説明

電源装置

【課題】アンバランスな状態を作ることなく、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能な電源装置を実現する。
【解決手段】ICまたは回路から構成される電源供給対象に複数の電源を供給する電源装置において、複数の電源電圧がそれぞれ予め設定された閾値電圧を超えた時に検出信号を出力する電圧検出部と、電源と電源供給対象の間に配置され検出信号に応じてスイッチを制御するスイッチ部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源発生部から電源供給対象に電源を供給する電源装置に関し、特にアンバランスな状態を作ることなく、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能な電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の電源装置を示す構成ブロック図である。図3において、電源供給対象1は複数の電源を必要とする回路やIC(Integrated Circuit)であり、電源端子は正側と負側の2つを持つ。正電源発生部2は電源供給対象1で使用される正側の電源を発生し、負電源発生部3は電源供給対象1で使用される負側の電源を発生する。
【0003】
正電源発生部2の出力端子は電源供給対象1の正電源端子に接続され、負電源発生部3の出力端子は電源供給対象1の負電源端子に接続される。また、電源供給対象1の出力には図示しないICまたは回路が接続される。正電源発生部2および負電源発生部3は電源装置50を構成している。
【0004】
図3に示す従来例の動作を説明する。電源装置50は起動すると、正電源発生部2と負電源発生部3からそれぞれ電源を発生し、電源供給対象1へ供給する。
【0005】
従来の電源装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平9−037457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図3に示す従来例では正電源発生部2と負電源発生部3の起動時間が異なる場合、どちらか一方の電源のみが電源供給対象1へ供給される状態が発生するという問題点があった。例えば、電源供給対象1がオペアンプのボルテージフォロワ回路である場合、最初に負電源発生部3から負電源が供給され、その後に正電源発生部2から正電源が供給されたとすると、正電源発生部2が立ち上がるまでの間、負電源のみが供給される状態、すなわち、片側電源状態(アンバランスな状態)となり、電源供給対象1の出力には負の電圧が出力されてしまっていた。
【0008】
このため、電源供給対象1の出力に接続されている回路やICは負の電圧が印加され、破壊される可能性があった。また、正電源発生部2と負電源発生部3は他の回路やICにも電源を供給しており、このような回路構成を採らざるを得なかった。
【0009】
従って本発明が解決しようとする課題は、アンバランスな状態を作ることなく、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能な電源装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
ICまたは回路から構成される電源供給対象に複数の電源を供給する電源装置において、
前記複数の電源電圧がそれぞれ予め設定された閾値電圧を超えた時に検出信号を出力する電圧検出部と、前記電源と前記電源供給対象の間に配置され前記検出信号に応じてスイッチを制御するスイッチ部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の電源装置において、
前記電圧検出部が、
前記電源電圧が前記閾値電圧を超えた時に比較信号を出力する複数の電圧比較部と、前記各比較信号の論理積をとり前記検出信号として出力するAND回路とから構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、
請求項2に記載の電源装置において、
前記電圧比較部が、
前記閾値電圧を発生させる基準電源と、前記電源発生部からの出力電圧と前記閾値電圧を比較する比較器とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ICまたは回路から構成される電源供給対象に複数の電源を供給する電源装置において、前記複数の電源電圧がそれぞれ予め設定された閾値電圧を超えた時に検出信号を出力する電圧検出部と、前記電源と前記電源供給対象の間に配置され前記検出信号に応じてスイッチを制御するスイッチ部とを備えたことにより、ある特定の電源のみが供給されることがなくなるので、複数の電源の起動時間が異なっている場合でもアンバランスな状態を作ることなく、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能になる。
【0014】
また、故障時に特定の電源の出力電圧が降下した場合でもアンバランスな状態で電源供給対象に電源を供給することがなくなるので、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る電源装置の一実施例を示す構成ブロック図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。
【0016】
図1において、電圧比較部4および電圧比較部5は入力電圧が予め設定されている閾値電圧を超えた時に比較信号を出力する。AND回路6は電圧比較部4および電圧比較部5からそれぞれ出力される比較信号がハイレベルになった時、すなわち、比較信号の論理積をとり、検出信号を出力する。スイッチ部7およびスイッチ部8はリレーやFET(Field Effect Transistor)等で構成され、制御信号入力端子に入力される信号がハイレベルの時にスイッチをオンし、ローレベルの時にスイッチをオフする。
【0017】
電圧比較部4は閾値電圧を発生させる基準電源4aと比較器4bで構成され、基準電源4aの出力端子は比較器4bの反転入力端子に接続される。電圧比較部4の入力端子は比較器4bの非反転入力端子に接続され、比較器4bの出力端子は電圧比較部4の出力端子に接続される。
【0018】
同様に、電圧比較部5は閾値電圧を発生させる基準電源5aと比較器5bで構成され、基準電源5aの出力端子は比較器5bの反転入力端子に接続される。電圧比較部5の入力端子は比較器5bの非反転入力端子に接続され、比較器5bの出力端子は電圧比較部5の出力端子に接続される。
【0019】
正電源発生部2の出力端子は電圧比較部4の入力端子およびスイッチ部7の一方の端子にそれぞれ接続され、スイッチ部7の他方の端子は電源供給対象1の正電源端子に接続される。負電源発生部3の出力端子は電圧比較部5の入力端子およびスイッチ部8の一方の端子にそれぞれ接続され、スイッチ部8の他方の端子は電源供給対象1の負電源端子に接続される。
【0020】
電圧比較部4の出力端子はAND回路6の一方の入力端子に接続され、電圧比較部5の出力端子はAND回路6の他方の入力端子に接続される。AND回路6の出力端子はスイッチ部7の制御信号入力端子およびスイッチ部8の制御信号入力端子にそれぞれ接続される。電圧比較部4、電圧比較部5およびAND回路6は電圧検出部51を構成し、正電源発生部2、負電源発生部3、スイッチ部7、スイッチ部8および電圧検出部51は電源装置52を構成している。
【0021】
図1に示す実施例の動作を説明する。正電源発生部2および負電源発生部3がそれぞれ起動されると、正電源発生部2からの出力電圧は電圧比較部4でモニタされ、負電源発生部3からの出力電圧は電圧比較部5でモニタされる。
【0022】
基準電源4aは予め設定された閾値電圧VT4を出力し、比較器4bはこの閾値電圧VT4と正電源発生部2から出力される電圧を比較する。そして、正電源発生部2からの出力電圧が徐々に立ち上がり、閾値電圧VT4を超えた時に比較部4bは出力信号(比較信号)をハイレベルにする。
【0023】
同様に、基準電源5aは予め設定された閾値電圧VT5を出力し、比較器5bはこの閾値電圧VT5と負電源発生部3から出力される電圧を比較する。そして、負電源発生部3からの出力電圧が徐々に立ち上がり、閾値電圧VT5を超えた時に比較部5bは出力信号(比較信号)をハイレベルにする。
【0024】
AND回路6は比較器4bと比較器5bのそれぞれの出力がハイレベルとなった時に出力信号(検出信号)をハイレベルとする。そして、この検出信号はスイッチ部7およびスイッチ部8の制御信号入力端子に入力され、ハイレベルになるとスイッチ部7およびスイッチ部8がオンする。
【0025】
この結果、正電源発生部2からの出力電圧を電圧比較部4でモニタすると共に負電源発生部3からの出力電圧を電圧比較部5でモニタし、それぞれの出力電圧が予め設定された閾値電圧を超えたことを検出して電源供給対象1に電源を供給することにより、どちらか一方の電源のみが供給されることがなくなるので、複数の電源の起動時間が異なっている場合でもアンバランスな状態を作ることなく、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能になる。
【0026】
また、正電源発生部2または負電源発生部3のどちらか一方が故障等で出力電圧が降下した場合、その出力電圧をモニタしている電圧比較部からの比較信号がローレベルとなり、AND回路6からの検出信号がローレベルとなってスイッチ部7およびスイッチ部8がオフして電源供給対象への電源を遮断することにより、故障時に特定の電源の出力電圧が降下した場合でもアンバランスな状態で電源供給対象に電源を供給することがなくなるので、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能になる。
【0027】
図2は本発明に係る電源装置の他の実施例を示す構成ブロック図である。図2において、電源発生部11〜1nはそれぞれV1〜Vnの電圧を出力し、電圧比較部21〜2nはそれぞれ入力される電圧が予め設定されている閾値電圧を超えた時に比較信号を出力する。AND回路30は電圧比較部21〜2nから出力されるそれぞれの比較信号がハイレベルになった時に検出信号を出力する。スイッチ部41〜4nはリレーやFET等で構成され、制御信号入力端子に入力される信号がハイレベルの時にスイッチをオンし、ローレベルの時にスイッチをオフする。電源供給対象100は複数の電源を必要とするICや回路である。
【0028】
電源発生部11の出力端子は電圧比較部21の入力端子およびスイッチ部41の一方の端子にそれぞれ接続され、電源発生部12の出力端子は電圧比較部22の入力端子およびスイッチ部42の一方の端子にそれぞれ接続される。同様に、電源発生部1nの出力端子は電圧比較部2nの入力端子およびスイッチ部4nの一方の端子にそれぞれ接続される。
【0029】
電圧比較部21〜2nのそれぞれの出力端子はAND回路30のそれぞれの入力端子に接続され、AND回路30の出力端子はスイッチ部41〜4nのそれぞれの制御信号入力端子に接続される。スイッチ部41〜4nの他方の端子は電源供給対象100のそれぞれの電源端子に接続される。
【0030】
電圧比較部21〜2nおよびAND回路30は電圧検出部53を構成し、電源発生部11〜1n、スイッチ部41〜4nおよび電圧検出部53は電源装置54を構成している。
【0031】
図2に示す実施例の動作を説明する。電源発生部11〜1nがそれぞれ起動されると、各電源発生部からの出力電圧は電圧比較部21〜2nでモニタされる。各電圧比較部は入力電圧、すなわち、各電源発生部からの出力電圧が予め設定された閾値電圧を超えた時に出力信号(比較信号)をハイレベルにする。
【0032】
AND回路30は各電圧比較部からの比較信号がハイレベルとなった時に出力信号(検出信号)をハイレベルとする。そして、この検出信号はスイッチ部41〜4nの制御信号入力端子に入力され、ハイレベルになるとスイッチ部41〜4nがオンする。
【0033】
この結果、電源発生部11〜1nからの各出力電圧を電圧比較部21〜2nでモニタし、それぞれの出力電圧が予め設定された閾値電圧を超えたことを検出して電源供給対象100に電源を供給することにより、ある特定の電源のみが供給されることがなくなるので、複数の電源の起動時間が異なっている場合でもアンバランスな状態を作ることなく、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能になる。図2に示す実施例において、アンバランスな状態とは、電源供給対象100で必要とされる電源のうち、少なくとも1つの電源が供給されない状態のことをいう。
【0034】
また、各電源発生部のうちどれかが故障等で出力電圧が降下した場合、その出力電圧をモニタしている電圧比較部からの比較信号がローレベルとなり、AND回路30からの検出信号がローレベルとなって各スイッチ部がオフして電源供給対象への電源を遮断することにより、故障時に特定の電源の出力電圧が降下した場合でもアンバランスな状態で電源供給対象に電源を供給することがなくなるので、常に安定した状態で電源供給対象に電源を供給することが可能になる。
【0035】
なお、図1および図2に示す実施例において、各電圧比較部はモニタしている入力電圧が予め設定された閾値電圧を超えた時に比較信号をハイレベルにし、AND回路は各電圧比較部からの比較信号がハイレベルとなった時に検出信号をハイレベルにするが、必ずしもこのように限定される必要はなく、比較信号や検出信号の論理レベルは本発明の本質から逸脱しない範囲であれば論理レベルは変更してもよい。
【0036】
また、図1に示す実施例において、電圧比較部を基準電源と比較器で構成しているが、必ずしもこのように限定される必要はなく、入力電圧と閾値電圧を比較できる回路やICであれば、どのように構成してもよい。例えば、入力電圧をAD(Analog to Digital)変換器でデジタル値に変換し、そのデジタル値と予め設定した閾値データを比較するような論理回路を用いてもよい。
【0037】
また、図2に示す実施例において、各スイッチ部が同一の検出信号によってオン/オフ制御されているが、必ずしもこのように限定される必要はなく、AND回路を複数設けると共にこれらAND回路には任意の電源比較部からの比較信号を入力し、複数の検出信号でそれぞれ任意のスイッチ部を制御するようにしてもよい。
【0038】
また、図1および図2に示す実施例において、電圧比較部とスイッチ部が電源発生部毎に複数配置されているが、必ずしもこのように限定される必要はなく、電圧比較部とスイッチ部をそれぞれ1つにまとめてもよい。
【0039】
同様に、図1および図2に示す実施例において、電源発生部が複数配置されているが、必ずしもこのように限定される必要はなく、1つの電源発生部から複数種類の電源を出力するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る電源装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】本発明に係る電源装置の他の実施例を示す構成ブロック図である。
【図3】従来の電源装置を示す構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
1,100 電源供給対象
2 正電源発生部
3 負電源発生部
4,5 電圧比較部
4a,5a 基準電源
4b,5b 比較器
6,30 AND回路
7,8,41〜4n スイッチ部
11〜1n 電源発生部
21〜2n 電圧比較部
51,53 電圧検出部
50,52,54 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICまたは回路から構成される電源供給対象に複数の電源を供給する電源装置において、
前記複数の電源電圧がそれぞれ予め設定された閾値電圧を超えた時に検出信号を出力する電圧検出部と、
前記電源と前記電源供給対象の間に配置され前記検出信号に応じてスイッチを制御するスイッチ部と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電圧検出部が、
前記電源電圧が前記閾値電圧を超えた時に比較信号を出力する複数の電圧比較部と、
前記各比較信号の論理積をとり前記検出信号として出力するAND回路とから構成されたことを特徴とする
請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記電圧比較部が、
前記閾値電圧を発生させる基準電源と、
前記電源発生部からの出力電圧と前記閾値電圧を比較する比較器とから構成されたことを特徴とする
請求項2記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−223647(P2009−223647A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67893(P2008−67893)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】