説明

電磁誘導加熱調理器

【課題】 調理中に誘導加熱コイルに載置された複数の鍋のうち、所定数の鍋を取り除いて調理を継続すると電力が供給し過ぎて鍋の中の具材が駄目になってしまう。
【解決手段】 共振コンデンサとで直列共振回路を形成する複数の誘導加熱コイルと誘導加熱コイルに電流を供給するインバータ回路とインバータ回路の入力電力値を演算する電力演算回路と入力電力値を設定する電力設定回路と電力演算信号と電力設定信号とが略等しくなるように制御する電力制御回路とインバータ回路の出力電流を検出する出力電流検出回路と誘導加熱コイル全てに鍋が載置されて電力設定信号に応じて表示された出力電流値に基づいて電流設定信号を手動設定する手動電流設定回路と鍋の数が減少して出力電流検出信号の値が電流設定信号の値より大きいとき電流設定信号の値と略等しくなるように電流制御する電流制限回路とを具備したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路を使用して誘導加熱コイルに高周波電流を供給し電磁誘導で鍋を加熱する電磁誘導加熱調理器に係り、特に、複数の誘導加熱コイルを設け複数の鍋を載置して加熱する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来技術の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。同図において、整流回路DR1は三相交流商用電源ACを整流して直流電圧に変換し、平滑コンデンサC1は上記整流回路DR1で直流に変換した電圧を平滑する。
【0003】
図11に示す、第1スイッチング素子TR1及び第2スイッチング素子TR2は、ハーフブリッジ形のインバータ回路を形成するスイッチング素子で、例えば、MOSFET又はIGBT等が使用されている。複数の直列接続された誘導加熱コイルL1乃至Lnは共振コンデンサC2及び共振コンデンサC3で直列共振回路を形成し、上記誘導加熱コイルL1乃至Lnに図示省略の複数の鍋を載置して電磁誘導により加熱する。
【0004】
電力演算回路POは、平滑コンデンサC1の電圧(インバータの入力電圧)を検出する入力電圧検出回路PT1からの入力電圧検出信号Pt1とインバータの入力端の電流を検出する入力電流検出回路CT1からの入力電流検出信号Ct1とを入力してインバータの入力電力を演算して電力演算信号Poとして出力する。駆動回路DCはスイッチング素子TR1、スイッチング素子TR2を駆動する。
【0005】
電力制御回路は、図11に示す電力調整回路PDとV/F変換回路とで形成され、上記電力調整回路PDは、差動増幅回路の非反転入力端子に電力演算回路POからの電力演算信号Poが、反転入力端子には電力設定回路WAによって設定された予め定めた電力設定信号Waが入力される。そして、上記電力調整回路PDは、電力演算信号Poと電力設定信号Waとの両者の編差分を誤差増幅して電力調整信号Pdとして出力する。
【0006】
V/F変換回路は、図示省略のV/FコンバータVF、ダイオードD1及び抵抗器R1とで形成され、上記ダイオードD1を介して電力調整回路PDと接続し、上記電力調整信号Pdの値に応じて周波数指令信号Vfを制御する。
【0007】
V/FコンバータVFの入力端子は抵抗器R1を介して接地されている。よって、電力調整回路PDの出力信号Pdは正の値とならない限りV/FコンバータVFの入力端の電圧は零電位に保たれ、V/FコンバータVFはその入力電位が零のときインバータを最低周波数で制御するための周波数指令信号Vfを出力する。ここで、インバータ回路の最低周波数は、載置される複数の鍋を含む誘導加熱コイルL1乃至Lnと共振コンデンサC2,C3とからなる直列共振回路の共振周波数より若干高い値に設定される。このとき、載置された鍋に最大電流が供給される。ところで、特許文献1では、上述に示す複数の誘導加熱コイルを設けて複数の鍋を載置して加熱する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−190268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来技術の電磁誘導加熱調理器において、調理中に複数の誘導加熱コイルに載置された複数の鍋のうち、所定数の鍋を取り除いて残った鍋で調理を継続すると、上記残った鍋に電力を供給し過ぎて鍋の中の具材が煮えすぎて駄目になってしまう。
【0010】
具体例として、例えば、同一の誘導加熱コイル2個を直列接続した1.25kW×2連の電磁誘導加熱調理器において、使用者が電力設定用ツマミを最大にすると上記誘導加熱コイルに載置された2つの鍋それぞれに、1.25kWずつの電力がインバータ回路から供給される。この加熱状態から2つの鍋のうち1つを取り除くと、インバータ回路から供給される電力が残りの1つに鍋に供給される。ここで、電磁誘導加熱調理器は電力一定制御で動作するために、1.25kW×2という仕様でありながら、残りの鍋に2.5kWが供給されることになる。これにより残りの鍋が加熱され過ぎて鍋の中の具材が駄目になってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、調理中に複数の誘導加熱コイルに載置された複数の鍋のうち所定数の鍋を取り除いても、残りの鍋に電力が供給し過ぎるのを防止する電磁誘導加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、共振コンデンサと、上記共振コンデンサとで直列共振回路を形成する複数の直列接続された誘導加熱コイルと、上記複数の誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、上記インバータ回路の入力電力値を演算して電力演算信号として出力する電力演算回路と、予め定めた入力電力値を設定して電力設定信号として出力する電力設定回路と、上記電力演算信号の値が上記電力設定信号の値と略等しくなるように上記インバータ回路の出力周波数を制御する電力制御回路とを具備した電磁誘導加熱調理器において、上記インバータ回路の出力電流を出力電流検出信号として検出する出力電流検出回路と、上記出力電流検出信号の値を表示する表示回路と、上記複数の誘導加熱コイル全てに鍋が載置されときの上記出力電流検出信号の表示値に基づいて電流設定信号を手動で設定する手動電流設定回路と、上記複数の誘導加熱コイルに載置された鍋の数が減少して上記出力電流検出信号の値が上記電流設定信号の値より大きくなったとき上記電流設定信号の値と略等しくなるように上記インバータ回路の出力周波数を制御する電流制限回路と、を具備したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器である。
【0013】
第2の発明は、上記電流設定信号の値は上記電力設定信号の値に応じて予め定めた関係に従って自動設定され、この予め定めた関係は上記複数の誘導加熱コイル全てに鍋が載置されたときの各電力設定信号の値に対する上記出力電流検出信号の値に基づいて予め設定される自動電流設定回路を上記手動電流設定回路に置換して、具備したことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器である。
【0014】
第3の発明は、上記電流制限回路の動作を予め定めた期間停止する時限停止回路と、上記電流制限回路の動作を停止したときの上記出力電流検出信号の値に基づいて上記誘導加熱コイルに載置された鍋の数を算出する鍋算出回路と、上記電流設定信号の値を上記算出した鍋の数に応じて補正する電流設定補正回路と、を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導加熱調理器である。
【0015】
第4の発明は、共振コンデンサと、上記共振コンデンサとで直列共振回路を形成する複数の直列接続された誘導加熱コイルと、上記複数の誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、上記インバータ回路の入力電力値を演算して電力演算信号として出力する電力演算回路と、予め定めた入力電力値を設定して電力設定信号として出力する電力設定回路と、上記電力演算信号の値が上記電力設定信号の値と略等しくなるように上記インバータ回路の出力周波数を制御する電力制御回路とを具備した電磁誘導加熱調理器において、上記複数の誘導加熱コイルに載置された鍋の数を検出する鍋検出回路と、上記複数の誘導加熱コイル全てに鍋が載置されたときの上記電力設定信号の値を上記検出した鍋の数に基づいて最適な電力制限設定信号を算出して自動設定する電力制限設定回路と、上記複数の誘導加熱コイルに載置された鍋の数が減少して上記電力演算信号の値が上記電力制限設定信号の値より大きくなったとき上記電力制限設定信号の値と略等しくなるように上記インバータ回路の出力周波数を制御する電力制限回路と、を具備したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、調理中に複数の誘導加熱コイルに載置された複数の鍋のうち、所定数の鍋を取り除いて残りの鍋で調理を継続しても、上記誘導加熱コイルに供給する高周波電流を予め定めた電流制限値を超えないように電流制限するので、上記残った鍋の中の具材が加熱し過ぎて料理が駄目になることを防止できる。
【0017】
第2の発明によれば、電流制限の値を各電力設定値ごとの値に応じて予め定めた関係に従って算出して自動設定を行なうので、煩わしい設定作業を必要としなくなり効率化につながる。
【0018】
第3の発明によれば、調理中に複数の誘導加熱コイルに載置された複数の鍋のうち、所定数の鍋を取り除いたときの残りの鍋の数を検出し、上記検出した鍋の数に基づいてインバータ回路の電流制限の値を最適な値に補正して設定するので、より精度の良い電流制限が可能となる。
【0019】
第4の発明によれば、誘導加熱コイルに載置されている鍋の数を検出し、予め定めた電力設定値を上記検出した鍋の数に基づいて電力制限値を算出し、鍋の数が減少して残った鍋で調理を継続しても、上記鍋に供給する電力が上記電力制限値を超えないように電力制限するので、鍋の中の具材が加熱し過ぎて料理が駄目になることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施の形態1]
図1は、本発明の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。同図において、図11に示す、従来技術の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は同一動作を行なうので説明は省略し符号が相違する構成について説明する。
【0021】
出力電流検出回路CT2は、インバータ回路の出力電流を検出して出力電流検出信号Ct2として出力する。表示回路LEDは、上記出力電流検出信号Ct2の値を数字に変換して表示する。
【0022】
手動電流設定回路MICは、複数の誘導加熱コイルL1乃至Ln全てに鍋が載置された状態で、表示回路LEDに表示される出力電流検出信号Ct2の値より若干大きい値に手動で設定して電流設定信号Icとして出力する。
【0023】
電流制限回路IDは、図2に示す増幅回路の反転入力端子に出力電流検出回路CT2からの出力電流検出信号Ct2が入力され、手動電流設定回路MICからの電流設定信号Icが非反転入力端子に入力される。そして、上記出力電流検出信号Ct2と上記電流制限設定信号Icとの誤差増幅を行なって電流制限信号Idとして出力する。
【0024】
V/F変換回路は、図2に示すV/FコンバータVF、ダイオードD1、ダイオードD2及び抵抗器R1とで形成され、上記V/FコンバータVFは、ダイオードD1を介して電力調整回路PDと接続し、ダイオードD2を介して電流制限回路IDと接続してオアー論理を形成し、電力調整信号Pd、電流制限信号Idのうち、大きい値を選択して制御信号Viとし、上記V/FコンバータVFは上記制御信号Viに応じて周波数指令信号Vfの周波数を制御する。
【0025】
駆動回路DCは、V/FコンバータVFからの周波数指令信号Vfの値に応じて、パルス幅の比率が一定でパルス周波数を変調するPFM制御をして、第1スイッチング素子TR1と第2スイッチング素子TR2とを交互に駆動する第1スイッチング素子駆動信号Tr1と第2スイッチング素子駆動信号Tr2とを出力する。
【0026】
図3は、実施形態1の動作を説明する波形図である。同図において、同図(A)は、出力電流検出信号Ct2を示し、同図(B)は、電力演算信号Poを示し、同図(C)は、電流制限信号Idを示し、同図(D)は、電力調整信号Pdを示し、同図(E)は、制御信号Viを示す。続いて、上記図3の波形図を用いて動作について説明する。
【0027】
時刻t=t0において、図3(B)に示す、予め定めた値の電力設定信号Waを誘導加熱コイルL1乃至誘導加熱コイルLn全てに鍋が載置された状態で設定する。
【0028】
時刻t=t0〜t1において、n個の誘導加熱コイル全てにn個の鍋が載置されていて、電力調整回路は、図3(B)に示す電力設定信号Waと電力演算信号Poとの誤差増幅を行なって同図(D)に示す電力調整信号Pdとして出力する。このとき、手動電流設定回路MICによって設定する電流設定信号Icの値は、出力電流検出信号Ct2の値より若干大きい値にする。
【0029】
電流制限回路IDは、図3(A)に示す出力電流検出信号Ct2と電流設定信号Icとの誤差増幅を行なって、図同(C)に示す電流制限信号Idとして出力する。V/FコンバータVFの制御信号Viは、ダイオードD1、ダイオードD2及び抵抗器R1によってOR論理を形成し、上記電力調整信号Pd又は電流制限信号Idのうち大きい値の信号が選択されて制御信号Viとなる。このとき、上記V/FコンバータVFの制御信号Viが増加すると、出力電流検出信号Ct2の値は逆に減少する。
【0030】
時刻t=t1〜t2において、鍋が1個取り除かれると共振回路の負荷抵抗が小さくなるために、図3(B)に示す電力演算信号Poは減少すると共に同図(D)に示す電力調整信号Pdも減少する。他方、出力電流検出信号Ct2の値は同図(A)に示すように過度的に上昇し、同図(C)に示す電流制限信号Idの値は上記電力調整信号Pdの値より大きくなりV/FコンバータVFの制御信号Viには、上記電力調整信号Pdに代わって上記電流制限信号Idが入力され、電力制御から電流制御に切り換わる。そして、インバータ回路の駆動周波数を高くしてインバータ回路の出力電流が電流設定信号Icの値と略等しくなるように電流制御する。
【0031】
時刻t=t2〜t3において、n個の誘導加熱コイルには(n−1)個の鍋が載置されていて、上記インバータ回路の出力電流が電流設定信号Icの値と略等しくなるように電流制御を継続し、残った鍋の中の具材が加熱し過ぎないようにする。
する。
【0032】
時刻t=t3〜t4において、鍋が更に1個取り除かれて(n−2)個になると共振回路の負荷抵抗がより小さくなり、図3(B)に示す電力演算信号Poと共に同図(D)に示す電力調整信号Pdも減少する。他方、出力電流検出信号Ct2の値は同図(A)に示すように過度的に上昇し、同図(C)に示す電流制限信号Idの値はより大きくなり、インバータ回路の駆動周波数をより高くしてインバータ回路の出力電流が電流設定信号Icの値と略等しくなるように制御する。
【0033】
時刻t=t4以後において、n個の誘導加熱コイルに(n−2)個の鍋が載置されていて、上記インバータ回路の出力電流が電流設定信号Icの値と略等しくなるように制御を継続する。
【0034】
[実施の形態2]
図4は、実施形態2の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。同図において、図1に示す本発明の実施形態1の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は、同一動作を行なうので説明は省略して相違する動作について説明する。
【0035】
自動電流設定回路ICは、複数の誘導加熱コイルL1乃至Ln全てに鍋が載置されたときの、電力設定回路WAによって設定される各電力設定信号Waの値に対する、インバータ回路の出力電流検出信号Ct2の値に基づいて電流設定信号Icを算出して自動設定する。このときの電流設定信号Icの値は上記出力電流検出信号Ct2の値より若干大きい値になる。
【0036】
図5は、実施形態2の動作を説明する波形図であり、同図を用いて動作について説明する。
【0037】
時刻t=t0において、n個の誘導加熱コイルにn個の鍋が載置されていて、電力設定回路WAによって設定される図5(B)に示す、電力設定信号Waの値と同図(A)に示す出力電流検出信号Ct2の値とに基づいて、自動電流設定回路ICは同図(A)に示す電流設定信号Icを算出して自動設定する。このときの電流設定信号Ic値は上記出力電流検出信号Ct2の値より若干大きい値が設定される。
【0038】
時刻t=t0〜t1において、電力調整回路は、図5(B)に示す電力設定信号Waと電力演算信号Poとの誤差増幅を行なって同図(D)に示す電力調整信号Pdとして出力する。また、同図(C)に示す電流制限信号Idの値は上記電力調整信号Pdの値より小さくなり、V/FコンバータVFの制御信号Viには、上記電力調整信号Pdが入力されて電力制御を行なう。
【0039】
時刻t=t1〜t2において、電力設定信号Waの値を小さくなるように設定すると、上記電力設定信号Waに応じて図5(A)に示す出力電流検出信号Ct2の値も小さくなり、上記電力設定信号Waの値に応じて予め定めた関係に従って算出する電流設定信号Icの値も小さくなる。
【0040】
時刻t=t2以後において、電力調整回路は、図5(B)に示す小さくなった電力設定信号Waと電力演算信号Poとの誤差増幅を行なって同図(D)に示す電力調整信号Pdとして出力する。このとき、同図(C)に示す電流制限信号Idの値は上記電力調整信号Pdの値よりも小さいので、V/FコンバータVFの制御信号Viには、上記電力調整信号Pdが入力されて電力制御を継続する。
【0041】
[実施の形態3]
図6は、実施形態3の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。同図において、図1に示す本発明の実施形態1の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は、同一動作を行なうので説明は省略して相違する動作について説明する。
【0042】
図6に示す、時限停止回路STは、予め定めた周期で予め定めた期間の時限停止信号Stを出力して電流制限回路IDの動作を停止する。
【0043】
鍋算出回路PCは、時限停止信号Stが入力すると動作を開始し、電流制限回路の動作を停止したときの出力電流検出信号Ct2の値と予め定めた基準値Irとを比較して鍋の数を算出する。
【0044】
電流設定補正回路CRは、電流設定信号Icの値を上記鍋算出回路PCによって算出した鍋の数に基づいて上記電流設定信号Icの値を補正して電流設定補正信号Crとして出力する。
【0045】
図7は、実施形態3の動作を説明する波形図であり、同図を用いて動作について説明する。時刻t=t0において、n個の誘導加熱コイルにn個の鍋が載置されていて、電力設定回路WAによって設定される図7(B)に示す、電力設定信号Waの値と同図(A)に示す出力電流検出信号Ct2の値とに基づいて、自動電流設定回路ICは同図(C)に示す電流設定信号Icを算出して設定する。
【0046】
時刻t=t1において、時限停止回路STから予め定めた期間(t1〜t2)の時限停止信号Stが出力すると電流制限回路IDの動作は停止する。このときに、鍋が1個取り除かれていると共振回路の負荷抵抗の値が小さくなるために、出力電流検出信号Ct2の値は図7(A)に示すように上昇する。
【0047】
続いて、鍋算出回路PCは、上昇する出力電流検出信号Ct2の値と鍋の数を算出する予め定めた基準値とを比較し、時刻t=t1〜t2の期間中において、減少した残りの鍋の数を算出する。例えば、t12において上記出力電流検出信号Ct2の値が上記基準値Ir1より大きく、t2において上記基準値Ir2より小さいときに鍋が1個減少したと判別して(n−1)個の鍋を算出し鍋算出信号Pcとして電流設定補正回路CRに入力する。
【0048】
電流設定補正回路CRは、電流設定信号Icの値を上記鍋算出回路PCによって算出した(n−1)個の鍋の数に基づいて上記電流設定信号Icの値を補正し、図7(A)に示す時刻t=t12において、電流設定補正信号Crを算出して出力する。
【0049】
時刻t=t2において、電流制限回路IDの動作が開始すると、上記電流設定補正信号Crと上記出力電流検出信号Ct2との誤差増幅を行なって電流制限信号Idとして出力する。このとき、図7(C)に示す電流制限信号Idの値は大きくなり、同図(D)に示す電力調整信号Pdの値より大きくなりV/FコンバータVFの制御信号Viには、上記電力調整信号Pdに代わって上記電流制限信号Idが入力され、電力制御から電流制御に切り換わる。そして、インバータ回路の駆動周波数を高くしてインバータ回路の出力電流が電流設定補正信号Crの値と略等しくなるように制御する。
【0050】
[実施の形態4]
図8は、実施形態4の電磁誘導加熱装置の電気接続図である。同図において、図1に示す本発明の電磁誘導加熱調理器の電気接続図と同一符号は、同一動作を行なうので説明は省略して相違する動作について説明する。
【0051】
鍋検出器S1乃至鍋検出器Snは押しボタン方式の検出器で誘導加熱コイルの中央に配置され、鍋が載置されたときに押しボタンが押されて上記誘導加熱コイルに鍋が載置されていることを検出する。また、上記鍋検出器には、非接触方式のホトインタラプト等を使用してもよい。
【0052】
鍋検出回路PKは、上記鍋検出器S1乃至鍋検出器Snによって検出される鍋をカウントし鍋数を鍋検出信号Pkとして出力する。
【0053】
電力制限設定回路WLは、図9に示すようにオペアンプと鍋検出信号Pkに応じて抵抗値を可変する可変抵抗VRとによって形成し、上記電力設定信号Waを上記鍋検出信号Pkの値に基づいてオペアンプのゲインを上記可変抵抗VRによって調整し電力制限設定信号Wlとして出力する。
【0054】
電力制限回路PLは、差動増幅回路の非反転入力端子に電力演算回路POからの電力演算信号Poが、反転入力端子には電力制限設定回路WLによって設定された電力制限設定信号Wlが入力され、両者の編差分を誤差増幅して電力制限信号Plとして出力する。
【0055】
図10は、実施形態4の動作を説明する波形図であり、同図を用いて動作について説明する。同図において、同図(A)は、上記鍋検出信号Pkを示し、同図(B)は、電力演算信号Poを示し、同図(C)は、電力制限信号Plを示し、同図(D)は、電力調整信号Pdを示し、同図(E)は、制御信号Viを示す。続いて、同図を用いて動作について説明する。
【0056】
時刻t=t0において、図10(D)に示す、予め定めた電力設定信号Waを設定し、続いて、電力制限設定回路WLは、n個の誘導加熱コイルL1乃至Ln全てに鍋が載置されたときの鍋検出信号Pkに値に基づいて、同図(B)に示す電力制限設定信号Wlを出力する。
【0057】
時刻t=t0〜t1において、n個の誘導加熱コイルにn個の鍋が載置されていて、電力調整回路は、電力設定信号Waと電力演算信号Poとの誤差増幅を行なって同図(D)に示す電力調整信号Pdとして出力する。このとき、同図(C)に示す電力制御信号Plの値は上記電力調整信号Pdの値より小さい。
【0058】
時刻t=t1〜t2において、鍋が1個取り除かれると共振回路の負荷抵抗が小さくなるために、図10(B)に示す電力演算信号Poは減少するために同図(D)に示す電力調整信号Pdも減少する。また、鍋検出器S1乃至Snは鍋の載置を判別し、鍋検出回路PKは、載置された鍋をカウントして鍋数(n−1)個として出力する。電力制限設定回路WLは、上記(n−1)個の値に基づいて電力設定信号Waを同図(B)に示す電力制限設定信号Wlに調整して出力する。
【0059】
時刻t=t2〜t3において、電力制限回路PLは、電力演算信号Poと電力制限設定信号Wlとの誤差増幅を行なって電力制限信号Plとして出力する。このとき、図10(C)に示す電力制限信号Plの値は同図(D)に示す電力調整信号Pdの値より大きくなり、V/FコンバータVFの制御信号Viには、上記電力調整信号Pdに代わって上記電力制限信号Plが入力され、インバータ回路の駆動周波数を高くなり上記電力演算信号Poと電力制限設定信号Wlとが略等しくなるように制御する。
【0060】
時刻t=t3〜t4において、鍋が更に1個取り除かれると共振回路の負荷抵抗がより小さくなるために、図10(D)に示す電力調整信号Pdは更に減少する。また、電力制限設定回路WLは、(n−2)個の値に基づいて電力設定信号Waを更に小さくして同図(B)に示す電力制限制限信号Wlを出力する。
【0061】
時刻t=t4以後において、電力制限回路PLは、電力演算信号Poと電力制限設定信号Wlとの誤差増幅を行なって電力制限信号Plとして出力する。このとき、図10(C)に示す電力制限信号Plの値は上記電力調整信号Pdの値より大きくなり、V/FコンバータVFの制御信号Viの値はより大きくなり、インバータ回路の駆動周波数を更に高くして上記電力演算信号Poと電力制限設定信号Wlとが略等しくなるように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態1の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【図2】電流制限回路、電力調整回路の詳細電気接続図である。
【図3】実施形態1の動作を説明する波形図である。
【図4】実施形態2の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【図5】実施形態2の動作を説明する波形図である。
【図6】実施形態3の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【図7】実施形態3の動作を説明する波形図である。
【図8】実施形態4の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【図9】電力制限回路、電力調整回路の詳細電気接続図である。
【図10】実施形態4の動作を説明する波形図である。
【図11】従来技術の電磁誘導加熱調理器の電気接続図である。
【符号の説明】
【0063】
CR 電流設定補正回路
C1 平滑コンデンサ
C2 共振コンデンサ
C3 共振コンデンサ
CT1 入力電流検出回路
CT2 出力電流検出回路
DC 駆動回路
D1 ダイオード
D2 ダイオード
DR1 整流回路
IC 自動電流設定回路
ID 電流制限回路
L1 誘導加熱コイル
L2 誘導加熱コイル
Ln 誘導加熱コイル
LED 表示回路
MIC 手動電流設定回路
PC 鍋算出回路
PD 電力調整回路
PK 鍋検出回路
PL 電力制限回路
PO 電力演算回路
PT1 入力電圧検出回路
ST 時限停止回路
TR1 第1スイッチング素子
TR2 第2スイッチング素子
VF V/Fコンバータ
WA 電力設定回路
Cr 電流設定補正信号
Ct1 入力電流検出信号
Ct2 出力電流検出信号
Ic 電流設定信号
Id 電流制限信号
Ip 過電流設定値値
Pd 電力調整信号
Pl 電力制限信号
Po 電力演算信号
Pt1 入力電圧検出信号
Tr1 第1スイッチング素子駆動信号
Tr2 第2スイッチング素子駆動信号
Vi 制御信号
Vf 周波数指令信号
Wa 電力設定信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振コンデンサと、前記共振コンデンサとで直列共振回路を形成する複数の直列接続された誘導加熱コイルと、前記複数の誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力電力値を演算して電力演算信号として出力する電力演算回路と、予め定めた入力電力値を設定して電力設定信号として出力する電力設定回路と、前記電力演算信号の値が前記電力設定信号の値と略等しくなるように前記インバータ回路の出力周波数を制御する電力制御回路とを具備した電磁誘導加熱調理器において、前記インバータ回路の出力電流を出力電流検出信号として検出する出力電流検出回路と、前記出力電流検出信号の値を表示する表示回路と、前記複数の誘導加熱コイル全てに鍋が載置されときの前記出力電流検出信号の表示値に基づいて電流設定信号を手動で設定する手動電流設定回路と、前記複数の誘導加熱コイルに載置された鍋の数が減少して前記出力電流検出信号の値が前記電流設定信号の値より大きくなったとき前記電流設定信号の値と略等しくなるように前記インバータ回路の出力周波数を制御する電流制限回路と、を具備したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記電流設定信号の値は前記電力設定信号の値に応じて予め定めた関係に従って自動設定され、この予め定めた関係は前記複数の誘導加熱コイル全てに鍋が載置されたときの各電力設定信号の値に対する前記出力電流検出信号の値に基づいて予め設定される自動電流設定回路を前記手動電流設定回路に置換して、具備したことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記電流制限回路の動作を予め定めた期間停止する時限停止回路と、前記電流制限回路の動作を停止したときの前記出力電流検出信号の値に基づいて前記誘導加熱コイルに載置された鍋の数を算出する鍋算出回路と、前記電流設定信号の値を前記算出した鍋の数に応じて補正する電流設定補正回路と、を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項4】
共振コンデンサと、前記共振コンデンサとで直列共振回路を形成する複数の直列接続された誘導加熱コイルと、前記複数の誘導加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力電力値を演算して電力演算信号として出力する電力演算回路と、予め定めた入力電力値を設定して電力設定信号として出力する電力設定回路と、前記電力演算信号の値が前記電力設定信号の値と略等しくなるように前記インバータ回路の出力周波数を制御する電力制御回路とを具備した電磁誘導加熱調理器において、前記複数の誘導加熱コイルに載置された鍋の数を検出する鍋検出回路と、前記複数の誘導加熱コイル全てに鍋が載置されたときの前記電力設定信号の値を前記検出した鍋の数に基づいて最適な電力制限設定信号を算出して自動設定する電力制限設定回路と、前記複数の誘導加熱コイルに載置された鍋の数が減少して前記電力演算信号の値が前記電力制限設定信号の値より大きくなったとき前記電力制限設定信号の値と略等しくなるように前記インバータ回路の出力周波数を制御する電力制限回路と、を具備したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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