説明

非接触三次元計測方法及びその装置

【課題】本発明の目的は、ワークの三次元形状情報の広範囲測定を良好に行うことのできる非接触三次元計測装置を提供することにある。
【解決手段】非接触プローブ12の測定位置を二軸方向に平行移動することによりワーク20を異なる測定位置から分割測定し該分割測定された複数のデータを統合することにより該ワーク20の三次元形状情報を得る広範囲測定を行う非接触三次元計測装置10であって、測定位置に静止した状態で視野に入るワーク20上の各点の位置情報を検出し該測定位置でのデータを得る該プローブ12と、該プローブ12の測定位置を二軸方向に平行移動する位置変更手段16と、該プローブ12の測定位置情報を得る位置検出手段16と、該非接触プローブ12の平行移動量に基づき該隣り合う測定位置で得られた複数データの平行移動方向の位置合わせを行う統合手段18とを備えたことを特徴とする非接触三次元計測装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触三次元計測方法及びその装置、特に広範囲測定手法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークの三次元形状情報を非接触に計測するため、非接触三次元計測装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
非接触三次元計測装置においては、非接触プローブの視野を越えた広範囲のワークを計測する広範囲測定が求められている。
これに応えるため、非接触三次元計測装置においては、非接触プローブとワークとの位置関係を変えることで、ワークを異なる方向から分割測定し、分割測定された複数のデータを統合している。この結果、非接触プローブの視野を越えた広範囲において、ワークの三次元形状情報を得ることができる。
【0003】
ところで、分割測定された複数のデータを統合するためには、複数のデータを計測後に統合する方法と、非接触プローブの測定位置またはワークの位置を検出して、その位置情報から複数のデータを統合する方法がある。
複数のデータを計測後に統合する方法では、マーカーやソフトウェアを用いている。非接触プローブの測定位置またはワークの位置を検出して複数のデータを統合する方法では、回転ステージを利用している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−136231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記マーカーやソフトウェアを用いた方法では、統合精度の検証やマーカーの準備作業に効率の問題があった。また、前記回転ステージを利用した方法では、より幅の広いワークを扱う場合やワークの重量が重い場合、不向きであった。
このため、非接触三次元計測を行う分野では、広範囲測定を良好に行うことのできる技術の開発が強く望まれていたが、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ワークの三次形状情報の広範囲測定を良好に行うことのできる、非接触三次元計測方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが前記課題について鋭意検討を重ねた結果、ワークと非接触プローブとの位置関係を変えるため、非接触プローブを精密に平行移動することにより、非接触プローブの平行移動前の測定位置で得られたデータ及び非接触プローブの平行移動後の測定位置で得られたデータも、精密に平行移動したものとして得られること、これらのデータの平行移動量は、デジタルスケールにより正確に求められるので、該求められた平行移動量に基づき、複数データの位置合わせを行うことにより、これらのデータの統合を良好に行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる非接触三次元計測方法は、非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動することによりワークを異なる測定位置から分割測定し、該分割測定された複数のデータを統合することにより該ワークの三次元形状情報を得る広範囲測定を行う非接触三次元計測方法であって、
測定工程と、位置変更工程と、統合工程と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記測定工程は、前記非接触プローブを測定位置に静止した状態で、該非接触プローブにより、該非接触プローブの視野に入るワーク上の各点の位置情報を測定し、該測定位置でのデータを得る。
また、前記位置変更工程は、前記非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で該非接触プローブの視野の一部が重なるように、該非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動する。また該位置変更工程は、該非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置間の、該非接触プローブの平行移動量情報を得る。
前記統合工程は、前記位置変更工程により得られた非接触プローブの平行移動量に基づき、該隣り合う測定位置で得られた各データの平行移動方向の位置合わせを行う。
【0008】
また、前記目的を達成するために本発明にかかる非接触三次元計測装置は、非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動することによりワークを異なる測定位置から分割測定し、該分割測定された複数のデータを統合することにより該ワークの三次元形状情報を得る広範囲測定を行う非接触三次元計測装置であって、
非接触プローブと、位置変更手段と、位置検出手段と、統合手段と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記非接触プローブは、所定の視野を有し、該非接触プローブを測定位置に静止した状態で、該非接触プローブの視野に入るワーク上の各点の位置情報を非接触に測定し、該測定位置でのデータを得るためのものとする。
また、前記位置変更手段は、前記非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で該非接触プローブの視野の一部が重なるように、該非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動する。
前記位置検出手段は、前記非接触プローブの測定位置情報を得る。
前記統合手段は、前記位置検出手段からの測定位置情報に基づく該隣り合う測定位置間の非接触プローブの平行移動量に基づき、該隣り合う測定位置で得られた各データの平行移動方向の位置合わせを行う。
【0009】
なお、本発明においては、前記位置変更手段が、平行移動式二軸ステージであることが好適である。ここで、前記平行移動式二軸ステージは、互いに直交する第一軸案内及び第二軸案内を備える。そして、前記平行移動式二軸ステージは、前記第一軸案内により前記非接触プローブを前記第一軸方向である水平軸方向に平行移動する。また、前記平行移動式二軸ステージは、前記第二軸案内により該非接触プローブを前記第二軸方向である垂直軸方向に平行移動する。
【0010】
また、本発明においては、前記位置検出手段が、デジタルスケールであることが好適である。ここで、前記デジタルスケールは、前記平行移動式二軸ステージに内蔵され、前記非接触プローブの測定位置の情報をデジタル出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる非接触三次元計測方法によれば、非接触プローブを測定位置に静止した状態で視野に入るワーク上の各点の位置情報を測定し該測定位置でのデータを得る測定工程と、非接触プローブの測定位置を二軸方向に平行移動し、該非接触プローブの平行移動量を得る位置変更工程と、該非接触プローブの平行移動量に基づき隣り合う測定位置で得られた各データを統合する統合工程とを備えることとした。
この結果、本発明にかかる非接触三次元計測方法によれば、ワークを複数の測定位置から分割測定して得られた複数のデータの統合を良好に行うことができるので、広範囲測定を良好に行うことができる。
【0012】
また、本発明にかかる非接触三次元計測装置によれば、視野に入るワーク上の各点の位置情報を非接触に検出する非接触プローブと、非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で視野の一部が重なるように非接触プローブを二軸方向に平行移動自在とする位置変更手段と、非接触プローブの平行移動量を検出する位置検出手段と、該非接触プローブの平行移動量に基づき隣り合う測定位置で得られた各データを統合する統合手段とを備えることとした。
この結果、本発明にかかる非接触三次元計測装置によれば、ワークを複数の測定位置から分割測定して得られた複数のデータの統合を良好に行うことができるので、広範囲測定を良好に行うことができる。
【0013】
本発明においては、前記位置変更手段が前記平行移動式二軸ステージであること、ないし前記位置検出手段が前記平行移動式二軸ステージに内蔵のデジタルスケールであることにより、複数の分割部位のデータ統合を、より良好に行うことができるので、広範囲測定を、より良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる非接触三次元計測方法を行うための非接触三次元計測装置の概略構成が示されている。なお、同図(A)は非接触三次元計測装置の全体図、同図(B)は該非接触三次元計測装置の要部拡大図である。
同図に示す非接触三次元計測装置10は、ベース11と、本発明の測定工程を行うための非接触プローブ12と、本発明の位置変更工程を行うための平行移動式2軸ステージ(位置変更手段)14と、デジタルスケール(位置検出手段)16と、本発明の統合工程を行うための統合手段18とを備える。
【0015】
ここで、非接触プローブ12は、平行移動式2軸ステージ14に設けられ、測定位置に静止した状態で、非接触プローブ12の視野に入るワーク20上の各点の位置情報を測定し、該測定位置でのデータを得る。
非接触プローブ12により得られるデータは、ワーク20上の各点の位置情報であり、つまりワーク20の三次元形状情報を、三次元座標情報をもつ離散的な点群データとして得ている。そして、ワーク20上の各点の位置情報に基づき、ワーク20の三次元形状情報が、コンピュータ等によるデータ処理により求められる。
【0016】
なお、本実施形態においては、三次元形状情報の測定原理として、例えば特開2002−328014号公報、特開2002−328013号公報等に記載の光切断法を用いている。すなわち、本実施形態においては、非接触プローブ12が、光出射手段30及びCCDカメラ32(位置センサ)を含む。そして、光出射手段30からのスリット光のワーク20への投光角度と、CCDカメラ32でのワーク20からの反射光の受光位置との位置関係から、三角測量の原理に基づいて、非接触プローブ12とワーク20上の被測定部位間の距離を測定している。本実施形態においては、前述のようなスリット光によるワーク20上のスキャンを、非接触プローブ12の視野に入るワーク20上の部位に対して連続的に行うことにより、ワーク20を面単位でスキャンしている。
【0017】
また、平行移動式2軸ステージ14は、ワーク20に対する非接触プローブ12の測定角度を一定にした状態で、ワーク20に対する非接触プローブ12の測定位置をX軸方向(水平軸方向)及びZ軸方向(垂直軸方向)に平行移動自在とする。
デジタルスケール16は、平行移動式2軸ステージ14のX軸案内及びZ軸案内に内蔵され、非接触プローブ12の平行移動方向において隣り合う測定位置間の、非接触プローブ12の平行移動量情報を得るため、非接触プローブ12の測定位置情報をデジタル出力する。
【0018】
統合手段18は、デジタルスケール16により得られた、非接触プローブ12の平行移動量に基づき、該非接触プローブ12の平行移動方向において隣り合う測定位置で得られた各データの同一部位が一致するように、該非接触プローブ12の平行移動方向において隣り合う測定位置で得られた各データの、非接触プローブ平行移動方向の位置合わせを行い、一の統合データを得る。
【0019】
本実施形態にかかる非接触三次元計測装置10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
本実施形態にかかる非接触三次元計測装置10によれば、非接触プローブ12を各測定位置に静止させた状態で、非接触プローブ12の視野に入るワーク上の各点の位置情報を得ており、ワーク20と非接触プローブ12との位置関係を精密に変えるため、平行移動式2軸ステージ14により非接触プローブ12を高精度に平行移動している。また、本実施形態では、非接触プローブ12の平行移動量を、平行移動式2軸ステージ14に内蔵のデジタルスケール16により高精度に得ている。
この結果、本実施形態では、デジタルスケール16により得られた非接触プローブ12の平行移動量に基づき、平行移動前の測定位置で得られたデータと平行移動後の測定位置で得られたデータとの位置合わせを高精度に行うことができる。
したがって、本実施形態では、ワークを異なる測定位置から分割測定して得られた複数のデータの統合を良好に行うことができるので、広範囲測定が良好に行える。
【0020】
以下、前記本実施形態の作用について、より具体的に説明する。
(1)X軸方向の広範囲測定
図2には本実施形態の非接触三次元計測方法によるX軸方向の広範囲測定の処理手順が示されている。なお、同図では、X軸方向において隣り合う測定位置で得られたデータを統合する例について説明する。
【0021】
<測定>
同図(A)に示されるような測定工程(S10)では、測定位置(X,Z)に非接触プローブ12を静止させた状態で、非接触プローブ12により、視野に入るワーク20上の各点の位置情報を測定し、該測定位置(X,Z)でのデータを得ている。該測定位置(X,Z)で得られたデータに基づき、例えば立体像IのデータDを求めることができる。
【0022】
<位置変更>
次に位置変更工程(S12)では、非接触プローブ12の測定角度を一定にした状態で、平行移動式2軸ステージ14により、非接触プローブ20をX軸方向に平行移動し、測定位置(X,Z)に静止する。
このように本実施形態では、ワーク20と非接触プローブ12との位置関係を精密に変えるため、平行移動式2軸ステージ14により、非接触プローブ12を高精度にX軸方向に平行移動している。
また、位置変更工程(S12)では、X軸方向において隣り合う、測定位置(X,Z)と測定位置(X,Z)との間の、非接触プローブ12の平行移動量を、デジタルスケール16により高精度に得ている。
【0023】
<測定>
そして、同図(B)に示されるような測定工程(S10´)では、測定位置(X,Z)に非接触プローブ12を静止させた状態で、視野に入るワーク20上の各点の位置情報を測定し、該測定位置(X,Z)でのデータを得ている。該測定位置(X,Z)でのデータに基づき、例えば立体像IのデータDを得ることができる。
ここで、X軸方向において隣り合う測定位置(X,Z)と測定位置(X,Z)との間での、非接触プローブ12の平行移動は、測定位置(X,Z)での非接触プローブ12によるワーク上の測定エリア、及び測定位置(X,Z)での非接触プローブ12によるワーク上の測定エリアの一部が重なる範囲内としている。このため、測定位置(X,Z)で得られたデータD及び測定位置(X,Z)で得られたデータDには、共通部分が存在しており、つまり測定エリアの重なったところAで、ワークの同一部位Cが測定されている。
【0024】
<統合>
X軸方向において、測定位置(X,Z)でのデータD、測定位置(X,Z)でのデータDの取得後、データDとデータDとの統合を行う。
すなわち、図3に示されるような統合工程(S14)では、平行移動前の測定位置(X,Z)で得られたデータDと、平行移動後の測定位置(X,Z)で得られたデータDとのX軸方向位置の位置合わせを行う。
ここで、本実施形態では、X軸方向において隣り合う測定位置(X,Z)と測定位置(X,Z)との間の、非接触プローブ12の平行移動量は、非接触プローブ12をX軸方向に精密に平行移動して得られたものである。このため、データD,DもX軸方向に精密に平行移動したものとして得られる。非接触プローブ12の平行移動量は、デジタルスケールにより高精度に得ることができる。
このため、デジタルスケールにより得られた、非接触プローブ12のX軸方向への平行移動量(X−X)に基づき、同図(A)に示されるような平行移動前の測定位置(X,Z)で得られたデータDと、平行移動後の測定位置(X,Z)で得られたデータDとのX軸方向の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0025】
また、本実施形態では、測定位置(X,Z)で得られたデータD及び測定位置(X,Z)で得られたデータDには、測定エリアの重なったところAで、ワークの同一部位Cが測定されている。
このため、本実施形態では、同図(B)に示されるような非接触プローブ12のX軸方向の平行移動量(X−X)に基づき、データD及びDでのワーク上の同一部位Cの位置情報が一致するように、データDとデータDとのX軸方向の位置合わせを高精度に行うことができる。
このように本実施形態では、X軸方向において、平行移動前の測定位置(X,Z)で得られたデータDと平行移動後の測定位置(X,Z)で得られたデータDとの位置合わせを高精度に行うことができる。この結果、本実施形態においては、例えば立体像IのデータDと立体像IのデータDとを、同図(C)に示されるような一の立体像IのデータDに高精度に統合することができる。
【0026】
本実施形態では、前記各工程を、X軸方向においてワーク20の所望範囲のスキャンが完了するまで繰り返し行うことにより、X軸方向において広範囲のワーク20の立体像を得ることができる。
【0027】
(2)Z軸方向の広範囲測定
図4には本実施形態の非接触三次元計測方法によるZ軸方向の広範囲測定の処理手順が示されている。
なお、同図では、Z軸方向において隣り合う測定位置で得られた複数データを統合する例について説明する。
【0028】
<位置変更>
すなわち、図4(A)に示されるような測定位置(X,Z)に静止している非接触プローブ12を、位置変更工程(S12)では、非接触プローブ12の角度を一定にした状態で、平行移動式2軸ステージ14により、Z軸方向に高精度に平行移動し、同図(B)に示されるような測定位置(X,Z)に静止する。Z軸方向において、隣り合う測定位置(X,Z)と測定位置(X,Z)との間の、非接触プローブ12の平行移動量(Z−Z)を、デジタルスケール16により高精度に得ている。
【0029】
<測定>
そして、同図(B)に示されるような測定工程(S10´´)では、測定位置(X,Z)に非接触プローブ12を静止させた状態で、非接触プローブ12により、視野に入るワーク20上の各点の位置情報を測定し、該測定位置(X,Z)でのデータを得ている。該測定位置(X,Z)でのデータに基づき、例えば立体像IのデータDを求めることができる。
【0030】
<統合>
次に統合工程では、図5(A)に示されるような平行移動前の測定位置で得られたデータDのZ軸方向位置と、平行移動後の測定位置で得られたデータDとのZ軸方向位置の位置合わせを行う。
ここで、本実施形態では、Z軸方向において隣り合う測定位置(X,Z)と測定位置(X,Z)との間の、非接触プローブ12の平行移動量(Z−Z)は、非接触プローブ12をZ軸方向に精密に平行移動して得られたものである。このため、データDも精密にZ軸方向に平行移動したものとして得られる。非接触プローブ12の平行移動量(Z−Z)をデジタルスケールにより高精度に得ることができる。
【0031】
このため、同図(B)に示されるように非接触プローブ12のZ軸方向への平行移動量(Z−Z)に基づき、平行移動前の測定位置(X,Z)で得られたデータDと平行移動後の測定位置(X,Z)で得られたデータDとの、Z軸方向の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0032】
また、本実施形態では、データD及びデータDには共通部分が存在しており、つまり測定エリアの重なったところAでワークの同一部位Cが測定されている。このため、本実施形態では、同図(B)に示されるように非接触プローブ12のZ軸方向への平行移動量(Z−Z)に基づき、データD及びデータDでのワークの同一部位Cが一致するように、データDとデータDとのZ軸方向の位置合わせを高精度に行うことができる。
このように本実施形態では、Z軸方向において平行移動前の測定位置(X,Z)で得られたデータDと平行移動後の測定位置(X,Z)で得られたデータDとの位置合わせを高精度に行うことができる。したがって、本実施形態は、例えば立体像IのデータDと立体像IのデータDとを、同図(C)に示されるような一の立体像I´のデータD´に高精度に統合することができる。
【0033】
本実施形態では、前記各工程を、Z軸方向においてワークの所望範囲のスキャンが完了するまで繰り返し行うことにより、Z軸方向において広範囲のワークの三次元形状情報を得ることができる。
【0034】
そして、本実施形態では、非接触プローブ12をさらにX軸方向に平行移動し、測定位置(X,Z)に静止させた状態で、視野に入るワーク上の各点の位置情報を測定し、該測定位置でのデータを得ることができる。この結果、例えば該測定位置でのデータに基づき、立体像IのデータDを求めることができる。そして、立体像IのデータD、立体像IのデータD2、立体像IのデータD3、立体像IのデータDを統合することにより、図5(D)に示されるような一の立体像I´´のデータD´´を得ることができる。
【0035】
以上説明したように本実施形態においては、測定位置をX軸方向及びZ軸方向に移動することによりワークを異なる測定位置から分割測定し、該分割測定された複数データの統合を高精度に行うことができるので、広範囲測定を良好に行うことができる。
すなわち、本実施形態では、平行移動式二軸ステージにより非接触プローブを二軸方向に精密に平行移動しているので、ワークと非接触プローブとの位置関係を精密に変えることができる。非接触プローブを二軸に精密に平行移動しているので、隣り合う測定位置で得られたデータも精密に平行移動したものとして得られる。また、平行移動式二軸ステージに内蔵のデジタルスケールを用いることにより、非接触プローブの測定位置の検出精度を出しやすいので、高精度な測定位置情報に基づき、複数のデータの統合を高精度に行うことができる。
そして、本実施形態では、マーカー基準やソフトウェア機能を使用したデータの統合を行わないため、信頼性が向上する。これにより、本実施形態では、広範囲測定の高精度化が図られる。
【0036】
また、本実施形態では、作業性、使い勝手の向上を図ることができる。すなわち、本実施形態では、ワークと非接触プローブとの位置関係を変えるため、回転ステージを用いたものに比較し、さらに広範囲の測定が行える。また、本実施形態では、ソフトウェア操作による統合作業を必要としない。計測後の処理時間が短縮される。計測の前にワークにマーカーを貼り付けるなどの準備作業を必要としない。この結果、作業性、使い勝手の向上を図ることができる。
【0037】
ところで、特許文献1記載の技術においても、非接触三次元計測を行っている。しかしながら、特許文献1記載の技術は、ワークの断面形状データを得るため、非接触プローブを移動しながら、ワークを線単位で断続的にスキャンするものである。また、特許文献1記載の技術は、各断面形状データの高精度な統合に関する考慮がなく、本発明の解決手段として採用するに至らなかった。
これに対し、本実施形態では、非接触プローブが静止している状態で、ワーク上をスリット光でスキャンしているが、これを視野に入るワーク上の部位に対して連続的に行うことにより、ワーク上を面単位でスキャンしている。
また、本実施形態では、ワークに対する非接触プローブの測定位置を変えるため、非接触プローブを二軸方向に精密に平行移動自在としているが、非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で得られた複数データの統合を高精度に行うため、平行移動前の測定エリア(視野)の一部及び平行移動後の測定エリア(視野)の一部に、ワークの同一部位が存在するようにしている。この結果、本実施形態では、非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で得られたデータには共に、ワークの同一部位の位置情報が存在する。
したがって、本実施形態では、非接触プローブの平行移動量に基づき、ワークの同一部位の位置情報が一致するように、非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で得られた複数のデータの位置合わせを行うので、高精度な統合が行える。これにより、本実施形態では、非接触三次元計測装置による広範囲測定が良好に行える。
また、本実施形態では、非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置間でデータの間引きが実質的にないので、特許文献1に記載の技術のように非接触プローブを移動しながら線単位でワークをスキャンし、非接触プローブの測定位置間のデータが間引かれているものに比較し、より高精度な立体像が得られる。
【0038】
変形例
本発明は前記構成に限定されるものでなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
(1)回転ステージ
例えばワーク20を非接触プローブ12側とは反対側から見た三次元形状情報を広範囲測定する際は、ワーク20の反対側を非接触プローブ12に向けることも好ましい。
このために前記構成においては、さらに、図6に示されるような回転ステージ22を設けることも好ましい。
そして、同図においては、回転ステージ22上にワーク20を置いて、回転ステージ22を回転することにより、ワーク20を回転し、ワーク20の裏側を非接触プローブ12に向けて、静止する。
この結果、同図においては、ワーク20の裏側を、前記ワーク20の表側と同様、広範囲測定することができるので、非接触プローブ12に対するワーク20の向きが固定のものに比較し、より広範囲な計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかる非接触三次元計測方法を行うための非接触三次元計測装置の概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる非接触三次元計測方法による、水平軸方向の広範囲測定の処理手順の説明図である。
【図3】前記図2に示した方法により得られたデータの統合工程の一例である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる非接触三次元計測方法による、垂直方向の広範囲測定の処理手順の説明図である。
【図5】前記図4に示した方法により得られたデータの統合工程等の一例である。
【図6】図1に示した非接触三次元計測装置の変形例である。
【符号の説明】
【0040】
10 非接触三次元計測装置
12 非接触プローブ
14 平行移動式2軸ステージ(位置変更手段)
16 デジタルスケール(位置検出手段)
18 統合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動することによりワークを異なる測定位置から分割測定し、該分割測定された複数のデータを統合することにより該ワークの三次元形状情報を得る広範囲測定を行う非接触三次元計測方法であって、
前記非接触プローブを測定位置に静止した状態で、該非接触プローブにより、該非接触プローブの視野に入るワーク上の各点の位置情報を測定し、該測定位置でのデータを得る測定工程と、
前記非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で該非接触プローブの視野の一部が重なるように、該非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動し、かつ該非接触プローブの平行移動量情報を得る位置変更工程と、
前記位置変更工程により得られた非接触プローブの平行移動量に基づき、前記隣り合う測定位置で得られた各データの平行移動方向の位置合わせを行う統合工程と、
を備えたことを特徴とする非接触三次元計測方法。
【請求項2】
非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動することによりワークを異なる測定位置から分割測定し、該分割測定された複数のデータを統合することにより該ワークの三次元形状情報を得る広範囲測定を行う非接触三次元計測装置であって、
所定の視野を有し、測定位置に静止した状態で、該視野に入るワーク上の各点の位置情報を非接触に測定し、該測定位置でのデータを得るための非接触プローブと、
前記非接触プローブの平行移動方向において隣り合う測定位置で該非接触プローブの視野の一部が重なるように、該非接触プローブの測定位置を第一軸方向及び第二軸方向に平行移動する位置変更手段と、
前記非接触プローブの測定位置情報を得る位置検出手段と、
前記位置検出手段からの測定位置情報に基づく前記隣り合う測定位置間の非接触プローブの平行移動量に基づき、該隣り合う測定位置で得られた各データの平行移動方向の位置合わせを行う統合手段と、
を備えたことを特徴とする非接触三次元計測装置。
【請求項3】
請求項2記載の非接触三次元計測装置において、
前記位置変更手段は、平行移動式二軸ステージであり、
前記平行移動式二軸ステージは、互いに直交する第一軸案内及び第二軸案内を備え、
前記第一軸案内により前記非接触プローブを前記第一軸方向である水平軸方向に平行移動し、前記第二軸案内により該非接触プローブを前記第二軸方向である垂直軸方向に平行移動することを特徴とする非接触三次元計測装置。
【請求項4】
請求項3記載の非接触三次元計測装置において、
前記位置検出手段は、デジタルスケールであり、
前記デジタルスケールは、前記平行移動式二軸ステージに内蔵され、前記非接触プローブの測定位置情報をデジタル出力することを特徴とする非接触三次元計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−122066(P2009−122066A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299000(P2007−299000)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】