイッチ制御信号変換部139を設け、スイッチ制御信号変換部139が、スイッチ制御部138から出力されるスイッチ制御信号C1〜C4を、回路ブロックB1〜B4の直流電圧源112〜115の負荷が等しくなるように、スイッチ120〜123のいずれかに振り分けて接続すると共に、スイッチ制御信号C5〜C8を、回路ブロックB5〜B8の直流電圧源116〜119の負荷が等しくなるように、スイッチ124〜127のいずれかに振り分けて接続するようにしているので、直流電圧源112〜115、116〜119がオンとなる時間がほぼ一定となり、直流電圧源の負荷のばらつきを抑え、プッシュプル増幅器の電力変換効率を更に改善することができ、電源回路全体の電力変換効率を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、広帯域の高周波信号で無線通信を行う送信機の電力増幅器で用いられ、電力変換効率を向上させることができる電源回路に適している。
【符号の説明】
【0105】
8...入力端子、 2...分配器、 3...包絡線検波器、 4...電源回路、 5...RFリミット増幅器、 6...主増幅器、 7,13...出力端子、 9...プッシュプル増幅器、 10...電流検出器、 11...ヒステリシスコンパレータ、 12...DC/DCコンバータ、 31...電圧電源、 32...スイッチ素子、 33,105,106...ダイオード、 34...インダクタンス、 103...オペアンプ、 104,107...抵抗器、 108...NPNトランジスタ、 109...PNPトランジスタ、 110,111,136,137,112,113,114,115,116,117,118,119...直流電圧源、 120,121,122,123,124,125,126,127...スイッチ、 128,129,130,131,132,133,134,135...ダイオード、 138...スイッチ制御部、 139...スイッチ制御信号変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器に用いられる電源回路であって、
入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、
制御信号により前記プッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源の選択接続によって可変とする可変電源部と、
前記制御信号として、前記入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために前記複数の電源を選択する選択信号を出力する制御部と、
前記可変電源部における複数の電源の負荷が一定となるよう、前記選択信号による電源の選択先を変更する電源選択先変換部とを備えたことを特徴とする電源回路。
【請求項1】
電力増幅器に用いられる電源回路であって、
入力信号をプッシュプル増幅方式で増幅するプッシュプル増幅部と、
制御信号により前記プッシュプル増幅部に提供する電源電圧の電圧レベルを複数の電源の選択接続によって可変とする可変電源部と、
前記制御信号として、前記入力信号に基づいて電源電圧の電圧レベルを制御するために前記複数の電源を選択する選択信号を出力する制御部と、
前記可変電源部における複数の電源の負荷が一定となるよう、前記選択信号による電源の選択先を変更する電源選択先変換部とを備えたことを特徴とする電源回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−66100(P2013−66100A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204343(P2011−204343)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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