説明

電源装置

【課題】 電源セルの異常な電圧低下を検知するとともに、この電圧低下が復旧している場合には発電を再開させ合理的で安定的な電力供給を実現し得る電源装置を提供する。
【解決手段】 複数の電源セルを電気的に独立させて構成した組電源と、電源セルの端子間を切換素子で選択的に接続することにより各電源セルを任意に接続する切換器3と、電源セルの端子間の電位差をそれぞれ検出する電圧検出器4と、電圧検出器が検出した前記電位差をそれぞれ表わす電圧信号に基づき電源セルの発電電圧が設定電圧以下になった場合には当該電源セルを切り離して電力の供給を休止させるとともに、切り離された電源セルにおける休止時間が所定時間以上となった場合に電力の供給を休止させていた電源セルからの電力の供給を再開させるように制御信号で切換器を制御して切換素子のON/OFF状態を制御する制御器5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置に関し、特に電気的に独立している複数の電源セルの合理的な運転を継続しつつ転極防止を図ると同時に、負荷電力に適合する合理的な運転を行う場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来技術に係る燃料電池装置(特許文献1)を示すブロック線図である。同図に示すように、当該燃料電池装置は、燃料電池スタック100で発電した電力を、コントローラ108で指示した所定の出力電圧(目標電圧)になるように調整する電力変換器103を介して負荷109に供給するものである。
【0003】
ここで、前記燃料電池スタック100は直列に接続した複数の燃料電池セル110を有するとともに、各燃料電池セル110に燃料供給装置101及び空気供給装置102を介して燃料及び空気を供給するように構成してある。また、コントローラ108は、複数の燃料電池セル110の各電圧のバラツキが最小になるように、電圧計測器105で計測する複数の燃料電池セル110の各電圧に基づいて燃料供給量と空気供給量とを燃料電池セル110毎に設定し、燃料供給装置101を介して燃料電池セル110毎の燃料供給量に基づいて各燃料電池セル110に燃料を供給するとともに、空気供給装置102を介して燃料電池セル110毎の空気供給量に基づいて各燃料電池セル110に空気を供給する。
【0004】
かくして、燃料電池セル110毎に燃料供給量を増減させて発電電力を安定化させ、各燃料電池セル110の特性のバラツキや、燃料供給のバラツキによって、燃料電池セル110の電圧が低下し各燃料電池セル110が劣化することを防いでいる。すなわち、燃料電池セル110の電圧のバラツキを低減して燃料電池スタック100の発電電力の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−73379号公報
【特許文献2】特開2004−303621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に係る燃料電池装置は、燃料電池セル110の電圧のバラツキを低減して燃料電池スタック100の発電電力の安定化を図るものではあるが、各燃料電池セル110の発電電圧の異常な低下を検知することはできない。ちなみに、燃料電池セル110の発電電圧が異常に低下した状態で使用を継続するとその燃料電池セル110は転極を生起してしまい使用不能の状態となる。
【0007】
これに対し、転極を未然に防止するため、各発電セルの発電電圧を検出して、異常な発電セルをスタックから切り離すという技術が提案されている(特許文献2)。ただ、当該技術では、一旦異常電圧となってしまうとその発電セルは継続的に切り離されてしまい合理的な運転ができないという問題がある。すなわち、特許文献2が開示する技術では、一旦発電電圧が低下した場合には、その後発電能力が回復しても切り離し状態が継続されてしまうが、燃料不足等の原因により、一旦発電電圧が異常低下しても、電力の供給を一時休止させることによりその後発電能力が回復する場合も多く、かかる場合には発電セルの切り離し状態を継続する必要はないからである。
【0008】
一方、上記図7に示す燃料電池装置は、燃料電池セル110毎に燃料供給装置101を有しているため、その他にも1)燃料電池装置の構造が複雑となる、2)燃料電池装置が大型化する、3)燃料電池装置の重量が増大する等の問題を有している。
【0009】
また、燃料供給の増減制御で各燃料電池セル110の電圧の低下を防げない場合(例えば、燃料供給経路が詰まってしまっている、セルが(物理的・化学的)ショートしている等)は、燃料供給の増減制御による発電電力の安定化の効果が得られず、無駄な燃料供給・燃料消費となるという問題もある。
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、発電セルの異常な電圧低下を検知するとともに、この発電能力が復旧している場合には発電を再開させ、さらに負荷電力に応じて発電に必要なセルを選択し、長期発電信頼性を有して負荷への合理的で安定的な電力供給を実現し得る燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
複数の電源セルを電気的に独立させて構成した組電源と、
前記組電源に接続し前記複数の電源セルの端子間を切換素子で選択的に接続することにより各前記電源セルの接続経路を任意に変更し、前記複数の電源セルの端子と同数の入力端子と2極の出力端子を有する切換器と、
前記複数の電源セルの端子間の電位差をそれぞれ検出する電圧検出器と、
前記負荷における消費電力及び/又は前記組電源の出力電力を検出する出力検出器と、
前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電圧検出器が検出した前記電位差をそれぞれ表わす電圧信号に基づき前記各電源セルの出力電圧が設定電圧以下になった場合には当該電源セルの電力の供給を休止させるとともに、電力供給を休止した電源セルにおける休止時間が所定時間以上となった場合に前記電力の供給を休止させていた電源セルからの電力の供給を再開させるように制御信号で前記切換器を制御して前記切換素子のON/OFF状態を制御する制御器と
を有することを特徴とする電源装置にある。
【0012】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する電源装置において、
前記切換器は、前記切換器の出力端の+極と各前記電源セルの+極との間に電源セルと同等数、前記切換器の出力端の−極と各前記電源セルの−極との間に電源セルと同等数、電源セルの直列方向に隣接する電源セル間に電源セルの個数から1つ少ない数の前記切換素子を有することを特徴とする電源装置にある。
【0013】
本発明の第3の態様は、
第1又は第2の態様に記載する電源装置において、
前記切換器と負荷との間に接続して前記負荷へ供給する電圧を安定化させる電圧調整器をさらに有するとともに、
前記制御器は、さらに前記電圧検出器が検出した前記電位差を表わす電圧信号、前記消費電力及び前記組電源の出力電力に基づき形成する制御信号により前記切換器を制御して前記切換素子のON/OFF状態を制御することを特徴とする電源装置にある。
【0014】
本発明の第4の態様は、
第3の態様に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、出力電圧が最も低い電源セルからの電力の供給を休止させるように前記切換器を介して各電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置にある。
【0015】
本発明の第5の態様は、
第3の態様に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電源セルの継続発電時間が所定時間以上となった場合に出力電圧が最も低い電源セルからの電力の供給を休止させるように前記切換器を介して前記電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置にある。
【0016】
本発明の第6の態様は、
第3の態様に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電源セルの継続発電時間が所定時間以上となった場合に出力電圧が低い方から順に複数の電源セルからの電力の供給を休止させるように前記切換器を介して前記電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置にある。
【0017】
本発明の第7の態様は、
第3の態様に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電源セルの継続発電時間が所定時間以上となった場合に出力電圧が最も低い電源セルからの電力の供給を休止させるとともに、その時点まで電力の供給を休止させていた電源セルからの電力の供給を再開させるように前記切換器を介して前記電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置にある。
【0018】
本発明の第8の態様は、
第3乃至第7の態様の何れか一つに記載する電源装置において、
前記出力検出器は、前記電圧調整器の出力電圧及び前記負荷に供給される負荷電流に基づき前記消費電力を検出するものであることを特徴とする電源装置にある。
【0019】
本発明の第9の態様は、
第1乃至第8の態様の何れか一つに記載する電源装置において、
前記電圧検出器は、前記各電源セルの出力端をマルチプレクサに接続するとともに、電圧が検出される電源セルを前記制御器の制御信号によりスキャニングして順次切り換え、前記マルチプレクサの出力端に1台の電圧検出器を接続して前記各電源セルの電圧信号を逐次制御器に供給するように構成したことを特徴とする電源装置にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各電源セルの電極間の出力電圧が設定電圧以下になった場合には当該電源セルを切り離して電力の供給を休止させるとともに、切り離した電源セルの出力能力の回復が検知された場合には電力の供給を再開させるように制御しているので、電源セルの転極を未然に防止し得ると同時に、出力能力が回復している場合には出力を再開させることで各電源セルの転極を未然に防止しつつ合理的な電源装置の運転を実現することができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、電気的に独立させて構成した複数の電源セルの端子間をスイッチング素子である切換素子で選択的に接続することができるようにしたので、負荷に応じた電源セルの組み合わせが容易になり、1)電源装置の電力供給の安定化、2)電源セルの長期信頼性の向上、3)電源装置の長寿命化を同時に実現し得る。特に、休息セルを設けることで長期連続運転が可能となり、この点からも信頼性の向上を図ることができる。すなわち、複数の電源セル間での負荷分散、安定的な電力供給及び電源の長寿命化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる電源装置を示すブロック線図である。
【図2】図1に示す電源装置の制御器における制御手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す電源装置の制御器における制御手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す電源装置の制御器における制御手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す電源装置の制御器における制御手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる電源装置を示すブロック線図である。
【図7】従来技術に係る燃料電池装置を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電源装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る電源装置1は、電源セルとして複数の発電セル2a、2b、2c、2dを備えた燃料電池2と、各発電セル2a乃至2dの端子間を適宜切換えて接続する切換器3と、各発電セル2a乃至2dの端子間の電圧を計測する電圧検出器4と、電圧検出器4及び電流検出器9の出力信号等に基づき切換器3の接続経路の変更制御を行う制御器5と、負荷8に供給する電圧を安定化させる電圧調整器6と、電気的な充放電が可能な充放電装置7と、負荷電流を検出する電流検出アンプ11で構成した電流検出器9とを有している。
【0025】
さらに詳言すると、各発電セル2a乃至2dは燃料供給装置(図示せず)からの燃料の供給によってそれぞれ発電するとともに、発電セル2a乃至2d毎にそれぞれ電気的に独立させて構成してある。ここで、「電気的に独立させて構成」とは、各発電セル2a乃至2dが直接的には相互に接続されることなく、必ず切換器3を介して接続されるような状態となっていることをいう。
【0026】
本形態における各発電セル2a乃至2dは、燃料としての水素をアノード(−極)へ、酸素(空気)をカソード(+極)へそれぞれ供給することにより発電する固体高分子形燃料電池(PEFC)で構成している。また、発電セル2a乃至2dは、その出力電圧が0.45[V]のときに最大出力が1.08[W]得られるものを4個用いた。なお、発電セル2a乃至2dの1個当たりの標準動作電圧を0.6Vとし、発電セル2a乃至2dの電圧はこの電圧を動作下限電圧とする。標準電圧は、発電セル2a乃至2dの発電特性において、顕著な拡散過電圧が認められない電圧範囲、PEFCの場合で、およそ0.3乃至0.8Vの間で設定する。
【0027】
本形態における発電セル2a乃至2dの1個当たりの標準出力電力は、0.72[W](以下、この出力電力を「P1」と略称する。)である。したがって、4個の発電セル2a乃至2dの出力時には、0.72[W]×4=2.88[W](以下、この出力電力を「P4」と略称する。)の出力が得られ、3個での出力時には、0.72[W]×3=2.16[W](以下、この出力電力を「P3」と略称する。)、2個での出力時には、0.72[W]×2=1.44[W](以下、この出力電力を「P2」と略称する。)の出力が得られる。ここで、本形態では、前記標準出力電力に発電セル2a乃至2dの個数を掛けた出力電力P1,P2,P3,P4が、それぞれ「燃料電池2の発電特性から予め設定した出力電力」ということになる。
【0028】
なお、発電セル2a乃至2dは、アノードへ供給する燃料としてメタノールを用いるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)又はその他の方式の燃料電池であっても良い。また、発電セル2a乃至2dの個数は4個に限るものではなく、必要に応じた個数とすることができる。
【0029】
また、発電セルの替わりに、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池、ニッケル乾電池、アルカリボタン電池、酸化銀電池、二酸化マンガンリチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、空気亜鉛電池等の一次電池や、鉛蓄電池、ニッケル/水素二次電池、リチウムイオン二次電池やナトリウム硫黄電池等に代表される繰り返し充放電が可能な二次電池や、コンデンサ、キャパシタ及び電気二重層コンデンサ等の電圧の印加によって電荷・静電エネルギーを蓄えて電気容量を得る蓄電器や、太陽電池、熱起電力電池など異種、同種の複数の電源セルを直列乃至並列等、任意に接続して構成することもできる。
【0030】
切換器3は、複数(本形態の場合、11個)の切換素子31a乃至31kで構成してある。各切換素子31a乃至31kは、切換器3の+側の出力端32と各発電セル2a乃至2dの+極間、切換器3の−側の出力端33と各発電セル2a乃至2dの−極間及び直列方向で隣接する発電セル(2a、2b)、(2b、2c)、(2c、2d)間にそれぞれ接続されている。すなわち、+側の出力端32と各発電セル2a乃至2dの+極間に発電セル2a乃至2dと同等数の切換素子31a乃至31d、−側の出力端33と各発電セル2a乃至2dの−極間に発電セル2a乃至2dと同等数の切換素子31e乃至31h、直列方向で隣接する発電セル(2a、2b)乃至(2c、2d)間に発電セル2a乃至2dの個数から1つ少ない数の切換素子31i乃至31kがそれぞれ接続されている。
【0031】
この結果、各発電セル2a乃至2dは切換器3の切換素子31a乃至31kのON/OFF状態により任意に接続することができる。すなわち、相互の直列接続、並列接続又は直列接続された発電セル2a乃至2dの並列接続等が可能になる。
【0032】
本形態における切換素子31a乃至31kは、電界効果トランジスタであるMOS−FETで構成した。チャンネルタイプはON/OFF状態が切換えられるように各箇所に適切に配置した。切換素子31a乃至31kは、MOS−FETの他に、リレー素子や、トランジスタ素子、TTL素子、C−MOS素子、ECL素子等でも構成することができる。すなわち、スイッチング機能を有する素子であれば特別な制限はない。
【0033】
なお、切換素子31a乃至31kのON/OFF状態は制御器5の出力信号である制御信号S01で制御する。
【0034】
電圧検出器4は、各発電セル2a乃至2dの両極間にそれぞれ接続した電圧検出アンプ4a、4b、4c、4dを有しており、各発電セル2a乃至2dからの差動入力電圧を充放電装置7の−端子の電位を基準にしたシングル・エンド信号の電圧信号S02a、S02b、S02c、S02dに変換して制御器5に供給している。
【0035】
制御器5は、マイクロコンピュータ(マイコン)で構成している。マイコンには、電圧検出器4からの電圧信号S02a乃至S02dと電流検出器9からの負荷電流信号S03とを取り込んで、内部クロックに基づき切換器3における切換素子31a乃至31kのON/OFF状態の選択を制御するためのプログラムが書き込んである。この結果、本形態における制御器5は、後にその内容を詳細に説明するように、1)転極を未然に防止するとともに、発電能力を回復した発電セル2a乃至2dには電力の供給を再開させる第1の制御と、2)負荷電力に適合させて発電セル2a乃至2dの接続状態を変更するとともに、電力の供給を休止させる発電セル2a乃至2dを適宜選択して合理的な運転に資する第2の制御とを行なうものとなっている。
【0036】
電圧調整器6は、切換器3を介して燃料電池2により出力された出力電圧を所定電圧に調整するものであり、DC/DCコンバータで好適に構成することができるが、一般的には、電圧調整器6に入力された直流電圧を調整し、安定化した直流電圧を出力する装置であれば良い。さらに、負荷8によっては交流電圧を出力する装置である場合もある。安定化した交流電圧を出力する電圧調整器としてはDC/ACコンバータ(インバータ)が知られている。
【0037】
DC/DCコンバータは、燃料電池2の直流電圧を負荷8の動作に支障がない直流電圧に変換して負荷8に電力を供給することが可能であればよく、負荷8への供給電圧が安定化され、一定であるとより好ましい。DC/DCコンバータの種類としては、シリーズレギュレータ、スイッチングレギュレータ、チャージポンプ又はスイッチドキャパシタ等が挙げられる。同様に、DC/ACコンバータも、燃料電池2の直流電圧を負荷8の動作に支障がない交流電圧に変換し負荷8へ電力を供給することが可能であればよい。
【0038】
本形態では、電圧調整器6として昇降圧型同期整流式スイッチングレギュレータを用いるとともに、その出力電圧は7.4Vに設定した。
【0039】
充放電装置7は、鉛蓄電池、ニッケル/水素二次電池及びリチウムイオン二次電池等に代表される繰り返し充放電が可能な二次電池や、コンデンサ、キャパシタ及び電気二重層コンデンサ等の電圧の印加によって電荷・静電エネルギーを蓄えて電気容量を得る蓄電器で好適に構成することができる。二次電池は、ニッケル/カドミニウム二次電池のようにメモリー効果が発現しない電池が好ましい。また、負荷8の動作電圧、最低動作電圧及び負荷特性等によって適切な二次電池又は蓄電器の種類を選択し、必要に応じて二次電池あるいは蓄電器を直列接続することにより負荷8へ供給する電圧を調整することも可能である。本形態における充放電装置7は、直列接続の2個のリチウムイオン二次電池で構成した。容量は400mAhである。
【0040】
本形態にかかる電流検出器9は、燃料電池2の出力電力を検出するために、電圧調整器6を介して負荷8に供給される負荷電流が流れるシャント抵抗器10と、シャント抵抗器10の両端部の電圧を介して前記負荷電流を検出する電流検出アンプ11とを有している。すなわち、負荷電流を表わす負荷電流信号S03が制御器5に入力されることにより、電圧調整器6で設定されている出力電圧値又は電圧調整器6の出力端で検出した出力電圧値と負荷電流信号S03が表わす負荷電流値とに基づく制御器5における所定の演算によって負荷8の消費電力を求める。
【0041】
ここで、負荷8の消費電力(燃料電池2の出力値)の検出は、上述の如き制御器5における演算に限るものではない。一般的には、負荷8における消費電力を検出することができる出力検出器であれば良い。したがって、消費電力(出力電力)を直接検出する電力計も含まれる。また、燃料電池2の出力電力を検出するために、切換器3を介して電圧調整器6に供給される電流経路上に電流検出器9を配設しても良い。
【0042】
当該電源装置1に接続する負荷8は、電気・電子機器類である。本形態では、任意に負荷8を変化させることができる電子負荷装置を接続している。
【0043】
図2乃至図5は図1に示す電源装置1の制御器5における制御手順を示すフローチャートである(各図に跨る関連の処理は同一符合「*A」乃至「*F」を対応させて付している)。本形態では、発電セル2a乃至2dの出力電圧の異常に伴うその発電セル2a乃至2dの切り離しと、発電能力の回復に伴う再接続とを行うとともに、発電セル2a乃至2dの出力状態に応じて切換素子31a乃至31kの接続状態を適宜変更して電力を供給させる発電セル2a乃至2dの数を変化させ、さらに発電経過時間によって発電セル2a乃至2dにおける電力の供給を適宜休止させるように制御している。具体的には次の通りである。
【0044】
1) 発電セル2a乃至2dへ燃料が供給されていない状態では、切換器3の切換素子31a乃至31kはすべてOFF状態で電気は導通しない状態となっている(ステップS1参照)。
【0045】
2) 燃料電池2へ燃料が供給され、発電セル2a乃至2dから起電力が得られたことを電圧検出器4が検出し、電圧信号S02a乃至S02dが制御器5に入力されると(ステップS2参照)、制御器5は発電セル2a乃至2dの全てを直列接続させるために切換器3の切換素子31i、31j、31kと切換素子31a、31hをON状態にさせる制御信号S01を切換器3に送出する(ステップS3参照)。
【0046】
3) 各発電セル2a乃至2dの電圧信号S02a乃至S02dに基づき出力電圧が設定電圧Vth以下であるか否かを判定する(ステップS4参照)。ここで、設定電圧Vthは発電セル2a乃至2dの出力電圧の低下に伴う発電セル2a乃至2dの出力特性の悪化を回避できる電圧値、例えば0.2V乃至0.4Vの範囲で設定するのが好適である。本形態ではVth=0.3Vとした。
【0047】
4) ステップS4の処理で何れかの発電セル2a乃至2dの出力電圧が設定電圧Vth以下である場合には、制御信号S01で切換器3を制御して直列接続経路から出力電圧が設定電圧Vth以下の発電セル2a乃至2dを切り離すとともに、切り離し時間を計測するタイマをセットして再度ステップS4の処理に戻る(ステップS5参照)。
【0048】
5) ステップS4の処理で、全ての発電セル2a乃至2dの出力電圧が設定電圧Vthを越える場合には、ステップS5の処理で、直列接続経路から切り離された発電セル2a乃至2dの休止時間(切り離し時間)が設定時間T1以上であるか否かを判定する(ステップS6参照)。
【0049】
6) ステップS6の判定結果で休止時間がT1以上となった発電セル2a乃至2dを、制御信号S01で切換器3を制御することにより再度直列接続経路に接続するとともに、前記タイマT1をリセットして再度ステップS4の処理に戻る(ステップS7参照)。
【0050】
7) ステップS6の判定結果で休止時間がT1未満(切り離し時間が零の場合を含む)の場合、制御器5が演算した負荷8の消費電力が、P3以下であるか、否かを判定する(ステップS8参照)。
【0051】
8) ステップS8の処理でP3以下でなければ、ステップS4の処理に戻り、その後同様の処理を繰り返す。
【0052】
9) ステップS8の処理で負荷8の消費電力がP3以下であれば、発電セル2a乃至2dの何れか1個は休止させて良いので、電圧信号S02a乃至S02dに基づき発電セル2a乃至2dのうち出力電圧が最も低い1個の発電セル2a乃至2dを直列接続経路から切り離す(ステップS9参照)。
【0053】
10) ステップS4乃至S7と同様の処理を行う(ステップS10乃至S13参照)。
【0054】
11) ステップS12の判定結果で休止時間がT1未満(切り離し時間が零の場合を含む)の場合、制御器5が演算した負荷8の消費電力が、P3以上であるか、否かを判定する(ステップS14参照)。
【0055】
12) ステップS14の処理で負荷8の消費電力がP3未満であると判定された場合には、さらに制御器5が演算した負荷8の消費電力が、P2以下であるか、否かを判定する(ステップS15参照)。
【0056】
13) ステップS15の処理でP2以下でなければ、各発電セル2a乃至2dの継続発電時間が設定時間T2以上であるか、否かを判定し、設定時間T2以上でなければステップS14の処理に戻す(ステップS16参照)。ここで、設定時間T2は、発電セル2a乃至2dの連続発電による出力特性の経時変化を基に設定する。本形態では20分に設定した。この設定時間T2は制御器5のタイマに予め設定してある。
【0057】
14) ステップS16の処理で設定時間T2以上であると判定された発電セル2a乃至2dのうち出力電圧が最も低い1個の発電セル2a乃至2dを直列接続経路から切り離す。同時に発電を休止させていた発電セル2a乃至2dを直列接続経路に直列に接続するとともに、前記タイマの計時動作をリセットしてステップS10の処理に戻す(ステップS17参照)。
【0058】
15) ステップS15の処理で負荷8の消費電力がP2以下であれば、発電セル2a乃至2dのさらにもう1個は休止させて良いので、電圧信号S02a乃至S02dに基づき発電セル2a乃至2dのうち出力電圧が最も低い1個の発電セル2a乃至2dを直列接続経路から切り離す(ステップS18参照)。
【0059】
16) ステップS4乃至S7と同様の処理を行う(ステップS19乃至S22参照)。
【0060】
17) 制御器5が演算した負荷8の消費電力が、P2以上であるか、否かを判定し、P2以上である場合はステップS3の処理に戻す(ステップS23参照)。
【0061】
18) ステップS23の処理で負荷8の消費電力がP2未満であると判定された場合には、さらに制御器5が演算した負荷8の消費電力が、P1以下であるか、否かを判定する(ステップS24参照)。
【0062】
19) ステップS24の処理でP1以下でなければ、各発電セル2a乃至2dの継続発電時間が設定時間T2以上であるか、否かを判定し、設定時間T2以上でなければステップS23の処理に戻す(ステップS25参照)。
【0063】
20) ステップS25の処理で設定時間T2以上であると判定された場合には全ての発電セル2a乃至2dを直列接続として出力電圧が低い二つの発電セル2a乃至2dを直列接続経路から切り離すとともに、前記タイマの計時動作をリセットしてステップS19の処理に戻す(ステップS26参照)。
【0064】
21) ステップS24の処理で負荷8の消費電力がP1以下であれば、発電セル2a乃至2dのさらにもう1個(計3個)を休止させて良いので、電圧信号S02a乃至S02dに基づき発電セル2a乃至2dのうち出力電圧が最も低い発電セル2a乃至2dを直列接続経路から切り離す(ステップS27参照)。
【0065】
22) ステップS4乃至S7と同様の処理を行う(ステップS28乃至S31参照)。
【0066】
23) 制御器5が演算した負荷8の消費電力が、P1以上であるか、否かを判定し、P1以上である場合はステップS3の処理に戻す(ステップS32参照)。
【0067】
24) ステップS32の処理で負荷8の消費電力がP1未満であると判定された場合には、各発電セル2a乃至2dの継続発電時間が設定時間T2以上であるか、否かを判定する(ステップS33参照)。
【0068】
25) ステップS33の処理で設定時間T2以上であると判定された場合には、制御器5は全ての発電セル2a乃至2dを直列接続として出力電圧が低い3つの発電セル2a乃至2dを直列接続経路から切り離すとともに、前記タイマの計時動作をリセットしてステップS28の処理に戻す(ステップS34参照)。
【0069】
26) ステップS33の処理で設定時間T2未満であると判定された場合には、負荷8の消費電力がゼロであるか、否かを判定し(ステップS35参照)、ゼロになるまでステップS28の処理に戻してステップS28以降の処理を繰り返すとともに、ゼロになった時点で切換器3をOFF状態にして電源装置1の動作を終了させる(ステップS36参照)。
【0070】
<第2の実施の形態>
図6は本発明の第2の実施の形態にかかる電源装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る電源装置21は、電圧検出器41の構成を変更したものである。すなわち、本形態における電圧検出器41は、複数の発電セル2a乃至2dの出力端をアナログマルチプレクサ42に入力して電圧を検出する発電セル2a乃至2dを経時的に変化(スキャニング)させ、アナログマルチプレクサ42の出力端に電圧検出アンプ43を接続して構成してある。電圧検出アンプ43を介して発電セル2a乃至2dの電圧信号S02a乃至S02dを逐次制御器51に供給する。このときのスキャニングの制御は、制御信号S04を介して制御器51により行う。制御器51により電圧を検出する発電セル2a乃至2dのスキャニングは、200ms周期で行い、電圧検出の遅延時間を50msとした。また、制御器51には、第1の実施の形態における制御器5のプログラムに加え、上述した電圧検出器41のスキャニング動作を制御するプログラムを追加している。
【0071】
他の構成は図1に示す第1の実施の形態に係る電源装置1と同様であるので同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
本形態においても、制御器51では図2乃至図5に示す手順で切換器3の制御及び発電セル2a乃至2dの出力制御を行う。
【0073】
<他の実施の形態>
なお、上記第1及び第2の実施の形態では制御器5、51で、1)転極を未然に防止するとともに、発電能力を回復した発電セル2a乃至2dには電力の供給を再開させる第1の制御と、2)負荷電力に適合させて発電セル2a乃至2dの接続状態を変更するとともに、電力の供給を休止させる発電セル2a乃至2dを適宜選択して合理的な運転に資する第2の制御とを行なうものとしたが、必ずしもこのように構成する必要はない。前記第1の制御のみを行なうようなものとして構成しても構わない。
【0074】
この場合でも、各発電セル2a乃至2dの電極間の発電電圧が設定電圧以下になった場合には当該発電セル2a乃至2dを切り離して電力の供給を休止させるとともに、切り離した発電セル2a乃至2dの発電能力の回復が検知された場合には電力の供給を再開させるように制御することができるので、発電セル2a乃至2dの転極を未然に防止し得ると同時に、発電能力が回復している場合には発電を再開させることで各発電セル2a乃至2dの転極を未然に防止しつつ合理的な電源装置1の運転を実現することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0075】
1,21 電源装置
2 燃料電池
2a乃至2d 発電セル
3 切換器
4,41 電圧検出器
5,51 制御器
6 電圧調整器
8 負荷
9 電流検出器
31a乃至31k 切換素子
32,33 出力端
42 アナログマルチプレクサ
S01,S04 制御信号
S02a乃至S02d 電圧信号
S03 負荷電流信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源セルを電気的に独立させて構成した組電源と、
前記組電源に接続し前記複数の電源セルの端子間を切換素子で選択的に接続することにより各前記電源セルの接続経路を任意に変更し、前記複数の電源セルの端子と同数の入力端子と2極の出力端子を有する切換器と、
前記複数の電源セルの端子間の電位差をそれぞれ検出する電圧検出器と、
前記負荷における消費電力及び/又は前記組電源の出力電力を検出する出力検出器と、
前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電圧検出器が検出した前記電位差をそれぞれ表わす電圧信号に基づき前記各電源セルの出力電圧が設定電圧以下になった場合には当該電源セルの電力の供給を休止させるとともに、電力供給を休止した電源セルにおける休止時間が所定時間以上となった場合に前記電力の供給を休止させていた電源セルからの電力の供給を再開させるように制御信号で前記切換器を制御して前記切換素子のON/OFF状態を制御する制御器と
を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置において、
前記切換器は、前記切換器の出力端の+極と各前記電源セルの+極との間に電源セルと同等数、前記切換器の出力端の−極と各前記電源セルの−極との間に電源セルと同等数、電源セルの直列方向に隣接する電源セル間に電源セルの個数から1つ少ない数の前記切換素子を有することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する電源装置において、
第1又は第2の態様に記載する電源装置において、
前記切換器と負荷との間に接続して前記負荷へ供給する電圧を安定化させる電圧調整器をさらに有するとともに、
前記制御器は、さらに前記電圧検出器が検出した前記電位差を表わす電圧信号、前記消費電力及び前記組電源の出力電力に基づき形成する制御信号により前記切換器を制御して前記切換素子のON/OFF状態を制御することを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、出力電圧が最も低い電源セルからの電力の供給を休止させるように前記切換器を介して各電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項3に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電源セルの継続発電時間が所定時間以上となった場合に出力電圧が最も低い電源セルからの電力の供給を休止させるように前記切換器を介して前記電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項3に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電源セルの継続発電時間が所定時間以上となった場合に出力電圧が低い方から順に複数の電源セルからの電力の供給を休止させるように前記切換器を介して前記電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項3に記載する電源装置において、
前記制御器は、前記出力検出器が検出する電力値が、予め前記組電源の出力特性から設定した出力電力以下であることが検出されている場合において、前記電源セルの継続発電時間が所定時間以上となった場合に出力電圧が最も低い電源セルからの電力の供給を休止させるとともに、その時点まで電力の供給を休止させていた電源セルからの電力の供給を再開させるように前記切換器を介して前記電源セルの接続状態を制御する処理を含むことを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7の何れか一つに記載する電源装置において、
前記出力検出器は、前記電圧調整器の出力電圧及び前記負荷に供給される負荷電流に基づき前記消費電力を検出するものであることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載する電源装置において、
前記電圧検出器は、前記各電源セルの出力端をマルチプレクサに接続するとともに、電圧が検出される電源セルを前記制御器の制御信号によりスキャニングして順次切り換え、前記マルチプレクサの出力端に1台の電圧検出器を接続して前記各電源セルの電圧信号を逐次制御器に供給するように構成したことを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78259(P2013−78259A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258589(P2012−258589)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2009−522557(P2009−522557)の分割
【原出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】