説明

非加水分解共有結合を有するポリマー性バインダーを含む医薬組成物およびセリアック病の治療における使用

【課題】本願発明の目的は、経口使用のためのポリマー性バインダーを提供することである。
【解決手段】(a)ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)および4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のコポリマー;(b)HEMAおよびスルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のコポリマー;(c)4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のポリマー;および/または(d)スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のポリマーの一つまたは複数を含む、ポリマー性バインダーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年11月14日に出願された米国仮出願第60/735,820号の優先権を主張するものである。前記の全ての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、ポリマー性バインダーを含む医薬組成物、およびその使用方法に関する。より具体的には、本発明は、グルテンもしくはグリアジンおよび/またはグルテンもしくはグリアジンの分解に由来するペプチドを結合するための非消化性合成ポリマー、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルテン不耐性としても知られているセリアック病は、遺伝的に感受性の強い対象における、小麦グルテンのグリアジン画分または大麦およびライ麦の類似のアルコール可溶性蛋白質(プロラミン)のいずれかへの暴露に続く、小腸粘膜への損傷によって特徴づけられる症候群である。セリアック病は、遺伝的、環境的および免疫学的要素を有する一般的な自己免疫疾患である。この病気は、ヒト白血球抗原DQ2およびDQ8をコードする遺伝子と密接に関連している(1)。セリアック病の患者において、グルテンへの炎症応答の可能性あるイニシエイターであると示唆される幾つかの特徴を有するα-グリアジンの33残基のフラグメントが同定された(2)。
【0004】
セリアック病の症状は、軽度の脱力、骨の痛みおよびアフタ性口内炎から慢性的下痢、腹部膨満および進行性体重消失まで様々でありうる(3)。この症状の幅広い範囲が原因で、セリアック病の存在を、診断することは困難である。この病気を患う人々は、腸の固有層および腺窩領域中の絨毛の損傷(短縮化および絨毛の平坦化)がもたらされる(3)。更にその上、消化管のガンおよびリンパ腫は、非治療または難治性のセリアック病の患者の15パーセントに発症する(4)。グルテン-フリー食品は、この病気のほとんど全ての合併症を防ぐことができる。このような食品には、小麦、ライ麦、大麦または任意のこれらの派生物を含むすべての製品を避けることを含む。多くの隠れたグルテン源を、多くの加工食品の成分中に見出すことができるので、このように避けることは、困難な課題である。
【0005】
今までのところ、食事からグルテン含有食品を除去することを除いて、如何なる薬物治療もセリアック病の患者には利用できない。驚くべきことに、比較的にわずかな治療方法が、現在、研究されている。グリアジン毒性ペプチドに対する抗体およびT細胞媒介応答の耐性、または、IL-15媒介性の小腸粘膜の変化をブロックする抗-IL15中和抗体の開発に基づく方法が、開発中である(6)。有望な手段は、in situで毒性ペプチドを迅速に分解する、外因性の酵素の発見である(7)。しかしながら、ラージスケールでの酵素の産生に関連する高いコスト、および、経口投与後の活性の喪失の可能性が、商業化の潜在的な制約となっている。グルテン-反応性T細胞の活性化を妨げることを狙う相補的な方法には、ヒト白血球抗原(HLA)DQ2(またはDQ8)に対するグルテンペプチドの結合の阻害を含む。セリアック病発症におけるHLAの重要な役割によって、HLAが治療的介入の明らかな標的となっている。脱アミノ化グルテンペプチドと複合体化したHLA-DQ2の最近解決したX線結晶構造により、HLA-DQ2-ブロッキング化合物の開発についての重要な情報が得られた(8)。ゾヌリン(zonulin)アンタゴニストは、また、セリアック病のための治療として示唆されている。ゾヌリンは、小腸において、細胞間の硬い結合の調節に関与している可能性がある。その発現は、セリアック病の急性期の間、腸の浸透が増加する臨床症状の間に、増加することが示されている(9)。
【0006】
免疫毒性シークエンスの含量が低いまたは全く含まないが、妥当な製パン特性を有する穀物の開発も、行われている。このような穀物は、潜在的には、昔ながらの小麦品種の選択的品種改良(10)、免疫活性化配列を引き起こす配列の変異を含むトランスジェニック方法(11)、または無毒のグルテン遺伝子をコメなどの無害の有機体へと導入すること(12)によって、開発することができる。これらの穀物は開発するのに技術的に困難であり、グルテン含有穀物との他花受粉により、免疫毒性シークエンスの再導入をもたらしうる可能性が存在するにもかかわらず、このような穀物の有用性によって、セリアック病の患者に、栄養学的により好ましい食事をもたらしうるかもしれない。
【0007】
多くのポリマー性バインダーが、特定の病気を治療または予防するために使用されている。
【0008】
ポリマー性バインダーの古典的な例は、コレスチラミン(消化管において胆汁酸を隔離し、結果としてコレステロールの血中濃度を低下させるカチオン性樹脂)である。最近、無視できるほどの副作用を有する新規なアルミニウムおよびカルシウムフリーのポリマー性リン酸バインダーである、塩酸セベラマー(sevelamer hydrochloride)が、透析を施行している患者における、高リン血症の治療について商品化された。恐らく、この分野における最も興味深い発見は、Clostridium difficile毒素Aをin vitroおよびin vivoで中和することが示された、アニオン性高分子ポリマーGT160-246である(13)。このエンドトキシンは、感染性院内下痢症の最も一般的に知られている原因である。GT160-246は、ヒトにおけるC. difficile大腸炎の治療および予防に対する有効且つ安全な非-抗菌性方法を提供する。
高分子量ポリマーがセリアック病において有効に使用できるかもしれないという考えは、Auricchio et al.(14)に由来する。Auricchio et al.は、マンナン(マンノースホモポリサッカリド)およびアセチルグルコサミンオリゴマーが、アクティブなセリアック病の患者の腸粘膜標本に防護効果を示すことを実証した(14)。これらの知見は、凝集および毒性ペプチドは、これらの炭化水素によって結合されることを示唆している。Secundo et al.(26)は、他のポリサッカリド、デキストリンの、グリアジンの二次構造に対する影響を研究し、デキストリンは、セリアック病の患者のための非毒性食物派生物を調製するのに使用できるかもしれないと仮定した。これらの興味深い基礎的なデータにもかかわらず、如何なる更なる研究も、これらの知見をin vivoで確認するために実施されなかった。天然の炭化水素の主な欠点は、in situで不活性化する、in vivo条件下での分解性である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sollid L.M. (2002) Nat Rev Immunol 2, 647-655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これらの需要および他の需要に応じることに努めるものである。
【0011】
本記載は、多くの文献を参照するが、その中身は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より具体的には、本発明の態様によれば、非加水分解性共有結合から構成される骨格を有する高分子量合成ポリマーを含むポリマー性バインダーと、医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって、前記ポリマーが、グルテンおよびグルテンの分解に由来するペプチドの等電点よりも低いpHで静電力結合を形成することができ、そして、消化管においてグルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに結合することができる、医薬組成物が提供される。
【0013】
医薬組成物の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと疎水性相互作用を形成することができる。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、水素結合を形成することができる。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、消化管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに特異的に結合することができる。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、腸管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに結合することができる。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)および4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のコポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SSStNa)のポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のポリマーである。
【0014】
医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、線状である。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、星型である。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、3から18アームの星型コポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、5から18アームの星型コポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、5アームの星型コポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、8アームの星型コポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、18アームの星型コポリマーである。医薬組成物の他の特定の態様においては、ポリマー性バインダーは、HEMAおよびSStNaのコポリマーであり、約93.5/6.5から約1/99の間のHEMA/SStNaモル割合比率を有する。医薬組成物の他の特定の態様においては、コポリマーは、線状HEMA/SStNa(51.5/48.5 mol%)である。医薬組成物の他の特定の態様においては、コポリマーは、線状HEMA/SStNa(43/57 mol%)である。医薬組成物の他の特定の態様においては、コポリマーは、約93.5/6.5から約1/99の間のHEMA/SPMAKモル割合比率を有する。医薬組成物の他の特定の態様においては、コポリマーは、約86/14から約1/99の間のHEMA/SPMAKモル割合比率を有する。
【0015】
医薬組成物の他の特定の態様においては、コポリマーは、線状HEMA/SPMAK(45/55 mol%)である。
【0016】
他の特定の態様においては、本発明の医薬組成物は、更に、ゾヌリンアンタゴニストまたはHLA DQ2阻害剤を含む。
【0017】
本発明の他の態様によれば、本発明のポリマーバインダを用いた方法であって、セリアック病の患者に、医薬的に有効量の前記ポリマーバインダを投与する工程を含む方法が提供される。
【0018】
特定の実施態様においては、本発明の方法は、患者において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドを結合する方法である。
【0019】
他の特定の実施態様においては、本発明の方法は、患者において、グルテンの毒性ペプチドへの分解を減少させる方法である。
【0020】
他の特定の実施態様においては、本発明の方法は、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、患者の消化管との相互作用を減少させる方法である。
【0021】
本発明の方法の他の特定の実施態様においては、前記投与を、前記患者のグルテンが含有する食事の前に、または食事の間に、実施する。本発明の方法の他の特定の実施態様においては、前記投与は、前記患者のグルテンが含有する食事の後に、実施する。
【0022】
本発明の他の態様によれば、医薬の製造における、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0023】
本発明の他の態様によれば、必要とする患者の消化管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドを結合するための、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0024】
本発明の他の態様によれば、必要とする患者の消化管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドを結合するための医薬の製造における、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0025】
本発明の他の態様によれば、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、必要とする患者の胃腸粘膜との相互作用を減少させるための、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0026】
本発明の他の態様によれば、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、必要とする患者の胃腸粘膜との相互作用を減少させるための医薬の製造における、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0027】
本発明の他の態様によれば、必要とする患者の消化管において、グルテンの毒性ペプチドへの分解を減少させるための、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0028】
本発明の他の態様によれば、必要とする患者の消化管において、グルテンの毒性ペプチドへの分解を減少させるための医薬の製造における、本発明のポリマー性バインダーの使用が提供される。
【0029】
本発明の使用の特定の実施態様においては、患者は、セリアック病に罹患している。
【0030】
本発明の更なる他の態様によれば、本発明のポリマー性バインダーを含む食品が提供される。
【0031】
本発明の食品の特定の実施態様においては、前記食品は、グルテンを含む食品である。本発明の食品の特定の実施態様においては、前記食品は、パンである。
【0032】
本発明の更なる他の態様によれば、セリアック病の患者に、患者の食事の間に、本発明の食品を与える工程を含む、前記食品を使用する方法が提供される。特定の実施態様においては、本発明の方法は、患者の食事に含まれる、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドを結合する方法である。他の特定の実施態様においては、本発明の方法は、患者の食事に含まれるグルテンの毒性ペプチドへの分解を減少させる方法である。特定の実施態様においては、本発明の方法は、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、患者の胃腸粘膜との相互作用を減少させるための方法である。
【0033】
本発明の更なる他の態様によれば、セリアック病の患者のための食品へと、本発明のポリマー性バインダーを導入する工程を含む、前記食品を製造する方法が提供される。本発明の方法の特定の実施態様においては、前記食品は、グルテンを含む食品である。
【0034】
本発明は、グルテンおよび/またはその分解産物の吸着用の、高分子で不活性および非-吸収性のポリマー性バインダーに関する。このようなシステムは、胃腸粘膜に対するグルテンの有害な効果を防止または減少させるのに役立つ。限定されるわけではないが、ポリマーに結合するペプチドは、2つの効果を有することが仮定される。第一は、毒性断片の酵素的分解および産生が、グルテンおよび/またはその分解産物の、不活性支持体上への吸着によって減速することである。第二は、高分子量ポリマーとの複合体形成によって、ペプチドの吸収およびその後に続く免疫応答が減少することである。このシステムにより、それ故、グルテン残留物が存在しないことが確認できない状況、または、グルテンフリーの食事が利用できない状況に直面する患者のための防止補助剤(prevention adjuvant)が提供される。
【0035】
特定の非消化性合成ポリマーを、本明細書において提示するが、本発明は、そのように制限されるわけではない。本明細書で使用する場合、用語「非消化性」は、本発明のポリマーに使用する場合、非加水分解性共有結合から構成される骨格を有するポリマーを示すことを意味する。当業者は、容易に、本発明に従って使用することができる他の非消化性合成ポリマーを同定することができると考えられる。同じように、本明細書に具体的に記載されたポリマーは、グルテンおよびその分解産物への親和性を最大にして、他のタンパク質への結合を最小にするように最適化することができる。当然のことながら、一定割合のこれらのタンパク質/ペプチドは、本発明のポリマー上への吸着を免れるが、4-14mgのグリアジンの毎日の摂取は、セリアック病の患者の小腸粘膜の損傷を誘発しないことが示唆されている(15)。このようなシステムにより、グルテンフリーの食事を、主な治療として置き換えることはできないであろう。しかしながら、時には、患者が、グルテン残留物が存在しないことが確認できない状況、または、グルテンフリーの食事が利用できない状況に直面する場合に、予防補助剤として使用することができる。
【0036】
本発明のポリマー性バインダーは、有利には、グルテンおよびグルテンに由来するペプチドの経口吸収を減少させることができる。これらのポリマー性バインダーは、血流へと吸収されることなく、消化管にとどまり、それ故、ポリマーそれ自身によって誘導される有害な影響の可能性が最小化される。グルテンおよびグルテンに由来するペプチドの等電点より低いpHで、ポリマー性バインダーは、負の電荷を持つのに対して、これらのタンパク質およびペプチドは、正の電荷を有するので、このことにより、静電相互作用の形成がもたらされる。これらのポリマー性バインダーは、また、これらのタンパク質およびペプチドと疎水性相互作用も形成することができる。特定の実施態様においては、本発明のポリマー性バインダーは、また、水素結合を形成する能力も有する。この最後の特徴は望ましいにもかかわらず、必須ではないことが示されている。なぜならば、この特徴を有さない本発明の特定のポリマー、例えば、スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のホモポリマーは、グルテンと結合できることが見出されているからである。制限されるわけではないが、このようなポリマー性バインダーは、以下の表1で示すモノマーを用いて合成することができる。当業者は、これらの(または他の)モノマーの1つまたは複数の組み合わせを選択して、本発明のポリマー性バインダーを形成することができる:
[表1]
(スチレン誘導体)
-スチレンスルホネート
-スチレンスルフェート
-スチレンスルファニレート(styrene sulfanilate)
-スルホフェニルアラニン
-チロシンスルフェート
-スルホフェネチルアクリルアミド
-スルホフェネチルメタクリルアミド
-ビニルナフタレンスルホネート
-ビニルナフタレンスルフェート
-ビニルビフェニルスルホネート
-ビニルビフェニルスルフェート
-アネトールスルホネート
-クラウンエーテル部分を有するスチレン
-N,N-ジアルキルアミド基で置換されたスチレン
-4-メトキシスチレン
-4-(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル)スチレン
-4-(2-(N,N-ジメチルアミノ)メチル)スチレン
-4-(2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル)スチレン
-4-ビス(N,N-ジメチルアミノ)ホスフィノ-α-メチルスチレン
-4-ビニルフェノール
-3-ビニルカテコール
-4-ビニルアセトフェノン
-4-ビニル安息香酸
-3-ビニル安息香酸
-2-(4-ビニルフェニル)-1,3-ジオキソラン
-2-(4-ビニルフェニル)-1,3-ジオキサン
-4-ジメトキシメチルスチレン-(4-ビニルベンズアルデヒドジメチルアセタール)
-2-(2-ビニルフェニル)-1,3-ジオキソラン
-2-(3-ビニルフェニル)-1,3-ジオキソラン
-1(4-ビニルフェニル)-4-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン
-4-(2-ヒドロキシエチル)スチレン
-4-(3-ヒドロキプロピル)スチレン
-4-{[4-(4-ビニルフェニル)ブトキシ]メチル}-1-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン
-4-ビニルチオフェノール
-4-(2-メルカプトエチル)スチレン
-2-(4-ビニルフェニル)-2-オキサゾリン
-N,N-ジエチル-4-ビニルベンゼンスルホンアミド
-N-メチル-N'-[(4-ビニルフェニル)スルホニル]ピペラジン
-4-アミノスチレン
-3-アミノスチレン
-4-アミノメチルスチレン
-3-アミノメチルスチレン
-4-(2-アミノエチル)スチレン

(ヒドロキシル基を有するスチレン)
-(p-ビニルベンズアミド)-β-キトビオース
-(p-ビニルベンズアミド)-β-ラクトース
-N-(p-ビニルベンジル)-L-グロンアミド(N-(p-vinylbenzyl)-L-gulonamide)
-N-(p-ビニルベンジル)-6-D-グルカルアミド(N-(p-vinylbenzyl)-6-D-glucaramide)
-N-(p-ビニルベンジル)-6-D-グルカルアミド-1-エート(N-(p-vinylbenzyl)-6-D-glucaramid-1-ate)
-4-アクリルアミドフェニル-β-ラクトシド
-N-(p-ビニルベンジル)-D-グルコロンアミド(N-(p-vinylbenzyl)-D-glucoronamide)
-4-ビニルベンジル-D-グルコ(D-マンノ)ヘキシトール
-p-[2-[N-(p-ビニルベンジル)カルバモイル]エチル]フェニルα-D-マンノピラノシド
-p-[2-[N-(p-ビニルベンジル)カルバモイル]エチル]フェニルβ-D-マンノピラノシド
-N-(p-ビニルベンジル)-5[O-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)]-D-グルコンアミド
-α-マンノピラノシド
-β-マンノピラノシド

(アクリルモノマー)
-グリシジルアクリレート
-2-ヒドロキシエチルアクリレート
-2-ヒドロキシエチルメタクリレート
-ヒドロキシプロピルメタクリレート
-2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
-2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルメタクリレート
-3-スルホプロピルメタクリレート
-テトラヒドロピラニルメタクリレート
-ベンジルメタクリレート
-2-グルコンアミドエチルメタクリレート
-2-ラクトビオンアミドエチルメタクリレート(2-lactobionamidoethyl methacrylate)
-2-(2',3',4',6'-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシロキシ)エチルアクリレート
-(4,5-ジヒドロキシ-6-ヒドロキシメチル-3-メチルカルボキサミドテトラヒドロ-2H-2-ピラニロキシ)エチルアクリレート

(スルフェート化モノマー)
-ビニルスルフェート
-プロペンスルフェート
-ブテンスルフェート
-ペンテンスルフェート
-ヘキセンスルフェート
-ヘプテンスルフェート
-オクテンスルフェート
-ノネンスルフェート
-デセンスルフェート
-ウンデセンスルフェート
-ドデセンスルフェート

(スルホネート化モノマー)
-ビニルスルホネート
-プロペンスルホネート
-ブテンスルホネート
-ペンテンスルホネート
-ヘキセンスルホネート
-ヘプテンスルホネート
-オクテンスルホネート
-ノネンスルホネート
-デセンスルホネート
-ウンデセンスルホネート
-ドデセンスルホネート

(ホスフェート化モノマー)
-ビニルホスフェート
-プロペンホスフェート
-ブテンホスフェート
-ペンテンホスフェート
-ヘキセンホスフェート
-ヘプテンホスフェート
-オクテンホスフェート
-ノネンホスフェート
-デセンホスフェート
-ウンデセンホスフェート
-ドデセンホスフェート

(その他)
-無水マレイン酸
-N-アクリロイル化3'-スルホ-ルイスX-Glcモノマー
-α-シアロシドアクリルアミド
-N-ビニルピリジン
-N-ビニルピロリジノン
-ビニルイミダゾール
-1,3-ジメチル-2-(4-ビニルフェニル)イミダゾリジン
-3-(N-アクリロイルアミノ)プロピル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→4)-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-6-(N-アクリロイルアミノ)ヘキシル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→4)-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-3-(N-アクリロイルアミノ)プロピル2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-6-(N-アクリロイルアミノ)ヘキシル2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-n-ペンテニルβ-D-ガラクトピラノシド
-n-ペンテニル-O-(2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル)-(1→4)-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-n-ペンテニル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→4)-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-n-ペンテニル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→4)-β-D-グルコピラノシド
-n-ペンテニル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→4)-[O-(α-L-フコピラノシル)-(1→3)]-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-n-ペンテニル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→6)-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-n-ペンテニル-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-(1→3)-2-アセタミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド
-n-アルケニル-2-アセタミド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノシド(およびスルフェート化誘導体)
-2-N-アクリロイル-アミノエトキシ4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(およびスルフェート化誘導体)
-N-マレイックアミド-2-デオキシ-グルコースナトリウム塩(N-maleicamido-2-deoxy-glucose sodium salt)
-N-マレイックアミド-1-デオキシ-ラクチトールナトリウム塩(N-maleicamido-1-deoxy-glucose sodium salt)
-フコース-7-オキサノルボルネン誘導体(fucose-7-oxanorbornene derivative)
-C-Glc-7-オキサノルボルネン誘導体(C-Glc-7-oxanorbornene derivative)
-C-Man-7-オキサノルボルネン誘導体(C-Man-7-oxanorbornene derivative)
-7-オキサノルボルネン誘導体を含む非対称グルコース(unsymmetrical glucose containing 7-oxanorubornene derivative)
-O-Glc-7-オキサノルボルネン誘導体(O-Glc-7-oxanorbornene derivative)
-O-Man-7-オキサノルボルネン誘導体(O-Man-7-oxanorbornene derivative)
-7-オキサノルボルネン誘導体を含む非対称マンノース(unsymmetrical mannnose containing 7-oxanorubornene derivative)
-O-Manノルボルネン誘導体(O-Man norbornene derivative)
-糖誘導体化ポリ(7-オキサノルボルネン)(sugar derivatized poly(7-oxanorbornene)s)
-糖誘導体化ポリ(7-ノルボルネン)(sugar derivatized poly(norbornene)s)
【0037】
本発明のポリマー性バインダーが、非加水分解性の共有結合から構成される骨格を有するが、このポリマー性バインダーは、また、加水分解性共有結合を含む側鎖を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「グルテン」は、様々な穀物に見いだされるタンパク質群を指す。グルテンは、エタノール可溶性プロラミンと、エタノール不溶性グルテニンとに分けることができる。小麦、ライ麦、大麦および場合によってはオーツ麦に由来するアルコール可溶性プロラミンは、セリアック病の患者においては毒性である。小麦プロラミンの共通の特徴は、高い含量のグルタミン(>30%)およびプロリン(>15%)である。小麦プロラミンは、グルテンの観察される毒性の原因となると考えられている類似のまたは繰り返しのグルタミンおよびプロリンリッチエピトープを含むα/β、γおよびωグリアジンに分類される。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「グルテンの分解に由来するペプチド」は、グルテン摂取後に、本発明のポリマーに望ましく結合する、グルテンの分解に由来する任意のペプチドを指す。制限されるわけではないが、Ciccocioppo(23)においてリストされた全てのペプチドを含む。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「高分子量ポリマー」は、5,000から5,000,000g/molを含む分子量を有するポリマーを指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「医薬的に許容可能な担体」は、Modern Pharmaceutics(27)に開示されているもののような一般的に使用される賦形剤を用いて調製される溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤またはカプセルを指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「(本発明のポリマーの)医薬的に有効量」は、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、胃腸粘膜との、必要とする患者のグルテン摂取後の相互作用を減少するのに有効である量を指す。制限されるわけではないが、本発明のポリマーの有効量は、一日当たり約200mgから約15gまでの量(例えば、200mg;250mg;300mg;500mg;750mg;1g;1.5g;2g;2.5g;3g、5g;7.5g)とすることができる。
【0043】
本明細書で使用する場合、表現「グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに特異的に結合するポリマーバインダー」における用語「特異的に結合する」とは、胃腸管において、カゼインおよび/またはアルブミンなどの他の食物タンパク質に結合するよりも、グルテンおよびグルテンに由来するペプチドなどの、疎水性である摂取した食べ物に由来するタンパク質またはペプチドにより結合するポリマーの能力を指す。
【0044】
本発明は、線状および星型ポリマーを包含する。本発明の特定の実施態様による星型ポリマーは、3から18のアームを有する。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「必要とする患者」は、グルテンを含む食事を食べているまたは食べた、セリアック病に罹患したヒトを指す。
【0046】
冠詞「a」、「an」および「the」は、本明細書において、1つまたは2つ以上の(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法的対象を指すために使用する。
【0047】
用語「含む」および「含有する」は、本明細書において、文言「含むが制限されない」および「含有するが制限されない」を意味するために、そして、交換可能に使用される。
【0048】
用語「など」は、本明細書において、文言「などであるが制限されない」を意味するために、そして交換可能に使用される。
本発明の他の目的、有用性および特徴は、添付の図面を参照にして、ほんの一例として与えられた、以下の非制限的な特定の実施態様の記載を読むことによって、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本明細書で開示するポリマーを合成するのに使用する、線状および多機能ATRP開始剤の化合構造を表す。(i)PEG-ジブロモマクロ開始剤;(ii)1,2,3,4,6-ペンタ-O-イソ酪酸ブロマイド-R-D-グルコース;(iii)オクダデカ-O-イソ酪酸ブロマイド-R-シクロデキストリン;(iv)オクタ-O-イソ酪酸ブロマイドスクロース。
【図2】図2は、以下の三通り:(A)タンパク質スタンダード;(B)アルブミンおよびα-グリアジン混合物;(C)アルブミン(40mg/L)、α-グリアジン(40mg/L)およびポリ(HEMA-co-SStNa)(160mg/L)の混合物における、pH6.8での、アルブミンおよびα-グリアジンのポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10)との結合に関するSDS-PAGEを表す。
【図3】図3は、pH1.2および6.8での、線状ポリ(HEMA-co-SStNa)の、グリアジン、アルブミンおよびカゼインに対する結合プロファイルであり、各点は、実施例5から10および12-13の各ポリマーに対応する。
【図4】図4は、pH1.2および6.8での、線状ポリ(HEMA-co-SPMAK)の、グリアジンおよびアルブミンに対する結合プロファイルであり、各点は、実施例17から21の各ポリマーに対応する。
【図5】図5は、中性pHでの、グリアジンの結合に対するポリマー構造の効果を、グラフを使って表す(SStNa=25-31mol%;実施例9、14、15および16を参照せよ)。
【図6】図6は、中性pHでの、グリアジンの結合に対するポリマー構造の効果を、グラフを使って表す(SPMAK=16-19mol%;実施例18、22、23および24を参照せよ)。
【図7】図7は、模倣した消化管条件下における、本発明ポリマーの、グリアジン消化に対する効果を表す。ポリマーの不在下(a)およびポリマーの存在下(b)での、ペプシン、トリプシンおよびキモトリプシン(PTC)を用いて消化したグリアジンの比較HPLCプロファイル。クロマトグラム(c)は、無傷のα-グリアジンに対応する。
【図8】図8は、PEG(Mn:35,000;白丸)、PVP(Mw:58,000;黒丸)、ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10;白三角)およびコントロールとしての完全培地(黒星)の溶液を用いたインキュベーション後の、Caco-2モノレイヤーの経上皮電気抵抗(TEER)の変化を表す。細胞を、10%のFBSを補足したDMEM細胞培養培地中で維持した。ポリマー濃度は、1g/Lで固定した。
【図9】図9は、pH1.2および6.8での、約50%のSStNaを含み、2つの異なる分子量を有する2つの線状ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10および11)の、グリアジンおよびアルブミンに対する結合プロファイルを表す。
【実施例】
【0050】
(材料)
α-グリアジンは、Institut National de la Recherche Agronomique (Nantes, France)によって親切にも提供された。Popineau et al.(16-21)によって開示されているように、軟質小麦から精製した。簡単に述べると、(小麦粉から単離した)グルテンに由来する粗精製グリアジンの抽出後に、グリアジンのサブグループを、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよび最後に疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、連続的に分離し精製した。
【0051】
ウシアルブミンを、Serological Proteins(Kankakee, IL)から購入した。α-カゼイン(牛乳に由来)、SStNa、HEMA、SPMAK、R-D-グルコース、α-シクロデキストリン水和物、スクロース(98%)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(Mn 2000)、2-ブロモイソ酪酸ブロマイド、臭化銅Cu(I)Brおよび2,2'-ジピリジルを、全て、Sigma-Aldrich(St Louis, MO)から購入し、受取ったまま使用した。エッペンドルフチューブ、ピペットチップおよび96穴プレート(Maximum Recovery)は、Axygen Scientific(Union City, CA)から提供された。
(開始剤の合成)
【0052】
原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤(図1)を、PEG、R-D-グルコース、スクロースおよびα-シクロデキストリンから調製した。最後の3つの分子の臭素の機能化(bromide functionalization)は、Stenzel-Rosenbaumおよび協働者(22)によって記載された方法によって達成した。
【0053】
本発明を、以下の非制限的な実施例によって、更に詳細に説明する。
【0054】
(実施例1:PEGジブロモマクロ開始剤(i)の合成)
HO-PEG-OH(Mn 2000、10g、5mmol)およびトリエチルアミン(10g、0.1mol)の、70mlの無水トルエン溶液を、氷を入れたウォーターバス中でわずかに冷却した。その後、2-ブロモイソ酪酸ブロマイド(4.91mL、0.04mol)を、反応混合物にゆっくりと加えた。溶液を、室温に温め、48時間攪拌した。混合物をろ過し、溶液の半分を蒸発させ、PEGマクロ開始剤を、冷ジエチルエーテル中で沈殿させた(図1(i))。
【0055】
収率:90%、沈殿後。白い固体。1H NMR (δ, ppm, CDCl3): 3.50 (188H), 1.80 (12H, s)。
【0056】
(実施例2:1,2,3,4,6-ペンタ-O-イソ酪酸ブロマイド-R-D-グルコース(ii)の合成)
2-ブロモイソ酪酸ブロマイド(50g、0.22mol)を、R-D-グルコース(5.0g、0.028mol)の、クロロホルム(100mL)およびピリジン(50mL)の無水混合物の溶液に、ゆっくりと加えた。溶液を、3時間、乾燥雰囲気下を維持したまま還流し、室温で更に12時間攪拌した。その後、氷冷した水、NaOH(0.1M)および水を用いて連続して洗浄し、無水MgSO4を用いて乾燥させた。粗精製の生成物を、メタノールで再結晶させ、白色の結晶を得た(図1(ii))。
【0057】
収率:70%。1H NMR (CDCl3): 1.85-2.04 (m, 3OH, H-7), 6.42 (d,1H, H-1), 5.25 (dd, 1H, H-2), 5.69 (t, 1H, H-3), 5.35 (t, 1H, H-4), 4.38 (m, 3H, H-5/6)。
【0058】
(実施例3:オクタデカ-O-イソ酪酸ブロマイド-R-シクロデキストリン(iii)の合成)
オクダデカ-O-イソ酪酸ブロマイド-R-シクロデキストリンを、2-ブロモイソ酪酸ブロマイド(50g、0.22mol)の、R-シクロデキストリン(5.0g、0.005mol)の無水ピリジン(150mL)溶液へのゆっくりとした添加によって、合成した。溶液を、24時間、乾燥雰囲気下、室温で攪拌した。その後、氷冷した水、NaOH(0.1M)および水を用いて、それぞれ洗浄し、その後、無水MgSO4を用いて乾燥させた。粗精製の生成物を、メタノール/H2O(3:1、v/v)で再結晶させ、白色の結晶を得た(図1(iii))。
【0059】
収率:55%。1H NMR (CDCl3): 1.95 (m, 108H, H-7), 5.84 (d, 12H, H-1), 4.46 (dd, 6H, H-2), 5.7 (m, 6H, H-3), 5.13/5.38 (t/dd, 6H, H-4), 4.78 (dd, 6H, H-5), 4.45 (m, 6H, H-6)。
【0060】
(実施例4:オクタ-O-イソ酪酸ブロマイド-スクロース(iv)の合成)
オクタ-O-イソ酪酸ブロマイドスクロースを、2-ブロモイソ酪酸ブロマイド(50g、0.22mol)の、スクロース(5.0g、0.014mol)の無水ピリジン(150mL)溶液へのゆっくりとした添加によって、合成した。溶液を、24時間、乾燥雰囲気下、室温で攪拌した。その後、氷冷した水、NaOH(0.1M)および水を用いて、それぞれ洗浄し、その後、無水MgSO4を用いて乾燥させた。粗精製の生成物を、メタノール/H2O(3:1、v/v)で再結晶させ、白色の結晶を得た(図1(vi))。
【0061】
収率:50%。1H NMR (CDCl3): 1.99 (m, 48H, H-7), 4.15 (d, 1H, H-5'), 4.46 (m, 5H, H-6'/1'/5), 4.68 (dt, 2H, H-6), 4.81 (d, 1H, H-3'), 5.13 (dd, 1H, H-2), 5.38 (t, 1H, H-4'), 5.67 (t, 1H, H-4), 5.76 (t, 1H, H-3), 5.85 (d, 1H, H-1)。
【0062】
(実施例5:線状ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/4-スチレンスルホンナトリウム水和物(SStNA)コポリマー(93.5/6.5mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(0.375g)およびHEMA(7.12g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(20.28mg)、Cu(I)Br(7.2mg)およびCu(II)Br2(3.35mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝すと、Cu(I)からCu(II)への酸化を示す、暗褐色の溶液が青色へと変化した。ポリマーを、Cu(II)触媒を除去するシリカゲルカラムにメタノール/水溶液を通すことによって、精製した。ポリマーを、水に対して48時間、透析(Spectra/Por(商標) no.1, MW cutoff 6000-8000, Spectrum Laboratories, Rancho Dominguez, CA)し、その後、使用するまで、凍結乾燥した。Mw=318 700g/mol;Mw/Mn=2.54。
【0063】
(実施例6:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(90.3/9.7mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(0.375g)およびHEMA(7.12g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(21.84mg)、Cu(I)Br(7.2mg)およびCu(II)Br2(4.48mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=331 528;Mw/Mn=2.9。
【0064】
(実施例7:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(87.8/12.2mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(0.75g)およびHEMA(6.747g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(7.2mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=283 600g/mol;Mw/Mn=2.57。
【0065】
(実施例8:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(82.4/17.6mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(1.125g)およびHEMA(6.426g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(5mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=275 500g/mol;Mw/Mn=2.5。
【0066】
(実施例9:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(69/31mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(1.5g)およびHEMA(5.99g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(5mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=58 100g/mol。
【0067】
(実施例10:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(51.5/48.5mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(3.2g)およびHEMA(3.95g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(7.2mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=122 000g/mol;Mw/Mn=2.23。
【0068】
(実施例11:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(43/57mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(2.4g)およびHEMA(1g)を、23mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(7.2mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mn(NMR)=55 000g/mol。
【0069】
(実施例12:線状ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(28/72mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)、SStNa(4.8g)およびHEMA(1.975g)を、46mLのメタノール/水(1/4)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(7.2mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=65 200g/mol;Mw/Mn=1.95。
【0070】
(実施例13:線状ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリム水和物)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50mg)およびSStNa(6.4g)を、46mLの水に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(7.2mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=20 000g/mol。
【0071】
(実施例14:線状ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリム水和物)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(50.3mg)およびSStNa(1.56g)を、20mLの水に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(15.6mg)およびCu(I)Br(7.2mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=57 500g/mol。
【0072】
(実施例15:5アームの星型ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(69/31mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤ii(図1)(142.6mg)、SStNa(1.55g)およびHEMA(4.616g)を、30mLのメタノール/水(8/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(230.75mg)およびCu(I)Br(106mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。1時間の反応後、10mLの水を加え、その後、溶液を室温で24時間保った。対応するコポリマーを、最終的には、実施例5で述べたように精製した。Mw=85 000g/mol;Mw/Mn=1.79。
【0073】
(実施例16:8アームの星型ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(75/25mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤iv(図1)(141mg)、SStNa(1.5g)およびHEMA(4.616g)を、30mLのメタノール/水(8/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(230.8mg)およびCu(I)Br(106mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。1時間の反応後、10mLの水を加え、その後、溶液を室温で24時間保った。対応するコポリマーを、最終的には、実施例5で述べたように精製した。Mw=210 000g/mol;Mw/Mn=2.03。
【0074】
(実施例17:18アームの星型ヒドロキシエチルメタクリレート/4-スチレンスルホンナトリウム水和物コポリマー(69/31mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤iii(図1)(153.5mg)、SStNa(1.5g)およびHEMA(4.62g)を、30mLのメタノール/水(8/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(230.75mg)およびCu(I)Br(106mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。1時間の反応後、10mLの水を加え、その後、溶液を室温で24時間保った。対応するコポリマーを、最終的には、実施例5で述べたように精製した。Mw=206 000g/mol;Mw/Mn=2.6。
【0075】
(実施例18:線状ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)コポリマー(86/14mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(100.3mg)、SPMAK(1.85g)およびHEMA(5.62g)を、30mLのメタノールに溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(31.96mg)およびCu(I)Br(15.1mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=66 500g/mol。
【0076】
(実施例19:線状ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)コポリマー(83/17mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(102.1mg)、SPMAK(1.90g)およびHEMA(5.62g)を、30mLのメタノールに溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(31.24mg)およびCu(I)Br(14.34mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=84 000g/mol。
【0077】
(実施例20:線状ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/スルホプロピルメタクリレートカリウムコポリマー(74/26mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(100.5mg)、SPMAK(3.75g)およびHEMA(5.622g)を、46mLのメタノール/水(1/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(32mg)およびCu(I)Br(15.1mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=119 000g/mol。
【0078】
(実施例21:線状ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/スルホプロピルメタクリレートカリウムコポリマー(45/55mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(100.7mg)、SPMAK(5.64g)およびHEMA(1.752g)を、46mLのメタノール/水(1/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(32mg)およびCu(I)Br(15.1mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=108 500g/mol。
【0079】
(実施例22:線状ポリ(スルホプロピルメタクリレートカリウム)の合成)
ATRP開始剤i(図1)(100.7mg)およびSPMAK(7.5g)を、46mLのメタノール/水(1/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(32mg)およびCu(I)Br(15.1mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=NA;Mw/Mn=NA。Mn(NMR)=120 000g/mol。
【0080】
(実施例23:5アームの星型ヒドロキシエチルメタクリレート/スルホプロピルメタクリレートカリウムコポリマー(82.4/17.6mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤ii(図1)(143mg)、SPMAK(1.87g)およびHEMA(4.61g)を、60mLのメタノール/水(8/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(230.6mg)およびCu(I)Br(108mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=161 000g/mol;Mw/Mn=2.4。
【0081】
(実施例24:8アームの星型ヒドロキシエチルメタクリレート/スルホプロピルメタクリレートカリウムコポリマー(81/19mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤iv(図1)(70.5mg)、SPMAK(0.935g)およびHEMA(2.3g)を、60mLのメタノール/水(8/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(115.8mg)およびCu(I)Br(53.9mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=227 000g/mol;Mw/Mn=2.27。
【0082】
(実施例25:18アームの星型ヒドロキシエチルメタクリレート/スルホプロピルメタクリレートカリウムコポリマー(82.4/17.6mol%、精製後)の合成)
ATRP開始剤iii(図1)(75.3mg)、SPMAK(0.923g)およびHEMA(2.31g)を、60mLのメタノール/水(8/1)混合物中に溶かし、アルゴン下で15分間脱気した。Bpy(115.8mg)およびCu(I)Br(53.9mg)を、その後、20℃で攪拌しながら加えた。24時間後、溶液を空気に曝し、実施例5で述べたように、ポリマーを精製した。Mw=342 000g/mol;Mw/Mn=2.28。
【0083】
(実施例26:ポリマー-グリアジン結合の評価)
合成したポリマーに対するグリアジンの結合選択性および親和性を、15%(w/v)分離ゲルを使用したドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって、評価した。加えて、ポリマーを、コントロールタンパク質、すなわちウシアルブミンおよび/またはウシカゼインに対する反応性について別個スクリーニングした。結合試験は、pH1.2および6.8で、塩酸およびリン酸バッファーをそれぞれ使用して行った。ポリマー(80mg/L)およびタンパク質(40mg/L)を、pH1.2および6.8で一緒に混合し、2時間インキュベートした。溶液を、その後、溶液に残った遊離のタンパク質から不溶性の複合体を分離するために、15 000gで30分間遠心した。上清を、その後、SDS-PAGEによって分析し、遊離のタンパク質の量を測定した。
【0084】
(実施例27:ポリ(HEMA-Co-SStNa)のグリアジンへの結合選択性)
グリアジンの、異なる線状ポリ(HEMA-Co-SStNa)(実施例5から10および12-14で述べた合成)に対する結合親和性を、実施例26で述べたように、SDS-PAGEによって評価し、腸(6.8)および胃(1.2)のpHにおける、アルブミンおよびカゼインの結合親和性と比較した(実施例5から10および12-13を示す図3)。一般的に、ポリマーは、両方のpHの値で、コントロールタンパク質と比較して、グリアジンに対してより高い親和性を示した。カゼインとの複合体化は、酸性条件下での不溶性が原因で、pH1.2では実施しなかった。図3に示すように、グリアジンとの複合体化は、コポリマーの組成によって変化した。図2は、また、グリアジンおよびアルブミンの両方と線状ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10)とをインキュベートした場合、SDS-PAGE上で、グリアジンとコポリマーとの間の選択的結合が示されたのに対して、アルブミンは、溶液中に遊離し続けた。グリアジンの、実施例14の線状ポリ(HEMA-co-SStNa)ポリマーに対する結合親和性を、実施例26で述べたように、SDS-PAGEによって評価し、アルブミンの場合と比較した。結果を以下に示す:pH1.2および6.8でのアルブミンとの複合体化は、それぞれ、78.8%および11.23%であり、pH1.2および6.8でのグリアジンとの複合体化は、それぞれ、100%および71.3%であった。
【0085】
(実施例28:ポリ(HEMA-co-SPMAK)の組成の、グリアジンに対する結合選択性)
グリアジンの、異なる線状ポリ(HEMA-co-SPMAK)(実施例18から22で述べた合成)に対する結合親和性を、実施例26で述べたように、SDS-PAGEによって評価し、腸(6.8)および胃(1.2)のpHにおける、アルブミンの結合親和性と比較した(図4)。SStNaモノマーがSPMAKに置き換わることによって、特にpH6.8で、グリアジンへの結合がより減少することが観察された。グリアジンへの最適な複合体化は、50から100mol%の範囲のSPMAK比率について、達成された。
【0086】
(実施例29:コポリマー構造の、グリアジンへの結合に対する効果)
5、8および18アームの星型ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例15から17)およびポリ(HEMA-co-SPMAK)(実施例23から25)を、それぞれ、グルコース、スクロースおよびシクロデキストリンに由来する開始剤を使用して、合成した。そのグリアジン結合能力を、その対応する線状ポリマー(それぞれ、実施例9および18)と比較した。結果を、図5および6に示す。SStNaの割合を約30mol%に固定した場合は、8アームの星型ポリ(HEMA-co-SStNa)の結合効率が、線状または他の星型コポリマーよりも良好であった(図5)。SPMAKの割合を約17mol%に固定した場合は、グリアジンの線状または星型ポリ(HEMA-co-SPMAK)への結合においては、有意な差は見られなかった(図6)。
【0087】
[結論]
HEMAとSStNaまたはSPMAKとの線状および星型ランダムコポリマーは、消化管を模倣したpH条件下で、α-グリアジンに結合することが示された。
【0088】
(実施例30:コポリマーの分子量の、グリアジンへの結合に対する効果)
約50%のSStNaを含む2つの分子量の異なる線状ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10および11)を、pH1.2および6.8の両方で、グリアジンおよびアルブミンの結合について試験した。この実験において、各タンパク質を、別々に試験した。結果を図9に示す。グリアジンへの結合性および結合選択性は、ポリマーの分子量によって影響を受けることが見出された。
【0089】
(実施例31:コポリマーによるグリアジンの酵素分解の防止)
[グリアジンのペプシン-トリプシン消化物の調製]
α-グリアジンのステップワイズ酵素加水分解を、アガロースおよびウシのすい臓に由来するα-キモトリプシン(Sigma C4129)へと付着させた、ペプシン(Sigma P0609; St Louis, Missouri, USA)およびトリプシン(Sigma T1763)を用いて実施した。α-グリアジン(10mg)を、5mLの塩酸バッファーpH=1.2(10mM)に溶かし、ペプシン(38U)を加えた。混合物を、磁気的に、37℃で2時間、攪拌し、pHの値は、0.1mol/LのNaOHを用いて6.8に調整し、トリプシン(0.75U)およびα-キモトリプシン(0.5U)を加えた。消化物を、30分間20℃および6000gで遠心した。グリアジンペプチドは、上清に回収され、0.2μmのGHPフィルターを介してろ過した。
【0090】
得られたグリアジンのペプシン-トリプシン-キモトリプシン消化物を、1525バイナリーポンプ、2487デュアル波長吸収検出器およびBreeze Chromatography Software(商標)(Waters, Midford, MA)を備えたWaters(商標)高速液体クロマトグラフィーHPLCシステムを使用して分析した。サンプルを、流速、検出波長およびインジェクション容量をそれぞれ1mL/min、215nmおよび50μLとして、36℃で溶出した。トリフルオロ酢酸を、イオン対化薬剤(ion pairing agent)として使用し、溶出を、60分間にわたる100%のバッファーAから100%のバッファーBからなるリニアグラジエントで、実施した。バッファーAは、0.1%のトリフルオロ酢酸、95%の水、および5%のアセトニトリルからなり、バッファーBは、0.1%のトリフルオロ酢酸、5%の水および95%のアセトニトリルからなっていた。各サンプル上清の一部を、水へと希釈して、C18逆相カラムで分析した(Waters Nova-pack(商標)C18, 60Å, 4μm, 3.9x300mm)。
【0091】
[グリアジン-ポリマー複合体の酵素分解]
ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10)(4g/L)およびグリアジン(2g/L)を、pH2で一緒に混合し、2時間インキュベートした。その後、グリアジン-ポリマー複合体のステップワイズ酵素分解を、前記したように実施した。グリアジン分解に対する、ポリマー性バインダーの効果を、前記したように、HPLCを使用して分析した(図7)。
【0092】
グリアジンをポリマーと複合体化した場合に、大幅に少ない分解産物しか検出されなかった。
【0093】
(実施例32:ポリマーの、Caco-2モノレイヤー完全性に対する効果)
ポリ(HEMA-co-SStNa)(実施例10)のCaco-2細胞モノレイヤー完全性に対する効果を評価し、PEG(35kDa)およびPVP(58kDa)の場合と比較した(図8)。細胞を、播種密度2.5×105cell/cm2で、12穴Transwell(登録商標)ポリカーボネートフィルター(Corning, Acton, MA)上に播種した。Caco-2は、10%(v/v)のウシ胎児血清、非必須アミノ酸溶液(0.1mM)、HepesバッファーpH7.4(10mM)およびペニシリン-ストレプトマイシン(eq. 100U/mLおよび100μg/mL)を補足したダルベッコ改変基礎培地(DMEM)中で培養した。培地を、72時間ごとに変えた。細胞を、21から28日間、37℃、5%のCO2で培養し、実験前に分化したモノレイヤーを形成させた。毒性試験を、完全DMEM培地中で実施した。経上皮電気抵抗(TEER)の値を、1つの電極(World Precision Instruments, Sarasota, FL)を有するMillicell(商標) Electrical Resistance System(Millipore Corp. Bedford, MA)を使用して、予め定めた時点で測定した。
【0094】
ポリ(HEMA-co-SStNa)およびコントロールポリマー(PVP、PEG)の両方において、24時間後に測定したTEERは、最初の値から10%の減少を示した。これらの結果は、ポリ(HEMA-co-SStNa)が、Caco-2細胞モノレイヤーの完全性を強く混乱させることは無いようである事を示唆している。
【0095】
(実施例33:ポリマー性バインダーの、グリアジンおよびグリアジン分解産物の毒性の減少に対する効果のin vivo試験)
ポリマーの、グルテンの毒性を減少させる能力を、グルテンまたはその分解産物に対して予め感作させた動物の免疫応答を測定することによって、in vivoで評価する。免疫応答を、HLA-DQ8を発現するトランスジェニックマウス(24)において、ポリマー性バインダーの存在下または不在下での、グルテンまたはその分解産物の経口投与後に、測定する。
【0096】
(実施例34:食品中へのポリマー性バインダーの導入)
ポリマー性バインダーは、セリアック病に罹患した個人向けのグルテンを含む食品中へと導入することができる。このような食品中のポリマー性バインダーは、その後、飲み込んだ場合、食品中に含まれるグルテンの有害な効果を妨げることができる。制限されるわけではないが、このような食品には、予め調理された食品(ready-cooked dish)、シリアル、パン、ペストリー、パイ、ケーキ、マフィン、クッキーなどのような焼いた食品が含まれる。このような食品は、0.01%から10%(w/w)の濃度で、ポリマー性バインダーを導入することができる。ポリマー性バインダーは、また、グルテンを含む食品を含む食事中に食べるグルテンを含まない食品へと導入することもできる。制限されるわけではないが、このようなグルテンを含まない食品には、チーズ、ジャム、バターのようなスプレッド、またはグルテンを含む食品上でまたはグルテンを含む食品とともに食べることができる任意の食品が含まれる。
【0097】
本発明を、その具体的な実施態様のために、前記に記載したが、添付の請求項に定義した対象とする発明の精神および特徴から逸脱することなく、本発明を改変することができる。
【0098】
[参考文献]



【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ポリマーまたはコポリマーを含む、経口使用のためのポリマー性バインダーであって、前記合成ポリマーまたはコポリマーが、
(a)ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)および4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のコポリマー;
(b)HEMAおよびスルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のコポリマー;
(c)4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のポリマー;および/または
(d)スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のポリマー
の一つまたは複数を含む、ポリマー性バインダー。
【請求項2】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、高分子量である、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項3】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、非加水分解性共有結合から構成される骨格を有する、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項4】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、グルテンおよびグルテンの分解に由来するペプチドの等電点よりも低いpHで静電力結合を形成することができる、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項5】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、消化管においてグルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに結合することができる、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項6】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと疎水性相互作用を形成することができる、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項7】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、水素結合を形成することができる、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項8】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、消化管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに特異的に結合することができる、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項9】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、腸管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドに結合することができる、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項10】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)および4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のコポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項11】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびスルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のコポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項12】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、4-スチレンスルホン酸ナトリウム水和物(SStNa)のポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項13】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、スルホプロピルメタクリレートカリウム(SPMAK)のポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項14】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、線状である、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項15】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、星型である、請求項1に記載のポリマー性バインダー。
【請求項16】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、3から18アームの星型コポリマーである、請求項15に記載のポリマー性バインダー。
【請求項17】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、5から18アームの星型コポリマーである、請求項15に記載のポリマー性バインダー。
【請求項18】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、5アームの星型コポリマーである、請求項15に記載のポリマー性バインダー。
【請求項19】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、8アームの星型コポリマーである、請求項15に記載のポリマー性バインダー。
【請求項20】
前記合成ポリマーまたはコポリマーが、18アームの星型コポリマーである、請求項15に記載のポリマー性バインダー。
【請求項21】
前記HEMAおよびSStNaのコポリマーが、約93.5/6.5から約1/99の間のHEMA/SStNaモル割合比率を有する、請求項10に記載のポリマー性バインダー。
【請求項22】
前記HEMAおよびSStNaのコポリマーが、線状HEMA/SStNa(51.5/48.5mol%)である、請求項10に記載のポリマー性バインダー。
【請求項23】
前記HEMAおよびSStNaのコポリマーが、線状HEMA/SStNa(43/57mol%)である、請求項10に記載のポリマー性バインダー。
【請求項24】
前記HEMAおよびSPMAKのコポリマーが、約93.5/6.5から約1/99の間のHEMA/SPMAKモル割合比率を有する、請求項11に記載のポリマー性バインダー。
【請求項25】
前記HEMAおよびSPMAKのコポリマーが、約86/14から約1/99の間のHEMA/SPMAKモル割合比率を有する、請求項11に記載のポリマー性バインダー。
【請求項26】
前記HEMAおよびSPMAKのコポリマーが、線状HEMA/SPMAK(45/55mol%)である、請求項11に記載のポリマー性バインダー。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーを含み、更に、ゾヌリンアンタゴニストまたはHLA DQ2阻害剤を含む、組成物。
【請求項28】
医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーの使用。
【請求項29】
必要とする患者の胃腸粘膜に対するグルテンの有毒な効果を防止または減少させるための医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーの使用。
【請求項30】
必要とする患者の消化管において、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドを結合させるための医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーの使用。
【請求項31】
グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、必要とする患者の胃腸粘膜との相互作用を減少させるための医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーの使用。
【請求項32】
必要とする患者の消化管において、グルテンの毒性ペプチドへの分解を減少させるための医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーの使用。
【請求項33】
前記患者が、セリアック病に罹患している、請求項30に記載の使用。
【請求項34】
請求項1から26のいずれか一項に定義のポリマー性バインダーを含む食品。
【請求項35】
グルテンを含む食品である、請求項34に記載の食品。
【請求項36】
パンである、請求項35に記載の食品。
【請求項37】
患者の食事の間に患者の胃腸粘膜に対するグルテンの有毒な効果を防止または減少させるための食品の製造における、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーの使用。
【請求項38】
前記食品が、患者の食事に含まれるグルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドを結合させるためのものである、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記食品が、患者の食事に含まれるグルテンの毒性ペプチドへの分解を減少させるためのものである、請求項37に記載の使用。
【請求項40】
前記食品が、グルテンまたはグルテンの分解に由来するペプチドと、患者の胃腸粘膜との相互作用を減少させるためのものである、請求項37に記載の使用。
【請求項41】
前記患者が、セリアック病に罹患している、請求項37に記載の使用。
【請求項42】
患者の胃腸粘膜に対するグルテンの有毒な効果を防止または減少させるための、必要とする患者用の食品へと、請求項1から26のいずれか一項に記載のポリマー性バインダーを導入する工程を含む、前記食品の製造方法。
【請求項43】
前記食品が、グルテンを含む食品である、請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−162568(P2012−162568A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−122848(P2012−122848)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【分割の表示】特願2008−539200(P2008−539200)の分割
【原出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(507054009)ヴァロリサシオン−ルシェルシュ・リミテッド・パートナーシップ (3)
【Fターム(参考)】