説明

電磁誘導加熱調理器

【課題】新規作製の誘導加熱コイルかインバータ回路に整合しているか否かを判別でき、不整合のときの詳細な内容が把握できる電磁誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】 誘導加熱コイルと、入力電力値を演算する電力演算回路と、入力電力値が予め定めた電力設定値となるように制御する制御回路とを備えた電磁誘導加熱調理器において、入力電力値が最大電力設定値に達したことを判別する電力判別回路と、出力電流の過電流を判別する過電流判別回路と、インバータ回路の位相差が共振周波数に近づいたことを判別する位相判別回路と、電力判別信号、過電流判別信号又は位相判別信号に基づいて誘導加熱コイルのインダクタンス値が大きすぎるのか、小さすぎるのか又は整合しているのかを判別する整合・不整合判別回路とを備えた電磁誘導加熱調理器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路を使用して誘導加熱コイルに高周波電流を供給し電磁誘導で鍋を加熱する電磁誘導加熱調理器に係り、特に、インバータ回路と誘導加熱コイルとの整合・不整合を判別する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来技術の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。整流回路DR1は三相交流商用電源ACを整流して直流電圧に変換し、平滑コンデンサC1は上記整流回路DR1で直流に変換した電圧を平滑する。
【0003】
第1スイッチング素子TR1及び第2スイッチング素子TR2は、ハーフブリッジ形のインバータ回路を形成するスイッチング素子で、例えば、MOSFET又はIGBT等が使用されている。誘導加熱コイルLは共振コンデンサC2及び共振コンデンサC3とで直列共振回路を形成し、上記誘導加熱コイルLに図示省略の鍋を載置して電磁誘導により上記鍋を加熱する。
【0004】
電力演算回路POは平滑コンデンサC1の電圧(インバータの入力電圧)を検出する入力電圧検出回路PT1からの信号とインバータの入力端の電流を検出する入力電流検出回路CT1からの信号とを入力してインバータの入力電力を演算する。駆動回路DCはスイッチング素子TR1、スイッチング素子TR2を駆動する。
【0005】
電力制御用差動増幅回路DA1は、図示省略の増幅回路の非反転入力端子に電力演算回路POからの入力電力演算信号Poが、反転入力端子に電力設定回路WAから所定の電力設定信号Waがそれぞれ入力される。従って、上記電力制御用差動増幅回路DA1は、入力電力演算信号Poが電力設定信号Waより小さいときは両者の編差分を増幅した負の信号を出力し、入力電力演算信号Poが電力設定信号Waより大きいときは、両者の編差分を増幅した正の信号を出力する。
【0006】
位相差検出回路PFは、第2スイッチング素子駆動信号Tr2と出力電流検出信号Ct2との位相差を検出し、この位相差を電圧に変換して位相差検出信号Pfとして出力し、上記位相差の値が大きいと出力電圧は低くなり、逆に小さいと出力電圧は高くなる。
【0007】
制御回路は、V/FコンバータVF、ダイオードDR1及び図示省略の抵抗器とで形成され、上記ダイオードDR1を介して電力制御用差動増幅回路DA1と接続し、上記電力制御用差動増幅信号Da1の値に応じて周波数指令信号Vfを制御する。
【0008】
V/FコンバータVFの入力端子は図示省略の抵抗器を介して接地されている。よって、電力制御用差動増幅回路DA1の出力信号Da1は正の値とならない限りV/FコンバータVFの入力端の電圧は零電位に保たれ、V/FコンバータVFはその入力電位が零のときインバータを最低周波数で制御するための周波数指令信号Vfを出力する。ここで、インバータ回路の最低周波数は、載置される調理鍋を含む加熱コイルLと共振コンデンサC2,C3とからなる直列共振回路の共振周波数より若干高い値に設定される。
【0009】
位相判別回路CPは、位相差が零より少し高めの位相差基準値Frと位相差検出信号Pfとを比較して、上記位相差検出信号Pfが上記位相基準値Frより大きいとき、位相判別信号CpをHihgレベルにする。
【0010】
電力判別回路PPは、図示省略の予め定めた最大電力設定値Wgと電力演算信号Poとを比較して、上記電力演算信号P0が上記最大電力設定値Wgより大きいとき、電力判別信号PpをHighレベルにする。
【0011】
論理回路ORは、上記位相判別信号CpがHihgレベル又は上記電力判別信号がHighレベルのときに表示回路LD4を点燈して、誘導加熱コイルLがインバータ回路に対して不整合であることを表示する。
【0012】
さらに、論理回路ORの出力がHighレベルのときには、電磁誘導加熱調理器の動作を停止する。上述の技術を開示した先行文献として、例えば、特許文献1がある。
【0013】
【特許文献1】特開平11−54249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来技術の電磁誘導加熱調理器において、鍋の形状、材質又は厨房機器の違いに応じて、ユーザが誘導加熱コイルを新規作製して使用する場合がある。このとき、誘導加熱コイルのインダクタンス値が上記インバータ回路に整合しているか否かを判別することが重要になる。上記インダクタンス値が整合しない誘導加熱コイルを上記電磁誘導加熱調理器に設置して用いると、最悪の場合、上記インバータ回路等が破壊する恐れがある。
【0015】
上述の先行文献1では、インバータ回路が所定の周波数になっても最大電力値が得られない又は上記インバータ回路が共振周波数の近傍になったとき、上記誘導加熱コイルが上記インバータ回路に整合しないと判別していた。上記より、先行文献1では新規作製した誘導加熱コイルがインバータ回路に整合しているか否かを判別することはできるが、上記誘導加熱コイルのインダクタンス値が大きすぎるのか又は小さすぎるのかが把握できず、上記誘導加熱コイルのインダクタンス値の調整が非常に困難であった。そこで、本発明は、上述した課題を解決することができる電磁誘導加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、共振コンデンサとで直列共振回路を形成する誘導加熱コイルと、上記誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、上記インバータ回路の入力電力値を演算する電力演算回路と、上記電力設定値を予め定めた値に設定する電力設定回路と、上記入力電力値が上記電力設定値となるように上記インバータ回路の出力周波数を制御する制御回路と備えた電磁誘導加熱調理器において、上記電力設定値を最大電力設定値に設定し上記入力電力値が上記最大電力設定値に達したときに電力判別信号を出力する電力判別回路と、上記インバータ回路の出力電流が予め定めた電流制限値より大きいときに過電流と判別して過電流判別信号を出力する過電流判別回路と、上記インバータ回路の出力電圧と出力電流との位相差を検出し上記位相差が零近傍になり共振周波数に近づいたときに位相判別信号を出力する位相判別回路と、上記誘導加熱コイルが上記インバータ回路に整合していることを確認するために上記電力設定値を上記最大電力設定値に設定して上記インバータ回路を起動したときに上記電力判別信号が出力すると上記過電流判別信号及び上記位相判別信号に関係なく整合していると判別し、上記電力判別信号が出力せず上記過電流判別信号が出力すると上記誘導加熱コイルのインダクタンス値が小さすぎると判別し、上記上記電力判別信号が出力せず上記位相判別信号が出力すると上記誘導加熱コイルのインダクタンス値が大きいすぎると判別して整合・不整合の判別信号を出力する整合・不整合判別回路と、上記整合・不整合の判別信号の内容を表示する表示回路とを備えたことを特徴とする電磁誘導加熱調理である。
【0017】
第2の発明は、上記最大電力設定値を設定する最大電力設定回路と、上記最大電力設定値又は上記電力設定値を選択する整合・調理切換スイッチとを備えたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器である。
【0018】
第3の発明は、上記入力電力値を表示する表示回路を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導加熱調理器のである。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明によれば、鍋の形状、材質又は厨房機器の違いに応じて、誘導加熱コイルを新規作製して使用する際、誘導加熱コイルがインバータ回路に整合しているか否かを自動的に判別して表示し、不整合の場合において、誘導加熱コイルのインダクタンス値が大きすぎる又は小さすぎると表示するので、上記誘導加熱コイルのインダクタンス値の調整が容易になる。さらに、上記不整合の誘導加熱コイルを長期間使用すると、最悪の場合、インバータ回路等が破壊する恐れがあった。しかし、本発明では制限回路を設けることにより、上記インバータ回路等の破損を防止している。
【0020】
上記第2の発明は、整合・調理切換スイッチを設けることにより、整合判別モード又は調理モードの切換が容易になる。
【0021】
上記第3の発明は、入力電力値を表示することにより、誘導加熱コイルのインダクタンス値がどの程度大きすぎるのか又は小さすぎるのかを予測することができ、上記誘導加熱コイルのインダクタンス値の微調整が非常に容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。図1において、図7に示す、従来技術の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は同一動作を行なうので説明は省略し符号が相違する構成について説明する。
【0023】
出力電流制限回路DA2は、図2に示すように非反転入力端子に出力電流検出回路CT2からの出力電流検出信号Ct2が、反転入力端子に電流制限設定回路ICから電流制限設定信号Icがそれぞれ入力される。従って、上記出力電流制限回路DA2は、上記出力電流検出信号Ct2が上記電流制限設定信号Icより小さいときは、両者の偏差分を増幅した負の信号を出力し、上記出力電流検出信号Ct2が上記電流制限設定信号Icより大きいときは、両者の偏差分を増幅した正の信号を出力する。
【0024】
位相制限回路DA3は、図2に示すように非反転入力端子に位相差検出回路PFからの位相差検出信号Pfが、反転入力端子に位相制限設定回路FSから位相制限設定信号Fsがそれぞれ入力される。従って、上記位相制限回路DA3は、上記位相差検出信号Pfが上記位相制限設定信号Fsより小さいときは、両者の偏差分を増幅した負の信号を出力し、上記位相差検出信号Pfが上記位相制限設定信号Fsより大きいときは、両者の偏差分を増幅した正の信号を出力する。
【0025】
V/FコンバータVFは、ダイオードDR1を介して電力制御用差動増幅回路DA1と接続し、ダイオードDR2を介して出力電流制限回路DA2とダイオードDR3を介して位相制限回路DA3と接続し、オアー論理を形成し、上記電力制御用差動増幅信号Da1、出力電流制限信号Da2及び位相制限信号Da3の最大値に応じて周波数指令信号Vf
を制御する。
【0026】
過電流判別回路IPは、出力電流検出回路CT2からの出力電流検出信号Ct2と電流制限設定回路ICから電流制限設定信号Icとを比較して、上記出力電流検出信号Ct2が上記電流制限設定信号Icより大きいときに過電流と判別して過電流判別信号IpをHighレベルにして出力する。
【0027】
位相判別回路CPは、位相差検出回路PFからの位相差検出信号Pfと位相制限設定回路FSから位相制限設定信号Fsとを比較して、上記位相差検出信号Pfが上記位相制限設定信号Fsより大きいときに共振周波数の近傍に近づいたと判別して位相判別信号CpをHighレベルにして出力する。
【0028】
整合・不整合判別回路KDは、電力判別信号PpがLowレベルで過電流判別信号IpがHighレベルになると誘導加熱コイルLのインダクタンス値が小さすぎると判別して表示回路LD1に上記判別した内容を表示する。また、電力判別信号PpがLowレベルで位相判別信号CpがHighレベルになると誘導加熱コイルLのインダクタンス値が大きすぎると判別して表示回路LD2に上記判別した内容を表示する。更に、電力判別信号がHighレベルになると上記過電流判別信号Ip又は上記位相判別信号Cpのレベルに関係なく、上記誘導加熱コイルがインバータ回路に対して整合していると判別して上記判別した内容を表示回路LD3に表示する。
【0029】
駆動回路DCは、下記に示すV/FコンバータVFからの出力信号Vfの値に応じて、パルス幅の比率が一定でパルス周波数を変調するPFM制御をして、第1スイッチング素子TR1と第2スイッチング素子TR2とを交互に駆動する第1スイッチング素子駆動信号Tr1と第2スイッチング素子駆動信号Tr2とを出力する。
【0030】
電力設定回路WAで電力を最大電力設定値Wgに設定し、調理者が調理器を起動させると、過大な電流が流れてしまう。ソフトスタート回路SSはこのような状況を想定して設けられたもので、起動開始時、たとえ、高い電力が設定されても、ソフトスタート回路SSの動作により小電力から穏やかに電力を増大させる。
【0031】
図3は、誘導加熱コイルLのインダクタンス値が小さすぎて最大定格電力が得られず、インバータ回路の出力電流が過電流になったときの波形図である。図3において、図3(A)は、ソフトスタート信号Ssを示し、図3(B)は出力電流検出信号Ct2を示し、図3(C)は、入力電力演算信号Poを示し、図3(D)は、位相差検出信号Pfを示し、図3(E)は、出力電流制限信号Da2を示し、図3(F)は、V/FコンバーVFの入力信号Viを示し、図3(G)は、過電流判別信号Ipを示す。
【0032】
図3に示す時刻t=t0において、図示省略の起動信号が入力されると、図3(A)に示すソフトスタート信号Ssは緩やかに減少し、逆に、出力電流検出信号Ct2、入力電力演算信号Po及び位相差検出信号Pfは緩やかに増大する。
【0033】
図3(F)に示すV/FコンバータVFの入力信号Viは、ダイオードDR1乃至DR4及び入力端子の抵抗器R1によってOR論理を形成し、電力制御用差動増幅信号Da1、出力電流制限信号Da2、位相制限信号Da3又はソフトスタート信号Ssのうち、一番大きい値の信号が入力信号Viとなる。
【0034】
図3(F)に示す、V/FコンバータVFの入力信号Viが減少すると、出力電流検出信号Ct2の値は逆に増加する。
【0035】
時刻t=t1において、出力電流検出信号Ct2が増加を維持し図3(B)に示す、電流制限設定信号Icに達すると過電流判別回路IPは過電流と判別して、図3(G)に示す過電流判別信号IpをHighレベルにする。このとき、図3(D)に示す位相差検出信号Pfが位相制限設定信号Fsより小さいので位相判別回路CPは位相判別信号CpをLowレベルにする。さらに、図3(C)に示す入力電力演算信号Poも最大電力設定信号Wgより小さいので電力判別回路PPは電力判別信号PpをLowレベルにする。
【0036】
整合・不整合判別回路KDは、過電流判別信号IpがHighレベル、位相判別信号CpがLowレベル及び電力判別信号PpがLowレベルのときに誘導加熱コイルLのインダクタンス値が所定の小さいすぎると判別し、インバータ回路に対して整合しないと判別して、上記判別した内容を表示回路LD1に表示する。
【0037】
時刻t=t2以後は、電力制御用差動増幅信号Da1、出力電流制限信号Da2、位相制限信号Da3又はソフトスタート信号Ssのうち、一番値の大きい出力電流制限信号Da2が入力信号Viとなり、出力電流が制限される。
【0038】
図4は、誘導加熱コイルLのインダクタンス値が大きすぎて最大定格電力が得られず、インバータ回路の出力電圧の進み位相が零近傍になり共振周波数に近づいたときの波形図である。図4において、図4(A)は、ソフトスタート信号Ssを示し、図4(B)は出力電流検出信号Ct2を示し、図4(C)は、入力電力演算信号Poを示し、図4(D)は、位相差検出信号Pfを示し、図4(E)は、位相制限信号Da3を示し、図4(F)は、V/FコンバーVFの入力信号Viを示し、図4(G)は、位相判別信号Cpを示す。
【0039】
図4に示す時刻t=t0において、図示省略の起動信号が入力されると、図4(A)に示すソフトスタート信号Ssの値は緩やかに減少し、逆に、出力電流検出信号Ct2、入力電力演算信号Po及び位相差検出信号Pfは緩やかに増大する。
【0040】
図4(F)に示すV/FコンバータVFの入力信号Viは、電力制御用差動増幅信号Da1、出力電流制限信号Da2、位相制限信号Da3又はソフトスタート信号Ssのうち、一番大きい値の信号が入力信号Viとなる。
【0041】
上記V/FコンバータVFの入力信号Viの減少に応じて、図4(D)に示す、インバータ回路の位相差検出信号Pfの値は逆に増加する。
【0042】
時刻t=t1において、位相差検出信号Pfが増加を維持し図4(D)に示す、位相制限設定信号Fsに達すると位相判別回路CPはインバータ回路の出力電圧の進み位相が零近傍になり共振周波数に近づいたと判別して、図4(G)に示す位相判別信号CpをHighレベルにする。このとき、図4(B)に示す出力電流検出信号Ct2が電流制限設定信号Icより小さいので過電流判別回路IPは過電流判別信号CpをLowレベルにする。さらに、図4(C)に示す入力電力演算信号Poも最大電力設定信号Wgより小さいので電力判別回路PPは電力判別信号PpをLowレベルにする。
【0043】
整合・不整合判別回路KDは、位相判別信号CpがHighレベル、過電流判別信号IpがLowレベル及び電力判別信号PpがLowレベルのときに誘導加熱コイルLのインダクタンス値が大きすぎると判別し、インバータ回路に対して整合していないと判別して、上記判別した内容を表示回路LD2に表示する。
【0044】
時刻t=t2以後は、電力制御用差動増幅信号Da1、出力電流制限信号Da2、位相制限信号Da3又はソフトスタート信号Ssのうち、一番値の大きい位相制限信号Da3が入力信号Viとなり、出力電流が制限される。
【0045】
図5は、誘導加熱コイルLのインダクタンス値が所定に値にあり、最大定格電力が得られて誘導加熱コイルがインバータ回路に整合したときの波形図である。図5において、図5(A)は、ソフトスタート信号Ssを示し、図5(B)は出力電流検出信号Ct2を示し、図5(C)は、入力電力演算信号Poを示し、図5(D)は、位相差検出信号Pfを示し、図5(E)は、電流制御用差動増幅信号Da1を示し、図5(F)は、V/FコンバーVFの入力信号Viを示し、図5(G)は、電力判別信号Ppを示す。
【0046】
図5に示す時刻t=t0において、図示省略の起動信号が入力されると、図5(A)に示すソフトスタート信号Ssの値は緩やかに減少し、逆に、出力電流検出信号Ct2、入力電力演算信号Po及び位相差検出信号Pfは緩やかに増大する。
【0047】
上記V/FコンバータVFの入力信号Viの減少に応じて、図5(C)に示す、入力電力演算信号Poの値は逆に増加する。
【0048】
時刻t=t1において、入力電力演算信号Poが増加を維持し図4(C)に示す最大電力設定値Wgに達すると電力判別回路PPは図4(G)に示す電力位相判別信号IpをHighレベルにする。
【0049】
整合・不整合判別回路KDは、電力判別信号PpがHighレベルになると、過電流判別信号Ip及び電力判別信号Ppに関係なく誘導加熱コイルLのインダクタンス値が所定の値にあると判別し、インバータ回路に対して整合していると判別して、上記判別した内容を表示回路LD3に表示する。
【0050】
[実施の形態2]
図6は、実施形態2の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。同図において、図1に示す本発明の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は、同一動作を行なうので説明は省略して相違する動作について説明する。
【0051】
最大電力設定回路WGは、最大電力設定信号Wgを設定する。
【0052】
整合・調理切換スイッチSWは、整合モードに選択すると最大電力設定信号Wgを選択して電力制御用差動増幅回路DA1に入力し、調理モードに選択すると電力設定信号Waを選択して上記電力制御用差動増幅回路DA1に入力する。
【0053】
[実施の形態3]
図6は、実施形態3の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。同図において、図1に示す本発明の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は、同一動作を行なうので説明は省略して相違する動作について説明する。
【0054】
整合・不整合判別回路KDは、入力電力演算信号Poの値を数値化して表示回路LD4に表示する。上記表示された入力電力値によって、誘導加熱コイルLのインダクタンス値がどの程度大きいのか又は小さいのか予測することが可能となる。
【0055】
[実施の形態4]
インバータ回路の動作周波数には制限があり、予め定めた下限値と上限値とが設定されている。この条件でインダクタンス値が非常に大きい誘導加熱コイルの整合の判別を行なうと、インバータ回路の出力電圧と出力電流との位相差が零近傍になり共振周波数に近づく前に、上記インバータ回路の動作周波数の下限値に達し、このとき、位相判別信号CpはLowレベルになる。整合・不整合判別回路KDは、電力判別信号Pp及び位相判別信号CpがLowレベルになると、誘導加熱コイルLのインダクタンス値が非常に大きい値であると判別して不整合信号を出力する。また、上記判別した不整合信号の内容を表示する図示省略の表示回路を別途設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【図2】電流・位相制限回路の詳細電気接続図である。
【図3】誘導加熱コイルLのインダクタンス値が小さすぎて最大定格電電力が得られ ず、インバータ回路の出力電流が過電流になったときの波形図である。
【図4】誘導加熱コイルLのインダクタンス値が大きすぎて最大定格電電力が得られ ず、インバータ回路の出力電圧の進み位相が零近傍になり共振周波数に近ず いたときの波形図である。
【図5】誘導加熱コイルLのインダクタンス値が所定に値にあり最大定格電力が得ら れ、誘導加熱コイルがインバータ回路に整合したときの波形図である。
【図6】実施の形態2及び3の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【図7】従来技術の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【符号の説明】
【0057】
C1 平滑コンデンサ
C2 共振コンデンサ
C3 共振コンデンサ
CP 位相判別回路
CT1 入力電流検出回路
CT2 出力電流検出回路
DC 駆動回路
DA1 電力制御用差動増幅回路
DA2 出力電流制限回路
DA3 位相制限回路
DR1 整流回路
FS 位相制限設定回路
IC 電流制限設定回路
IP 過電流判別回路
KD 整合・不整合判別回路
L 誘導加熱コイル
LD1 表示回路
LD2 表示回路
LD3 表示回路
LD4 表示回路
LD5 入力電力表示回路
PF 位相差検出回路
PP 電力判別回路
PO 電力演算回路
PT1 入力電圧検出回路
SS ソフトスタート回路
SW 整合・調理切換スイッチ
TR1 第1スイッチング素子
TR2 第2スイッチング素子
VF V/Fコンバータ
WA 電力設定回路
WG 最大電力設定回路
Cp 位相判別信号
Ct1 入力電流検出信号
Ct2 出力電流検出信号
Da1 電力制御用差動増幅信号
Da2 出力電流制限信号
Da3 位相制限信号
Fs 位相制限設定信号
Ic 電流制限設定信号
Ip 過電流判別信号
Po 入力電力演算信号
Pp 電力判別信号
Pf 位相差検出信号
Pt1 入力電圧検出信号
Tr1 第1スイッチング素子駆動信号
Tr2 第2スイッチング素子駆動信号
Vf 周波数指令信号
Wa 電力設定信号
Wg 最大電力設定信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振コンデンサとで直列共振回路を形成する誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力電力値を演算する電力演算回路と、前記電力設定値を予め定めた値に設定する電力設定回路と、前記入力電力値が前記電力設定値となるように前記インバータ回路の出力周波数を制御する制御回路と備えた電磁誘導加熱調理器において、前記電力設定値を最大電力設定値に設定し前記入力電力値が前記最大電力設定値に達したときに電力判別信号を出力する電力判別回路と、前記インバータ回路の出力電流が予め定めた電流制限値より大きいときに過電流と判別して過電流判別信号を出力する過電流判別回路と、前記インバータ回路の出力電圧と出力電流との位相差を検出し前記位相差が零近傍になり共振周波数に近づいたときに位相判別信号を出力する位相判別回路と、前記誘導加熱コイルが前記インバータ回路に整合していることを確認するために前記電力設定値を前記最大電力設定値に設定して前記インバータ回路を起動したときに前記電力判別信号が出力すると前記過電流判別信号及び前記位相判別信号に関係なく整合していると判別し、前記電力判別信号が出力せず前記過電流判別信号が出力すると前記誘導加熱コイルのインダクタンス値が小さすぎると判別し、前記前記電力判別信号が出力せず前記位相判別信号が出力すると前記誘導加熱コイルのインダクタンス値が大きいすぎると判別して整合・不整合の判別信号を出力する整合・不整合判別回路と、前記整合・不整合の判別信号の内容を表示する表示回路とを備えたことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記最大電力設定値を設定する最大電力設定回路と、前記最大電力設定値又は前記電力設定値を選択する整合・調理切換スイッチとを備えたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記入力電力値を表示する表示回路を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導加熱調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate