説明

静電型スピーカ

【課題】挟持する固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる静電型スピーカを提供すること。貫通孔を設ける固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる静電型スピーカを提供すること。
【解決手段】静電型スピーカ10は、表面102Aに導電層103が設けられた振動体102と、表面102Aと対向する表面112Aに導電層113が設けられた電極112とを備える本体部を有する。静電型スピーカ10の本体部には、保持部材によって保持される保持領域10Aが設けられている。静電型スピーカ10は、(a)導電層103は表面102Aにおける保持領域10Aの部分を回避して表面102Aに設けられている、または、(b)導電層113は表面112Aにおける保持領域10Aの部分を回避して表面112Aに設けられている、の少なくともいずれか一方を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導電性を有し、面同士が対向して配置された一対の固定電極と、導電性を有し、一対の固定電極の間において、一対の固定電極と離間して配置された振動板とを備える静電型スピーカが記載されている。特許文献2には、薄膜状部材により形成された振動板の両面側に、ダンピング部材を介して平面電極が配置された平面スピーカが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274341号公報
【特許文献2】特開2008−054154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2に記載の技術では、静電型スピーカの固定方法によっては、隣接する導電層同士が導通してしまい、静電型スピーカが正常に機能することができない。たとえば、静電型スピーカの端部を挟持することで静電型スピーカを固定する場合、挟持された部分に強い圧力がかかったことにより、静電型スピーカ内部の隣接する導電層同士が短絡してしまうと、静電型スピーカが正常に機能しない。また、静電型スピーカに貫通孔を設け、螺子、フックなどの導電性を有する保持部材を貫通孔に通すことで静電型スピーカを固定する場合、貫通孔の内壁面に露出した隣接する導電層同士が保持部材によって短絡してしまうと、静電型スピーカが正常に機能しない。また、貫通孔の周辺に強い圧力が加わることによっても、隣接する導電層同士が短絡してしまうと、静電型スピーカが正常に機能しない。そこで、本発明は、上記した固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、隣接する導電層同士が短絡することがない静電型スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、第1の表面に第1の導電層が設けられた振動体と、前記第1の表面と対向する第2の表面に第2の導電層が設けられた電極と、を備える本体部を有し、前記本体部には、保持部材によって保持される保持領域が設けられ、前記第1の導電層は、前記第1の表面における前記保持領域の部分を回避して、前記第1の表面に設けられている、または、前記第2の導電層は、前記第2の表面における前記保持領域の部分を回避して、前記第2の表面に設けられているの少なくともいずれか一方を満たすことを特徴とする静電型スピーカを提供する。また、本発明は、前記保持領域は、前記本体部の端部に沿って設けられており、前記第1の表面における前記保持領域の部分は、前記第1の表面における前記端部に沿って設けられており、前記第2の表面における前記保持領域の部分は、前記第2の表面における前記端部に沿って設けられていることを特徴とする静電型スピーカを提供する。また、本発明は、前記本体部は、前記振動体および前記電極をそれぞれ貫通する貫通孔が形成され、前記第1の表面における前記保持領域の部分は、前記第1の表面における前記貫通孔の外周に沿って設けられており、前記第2の表面における前記保持領域の部分は、前記第2の表面における前記貫通孔の外周に沿って設けられていることを特徴とする静電型スピーカを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の静電型スピーカによれば、静電型スピーカを挟持する固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる。また、静電型スピーカに貫通孔を設ける固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の外観を示す。
【図2】第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の断面を示す。
【図3】第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の構成を示す。
【図4】第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の電気的構成を示す。
【図5】第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の保持例を示す。
【図6】第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の外観を示す。
【図7】第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の断面を示す。
【図8】第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の構成を示す。
【図9】第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の保持例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の外観を示す。図2は、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の断面を示す。図3は、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の構成を示す。静電型スピーカ10(本体部)は、電極112、振動体102、電極114、およびクッション材132を備える。静電型スピーカ10は、上から電極112、クッション材132、振動体102、クッション材132、電極114の順に重ねられることで、積層構造を有する。これらの部材は、テープ、接着剤などによって、互いに固着されている。これにより、静電型スピーカ10は、図1に示したように、各部材が結合された状態を維持する。電極112、振動体102、および電極114は、いずれも薄膜状の部材によって形成されており、柔軟性を有する。また、電極112、振動体102、および電極114は、いずれも矩形かつ平板状の部材である。電極112、電極114、および振動体102には、PET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)などの素材が用いられる。電極112には、貫通孔112Cが所定間隔で複数設けられている。電極114には、貫通孔114Cが所定間隔で複数設けられている。
【0009】
静電型スピーカ10の本体部には、保持領域10Aが設けられている。保持領域10Aとは、静電型スピーカ10を設置する場合に、保持部材によって保持される領域を示す。静電型スピーカ10において、保持領域10Aは、本体部の端部に沿って、設けられている。具体的には、静電型スピーカ10において、保持領域10Aは、矩形状の本体部の一辺に沿って、一定の幅Wを有して設けられている。
【0010】
振動体102は、クッション材132を介して、電極112と電極114とに、一端が挟まれて保持される。振動体102と電極112との間には、クッション材132が挟み込まれる。また、振動体102と電極114との間には、クッション材132が挟み込まれる。クッション材132は、絶縁性、通気性、および弾性を有する。クッション材132には、綿を圧縮したものが用いられる。これにより、振動体102と電極112との間、および振動体102と電極114との間には、振動体102が振動するのに十分な内部空間10Bが形成される。ここで、電極112と振動体102との間に、振動体102が振動するのにより十分な内部空間10Bを確保するためのスペーサを設けてもよい。同様に、電極114と振動体102との間に、振動体102が振動するのにより十分な内部空間10Bを確保するためのスペーサを設けてもよい。
【0011】
振動体102の上記一端以外の部分である振動部は、内部空間10B内に収まる形状および大きさを有する。振動体102の振動部は、上下方向において、内部空間10Bの略中間位置であって、電極112と電極114との間の略中間位置に位置している。振動体102の上面である表面102A(第1の表面)は、当該振動体102が振動するために十分な大きさの内部空間10Bを挟んで、電極112の下面である表面112A(第2の表面)と対向する。振動体102の下面である表面102B(第3の表面)は、当該振動体102が振動するために十分な大きさの内部空間10Bを挟んで、電極114の上面である表面114A(第4の表面)と対向する。
【0012】
振動体102の表面102Aには、導電層103(第1の導電層)が形成されている。振動体102の表面102Bには、導電層104(第3の導電層)が形成されている。電極112の表面112Aには、導電層113(第2の導電層)が形成されている。電極114の表面114Aには、導電層115(第4の導電層)が形成されている。導電層103、導電層104、導電層113、および導電層115は、表面102A、表面102B、表面112A、および表面114Aに対して、導電性を有する金属を蒸着するか、または導電性を有する塗料を塗布することにより、表面102A、表面102B、表面112A、および表面114Aに形成される。
【0013】
静電型スピーカ10において、保持領域10Aは、本体部の端部に沿って一定の幅Wを有して設けられている。これにより、表面102Aにおける保持領域10Aの部分は、表面102Aにおける上記端部に沿って一定の幅Wを有して設けられている。また、表面102Bにおける保持領域10Aの部分は、表面102Bにおける上記端部に沿って一定の幅Wを有して設けられている。また、表面112Aにおける保持領域10Aの部分は、表面112Aにおける上記端部に沿って一定の幅Wを有して設けられている。表面114Aにおける保持領域10Aの部分は、また、表面114Aにおける上記端部に沿って一定の幅Wを有して設けられている。
【0014】
静電型スピーカ10は、(a)導電層103は、表面102Aにおける保持領域10Aの部分を回避して表面102Aに設けられている、または、(b)導電層113は、表面112Aにおける保持領域10Aの部分を回避して表面112Aに設けられている、の少なくともいずれか一方を満たす。たとえば、本実施形態の静電型スピーカ10は、表面102Aにおける保持領域10Aの部分には、導電層103が形成されていない。すなわち、導電層103は、保持領域10Aの部分を回避して、表面102Aに形成されている。また、表面112Aにおける保持領域10Aの部分には、導電層113が形成されていない。すなわち、導電層113は、保持領域10Aの部分を回避して、表面112Aに形成されている。
【0015】
また、静電型スピーカ10は、(c)導電層104は、表面102Bにおける保持領域10Aの部分を回避して表面102Bに設けられている、または、(d)導電層115は、表面114Aにおける保持領域10Aの部分を回避して表面114Aに設けられている、の少なくともいずれか一方を満たす。たとえば、本実施形態の静電型スピーカ10は、表面102Bにおける保持領域10Aの部分には、導電層104が形成されていない。すなわち、導電層104は、保持領域10Aの部分を回避して、表面102Bに形成されている。また、表面114Aにおける保持領域10Aの部分には、導電層115が形成されていない。すなわち、導電層115は、保持領域10Aの部分を回避して、表面114Aに形成されている。
【0016】
図4は、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の電気的構成を示す。静電型スピーカ10は、変圧器42、外部から音響信号が入力される入力部44、振動体102に対して直流バイアスを与えるバイアス電源46を備えたプッシュプル型の静電型スピーカである。変圧器42の出力側の中点は、バイアス電源46の一方の電極に接続されている。バイアス電源46の他方の電極は、導電層103および導電層104に接続されている。変圧器42の出力側の一方の端部は、導電層113に接続されている。変圧器42の出力側の他方の端部は、導電層115に接続されている。変圧器42の入力側の端部は、入力部44に接続されている。入力部44に音響信号が入力されると入力された音響信号に応じた電圧が導電層113および導電層115に印加される。そして、印加された電圧によって導電層113と導電層115との間に電位差が生じると、導電層113と導電層115との間にある導電層103および導電層104には、導電層113または導電層115のいずれかの側へ引き寄せられる静電力が働く。
【0017】
たとえば、導電層103および導電層104にプラスの電圧が印加された場合において、導電層113にプラスの電圧が印加され、導電層115にマイナスの電圧が印加されると、導電層103および導電層104は、導電層113と反発するとともに、導電層115に吸引され、導電層115へ変位する。また、導電層103および導電層104にプラスの電圧が印加された場合において、導電層113にマイナスの電圧が印加され、導電層115にプラスの電圧が印加されると、導電層103および導電層104は、導電層115と反発するとともに、導電層113に吸引され、導電層113側へ変位する。音響信号に応じて、導電層103および導電層104が、導電層113側および導電層115への変位を繰り返すことにより、振動体102が振動する。そして、振動体102は、振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音を発する。振動体102が発した音は、電極112の貫通孔112Cおよび電極114の貫通孔112Cの少なくともいずれか一方を通り抜けて静電型スピーカ10の外部に放射される。
【0018】
図5は、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の保持例を示す。スピーカ設備500は、静電型スピーカ10および吊持型の保持部材510を備える。静電型スピーカ10は、保持部材510によって、吊り下げられて設置されている。静電型スピーカ10の上端には、保持領域10Aが設けられている。静電型スピーカ10は、保持領域10Aの範囲内において、保持部材510に狭持されている。保持領域10Aには、保持部材510に挟持されたことにより、静電型スピーカ10を挟持するのに十分な強さの圧力が加わっている。保持領域10Aにおいては、電極112、電極114、および振動体102のいずれにも導電層が対向しては形成されていない。このため、保持領域10Aに加わった強い圧力によって、隣接する導電層同士が短絡してしまうことがない。このように、静電型スピーカ10によれば、静電型スピーカ10を挟持する固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる。なお、静電型スピーカ10を固定するための貫通孔を保持領域10Aに設け、静電型スピーカ10を対象物に固定してもよい。この場合であっても、保持領域10Aにおいては、電極112、電極114、および振動体102のいずれにも導電層が対向しては形成されていないため、正常に機能することができる。
【0019】
図6は、第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の外観を示す。第2の実施形態に係る静電型スピーカ10は、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10の変形例である。以降では、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10と同一の点については説明を省略し、第1の実施形態に係る静電型スピーカ10と異なる点を説明する。
【0020】
静電型スピーカ10の本体部には、静電型スピーカ10の一方の表面(電極112の上面)から、静電型スピーカ10の他方の表面(電極114の下面)へ貫通する貫通孔10Cが形成されている。すなわち、貫通孔10Cは、電極112、振動体102、および電極114をそれぞれ貫通する。図6に示す例では、貫通孔10Cは、矩形状を有する。静電型スピーカ10の本体部には、保持領域10Dが設けられている。保持領域10Dとは、静電型スピーカ10を設置する場合に、保持部材によって保持される領域を示す。静電型スピーカ10において、保持領域10Dは、貫通孔10Cの外周に沿って、設けられている。具体的には、静電型スピーカ10において、保持領域10Dは、矩形状の貫通孔10Cの外周に沿って、貫通孔10Cよりも大きい矩形状を有して設けられている。
【0021】
図7は、第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の断面を示す。図8は、第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の構成を示す。静電型スピーカ10において、保持領域10Dは、貫通孔10Cの外周に沿って、設けられている。これにより、表面102Aにおける保持領域10Dの部分は、表面102Aにおける貫通孔10Cの外周に沿って設けられている。また、表面102Bにおける保持領域10Dの部分は、表面102Bにおける貫通孔10Cの外周に沿って設けられている。また、表面112Aにおける保持領域10Dの部分は、表面112Aにおける貫通孔10Cの外周に沿って設けられている。また、表面114Aにおける保持領域10Dの部分は、表面114Aにおける貫通孔10Cの外周に沿って設けられている。
【0022】
表面102Aにおける保持領域10Dの部分には、導電層103が形成されていない。すなわち、導電層103は、保持領域10Dの部分を回避して、表面102Aに形成されている。また、表面102Bにおける保持領域10Dの部分には、導電層104が形成されていない。すなわち、導電層104は、保持領域10Dの部分を回避して、表面102Bに形成されている。また、表面112Aにおける保持領域10Dの部分には、導電層113が形成されていない。すなわち、導電層113は、保持領域10Dの部分を回避して、表面112Aに形成されている。また、表面114Aにおける保持領域10Dの部分には、導電層115が形成されていない。すなわち、導電層115は、保持領域10Dの部分を回避して、表面114Aに形成されている。
【0023】
図9は、第2の実施形態に係る静電型スピーカ10の保持例を示す。図9に示すスピーカ設備500は、静電型スピーカ10および掛止型の保持部材510を備える。静電型スピーカ10は、保持部材510によって、壁面920に吊り下げられて設置されている。保持部材510は、壁面920に固定されている。静電型スピーカ10には、貫通孔10Cが形成されている。静電型スピーカ10には、貫通孔10Cの外周に沿って保持領域10Dが設けられている。静電型スピーカ10においては、壁面920に固定されている保持部材510の突出部分が、貫通孔10Cを貫通している。貫通孔10Cは、保持部材510の突出部分に掛止されている。これにより、静電型スピーカ10は、壁面920から落下しないように、保持部材510に保持されている。ここで、保持領域10Dにおいては、電極112、電極114、および振動体102のいずれにも導電層が形成されていない。このため、貫通孔10Cの内壁面には、導電層が露出していない。これにより、保持部材510が導電性を有するものであったとしても、静電型スピーカ10が備える導電層同士が保持部材510を介して短絡してしまうことがない。このように、第2の実施形態に係る静電型スピーカ10によれば、静電型スピーカ10に貫通孔10Cを設ける固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる。
【0024】
以上、本発明の第1の実施形態および第2の実施形態について説明したが、本発明は上述した第1の実施形態および第2の実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の第1の実施形態および第2の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0025】
第1の実施形態および第2の実施形態において、静電型スピーカ10は、上記した構成に限らず、少なくとも、第1の表面に第1の導電層が設けられた振動体と、第1の表面と対向する第2の表面に第2の導電層が設けられた基板とを備えていればよい。たとえば、静電型スピーカ10は、少なくとも、表面102Aに導電層103が設けられた振動体102と、表面112Aに導電層113が設けられた電極112とを備えていればよい。電極112、振動体102、および電極114は、保持領域10Aの部分および保持領域10Dの部分に導電性を有さず、保持領域10A以外の部分および保持領域10D以外の部分に導電性を有するものであればよく、上記した構成に限らない。たとえば、電極112および電極114の少なくともいずれか一方に、保持領域10Aの部分および保持領域10Dの部分に導電材が含まれ、保持領域10Aおよび保持領域10Dの部分に導電材が含まれていない平板状の導電布を用いてもよい。
【0026】
第1の実施形態および第2の実施形態において、電極112、電極114、および振動体102には、PETおよびPP以外の素材を用いてもよい。たとえば、電極112、電極114、および振動体102には、合成樹脂を用いてもよい。クッション材132は、通気性および弾性を有するものであればよく、綿を圧縮したものに限らない。たとえば、クッション材132には、エステルウールなどを用いてもよい。振動体102、電極112、および電極114は、矩形状に限らない。たとえば、これらの部材は、円形状、または矩形以外の多角形状であってもよい。
【0027】
第1の実施形態および第2の実施形態において、保持部材510には、端子が設けられていてもよい。これに応じて、静電型スピーカ10には、保持部材510に保持された場合に、保持部材510に設けられた端子と接触する位置に、端子が設けられていてもよい。この場合、保持部材510および静電型スピーカ10に設けられた端子は、導電層113に給電するための端子、導電層115に給電するための端子、導電層103に給電するための端子、または導電層104に給電するための端子のいずれであってもよい。保持部材510および静電型スピーカ10には、上記した端子が複数設けられてもよい。たとえば、保持部材510および静電型スピーカ10のそれぞれに、保持部材510および静電型スピーカ10に設けられた端子は、導電層113に給電するための端子、導電層115に給電するための端子、導電層103に給電するための端子、および導電層104に給電するための端子がそれぞれ設けられてもよい。
【0028】
第1の実施形態において、保持領域10Aは、矩形状の静電型スピーカ10の一辺に沿ったものに限らない。また、保持領域10Aは、一定の幅を有するものに限らない。たとえば、保持領域10Aは、静電型スピーカ10を保持する保持部材の位置、形状、および大きさに合わせた位置、形状、および大きさを有して本体部に設けられてもよい。保持部材510は、静電型スピーカ10の上端を保持するものに限らず、静電型スピーカ10の上端以外の部分を保持するものであってもよい。たとえば、保持部材510は、静電型スピーカ10の左右両端、静電型スピーカ10の上下両端、静電型スピーカ10の4角、静電型スピーカ10の4辺、などを保持するものであってもよい。これらの場合、保持領域10Aは、少なくとも保持部材510に保持される位置に設けられていればよい。保持部材510は、静電型スピーカ10の辺の長さよりも短いものであってもよい。この場合、保持領域10Aは、保持部材510によって保持される辺の長さ方向において、少なくとも保持部材の長さと同じ長さを有して設けられていればよい。
【0029】
第1の実施形態において、静電型スピーカ10は、保持領域10Aの部分において、隣接する導電層同士が短絡しない構成であればよい。すなわち、振動体102の表面102A、および電極112の表面112Aの少なくともいずれか一方が導電性を有していない構成としてもよい。同様に、振動体102の表面102B、および電極114の表面114Aの少なくともいずれか一方が導電性を有していない構成としてもよい。たとえば、保持領域10Aの部分において、導電層113および導電層103のいずれか一方が設けられていない構成としてもよい。同様に、保持領域10Aの部分において、導電層115および導電層104のいずれか一方が設けられていない構成としてもよい。他の例として、保持領域10Aの部分において、導電層113および導電層103のいずれか一方の表面に絶縁層を形成する構成としてもよい。同様に、保持領域10Aの部分において、導電層115および導電層104のいずれか一方の表面に絶縁層を形成する構成としてもよい。
【0030】
第2の実施形態において、貫通孔10Cは、矩形状に限らない。たとえば、貫通孔10Cは、円形状、または矩形以外の多角形状であってもよい。静電型スピーカ10の本体部に形成されている貫通孔10Cの数は2つに限らない。たとえば、静電型スピーカ10の本体部には、1つまたは3つ以上の貫通孔10Cが形成されていてもよい。保持領域10Dは、矩形状に限らない。たとえば、保持領域10Dは、円形状、または矩形以外の多角形状であってもよい。保持領域10Dは、貫通孔10Cの形状と同じ形状でなくてもよい。保持領域10Dは、静電型スピーカ10を保持する保持部材の形状、および大きさに合わせた形状、および大きさを有して本体部に設けられてもよい。保持領域10Dは、静電型スピーカ10を保持する保持部材の保持位置に合わせた本体部の位置に設けられてもよい。
【0031】
第2の実施形態において、貫通孔10Cを用いた静電型スピーカ10の固定方法は、図9に示した保持部材510による固定方法に限らない。たとえば、壁面920から突出した釘、杭などの棒状の保持部材510に、貫通孔10Cを掛止させることにより、静電型スピーカ10を、壁面920から落下しないように、保持部材510に保持させてもよい。また、たとえば、貫通孔10Cに螺子を貫通させたうえで、壁面920に対して、螺子を締め込むことで、壁面920に対して静電型スピーカ10を固定してもよい。この場合、より確実に静電型スピーカ10を壁面920に固定するため、螺子をより締め込むことにより、螺子の頭部で、静電型スピーカ10を壁面920に対して強い圧力で押し付けてもよい。この場合、保持領域10Dには、螺子の頭部により、静電型スピーカ10を壁面920に対して押し付けて固定するのに十分な強さの圧力が加わる。保持領域10Dにおいては、電極112、電極114、および振動体102のいずれにも導電層が形成されていない。このため、保持領域10Dに加わった強い圧力によって、隣接する導電層同士が短絡してしまうことがない。このように、第2の実施形態に係る静電型スピーカ10によれば、静電型スピーカ10に形成された貫通孔10Cの周囲を挟持する固定方法を用いて対象物に固定された場合であっても、正常に機能することができる。
【0032】
第2の実施形態において、静電型スピーカ10の出荷時には、静電型スピーカ10には、貫通孔10Cが設けられていなくてもよい。この場合、静電型スピーカ10の出荷時には、静電型スピーカ10には、貫通孔10Cが設けられた場合に貫通孔10Cの周囲の領域となる領域に、保持領域10Dが設けられていてもよい。これらの場合、貫通孔10Cは、ユーザが静電型スピーカ10を壁面920に固定する際に、ユーザが形成してもよい。たとえば、ユーザは、静電型スピーカ10を固定する前に、あらかじめ、ドリル、ポンチなどを用いて保持領域10Dに貫通孔10Cを形成しておいてもよい。また、ユーザは、保持領域10Dに釘を打ち込むことによって、静電型スピーカ10を壁面920に固定するなど、静電型スピーカ10を固定すると同時に、貫通孔10Cを形成してもよい。
【0033】
静電型スピーカ10の表面において、保持領域10Aおよび保持領域10Dの部分には、保持領域であることが示されてもよい。たとえば、静電型スピーカ10の表面において、保持領域10Aおよび保持領域10Dの部分には、保持領域10Aおよび保持領域10D以外の部分と異なる色で示されてもよい。たとえば、静電型スピーカ10の表面において、保持領域10Aおよび保持領域10Dの部分には、保持領域10Aおよび保持領域10D以外の部分と異なる表面形状を有してもよい。これにより、静電型スピーカ10の保持に適する、保持部材510の位置、形状、および大きさなどを、ユーザが容易に判断することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…静電型スピーカ、10A,10D…保持領域、10B…内部空間、10C…貫通孔、42…変圧器、44…入力部、46…バイアス電源、102…振動体、102A…表面、103…導電層、104…導電層、112…電極、112A…表面、112C…貫通孔、113…導電層、114…電極、114A…表面、114C…貫通孔、115…導電層、132…クッション材、500…スピーカ設備、510…保持部材、920…壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面に第1の導電層が設けられた振動体と、
前記第1の表面と対向する第2の表面に第2の導電層が設けられた電極と、
を備える本体部を有し、
前記本体部には、
保持部材によって保持される保持領域が設けられ、
前記第1の導電層は、
前記第1の表面における前記保持領域の部分を回避して、前記第1の表面に設けられている、
または、
前記第2の導電層は、
前記第2の表面における前記保持領域の部分を回避して、前記第2の表面に設けられている
の少なくともいずれか一方を満たす
ことを特徴とする静電型スピーカ。
【請求項2】
前記保持領域は、
前記本体部の端部に沿って設けられており、
前記第1の表面における前記保持領域の部分は、前記第1の表面における前記端部に沿って設けられており、
前記第2の表面における前記保持領域の部分は、前記第2の表面における前記端部に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電型スピーカ。
【請求項3】
前記本体部は、
前記振動体および前記電極をそれぞれ貫通する貫通孔が形成され、
前記第1の表面における前記保持領域の部分は、前記第1の表面における前記貫通孔の外周に沿って設けられており、
前記第2の表面における前記保持領域の部分は、前記第2の表面における前記貫通孔の外周に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電型スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−77924(P2011−77924A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228543(P2009−228543)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】