説明

電解コンデンサの電解液捕集容器、電解コンデンサ、及びこれを用いた電気機器並びに電子機器

【課題】 電解コンデンサの破損等の心配がなく、防爆弁の作動時に噴出する駆動用電解液の気化ガス等を迅速に吸収するができ、品質にバラツキの少ない吸収材を用いた電解コンデンサに取り付けられる電解液の捕集容器を提供する。
【解決手段】 11はアルミ電解コンデンサであり、この電解コンデンサ11は、アルミニウムよりなる有底筒状の金属ケース12内にコンデンサ素子を内蔵してなる。この金属ケース12の天板部12aには略十字形状の薄肉部からなる防爆弁14が形成されている。このような電解コンデンサ11の防爆弁14を覆うように電解液捕集容器1を勘合する。この電解液捕集容器1は、円筒状のケーシング2と、このケーシング2内に収容された吸収材3とからなる。このケーシング2の天板部(有底部)2aには略十字形状の薄肉部からなる圧力弁4が形成されていて、このケーシング2と電解コンデンサ11の天板部12aとの間の空間部Sに、吸収材3が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に使用される内圧が上昇して爆発することを防止する防爆弁を備える電解コンデンサに取り付けられる電解液の捕集容器に関する。また、本発明は、この捕集容器を備えた電解コンデンサ、及びこの電解コンデンサを有する電気機器並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ電解コンデンサは、過電圧や逆電圧が印加されたり、寿命や故障等によって過大な電流が流れたりすると、温度上昇によりコンデンサ素子に含浸された駆動用電解液を構成する有機溶媒が気化し又は電解液が熱分解して気化ガスが発生したり、電解液が電気化学反応により分解して水素ガスや気化ガスが発生したりするため、アルミニウムよりなる金属ケースの内圧が上昇する。
【0003】
このとき、ガスの逃げ道がないと、金属ケースの内圧が金属ケースによる封口力を上回れば爆発に至るため、従来のアルミ電解コンデンサでは、通常、金属ケースの天板部に薄肉部よりなる防爆弁が設けられている。
【0004】
このように、金属ケースの内圧が異常に上昇したときには、この防爆弁が開弁して前述した金属ケース内における駆動用電解液の気化ガスや液滴、あるいは電気分解により発生した水素等のガスが外部に流出するため、電解コンデンサは爆発することなく、安全に故障に至るのである。
【0005】
しかしながら、上記構成によれば、駆動用電解液が外部に噴出するため、この電解コンデンサをセットした基板や他の電子部品に付着して、ショートやトラッキング等の電気的異常が引き起こされるという問題点がある。また、防爆弁から噴出する駆動用電解液の噴出は白煙のように視認されるので、使用者に発火によるものであるかの誤解を与える可能性もある。
【0006】
上記問題点を解決するために、伸縮可能なキャップを取り付けた電解コンデンサが提案されている(特許文献1参照)。また、電解コンデンサの防爆弁の上方に駆動用電解液を吸収する性質および通気性を有し、かつ難燃化処理を施した吸収材を配置したアルミ電解コンデンサが提案されている(特許文献2参照)。さらに、防爆弁の上方に駆動用電解液をゲル化する性質を有する粒状のゲル化剤を配置したアルミ電解コンデンサも提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
さらに、本出願人は、硬質材からなるケーシング内に液状又はガス状物質を吸収可能な吸収材を収容してなり、この捕集容器を防爆弁を覆うように金属製の電解コンデンサに嵌め込むことにより、前記防爆弁の開成時に駆動用電解液等を捕集する電解コンデンサの電解液捕集容器を提案している(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−286969号公報
【特許文献2】特開平6−89835号公報
【特許文献3】特開平5−13289号公報
【特許文献4】特開2010−283005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された電解コンデンサは、単に伸縮可能なキャップを設けて駆動用電解液の気化ガスや水素ガスを吸収する空間を設けただけであるので、ガスの逃げ道がないため、キャップ内の内圧が上昇して破損することがある。また、冷却後は駆動用電解液が液体に戻ってしまい、この電解液が逆流してショートを引き起こすおそれがあるという問題点がある。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3に記載された電解コンデンサは、駆動用電解液の気化ガスを吸収したりゲル化したりすることで固定化するものであるが、気化ガスの吸収速度又はゲル化速度が十分に速くないため、噴出するガス量によってはガスの吸収が間に合わず漏洩する場合があり、また水素ガス等の吸収には適しないという問題点がある。
【0011】
さらに、特許文献4に記載された電解液捕集容器では、ケーシングの有底部に複数個の小孔を形成することで、ケーシング内の圧力が必要以上の圧力とならないようにしているが、ケーシング内が外部環境と連通することになるので、吸収材が吸湿や乾燥、あるいは水濡れなどにより吸収材の品質にバラツキが出るおそれがある。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明は、電解コンデンサの破損等の心配がなく、防爆弁の作動時に噴出する駆動用電解液の気化ガス等を迅速に吸収するができ、品質にバラツキの少ない吸収材を用いた電解コンデンサに取り付けられる電解液の捕集容器を提供することを目的とする。また、本発明は、この捕集容器を備えた安全性の高い電解コンデンサ、及びこの電解コンデンサを有する電気機器並びに電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、駆動用電解液を含浸させたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を内蔵する金属ケースと、前記コンデンサ素子より導出された一対のリード線とを備え、前記金属ケースの一側面に防爆弁を形成し、電気的異常時に前記防爆弁が開成して駆動用電解液等を噴出する電解コンデンサの電解液の捕集容器であって、該捕集容器は、硬質材からなるケーシング内に液状又はガス状物質を吸収可能な吸収材を収容してなり、前記ケーシングに圧力弁が形成されていて、この捕集容器を前記防爆弁を覆うように前記金属製の電解コンデンサに嵌め込むことにより、前記防爆弁の開成時に駆動用電解液等を捕集することを特徴とする電解コンデンサの電解液捕集容器を提供する(発明1)。
【0014】
上記発明(発明1)によれば、電解コンデンサに過電圧や逆電圧が印加されたり、寿命故障等によって過大な電流が流れたりすると、温度上昇によりコンデンサ素子に含浸された駆動用電解液を構成する有機溶媒が気化し又は電解液が熱分解して気化ガスが発生したり、電解液が電気化学反応により分解されて水素ガスや気化ガスが発生したりして、これらにより金属ケースの内圧が上昇する。これにより防爆弁が作動し、この防爆弁より気化した駆動用電解液と駆動用電解液の液滴と水素等のガスが大量に噴出されることになるが、前記防爆弁を覆うように捕集容器を前記金属製の電解コンデンサに嵌め込んでいるので、該捕集容器のケーシング内に収容された吸収材に迅速に吸収され、固定化することができる。これらにより電解液の逆流による短絡を予防することができる。このとき、前記ケーシングに圧力弁が形成されているので、防爆弁より噴出した駆動用電解液の気化ガスや水素等のガスがケーシング内に流入し、該ケーシング内が所定の内圧を超えたら圧力弁が作動し、この圧力弁より排出することにより、ケーシング内が過度の圧力になって破損したり、電解コンデンサから捕集容器が外れたりするのを防止することができる。一方、通常時には、圧力弁が開成していないので、ケーシングがほぼ密封状態にあるため、吸収材の吸湿や乾燥を防止したり、水に濡れたときでも浸水を防止することができるので、吸収材の性能低下を防止し、しかも吸収材の漏洩リスクがないという効果も奏する。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記ケーシングが金属製であるのが好ましい(発明2)。
【0016】
上記発明(発明2)によれば、内圧上昇に対して強度的にも破損等のおそれがなく、かつ耐熱性も高いので電解コンデンサの発熱によって変形したり変質したりすることもない。
【0017】
上記発明(発明1,2)においては、前記吸収材が、無機多孔質素材であるのが好ましい(発明3)。
【0018】
上記発明(発明3)によれば、無機多孔質素材は、耐熱性が高く、電解コンデンサから噴出する150℃以上の高温の液状物質又はガス状物質に対しても安定した吸収性能を保つことができる。
【0019】
上記発明(発明1〜3)においては、前記吸収材が、重曹を含有するのが好ましい(発明4)。
【0020】
上記発明(発明4)によれば、異常電圧時の温度上昇により吸収材の水分が脱水し、その水が重曹と反応して炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスによりケーシング内の圧力が上昇し、電解液が多量に噴出する前に圧力弁が作動することで、電解液のリーク量の低減を図ることができる。
【0021】
上記発明(発明1〜4)においては、前記捕集容器と前記電解コンデンサとの嵌合部の少なくとも一部をゴムまたはエラストマーで被覆して該捕集容器を嵌め込むのが好ましい(発明5)。
【0022】
上記発明(発明5)によれば、前記捕集容器と前記電解コンデンサとの嵌合部との間のシール性が向上し、嵌合部からの電解液の漏洩を好適に抑制することができる。
【0023】
第二に本発明は、発明1〜5のいずれかに記載の電解液の捕集容器を備えたことを特徴とする電解コンデンサを提供する(発明6)。
【0024】
上記発明(発明6)によれば、電解コンデンサから気化した駆動用電解液の外部への流出が大幅に低減することができ、汚れや発火等のない安全性の高い電解コンデンサとすることができる。
【0025】
第三に本発明は、発明6の電解コンデンサを備えたことを特徴とする電気機器を提供する(発明7)。そして、第四に本発明は、発明6の電解コンデンサを備えたことを特徴とする電子機器を提供する(請求項8)。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電解液の捕集容器を、電解コンデンサの防爆弁を覆うように嵌め込むことにより、電解コンデンサに過電圧や逆電圧が印加されたり、寿命故障等によって過大な電流が流れたりして、駆動用電解液を構成する有機溶媒が気化し又は電解液が熱分解して気化ガスが発生したり、電解液が電気化学反応により分解されて水素ガスや気化ガスが発生したりして、これらが噴出したとしても該捕集容器のケーシング内に収容された吸収材に水素ガスや気化ガスが迅速に吸収され、固定化することができるので、回路基板を汚したりすることがない。また、電解液等が白煙状に噴出することもなくなり、使用者に発火によるものであるかの誤解を与えることもない。さらに、防爆弁より噴出した駆動用電解液の気化ガスや水素等のガスがケーシング内に流入しても圧力弁が作動し、この圧力弁より排出することにより、ケーシング内が過度の圧力になって破損したり、電解コンデンサから捕集容器が外れたりするのを防止することができる。一方、通常時には、圧力弁が開成していないので、ケーシングがほぼ密封状態にあるため、吸収材の吸湿や乾燥を防止したり、水に濡れたときでも浸水を防止したりすることができるので、吸収材の性能低下を防止し、しかも吸収材3の漏洩リスクがないという効果も奏する。このような本発明の捕集容器を装着した金属電解コンデンサは、照明器具や記録装置などの電気機器や、各種電子機器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る電解液の捕集容器を示す部分破断斜視図である。
【図2】同実施形態に係る電解液の捕集容器を示す平面図(上面図)である。
【図3】同実施形態に係る電解液の捕集容器を嵌め込んだ電解コンデンサを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る電解液の捕集容器を示しており、図3は、この電解液の捕集容器を嵌め込んだ電解コンデンサを示している。図1乃至図3において、11はアルミ電解コンデンサであり、この電解コンデンサ11は、アルミニウムよりなる有底筒状の金属ケース12内にコンデンサ素子を内蔵してなる。コンデンサ素子は、粗面化したアルミ箔よりなる陽極箔の表面に誘電体酸化皮膜を形成し、この陽極箔と陰極箔をセパレータとともに巻回することにより構成されていて、該コンデンサ素子に駆動用電解液を含浸させている。また、このコンデンサ素子からは、一対のリード線13a,13bが導出されている。そして、前記金属ケース12の天板部12aには略十字形状の薄肉部からなる防爆弁14が形成されている。
【0030】
このような電解コンデンサ11の防爆弁14を覆うように電解液捕集容器1を勘合する。この電解液捕集容器1は、円筒状のケーシング2と、このケーシング2内に収容された吸収材3とからなる。ケーシング2は、金属製で厚さは、0.1〜1mm程度が好ましい。この金属材料としては特に制限はなく、ステンレス、鉄、銅、真鍮、アルミニウムなどの汎用的なものを用いることができ、特に安価で軽量である点でアルミニウムもしくはアルミニウム合金が好ましい。
【0031】
このケーシング2の天板部(有底部)2aには、略十字形状の薄肉部からなる圧力弁4が形成されていて、このケーシング2と電解コンデンサ11の天板部12aとの間の空間部Sに、不織布、濾紙等の透過性繊維素材5が配置され、さらに吸収材3が充填されている。このケーシング2の大きさは、電解コンデンサ11に対してあまり大きすぎると、電解液捕集容器1を取り付けた後のコンデンサ自体が大きくなりすぎて、規格や設計上商品価値が低下するためできるだけ小さい方が好ましいが、これは吸収材3の量(吸収量)に依存することになる。したがって、電解コンデンサ11内に含まれている駆動用電解液の量と噴出量と吸収材3の吸収能とから必要な吸収材3の量を算出し、これに基づいて決定すればよい。具体的には、電解コンデンサ11内に含まれている駆動用電解液100重量部に対して、吸収材3を10〜500重量部とすればよい。なお、図1においては、便宜上吸収材3については図示を省略している。
【0032】
吸収材3としては、特に制限はないが、コンデンサから噴出する液状又はガス状物質が150℃以上の高温になることから、無機系の素材が好ましい。この無機系の素材としては、酸化チタン、グラファイト、アルミナ、遷移金属ジカルゴゲナイト、フッ化ランタン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、珪藻土、銀塩、ケイ酸塩、リン酸塩、ゼオライト、酸化マグネシウム、シリカ、多孔質ガラスなどが挙げられるが、特に多孔質になっている無機多孔質系素材が有効であり、シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、珪藻土、ゼオライト、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等が好ましい。
【0033】
特に本実施形態においては、吸収材3に微量成分として重曹(NaHCO)を添加するのが好ましい。この重曹の添加量は、吸収材3の全量を100重量%として、10〜60重量%程度配合すればよい。重曹の添加量が10重量%未満では、吸収材3に含まれる水分と反応した際に発生する炭酸ガス(CO)の量が少なすぎる一方、60重量%を超えると、吸収材3に含まれる水分と反応した際に発生する炭酸ガス(CO)の量が多くなりすぎて、ケーシング2内圧が短時間に大きくなりすぎるため好ましくない。
【0034】
このような電解液捕集容器1において、電解コンデンサ11と電解液捕集容器1の勘合部(接触部)Kは、ゴムまたはエラストマー性の弾性材Gにより被覆されている。このゴムまたはエラストマー性の材質とは、室温において小さい応力で相当に大きい変形を起こし、応力から開放されると、その変形から急速にほとんどものと形状にまで復元する天然または合成の高分子化合物を意味する。このゴムまたはエラストマー性の材質としては、特に制限はないが、過電圧や逆電圧が印加された場合に電解コンデンサ11の金属ケース12の表面温度が150℃以上まで発熱することを考慮すると、シリコン系ゴム、フッ素系ゴムが好ましい。このように勘合部(接触部)Kを、ゴムまたはエラストマー性の弾性材Gにより被覆することにより、電解コンデンサ11と電解液捕集容器1との間のシール性が向上し、勘合部(接触部)Kからの液状又ガス状物質のショートパス(漏洩)を好適に抑制することができる。
【0035】
上述した構成を有する金属電解コンデンサにつき、その動作を説明する。アルミ電解コンデンサ11に過電圧が印加されると、電解コンデンサ11内のコンデンサ素子は発熱し、そして、この発熱により、駆動用電解液は気化するとともに、水素等のガスが発生し、金属ケース12の内圧を上昇させる。
【0036】
この内圧の上昇により金属ケース12の天板部12aに形成した防爆弁14が作動して、この防爆弁14より大量の気化した駆動用電解液と水素等のガスが空間部S内に大量に噴出する。そして、この気化した駆動用電解液の大半は、吸収材3に吸収されて固定化される。
【0037】
一方、噴出物によりケーシング2内の内圧が上昇するが、このケーシング2の天板部2aには圧力弁4が形成されているので、ケーシング2の内圧が所定の圧力より大きくなると、圧力弁4が作動して開成し、ケーシング2内の圧力(気体)を外部に逃がすことにより、電解液捕集容器1が電解コンデンサ11から吹き飛んで外れることがないようになっている。これにより、ケーシング2を大きくしたり、ケーシング2の壁厚を過度に大きくしたりする必要がない、という効果も奏する。
【0038】
特に本実施形態においては、吸収材3の微量成分として重曹(NaHCO)を添加しているので、異常電圧時の温度上昇により吸収材3の水分が脱水するため、この水分が重曹と反応して炭酸ガスを発生させることにより、この炭酸ガスによりケーシング2内の圧力が上昇し、電解液が多量に噴出する前に圧力弁4を作動させることで、電解液のリーク量の低減を図ることができるようになっている。さらに通常時には、圧力弁4が開成していないので、ケーシング2がほぼ密封状態にあるため、吸収材3の吸湿や乾燥を防止したり、水に濡れたときでも浸水を防止したりすることができるので、吸収材3の性能低下を防止し、しかも吸収材3の漏洩リスクがないという効果も奏する。
【0039】
特にケーシング2の天板部(有底部)2aに圧力弁4が形成されていて、このケーシング2と電解コンデンサ11の天板部12aとの間の空間部Sには、不織布、濾紙等の透過性繊維素材5が配置されているので、圧力弁4が開成してコンデンサから液状又はガス状物質が噴出した勢いで、吸収材3が圧力弁4より漏洩することを防止することができるようになっている。
【0040】
以上本発明について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態限らず種々の変形実施が可能である。例えば、本実施形態においては、圧力弁4の形状を略十字形状としているが、圧力弁4の形状は特に制限はなく、一文字形状あるいは複数の並行した溝などとすることができる。また、勘合部Kの弾性材Gはクロロスルフォン化ポリエチレンやPTFEなどの樹脂で代用してもよい。また、不織布、濾紙等の透過性繊維素材5を配置せずに、吸収材3を錠剤化したりゲル化させたりしてケーシング2に充填してもよい。
【実施例】
【0041】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0042】
<参考例>
φ16mm×31.5mm、400V、33μFの規格の市販のアルミ電解コンデンサを使用し、このアルミ電解コンデンサに電源装置から電気を600V、1Aで印加したところ、電解コンデンサ11の防爆弁14が開成し、駆動用電解液等の激しい噴出が見られた。
【0043】
<実施例1>
参考例1のアルミ電解コンデンサ11に図1及び図2に示す電解液捕集容器1に多孔質シリカ1.0gと重曹0.3gを充填したものを被せた。この電解液捕集容器1は、内径16.15mmφ、長さ38mmで、厚さ0.30mmのアルミニウム製の円筒体をケーシング2とし、天板部2aには略十字形の圧力弁4を形成した。また、電解液捕集容器1のケーシング2と電解コンデンサ11との勘合部Kとなる内面側には、弾性材Gとしてシリコンゴムを被覆して嵌め込んだ。また、天板部2aの内面側には透過性繊維素材としての5A濾紙を配置した。
【0044】
このコンデンサに対し、電源装置から電気を600V、1Aで印加したところ、電解コンデンサ11の防爆弁14は開成し、その後圧力弁4が開成したが、駆動用電解液等の噴出が低減されることがわかった。
【0045】
<比較例1>
実施例1において、多孔質シリカを充填しなかった以外は、同様にしてコンデンサを作製した。このコンデンサに対し、電源装置から電気を600V、1Aで印加したところ、電解コンデンサ11の防爆弁14は開成し、その後圧力弁4が開成し、参考例1よりは幾分緩やかであるものの駆動用電解液等が勢いよく噴出した。この結果、電解液捕集容器1には、液状又はガス状物質を吸収可能な吸収材3が必要であることが確認された。
【0046】
<比較例2>
実施例1において、天板部2aに圧力弁4を形成しなかった以外は、同様にしてコンデンサを作製した。このコンデンサに対し、電源装置から電気を600V、1Aで印加したところ、初期においては駆動用電解液等の噴出を防止できたが、内圧の上昇に伴い電解液捕集容器1が吹き飛んだ。この結果、電解液捕集容器1のケーシング2には、圧力弁4を形成するのが好ましいことがわかった。
【0047】
<比較例3>
実施例1において、天板部2aに5個の小孔を形成した以外は、同様にしてコンデンサを作製した。このコンデンサに対し、電源装置から電気を600V、1Aで印加したところ、電解コンデンサ11の防爆弁14は開成し、その後圧力弁4が開成したが、実施例1とほぼ同程度の駆動用電解液等の噴出が認められた。
【0048】
この比較例3のコンデンサを水に浸漬したところ、天板部2aに形成した小孔から水分が浸入して、吸収材3の性能が低下しているのが確認された。
【0049】
<実施例2>
実施例1において、吸収材3として重曹を充填せずに多孔質シリカ1.2gを充填したものを用いた以外は、同様にしてコンデンサを作製した。このコンデンサに対し、電源装置から電気を600V、1Aで印加したところ、電解コンデンサ11の防爆弁14は開成し、その後圧力弁4が開成したが、実施例1よりも駆動用電解液等の噴出するまでに長時間を要したが、駆動用電解液等の噴出がわずかに多く認められた。この結果、駆動用電解液等の噴出抑制には、吸収材3に重曹を添加するのが好ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0050】
1…電解液捕集容器
2…ケーシング
2a…天板部
3…吸収材
4…圧力弁
5…透過性繊維素材
11…電解コンデンサ
12…金属ケース
13a,13b…リード線
14…防爆弁
K…勘合部(接触部)
S…空間部
G…弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用電解液を含浸させたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を内蔵する金属ケースと、前記コンデンサ素子より導出された一対のリード線とを備え、前記金属ケースの一側面に防爆弁を形成し、電気的異常時に前記防爆弁が開成して駆動用電解液等を噴出する電解コンデンサの電解液の捕集容器であって、
該捕集容器は、硬質材からなるケーシング内に液状又はガス状物質を吸収可能な吸収材を収容してなり、前記ケーシングに圧力弁が形成されていて、
この捕集容器を前記防爆弁を覆うように前記金属製の電解コンデンサに嵌め込むことにより、前記防爆弁の開成時に駆動用電解液等を捕集する
ことを特徴とする電解コンデンサの電解液捕集容器。
【請求項2】
前記ケーシングが金属製であることを特徴とする請求項1に記載の電解液捕集容器。
【請求項3】
前記吸収材が、無機多孔質素材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解液捕集容器。
【請求項4】
前記吸収材が、重曹を含有することを特徴とする請求項3に記載の電解液捕集容器。
【請求項5】
前記捕集容器と前記電解コンデンサとの嵌合部の少なくとも一部をゴムまたはエラストマーで被覆して該捕集容器を嵌め込むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解液捕集容器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電解液捕集容器を備えたことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項7】
請求項6に記載の電解コンデンサを備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項6に記載の電解コンデンサを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115078(P2013−115078A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257041(P2011−257041)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)