説明

電磁弁用コイル組立体

【課題】コイル外周に被覆させるモールド形状を、ボビン鍔部の近傍の被覆肉厚のみを減ずる形状に形成した電磁弁用コイル組立体を提供。
【解決手段】電磁弁用コイル組立体19の形状を示す樹脂成形型45乃至48のキャビティ50には、ボビン20と、該ボビン20の外周面に巻き付けたコイル19aと、ボビン20の鍔部20a、20bを装填した後にゲート49より溶融樹脂材料を注入して電磁弁用コイル組立体19が成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁及び電磁アクチュエータに使用される電磁弁用コイル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁弁用コイル体は、コイルボビン16の一対の鍔状部22、23のうちで、鍔状部22に対して、第2ゲート65から第2樹脂成形型61〜64のキャビティ内に充填される溶融樹脂の流動方向の下流側に位置する鍔状部23の周方向に等間隔で、且つ交互に複数の径大部41と複数の径小部42とを設けたことにより、製品の機械的な特性が落ちたり、製品表面の光沢が落ちたりすることはない。また、成形条件の幅が狭くなり、少しの変動で、製品が不良品になってしまう等、難しい成形加工が要求されることもないので、コイルアッセンブリーの生産性を向上することができる(例えば、特許文献
1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−5652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては二次成形にて樹脂をコイル外周に被覆させる際、ボビン鍔部に樹脂の圧力が加わり、該ボビン鍔部が樹脂圧に押され変形する可能性があり、金型構造での対応は型構造が複雑になって生産性が悪くなりコスト高の要因になる。
【0005】
本発明は係る点に鑑みなされたもので、二次成形にて樹脂をコイル外周に被覆させるモールド形状を、ボビン鍔部の近傍の被覆肉厚のみを減ずる形状に形成し、二次成形樹脂注入のゲートは減肉部以外に配置されている電磁弁用コイル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、
導線を所定の回数だけ巻回したコイルと、
一対の鍔部間に前記コイルが巻装される筒状のボビンと、
前記ボビンの一対の鍔部のうの少なくとも一方の鍔部の外側面および前記コイルの外径側を被覆するモールド部材と、
を備えた電磁弁用コイル組立体において、
前記モールド部材は、前記一対の鍔部のうちの少なくとも一方に、被覆肉厚の厚みを円周面に亘って軸心方向に減ずる減肉部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、キャビティ内は減肉部によりモールド樹脂が抵抗を受け、流動しにくくなる。その結果、成形時の樹脂圧が減肉部の内部に伝わりにくく、鍔部が樹脂圧に負けて変形することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る電磁弁の略縦断面図である。
【図2】電磁弁用コイル組立体と該電磁弁用コイル組立体を成形する樹脂成形型の構造を示す概略構造図である。
【図3】ボビンの鍔部の要部拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電磁弁につき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る電磁弁10の概略構成を示す縦断面図である。
電磁弁10は、磁性体の金属材料であるハウジング11を有し、該ハウジング11は円筒部12とフランジ部13とを備える。前記ハウジング11の内方には、嵌合孔14が貫通して形成される。この場合、前記円筒部12は固定鉄心としての機能を有する。嵌合孔14に嵌着された軸受機構15は軸心方向に沿って比較的に肉厚が薄い円筒形状のリテーナ16と、該リテーナ16に嵌挿される磁性体の金属製のボール17とを備え、後述するロッド18が軸心方向に変位するときのガイド機能を有する。
【0010】
ハウジング11の外周には電磁弁用コイル組立体19が配設され、該電磁弁用コイル組立体19の外周はカバー21によって覆われている。電磁弁用コイル組立体19は、ボビン20の外周に導線(図示しない)が巻き回されたコイル19aと、ボビン20の鍔部20a、20bと、コイル20の外周を被覆するモールド部材20cと、を備える。
カバー21の内方円筒部21aの外周面にはボビン20の内周面22が嵌合されており、カバー21の内方円筒部21aの内周面22には、ロッド18に固着された可動鉄心23が変位自在に遊嵌されている。
【0011】
参照符号24は円筒状のスリーブを示すもので、ハウジング11に当接した状態でカバー21の一端を例えば加締めることにより該ハウジング11と一体化される。前記スリーブ24には、嵌合孔14と同軸にスリーブ孔25及び26が穿設され、該スリーブ孔25及び26にスプール27が摺動自在に嵌挿されている。前記スリーブ24には、フランジ11側からフィードバックポート28、入力ポート29、出力ポート30及びドレーンポート31がこの順序で形成されている。
【0012】
入力ポート29は、図示しないタンクからポンプによって供給されるか圧力流体が流入する機能を有する。出力ポート30は、図示しない自動変速機等の作動装置に圧力流体を供給するポートである。フィードバッグポート28及び出力ポート30間は図示しない油路を介して連通しており、該出力ポート30から流出する圧力流体の一部がフィードバッグポート28に流入する。これによって、出力ポート30には電磁弁用コイル組立体19及び可動鉄心23等によりなるソレノイド(図示しない)の出力に対応した圧力流体を導出することができる。なお、ドレーンポート31は、図示しないタンクに圧力流体を排出する機能を有する。
【0013】
前記スプール27は、スリーブ孔25及び26のそれぞれに摺動自在に嵌挿される小径部32、大径部33を備える。小径部32の端面(図1で左端)はロッド18の一端(図1で右端)に後述するばね部材35の弾発力に付勢されて常時、当接している。前記ばね部材35は、スリーブ孔26に収納されており、一端(図1で左端)がスプール27の端面(図1で左端面)に当接し、他端(図1で右端)がスリーブ24の端面に螺着されたアジャスタ36の凹部に当接している。
【0014】
この場合、ばね部材35の弾発力の調整はアジャスタ36の締め込み量によりなされ、該アジャスタ36の締め込み量の加減によりスプール27をロッド18への押力(もしくは付勢力)が調整される。これにより、スプール27は、電磁弁用コイル組立体19の励磁により可動鉄心23及びロッド18の移動によりばね部材35の弾発力に抗して矢印Y方向に付勢され、電磁弁用コイル組立体19の非励磁によってばね部材43の弾発力により矢印X方向に付勢されることにより、ロッド18と協動してスリーブ24内を矢印Y方向及びX方向に変位するようになる。
【0015】
前記スプール27の大径部33には、該スプール27の軸心方向の位置に応じて入力ポート29及び出力ポート30間を接続・遮断するランド37と、出力ポート30及びドレーンポート31間を接続・遮断するランド38と、を軸心方向に沿って備える。前記ランド37及び38は軸方向に間隔を置いて設けられ、これらのランド37、38は大径部33の外径より小さい軸部39によって接続されている。よって、ランド37及び38と、軸部39とは直径方向に段差が形成されスリーブ孔26に対して直径方向に開口部40が形成されている。前記開口部40はランド37及び38間を連結する油路として機能する。
【0016】
さらに、小径部32とランド37との間にはフィードバック室41が形成され、小径部32とランド37との外径差によりフィードバックされた圧力流体が作用する受圧面積が異なる。よって、フィードバック室41に流入した圧力流体はスプール27を常時、矢印Y方向に押圧するように作用している。
一方、スプール27は、ばね部材35の弾発力と、電磁弁用コイル組立体19に供給される電流により固定鉄心12に発生する電磁力によってロッド18がスプール27を押す力と、フィードバック室41の圧力流体からのスプール27が受ける力とが釣り合う位置で静止する。
【0017】
入力ポート29から出力ポート30に流入する圧力流体の流量は、スリーブ24の内周壁(図示しない)とランド37の外周壁との重合部分のシール長によって決定される。すなわち、シール長が短くなると入力ポート29から出力ポート30へ流れる流体の流量が増大し、シール長が長くなると入力ポート29から出力ポート30へ流れる流体の流量が減少する。同様に、出力ポート30からドレーンポート31へ流れる流体の流量は、スリーブ24の内周壁とランド38の外周壁とのシール長によって決定される。
【0018】
図2は図1の電磁弁用コイル組立体19を樹脂成形の外形に対応した形状の樹脂成形型45乃至48の構造図を示す。すなわち、図2において電磁弁用コイル組立体19の形状を示す樹脂成形型45乃至48のキャビティ50には、ボビン20と、該ボビン20の外周面に導線(図示しない)を巻き付けたコイル19aと、ボビン20の鍔部20a、20bを装填した後にゲート49より溶融樹脂材料(図示しない)を注入して電磁弁用コイル組立体19が成形される。
ここで、図3に示すようにボビン20の外周に被覆されるモールド部材20cの形状は、鍔部20a、20bの近傍の被覆肉厚の厚みを円周面に亘って軸心方向に減ずる減肉部A、Bを有している。
【0019】
電磁弁用コイル組立体19において、減肉部A、Bを設けることにより、ボビン20の外周部にモールド部材20cを被覆する際、鍔部20a、20bに樹脂の圧力が加わり、該鍔部20a、20bが樹脂圧に押され変形するのを防止することができる。
減肉部A、Bの減肉厚さTは、例えば減肉されていない部位の厚さの30〜60%とすることが望ましい。
【0020】
この場合、電磁弁用コイル組立体19は鍔部20a、20bに減肉部A、Bを設けているが、少なくとも鍔部20a、20bのどちらか一方でよい。
なお、ゲート49はコイル19aの全長の略中央に位置し、円周上に4箇所均等に配置されており、鍔部20a、20bの減肉部は樹脂が注入する最後の部位に位置している。
【0021】
本発明の実施の形態に係る電磁弁用コイル組立体19は以上のように構成されているので、ゲート49から樹脂成形型45乃至48よりなるキャビティ50に注入された樹脂(図示しない)は、モールド部材20cの周方向に広がりながら軸心方向に徐々にキャビティ50を進行し、減肉部20A、20Bに達する。
その際に、キャビティ50内は減肉部20a、20Bにより狭くなっていることから、
樹脂が減肉部20A、20Bにより抵抗を受け、流動しにくくなる。その結果、成形時の樹脂圧が減肉部20A、20Bの内部に伝わりにくく、鍔部20a、20bが樹脂圧に負けて変形することを防止できる。
【0022】
また、成形後に樹脂圧を一定時間加えた状態で保圧する状態でも、減肉部20A、20Bは容積が小さいので固化する速度が速く、保圧による樹脂の圧力が鍔部20a、20b
に加わることを防止する効果がある。
よって、鍔部20a、20bの変形防止効果により、電磁弁用コイル組立体19の寸法制度が良好になり、完成品としてのばらつきを抑えることができる。
さらに、鍔部20a、20bの変形により、コイル19aの導線(図示しない)が樹脂に押され、部分的に変形することを防ぐことが可能になり、コイル線のダメージが減少するため電磁弁用コイル組立体19aの寿命を向上させることが可能となる。
このように、本発明は樹脂成形型45乃至48の金型の一部の寸法を変更するのみで、に型構造は複雑にならず、生産性の影響はない。
【符号の説明】
【0023】
10 電磁弁 11 ハウジング
12 固定鉄心部 13 フランジ部
14 嵌合孔 15 軸受機構
18 ロッド 19 電磁弁用コイル組立体
20 ボビン 23 可動鉄心
45〜48 樹脂成形型 49 ゲート
50 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を所定の回数だけ巻回したコイルと、
一対の鍔部間に前記コイルが巻装される筒状のボビンと、
前記ボビンの一対の鍔部のうの少なくとも一方の鍔部の外側面および前記コイルの外径側を被覆するモールド部材と、
を備えた電磁弁用コイル組立体において、
前記モールド部材は、前記一対の鍔部のうちの少なくとも一方に、被覆肉厚の厚みを円周面に亘って軸心方向に減ずる減肉部を有することを特徴とする電磁弁用コイル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−112427(P2012−112427A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260964(P2010−260964)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】