説明

静電容量型レベル計

【課題】構造体に絶縁物を用いても帯電の発生を抑制することができる静電容量型レベル計を提供する。
【解決手段】絶縁物で形成された柱状の内側構造体27と、内側構造体27の外周側に全周に亘り間隔を空けて配置され、絶縁物で形成された中空筒状の外側構造体23と、内側構造体27の外周面に貼られた内側電極29と、外側構造体23の内周面に貼られた外側電極25と、を備え、内側電極29および外側電極25間の静電容量を測定し、内側電極29および外側電極25間に存在する燃料のレベルを検出する燃料油量計15であって、外側構造体23に、外周面から外側電極25へ電荷の移動を可能とする複数の外側貫通孔31が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型レベル計に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機などの輸送機器では、燃料タンクにおける燃料の残量を検出する燃料油量計として静電容量型レベル計が広く用いられている。
この燃料油量計は、燃料が相互間に進入自在となるように配置された2つの円筒状電極を有しており、この電極間の静電容量を測定することにより、燃料の残量を検出するものである。
従来、この電極は、たとえば、特許文献1に示されるように構造体を兼ねた金属製とされていた。
【0003】
近年、航空機などの輸送機器の分野では、軽量化や、それによる高性能化を目的として、機体の翼や胴体などの構成要素に強化プラスチックなどの複合材料が用いられ始めている。この一環として、燃料油量計にも軽量化や耐環境性向上等のために複合材料のプラスチックによって2つの円筒状構造体を形成し、対向する周面に薄い電極層を形成したものが用いられるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−31559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、円筒状構造体は燃料に接触しているため、燃料が流動する際に燃料と円筒状構造体との間に流動帯電現象が発生する。たとえば、円筒状構造体をガラス繊維強化プラスチック(以下、「GFRP」と表記する。)を用いる場合には、GFRPが絶縁物であるため、発生した静電気がたまる、いわゆる帯電することになる。
また、円筒構造体の一面には電極が存在するので、電気二重層を形成することになり、円筒構造体の電極と反対側の面に大量の静電気が帯電することとなる。
【0006】
このように、大量の静電気が帯電すると、放電が発生した場合に、燃料に着火する能力を十分有しているので、放電に伴い発生する火花によって燃料に引火する恐れがある。このような引火源となるおそれのある帯電は、米国の連邦航空規則(FAR25.981)に適合しないおそれがあることから、このような燃料油量計は航空機の燃料タンクに適用しにくいという問題がある。
なお、円筒状構造体が導電性を有する炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」と表記する。)によって形成されるようにすると、この帯電は十分抑制することができる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、構造体に絶縁物を用いても帯電の発生を抑制することができる静電容量型レベル計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、絶縁物で形成された柱状の内側構造体と、該内側構造体の外周側に全周に亘り間隔を空けて配置され、絶縁物で形成された中空筒状の外側構造体と、前記内側構造体の外周面に貼られた内側電極と、前記外側構造体の内周面に貼られた外側電極と、を備え、前記内側電極および前記外側電極間の静電容量を測定し、前記内側電極および前記外側電極間に存在する被測定物のレベルを検出する静電容量型レベル計であって、前記外側構造体に、外周面から前記外側電極へ電荷の移動を可能とする複数の外側導通部が備えられている静電容量型レベル計である。
【0009】
本態様にかかる静電容量型レベル計では、絶縁物で構成された外側構造体の外周面は直接被測定物に接触しているので、被測定物が流動することによる流動帯電現象等により帯電する。また、外側構造体の内周面には外側電極が存在するので、電気二重層を形成することになり、外側構造体外周面には大量の静電気が帯電する可能性がある。
外側構造体に、外周面から外側電極へ電荷の移動を可能とする複数の外側導通部が備えられているので、外側構造体の外周面に帯電した電荷は、外側導通部を通って外側電極に移動し、外側電極を介して系外に移動する。
このように、外側構造体に絶縁物を用いても帯電の発生を抑制することができるので、静電気が帯電することによって放電する可能性を低くすることができる。このため、たとえ、被測定物が可燃性を有していたとしても引火することを防止できるので、静電容量型レベル計を、たとえば、航空機の燃料タンクの燃料油量計として適用することができる。
【0010】
上記態様においては、前記内側構造体は内部に前記被測定物が存在する中空構造とされ、前記内側構造体に、内周面から前記内側電極へ電荷の移動を可能とする複数の内側導通部が備えられていてもよい。
【0011】
上記態様では、柱状の内側構造体は中実構造でも、中空構造でもよい。内側構造体を軽量化するために中空構造とすると、被測定物が内側構造体の中空部に存在することとなるので、内側構造体の内周面が帯電する。しかし、内側構造体の中空部に存在する被測定物の量は、外側構造体の外周面に対するものと比べて相当少なくなるので、帯電の大きさが問題となるレベルにならないことも考えられる。
帯電の大きさが問題となるレベルの場合には、内側構造体に、内周面から内側電極へ電荷の移動を可能とする複数の内側導通部を備えるようにする。
このようにすると、内側構造体の内周面に帯電した電荷は、内側導通部を通って内側電極に移動し、内側電極を介して系外に移動するので、内側構造体に絶縁物を用いても帯電の発生を抑制することができる。これにより、内側構造体の内周面に静電気が帯電することによって放電する可能性を低くすることができるので、たとえ、被測定物が可燃性を有していたとしても引火することを防止できる。
【0012】
上記態様においては、前記外側導通部は、前記外側構造体の外周面から前記外側電極まで貫通する外側貫通孔で構成されていてもよい。
このようにすると、外側構造体の外周面に発生した静電気は、外周面に帯電せず、外側貫通孔を通って外側電極に移動するので、外側構造体の外周面への帯電を抑制することができる。
【0013】
上記態様においては、前記外側導通部は、前記外側構造体の外周面から前記外側電極までに至る外側導電体で構成されていてもよい。
このようにすると、外側構造体の外周面に発生した静電気は、外周面に帯電せず、外側導電体を通って外側電極に移動するので、外側構造体の外周面への帯電を抑制することができる。
外側導電体は、外側貫通孔を導電物で埋めて形成してもよいし、たとえば、金属等の棒状の導電体を外側構造体に突き刺して形成してもよい。
【0014】
上記態様においては、前記内側導通部は、前記内側構造体の内周面から前記内側電極まで貫通する内側貫通孔で構成されていてもよい。
このようにすると、内側構造体の内周面に発生した静電気は、内周面に帯電せず、内側貫通孔を通って内側電極に移動するので、内側構造体の内周面への帯電を抑制することができる。
【0015】
上記態様においては、前記内側導通部は、前記内側構造体の内周面から前記内側電極までに至る内側導電体で構成されていてもよい。
このようにすると、内側構造体の内周面に発生した静電気は、内周面に帯電せず、内側導電体を通って内側電極に移動するので、内側構造体の内周面への帯電を抑制することができる。
内側導電体は、内側貫通孔を導電物で埋めて形成してもよいし、たとえば、金属等の棒状の導電体を内側構造体に突き刺して形成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の静電容量型レベル計によれば、外側構造体に、外周面から外側電極へ電荷の移動を可能とする複数の外側導通部が備えられているので、外側構造体の外周面に帯電した電荷は、外側導通部を通って外側電極に移動し、外側電極を介して系外に移動する。
このように、外側構造体に絶縁物を用いても帯電の発生を抑制することができるので、静電気が帯電することによって放電する可能性を低くすることができる。このため、たとえ、被測定物が可燃性を有していたとしても引火することを防止できるので、たとえば、航空機の燃料タンクの燃料油量計として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の燃料油量計が設けられた主翼の構成について一部を破断して示す斜視図である。
【図2】図1の燃料油量計の概略構成を説明する斜視図である。
【図3】図2の燃料油量計の平面図である。
【図4】図2の燃料油量計の上部を示す部分斜視図である。
【図5】図2の燃料油量計の縦断面の一部を示す部分縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の燃料油量計の別の実施態様における縦断面の一部を示す部分縦断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の燃料油量計のまた別の実施態様における縦断面の一部を示す部分縦断面図である。
【図8】図2の燃料油量計における帯電状況を試験する試験装置を示す模式図である。
【図9】コロナ帯電装置の電源電圧に対する、燃料油量計の放電電荷を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態について、図1から図9を参照しながら説明する。
図1は、航空機の主翼を一部破断して示す斜視図である。
主翼1には、上側スキン3と、下側スキン5と、前側スパー7と、後側スパー9と、複数のリブ11と、が備えられている。
上側スキン3および下側スキン5は、主翼1の外形を構成し、空力面も兼ねる薄板であり、前側スパー7、後側スパー9およびストリンガ(図示省略)とともに主翼1に働く引っ張り荷重や、圧縮荷重の一部を受け持つものである。
【0019】
前側スパー7および後側スパー9は、図1に示すように、主翼1の翼長方向に延びる構造部材であって、上側スキン3および下側スキン5との間にわたって配置される部材である。
前側スパー7と後側スパー9との間を、主翼1の翼長方向に延びる補助部材である複数のストリンガが上側スキン3または下側スキン5の内側面に配置されている。
【0020】
リブ11は、図1に示すように、主翼1の翼幅方向に延びるとともに、上側スキン3および下側スキン5の間にわたって配置される構造部材である。言い換えると、リブ11は、前側スパー7および後側スパー9と略直交する方向に延びる構造部材であって、主翼1の断面形状に形成された板状の部材である。
【0021】
主翼1では、前側スパー7、後側スパー9、上側スキン3および下側スキン5で囲まれた部分が燃料を収納する燃料タンク13として用いられている。燃料タンク1は機体構造物自体が容器とされているので、インテグラル・タンク(integral tank)と呼ばれている。
燃料タンク3の内側には、ジェット燃料を受け入れ、供給する燃料配管(図示省略)、燃料油量を検出する複数の燃料油量計(静電容量型レベル計)15およびを燃料油量計15の配線(図示省略)などが設置されている。
【0022】
図2は、燃料油量計15の概略構成を説明する斜視図である。図3は、燃料油量計15の平面図である。図4は、燃料油量計15の上部を示す部分斜視図である。図5は、燃料油量計15の縦断面の一部を示す部分縦断面図である。
燃料油量計15には、略中空円筒形状をした外側電極構造部17と、略中空円筒形状をし、外側電極構造部17の内部に略同一軸線中心を有するように配置された内側電極構造部19と、外側電極構造部17および内側電極構造部19を連結する連結部材21と、が備えられている。
【0023】
外側電極構造部17には、図3および図4に示されるように、略中空円筒形状をし、構造強度を確保する外側構造体23と、外側構造体23の内周面に略全面に亘り取り付けられた外側電極25と、が備えられている。なお、外側電極25は、測定に必要な範囲に取り付けられればよく、外側構造体23の内周面の一部に取り付けられてもよい。
外側構造体23は、絶縁性であるGFRP(絶縁物)で形成されている。外側構造体23は、たとえば、外径が略25mm、厚さが0.5mm強である。外側構造体23の長さは、燃料タンク13の高さを略カバーできる程度とされている。
外側電極25は、金属製の薄膜であり、外側構造体23の内周面に貼り付けられている。
【0024】
内側電極構造部19には、図3および図4に示されるように、略中空円筒形状をし、構造強度を確保する内側構造体27と、内側構造体27の外周面に略全面に亘り取り付けられた内側電極29と、が備えられている。なお、内側電極29は、測定に必要な範囲に取り付けられればよく、内側構造体27の外周面の一部に取り付けられてもよい。
内側構造体27は、絶縁性であるGFRP(絶縁物)で形成されている。内側構造体27は、たとえば、外径が20mm弱、厚さが0.5mm強である。内側構造体27の長さは、外側構造体23と同程度とされている。
内側電極29は、金属製の薄膜であり、内側構造体23の外周面に貼り付けられている。
【0025】
なお、外側構造体23あるいは内側構造体27を構成する繊維強化プラスチックとしては、母材としてエポキシ樹脂を用いるとともに、強化繊維としてポリエステル繊維や、コットン繊維や、ナイロン繊維を用いた繊維強化プラスチックであってもよいし、母材としてポリイミド樹脂をもちいるとともに、強化繊維としてガラス繊維や、ポリエステル繊維や、コットン繊維や、ナイロン繊維を用いた繊維強化プラスチックであってもよく、特に限定するものではない。
【0026】
連結部材21は、絶縁物で形成されている。連結部材21は、高さ方向で複数箇所に設置され、かつ、略同一高さ位置で周方向に複数、たとえば、3個設置されている。
連結部材21は、平面視すると図3に示されるように、周方向で120°間隔で3箇所において、内側電極構造部19と外側電極構造部17との間隔を保持するように取り付けられ、内側電極構造部19を外側電極構造部17に両者が略同一軸線中心となるように保持している。
【0027】
外側電極構造部17には、図4および図5に示されるように外側構造体23の外周面から外側電極25の内周面まで貫通する複数の外側貫通孔(外側導通部)31が備えられている。外側貫通孔31は、外側構造体23の外周面から外側電極25へ電荷の移動を可能とするものである。
【0028】
内側電極構造部19には、図5に示されるように内側構造体27の内周面から内側電極29の外周面まで貫通する複数の内側貫通孔(内側導通部)33が備えられている。
外側貫通孔31および内側貫通孔33は、内径が略2mmで、略半径方向に略水平に削孔されている。内側貫通孔33は、内側構造体27の内周面から内側電極29へ電荷の移動を可能とするものである。
【0029】
隣り合う外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33の間隔は、約18mmとされている。この間隔が、大きくなると、外側構造体23の外周面から外側電極25への、あるいは内側構造体27の内周面から内側電極29への、電荷の移動が不十分となる。また、この間隔が小さくなると、外側構造体23あるいは内側構造体27の強度が小さくなる。
外側貫通孔31および内側貫通孔33の内径、個数、間隔等はこれらを考慮して選定されることになる。
【0030】
本実施形態では、外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33は、外側電極構造部17あるいは内側電極構造部19が形成された後で、加工される。このため、確実に外側電極25あるいは内側電極29に至るようにするため、外側電極25あるいは内側電極29をも貫通するようにされている。
【0031】
外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33が、たとえば、外側電極25あるいは内側電極29を貼り付ける前に、外側構造体23あるいは内側構造体27に加工される場合には、外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33は、図6に示されるように外側構造体23あるいは内側構造体27のみを貫通するようにされてもよい。
このようにすると、外側電極25あるいは内側電極29は連続し、かつ、外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33の底部に存在するので、外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33を通って移動する電荷を系外に移動させやすくなる。
【0032】
また、外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33に代えて、図7に示されるように金属製の棒状体である外側導電体35あるいは内側導電体37を外側構造体23の外周面から外側電極25に至るまで、あるいは、内側構造体27の内周面から内側電極29に至るまで外側構造体23あるいは内側構造体27に刺し通すようにしてもよい。
このようにすると、外側構造体23の外周面あるいは内側構造体27の内周面に発生した静電気は、外側導電体35あるいは内側導電体37を通って外側電極25あるいは内側電極29に移動する。
【0033】
外側導電体35あるいは内側導電体37は、外側貫通孔31あるいは内側貫通孔33を導電物で埋めて形成してもよい。
また、外側導電体35あるいは内側導電体37を形成する際に、厚さ方向に連続した導電性を有する部分を形成するようにしてもよい。
【0034】
次に、上記のとおり構成された燃料油量計15の作用について説明する。
燃料油量計15における外側電極構造部17および内側電極構造部19の間に形成される断面がドーナツ形状をした空間は、上下端で開放されているので、燃料タンク13の内部に蓄えられている燃料が下端部から燃料のレベルと同じレベルになるまでこの空間に進入する。この空間の燃料よりも上部には燃料と誘電率の異なる気体雰囲気が存在するので、外側電極25と内側電極29との間の静電容量を測定することによって燃料のレベルを検出することができる。
【0035】
航空機の飛行に伴う姿勢変化および燃料消費、あるいは給油等によって燃料が移動等すると、絶縁物で構成されている外側構造体23の外周面、外側電極25、内側電極29および内側構造体27の内周面に流動帯電等による静電気帯電が生じる。
外側電極25および内側電極29における静電気帯電による電荷は、外側電極25および内側電極29を通って系外に移動する。
【0036】
一方、外側構造体23および内側構造体27は絶縁物で構成されているので、外側構造体23の外周面および内側構造体27の内周面は流動帯電現象等によって帯電する。また、外側電極構造部17および内側電極構造部19は電気二重層を形成するので、外側構造体23の外周面および内側構造体27の内周面には大量の静電気が帯電する可能性がある。
外側構造体23の外周面に帯電した電荷は、外側貫通孔31を通って外側電極25に移動し、外側電極25を介して系外に移動する。一方、内側構造体27の内周面に帯電した電荷は内側貫通孔33を通って内側電極29に移動し、内側電極29を介して系外に移動する。
このように、外側構造体23および内側構造体27を絶縁物で構成したとしても、帯電の発生を抑制することができるので、静電気が帯電することによって放電する可能性を低くすることができ、燃料に引火することを防止できる。
【0037】
本実施形態の燃料油量計15と外側貫通孔31を備えていない燃料油量計15との放電電荷の関係について図8および図9を用いて説明する。
図8は、試験装置41の概略構成を示す模式図である。試験装置41は、保持部43に保持された燃料油量計15を模擬した供試体42をコロナ放電によって帯電させた後、供試体42を放電させ、放電電荷を測定する。
試験装置41には、供試体42にコロナ放電による電荷を付与して帯電させるコロナ帯電装置45と、帯電した供試体42を放電させ、その時の放電電荷を測定する放電電荷測定装置47とが備えられている。
【0038】
コロナ帯電装置45は、高圧電源49の電荷をニードル電極51からコロナ放電して燃料油量計15の外側構造体23を帯電させるものである。
放電電荷測定装置47は、球電極53を燃料油量計15の外側構造体23に近づけて放電させ、電圧計55によってコンデンサ57の前後の電圧差を測定し、レコーダ59に記録するものである。この電圧差に基づいて放電電荷が算出される。
【0039】
図9は、コロナ帯電装置の電源電圧を変化させた場合に対応する燃料油量計15の放電電荷を説明するグラフである。
図9におけるグラフAは、外側貫通孔31を備えていない燃料油量計15の放電電荷を説明するものであり、グラフBは、本実施形態の燃料油量計15の放電電荷を説明するものである。
ここで、外側構造体23への帯電はコロナ放電により行われ、コロナ放電時の電圧は5kVから30kVである。
【0040】
グラフAに示されるように、電源電圧30kVのコロナ放電よる帯電により約1500nCの放電電荷となり、外側構造体23の外表面に多く帯電し、放電が発生した場合に、燃料に着火する能力を十分有していることを示している。
これに対し、グラフBに示されるように、電源電圧30kVのコロナ放電による帯電により約50nCの放電電荷、グラフAに比べて1/30程度となり、外側構造体23の外表面の帯電が外側貫通孔31を通って系外へ移動され、帯電がよく抑制されていることを示している。
【0041】
なお、本実施形態では、内側構造体27が中空構造をし、内側構造体27の内周面に発生した帯電を内側貫通孔33によって内側電極29へ逃がすようにしているが、内側構造体27が中実構造である場合には、当然ながら内側貫通孔33は設けられない。
また、内側構造体27が中空構造であっても、内側構造体27の中空部に存在する燃料の量が少なく、流動帯電による帯電の大きさが問題となるレベルにならない場合には、内側貫通孔33を省略してもよい。
【0042】
また、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
たとえば、上記実施形態においては、本発明を航空機の燃料油量計15に適用しているが、航空機に限らず自動車等の輸送機器の燃料油量計に適用することができる。
また、燃料に限らず、その他、可燃物を内部に蓄える各種のタンクに適用することができるものである。
【符号の説明】
【0043】
15 燃料油量計(静電容量型レベル計)
23 外側構造体
25 外側電極
27 内側構造体
29 内側電極
31 外側貫通孔(外側導通部)
33 内側貫通孔(内側導通部)
35 外側導電体(外側導通部)
37 内側導電体(内側導通部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁物で形成された柱状の内側構造体と、該内側構造体の外周側に全周に亘り間隔を空けて配置され、絶縁物で形成された中空筒状の外側構造体と、前記内側構造体の外周面に貼られた内側電極と、前記外側構造体の内周面に貼られた外側電極と、を備え、前記内側電極および前記外側電極間の静電容量を測定し、前記内側電極および前記外側電極間に存在する被測定物のレベルを検出する静電容量型レベル計であって、
前記外側構造体に、外周面から前記外側電極へ電荷の移動を可能とする複数の外側導通部が備えられていることを特徴とする静電容量型レベル計。
【請求項2】
前記内側構造体は内部に前記被測定物が存在する中空構造とされ、
前記内側構造体に、内周面から前記内側電極へ電荷の移動を可能とする複数の内側導通部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型レベル計。
【請求項3】
前記外側導通部は、前記外側構造体の外周面から前記外側電極まで貫通する外側貫通孔で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量型レベル計。
【請求項4】
前記外側導通部は、前記外側構造体の外周面から前記外側電極までに至る外側導電体で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量型レベル計。
【請求項5】
前記内側導通部は、前記内側構造体の内周面から前記内側電極まで貫通する内側貫通孔で構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の静電容量型レベル計。
【請求項6】
前記内側導通部は、前記内側構造体の内周面から前記内側電極までに至る内側導電体で構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の静電容量型レベル計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−53008(P2012−53008A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197819(P2010−197819)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】