説明

電線接続装置

【課題】電線接続部材を用いた電線の接続加工における作業効率を高める。
【解決手段】電線接続装置300は、一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線200が差し込まれた電線接続部材100の部材本体110を保持する本体ホルダ350と、常態位置と連結具押込位置との間で可動に設けられ、常態位置から連結具押込位置まで移動する過程で、本体ホルダ350に保持された部材本体の一方及び他方のピン挿入孔に一対のスルーピン121a,121bを挿通させて電線連結具120を押し込む連結具押込部370とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のハーネス回路において幹線から枝線を分岐する方法として、幹線から引き出した電線の導体と枝線となる電線の導体とを圧着接続加工するスプライスジョイント方式、並びに幹線の端末部に回路分岐用の汎用コネクタを設け、それを用いて幹線に含まれる電線と枝線となる電線とを分岐接続加工するジョイントコネクタ方式が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、各々、先端部にピン保持孔が構成された一対の電線を接続するために使用される電線接続部材であって、部材本体の一端及び他端のそれぞれに電線差込孔が形成されると共に、それらの電線差込孔にそれぞれ連通した一方及び他方のピン挿入孔が同一側を向くように間隔をおいて穿孔され、各電線差込孔から電線が差し込まれると、電線の先端部のピン保持孔を対応するピン挿入孔に位置合わせし、そして、一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線が差し込まれた状態で、電気的に接続された一対のスルーピンを有する電線連結具が部材本体に押し込まれると、各ピン挿入孔内において、スルーピンを対応する電線の先端部のピン保持孔に接触保持し、それによって一端側の電線と他端側の電線とを電気的に接続するように構成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−283330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された電線接続部材によれば、小型で簡易で信頼性が高い電線分岐を行うことができるものの、電線連結具の押し込みは手作業で行わなければならないため、接続加工の作業効率が低いという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、電線接続部材を用いた電線の接続加工における作業効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、各々、先端部にピン保持孔が構成された一対の電線を、
部材本体の一端及び他端のそれぞれに電線差込孔が形成されると共に、該一端及び他端の電線差込孔にそれぞれ連通した一方及び他方のピン挿入孔が同一側を向くように間隔をおいて穿孔され、該各電線差込孔から電線が差し込まれると、該電線の先端部のピン保持孔を対応するピン挿入孔に位置合わせし、そして、該一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線が差し込まれた状態で、電気的に接続された一対のスルーピンを有する電線連結具が、該部材本体に、一方のスルーピンが該一方のピン挿入孔に及び他方のスルーピンが該他方のピン挿入孔にそれぞれ挿入されるように押し込まれると、該各ピン挿入孔内において、該スルーピンを対応する電線の先端部のピン保持孔に接触保持し、それによって一端側の電線と他端側の電線とを電気的に接続するように構成された電線接続部材により、
接続する際に用いられる電線接続装置であって、
一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線が差し込まれた電線接続部材の部材本体を、一方及び他方のピン挿入孔が露出するように保持する本体ホルダと、
上記本体ホルダに保持された部材本体から離間した常態位置と、該本体ホルダに保持された部材本体に押し込まれた電線連結具に接触する連結具押込位置と、の間で可動に設けられ、常態位置から連結具押込位置まで移動する過程で、該本体ホルダに保持された部材本体に、一方及び他方のピン挿入孔に一対のスルーピンを挿通させて電線連結具を押し込む連結具押込部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線が差し込まれた部材本体を、一方及び他方のピン挿入孔が露出するように本体ホルダに保持し、連結具押込部を常態位置から連結具押込位置まで移動させると、その過程で、部材本体に電線連結具を押し込み、それによって一方及び他方のピン挿入孔に一対のスルーピンを挿通して接触保持させることができるので、簡単な操作で電線の接続を行うことができ、従って、電線接続部材を用いた電線の接続加工における作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る電線接続部材の斜視図である。
【図2】部材本体の断面図である。
【図3】本実施形態に係る電線の斜視図である。
【図4】本実施形態に係る電線接続部材を用いた電線の接続方法の説明図である。
【図5】本実施形態に係る電線接続部材を用いた電線の接続構造の断面図である。
【図6】本実施形態に係る電線接続装置の斜視図である。
【図7】下側部材の他端部の(a)平面図、(b)正面図、及び(c)左側面図である。
【図8】中間部材の他端部の(a)平面図、(b)正面図、及び(c)左側面図である。
【図9】上側部材の他端部の(a)平面図、(b)左側面図、及び(c)底面図である。
【図10】(a)〜(c)は電線接続装置の動作を示す説明図である。
【図11】(a)〜(c)は電線接続部材による電線の接続を電線接続装置を用いて行う方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(電線接続部材)
図1は本実施形態の電線接続部材100を示す。なお、本実施形態の電線接続部材100の詳細構成については特開2009−283330号公報に開示されている。
【0012】
本実施形態の電線接続部材100は、熱可塑性樹脂による樹脂成形品の部材本体110とそれに押し込んで取り付けるように構成された金属製の電線連結具120とからなる。
【0013】
図2は部材本体110を示す。
【0014】
部材本体110は細長い略矩形の板状に形成されている。部材本体110は、例えば、長さが25.7〜26.3mm、幅が6.8〜7.4mm、及び厚さが3.2〜3.8mmである。なお、以下では、図1の手前側及び図2の左側を「左」及び図1の奥側及び図2の右側を「右」として説明する。
【0015】
部材本体110の長さ方向の一端の左側部分には、幅方向に並ぶように配設された第1及び第2の一対の略矩形の長孔111a,111bが、それぞれ側辺に沿って長さ方向に延びると共に厚さ方向に貫通して形成されている。同様に、部材本体110の左側部分から中央部分を挟んだ右側部分にも、幅方向に並ぶように配設された第3及び第4の一対の略矩形の長孔111c,111dが、それぞれ側辺に沿って長さ方向に延びると共に厚さ方向に貫通して形成されている。部材本体110の中央部分の幅方向の一方側には、左側部分の第2の長孔111bと他方側部分の第4の長孔111dとの間で挟まれた位置に、成型時の引け防止用の貫通孔112が形成されている。また、その貫通孔112の長さ方向の両側のそれぞれには一方の表面に開口した有底孔113が形成されている。
【0016】
部材本体110の左側部分には、幅方向に並ぶように配設された第1及び第2の一対の矩形の電線差込孔114a,114b(一端の電線差込孔)が、それぞれ左側面から長さ方向に延びて、対応する第1又は第2の長孔111a,111bに連通し、続いて中央部分では孔径が狭くなるように形成されている。同様に、部材本体110の右側部分にも、幅方向に並ぶように配設された第3及び第4の一対の矩形の電線差込孔114c,114d(他端の電線差込孔)が、それぞれ右側面から長さ方向に延びて、対応する第3又は第4の長孔111c,111dに連通し、続いて中央部分では孔径が狭くなるように形成されている。なお、部材本体110の左側部分の第1の電線差込孔114a及び右側部分の第3の電線差込孔114cは、幅方向の一方側に設けられて、中央部分の内部で連通している。同様に、部材本体110の左側部分の第2の電線差込孔114b及び右側部分の第4の電線差込孔114dも、幅方向の他方側に設けられて、中央部分の内部で連通している。
【0017】
部材本体110の第1〜第4の長孔111a〜111dのそれぞれの内部には、長さ方向の外側の内壁における幅方向の側辺寄り部分を基端として中央側に延びるように形成された片持ち梁状の板バネ部115が設けられている。各板バネ部115には、幅方向内向きに突出した係合爪115aが電線差込孔114a〜114d側に張り出すように設けられている。
【0018】
部材本体110の引け防止用の貫通孔112が形成された側と反対側の側面には、中央部分に対応するように凹部116が形成されており、その底部に、長さ方向に間隔をおいて同一側を向いて配設された一方及び他方の円形のピン挿入孔117a,117bが、それぞれ電線差込孔114a〜114dと交差するように幅方向に延びて、一方が第1及び第2の電線差込孔114a,114bに連通すると共に一方の有底孔113に連通し、また、他方が第3及び第4の電線差込孔114c,114dに連通すると共に他方の有底孔113に連通するように穿孔されている。なお、凹部116には、一方及び他方のピン挿入孔117a,117bを仕切るように隔壁118が設けられている。
【0019】
電線連結具120は、導電性の帯状の金属板がコの字状に屈曲されて形成され、両先端部のそれぞれが幅方向に両側から折り畳まれて先端が尖った針状の断面正方形のスルーピン121a,121bに構成され、それらのスルーピン121a,121bが帯状の連結部122で連結されて電気的に接続されている。それらの一対のスルーピン121a,121bの間隔、つまり、連結部122の長さは、一方及び他方のピン挿入孔117a,117b間の間隔に一致するように設定されている。スルーピン121a,121bは、最大外径(断面形状の正方形の対角線の長さ)が部材本体110のピン挿入孔117a,117bの孔径よりも小さく形成されている。連結部122の両端角の幅方向の中央にはそれぞれ欠損部123が設けられている。
【0020】
(電線)
図3は本実施形態の電線200を示す。なお、本実施形態の電線200の詳細構成についても特開2009−283330号公報に開示されている。
【0021】
本実施形態の電線200は、電線本体210とその先端部に取り付けられた電線端子220とで構成されている。
【0022】
電線本体210は、軟銅線や硬銅線の撚線からなる導体211が樹脂の絶縁層212で被覆されたいわゆる絶縁電線で構成されており、先端から所定長さで絶縁層212が剥離されて導体211が露出している。線本体の太さは例えば0.4〜1.7mmである。
【0023】
電線端子220は、導電性の金属板から所定の細長形状が打ち抜かれ、それが幅方向の両側から屈曲されて形成されており、具体的に、電線本体210側から先端側に向かって固定部221、圧着部222、突出部223、及び接続部224が構成されている。電線端子220は、固定部221が絶縁層212の端部に両側から巻き付くように取り付けられて電線本体210に固定され、そして、圧着部222が露出した導体211に両側から巻き付いて噛み込むように圧着されて導体211に電気的に接続されている。突出部223は、両側から断面ロの字を形成するように屈曲して部分的に厚さ方向の寸法が大きくなるように形成されている。接続部224は、両側端部が屈曲されて断面コの字状に形成されており、先端側の底面が穿孔されて円筒部225が形成され、その円筒部225の円筒孔によって電線200の先端部のピン保持孔226が構成されている。ピン保持孔226は、孔径がスルーピン121a,121bの最大外径(断面形状の正方形の対角線の長さ)と同一乃至若干小さく形成されている。
【0024】
(電線の接続方法)
電線接続部材100を用いて電線200を接続する際には、まず、図4に示すように、電線接続部材100の部材本体110の各電線差込孔114a〜114dに、電線200を、電線端子220の突出部223が部材本体110の側辺側となるように位置付けて差し込む。このとき、電線200は、電線端子220の突出部223が板バネ部115を側辺側に押圧しつつ挿入され、続いて、接続部224が中央部分に挿入されると共に突出部223の基端側の端が板バネ部115の係合爪115aを乗り越えると、板バネ部115が内側に弾性復帰する。電線差込孔114a〜114dは中央部分では孔径が狭くなっていることから、接続部224は挿通可能であるが、突出部223は挿通不可であるために長孔111a〜111dの内壁に当接し、また、板バネ部115の内側への弾性復帰によって係合爪115aが圧着部222に噛み込んで突出部223に係合することにより、突出部223が長孔111a〜111dの内壁と係合爪115aとの間に位置規制され、電線200の部材本体110からの抜け止め構造が構成される。また、中央部分に挿入された接続部224のピン保持孔226はピン挿入孔117a,117bに同軸に位置付けられる。
【0025】
そして、部材本体110の一方及び他方のピン挿入孔117a,117bに電線連結具120の一対のスルーピン121a,121bを挿入し、連結部122を部材本体110側に押圧することにより押し込む。このとき、各スルーピン121a,121bは、最大外径が対応するピン挿入孔117a,117bの孔径よりも小さく形成されているので、ピン挿入孔117a,117bには容易に挿入されるものの、最大外径がピン保持孔226の孔径と同一乃至若干大きく形成されているので、ピン保持孔226から挿入抵抗を受ける。しかしながら、連結部122の部材本体110側への押圧により、スルーピン121a,121bは、角部がピン保持孔226の内壁に摺接して挿入され、ピン保持孔226に内嵌め状に保持される。
【0026】
以上のようにして、図5に示すように、電線接続部材100により、部材本体110の第1及び第2の電線差込孔114a,114bに差し込まれた2本の電線200と第3及び第4の電線差込孔114c,114dに差し込まれた2本の電線200とが電線連結具120を介して電気的に接続されることとなる。
【0027】
(電線接続装置)
図6は本実施形態の電線接続装置300を示す。本実施形態の電線接続装置300は、ハンディータイプのステープラーと同様の操作により、電線接続部材100による電線200の接続を行うものである。
【0028】
本実施形態の電線接続装置300は、各々、金属板をプレス加工して形成された下側部材310(第1部材)、中間部材320(第2部材)、及び上側部材330(第3部材)を有する。
【0029】
下側部材310は、細長い長方形の底面部の4辺のそれぞれに連続して立ち上がるように側面部が形成されて上方に開口した細長い凹状部材で構成されている。中間部材320は、細長い長方形の上面部の幅方向両側の長辺のそれぞれに連続して垂下するように側面部が形成された細長い断面コの字状部材で構成されている。上側部材330は、細長い長方形の上面部の4辺のそれぞれに連続して垂下するように側面部が形成されて下方に開口した細長い凹状部材で構成されている。
【0030】
下側部材310、中間部材320、及び上側部材330のそれぞれは、長さ方向の一端部では側面部の高さが高く形成され、一方、他端部では側面部の高さが低く形成されている。そして、下側部材310の一端部の幅方向両側の側面部間に、中間部材320が、その一端部の側面部が挟持されるように設けられ、また、上側部材330の一端部の幅方向両側の側面部間に、下側部材310が、その一端部の幅方向両側の側面部が挟持されるように設けられ、そして、それらの一端部を幅方向に貫通するように設けられた支持軸340によって共通に軸支されている。従って、下側部材310、中間部材320、及び上側部材330のそれぞれは、一端部が軸支端部に、また、他端部が自由端部にそれぞれ構成されている。
【0031】
下側部材310の他端部の自由端部には、図7(a)〜(c)に示すように、金属製の本体ホルダ350が設けられている。
【0032】
本体ホルダ350は、幅方向に長く形成された矩形の天板部351aの下側中央に矩形の取付部351bが一体に形成された正面視がT字ブロック状の基材351を有する。基材351の天板部351aの上面の後端には幅方向に延びるように設けられた突条351cが上方に突出して形成されている。基材351は、取付部351bが下側部材310の自由端部に嵌め入れられ、幅方向両側の側面部からそれぞれボルトB1が通されて下側部材310に取付固定されている。基材351の天板部351aの一方の側面には下死点ストッパnを構成するネジが締め込まれている。
【0033】
本体ホルダ350は、幅方向に長く形成された矩形ブロック状の第1ホルダ構成材352を有する。第1ホルダ構成材352は、前面に浅底コの字状に凹部352aが形成されており、また、幅方向両側の下部のそれぞれに前方に突出した突起352bが形成されている。第1ホルダ構成材352は、基材351の天板部351a上に後端が突条351cに沿うように位置決めされると共に、突起352bの先端が基材351の前端に位置付けられるように設けられ、上面の幅方向両側のそれぞれからボルトB2が通されて基材351に取付固定されている。
【0034】
本体ホルダ350は、幅方向に長く形成された正面視がコの字板状の第2ホルダ構成材353を有する。第2ホルダ構成材353は、コの字の開口が上方を向くように基材351の前面に当接して設けられ、前面の幅方向両側のそれぞれからボルトB3が通されて基材351に取付固定されている。
【0035】
以上の構成の本体ホルダ350では、基材351、第1ホルダ構成材352の凹部352a及び突起352b、並びに第2ホルダ構成材353によって区画される部分によって本体保持部354が構成され、その本体保持部354において電線接続部材100の部材本体110の保持が可能になっている。従って、凹部352aの幅及び突起352b間の間隔が部材本体110の長さに、並びに凹部352aの底と第2ホルダ構成材353との間隔が部材本体110の厚さに略等しくなるようにそれぞれ設定されている。また、その両側の第1ホルダ構成材352の前面部及び突起352b、並びに第2ホルダ構成材353によって区画される部分によって電線引出部355が構成され、部材本体110から延びる電線200の引き出しが可能になっている。
【0036】
中間部材320の自由端部には、図8(a)〜(c)に示すように、金属製の本体押圧固定部360が設けられている。
【0037】
本体押圧固定部360は、幅広の固定部本体361の中間部材320側に幅狭の取付部362が一体に構成された平面視がT字板状に形成されている。固定部本体361には、幅方向に延びる矩形孔363が貫通して形成されている。本体押圧固定部360は、取付部362が中間部材320の自由端部に前端から嵌め入れられ、上面部からボルトB4が通されて中間部材320に取付固定されている。
【0038】
上側部材330の自由端部には、図9(a)〜(c)に示すように、金属製の連結具押込部370が設けられている。
【0039】
連結具押込部370は、幅狭の矩形板状の押込片371の上側に幅広の矩形ブロック状の取付部372が一体に構成された正面視がT字板状に形成されている。押込片371の下端両側のそれぞれには押込爪371aが垂下するように形成されている。連結具押込部370は、取付部372が上側部材330の自由端部に嵌め入れられ、前面側の側面部からボルトB5が通されて上側部材330に取付固定されている。
【0040】
図10(a)〜(b)は電線接続装置300の断面を示す。
【0041】
下側部材310と中間部材320との間には、軸支位置から自由端部側で且つ長さ方向の中央よりやや軸支端部側の位置に、下側コイルスプリング380がそれらの間を弾性的に離間させるように介装されている。また、中間部材320の上面部には、垂下ロッド材321が下側部材310側に延びて下側コイルスプリング380内に挿通されるように設けられている。なお、垂下ロッド材321は、中間部材320に挿通されたボルトで構成されている。
【0042】
下側部材310の軸支端部側の幅方向両側の側面部間には、軸支位置と下側コイルスプリング380が設けられた位置との間の位置に、横軸ロッド材311が掛け渡されるように設けられている。また、中間部材320の軸支端部側の幅方向両側の側面部のそれぞれには、横軸ロッド材311の外径よりも孔径が大きい円孔322が形成され、そこに横軸ロッド材311が挿通されている。
【0043】
中間部材320と上側部材330との間には、下側コイルスプリング380が設けられた位置より自由端部側で且つ長さ方向の中央よりやや軸支端部側の位置に、上側コイルスプリング390がそれらの間を弾性的に離間させるように介装されている。上側コイルスプリング390は下側コイルスプリング380よりもバネ定数が高い。また、中間部材320の上面部には、起立ロッド材323が上側部材330側に延びて上側コイルスプリング390内に挿通されるように設けられている。なお、起立ロッド材323は、中間部材320に挿通されたボルトに樹脂キャップが被せられたもので構成されている。
【0044】
中間部材320には、金属板をL字状に屈曲させたL字材324が、長さ方向の中央よりやや自由端部側の位置に、その角部が幅方向に沿うように位置付けられ、そして、一方の片324aが上面部に当接すると共に前方に延び、また、一方の片324aからボルトB6が通されて中間部材320に取付固定され、且つ他方の片324bが上側部材330側に延びるように設けられている。また、他方の片324bには、先端が丸く形成されたピン324cが前側から貫通状に設けられている。
【0045】
上側部材330には、金属板をコの字状に屈曲させたコの字材331が、L字材324が設けられた位置の直ぐ軸支端部側に、その一方の角部が幅方向に沿うように位置付けられ、そして、一方の片331aが上側部材330の下面に当接すると共に後方に延び、上側部材330の上面側からボルトB7が通されて取付固定され、且つ中間の片331bが中間部材320側に延び、他方の片331cも後方に延びるように設けられている。また、中間部材320には、コの字材331の他方の片331cに対応するように矩形孔325が形成されている。そして、コの字材331は、中間の片331bが矩形孔325に挿通され、他方の片331cが矩形孔325の周縁部に係合可能に構成されている。中間の片331bの上方部には、L字材324に設けられたピン324cの外径よりも孔径が小さい円孔331dが形成されている。
【0046】
以上の構成から、無負荷の自然状態においては、下側コイルスプリング380により下側部材310と中間部材320との間にそれらを離間させるように弾性力が作用すると共に、上側コイルスプリング390により中間部材320と上側部材330との間にそれらを離間させるように弾性力が作用し、且つ中間部材320の側面部の円孔322の下縁部が横軸ロッド材311に当接すると共に、コの字材331の他方の片331cが矩形孔325の周縁部に係合することにより、下側部材310及び中間部材320の離間した位置関係、並びに中間部材320及び上側部材330の離間した位置関係が保持され、その結果として、下側部材310及び上側部材330の離間した位置関係も保持される。従って、このときの各部材の位置が下側部材310及び中間部材320相互、中間部材320及び上側部材330相互、並びに下側部材310及び上側部材330の離間位置に相当する。
【0047】
また、上側部材330の自由端部に上方から負荷を加えると、上側コイルスプリング390よりも下側コイルスプリング380の方がバネ定数が低いことから、上側部材330が中間部材320と一緒に、それらの離間位置を保持した状態で、支持軸340を中心として下側コイルスプリング380の弾性に抗して下側部材310側に回転し、垂下ロッド材321の先端が下側部材310に当接すると共に、中間部材320の側面部の円孔322の上縁部が横軸ロッド材311に当接する位置において、中間部材320の下側部材310側への移動が規制される。従って、この位置が下側部材310及び中間部材320相互の近接位置に相当する。このとき、下側部材310に設けられた本体ホルダ350の本体保持部354の上方に中間部材320に設けられた本体押圧固定部360が位置付けられる。
【0048】
さらに、上側部材330の自由端部に続けて上方から負荷を加えると、中間部材320が下側部材310に対して近接位置を保持した状態で、上側部材330が支持軸340を中心としてコの字材331の矩形孔325の周縁部への係合を解除すると共に、上側コイルスプリング390の弾性に抗して下側部材310側に回転し、次いで、起立ロッド材323の先端及びL字材324の他方の片324bの先端が上側部材330に当接する位置において、上側部材330の下側部材310側への移動が規制される。従って、この位置が下側部材310及び上側部材330相互、並びに中間部材320及び上側部材330相互の近接位置に相当する。このとき、上側部材330に設けられた連結具押込部370の押込片371が中間部材320に設けられた本体押圧固定部360の矩形孔363に挿通されて押込爪371aのみが下方に突出した状態となる。また、L字材324に設けられたピン324cの先端がコの字材331に接触して近接位置に位置付けられた際に円孔331dに嵌り、上側部材330が受ける抵抗が低減される。
【0049】
従って、下側部材310、中間部材320、及び上側部材330は、いずれの一対についても、一方が他方に対して離間した離間位置と一方が他方に対して近接した近接位置との間で回転可能に設けられた構成となっている。
【0050】
次に、電線接続部材100による電線200の接続を電線接続装置300を用いて行う方法について説明する。
【0051】
まず、電線接続部材100の部材本体110の電線差込孔114a〜114dに電線200を差し込む。この方法は、上記の電線接続部材100を用いた電線200の接続方法で説明した通りである。
【0052】
次いで、電線200を差し込んだ部材本体110を下側部材310の本体ホルダ350の本体保持部354に嵌め入れいて保持し、部材本体110から延びる電線200を電線引出部355から引き出す。このとき、部材本体110の一方及び他方のピン挿入孔117a,117bが形成された側が上側となるようにする。
【0053】
次いで、本体ホルダ350に保持した部材本体110の一方及び他方のピン挿入孔117a,117bに電線連結具120の一対のスルーピン121a,121bを挿通させる。このとき、上記の通り、スルーピン121a,121bの最大外径がピン挿入孔117a,117bの孔径よりも小さく且つ電線端子220のピン保持孔226の孔径と同一乃至若干大きく形成されているので、図11(a)に示すように、電線連結具120は、スルーピン121a,121bの先端だけがピン保持孔226に挿入されて止まった状態となる。このときの本体押圧固定部360及び連結具押込部370の位置が、それらが本体ホルダ350に保持された部材本体110から離間した常態位置に相当する。従って、本体押圧固定部360及び連結具押込部370の常態位置は中間部材320及び上側部材330の離間位置と一致する。
【0054】
続いて、電線接続装置300を片手で握って上側部材330の自由端部に上方から負荷を加える。このとき、図11(b)に示すように、中間部材320に設けられた本体押圧固定部360が、上側部材330に設けられた連結具押込部370に連動して同じ向き、つまり、本体ホルダ350側に移動し、連結具押込部370が電線保持具に接触する前に、本体ホルダ350に保持された部材本体110に当接して本体ホルダ350側に押圧固定する。また、一方及び他方のピン挿入孔117a,117bは矩形孔363から露出し、電線連結具120が矩形孔363内に収容された状態となる。このときの本体押圧固定部360の位置が、本体ホルダ350に保持された部材本体110を、一方及び他方のピン挿入孔117a,117bを露出させた状態で、本体ホルダ350側に押圧固定する本体押圧固定位置に相当する。従って、本体押圧固定部360は、本体ホルダ350と連結具押込部370との間において、常態位置と本体押圧固定位置との間で可動に設けられ、連結具押込部370が常態位置から連結具押込位置まで移動する際に、連結具押込部370に連動して同じ向きに移動し、連結具押込部370が電線連結具120に接触する前に、本体ホルダ350に保持された部材本体110に当接して押圧固定する構成となっている。なお、本体押圧固定部360の本体押圧固定位置は必ずしも下側部材310及び中間部材320相互の近接位置とは一致しない。
【0055】
そして、上側部材330の自由端部にさらに上方から負荷を加える。このとき、図11(c)に示すように、上側部材330に設けられた連結具押込部370が本体ホルダ350側に移動し、その移動の過程で、押込片371が矩形孔363に挿通されて、押込爪371aが矩形孔363内に収容された電線連結具120の欠損部123に嵌り、電線連結具120を下方に押圧して部材本体110に押し込んで、電線端子220の一対のピン保持孔226に電線連結具120の一対のスルーピン121a,121bを挿入させて内嵌め保持させる。この際、L字材324に設けられたピン324cの先端がコの字材331に接触して円孔331dに嵌ると、上側部材330が受ける抵抗が低減されるため、上側部材330が中間部材320に対して近接位置に位置付けられたことが確認できることから、それによって確実な電線連結具120の部材本体110への押し込み加工を行うことができる。このときの連結具押込部370の位置が、本体ホルダ350に保持された部材本体110に押し込まれた電線連結具120に接触する連結具押込位置に相当する。従って、連結具押込部370は、常態位置と連結具押込位置との間で可動に設けられ、その常態位置から連結具押込位置まで移動する過程で、本体ホルダ350に保持された部材本体110に、一方及び他方のピン挿入孔117a,117bに一対のスルーピン121a,121bを挿通させて電線連結具120を押し込む構成となっている。なお、連結具押込部370の連結具押込位置は、中間部材320及び上側部材330相互の近接位置と一致するが、必ずしも下側部材310及び上側部材330相互の近接位置とは一致しない。また、下死点ストッパnによって上側部材330によるピン挿入孔117a,117bへのスルーピン121a,121bの圧入深さが規制され、それによって、それらの圧入深さのバラツキ低減が図られると共に、電線連結具120の連結部122が部材本体110の隔壁118に接触することによる変形が防止される。
【0056】
以上の本実施形態に係る電線接続装置300を用いれば、左側部分(一端)及び右側部分(他端)の電線差込孔114a〜114dのそれぞれに電線200が差し込まれた部材本体110を、一方及び他方のピン挿入孔117a,117bが露出するように本体ホルダ350に保持し、連結具押込部370を常態位置から連結具押込位置まで移動させると、その過程で、部材本体110に電線連結具120を押し込み、それによって一方及び他方のピン挿入孔117a,117bに一対のスルーピン121a,121bを挿通して接触保持させることができるので、簡単な操作で電線200の接続を行うことができ、従って、電線接続部材100を用いた電線200の接続加工における作業効率を高めることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、電線接続装置300をハンディータイプのステープラーのような構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、同様の機能を有する本体ホルダ及び連結具押込部を備えるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は電線接続装置について有用である。
【符号の説明】
【0059】
100 電線接続部材
110 部材本体
114a〜114d 電線差込孔
117a,117b ピン挿入孔
120 電線連結具
121a,121b スルーピン
200 電線
226 ピン保持孔
300 電線接続装置
310 下側部材(第1部材)
320 中間部材(第2部材)
330 上側部材(第3部材)
350 本体ホルダ
360 本体押圧固定部
370 連結具押込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、先端部にピン保持孔が構成された一対の電線を、
部材本体の一端及び他端のそれぞれに電線差込孔が形成されると共に、該一端及び他端の電線差込孔にそれぞれ連通した一方及び他方のピン挿入孔が同一側を向くように間隔をおいて穿孔され、該各電線差込孔から電線が差し込まれると、該電線の先端部のピン保持孔を対応するピン挿入孔に位置合わせし、そして、該一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線が差し込まれた状態で、電気的に接続された一対のスルーピンを有する電線連結具が、該部材本体に、一方のスルーピンが該一方のピン挿入孔に及び他方のスルーピンが該他方のピン挿入孔にそれぞれ挿入されるように押し込まれると、該各ピン挿入孔内において、該スルーピンを対応する電線の先端部のピン保持孔に接触保持し、それによって一端側の電線と他端側の電線とを電気的に接続するように構成された電線接続部材により、
接続する際に用いられる電線接続装置であって、
一端及び他端の電線差込孔のそれぞれに電線が差し込まれた電線接続部材の部材本体を、一方及び他方のピン挿入孔が露出するように保持する本体ホルダと、
上記本体ホルダに保持された部材本体から離間した常態位置と、該本体ホルダに保持された部材本体に押し込まれた電線連結具に接触する連結具押込位置と、の間で可動に設けられ、常態位置から連結具押込位置まで移動する過程で、該本体ホルダに保持された部材本体に、一方及び他方のピン挿入孔に一対のスルーピンを挿通させて電線連結具を押し込む連結具押込部と、
を備えた電線接続装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電線接続装置において、
上記本体ホルダと上記連結具押込部との間において、該本体ホルダに保持された部材本体から離間した常態位置と、該本体ホルダに保持された部材本体を、一方及び他方のピン挿入孔を露出させた状態で、該本体ホルダ側に押圧固定する本体押圧固定位置と、の間で可動に設けられ、該連結具押込部が常態位置から連結具押込位置まで移動する際に、該連結具押込部に連動して同じ向きに移動し、該連結具押込部が電線連結具に接触する前に、該本体ホルダに保持された部材本体に当接して押圧固定する本体押圧固定部をさらに備えた電線接続装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電線接続装置において、
各々、細長く形成されると共に一端部で共通に軸支され、いずれの一対についても、一方が他方に対して離間した離間位置と、一方が他方に対して近接した近接位置と、の間で回転可能に設けられた第1、第2、及び第3部材を有し、
上記第1部材の他端部に上記本体ホルダ、上記第2部材の他端部に上記連結具押込部、及び上記第3部材の他端部に上記本体押圧固定部がそれぞれ構成された電線接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−119097(P2012−119097A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265683(P2010−265683)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】