説明

電解液

【課題】イオン伝導率が高い電解液を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるDEME2TFSA、式(2)で表されるDEME3TFSA、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシトリエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、またはこれらの混合物を含む、電解液。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いリチウムイオン輸率を有する電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話等の機器の普及、進歩に伴い、その電源である電池の高容量化が望まれている。このような中で、金属空気電池は、空気極において、大気中の酸素を正極活物質として利用して、当該酸素の酸化還元反応が行われ、一方、負極において、負極を構成する金属の酸化還元反応が行われることで、充電又は放電が可能であるため、エネルギー密度が高く、現在汎用されているリチウムイオン電池に優る高容量電池として注目されている(非特許文献1)。
【0003】
従来、金属空気電池の非水電解質として有機溶媒が用いられていたが、有機溶媒は揮発性があるとともに、水との混和性もあるために、長期作動では安定性に課題があった。長期の電池作動時には、正極側から電解液が揮発することによって電池抵抗が増大し、あるいは、水分が電池内部に浸入することによって負極である金属リチウムが腐食される懸念があった。これらの現象は、空気電池の長時間放電という特徴を損ねる要因となり得る。
【0004】
電解液の揮発性による減少及び水分の電池内部への混入が抑制され、電池の長期の安定作動が可能なリチウム空気電池を提供することを目的として、非水電解質として、イオン液体であるN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)等を用いた空気電池が提案されている(特許文献1)。イオン液体とは、カチオンとアニオンとを組み合わせたイオン分子のみから成る物質であり、且つ、常温(15℃〜25℃)において液体である物質のことを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−14478号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)、「新しい構造の高性能リチウム空気電池を開発」、[online]、2009年2月24日報道発表、[平成23年8月19日検索]、インターネット<http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13TFSA)等のイオン液体を電解液として用いることによって、電解液の揮発による減少や水分の電池内部への混入の抑制に一定の効果が得られるものの、PP13TFSA等の従来のイオン液体を電解液は、リチウムイオン伝導率が未だ十分であるとはいえない。したがって、従来のイオン液体よりもリチウムイオン伝導率が高い電解液が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME2TFSA)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシジエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME3TFSA)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシトリエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME4TFSA)、またはこれらの混合物を含む、電解液である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リチウムイオン輸率が高い電解液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電解液中のLi22溶解濃度を示すグラフである。
【図2】イオン液体の酸素供給能を示すグラフである。
【図3】電解液のリチウムイオン輸率を示すグラフである。
【図4】空気電池のI−V特性を示すグラフである。
【図5】F型電気化学セルの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1:リチウム空気電池に適した電解液)
従来用いられているイオン液体であるN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、PP13TFSAという)を含む電解液を用いたリチウム空気電池は、電池としての出力が未だ満足できるものではない。その原因の一つとして、放電析出物である絶縁性のリチウム酸化物がPP13TFSAにほとんど溶けず、放電析出物の堆積によりリチウム空気電池内部の抵抗が増大し、放電の電流密度が低くなるということが挙げられる。
【0012】
そのため、リチウム空気電池に用いられる電解液としては、リチウム空気電池の放電時に生成し得る絶縁性放電析出物であるリチウム酸化物の溶解性に優れた電解液が求められる。
【0013】
そのようなリチウム空気電池に用いられる電解液として、炭化水素基及び電子供与性官能基を含むイオン液体であって、電子供与性官能基が炭化水素基よりもリチウムイオン親和性が高いイオン液体を含む電解液を見出した。リチウムイオンと配位しやすい電子供与性官能基を電解液に組み込むことで、放電析出物である絶縁性のLi22等のリチウム酸化物の電解液への溶解性を向上することができることが分かった。
【0014】
Li22等のリチウム酸化物の電解液への溶解性を向上することによって、リチウム空気電池内における放電析出物の堆積を抑制することができる。これにより、リチウム空気電池において、リチウムイオン及び酸素ガスの通り道が塞がれることを抑制することができるため、リチウム空気電池の出力向上を図ることができる。
【0015】
また、Li22等のリチウム酸化物の電解液への溶解性を向上することができるため、リチウム空気電池のクーロン効率を向上することができる。
【0016】
炭化水素基及び電子供与性官能基を含むイオン液体は、式(1)で表される第4級アンモニウムカチオンを含むことができる。
【0017】
【化1】

(式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を含み、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び/または硫黄原子をさらに含み、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つに電子供与性官能基が含まれる。)
【0018】
本明細書において、炭化水素基とはメチル基、エチル基等のアルキル基等の炭素原子及び水素原子からなる基であり、電子供与性官能基としては、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を含む官能基が挙げられ、酸素原子を含有する官能基としては例えば−O−、−CO−、−COO−が挙げられ、窒素原子を含有する官能基としては例えば−CN、−NRaRb(Ra、Rbは炭化水素基)が挙げられ、硫黄原子を含有する官能基としては例えば−NS、−SHが挙げられる。
【0019】
実施形態1における炭化水素基及び電子供与性官能基を含むイオン液体は、好ましくは、エーテル基を含む式(2)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEME)を含むイオン液体であり、さらに好ましくは、DEME系イオン液体であって2以上のエーテル基を含むイオン液体であり、例えば2つのエーテル基を含む式(3)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエトキシエチル)アンモニウム(DEME2)、3つのエーテル基を含む式(4)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシジエトキシエチル)アンモニウム(DEME3)、4つのエーテル基を含む式(5)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシトリエトキシエチル)アンモニウム(DEME4)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
式(6)で表されるPP13は、DEMEとは構造が異なり、且つDEMEに含まれるエーテル基などの電子供与性官能基も含まないため、Li22等のリチウム酸化物の溶解性が低い。また、比較のための参考例として、DEMEに類似の構造を有するN,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウム(N1223)を挙げる。式(7)で表されるように、N1223はDEMEに類似の構造を有するが、エーテル基などの電子供与性官能基を含まないため、Li22等のリチウム酸化物の溶解性は低いことが分かった。
【0021】
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0022】
実施形態1における式(2)〜(5)のDEME系構造をカチオン部として含むイオン液体は、アニオン部を含むことができる。アニオン部としては、式(8)で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(TFSA)、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフレート等が挙げられ、好ましくはTFSAが用いられ、DEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体をリチウム空気電池用の電解液として好適に用いることができる。
【0023】
【化8】

【0024】
実施形態1におけるDEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液は、リチウム含有金属塩を含むことができる。リチウム含有金属塩としては、リチウムイオンと、次に挙げるアニオン:
Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物アニオン;BF4-、B(CN)4-、B(C242-等のホウ素化物アニオン;(CN)2-、[N(CF32-、[N(SO2CF32-等のアミドアニオン又はイミドアニオン;RSO3-(以下、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を指す)、RSO4-、RfSO3-(以下、Rfは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を指す)、RfSO4-等のスルフェートアニオン又はスルフォネートアニオン;Rf2P(O)O-、PF6-、Rf3PF3-等のリン酸アニオン;SbF6等のアンチモンアニオン;またはラクテート、硝酸イオン、トリフルオロアセテート等のアニオン、
とからなる塩を用いることができ、
例えばLiPF6、LiBF4、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(CF3SO22、以下、LiTFSAという)、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiC(CF3SO23、及びLiClO4等が挙げられ、LiTFSAが好ましく用いられる。このようなリチウム含有金属塩を2種以上組み合わせて用いてもよい。また、イオン液体に対するリチウム含有金属塩の添加量は特に限定されないが、0.1〜1mol/kg程度とすることが好ましい。
【0025】
実施形態1における炭化水素基及び電子供与性官能基を含むイオン液体を含む電解液を用いて、リチウム空気電池を作製することができる。リチウム空気電池は、正極(空気極)層、負極層、及び正極層と前記負極層との間に配置された電解質層を有することができ、電解質層が、炭化水素基及び電子供与性官能基を含むイオン液体を含む電解液を含むことができる。
【0026】
炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液は、正極層及び負極層との間で金属イオンを交換することができる。
【0027】
電解質として、炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体そのものを用いてもよいし、炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体に、PP13TFSA等の他のイオン液体、及び/またはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、グライム類等の有機溶媒を加えて用いてもよい。
【0028】
また、電解質として、炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液を含むポリマー電解質又はゲル電解質等を用いてもよい。
【0029】
炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液と共に用いることのできるポリマー電解質は、リチウム塩及びポリマーを含有するものであることが好ましい。リチウム塩としては、従来、リチウム空気電池等で一般的に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、上述したリチウム含有金属塩として用いられるリチウム塩等を挙げることができる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0030】
炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液と共に用いることのできるゲル電解質は、リチウム塩とポリマーと非水溶媒とを含有するものであることが好ましい。リチウム塩としては、上述したリチウム塩を用いることができる。非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば上述した有機溶媒を用いることができる。これらの非水溶媒は、一種のみ用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。ポリマーとしては、ゲル化が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロース等が挙げられる。
【0031】
実施形態1における炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液を用いたリチウム空気電池は、従来用いられているPP13TFSA等のイオン液体を電解液として用いたリチウム空気電池よりもI−V特性を向上することができる。これは、実施形態1に挙げた炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液が、放電の際に析出する絶縁性のLi22等のリチウム酸化物について高い溶解性を有するため、放電に伴う電池内部の抵抗上昇を抑制することができるためである。また、実施形態1に挙げた炭化水素基及び電子供与性官能基を含有するイオン液体を含む電解液を用いたリチウム空気電池は、従来用いられているPP13TFSA等のイオン液体を電解液として用いたリチウム空気電池よりも、クーロン効率を向上することもできる。
【0032】
(実施形態2:空気電池に適した電解液)
従来用いられているN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、PP13TFSAという)等のイオン液体を電解液として用いた空気電池は、電池としての出力が未だ満足できるものではない。
【0033】
従来の電解液に対して空気電池の出力を向上することができる電解液について鋭意研究を行い、電解液の酸素供給能という指標に着目して、空気電池に適した電解液としてエーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体を見出した。エーテル基はリチウムイオンと配位しやすく、エーテル基をカチオン構造に複数組み込むことで、カチオンに配位したリチウムイオンと酸素分子とを相互作用させて酸素の供給性を向上することができ、空気電池の出力を向上することができることが分かった。イオン液体のアニオンよりもカチオンとリチウムイオンとが配位しやすくなることで、リチウムイオンと酸素分子とを一緒に拡散させることができ、酸素ガスを動かしやすくさせることができるため、酸素供給能を向上することができると考えられる。
【0034】
エーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体を空気電池の電解液として用いることによって、空気電池の放電時における電流密度をより向上することができ、I−V特性の向上を図ることができる。I−V特性の向上は、電池としての出力の向上を意味する。
【0035】
エーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体は、式(9)で表されるアンモニウムカチオンを含むことができる。
【0036】
【化9】

(式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ、1〜4個の炭素原子を含み、水素原子及び/または酸素原子をさらに含み、R1、R2、R3、及びR4に含まれる酸素原子の数が合計で1〜2個である。)
【0037】
酸素供給能とは、電解液による酸素の供給能力を示す指標であり、数値が大きいほど酸素を多く供給でき、空気電池としての出力を大きくすることができると考えられる。酸素供給能は、電解液中の酸素の溶解濃度(C[mol・cm-3]と電解液中の酸素の拡散係数(D[cm2・s-1]とをかけ合わせた数値であり、下記の式:
【数1】

で表される。
【0038】
理論に束縛されるものではないが、空気電池は、正極層(空気極層)、電解質層、及び負極層が積層された構造を有し、酸素は、正極層を通り、電解質層と正極層との界面(反応場)で負極金属イオンと反応する。電解液の酸素供給能が高いことで、正極層における酸素の拡散及び溶解、並びに反応場での酸素の拡散及び溶解が進みやすいため、放電時の電流密度が高くなると考えられる。
【0039】
実施形態2におけるエーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体は、好ましくは、イオン液体のカチオン構造体がN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEME)系構造を有するイオン液体である。DEME系構造としては、式(10)で表される1つのエーテル基を有するN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEME)、または式(11)で表される2つのエーテル基を有するN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエトキシエチル)アンモニウム(DEME2)が挙げられる。DEMEまたはDEME2を含有するイオン液体を含む電解液を空気電池に用いた場合に、酸素ガスをより動かしやすくすることができ、良好なI−V特性を有する空気電池を得ることができる。DEME2をカチオン部に含むイオン液体が好ましく用いられる。
【0040】
【化10】

【化11】

【0041】
式(12)で表されるPP13は、DEMEとは構造が異なり且つエーテル基を含まないため、酸素供給能が低い。
【0042】
【化12】

【0043】
式(10)または(11)のDEME系構造をカチオン部として含むイオン液体は、アニオン部を含むことができる。アニオン部としては、式(13)で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(TFSA)、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフレート等が挙げられ、好ましくはビストリフルオロメタンスルホニルアミド(TFSA)が用いられ、DEMETFSA、DEME2TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を空気電池用の電解液として好適に用いることができる。
【0044】
【化13】

【0045】
実施形態2におけるDEMETFSA、DEME2TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液は、リチウム含有金属塩を含むことができる。リチウム含有金属塩としては、リチウムイオンと、次に挙げるアニオン:
Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物アニオン;BF4-、B(CN)4-、B(C242-等のホウ素化物アニオン;(CN)2-、[N(CF32-、[N(SO2CF32-等のアミドアニオン又はイミドアニオン;RSO3-(以下、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を指す)、RSO4-、RfSO3-(以下、Rfは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を指す)、RfSO4-等のスルフェートアニオン又はスルフォネートアニオン;Rf2P(O)O-、PF6-、Rf3PF3-等のリン酸アニオン;SbF6等のアンチモンアニオン;またはラクテート、硝酸イオン、トリフルオロアセテート等のアニオン
とからなる塩を用いることができ、
例えばLiPF6、LiBF4、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(CF3SO22、以下、LiTFSAという)、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiC(CF3SO23及びLiClO4等が挙げられ、LiTFSAが好ましく用いられる。このようなリチウム含有金属塩を2種以上組み合わせて用いてもよい。また、イオン液体に対するリチウム含有金属塩の添加量は特に限定されないが、0.1〜1mol/kg程度とすることが好ましい。
【0046】
実施形態2に挙げたカチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液を用いて、空気電池を作製することができる。空気電池は、正極(空気極)層、負極層、及び正極層と前記負極層との間に配置された電解質層を有することができ、電解質層が、カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液を含むことができる。
【0047】
カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液は、正極層および負極層との間で金属イオンを交換することができる。
【0048】
電解質として、カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体そのものを用いてもよいし、カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体に、PP13TFSA等の他のイオン液体、またはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、グライム類等の有機溶媒を加えて用いてもよい。
【0049】
また、電解質として、カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液を含むポリマー電解質又はゲル電解質等を用いてもよい。カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液と共に用いることのできるポリマー電解質は、リチウム塩及びポリマーを含有するものであることが好ましい。リチウム塩としては、従来、リチウム空気電池等で一般的に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、上述したリチウム含有金属塩として用いられるリチウム塩等を挙げることができる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0050】
カチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液と共に用いることのできるゲル電解質は、リチウム塩とポリマーと非水溶媒とを含有するものであることが好ましい。リチウム塩としては、上述したリチウム塩を用いることができる。非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば上述した有機溶媒を用いることができる。これらの非水溶媒は、一種のみ用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。ポリマーとしては、ゲル化が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロース等が挙げられる。
【0051】
実施形態2に挙げたカチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液を用いたリチウム空気電池は、従来用いられているPP13TFSA等のイオン液体を電解液として用いた空気電池よりもI−V特性を向上することができる。これは、実施形態2に挙げたカチオン構造体にエーテル基を含有するイオン液体を含む電解液が、高い酸素供給能を有するためである。
【0052】
(実施形態3:リチウムイオン電池に適した電解液)
【0053】
従来用いられているN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、PP13TFSAという)等のイオン液体中には、複数のイオン成分が存在するために、目的のイオン(リチウムイオン等)以外のものも輸送され得る。そのため、リチウムイオン伝導率が低くなり、充電エネルギーをすべて放電エネルギーとして利用することができなくなり、高いクーロン効率を得にくいといった課題がある。
【0054】
従来の電解液よりもリチウムイオンの輸率を向上することができる電解液について鋭意研究を行い、エーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体を見出した。エーテル基はリチウムと配位しやすく、エーテル基をカチオン構造に複数組み込むことで、リチウムイオンをイオン液体のアニオンから剥がしやすくなる。これにより、カチオン及びアニオン間でリチウムイオンの受け渡しがしやすくなり、リチウムイオンを動かしやすくすることができるため、リチウムイオン輸送性を向上することができると考えられる。
【0055】
エーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体は、式(14)で表されるアンモニウムカチオンを含むことができる。
【0056】
【化14】

(式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ、1〜8個の炭素原子を含み、水素原子、及び/または酸素原子をさらに含み、R1、R2、R3、及びR4に含まれる酸素原子の数が合計で2〜4個である。)
【0057】
実施形態3におけるエーテル基をカチオン構造に複数組み込んだイオン液体としては、2つのエーテル基を含む式(15)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエトキシエチル)アンモニウム(DEME2)、3つのエーテル基を含む式(16)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシジエトキシエチル)アンモニウム(DEME3)、4つのエーテル基を含む式(17)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシトリエトキシエチル)アンモニウム(DEME4)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
式(18)で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEME)は、エーテル基の数が1つであり、式(19)で表される従来用いられているPP13はDEMEとは構造が異なりエーテル基も含まないため、リチウムイオン輸率が低い。
【0059】
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0060】
式(15)〜(17)に示される複数のエーテル基を有するDEME系構造をカチオン部として含むイオン液体は、アニオン部を含むことができる。アニオン部としては、好ましくは式(20)で表されるビストリフルオロメタンスルホニルアミド(TFSA)、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフレート等が挙げられ、好ましくはビストリフルオロメタンスルホニルアミド(TFSA)が用いられ、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体をリチウムイオン電池用の電解液として好適に用いることができる。
【0061】
【化20】

【0062】
実施形態3に挙げたDEME系イオン液体であって、エーテル基をカチオン構造に複数組み込んだDEME系イオン液体が、リチウムイオン電池用の電解液として好ましく用いられる。エーテル基の数が多いほどカチオンへのリチウムの配位能は高くなる傾向があり、アニオンからリチウムイオンが外れやすくなるが、同時に、リチウムイオンが輸送されやすいことが好ましく、DEME系イオン液体に含まれるエーテル基の数は好ましくは2〜4個である。
【0063】
実施形態3に挙げたDEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液は、リチウム含有金属塩を含むことができる。リチウム含有金属塩としては、リチウムイオンと、次に挙げるアニオン:
Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物アニオン;BF4-、B(CN)4-、B(C242-等のホウ素化物アニオン;(CN)2-、[N(CF32-、[N(SO2CF32-等のアミドアニオン又はイミドアニオン;RSO3-(以下、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を指す)、RSO4-、RfSO3-(以下、Rfは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を指す)、RfSO4-等のスルフェートアニオン又はスルフォネートアニオン;Rf2P(O)O-、PF6-、Rf3PF3-等のリン酸アニオン;SbF6等のアンチモンアニオン;またはラクテート、硝酸イオン、トリフルオロアセテート等のアニオン
とからなる塩を用いることができ、
例えばLiPF6、LiBF4、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(CF3SO22、以下、LiTFSAという)、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiC(CF3SO23及びLiClO4等が挙げられ、LiTFSAが好ましく用いられる。このようなリチウム含有金属塩を2種以上組み合わせて用いてもよい。また、イオン液体に対するリチウム含有金属塩の添加量は特に限定されないが、0.1〜1mol/kg程度とすることが好ましい。
【0064】
実施形態3に挙げたDEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液は、リチウム空気電池を含むリチウムイオン電池全般に適用可能である。DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液を用いることによって、優れたリチウムイオン輸送性が得られるためである。例えば、リチウムイオン電池は、正極層、負極層、及び正極層と前記負極層との間に配置された電解質層を有することができ、電解質層が、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液を含むことができる。
【0065】
実施形態3に挙げたDEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液は、正極層および負極層との間で金属イオンを交換することができる。
【0066】
電解質として、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体そのものを用いてもよいし、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体に、PP13TFSA等の他のイオン液体、またはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、グライム類等の有機溶媒を加えて用いてもよい。
【0067】
また、電解質として、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液を含むポリマー電解質又はゲル電解質等を用いてもよい。
【0068】
実施形態3に挙げたDEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液と共に用いることのできるポリマー電解質は、リチウム塩及びポリマーを含有するものであることが好ましい。リチウム塩としては、従来、リチウム空気電池等で一般的に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、上述したリチウム含有金属塩として用いられるリチウム塩等を挙げることができる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0069】
実施形態3に挙げたDEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、またはこれらの混合物のイオン液体を含む電解液と共に用いることのできるゲル電解質は、リチウム塩とポリマーと非水溶媒とを含有するものであることが好ましい。リチウム塩としては、上述したリチウム塩を用いることができる。非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば上述した有機溶媒を用いることができる。これらの非水溶媒は、一種のみ用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。ポリマーとしては、ゲル化が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロプレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリウレタン、ポリアクリレート、セルロース等が挙げられる。
【0070】
実施形態1に記載した電解液はリチウム空気電池に好適に用いられ、実施形態2に記載した電解液は空気電池全般に好適に用いられ、実施形態3に記載した電解液はリチウムイオン電池全般に好適に用いられ得る。
【0071】
実施形態2に記載した電解液が好適に用いられ得る空気電池は、正極(空気極)層、負極層、及び正極層と前記負極層との間に配置された電解質層を含むことができる。
【0072】
正極(空気極)層は導電材を含むことができる。導電材としては、例えばカーボンが挙げられ、カーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、メソポーラスカーボン等のカーボンブラック、活性炭、カーボン炭素繊維等が挙げられ、比表面積の大きいカーボン材料が好ましく用いられる。
【0073】
正極(空気極)層はバインダーを含むことができる。バインダーとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂、またはスチレンブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
【0074】
正極(空気極)層は酸化還元触媒を含んでもよく、酸化還元触媒としては、二酸化マンガン、酸化コバルト、酸化セリウム等の金属酸化物、Pt、Pd等の貴金属、Co等の遷移金属、コバルトフタロシアニン等の金属フタロシアニン等が挙げられる。
【0075】
正極(空気極)層、負極層、及び正極層と負極層との間に電解質層を有する空気電池において、電解質層は、正極層及び負極層の間で金属イオンの伝導を行うものであり、実施形態2に記載の電解液を含むことができる。
【0076】
空気電池において、正極層と負極層との間にはセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布等の高分子不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の微多孔フィルム、またはこれらの組み合わせを使用することができる。実施形態2に記載の電解液を、セパレータに含浸させて電解質層を形成してもよい。
【0077】
空気電池に含まれる負極層は、負極活物質を含有する層である。負極活物質としては、例えば、金属、合金材料、または炭素材料等を用いることができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の第13族元素、亜鉛、鉄等の遷移金属、またはこれらの金属を含有する合金材料または炭素材料等が挙げられる。
【0078】
また、負極活物質として、リチウム元素を含む合金、酸化物、窒化物、または硫化物を用いることができる。リチウム元素を有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。リチウム元素を有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。
【0079】
空気電池に用いられる負極層は、導電性材料及び/またはバインダーをさらに含有してもよい。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極層とすることができ、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質及びバインダーを有する負極層とすることができる。なお、導電性材料及びバインダーについては、上述の正極層に用いられ得る材料と同様のものを用いることができる。
【0080】
空気電池に用いられ得る外装材としては、金属缶、樹脂、ラミネートパック等、空気電池の外装材として通常用いられる材料を使用することができる。
【0081】
外装材には、酸素を供給するための孔が、任意の位置に設けられ得る。例えば、正極層の空気との接触面に向かって設けることができる。
【0082】
空気電池においては、正極層上であって電解質層と反対側の空気との接触部側に、酸素透過膜を配置することができる。酸素透過膜としては、空気中の酸素を透過させ、かつ水分の進入を防止できる撥水性の多孔質膜等を用いることができ、例えば、ポリエステルやポリフェニレンサルファイド等からなる多孔質膜を用いることができる。撥水膜を別途配置してもよい。
【0083】
空気電池においては、正極層に隣接して正極集電体を配置することができる。正極集電体は、通常、正極層上であって、電解質層と反対側の空気との接触部側に配置され得るが、正極層と電解質層との間にも配置してもよい。正極集電体としては、カーボンペーパー、金属メッシュ等の多孔質構造、網目状構造、繊維、不織布等、従来から集電体として用いられる材料であれば特に限定されず用いることができ、例えば、SUS、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン等から形成した金属メッシュを用いることができる。正極集電体として、酸素供給孔を有する金属箔を用いることもできる。
【0084】
空気電池においては、負極層に隣接して負極集電体を配置することができる。負極集電体としては、多孔質構造の導電性基板、無孔の金属箔等、従来から負極集電体として用いられる材料であれば特に限定されず用いることができ、例えば、銅、SUS、ニッケル等から形成した金属箔を用いることができる。
【0085】
空気電池の形状は、酸素取り込み孔を有する形状であれば特に限定されず、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、または扁平型等、所望の形状をとることができる。
【0086】
空気電池は、二次電池として使用することができるものであるが、一次電池として使用してもよい。
【0087】
空気電池に含まれる正極層、電解質層、及び負極層の形成は、従来行われている任意の方法で行うことができる。例えば、カーボン粒子及びバインダーを含む正極層を形成する場合、所定量のカーボン粒子及びバインダーに適量のエタノール等の溶媒を加えて混合し、得られた混合物をロールプレスで所定の厚みに圧延して、乾燥及び切断し、所望によりメッシュ状の集電体で挟んで圧着し、次いで加熱真空乾燥して、集電体に接合された正極層を得ることができる。別法として、所定量のカーボン粒子及びバインダーに適量のエタノール等の溶媒を加えて混合してスラリーを得て、スラリーを基材上に塗工及び乾燥を行って正極層を得ることもできる。所望により得られた正極層をプレス成形してもよい。正極層の基材上への塗工プロセスとしては、ドクターブレード法、グラビヤ転写法等が挙げられる。用いられる基材は、特に制限されるものではなく、集電体として用いる集電板、フィルム状の柔軟性を有する基材、硬質基材等を用いることができ、例えばSUS箔、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、テフロン(登録商標)等の基材を用いることができる。
【0088】
実施形態1に記載した電解液は、リチウム空気電池に好適に用いられ得る。リチウム空気電池は、上記の空気電池において負極活物質がリチウム含有材料を含みイオン伝導がリチウムイオンによる空気電池であり、それ以外の電池構成は上記の空気電池と同様である。
【0089】
実施形態3に記載した電解液は、上記の空気電池を含むリチウムイオン電池全般に含まれる電解液として好適に用いられ得る。一般的なリチウムイオン電池は、正極層、負極層、及びこれらの間に配置される電解質層を備えており、電解質層に、実施形態3に記載した電解液を含ませることができる。
【0090】
一般的なリチウムイオン電池の正極層及び負極層には、それぞれ活物質が含まれる。正極活物質として用いられる活物質材料は、負極活物質として用いる材料に対して充放電電位が貴な電位を示すものであって、電極活物質材料として利用可能な材料を用いることができる。例えば、正極活物質粒子の本体の材料として、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32、Li1+xMn2-x-yy4(Mは、Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる1種以上の金属元素)で表される組成の異種元素置換Li−Mnスピネル、チタン酸リチウム(LixTiOy)、リン酸金属リチウム(LiMPO4、MはFe、Mn、Co、またはNi)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化バナジウム(V25)、及び酸化モリブデン(MoO3)等の遷移金属酸化物、硫化チタン(TiS2)、グラファイト及びハードカーボン等の炭素材料、リチウムコバルト窒化物(LiCoN)、リチウムシリコン酸化物(LixSiyz)、リチウム金属(Li)、リチウム合金(LiM、Mは、Sn、Si、Al、Ge、Sb、またはP)、リチウム貯蔵性金属間化合物(MgxMまたはNySb、MはSn、Ge、またはSb、NはIn、Cu、またはMn)等、並びにこれらの誘導体が挙げられる。正極活物質と負極活物質には明確な区別はなく、2種類の充放電電位を比較して、充放電電位が貴な電位を示すものを正極に、卑な電位を示すものを負極に用いて、任意の電圧の電池を構成することができる。
【0091】
リチウムイオン電池においては、正極層に隣接して正極集電体を配置することができる。正極集電体としては、特に限定されるものではなく、例えば、Al、Cu、Ni、ステンレススチールなどの10〜500μm程度の厚みの金属箔を用いることができる。
【0092】
リチウムイオン電池においては、負極層に隣接して負極集電体を配置することができる。負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS、銅、ニッケル、およびカーボン等を挙げることができ、SUS及び銅が好ましい。さらに、負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状等を挙げることができ、中でも箔状が好ましい
【0093】
実施形態3に記載した電解液を含むリチウムイオン電池は、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、または扁平型等、所望の形状をとることができ、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
(イオン液体の準備)
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEMETFSA)、N,N−ジエチル−N−メチル−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(N1223TFSA)、及びN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)については、関東化学株式会社から入手した。N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME2TFSA)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシジエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME3TFSA)、及びN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシトリエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME4TFSA)については、公知物質であるDEMETFSAの合成における出発材料の1−ブロモ−2−メトキシエタンを、1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン、ジエチレングリコール−2−ブロモエチルメチルエーテル、トリエチレングリコール−2−ブロモエチルメチルエーテルにそれぞれ変えて、合成した。
【0095】
(Li22溶解性評価)
(実施例1−1)
DEMETFSA(関東化学製)を溶媒として、過酸化リチウム(Li22、高純度化学製)を、0.5mol/kgの濃度で25℃のAr雰囲気下で秤量混合して10日間浸漬し、上澄み液を分離してLi22溶解性評価用電解液を調製した。
【0096】
(実施例2−1)
DEME2TFSAを溶媒として、過酸化リチウム(Li22、高純度化学製)を、0.5mol/kgの濃度で25℃のAr雰囲気下で秤量混合して10日間浸漬し、上澄み液を分離してLi22溶解性評価用電解液を調製した。
【0097】
(実施例3−1)
DEME3TFSAを溶媒として、過酸化リチウム(Li22、高純度化学製)を、0.5mol/kgの濃度で25℃のAr雰囲気下で秤量混合して10日間浸漬し、上澄み液を分離してLi22溶解性評価用電解液を調製した。
【0098】
(実施例4−1)
DEME4TFSAを溶媒として、過酸化リチウム(Li22、高純度化学製)を、0.5mol/kgの濃度で25℃のAr雰囲気下で秤量混合して10日間浸漬し、上澄み液を分離してLi22溶解性評価用電解液を調製した。
【0099】
(比較例1−1)
PP13TFSA(関東化学製)を溶媒として、過酸化リチウム(Li22、高純度化学製)を、0.5mol/kgの濃度で25℃のAr雰囲気下で秤量混合して10日間浸漬し、上澄み液を分離してLi22溶解性評価用電解液を調製した。
【0100】
(参考例1−1)
N1223TFSA(関東化学製)を溶媒として、過酸化リチウム(Li22、高純度化学製)を、0.5mol/kgの濃度で25℃のAr雰囲気下で秤量混合して10日間浸漬し、上澄み液を分離してLi22溶解性評価用電解液を調製した。
【0101】
(各電解液のLi22溶解濃度測定)
過酸化リチウムを混合して調製したDEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、PP13TFSA、及びN1223TFSAのそれぞれのイオン液体について、Li22溶解濃度を比較した。
【0102】
2重管及びリチウム化合物の溶解濃度が既知の基準物質(エチルメチルカーボネートにLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させたもの)を用意し、調製したLi22溶解性評価用電解液を2重管の外管に入れ、基準物質を2重管の内管に入れて、25℃で7Li−NMR(バリアン製、INOVA300)を行った。基準物質について測定したLiPF6のピークに対する、評価用イオン液体について得られたLi22のピークの積分比を計測し、ピーク積分比と2重管の内管及び外管に入れた液量比とを用いて計算して、評価用電解液中のLi22溶解濃度を算出した。
【0103】
図1に、各電解液中のLi22溶解濃度のグラフを示す。PP13TFSA及びN1223TFSAはLi22を溶解することができなかったが、DEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、及びDEME4TFSAは、それぞれLi22溶解濃度が、0.6mmol/kg、8.1mmol/kg、8.1mmol/kg、及び9.8mmol/kgであった。また、DEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、及びDEME4TFSAのうち、エーテル基の数が多くなるほどLi22の溶解濃度が増加する傾向がみられ、特にエーテル基が2以上で高いLi22溶解濃度を有することが分かった。これらの結果から、リチウムイオン親和性が高い電子供与性官能基であるエーテル基を有するDEME、特に2以上のエーテル基を有するDEME、とりわけ2〜4のエーテル基を有するDEMEは、Li22溶解性に優れており、特にリチウム空気電池用の電解液として適していることが分かった。
【0104】
(酸素供給能の測定)
DEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、及びDEME4TFSA、及びPP13TFSAの各イオン液体について、次の条件による電気化学測定を行って酸素供給能を求めた。
【0105】
作用電極としてグラッシーカーボン(径3mm)、参照電極としてAg/Ag+、及び対極としてNiを備えた気密性を有する三電極式の測定セル、並びに測定装置としてポテンショスタット/ガルバノスタット(Solartron)を用意した。各イオン液体を入れた測定セルを、25℃、1気圧の恒温槽にて3時間静置し、測定セル内の雰囲気をアルゴン雰囲気で置換した後、純酸素で30分間、イオン液体をバブリングしながら酸素雰囲気に置換した。次いで、25℃、酸素雰囲気、及び1気圧の条件下で、スイープ電圧10mV/sで−1.7〜1.3V v.s. Ag/Ag+の範囲で、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。次いで、サイクリックボルタンメトリー(CV)から拡散律速状態と推定された電位を使用して、ポテンシャルステップクロノアンペロメトリー測定を行い、コットレル(Cottrell)の式:
【数2】

(式中、i[A/cm-2]は限界電流密度、nは反応電子数であり1、F[C・mol-1]はファラデー定数であり96500C/mol、C[mol・cm-3]は酸素濃度、D[cm2・s-1]は拡散係数を示す)を用いて、時間tの平方根の逆数に対して測定した限界電流密度iから、
【数3】

を求めた。
【0106】
図2に、それぞれのイオン液体について測定した酸素供給能を比較したグラフを示す。酸素供給能(10-9mol・cm-2・s-0.5)は、DEMETFSAが9.8、DEME2TFSAが12.0、DEME3TFSAが7.0、DEME4TFSAが3.3、及びPP13TFSAが8.0を示した。DEME2TFSA及びDEME2TFSAがより高い酸素供給能を有しており、2つのエーテル基を有するDEMEが、リチウム空気電池用の電解液として適していることが分かった。特にDEMETFSAが高い酸素供給能を示した。DEME3TFSA及びDEME4TFSAは、酸素供給能が低かったが、これはリチウムイオンがカチオンのエーテル基と配位し過ぎて酸素が動きにくかったためと考えられる。
【0107】
(リチウムイオン輸率評価)
(実施例1−2)
DEMETFSA(関東化学製)を溶媒として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、高純度化学製)を0.35mol/kgの濃度で、60℃のAr雰囲気下で秤量混合して6時間攪拌して、リチウムイオン輸率評価用電解液を調製した。
【0108】
(実施例2−2)
DEME2TFSAを溶媒として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、高純度化学製)を0.35mol/kgの濃度で、60℃のAr雰囲気下で秤量混合して6時間攪拌して、リチウムイオン輸率評価用電解液を調製した。
【0109】
(実施例3−2)
DEME3TFSAを溶媒として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、高純度化学製)を0.35mol/kgの濃度で、60℃のAr雰囲気下で秤量混合して6時間攪拌して、リチウムイオン輸率評価用電解液を調製した。
【0110】
(実施例4−2)
DEME4TFSAを溶媒として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、高純度化学製)を0.35mol/kgの濃度で、60℃のAr雰囲気下で秤量混合して6時間攪拌して、リチウムイオン輸率評価用電解液を調製した。
【0111】
(比較例1−2)
PP13TFSA(関東化学製)を溶媒として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、高純度化学製)を0.35mol/kgの濃度で、60℃のAr雰囲気下で秤量混合して6時間攪拌して、リチウムイオン輸率評価用電解液を調製した。
【0112】
(リチウムイオン輸率の測定)
LiTFSAを混合して調製したDEMETFSA、DEME2TFSA、DEME3TFSA、DEME4TFSA、及びPP13TFSAの各電解液のリチウムイオン輸率について、磁場勾配NMR(バリアン社製、INOVA300)にて、60℃で7Li(Liカチオン)、1H(カチオン)、19F(アニオン)の拡散係数(DLi、DH、DF)を算出し、リチウムイオン輸率tLiを下記式にて決定した。
【0113】
Li=(リチウムイオンの拡散量)/(カチオンの拡散量+アニオンの拡散量)
=CLiTFSA×DLi/{CLiTFSA×DLi+[CLiTFSA+(1000−CLiTFSA×(LiTFSAの分子量))/(イオン液体の分子量)]×DF+(1000−CLiTFSA×(LiTFSAの分子量))/(イオン液体の分子量)×DH
(式中、CLiTFSAはLiTFSAの濃度を表す)
【0114】
図3に、各電解液の60℃におけるリチウムイオン輸率を比較したグラフを示す。リチウムイオン輸率は、DEMETFSAが3.5%、DEME2TFSAが4.5%、DEME3TFSAが4.9%、DEME4TFSAが4.8%、及びPP13TFSAが3.5%を示した。これにより、2以上のエーテル基を有するDEME、とりわけ2〜4のエーテル基を有するDEME2〜4にLiTFSAを溶解させた電解液は、特にリチウムイオン電池用の電解液として適していることが分かった。
【0115】
(I−V特性及びクーロン効率の評価)
(実施例1−3)
90質量%のカーボンブラック(ECP600JD、KetjenBlack International製)、10質量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダー(ダイキン製)、及び溶媒として適量のエタノールを混合して、混合物を得た。次いで、得られた混合物をロールプレスにて圧延し、乾燥及び切断した。SUS304製100メッシュ(ニラコ社製)を集電体として用いて、切断した混合物と集電体とを圧着し、次いで加熱真空乾燥を行い、メッシュ状の集電体を圧着した直径18mm、厚み150μmの正極層を形成した。
【0116】
DEMETFSAを溶媒として、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、キシダ化学製)を0.35mol/kgの濃度になるように、60℃にて5時間、Ar雰囲気下で混合して溶解させて、電解液を調製した。
【0117】
負極層として、直径18mm、厚み250μmの金属リチウム箔(本城金属製)を用意し、直径18mm、厚み2cmのSUS304(ニラコ社製)の集電体に貼り付けた。
【0118】
密閉容器として、図5に示す北斗電工社製のF型セル10を用いた。F型セル10に、負極集電体7及び負極層3を組み付け、調製した電解液を負極層3上に注入して直径18mm、厚み2mmの電解質層2を形成し、次いで正極(空気極)層1及び正極集電体6を組み付けて、評価用セルを作製した。
【0119】
次いで、F型セル10をガス置換コック付のガラスデシケーター(500ml仕様)に入れて、ガラスデシケーター中の雰囲気を、純酸素(大陽日酸、99.9%)を用いて酸素雰囲気に置換した。
【0120】
(実施例2−3)
DEME2TFSAを溶媒として、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、キシダ化学製)を0.35mol/kgの濃度となるように混合、溶解させて、これを電解液として用いたこと以外は、実施例1−3と同様にして評価用セルを作製し、酸素雰囲気のガラスデシケーターに入れた。
【0121】
(実施例3−3)
DEME3TFSAを溶媒として、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、キシダ化学製)を0.35mol/kgの濃度となるように混合、溶解させて、これを電解液として用いたこと以外は、実施例1−3と同様にして評価用セルを作製し、酸素雰囲気のガラスデシケーターに入れた。
【0122】
(実施例4−3)
DEME4TFSAを溶媒として、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、キシダ化学製)を0.35mol/kgの濃度となるように混合、溶解させて、これを電解液として用いたこと以外は、実施例1−3と同様にして評価用セルを作製し、酸素雰囲気のガラスデシケーターに入れた。
【0123】
(比較例1−3)
PP13TFSAを溶媒として、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、キシダ化学製)を0.35mol/kgの濃度となるように混合、溶解させて、これを電解液として用いたこと以外は、実施例1−3と同様にして評価用セルを作製し、酸素雰囲気のガラスデシケーターに入れた。
【0124】
(参考例1−3)
N1223TFSAを溶媒として、リチウム塩であるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA、キシダ化学製)を0.35mol/kgの濃度となるように混合、溶解させて、これを電解液として用いたこと以外は、実施例1−3と同様にして評価用セルを作製し、酸素雰囲気のガラスデシケーターに入れた。
【0125】
(I−V特性の測定)
実施例1−3及び2−3で作製したDEMETFSA及びDEME2TFSAを含む電解液を用いた空気電池、並びに比較例1−3及び参考例1−3で作製したPP13TFSA及びN1223TFSAを含む電解液を用いた空気電池について、電流電圧(I−V)特性を、次の条件にて評価した。
【0126】
ガラスデシケーターに入れた空気電池を、試験開始前に25℃の恒温槽にて3時間静置した。次いで、マルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタットVMP3(Bio−Logic社製)充放電I−V測定装置を用いて、25℃、1気圧、酸素雰囲気下で、電流印加時間/レスト時間を30分/0.1秒として、I−V特性を測定した。
【0127】
図4に、正極の単位面積当たりの電流密度に対する電圧値を測定したI−V特性を示す。比較例1−3及び参考例1−3で作製したPP13TFSA及びN1223TFSAを含む電解液を用いた空気電池に比べて、実施例1−3及び実施例2−3で作製したDEMETFSA及びDEME2TFSAを含む電解液を用いた空気電池の方が、I−V特性が優れており、高出力を得ることができることが分かった。
【0128】
(初回クーロン効率の測定)
実施例1−3、2−3、及び4−3で作製したDEMETFSA、DEME2TFSA、及びDEME4TFSAを含む電解液を用いた金属空気電池、並びに比較例1で作製したPP13TFSAを含む電解液を用いた金属空気電池について、次の条件にて充放電試験を行い、初回クーロン効率を測定した。
【0129】
ガラスデシケーターに入れた金属空気電池を、試験開始前に60℃の恒温槽にて3時間静置した。次いで、マルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタットVMP3(Bio−Logic社製)充放電I−V測定装置を用いて、60℃、純酸素、1気圧の条件下で、正極面積2.5cm2、0.04mA/cm2で充放電試験を行った。
【0130】
初回クーロン効率は、以下の式にて算出した。
初回クーロン効率=(1サイクル目の充電容量)/(1サイクル目の放電容量)
【0131】
表1に、実施例1−3、2−3、及び4−3、並びに比較例1−3で作製した金属空気電池の初回クーロン効率を示す。
【0132】
【表1】

【0133】
比較例1−3で作製したPP13TFSAを含む電解液を用いた金属空気電池の初回クーロン効率は20%であったのに比べて、実施例1−3、2−3、及び4−3で作製したDEMETFSA、DEME2TFSA、及びDEME4TFSAを含む電解液を用いた金属空気電池の初回クーロン効率は、42%、55%、及び64%であり、初回クーロン効率が高いことが分かった。また、DEMETFSA、DEME2TFSA、及びDEME4TFSAのうち、エーテル基の数が多くなるほど、初回クーロン効率が向上する傾向がみられた。
【符号の説明】
【0134】
1 正極層
2 電解質層
3 負極層
6 正極集電体
7 負極集電体
8 ガス溜め部
9 密閉容器
10 F型電気化学セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME2TFSA)、
式(2):
【化2】

で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシジエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME3TFSA)、
式(3):
【化3】

で表されるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシトリエトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEME4TFSA)、またはこれらの混合物を含む、電解液。
【請求項2】
リチウム含有金属塩をさらに含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記リチウム含有金属塩がリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSA)である、請求項2に記載の電解液。
【請求項4】
正極層、負極層、及び前記空気極層と前記負極層との間に配置される電解質層を有するリチウムイオン電池であって、
前記電解質層が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解液を含む、リチウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84431(P2013−84431A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223266(P2011−223266)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】