説明

非接触電力伝送装置

【課題】AC−DCコンバータを用いる場合に損失を低減し、効率を改善した非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
交流電圧ACを直流電圧Viに変換して出力するAC−DCコンバータ10と、AC−DCコンバータ10の出力が供給される駆動回路21と、駆動回路21から所定周波数の交流電力が供給される送電コイル22と、送電コイル22から電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される受電コイル31と、受電コイル31に誘導される電圧を整流して得られる出力電圧Voを検出する検出回路33とを備え、検出回路33の検出信号に基づいて出力電圧Voが安定するようにAC−DCコンバータ10の出力を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコンなどの電子機器に対して非接触で電力を伝送する方式が普及してきている。送電装置に内蔵される送電コイルから発生する交流磁場により、電子機器に内蔵される受電コイルに電力を伝送する。受電コイルに供給された電力は整流平滑回路を介して二次電池などの負荷に供給される。電子機器が使用する電力量によって負荷が変動するため、送電コイルから受電コイルに伝送される電力を制御して、出力電圧を安定化する必要がある。
【0003】
特許文献1には、送電コイルに供給する電圧を制御する電源制御回路を備えた非接触電力伝送装置が記載されている。図3は、従来の非接触電力伝送装置の回路図を示す図である。商用電源などの電源から交流電圧ACが供給されるAC−DCコンバータ50と、送電装置60および受電装置70を備える。
【0004】
送電装置60は、駆動回路61、送電コイル62、電圧可変回路63、通信手段64および制御回路65を備える。また、受電装置70は、受電コイル71、整流平滑回路72、検出回路73および通信手段74を備える。
【0005】
AC−DCコンバータ50は、交流電力を直流電力に変換して電圧可変回路63に供給する。電圧可変回路63は、供給された直流電力の電圧などを変換し、駆動回路61に供給する。駆動回路61は、供給された電圧を交流電力に変換して送電コイル62に供給する。受電コイル71は、電磁誘導作用により送電コイル62から電力を受電する。受電コイル71に誘導される交流電力は、整流平滑回路32により整流され出力電圧Voが得られる。検出回路73は、出力電圧Voを基準電圧と比較し、通信手段74、64を介して検出信号を制御回路65に送信する。一例として、通信手段74は発光ダイオード、通信手段64はフォトトランジスタにより構成される。制御回路65は、検出信号に基づいて出力電圧Voを所定値に安定するように、電圧可変回路63から送電コイル62に供給する直流電力を可変制御する。このようにして、出力電圧Voを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−65749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような非接触電力伝送装置において、AC−DCコンバータ50の損失に加えて、電圧可変回路63の損失が発生するため、効率が悪くなるという問題があった。出力電圧Voを制御する方法として、送電コイル62に供給する交流電力の発振周波数を変化させるという方法もある。しかし、出力電圧Voを安定化するためには、発振周波数を大幅に変化させる必要があるため、発振周波数が雑音端子電圧規格の周波数範囲に入ってしまい、ノイズフィルタを大型化する必要がある。また、発振周波数が最適な条件から外れてしまい、電力伝送効率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題を考慮してなされたものであり、AC−DCコンバータを用いる場合に損失を低減し、効率を改善した非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような目的を達成するため、交流電圧を直流電圧に変換して出力するAC−DCコンバータと、該AC−DCコンバータの出力が供給される駆動回路と、該駆動回路から所定周波数の交流電力が供給される送電コイルと、該送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される受電コイルと、該受電コイルの出力電圧を検出する検出回路とを備え、該検出回路の検出信号に基づいて該AC−DCコンバータの出力が一定になるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、AC−DCコンバータを用いたときに、送電回路における損失を低減し、効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例に係る非接触電力伝送装置の回路図
【図2】本発明の第2の実施例に係る非接触電力伝送装置の回路図
【図3】従来の非接触電力伝送装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明の第1の実施例に係る非接触電力伝送装置の回路図を示す。商用電源などの電源から交流電圧ACが供給されるAC−DCコンバータ10と、送電装置20および受電装置30を備える。AC−DCコンバータ10と送電装置20には、それぞれ正端子V、GND端子G、信号端子Sが設けられており、各端子同士はそれぞれケーブルによりコネクタ接続されている。
【0013】
AC−DCコンバータ10は、整流平滑回路11、スイッチ回路12、1次巻線および2次巻線を有するトランス13、整流回路14、検出手段15およびスイッチ制御回路16を備える。送電装置20は、駆動回路21、送電コイル22、フォトトランジスタ23およびPNP型デジタルトランジスタ24を備える。受電装置30は、受電コイル31、整流平滑回路32、検出回路33および発光ダイオード34を備える。
【0014】
整流平滑回路11は、商用電源などの電源から供給される交流電圧ACを整流平滑する。スイッチ回路12は、整流平滑回路11から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、トランス13の1次巻線に供給する。トランス13の2次巻線に誘起される電圧は、整流回路14によって整流され、直流電圧Viが得られる。直流電圧Viは、各正端子Vを介して駆動回路21に供給される。駆動回路21は、直流電圧Viを所定の周波数の交流電圧に変換し、得られた交流電圧を送電コイル22に供給する。受電コイル31は、電磁誘導作用により送電コイル22から電力を受電する。受電コイル31に誘導される交流電力は、整流平滑回路32によって整流平滑され、出力電圧Voが得られる。出力電圧Voは、二次電池などの負荷(図示せず)に供給される。
【0015】
検出回路33は、出力電圧Voと基準電圧を比較して得られる検出信号を発光ダイオード34を介してフォトトランジスタ23に送信する。フォトトランジスタ23のコレクタ端子はデジタルトランジスタ24のベース端子に、フォトトランジスタ23のエミッタ端子はデジタルトランジスタ24のコレクタ端子に接続されている。また、デジタルトランジスタ24のエミッタ端子は送電装置20の信号端子Sに、デジタルトランジスタ24のコレクタ端子は送電装置20のGND端子Gに接続されている。
【0016】
AC−DCコンバータ10の検出手段15の構成について説明する。検出手段15は、発光ダイオードLEDとフォトトランジスタPTからなるフォトカプラ、シャントレギュレータSRおよび分圧抵抗R1、R2、R3を備える。分圧抵抗R1、R2、R3は、AC−DCコンバータ10の正端子VとGND端子Gの間に直列接続されている。発光ダイオードLEDのアノード端子は、抵抗を介してAC−DCコンバータ10の正端子Vに接続されている。発光ダイオードLEDのカソード端子は、シャントレギュレータSRのカソード端子に接続されている。シャントレギュレータSRのアノード端子は、AC−DCコンバータ10のGND端子Gに接続されている。シャントレギュレータSRのリファレンス端子は、分圧抵抗R1とR2間に接続されている。また、AC−DCコンバータ10の信号端子Sは、分圧抵抗R2とR3間に接続されている。すなわち、分圧抵抗R3の両端は、各正端子Vおよび各GND端子Gを介してデジタルトランジスタ24の主電流路に接続される構成となっている。フォトトランジスタPTは、スイッチ制御回路16に接続されている。スイッチ制御回路16は、フォトトランジスタPTに供給される信号に基づいて、スイッチ回路12を制御する。
【0017】
次に、出力電圧Voの制御動作について説明する。検出回路33は、出力電圧Voと基準電圧を比較検出する。出力電圧Voが所定の基準電圧より低くなると、発光ダイオード34からフォトトランジスタ23に信号が送信され、デジタルトランジスタ24がオンとなる。すると、分圧抵抗R3の両端が短絡されるため、シャントレギュレータSRのリファレンス端子に供給される電圧が低くなる。これを発光ダイオードLEDとフォトトランジスタPTからなるフォトカプラで検出し、スイッチ制御回路16は、AC−DCコンバータ10の出力である直流電圧Viが上昇するようにスイッチ回路12を制御する。直流電圧Viが上昇すれば、送電コイル22から受電コイル31に伝送される電力が増加するため、出力電圧Voも増加する。
【0018】
他方、出力電圧Voが所定の基準電圧より高くなると、発光ダイオード34からフォトトランジスタ23には信号が送信されず、デジタルトランジスタ24がオフとなる。すると、分圧抵抗R3の両端がオープンとなるため、シャントレギュレータSRのリファレンス端子に供給される電圧が高くなる。これを発光ダイオードLEDとフォトトランジスタPTからなるフォトカプラで検出し、スイッチ制御回路16は、AC−DCコンバータ10の出力である直流電圧Viが下降するようにスイッチ回路12を制御する。直流電圧Viが下降すれば、送電コイル22から受電コイル31に伝送される電力が減少するため、出力電圧Voも減少する。負荷が変動し、送電装置30の出力電圧Voが変動した場合でも、このような動作を繰り返して出力電圧Voが安定するように制御される。
【0019】
このように、出力電圧Voの変化に応じてAC−DCコンバータ10の出力を直接制御することにより、送電装置20内の電圧可変回路を省くことができ、送電装置20を小型化することができる。また、従来生じていた電圧可変回路における損失をなくすことができるため、回路全体の効率を改善することができる。また、送電コイル22に供給される交流電圧の発振周波数を大幅に変化させずに出力電圧Voを制御できる。そのため、基本周波数が雑音端子電圧規格の周波数範囲の下限値である150kHz以下に設定可能となり、ノイズフィルタが大型化するのを抑制できる。また、第3高調波がAMラジオ周波数帯域に入らないためノイズ面で有利である。また、発振周波数が最適な条件から外れてしまうこともなくなる。
【0020】
検出回路33から供給される検出信号に応じて、AC−DCコンバータ10の出力である直流電圧Viを検出している分圧抵抗の一部を変化させている。この抵抗変化に応じて、スイッチ回路12を制御し、AC−DCコンバータ10の出力である直流電圧Viを変化させている。また、検出手段15には、発光ダイオードLEDとフォトトランジスタPTからなるフォトカプラが設けられており、トランス13の1次巻線と2次巻線との間は絶縁された構成になっている。よって、検出信号はAC−DCコンバータ10の2次回路の制御信号となるため安全規格面で制約を受けない。また、単に分圧抵抗R1〜R3の一部を変化させているため、回路構成が簡易で付加部品が少なくてすむ。
【0021】
次に、図2に本発明の第2の実施例に係る非接触電力伝送装置の回路図を示す。なお、第1の実施例と同じ機能を有する部位には同じ符号を付し、説明は省略する。送電装置20は、駆動回路21、送電コイル22、復調回路26、マイコン27および制御回路28を備える。受電装置30は、受電コイル31、整流平滑回路32、検出回路33、マイコン36および変調回路37を備える。
【0022】
検出回路33は、出力電圧Voと基準電圧を比較して得られる検出信号をマイコン36に送信する。マイコン36は、検出信号に基づいて変調回路37を制御する。変調回路37は、検出信号を変調し、受電コイル31に重畳する。受電コイル31に重畳した変調信号は送電コイル22の電圧変化として現れる。この電圧変化を送電コイル22の一方に接続された復調回路26で復調して検出信号を得る。復調した検出信号は、マイコン27に送信される。マイコン27は、検出信号を制御回路28および信号端子Sを介して検出手段15に供給する。
【0023】
次に、出力電圧Voが所定の基準電圧より低くなると、制御回路28は分圧抵抗R3の両端を短絡する。すると、シャントレギュレータSRのリファレンス端子に供給される電圧が低くなり、これを発光ダイオードLEDとフォトトランジスタPTからなるフォトカプラで検出する。そして、スイッチ制御回路16は、AC−DCコンバータ10の出力である直流電圧Viが上昇するようにスイッチ回路12を制御する。
【0024】
他方、出力電圧Voが所定の基準電圧より高くなると、制御回路28は分圧抵抗R3の両端をオープンとする。すると、シャントレギュレータSRのリファレンス端子に供給される電圧が高くなり、これを発光ダイオードLEDとフォトトランジスタPTからなるフォトカプラで検出する。そして、スイッチ制御回路16は、AC−DCコンバータ10の出力である直流電圧Viが下降するようにスイッチ回路12を制御する。第1の実施例と同様に、出力電圧Voが変動した場合でも、このような動作を繰り返して出力電圧Voが安定するように制御される。
【0025】
出力電圧Voを制御するためには、出力電圧Voと基準電圧を比較して得られる検出信号を受電装置30から送電装置20に送信する必要がある。第1の実施例では、発光ダイオード34とフォトトランジスタ23を、第2の実施例では、マイコン27、36、変調回路37、復調回路26を用いて検出信号の送受信を行っている。検出信号の送受信する方法はこれらに限定されるものではなく、非接触で送受信できるのであればどのような方法を用いてもよい。
【0026】
出力電圧Voを検出する検出回路33から供給される検出信号は、送電装置20を介してAC−DCコンバータ10に供給される。これにより、AC−DCコンバータ10と受電装置30間で直接信号をやり取りする必要がない。また、AC−DCコンバータ10と送電装置20には、直流電圧Viを供給するための正端子VおよびGND端子G、検出信号を送受信するための信号端子Sが設けられている。コネクタによって各端子間を着脱可能に構成し、各端子間をまとめて1本のケーブルで接続することで、端子間のケーブルを複数用意する必要はない。
【符号の説明】
【0027】
10 AC−DCコンバータ
11 整流平滑回路
12 スイッチ回路
13 トランス
14 整流回路
15 検出手段
16 スイッチ制御回路
20 送電装置
21 駆動回路
22 送電コイル
23 フォトトランジスタ
24 PNP型デジタルトランジスタ
26 復調回路
27 マイコン
28 制御回路
30 受電装置
31 受電コイル
32 整流平滑回路
33 検出回路
34 発光ダイオード
36 マイコン
37 変調回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換して出力するAC−DCコンバータと、該AC−DCコンバータの出力が供給される駆動回路と、該駆動回路から所定周波数の交流電力が供給される送電コイルと、該送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される受電コイルと、該受電コイルに誘導される電圧を整流して得られる出力電圧を検出する検出回路とを備え、
該検出回路の検出信号に基づいて該出力電圧が安定するように該AC−DCコンバータの出力を制御することを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記AC−DCコンバータが、前記交流電圧が供給される整流平滑回路と、1次巻線および2次巻線を有するトランスと、該整流回路の出力部に該1次巻線と直列接続されるスイッチ回路と、該2次巻線の出力を整流して得られる前記直流電圧を検出する前記検出手段と、前記検出手段から供給される信号に基づいてスイッチ回路を駆動するスイッチ制御回路とを備え、
該検出手段は前記直流電圧を分圧する複数の電圧検出抵抗を有し、前記出力信号により該電圧検出抵抗の一部を変化させるとともに、
該電圧検出抵抗の変化に基づいて前記AC−DCコンバータの出力が一定になるように該スイッチ回路を制御する請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記検出信号が、前記駆動回路および前記送電コイルが設けられた送電装置を介して前記AC−DCコンバータに供給される請求項1または2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記AC−DCコンバータと前記送電装置が、コネクタを介して着脱可能である請求項3に記載の非接触電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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