説明

電解コンデンサ用セパレータ及びそれを用いた電解コンデンサ

【課題】薄くても緻密性に優れる電解コンデンサ用セパレータ及びショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さい電解コンデンサを提供する。
【解決手段】アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の下記で定義される変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである電解コンデンサ用セパレータ。変法濾水度:ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用セパレータ及び電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解液を使用する電解コンデンサのセパレータとしては、麻パルプやエスパルトパルプを主体とする紙に紙力増強剤を付着させた紙製セパレータ(例えば、特許文献1〜3参照)、再生セルロース繊維の叩解原料と天然パルプからなる紙製セパレータ(例えば、特許文献4参照)が使用されている。また、電解液中での熱劣化が少ない化学繊維を含有するセパレータが開示されている(例えば、特許文献5参照)。これらのセパレータは、ESRをより低くするために、厚みを薄くしていくと、突刺強度が弱くなるため、電極箔のエッジ部分のバリが貫通しやすくなり、ショート不良率が高くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−267182号公報
【特許文献2】特開2004−200395号公報
【特許文献3】特開2004−228600号公報
【特許文献4】特許第3466206号公報
【特許文献5】特開2002−367863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、薄くても適度な緻密性を有する電解コンデンサ用セパレータ及びショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さい電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の下記で定義される変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである電解コンデンサ用セパレータが、薄くても適度な緻密性を有すること、該セパレータを具備した電解コンデンサはショート不良率とESRが低く優れ、ESRのばらつきが小さいことを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
変法濾水度:ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電解コンデンサ用セパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmであるため、セパレータの細孔が均一に形成され、適度な緻密性を有し、繊維が極端に疎な部分がなく、電極箔のバリの貫通を阻止することができる。そのため、該セパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率とESRとが低く、ESRのばらつきが小さく優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度(試料濃度を0.03%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度)の関係を表したグラフである。
【図2】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度(ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度)を表したグラフの一例である。
【図3】本発明の実施例で用いた叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度(ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度)を表したグラフである。
【図4】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[I]の繊維長分布ヒストグラムである。
【図5】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[II]の繊維長分布ヒストグラムである。
【図6】叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[I]及び[II]の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合のグラフと近似直線を示した図である。
【図7】0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有する叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[i]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
【図8】最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[ii]の繊維長分布ヒストグラムの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「セパレータ」と表記する場合は、電解コンデンサ用セパレータを意味する。
【0010】
本発明におけるアクリル短繊維は、繊維長1〜10mmのものが用いられ、1〜6mmが好ましく用いられる。繊維長が1mm未満だと、セパレータの突刺強度が不十分になる場合があり、10mmより長いと、繊維同士がよれて、地合が不均一になる場合がある。アクリル短繊維の繊度は0.05〜1.0dtexが好ましい。繊度が0.05dtex未満だと、セパレータの突刺強度が不十分になる場合があり、1.0dtexより太いと、セパレータの空孔率が大きくなりすぎる場合や厚みむらが生じる場合がある。本発明におけるアクリルとは、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものを指す。アクリル短繊維は、耐電解液性に優れる。本発明のセパレータは、アクリル短繊維を含有することにより、突刺強度が強くなる。
【0011】
本発明における変法濾水度とは、JIS P8121に規定されるカナダ標準濾水度の測定方法に対して、試料濃度若しくはふるい板のいずれか、又は、試料濃度及びふるい板の両方を変更して測定した濾水度を意味する。これまで、針葉樹木材パルプ、広葉樹木材パルプ、麻パルプ、エスパルトパルプなどの天然セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度との関係については報告されているが、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度との関係は、明らかになっていなかった。本発明では、リファイナーを用いて溶剤紡糸セルロース繊維を微細化していき、微細化の程度ごとにカナダ標準濾水度と変法濾水度を測定した結果、溶剤紡糸セルロース繊維の濾水挙動が、特開2000−331663号公報に開示されている天然セルロース繊維の濾水挙動と異なることを見出した。
【0012】
図1に、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維のカナダ標準濾水度と変法濾水度の関係を表す。図1において、標準濾水度とは、JIS P8121のカナダ標準濾水度を意味している。変法濾水度とは、試料濃度を0.03%にした以外は、JIS P8121に準拠して測定した濾水度を意味する。図1の横軸は長さ加重平均繊維長を示しており、右に向かうほど微細化の程度が進んでいる。カナダ標準濾水度は、長さ加重平均繊維長が0.72mmまで濾水度が0.5mlであるが、長さ加重平均繊維長が0.55mm以下では短くなるほど濾水度が大きくなっている。一方、変法濾水度は、微細化の程度が進むに従って、濾水度が大きくなっている。この濾水挙動は、特開2000−331663号公報に開示されている天然セルロース繊維の濾水挙動、すなわち、微細化の程度が進むほど、カナダ標準濾水度と変法濾水度が減少する濾水挙動とは全く異なっている。
【0013】
このように微細化の程度が進むほど濾水度が大きくなる理由は、微細化が進むに従って叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が短くなっていき、特に試料濃度が薄い場合に、繊維同士の絡みが少なくなり、繊維ネットワークが形成されにくくなるため、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維自体がふるい板の穴をすり抜けてしまうからである。つまり、微細化した溶剤紡糸セルロース繊維の場合は、JIS P8121の測定方法では、正確な濾水度が計測できないのである。より詳細に説明すると、天然セルロース繊維は、微細化の程度が進むほど、繊維の幹から細いフィブリルが多数裂けた状態になるため、フィブリルを介して繊維同士が絡みやすく、繊維ネットワークを形成しやすいのに対し、溶剤紡糸セルロース繊維は、微細化処理によって繊維の長軸に平行に細かく分割されやすく、分割後の繊維1本1本における繊維径の均一性が高いため、平均繊維長が短くなるほど繊維同士が絡みにくくなり、繊維ネットワークを形成しにくいと考えられる。
【0014】
そこで、本発明では、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の正確な濾水度を測定するための検討を行った。図2は、試料濃度とふるい板の両方を変更して測定した変法濾水度の一例を表す。すなわち、JIS P8121に規定されているふるい板の代わりに80メッシュの金網を用い、試料濃度を0.1%にして測定した変法濾水度である。80メッシュの線径は直径0.14mmで、目開き0.18mmの金網(PULP AND PAPER RESEARCH INSTITUTE OF CANADA製)を使用した。図2から明らかなように、微細化の程度が進むほど濾水度は小さくなっており、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の抜けが抑えられ、より正確な濾水度を計測できたことがわかる。以下、本発明における変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度を意味し、特に断りのない限り単に「変法濾水度」と表記する。
【0015】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長及び繊維長分布ヒストグラムは、繊維にレーザー光を当てて得られる偏光特性を利用して求めることができ、市販の繊維長測定器を用いて測定することができる。本発明では、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.52「紙及びパルプの繊維長 試験方法(光学的自動計測法)」に準じてKajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して測定した。叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の「繊維長」、「平均繊維長」及び「繊維長分布」とは、上記に従って測定・算出される「長さ加重繊維長」、「長さ加重平均繊維長」及び「長さ加重繊維長分布」を意味する。
【0016】
また、微細化の条件を変えることによって、変法濾水度0〜400mlの範囲内で長さ加重平均繊維長をいかようにも調節することができるため、同程度の変法濾水度であっても、長さ加重平均繊維長の異なる叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を作製することができる。図3は、本発明の実施例9〜20で用いた叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度を表す。
【0017】
変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長0.20〜2.00mmの溶剤紡糸セルロース繊維は、繊維径が細く、均一性が高いため、セパレータの細孔が比較的均一に形成され、セパレータ中での電解液の偏りを防ぐことができる。本発明の溶剤紡糸セルロース繊維は、変法濾水度が0〜300mlであることがより好ましく、0〜250mlであることがさらに好ましい。変法濾水度が400mlを超える場合は、微細化処理が不十分で、繊維の分割が十分に進まず、元の太い繊維径のまま残る割合が多くなるため、セパレータに大きな貫通孔ができ、電極箔のエッジ部分のバリが貫通しやすくなり、ショート不良率が高くなる。本発明の溶剤紡糸セルロース繊維は、長さ加重平均繊維長は、0.40〜1.80mmが好ましく、0.50〜1.50mmがより好ましい。0.20mm未満だと、濾水性が悪くなり、抄紙性が悪くなる場合や、繊維間隙が狭くなり、電解コンデンサのESRが高くなる。2.00mm超では、微細化が不十分で、太い繊維径の割合が多くなり、セパレータに大きな貫通孔が開きやすくなる、繊維のよれが生じ、地合と厚みのばらつきが生じ、ESRのばらつきが大きくなる。本発明における溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、繊維にレーザー光を当てて得られる偏光特性を利用して求める市販の繊維長測定器を用いて測定することができる。
【0018】
さらに、本発明では、変法濾水度0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維において、その繊維長分布ヒストグラムを詳細に検討した結果、下記に説明する第一の繊維長分布を有する場合、吸液性が向上する効果が得られ、第二の繊維長分布を有する場合、吸液性とイオン移動性を両立させる効果が得られるため、より好ましいことを見出した。
【0019】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維において、好ましい第一の繊維長分布は、該繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上である。このような叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維は、吸液性が良いことを見出した。また、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下である場合、吸液性がより優れていて、さらに好ましいことを見出した。
【0020】
図4及び図5は、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムであり、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上である。吸液性という点で、より好ましくは、繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が12%以上で高い方が好ましいが、50%程度あれば十分である。
【0021】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下であることが好ましく、−2.5以上−0.8以下がより好ましく、−2.0以上−1.0以下がさらに好ましい。傾きが−3.0より小さい場合、繊維間隙が狭くなり、吸液性が低くなる場合がある。また傾きが−0.5を超えるとセパレータの地合が悪くなり、ESRのばらつきが大きくなる場合がある。図4及び図5に示すように、「傾きが大きい」とは叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布が広い状態である。「傾きが小さい」とは叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布が狭く、より繊維長が揃っている状態である。なお、図4の叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[I]の傾きは、−2.9であり、図5の叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維[II]の傾きは、−0.6である。
【0022】
なお、「1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾き」とは、図6に示したように1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の値に対し、最小二乗法により近似直線を算出し、得られた近似直線の傾きを意味する。
【0023】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維において、好ましい第二の繊維長分布は、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。このような叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維は、繊維間隙が狭くなりすぎず、広くなりすぎず、吸液性と電解液のイオン移動性を両立できる。また、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する場合、このようなピークを有さない溶剤紡糸セルロース繊維よりも吸液性が良くなるため好ましい。
【0024】
図7は、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムであり、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である。電解液中のイオン移動を阻害しない点において、繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.30〜0.70mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が55%以上であることがより好ましい。1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合は高い方が望ましいが、75%程度あれば十分である。
【0025】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、図8に示したように、上記の最大頻度ピーク以外に、1.50〜3.50mmの間にピークを有することがより好ましく、1.75〜3.25mmの間にピークを有することがさらに好ましく、1.90〜3.00mmの間にピークを有することが特に好ましい。この範囲にピークを有することにより、さらに吸液性が良くなるため好ましい。該ピークの繊維長が1.50mmより短い場合、吸液性が悪くなる場合がある。また3.50mmを超えると、ダマが発生して厚み斑になり、セパレータの地合が悪くなる場合や、繊維間隙が広くなりすぎて吸液性が悪くなる場合がある。
【0026】
変法濾水度0〜400ml、且つ、長さ加重平均繊維長0.20〜2.00mmの溶剤紡糸セルロース繊維を得るには、溶剤紡糸セルロースの短繊維を適度な濃度で水などに分散させ、これをリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、高圧ホモジナイザーなどに通して、刃の形状、試料濃度、流量、処理回数、処理速度などの条件を調節して微細化処理すれば良い。
【0027】
本発明のセパレータ中のアクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の合計含有率は、40〜100質量%が好ましい。40質量%未満だと、突刺強度が不十分になる場合や、該セパレータを具備した電解コンデンサのESRが高くなる場合やESRのばらつきが大きくなる場合がある。本発明のセパレータ中のアクリル短繊維と変法濾水度0〜400mlの溶剤紡糸セルロース繊維の比率は、質量基準で1:9〜8:1が好ましく、3:17〜3:1がより好ましい。アクリル短繊維の比率が1:9より少ないと、セパレータの突刺強度が不十分になる場合があり、8:1より多いとセパレータの厚みを薄くしにくくなる場合やESRが高くなる場合がある。
【0028】
本発明のセパレータは、アクリル短繊維、変法濾水度0〜400mlで、且つ長さ加重平均繊維長0.20〜2.00mmの溶剤紡糸セルロース繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、ポリアミドからなる短繊維やフィブリル化物、溶剤紡糸セルロースや再生セルロースの短繊維、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、変法濾水度400ml超の溶剤紡糸セルロース繊維、ガラス、アルミナ、シリカなどからなる無機繊維などである。
【0029】
ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドのいずれでも良いが、耐熱性に優れる全芳香族ポリアミドが好ましい。ポリアミド、溶剤紡糸セルロースや再生セルロースの短繊維は、繊維長1〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましい。繊維長が1mm未満だと、セパレータから脱落しやすくなる場合があり、10mmより長いと繊維同士がよれて地合が不均一になる場合がある。ポリアミド、溶剤紡糸セルロース、再生セルロースの短繊維の繊度は0.01〜2.0dtexが好ましい。0.01dtex未満では繊維自身の強度が弱く、セパレータが破断しやすくなる場合がある。2.0dtexより太くなると、セパレータの厚みを薄くしにくくなる場合がある。
【0030】
天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物は、変法濾水度が0〜400mlが好ましい。変法濾水度が400mlを超えると、太い繊維径の割合が多くなり、セパレータに厚みむらが生じやすくなる場合がある。無機繊維の平均繊維径は0.1〜10.0μmが好ましく、0.1〜3.0μmがより好ましい。平均繊維径が0.1μm未満では、無機繊維が折れやすいため、セパレータから脱落しやすくなる場合があり、10.0μmより太いとセパレータの厚みを薄くしにくくなる場合がある。無機繊維の平均繊維長は0.1〜10.0mmが好ましく、0.1〜5.0mmがより好ましい。平均繊維長が0.1mm未満では、無機繊維がセパレータから脱落しやすくなる場合があり、10.0mmより長いとセパレータの地合や厚みが不均一になりやすい場合がある。
【0031】
本発明のセパレータの空孔率は、好ましくは60.0〜86.0%であり、より好ましくは、62.0〜80.0%である。空孔率は、セパレータの比重からセパレータの密度を差し引いて得られる値をセパレータの比重で除して100倍した値を意味する。セパレータの比重は、セパレータを構成する繊維の比重と比率から算出される。空孔率が60.0%未満では、電解液の保持性が悪くなる場合や、電解コンデンサのESRが高くなる場合がある。空孔率が86.0%より大きいと、ショート不良率が高くなる場合や、ESRのばらつきが大きくなる場合がある。
【0032】
本発明のセパレータの空孔率を調節するには、セパレータの比重を基にして、所望の空孔率になるようにセパレータの密度を調節すれば良い。太い繊維の含有率を高くすると、セパレータの密度は小さくなる方向になり、空孔率は大きくなる方向になる。カレンダー処理により厚みを薄くしてセパレータの密度を大きくすると、空孔率は小さくなる方向になる。比重の重い繊維の含有率を多くすると、空孔率を大きくする方向になる。
【0033】
本発明のセパレータは、湿式抄紙法で製造することができる。1層でも良いし、2層以上の漉き合わせで製造しても良い。具体的には所定の繊維を所定濃度に分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、短網抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらを組み合わせたコンビネーション抄紙機のいずれかを用いて湿式抄紙すれば良い。湿式抄紙した後は、必要に応じて熱処理、カレンダー処理、熱カレンダー処理などが施される。
【0034】
本発明のセパレータは、厚みが15〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。厚みが15μm未満では、取り扱い時や加工時に破れたり、穴が開いたりする場合がある。100μmより厚いと、電解コンデンサのESRが高くなる場合がある。
【0035】
本発明のセパレータは、ガーレー透気度が0.01〜5.00s/100mlであることが好ましく、0.10〜3.00s/100mlであることがより好ましい。ガーレー透気度はJIS P8117に準拠して測定される。ガーレー透気度が0.01s/100ml未満では、電極箔のエッジのバリが貫通しやすくなり、電解コンデンサのショート不良率が高くなる場合と、セパレータ内で電解液の偏りが生じてESRのばらつきが大きくなる場合がある。5.00s/100mlより大きいと、電解コンデンサのESRが高くなる場合がある。
【0036】
本発明のセパレータは、平均突刺強度が0.40N以上であることが好ましく、0.50N以上がより好ましい。平均突刺強度が0.40N未満だと、電解コンデンサの製造時にセパレータが破損したり、穴が開くなどして、ショート不良率が高くなる場合がある。突刺強度とは、セパレータに対して直角に直径1mmの金属棒を一定速度で降ろしていき、金属棒がセパレータを貫通するまでの最大荷重を意味する。平均突刺強度は、セパレータ試料の任意の5箇所以上の突刺強度を測定し、その平均値とする。
【0037】
本発明における電解コンデンサとは、アルミニウム箔の表面に絶縁性の酸化皮膜が形成された弁金属を陽極に使用し、酸化皮膜を有さないアルミニウム箔を陰極に使用して、これら陽極と陰極の間に電解液が配置されて構成されたものを指す。
【0038】
電解液の媒体としては、水、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミルアルコール、グリセリン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド、アセトニトリル、アクリロニトリル、アジポニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホランなどが挙げられ、これらの単独又は混合溶媒が用いられるが、エチレングリコール又はγ−ブチロラクトンが好ましい。
【0039】
電解液の電解質としては、ホウ酸、蓚酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、2−メチルアゼライン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、これら酸の塩(例えば、アジピン酸アンモニウム、マレイン酸水素アンモニウムジメチルアミン、2−ブチルオクタン二酸アンモニア、フタル酸水素1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムなど)、水酸化テトラメチルアンモニウム、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、炭素数1〜11のアルキル基又はアリールアルキル基で四級化されたイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式アミジン化合物などが用いられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
≪実施例1〜8、比較例1〜3≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度:「変法濾水度」
(2)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
を表3に示す。なお、叩解されてなる各状態の溶剤紡糸セルロース繊維は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0041】
表1に、本発明の実施例及び比較例で使用した繊維を示した。A1〜A11は叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を意味し、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。B1は繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル(登録商標))、B2は繊度0.4dtex、繊維長5mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル(登録商標))、B3は繊度1.0dtex、繊維長5mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル(登録商標))を意味する。B4は溶剤紡糸セルロース短繊維(リヨセル(登録商標)短繊維、繊度1.7dtex、繊維長6mm))を意味する。C1はフィブリル化リンター繊維を意味する。各種変法濾水度の溶剤紡糸セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース短繊維、リンター繊維の比重は1.50とした。アクリル短繊維の比重は1.17とした。表2に、本発明の実施例1〜8及び比較例1〜3に対応するスラリーを構成する繊維と配合率を示した。表2の繊維の記号は、表1の記号に該当する。
【0042】
実施例1
繊維B2をパルパーで水に分散させた後、繊維A1を添加して所定時間攪拌し、スラリー1を調製した。これを所定濃度に希釈して、円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、実施例1のセパレータを作製した。
【0043】
実施例2〜7
スラリー1の調製と同様にして、アクリル短繊維をパルパーで水に分散させた後、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー2〜7を調製した。スラリー2〜7を所定濃度に希釈して、実施例1と同様にして湿式抄紙し、実施例2〜7のセパレータを作製した。
【0044】
実施例8
繊維C1をパルパーで水に分散させた後、繊維B1を添加して所定時間攪拌し、さらに繊維A8を添加して所定時間攪拌し、スラリー8を調製した。これを所定濃度に希釈して、実施例1と同様にして湿式抄紙し、実施例8のセパレータを作製した。
【0045】
(比較例1)
繊維B2をパルパーで水に分散させた後、繊維A9を添加して所定時間攪拌し、スラリー9を調製した。これを所定濃度に希釈して、円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、比較例1のセパレータを作製した。
【0046】
(比較例2、3)
スラリー9と同様にして、アクリル短繊維をパルパーで水に分散させた後、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー10、11を調製した。スラリー10、11を所定濃度に希釈して、円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、比較例2、3のセパレータを作製した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
実施例1〜8及び比較例1〜3のセパレータについて、下記の試験方法により評価を行い、結果を表3に示した。
【0050】
<厚み>
セパレータの厚みをJIS P8118に準拠して測定した。
【0051】
<密度>
セパレータの密度をJIS P8124に準拠して測定した。
【0052】
<空孔率>
セパレータの空孔率は、セパレータの比重からセパレータの密度を差し引いて得られる値をセパレータの比重で除して100倍して算出した。
【0053】
<ガーレー透気度>
外径28.6mmの円孔を有するガーレー透気度計を用いて、100mlの空気がセパレータを通過するに要した時間を1試料につき任意の5箇所以上で計測し、その平均値とした。
【0054】
<吸液性>
セパレータを、20mm巾、長さ150mmに切り揃えた試料を用意した。このとき、150mm長さに切る方向はCD方向、すなわち、セパレータ巻取りの巻き長さ方向に対して直角方向(巾方向)とした。1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸塩の濃度を30質量%になるようにγ−ブチロラクトンに溶解させた電解液にセパレータ試料の下端10mmだけ浸漬して固定し、10分間静置したときの吸い上げ高さを計測した。吸い上げ高さが高いほど、好ましい。
【0055】
【表3】

【0056】
<電解コンデンサ>
陽極に化成エッチングされたアルミニウム箔、陰極に未化成のエッチングアルミニウム箔を用い、これらの間に、実施例1〜8及び比較例1〜3のセパレータをそれぞれ挟んで巻回し、巻回素子を作製した。1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸塩の濃度を30質量%になるようにγ−ブチロラクトンに溶解させた電解液を巻回素子に注入し、封口して、実施例1〜8及び比較例1〜3の電解コンデンサを作製した。
【0057】
実施例1〜8及び比較例1〜3の電解コンデンサについて、下記の試験方法により評価を行い、その結果を表4に示した。
【0058】
<ESR>
電解コンデンサのESRを20℃、1kHzの周波数でLCRメーターを用いて測定し、1000個の平均値を算出した。
【0059】
<ばらつき>
電解コンデンサのESRの標準偏差をばらつきの指標とした。標準偏差の値が小さいほどばらつきが小さく優れている。
【0060】
<ショート不良率>
陽極と陰極の間に実施例及び比較例のセパレータを挟んで巻回素子を作製し、電解液を含浸しないで両極間の導通の有無をテスターで確認した。1000個の巻回素子に占める導通した巻回素子の割合をショート不良率とした。
【0061】
【表4】

【0062】
実施例1〜8のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmであるため、電解液の吸液性に優れていた。実施例1〜8のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。
【0063】
比較例1のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有するが、溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.20mm未満であるため、繊維間隙が狭く、吸液性が悪かった。比較例1のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率とESRのばらつきが小さかったが、ESRが高かった。
【0064】
比較例2のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有するが、溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が2.00mmを超えているため、繊維径の太い溶剤紡糸セルロース繊維が多く混在し、表面平滑性が悪く、吸液性が悪かった。また、セパレータの貫通孔が大きくなり、電極箔のバリが貫通しやすくなったため、比較例2のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率がやや高かった。また、ESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。
【0065】
比較例3のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有するが、溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が400mlを超え、且つ、長さ加重平均繊維長が2.00mmより長いため、繊維径の太い溶剤紡糸セルロース繊維が多く混在し、表面平滑性が悪く、吸液性が悪かった。また、セパレータの貫通孔が大きくなり、電極箔のバリが貫通しやすくなったため、比較例3のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率が高く、ESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。
【0066】
≪実施例9〜20≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(2)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(3)繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾き:「割合の傾き」
(4)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
(5)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度:「変法濾水度」
を表5に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維A12〜A23は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0067】
【表5】

【0068】
スラリー1又は8と同様にして、表6に示したスラリー12〜23を調製した。表6の繊維の記号は、表1及び表5の記号に該当する。実施例9〜20に対応するスラリーを円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、実施例9〜20のセパレータを作製した。実施例1と同様の方法でセパレータの評価を行い、評価の結果を表7に示した。
【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
実施例9〜20で作製したセパレータを用いて、実施例1と同様にして電解コンデンサを作製し、実施例1と同様の方法で電解コンデンサの評価を行い、評価の結果を表8に示した。
【0072】
【表8】

【0073】
実施例9〜18で作製したセパレータは、アクリル短繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmで、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上であるため、電解液の吸液性に優れていた。実施例9〜18で作製したセパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。
【0074】
実施例19で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有さないため、繊維間隙が狭く、吸液性が実施例9〜18より劣っていた。
【0075】
実施例20で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%未満であるため、繊維間隙が狭く、吸液性が実施例9〜18より劣っていた。
【0076】
実施例9〜12、14〜17で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下であるため、より吸液性に優れていた。
【0077】
実施例13で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0よりマイナス側であるため、繊維間隙が狭く、実施例9〜12、14〜17より吸液性が劣っていた。
【0078】
実施例18で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−0.5よりプラス側であるため、実施例9〜12、14〜17より吸液性が劣っていた。
【0079】
≪実施例21〜31≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(2)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(3)最大頻度ピーク以外のピークの繊維長:「第2ピークの繊維長」
(4)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
(5)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度:「変法濾水度」
を表9に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維A41〜A52は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース単繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0080】
【表9】

【0081】
スラリー1又は8と同様にして、表10に示したスラリー21〜31を調製した。表10の繊維の記号は、表1及び表9の記号に該当する。実施例21〜31に対応するスラリーを円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、実施例21〜31のセパレータを作製した。実施例1と同様の方法でセパレータの評価を行い、評価の結果を表11に示した。
【0082】
【表10】

【0083】
【表11】

【0084】
実施例21〜31で作製したセパレータを用いて、実施例1と同様にして電解コンデンサを作製し、実施例1と同様の方法で、電解コンデンサの評価を行い、評価の結果を表12に示した。
【0085】
【表12】

【0086】
実施例21〜29で作製したセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmで、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であるため、電解液の吸液性に優れていた。実施例21〜29で作製したセパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。
【0087】
実施例30で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピークが1.00mmを超えているため、繊維間隙が広く、吸液性が実施例21〜29より劣っていた。該セパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率は低かったが、実施例21〜29よりESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。
【0088】
実施例31で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%未満であるため、繊維間隙が狭く、吸液性が実施例21〜29より劣っていた。該セパレータを具備してなる電解コンデンサは、ESRのばらつきは小さく、ショート不良率が低かったが、実施例21〜29よりESRが高かった。
【0089】
実施例21〜23、25〜28で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有するため、より吸液性に優れていた。
【0090】
実施例24で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の第2ピークが1.50mm未満であるため、繊維間隙がやや狭く、実施例21〜23、25〜28より吸液性がやや劣っていた。そのため、該セパレータを具備してなる電解コンデンサのESRは、実施例21〜23、25〜28よりやや劣っていた。
【0091】
実施例29で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の第2ピークが3.50mmを超えているため、繊維間隙が広く、吸液性が実施例21〜23、25〜28より劣っていた。該セパレータを具備してなる電解コンデンサのショート不良率は低かったが、ESRとESRのばらつきが実施例21〜28より劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、電解コンデンサに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の下記で定義される変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmである電解コンデンサ用セパレータ。
変法濾水度:ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度。
【請求項2】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上である請求項1記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項3】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下である請求項2記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項4】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上である請求項1記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項5】
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有する請求項4記載の電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電解コンデンサ用セパレータを具備してなる電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−222145(P2012−222145A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86362(P2011−86362)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)