説明

非密閉型水槽

【課題】空気を水槽内の水に吹き込むことに伴う水面高さの低下を実質的に防止した非密閉型水槽を提供すること。
【解決手段】水槽本体、及び、相対湿度60%以上の空気を吸い込んでこの空気を水槽本体内の水に吹き込む空気吹き込み手段を備えることを特徴とする非密閉型水槽、好ましくは、前記水槽本体が非密閉型蓋を有し、前記空気吹き込み手段が、空気吸排ポンプ、水槽本体内の水面と前記蓋の間にある空気を吸い込む一端と上記ポンプに接続された他端を有する空気吸い込み管、及び、上記ポンプに接続された一端と水槽本体内の水に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管を備えた上記の非密閉型水槽。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非密閉型の水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
水槽は密閉型と非密閉型に大別される。密閉型水槽としては、生魚輸送装置として使用する水槽が例示でき、水槽内の気体を循環して二酸化炭素を吸着除去する吸着槽を備えた密閉型水槽が公開されている(特許文献1)。他の密閉型水槽としては、魚の飼育以外の展示に使用する水槽が例示でき、内容液として防腐・防藻剤と不凍液を混入した水を使用した密閉型水槽が公開されている(特許文献2)。非密閉型の水槽には多種類のものがあるが、魚の飼育に用いるためには空気を水槽内に吹き込んで酸素を供給することが好ましく、また美感上からも泡の発生は好ましい。しかし、空気を吹き込むと水の蒸発のために水面の低下が発生するので、水の補充が必要となる。特に水槽が薄型の場合には、水面の面積が小さいために水の蒸発による液面低下が顕著となる。従って、水面の低下防止の対策が強く望まれる。
【0003】
【特許文献1】特公平4−26808号公報
【特許文献2】特許第2716008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、空気を水槽内の水に吹き込むことに伴う水面高さの低下を実質的に防止した非密閉型水槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、以下の(1)に記載の手段により解決された。好ましい実施態様(2)〜(8)と共に列記する。
(1)水槽本体、及び、相対湿度60%以上の空気を吸い込んでこの空気を水槽本体内の水に吹き込む空気吹き込み手段を備えることを特徴とする非密閉型水槽、
(2)前記水槽本体が非密閉型蓋を有し、前記空気吹き込み手段が、空気吸排ポンプ、水槽本体内の水面と前記蓋の間にある空気を吸い込む一端と前記空気吸排ポンプに接続された他端を有する空気吸い込み管、及び、前記空気吸排ポンプに接続された一端と水槽本体内の水に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管を備えた、(1)に記載の非密閉型水槽、
(3)前記空気吸排ポンプが、空気吸い込み口及び空気吐き出し口を有する密閉タンク、前記密閉タンク内に配置され、空気排出口を備え、前記空気吸い込み口から吸い込んだ空気を前記空気吸排ポンプの前記空気排出口に排出するダイヤフラムポンプ、及び、前記空気排出口を前記空気吐き出し口に接続する手段、を有する(2)に記載の非密閉型水槽、
(4)前記空気吹き込み管が、(a)微細な穴を設けた管からなる泡発生装置、及び/又は、(b)水槽本体内にほぼ垂直に配置された中空管の底部側中空管内に空気を送り、発生した泡の上昇に伴って水槽本体内の水を循環させる水循環装置、に接続された、(2)又は(3)に記載の非密閉型水槽、
(5)前記空気吹き込み手段の内部に空気の加熱手段及び/又は冷却手段を有する(1)〜(4)いずれか1つに記載の非密閉型水槽、
(6)前記空気吹き込み手段が、空気吸排ポンプ、水槽本体内又は水槽本体外に設けられた加湿空気発生手段内にある加湿空気を吸い込む一端と前記空気吸排ポンプに接続された他端を有する空気吸い込み管、及び、前記空気吸排ポンプに接続された一端と水槽内の水に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管を備えた(1)に記載の非密閉型水槽、
(7)水槽本体外側の奥行きが20mm以上100mm以下である、(1)〜(6)いずれか1つに記載の非密閉型水槽、
(8)パネル装置に組み込むための(1)〜(7)いずれか1つに記載の非密閉型水槽。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水槽本体内の水面の低下を実質的に防止又は大幅に抑制することができる非密閉型水槽を提供することができた。このため水の補給を不要とするか、その頻度を大幅に低下することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、適宜図面を参照しながら、本発明を説明する。
本発明は、水槽本体、及び、相対湿度60%以上の空気(以下、単に「加湿空気」ともいう。)を吸い込んでこの空気を水槽本体内の水に吹き込む空気吹き込み手段を備えた非密閉型水槽に係る。吸い込む空気の温度と吹き込む空気の温度が異なるとその相対湿度は変化するが、本発明では吸い込む空気の相対湿度を規定している。
図1は、本発明に係る水槽の概略を示す正面概略図である。本発明の非密閉型水槽1は、水槽本体2、これに張られた水3及び相対湿度60%以上の空気を吸い込んでこの空気を水槽本体2内の水3に吹き込む空気吹き込み手段を備えている。空気吹き込み手段は後述する。
吸い込む空気の相対湿度は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0008】
また水槽本体2の中に張る水3は、必要に応じて、水と相溶性の水性有機化合物を含んでいてもよい。水性有機化合物として、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びグリセリンが例示できる。その含有量は、50重量%未満が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下が特に好ましく、このような不凍液成分を含まないことがとりわけ好ましい。
本発明において使用する水としては、水道水や井戸水が好ましく、一旦煮沸滅菌した水がより好ましい。イオン交換処理をしてカルシウムを低減した水もまた好ましい。本発明に使用する水には、適宜防腐剤や防黴剤などを添加することができる。
【0009】
水槽本体2の形状は、円筒型であってもよいが、好ましくは直方体である。直方体を構成する5面(上面を除いている。)の少なくとも1面は光透過性であり、実質的に透明な板(透明板)を使用することが好ましい。「実質的に透明」とは可視域の平均透過率が90%以上であることをいう。対向する2面が実質的に透明であることがより好ましい。
水槽本体が直方体である場合、その幅、高さ、及び奥行きは自由に選択できる。本発明の水槽本体は、その奥行きの外寸が20mm以上200mm以下である薄型であることが好ましく、30mm以上100mm以下であることがより好ましい。水槽本体が薄型になるほどその水面の面積は小さくなり、水面低下が目立つので、本発明の効果がより有効となる。
水槽本体の幅は任意に選択できるが、60cm以上が好ましく、70〜180cmがより好ましい。高さも任意に選択できるが、30cm以上が好ましく、50〜120cmがより好ましい。
このような大型の水槽の透明板としては、ガラス板が好ましく使用できる。ガラス板の厚さは3〜8mmが好ましく、飛散防止の保護フィルムを貼り付けた強化ガラスがより好ましい。また、PMMAなどの有機ガラス板に表面硬度5H以上の耐傷性フィルムを貼り付けた透明板も使用でき、この場合、厚さは水槽容量により適宜選択できるが、3〜15mmとすることが好ましい。
上記の薄型の水槽は、パネル装置に組み込むために使用することができる。パネル装置のモジュール(機能単位、横幅)は90〜270cmであることが好ましく、90〜180cmがより好ましい。
【0010】
空気吹き込み手段は、加湿空気源から加湿空気を吸い込む空気吸い込み管、加湿空気を吸入し排出するポンプ(空気吸排ポンプ)、及び、空気吸排ポンプから加湿空気を吹き込む空気吹き込み管とからなる。加湿空気の供給源は、相対湿度60%以上の空気を供給できる限り、水槽本体内にあっても水槽本体外にあってもよいが、水槽本体内にあることが好ましい。また、空気吸排ポンプとしては、ダイヤフラムポンプなどの各種の市販製品が利用できる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様について以下に説明する。
加湿空気の好ましい供給源として、2つが例示できる。その1つは、図1に例示するように、水槽本体2の上側に好ましくは非密閉型の蓋31を設けて、水面とこの蓋の間にある気相5の内部の加湿空気を供給源とするものである。他の1つは、図6に例示するように、水槽本体2内又は水槽本体2外に加湿空気発生手段12を設けて、これを加湿空気の供給源とするものである。前者の方法は、加湿空気の発生源を水槽本体とは別に設けなくて済む点で簡便である。
【0012】
本発明の一実施態様として、前記空気吹き込み手段が、空気吸排ポンプ、非密閉型蓋を有する水槽本体、水槽本体内の水面と前記蓋との間にある空気を吸い込む一端と上記ポンプに接続された他端を有する空気吸い込み管、及び、上記ポンプに接続された一端と水槽本体内の水に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管を備えた非密閉型水槽について説明する。
図1に示すように、水槽1は、水槽本体2の上方に空気吸排ポンプ11を備えている。この空気吸排ポンプ11には水槽本体2内の気相5にある加湿空気を吸い込む空気吸い込み管13が接続されている。また、空気吸排ポンプ11には、空気吸排ポンプ11から水槽本体2に張られた水3に空気を吹き込むための空気吹き込み管15、17が接続されている。水槽本体2の内部に張られた水3の水面上には、非密閉型の蓋31が備えられている。この空気吸排ポンプ11は、水面と非密閉性の蓋31との間にある加湿空気を吸い込み、さらにこの過湿空気を空気吸排ポンプ11を介して水3に吹き込むものである。
【0013】
水槽本体2の上部に設けられる非密閉型の蓋31は、例えば、水槽本体上部内側に設けられた切り抜きのあるフレームに載置する落とし蓋とすることができる。この蓋31は、水槽本体2に振動が加えられて水面が乱れた場合にも、水3の水槽本体2の外部への飛び出しを防止することができる程度の水密性を有しているが、水槽本体2内の気相5が負圧になった場合には、蓋31とこれらが載置されたフレームとの隙間を通して水槽本体2の外部から気相5への大気の流入を妨げることのない程度の非密閉型のものである。
空気吹き込み管15、17は、加湿空気を吹き込むために使用する耐水性の管であり、その材質を問わないが、金属管、耐水性の合成樹脂チューブ等が広く使用できる。空気吹き込み管の材質として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂などからなる硬質管又は柔軟チューブ、銅管、ステンレス管が例示できる。
【0014】
本発明の水槽1は非密閉型であり、加湿空気を水槽1内の水3に吹き込む場合でも、水槽本体2の上面から空気が水槽本体2に張られた水3の内部に出入りできる構造を有している。このために、水槽本体2の上部内側に設けた蓋31と水槽本体2に固定されたフレームとの隙間から空気が水槽本体2の内部に入ることができる。このため、水槽内に魚など水棲動物を飼育したり、水生植物を生育する場合にも、これらの動植物が必要とする酸素及び/又は二酸化炭素を水槽1内に取り込むことができる。
なお、本発明において、「空気」とは、大気中の平均的な組成を有する気体に限定されず、必要に応じて酸素及び/又は二酸化炭素の含有量を増減した気体をも含む。
本発明の非密閉型水槽1は、水槽1内で酸素が消費される場合にも、水槽1内の水3の溶存酸素量が平衡量の80%以上の値を維持できるような密閉度を有していることをいう。溶存酸素濃度は、市販(株式会社佐藤商事など)の溶存酸素計で測定することができる。蓋31と水槽本体2のフレームとの間に適当な隙間を設けることにより非密閉型とすることができる。
【0015】
水槽内に魚類等を飼育しない場合には、蓋を水槽本体に固定したフレームに密閉することにより、密閉型水槽として使用することもできる。この場合、水槽に張る水には、水道水や井戸水を使用することができ、煮沸滅菌した後に使用することが好ましい。また、イオン交換水をそのまま使用することもでき、必要に応じて煮沸滅菌して使用することも好ましい。イオン交換により水中のカルシウムイオンを低減することにより、カビや藻類の発生と増殖を大幅に抑制することができる。水槽の水には、カビや藻類の発生を促進する不凍液を使用しないことが好ましい。水槽の水に防菌剤や防カビ剤を併用してもよい。
密閉型水槽の場合にも、蓋の密閉度が異なる以外は、非密閉型水槽に準じた構成とすることができる。
【0016】
上記の実施態様において、水槽1は、加湿空気を水槽本体2内の水3に吹き込むことにより、水中を上昇する泡により水面から蒸発する湿気を相殺する役割を果たし、水面を一定レベルに実質的に維持するか又はその低下を大幅に抑制する効果を有する。
後に図3として説明する実測結果の一例によれば、室内空気をそのまま吹き込む場合に比べて、本発明の一実施態様として、蓋と水面の間にある加湿空気を吹き込む非密閉蓋付き水槽の場合には、水の蒸発を1/5〜1/10に低減することができた。
【0017】
本発明の水槽1において、空気吸排ポンプ11は水槽本体2の鉛直方向上方に配置されている。空気吸い込み管13は水槽本体2の気相5の内部にある端部から上記ポンプに向かって水平又は鉛直方向上方に配置されていることが好ましい。空気吸い込み管13は水面上部の加湿空気を吸い込むために、吸い込み管が露点以下の温度に冷却された部分があると管内壁に露結を生じる傾向がある。このために、空気吸い込み管13が空気吸排ポンプ11から単調に下向き又は少なくとも水平に気相5にまで配置されていると、空気吸い込み管13の内部に露結した水分が空気吸排ポンプ11に流入することを防止できる。この場合、空気吸い込み管13の内壁に露結した水滴があっても水槽本体2の中に戻ることができる。
なお、空気吸排ポンプ11は、その運転により適度に過熱され、熱伝導によりこれに接続された空気吸い込み管13が加熱されることにより露結を防止する傾向にある。
【0018】
図2を参照して、水槽本体2内の気相5にある加湿空気を吸い込んでこれを水槽本体2内の水3に吹き込むための空気吸排ポンプ11の具体的な態様を例示する。
図2において、空気吸排ポンプ11は、空気吸い込み口11b及び空気吐き出し口11cを有する密閉タンク11a、前記密閉タンク11a内に配置され、空気排出口11eを備え、前記空気吸い込み口11bから吸い込んだ空気を空気吸排ポンプ11の空気排出口11eに排出するダイヤフラムポンプ11d、及び、空気排出口11eと空気吐き出し口11cとを接続する接続手段11fを有している。
上例において、ダイヤフラムポンプ11dとして、家庭用水槽用に市販されている空気排出口11eを備えたダイヤフラムポンプ11dを利用することができる。市販ダイヤフラムポンプは、空気の吸入はポンプの樹脂製筐体に設けた通気口を通して行うことが多く、通気口には除塵フィルターが設けられていることが多い。このようなダイヤフラムポンプは、樹脂製筐体を取り除いてダイヤフラムポンプ本体のみを使用することができる。
【0019】
図2に示すように、このようなダイヤフラムポンプ11dを収納することができる内部容量を備えており、空気吸い込み口11b及び空気吐き出し口11cを有する密閉タンク11aをまず用意する。次いで、この密閉タンク11a内に空気排出口11eを備えたダイヤフラムポンプ11dを配置する。密閉タンク11a内に収納されたダイヤフラムポンプ11dは、前記密閉タンク11aの空気吸い込み口11bから吸い込んだ空気をこのダイヤフラムポンプ11d内に吸入して、この空気を空気排出口11eに排出するので、この空気排出口11eを密閉タンク11aの空気吐き出し口11cに接続する接続手段11fを設けておくと、図1に示す気相5内の加湿空気を空気吸い込み管13から吸い込んで、空気吹き込み管15、17を通して水3に吹き込む空気吸排ポンプとして使用することができる。接続手段11fとしては、図示したような接続管を使用する以外に、直接の接続でもよい。
ダイヤフラムポンプは、水槽本体の水深に応じた出力を有する機種を使用することが好ましい。
また、このようにダイヤフラムポンプ11dを、密閉タンク11a内に収納することにより、ダイヤフラムポンプ11dの振動と騒音をタンク外に遮断する効果も得られる。
【0020】
また、空気吸排ポンプ11内に加熱源を設けて、水3への吹き込み加湿空気を加熱することにより、水3の水温を上昇させ、熱帯魚の飼育に適した水温に調節することができる。
【0021】
本発明には、水槽に張る水量及び水深にも依存するが、排出空気量が水深60cmの場合で1〜10L/分である空気吸排ポンプ、好ましくは吐出量が1〜3L/分である空気吸排ポンプが好ましく使用できる。このような製品は市販品を利用することができる。市販品として、株式会社ニッソー製のNα−シリーズ(Nα−6000を含む。吐出量1口あたり1〜6L/分)や株式会社アデックス製X202エアーポンプ、及び日本動物薬品株式会社製スーパーノンノイズW−1000エアーポンプが例示できる。水槽1への空気吹き込み量は、空気吹き込み管15、17の外部に付けたスクリューコックやピンチコックで調節可能である。
空気吸排ポンプのその他の態様として、吸気管と排気管とを有するダイヤフラムポンプを使用することもできる。
【0022】
図3を参照して、本発明の水槽における水位低下の一例を示す。
図3の中で四角の点は本発明の水槽における水面の低下を示す測定点である。一方、丸の点は比較例の水槽における水面の低下を示す測定点である。
本測定例は、水深約60cm、幅約80cm、厚さ(外寸)が約5cmの水槽を用いた場合の本発明の水槽の効果を示す。晩秋にエアコンを操作しない室内の空気をそのまま吹き込む場合に比べて、本発明の一実施態様として、蓋と水面の間にある加湿空気を吹き込む非密閉蓋付き水槽の場合には、水の蒸発速度を1/5〜1/10に低減することができた。水槽本体に固定したフレームと落とし蓋との間の密閉度を上げると、水の蒸発速度を1/20以下にすることもできる。
【0023】
本発明の水槽において、空気吹き込み管は泡発生装置や水循環装置に接続することができる。
図1に示すように、水槽1において、空気吹き込み管15は、微細な穴を設け一端を閉じた泡発生装置21の他端に接続されている。また、空気吹き込み管17は、水槽本体2内にほぼ垂直に配置された中空管23の底部側中空管内に空気を送り、発生した泡の上昇に伴って水槽本体2内の水3を循環する水循環装置に接続されている。
【0024】
図4に上記の水循環装置の上部を部分的に拡大して断面図として示す。空気吹き込み管17は中空管23の横に配置されており、図1に示すように空気吹き込み管下端部17Aから中空管23の内部に挿入されて、空気を吹き込んでいる。中空管23の中で吹き出された泡の上昇に伴って水槽本体2内の水3も上昇し、中空管23の上部に設けられており水面よりも上に位置する中空管折れ曲がり端部23Aから水面に落下して循環する。
【0025】
空気吸排ポンプ11と直列又は並列に加熱源又は冷却源を吸排空気の通路に配置して、水槽本体2内の水3の温度調節をすることもできる。
例えば室温が23℃の場合、熱帯魚を水槽1に飼育する場合には水3の加熱が好ましく、海水魚の場合には水3を冷却することが好ましい。室温近傍の温度制御のためには、加熱手段と冷却手段を併用してもよい。
【0026】
図5を参照して、空気ヒーターを備えた水槽の一実施態様を説明する。
図5に示す水槽1の全体的構成は、図1に示す水槽1のそれとほぼ同様である。相違点は銅製空気吹き込み管18を使用している点、及び比較的水面に近い部分で銅製空気吹き込み管18の外周をバンドヒーター19により加熱している点である。この銅製空気吹き込み管18の外部加熱により、水中に投入された銅製空気吹き込み管18への熱伝導、及び、吹き込まれる加温された加湿空気の吹き込みにより、水3の温度を室温以上に保持することができる。また、温度調節を行うため、不図示の温度調節器を用いて、バンドヒーター19を加熱する電気出力を変化させてもよい。バンドヒーター19の外周に断熱処理を施してもよい。なお、銅製空気吹き込み管18は、バンドヒーター19よりも水槽側にあればよく、空気吸排ポンプ11の側は合成樹脂製の空気吹き込み管を接続してもよい。
また、水中に導入された銅製空気吹き込み管18は加温されているために、その周囲に上昇する水流を生じる。この上昇水流により水槽内の水を循環することができる。奥行きの小さい水槽の場合には、加温した銅製空気吹き込み管18の対流による水の循環が特に有効である。
【0027】
図6は加湿空気の供給源を、水槽本体内又は水槽本体外に設ける一実施態様の概念的模式図である。
図6に示す非密閉型水槽1は、空気吹き込み手段が、空気吸排ポンプ11、水槽本体2の外部に設けた加湿空気発生手段12により生成した加湿空気を吸い込む一端と空気吸排ポンプ11に接続された他端を有する空気吸い込み管13、及び、空気吸排ポンプ11に接続された一端と水槽本体2内の水3に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管15、17を備えている。
加湿空気発生手段としては、図6に例示した泡発生装置21の他に、超音波水霧発生装置又は水加熱水蒸気発生装置も例示できる。
図6に示した非密閉型水槽においても、図1に示したように、空気吹き込み管には種々の泡発生装置及び/又は水循環装置を接続することができる。
【0028】
以下に本発明に使用できる水槽本体の構成例について説明する。
本発明に使用する水槽本体は、対向する2枚の板状体の周縁部をスペーサ枠材を介して接着することができる。この水槽本体は、前記スペーサ枠材の外周側にシーリング材を有し、前記シーリング材が前記板状体の端面の外周まで形成されていることが好ましい。また、板状体の周縁部外側に固定部材が嵌入されていることが好ましい。水槽本体の奥行き(外寸)は20mm以上200mm以下であることが好ましい。スペーサ枠材はコの字形状の断面を有し、スペーサ枠材と板状体がシリコン系接着剤で接着され、前記シーリング材がブチル系ゴムであることが好ましい。
また、2本の横スペーサ枠材及び2本の縦スペーサ枠材が2枚の矩形板状体の周縁部に矩形を形成するように配置され、4本のスペーサ枠材はその形成された矩形の4角においてL字形の直角結合部材で結合され、片方の横スペーサ枠材には開口を設けた水槽であることが好ましい。また、固定部材が板状体の4辺に嵌入されており、開口を有するスペーサ枠材の外側には固定部材にも開口を設けるか又は固定部材が嵌入されていないことも好ましい。
以下、本発明に使用できる水槽本体を図7を用いて説明する。なお、以下、同一の符号は同一の対象を指すものとして使用する。
【0029】
図7は本発明に使用できる水槽本体の一例を示す模式的な斜視図である。
図7のaは水槽本体の外側の奥行き(厚さ)、bは水槽の外側の幅、cは水槽の外側の高さを示している。
水槽本体100は、対向する2枚の板状体102、102’の周縁部がスペーサ枠材104を介して接着されている。
また、図7では、スペーサ枠材104の外周側にシーリング材112を有し、水槽本体100が水密に封止されている。また、前記シーリング材112が前記板状体102、102’の端面110の外周まで形成されている。
また、図7において、水槽本体100の板状体102、102’の周縁部外側には、固定部材120が嵌入されている。固定部材120は水槽本体100の両側面及び底面並びに上面の各辺に連続した1つの部材を使用することもできる。
【0030】
図7に示す水槽本体は、特に薄型の水槽に好適に使用できる。この水槽本体は、従来の水槽のように水槽内部に人の手を入れての組み立て作業なしに製造することができるので、内部からの組み立て作業が困難な薄型の水槽本体として好適である。なお、組み立て作業とは、接着作業や、補強作業、シーリング作業等、水槽の製造時に必要とされる作業を広く意味するものである。
【0031】
水槽本体の幅bは、特に限定されず、所望の大きさで選択することができるが、30〜180cmであることが好ましく、60〜120cmであることがより好ましい。水槽本体の幅bを上記範囲にすることにより、強度に優れた水槽となるので好ましい。
【0032】
本発明の水槽の横断面のアスペクト比、すなわち、水槽の(幅/奥行き)は180〜3が好ましく、60〜7.5がより好ましく、40〜8.6がさらに好ましい。ここで、水槽の幅、奥行き及び高さはいずれも外寸で表すものとする。
水槽本体の奥行きが小さい水槽、言い換えると、アスペクト比が大きな水槽は、上述の通り水槽内部からの作業が困難であり、従来の方法では水密性の高い水槽を得ることが困難であった。本発明においては、上記のアスペクト比を有する水槽本体が特に好適である。
【0033】
また、板状体の表面(いずれかの面、又は両面、好ましくは外表面)に飛散防止フィルムを貼付することも好ましい。飛散防止フィルムを貼付することにより、板状体破損時の安全性を向上させることができ、また、板状体の強度を向上させることができるので好ましい。特に、飛散防止フイルムを貼付することにより、人体や物がガラスへ衝突した際や、地震等の外力によるガラスのゆがみによってガラスが破損した場合に、ガラス破片による被害を少なくすることができるので好ましい。飛散防止フイルムとしては、ポリエステルフィルム又はポリ塩化ビニルフィルムに感圧粘着剤を塗布したものが例示でき、ポリエステルフィルムがより好ましい。また、飛散防止フィルムの外表面にさらにハードコート処理を行っていてもよい。
各種の飛散防止フィルムが上市されており、具体的には、CLM−2HC、CLM−2X(三晶株式会社製)が例示でき、CLM−2HC(ハードコート処理フィルム)が特に好ましい。
また、板状体の外表面に防曇加工を施すこともできるし、板状体の内表面に防藻処理、防黴処理等を施すこともできる。
【0034】
また、本発明の水槽はパネル装置に組み込むために使用することができる。
【0035】
本発明の水槽は、様々な用途に使用することができ、特に限定されない。
例えば、観賞用魚飼育用の水槽や、水中植物を配して観賞用水槽とすることができる。また、水槽の下部から気泡を発生させて、室内装飾具とすることもできる。室内装飾具としては、水槽内に水又は水と水混和性の水性溶媒(例えば、グリセリン、エチレングリコール等)に必要に応じて防腐剤、着色剤を添加し、水槽内に気泡を発生させる室内装飾具が例示できる。また、適宜照明を適用することも好ましい。
本発明の水槽は、そのままで壁掛けとしたり、水槽台に設置することも好ましい。また、座席同士の仕切りや、大型の間仕切り、パネル装置及びそれらの一部としても使用することができる。
使用用途に応じて、照明を配したり、送気ポンプ、水循環ポンプ等を適宜設けることが好ましい。
【0036】
特に、本発明の水槽は薄型かつ大型の水槽とすることが可能であり、パネル装置に一体に装着するために使用されることが好ましい。
パネル装置は、間仕切りとして使用することもできるし、装飾用の壁として使用することもできる。
パネルに装着される水槽は、撹拌手段、空気又は酸素供給手段、炭酸ガス供給手段、排水手段、餌供給手段、照明手段、水交換手段及び水質浄化手段よりなる群から選択される少なくとも1種を具備することが好ましい。
上記の手段は公知の水槽に使用されている各種の手段から適宜選択することができる。
【0037】
図8に本発明の水槽を装着したパネル装置の概念図を示す。
図8において、水槽650は、矩形枠を有する中央部パネル620に装着されている。水槽650の上部には、LEDライトが配置されており(不図示)、また、上部パネル610には、空気吸排ポンプ11が配置されている。空気吸排ポンプ11は、水槽本体内の気相にある加湿空気を吸入しこれを水槽内の水に排出している。さらに、下部パネル630内には、排水を貯留する排水タンク640が配置されている。
【0038】
図8を参照して以下に本発明の非密閉型水槽を組み込むためのパネル装置を詳述する。
図8において、パネル装置600は、左右一対の支柱601、601’が、上下方向に離間する複数の横フレーム605〜608によって連結されており、上下方向に三段の方形空間を有するパネル枠体を形成している。ここで、パネル枠体とは、支柱と横フレームと必要に応じて天井又は床とで形成された方形空間を意味する。従って、図8では、パネル装置600は3つのパネル枠体を有している。
ここで、支柱601、601’の連結は、パネル装置の最端部で行う必要はなく、パネル枠の上部と天井や、パネル枠の下部と床の間に空間が存在してもよい。
支柱601、601’、横フレーム605〜608によりパネル枠体が形成され、図8において、パネル枠体に上下方向に3つのパネルが取り付けられている。
方形の空間は1以上であれば特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。パネル装置に形成される方形の空間は、3〜6であることが好ましく、3〜5であることがさらに好ましい。方形の空間に取り付けられるパネルの数は特に限定されず、全ての直方体の空間にパネルを取り付けることもできるし、枠体のみの空間を有していてもよい。
3以上の枠体とした場合には、図8に示すように、中央枠体内に水槽を装着して、隣接する上部枠体に空気吸排ポンプ11を収納することができ、また隣接する下部枠体内に、排水タンク640を収納することができるので便利である。
【0039】
また、本発明の水槽を組み込んだパネル装置は、パネル枠体の少なくとも1つに、少なくとも片側が透明な2枚の板状体を水密に対向させた水槽を装着している。図8において、パネル装置600は上下3つのパネル枠体に、それぞれ上部パネル610、中央部パネル620及び下部パネル630を有し、中央部パネル620は、透明な板状体を水密に対向させた水槽650を装着している。また、水槽650よりも上に位置する上部パネルには、空気吸排ポンプ11が配置されている。
【0040】
水槽を装着したパネル枠体の少なくとも前面周縁部には、不透光性の周縁枠が設けられていることが好ましい。図8中、中央部パネル620の前面には、周縁部が不透光性の周縁枠652が設けられている。
周縁枠を設けることにより、水槽に必要とされる空気吸排ポンプと水槽を連結する空気吹い込み管、空気吹き込み管、及び排水等のための配管や配線等を目隠しすることができる。また、水槽のパネルへの固定部(下部受け座及び上部固定部材等)を目隠しすることもできるので好ましい。
また、図8では、周縁枠652は開口部を有する扉となっており、丁番656及び留め具658により開閉可能となっている。
周縁枠は少なくとも水槽が視認される側(前面)に設けられていることが好ましく、パネル装置の両面(前後)から水槽が視認可能である場合には、前後の両面に周縁枠を設けることが好ましい。
【0041】
また、水槽を装着したパネルの下に、水槽からの排水を貯留する排水タンクが備えられていることが好ましい。図8では、下部パネル630の内部に、水槽からの排水を貯留する排水タンク640が設けられている。図8では、水槽650の底部に設けられた排水管670を通って、排水タンク640へと排水可能となっている。
また、万が一、水槽が収容する液体の漏れが生じた場合にも、下部の排水タンク640に貯留させて、パネル装置外への液体の漏れを防止できるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の水槽の一実施態様を示す正面概略図である。
【図2】本発明に使用する空気吸排ポンプの構成例を示す概念図である。
【図3】本発明の水槽の水位低下を示す一例である。
【図4】本発明に使用できる水循環装置の上部を示す概略図である。
【図5】本発明の水槽の別の一実施態様を示す正面概略図である。
【図6】本発明の水槽の更に別の実施態様を示す正面概略図である。
【図7】本発明に使用する水槽本体の構成例を示す斜視概略図である。
【図8】本発明の水槽を装着したパネル装置の一例の概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1:水槽
2:水槽本体
3:水
5:気相
11:空気吸排ポンプ
11a:密閉タンク
11b:空気吸い込み口
11c:空気吐き出し口
11d:ダイヤフラムポンプ
11e:空気排出口
11f:接続手段
12:加湿空気発生手段
13:空気吸い込み管
15:空気吹き込み管
17:空気吹き込み管
17A:空気吹き込み管下端部
18:銅製空気吹き込み管
18A:銅製空気吹き込み管端部
19:バンドヒーター
21:泡発生装置
23:中空管
23A:中空管折れ曲がり端部
25:枠体
27:枠体
31:蓋
100:水槽本体
102、102’:板状体
104:スペーサ枠材
106、106’:接着剤
110:板状体の端面
112:シーリング材
120:固定部材
600:パネル装置
601、601’:支柱
605、606、607、608:横フレーム
610:上部パネル
620:中央部パネル
630:下部パネル
640:排水タンク
650:水槽
652:周縁枠
656:丁番
658:留め具
670:排水管
a:奥行き(外寸)
b:幅(外寸)
c:高さ(外寸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽本体、及び、
相対湿度60%以上の空気を吸い込んでこの空気を水槽本体内の水に吹き込む空気吹き込み手段を備えたことを特徴とする
非密閉型水槽。
【請求項2】
前記水槽本体が非密閉型蓋を有し、
前記空気吹き込み手段が、
空気吸排ポンプ、
水槽本体内の水面と前記蓋との間にある空気を吸い込む一端と前記空気吸排ポンプに接続された他端を有する空気吸い込み管、及び、
前記空気吸排ポンプに接続された一端と水槽本体内の水に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管を備えた、請求項1に記載の非密閉型水槽。
【請求項3】
前記空気吸排ポンプが、
空気吸い込み口及び空気吐き出し口を有する密閉タンク、
前記密閉タンク内に配置され、空気排出口を備え、前記空気吸い込み口から吸い込んだ空気を前記空気吸排ポンプの前記空気排出口に排出するダイアフラムポンプ、及び、
前記空気排出口を前記空気吐き出し口に接続する手段、を有する
請求項2に記載の非密閉型水槽。
【請求項4】
前記空気吹き込み管が、
(a)微細な穴を設けた管からなる泡発生装置、及び/又は、
(b)水槽本体内にほぼ垂直に配置された中空管の底部側中空管内に空気を送り、発生した泡の上昇に伴って水槽本体内の水を循環させる水循環装置、に接続された、
請求項2又は3に記載の非密閉型水槽。
【請求項5】
前記空気吹き込み手段が空気の加熱手段及び/又は冷却手段を有する請求項1〜4いずれか1つに記載の非密閉型水槽。
【請求項6】
前記空気吹き込み手段が、
空気吸排ポンプ、
水槽本体内又は水槽本体外に設けられた加湿空気発生手段内にある加湿空気を吸い込む一端と前記空気吸排ポンプに接続された他端を有する空気吸い込み管、及び、
前記空気吸排ポンプに接続された一端と水槽本体内の水に空気を吹き込むための他端を有する空気吹き込み管を備えた、
請求項1に記載の非密閉型水槽。
【請求項7】
水槽本体外側の奥行きが20mm以上200mm以下である、請求項1〜6いずれか1つに記載の非密閉型水槽。
【請求項8】
パネル装置に組み込むための請求項1〜7いずれか1つに記載の非密閉型水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−153460(P2009−153460A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336362(P2007−336362)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(507233626)
【Fターム(参考)】