説明

非球形粒子、トナー、現像剤、現像装置および画像形成装置

【課題】 電子写真用現像剤として用いることによって、乾式および湿式のどちらのプロセスでも良好な転写性および良好なクリーニング性を有し、高画質な画像を実現可能であり、また乾式のプロセスに用いると、画像形成装置内のフィルタに捕集しやすくすることで、画像形成装置外に飛散した粒子による人体への悪影響を抑えることができる粒子径が3μm以下の形状の揃った非球形粒子、その非球形粒子を含むトナーおよび現像剤、前記現像剤を用いて現像を行う現像装置、ならびに前記現像装置を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】 体積平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であり、形状係数SF−1が125以上145以下であり、形状係数SF−2が115以上140以下である非球形粒子を含む現像剤を現像装置14,214に充填し、現像装置14,214を備える画像形成装置1,201で画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球形粒子、トナー、現像剤、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(以下単に「画像形成装置」という)は、たとえば感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段と、除電手段と、クリーニング手段とを含む。画像形成装置は、感光体およびこれらの手段を用いて帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程、クリーニング工程および除電工程を行い、記録媒体に画像を形成する装置である。
【0003】
帯電工程では、感光体表面を帯電手段によって均一に帯電させる。露光工程では、帯電した感光体を露光手段によって露光し、感光体の表面に静電潜像を形成する。現像工程では、感光体表面に形成された静電潜像を現像剤で現像し、可視像を形成する。具体的には、感光体表面に形成された静電潜像に、現像手段で電荷を付与させたトナーを付着させることによって、感光体表面に可視像を形成する。転写工程では、転写手段によって、感光体表面に形成された可視像を紙などの記録媒体に転写する。定着工程では、定着手段による加熱、加圧などによって、転写された可視像を記録媒体に定着させる。クリーニング工程では、転写工程後の感光体表面に残留する転写残留トナーをクリーニング手段によって除去する。除電工程では、除電手段によって、感光体表面の電荷が除去され、次の画像形成に備える。
【0004】
このような画像形成装置に用いられる現像剤としては、トナーのみを含む1成分現像剤、またはトナーとキャリアとを含む2成分現像剤がある。トナーの製造方法としては、たとえばトナー原料を溶融混練してトナー原料の溶融混練物を作製し、その後、トナー原料の溶融混練物を粉砕および分級する粉砕法が広く用いられる。
【0005】
近年、電子写真の高画質化が求められ、ドット再現性の観点などから現像剤に含まれるトナー粒子の小粒子径化が進められている。そこで、たとえば懸濁重合法および乳化凝集法などのケミカル工程を含むトナー粒子の作製方法が提案されている。これらのケミカル法によれば、粒子径が5μm程度であるトナー粒子を得ることできる。これらの方法で得られるトナー粒子は、真球度が高いので転写性に優れる。しかし、クリーニング工程において、トナー粒子の真球度が高く、かつトナー粒子径が5μm程度と小さいので、感光体表面の転写残留トナーがクリーニング手段であるクリーニングブレードを容易にすり抜け、クリーニング不良が生じやすい。
【0006】
このような問題を解決するために、たとえば、粒子の形状を非球形に制御する非球形粒子、およびその非球形粒子を含むことによってクリーニング性を改善する静電荷像現像用トナーが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の非球形粒子は、形状が非球形であり、粒子径が5μm程度である。
【0007】
特許文献2には、高圧処理法によるシングルミクロンの粒子の製造方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−110039号公報
【特許文献2】特開平7−64348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、さらなる高画質化を目的として、特許文献1に開示の非球形粒子の製造方法で粒子径が3μm以下の粒子を得ようとすると、粒子の形状の制御が難しい。したがって、粒子径が3μm以下と小さく、粒子形状が不揃いの粒子を画像の形成に用いると、帯電量がばらつき、高画質な画像を形成することができない。また、このような粒子を乾式現像剤として用いると、粒子径が3μm以下と小さいので飛散しやすい。
【0010】
特許文献2に開示のシングルミクロンの粒子の製造方法では、粒子形状が球に近いので、前述の理由で転写性に優れているものの、クリーニング性が悪い。また、乾式現像剤に用いると、飛散したトナー粒子は、トナー粒子径が3μm以下と小さくかつトナー粒子の形状が丸みを帯びているので、画像形成装置内のフィルタに捕集されにくく、画像形成装置の外にまで飛散しやすい。画像形成装置外に飛散したトナーは、人体に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、電子写真用現像剤として用いることによって、乾式および湿式のどちらのプロセスでも良好な転写性および良好なクリーニング性を有し、高画質な画像を実現可能であり、また乾式のプロセスに用いると、画像形成装置内のフィルタに捕集しやすくすることで、画像形成装置外に飛散した粒子による人体への悪影響を抑えることができる粒子径が3μm以下の形状の揃った非球形粒子、その非球形粒子を含むトナーおよび現像剤、前記現像剤を用いて現像を行う現像装置、ならびに前記現像装置を備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、体積平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であり、形状係数SF−1が125以上145以下であり、形状係数SF−2が115以上140以下であることを特徴とする非球形粒子である。
【0013】
また本発明は、形状係数SF−1が130以上140以下であり、かつ形状係数SF−2が120以上130以下であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、少なくとも樹脂を含むことを特徴とする。
また本発明は、少なくとも着色剤を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記非球形粒子を含むことを特徴とするトナーである。
また本発明は、樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上70℃以下であり、重量平均分子量が10,000以上300,000以下であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記非球形粒子が離型剤を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記トナーを含むことを特徴とする現像剤である。
【0017】
また本発明は、前記非球形粒子を凝集させて得られるトナーを含む乾式の現像剤であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、湿式の現像剤であることを特徴とする。
また本発明は、前記現像剤を用いて、像担持体に形成される潜像を現像してトナー像を形成することを特徴とする現像装置である。
【0019】
また本発明は、潜像が形成される像担持体と、
像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、非球形粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であり、形状係数SF−1が125以上145以下であり、形状係数SF−2が115以上140以下である。体積平均粒子径が0.1μm未満では、粒子が小さすぎて形状の制御が困難となる。粒子の丸さの度合いを示す形状係数SF−1が125以上145以下で、粒子の凹凸の度合いを示す形状係数SF−2が115以上140以下と、粒子径が3μm以下の従来の小粒径粒子より形状が均一なので、粒子としての特性を揃えることができる。また、粒子径が3μm以下の従来の小粒径粒子より形状が非球形である。このような非球形粒子をたとえば電子写真分野において用いると、乾式および湿式のどちらのプロセスでも、帯電量を均一にすることができ、またクリーニング性と転写性とを両立することができるので、高画質な画像を安定して形成できる。また、乾式現像剤として用いると、粒子の形状が非球形で、画像形成装置内のフィルタに飛散したトナー粒子が捕集されやすいので、人体への悪影響を抑えることができる現像剤とすることができる。
【0021】
また本発明によれば、形状係数SF−1が130以上140以下であり、かつ形状係数SF−2が120以上130以下である。SF−1が130以上140以下であり、かつSF−2が120以上130以下であることによって、本発明の非球形粒子を電子写真分野に用いると、乾式および湿式のどちらのプロセスでも、帯電量を均一にすることができ、クリーニング性と転写性とを安定して両立することができるという前述の効果をより一層確実に得ることができ、高画質な画像をより一層安定して形成することができる。また、乾式現像剤として用いる場合に、画像形成装置内のフィルタに一層捕集されやすくなるので、人体への悪影響を一層抑えることができる現像剤とすることができる。
【0022】
また本発明によれば、非球形粒子は、少なくとも樹脂を含む。非球形粒子が少なくとも合成樹脂を含むことによって、たとえば電子写真分野においてトナーとして用いることができる。また、非球形粒子を、カプセル粒子のシェル材としても用いることができる。
【0023】
また本発明によれば、少なくとも樹脂を含む非球形粒子は、少なくとも着色剤を含む。非球形粒子が少なくとも着色剤を含むことによって、たとえば電子写真分野において、乾式および湿式のどちらのプロセスでも、現像剤として使用することができる。
【0024】
また本発明によれば、トナーは、少なくとも樹脂を含む本発明の非球形粒子を含む。トナーが、少なくとも樹脂を含む本発明の非球形粒子を含むことによって、乾式および湿式のどちらのプロセスにおいても、クリーニング性と転写性とを両立することができるので、クリーニング不良または転写不良による画像欠損がなく、高画質な画像を安定して形成することができる。
【0025】
また本発明によれば、樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上70℃以下であり、重量平均分子量が10,000以上300,000以下である。ガラス転移温度が40℃未満であると、保存性などのトナーの物性が著しく低下する。ガラス転移温度が70℃を超えると、低温定着性が低下する。重量平均分子量が10,000未満であると、重量平均分子量が10,000以上である場合と比べて、定着後のトナー像の機械的な強度が低いので、たとえば、形成された画像が記録媒体から欠落する画像欠落が起こるおそれがある。重量平均分子量が300,000を超えると、低温定着性が低下する。ガラス転移温度および重量平均分子量が前述の範囲である樹脂を用いることによって、前述の範囲以外の樹脂を用いる場合より定着可能温度幅を大きく広げることができ、保存性などのトナーの物性を良好にすることができ、画像欠落を防止することができ、高画質な画像をより安定して形成することができる。
【0026】
また本発明によれば、トナーは、非球形粒子が離型剤を含む。非球形粒子が離型剤を含むことによって、離型剤を含まない場合と比べて、定着工程において、定着手段と記録媒体との離型性を高めることができ、定着性を改良することができる。したがって、定着可能温度幅をより大きく広げることができ、高画質な画像をより一層安定して形成することができる。
【0027】
また本発明によれば、現像剤は、本発明のトナーを含む。現像剤が本発明のトナーを含むことによって、乾式および湿式のどちらのプロセスにおいても、クリーニング性および転写性の良好な現像剤とすることができる。また、乾式プロセスにおいては、トナー粒子の形状が非球形であり、画像形成装置内のフィルタに飛散したトナー粒子が捕集されやすいので、人体への悪影響を抑えることができる現像剤とすることができる。
【0028】
また本発明によれば、現像剤は、本発明の非球形粒子を凝集させて得られるトナーを含む乾式の現像剤である。現像剤が本発明の非球形粒子を凝集させて得られるトナーを含むので、クリーニング性を良好にすることができる。したがって、クリーニング不良による画像欠損がなく、高画質な画像を安定して形成することができる。
【0029】
また本発明によれば、現像剤は、湿式の現像剤である。本発明の湿式の現像剤に含まれるトナー粒子は、粒子径が3μm以下と小さく、形状が揃っている。このような湿式現像剤を用いて画像を形成すると、画像の高画質化を実現することができる。また、トナー粒子の形状が非球形なので、クリーニング工程において、クリーニング手段、たとえばクリーニングブレードに引っかかりやすく、良好なクリーニング性を得ることができる。
【0030】
また本発明によれば、現像装置は本発明の現像剤を用いて現像を行う。本発明の現像剤は、良好なクリーニング性を有することができるので、像担持体にクリーニング不良による画像欠損のないトナー像を安定して形成することができる。
【0031】
また本発明によれば、前述のように像担持体にクリーニング不良による画像欠損のないトナー像を形成可能な本発明の現像装置を備えて画像形成装置が実現される。このような画像形成装置で画像を形成することによって、クリーニング不良による画像欠損のない高画質画像を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
1、非球形粒子
本発明の第1の実施形態である非球形粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であり、形状係数SF−1が125以上145以下であり、形状係数SF−2が115以上140以下である。
【0033】
(1)非球形粒子の原料
本実施形態の非球形粒子の原料としては、水中で凝集でき、かつ水中で熱によって融着できるものを用いることができ、たとえば、樹脂、ワックスが挙げられる。
【0034】
本実施形態の非球形粒子の原料として樹脂を用いる、すなわち非球形粒子が少なくとも樹脂を含むことによって、たとえば電子写真分野においてトナーとして用いることができる。また、非球形粒子を、カプセル粒子のシェル材としても用いることができる。
【0035】
樹脂には、樹脂とともに、着色剤、離型剤、帯電制御剤などの添加物を含んでもよい。非球形粒子が樹脂とともに少なくとも着色剤を含むと、たとえば電子写真分野において、乾式および湿式のどちらのプロセスでも、現像剤として使用することができる。
【0036】
(2)非球形粒子の大きさおよび形状
前述のように、本実施形態の非球形粒子は、体積平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であり、形状係数SF−1が125以上145以下であり、形状係数SF−2が115以上140以下である。
【0037】
体積平均粒子径が0.1μm未満では、粒子が小さすぎて形状の制御が困難となる。体積平均粒子径が3μmを超えると、高画質化などの観点から、従来の粒子との差別化が難しくなる。
【0038】
形状係数SF−1は、粒子の丸さの度合を示し、形状係数SF−2は、粒子の凹凸の度合を示す。本実施形態の非球形粒子をたとえば電子写真分野においてトナーとして用いる場合、一般的に、トナーの粒子径が小さくなるほど、像担持体の転写残留トナーがクリーニングブレードで除去されにくくなるので、クリーニング性が低下する。このトナーの粒子径が小さくなるほどクリーニング性が低下する傾向は、トナーの粒子形状が球形化されて粒子表面の凹凸が少なくなるほど顕著となる。
【0039】
本実施形態の非球形粒子をたとえば電子写真分野においてトナーとして用いる場合、SF−1が125未満では、トナーに含まれる非球形粒子の形状が丸すぎるので、クリーニング性が悪化するおそれがある。SF−1が145を超えると、非球形粒子の形状が不所望にいびつになり、SF−1が145以下である場合と比べて、像担持体および中間転写媒体と、トナーとの接触面積が大きくなり、像担持体および中間転写媒体とトナーとの付着力を大きくなるので、トナーが記録媒体に転写されにくくなり、転写性が低下するおそれがある。また、形状係数SF−1が145を超えると、非球形粒子の形状が不所望にいびつになり、非球形粒子に角ができるので、現像槽内において、本発明の非球形粒子を含む現像剤の空転時に非球形粒子同士が擦れ、非球形粒子が割れることによって非球形粒子の微粉が発生し、粒度分布のブロード化を招くおそれがある。SF−2が115未満では、非球形粒子表面の凹凸が少なすぎるので、クリーニング性が悪化するおそれがある。SF−2が140を超えると、非球形粒子の形状が不所望にいびつになるので、転写性が低下するおそれがある、また、現像剤の空転時に、非球形粒子の割れによって非球形粒子の微粉が発生し易く、粒度分布のブロード化を招くおそれがある。
【0040】
粒子の丸さの度合いを示す形状係数SF−1が125以上145以下で、粒子の凹凸の度合いを示す形状係数SF−2が115以上140以下と、粒子径が3μm以下の従来の小粒径粒子より形状が均一なので、粒子としての特性を揃えることができる。また、粒子径が3μm以下の従来の小粒径粒子より形状が非球形である。このような非球形粒子をたとえば電子写真分野において用いると、乾式および湿式のどちらのプロセスでも、帯電量を均一にすることができ、またクリーニング性と転写性とを両立することができるので、高画質な画像を安定して形成できる。また、乾式現像剤として用いると、粒子の形状が非球形であり、画像形成装置内のフィルタに飛散したトナー粒子が捕集されやすいので、人体への悪影響を抑えることができる現像剤とすることができる。
【0041】
(形状係数SF−1および形状係数SF−2の測定方法)
本実施の形態において、粒子の丸さの度合いを示す形状係数SF−1および粒子の凹凸の度合いを示す形状係数SF−2は、次の方法に従って測定する値である。
【0042】
100mlビーカーに、非球形粒子2.0g、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlおよび純水50mlを加えて良く攪拌し、非球形粒子を含む非球形粒子スラリーを調製する。この非球形粒子スラリーを、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)によって出力50μAで5分間処理し、さらに分散させる。さらに分散させた非球形粒子スラリーを6時間静置して上澄み液を取り除いた後、非球形粒子スラリーに純水50mlを加え、マグネチックスターラにて5分間攪拌し、メンブランフィルタ(口径1μm)を用いて吸引ろ過を行う。メンブランフィルタ上の洗浄物をシリカゲル入りデシケータにて約一晩、真空乾燥する。
【0043】
このようにして表面を洗浄した非球形粒子の表面に、スパッタ蒸着によって金属膜(Au膜、膜厚0.5μm)を形成する。この金属膜被覆粒子から、走査型電子顕微鏡(商品名:S−570、株式会社日立製作所製)によって、加速電圧5kVで、かつ1000倍の倍率で、無作為に200〜300個を抽出して写真撮影を行う。この電子顕微鏡写真データを、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)で画像解析する。画像解析ソフト「A像くん」の粒子解析パラメータは、小図形除去面積:100画素、収縮分離:回数1;小図形:1;回数:10、雑音除去フィルタ:無、シェーディング:無、結果表示単位:μmとする。これよって得られた非球形粒子の最大長MXLNG、周囲長PERIおよび図形面積AREAから、下記の式(A)、(B)によって形状係数SF−1および形状係数SF−2を得る。
形状係数SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4)…(A)
形状係数SF−2={(PERI)2/AREA}×(100/4π) …(B)
【0044】
形状係数SF−1は、上記式(A)で表される値であり、粒子の形状の丸さの度合いを示すものである。SF−1の値が100の場合に粒子の形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。また、形状係数SF−2は上記式(B)で表される値であり、粒子の表面形状の凹凸の度合いを示すものである。SF−2の値が100の場合に粒子表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きいほど凹凸が顕著になる。
【0045】
本実施形態において、非球形粒子は、下記式(1)で表わされる変動係数CVが、25%以下であることが好ましい。
変動係数CV(%)=(体積粒度分布の標準偏差
/体積平均粒子径)×100 …(1)
【0046】
本実施形態の非球形粒子は粒度分布が狭いので、変動係数CVが25%以下であることによって、たとえば電子写真分野において、高画質な画像を形成することができるトナーとすることができる。
【0047】
(樹脂)
前述のように、本実施形態の非球形粒子の原料としては、たとえば、樹脂が挙げられる。
【0048】
樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、たとえば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂を使用することができる。
【0049】
ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。
【0050】
多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0051】
多価アルコールとしてもポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0052】
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また、多塩基酸として無水トリメリット酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。
【0053】
アクリル樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、酸性基もしくは親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーおよび/または酸性基もしくは親水性基を有するビニル系モノマーを併用することによって製造できる。
【0054】
アクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有することのあるアクリル酸、置換基を有することのあるメタアクリル酸、置換基を有することのあるアクリル酸エステルおよび置換基を有することのあるメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0055】
ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などにより行われる。
【0056】
ポリウレタンとしては特に制限されないけれども、たとえば、酸性基または塩基性基含有ポリウレタンを好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有ポリウレタンは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、酸性基または塩基性基含有ジオール、ポリオールおよびポリイソシアネートを付加重合させればよい。酸性基または塩基性基含有ジオールとしては、たとえば、ジメチロールプロピオン酸およびN−メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。ポリオールとしては、たとえば、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これら各成分はそれぞれ1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0057】
エポキシ樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基または塩基性基含有エポキシ系樹脂を好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有エポキシ樹脂は、たとえば、ベースになるエポキシ樹脂にアジピン酸および無水トリメリット酸などの多価カルボン酸またはジブチルアミン、エチレンジアミンなどのアミンを付加または付加重合させることによって製造することができる。
【0058】
(着色剤)
前述のように、樹脂には、樹脂とともに、着色剤、離型剤、帯電制御剤などの添加物を含んでもよい。
【0059】
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、およびシアントナー用着色剤などが挙げられる。
【0060】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー185などの有機顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0061】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0062】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0063】
(離型剤)
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるけれども、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。
【0064】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤が挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0065】
本実施形態において、非球形粒子は、形状係数SF−1が130以上140以下であり、かつ形状係数SF−2が120以上130以下であることが好ましい。非球形粒子のSF−1が130以上140以下であり、かつSF−2が120以上130以下であることによって、実施形態の非球形粒子を電子写真分野に用いると、乾式および湿式のどちらのプロセスでも、帯電量を均一にすることができ、クリーニング性と転写性とを安定して両立することができるという前述の効果をより一層確実に得ることができ、高画質な画像をより一層安定して形成することができる。また、乾式現像剤として用いる場合に、画像形成装置内のフィルタに一層捕集されやすくなるので、人体への悪影響を一層抑えることができる現像剤とすることができる。
【0066】
(3)非球形粒子の製造方法
本実施の形態の非球形粒子の製造方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、高圧ホモジナイザ法によって微粒子化された微粒子を凝集させる方法、および乳化重合凝集法が挙げられる。
以下に、本実施の形態の非球形粒子の具体的な製造方法を説明する。
【0067】
(3)−1、高圧ホモジナイザ法によって微粒子化された微粒子を凝集させる方法
本実施形態において、高圧ホモジナイザを用いて樹脂などの微粒子化または粒状化を行う方法を高圧ホモジナイザ法という。高圧ホモジナイザとは加圧下に樹脂粗粉などの粒子を粉砕する装置である。
【0068】
高圧ホモジナイザとしては、市販品、特許文献に記載のものなどを使用できる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)およびアルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、ならびに高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)などが挙げられる。特許文献に記載の高圧ホモジナイザとしては、たとえば、国際公開第03/059497号パンフレットに記載のものが挙げられる。これらの中でも、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザが好ましい。
【0069】
高圧ホモジナイザ法を用いる非球形粒子の製造方法は、たとえば粗粉調製工程t1と、スラリー調製工程t2と、微粒子化工程t3と、冷却工程t4と、減圧工程t5と、凝集工程t6とを含む。
【0070】
粗粉調製工程t1では、非球形粒子の原料を粗粉砕して、非球形粒子の原料の粗粉を得る。スラリー調製工程t2では、粗粉調製工程t1で得られる非球形粒子の原料の粗粉と液媒体とを混合し、粗粉のスラリーを調製する。スラリー調製工程t3は、スラリー調製工程t2で得られる粗粉のスラリーに含まれる非球形粒子の原料の粗粉を微粒子化して、液媒体中に非球形粒子の原料の微粒子を分散させたスラリーを調製する。微粒子化工程t3は、粗粉のスラリーに含まれる粗粉を微粒子化する。冷却工程t4は、微粒子化工程t3で得られるスラリーを冷却する。減圧工程t5は、冷却工程t4で得られるスラリーを減圧する。凝集工程t6は、本発明の非球形粒子が得られるよう、減圧工程t5で得られるスラリーに含まれる微粒子を凝集させる。
【0071】
国際公開第03/059497号パンフレットに記載の高圧ホモジナイザを用いる高圧ホモジナイザ法では、微粒子化工程t3、冷却工程t4および減圧工程t5を行うことができる。
【0072】
(3)−1−1、粗粉調製工程t1
粗粉調製工程t1では、非球形粒子の原料を粗粉砕して、非球形粒子の原料の粗粉を得る。非球形粒子の原料として樹脂を用いる場合、たとえば、樹脂のみを含む溶融混練物、または樹脂とともに着色剤、離型剤および帯電制御剤などの添加剤を混合した溶融混練物を粗粉砕して、非球形粒子の原料の粗粉を得る。
【0073】
以下の非球形粒子の記載では、非球形粒子の原料として樹脂を用い、樹脂とともに着色剤、離型剤および帯電制御剤などの添加剤を含む場合を記載する。
【0074】
溶融混練物を得るためには、非球形粒子の原料である樹脂とともに着色剤、離型剤、帯電制御剤などの添加剤を溶融混練することが好ましい。溶融混練物は、たとえば、樹脂とともに着色剤、離型剤、帯電制御剤などの添加剤を粉体混合した後、樹脂の溶融温度以上の温度、通常は80〜200℃程度、好ましくは100〜150℃程度に加熱しながら、溶融混練することによって製造できる。
【0075】
(混練機)
溶融混練には、たとえば、二軸押し出し機、三本ロールおよびラボブラストミルなどの一般的な混練機が挙げられる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)およびPCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸の押出機、ならびにニーディックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式のものが挙げられる。
【0076】
(粉体粉砕機)
溶融混練物は冷却されて固化物となる。この溶融混練物の冷却固化物は、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルなどの粉体粉砕機によって粗粉砕されることで、樹脂の粗粉が得られる。粗粉の粒子径は特に制限されないけれども、たとえば後述する微粒子化工程t3で用いる高圧機の投入口を通過できる程度の粒子径であり、好ましくは450μm以上1000μm以下、さらに好ましくは500μm〜800μm程度である。混練機の種類によっては、混練機内部で溶融混練物の冷却が行われ、かつ、微粒子化工程t3で用いる高圧機の投入口を通過できる程度の粒子径を有する溶融混練物が得られれば、溶融混練物の冷却および粉体粉砕機による粗粉砕が行われることなく、後述するスラリー調製工程t2に供されてもよいが、粉体粉砕機で粗粉砕を行うと、粉体粉砕機で粗粉砕を行わない場合より、後述するスラリー調製工程t2において、目標とする粒子径を有する樹脂粗粉のスラリーを調製するまでの処理時間を短くすることができる。
【0077】
(3)−1−2、スラリー調製工程t2
スラリー調製工程t2では、粗粉調製工程t1で得られる樹脂の粗粉(以後「樹脂粗粉」と称す)と液媒体とを混合し、液媒体中に樹脂粗粉を分散させることによって、樹脂粗粉のスラリーを調製する。
【0078】
(混合機)
樹脂粗粉と液媒体との混合は、一般的な混合機を用いて行われる。混合機としては、たとえば、PUCコロイドミル(商品名、日本ボールバルブ社製)、摩砕微粒化機 T.K.マイコロイダー(R)M型(商品名、プライミクス株式会社製)およびスーパーマスコロイダー(商品名、増幸産業株式会社製)などが挙げられる。
【0079】
(液媒体)
樹脂粗粉と混合する液媒体は、樹脂粗粉を溶解せずかつ均一に分散させ得る液状物であれば特に制限されないけれども、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理などを考慮すると、水が好ましい。
【0080】
液媒体に対する樹脂粗粉の添加量は特に制限はないけれども、好ましくは樹脂粗粉と液媒体との合計量の3重量%以上45重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上30重量%以下である。樹脂粗粉と液媒体との混合は、加熱下または冷却下に実施してもよいけれども、通常は室温下で行われる。
【0081】
(分散安定剤)
分散安定剤としては高分子分散剤を使用することが好ましく、他の分散剤と併用しても構わない。
【0082】
高分子分散剤として、たとえば凝集能も有する高分子分散剤を用いることができる。凝集能も有する高分子分散剤とは、分散能と凝集能とを有し、スラリー調製工程S2および微粒子化工程t3では、分散剤として機能し、凝集工程t6では、カチオン系分散剤などを添加することによって、高分子分散剤が電気的に中和されるので、高分子分散剤の分散安定性が失われ、微粒子が凝集される。
【0083】
このような高分子分散剤としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのアクリル系単量体、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有アクリル系単量体、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステルなどのエステル系単量体、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのビニルアルコール系単量体、ビニルアルコールとのエーテル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのビニルアルキルエーテル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルアルキルエステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、これらのメチロール化合物などのアミド系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド系単量体、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどのビニル窒素含有複素環系単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどの架橋性単量体などから選ばれる1種または2種の親水性単量体を含む(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系ポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーなどを上げることが出来るが、これに限定されるものではない。
【0084】
併用できる分散剤としては、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0085】
分散安定剤は、樹脂粗粉を水に添加する前に、水に添加しておくのが好ましい。
併用する分散剤を含む分散安定剤の添加量は特に制限はないけれども、好ましくは液媒体と分散安定剤との合計量の0.05重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上3重量%以下である。
【0086】
このようにして、たとえば粒子径が60μm程度の樹脂粗粉を含むスラリーである樹脂粗粉のスラリーが得られる。
【0087】
(3)−1−3、微粒子化工程t3
微粒子化工程t3では、スラリー調製工程t2で得られる樹脂粗粉のスラリーを、加熱加圧下において耐圧ノズルに通過させることによって、樹脂粗粉のスラリーに含まれる樹脂粗粉を微粒子化し、樹脂の微粒子(以下単に「微粒子」ともいう)を含む微粒子のスラリーを得る。
【0088】
樹脂粗粉のスラリーの加圧加熱条件は特に制限されないけれども、樹脂粗粉のフローテスター流出開始温度より100℃以上150℃以下高い温度で加熱および加圧することが好ましい。
【0089】
耐圧ノズルとしては、液体流過が可能な一般的な耐圧ノズルを使用でき、たとえば、液体流過路を複数有する多重ノズルを好ましく使用できる。多重ノズルの液体流過路は多重ノズルの軸心を中心とする同心円状に形成してもよく、または複数の液体流過路が多重ノズルの長手方向にほぼ平行に形成されたものでもよい。本実施の形態の非球形粒子の製造方法において使用する多重ノズルの一例としては、入口径および出口径が0.05〜0.35mm程度であり、ならびに多重ノズルの長さが0.5〜5cmである液体流過路が1または複数、好ましくは1〜2程度形成されたものが挙げられる。
【0090】
樹脂粗粉のスラリーは、耐圧ノズルの入口から耐圧ノズル内に導入され、耐圧ノズルの出口から排出される微粒子のスラリーは、たとえば、粒子径0.3〜1μmの微粒子化された粒子を含み、樹脂粗粉のフローテスター流出開始温度より100℃以上150℃以下高い温度に加熱され、かつ150〜250MPa程度に加圧されている。耐圧ノズルは、1つ設けてもよく、または複数設けてもよい。
【0091】
(3)−1−4、冷却工程t4
冷却工程t4では、微粒子化工程t3で得られた微粒子のスラリーを冷却する。冷却温度は特に制限はないけれども、1つの目安を挙げれば、たとえば、微粒子のスラリーの温度を30℃以下まで冷却する。微粒子のスラリーの温度を30℃以下まで冷却すると、微粒子のスラリーに付加される圧力は5〜20MPa程度に減圧される。
【0092】
(冷却機)
冷却には、耐圧構造を有する一般的な液体冷却機を使用でき、その中でも蛇管式冷却機のように冷却面積の大きい冷却機が好ましい。また、冷却機入口から冷却機出口に向けて、冷却勾配が小さくなるように、すなわち冷却能力が低くなるように構成することが好ましい。これによって、樹脂粗粉の微粒子化が一層効率的に達成される。また、樹脂粗粉の微粒子同士の付着による粗大化を防止し、微粒子化された樹脂粗粉の微粒子の収率を向上させることができる。
【0093】
微粒子化工程t3において耐圧ノズルから排出される微粒子のスラリーは、たとえば、冷却機入口から冷却機内部に導入され、冷却勾配を有する冷却機内部での冷却を受け、冷却機出口から排出される。冷却機は1つ設けてもよくまたは複数設けてもよい。
【0094】
(3)−1−5、減圧工程t5
減圧工程t5では、冷却工程t4で得られる微粒子のスラリーの圧力を、バブリングが起こらない、すなわち泡が発生しない程度の圧力まで減圧する。冷却工程t4から減圧工程t5に供給される微粒子のスラリーは、5〜20MPa程度に加圧された状態である。減圧は、段階的に徐々に行うことが好ましい。
【0095】
(多段減圧装置)
この減圧操作には、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の多段減圧装置を用いることが好ましい。多段減圧装置は、入口通路と、出口通路と、多段減圧手段とを含む。入口通路は、微粒子のスラリーを多段減圧装置内に導入する。出口通路は、入口通路に連通するように形成され、減圧された微粒子のスラリーを多段減圧装置の外部に排出する。多段減圧手段は、入口通路と出口通路との間に設けられて、連結部材を介して2以上の減圧部材が連結されてなる。
【0096】
多段減圧手段に用いられる減圧部材としては、たとえば、パイプ状部材が挙げられる。連結部材としては、たとえば、リング状シールが挙げられる。多段減圧手段は、内径の異なる複数のパイプ状部材をリング状シールにて連結することによって構成される。たとえば、入口通路から出口通路に向けて、同じ内径を有するパイプ状部材を2〜4個連結し、次にこれらよりも2倍程度内径の大きなパイプ状部材を1個連結し、さらに、2倍程度内径の大きなパイプ状部材よりも5〜20%程度の内径を有する小さなパイプ状部材を1〜3個程度連結することによって、パイプ状部材内を流過する微粒子のスラリーが徐々に減圧され、最終的にはバブリングが起こらない程度の圧力、好ましくは大気圧まで減圧される。
【0097】
多段減圧手段の周囲には、冷媒または熱媒を用いる熱交換手段を設け、微粒子のスラリーに付加されている圧力値に応じて、冷却または加熱を行ってもよい。
【0098】
冷却工程t4で得られる微粒子のスラリーは、たとえば、冷却工程t4と減圧工程t5との間に耐圧性配管を設け、耐圧性配管上に供給ポンプおよび供給バルブを設けることによって、冷却工程t4から減圧工程t5に供給され、多段減圧装置の入口通路に導入される。
【0099】
多段減圧装置内で減圧された微粒子のスラリーは、出口通路から該多段減圧装置の外部に排出される。多段減圧装置は1つ設けてもよくまたは複数設けてもよい。
【0100】
このようにして、小径化された樹脂微粒子を含むスラリー、すなわち微粒子のスラリーが得られる。微粒子のスラリーに含まれる微粒子の体積平均粒子径は、0.05μm以上1.50μm以下であることが好ましい。粒子径が0.05μm以上1.50μm以下の微粒子を凝集させて粒子を製造することによって、後述する凝集工程t6において、粒子同士の形状差が少なく、形状が非球形であり、粒度分布の狭い体積平均粒子径が3μm以下の粒子を安定して製造することができる。
【0101】
(3)−1−6、凝集工程t6
凝集工程t6では、冷却工程t5で得られる微粒子のスラリーに凝集剤を添加し、微粒子を凝集させることで、粒度分布の狭い非球形粒子を含む水分散体を得る。具体的には、たとえば、微粒子のスラリーに凝集剤を加えて、せん断などの外力を与えながら、凝集能も有する高分子分散剤の凝集力によって、微粒子に含まれる粒子の中でも比較的粒子径の小さい粒子である超微粒子を凝集させる。また凝集が過剰に進行しないように、外力によって、微粒子に含まれる粒子の中でも比較的粒子径の大きい粒子である粗大粒子の生成を抑制することによって、超微粒子側と粗大粒子側との両方から粒度分布を制御することができ、非球形粒子の粒度分布を狭くすることができる。
【0102】
(造粒装置)
微粒子は、たとえば造粒装置で凝集させる。造粒装置は、収容する撹拌容器と、撹拌容器内に設けられ、微粒子のスラリーを撹拌する撹拌手段とを含み、造粒装置としては、機械的な一方向からの剪断力を付与し得る乳化機または分散機を用いるのが好ましい。これによって、形成される非球形粒子の粒子径および形状を一層均一化できる。
【0103】
乳化機および分散機の具体例としては、たとえば、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、マックスブレンド(住友重機株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)、TKホモミックラインフロー(商品名、プライミクス株式会社製)、フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)、ファインフローミル(商品名、太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)、フィルミックス(商品名、プライミクス株式会社製)などが挙げられる。
【0104】
微粒子のスラリーと凝集剤との混合において、造粒装置の撹拌速度、撹拌温度および攪拌時間は、所望の粒子径、粒度分布および形状を有する非球形粒子が得られる値を適宜選択すればよい。非球形粒子の形状は、外力と熱と時間、攪拌速度(造粒装置の回転数)と攪拌温度と攪拌時間とが複雑に絡み合い、たとえば、攪拌温度が高ければ粒子の形状は球に近づき、低ければ葡萄状のようないびつな形状を保つが、攪拌温度を高くしても、攪拌時間が短く、攪拌速度が遅いと、非球形粒子の形状はいびつになる。また、攪拌時間が長いと非球形粒子の形状は徐々に球へと近づいていくが、攪拌温度が低いと、何時間攪拌を行っても、非球形粒子の形状は、いびつなままである。また、撹拌時間については、処理物に含まれる樹脂、結着樹脂、着色剤、その他の添加剤、凝集剤および分散安定剤の種類、ならびに濃度などの各種条件に応じて、適宜選択することができる。
【0105】
前述のように、高分子分散剤は凝集能も有する。凝集工程t6では、カチオン系分散剤などの凝集剤を添加することによって、高分子分散剤が電気的に中和されるので、高分子分散剤の分散安定性が失われ、微粒子が凝集される。高分子分散剤は、その分子内に長鎖を有し、高分子分散剤自体が微粒子と微粒子とを橋架けすることで微粒子がスラリー中で分散していると考えられ、高分子分散剤の分子内に無数に存在する官能基、たとえばポリアクリル酸であればカルボキシル基を凝集剤に含まれる凝集塩で中和し、無効化、すなわち不安定化する程度を微調整することができる。したがって、適度な分散性を保ちつつ、徐々に微粒子を凝集させることができるので、粒度分布が狭い非球形粒子を製造することができる。
【0106】
(凝集剤)
凝集剤としては、たとえば、カチオン系分散剤、多価金属塩などを用いることができる。カチオン系分散剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム型カチオン系分散剤、アルキルアミドアミン型カチオン系分散剤、アルキルジメチルベンジルアンモニウム型カチオン系分散剤、カチオン化多糖型カチオン系分散剤、アルキルベタイン型カチオン系分散剤、アルキルアミドベタイン型カチオン系分散剤、スルホベタイン型カチオン系分散剤、アミンオキサイド型カチオン系分散剤、金属塩などが好ましい。金属塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩化物、硫酸塩などが挙げられる。
【0107】
また、凝集剤として用いられる多価金属塩は、2価以上の金属の塩である。2価以上の金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの周期律表第13族元素などが好ましく、マグネシウム、アルミニウムなどが特に好ましい。2価以上の金属塩の具体例としては、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0108】
上述の凝集剤の中でも、水に対する溶解度が比較的大きく、凝集速度が緩やかなことから塩化ナトリウムが好ましい。凝集剤の使用量は、微粒子のスラリー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部〜18重量部であり、特に好ましくは1.0重量部〜18重量部である。0.5重量部未満では凝集効果が不充分になるおそれがあり、20重量部を超えると過凝集により、非球形粒子の粒子径が大きくなりすぎるおそれがある。
【0109】
上述の非球形粒子の製造方法では、t1〜t6までの工程を1度だけ実施してもよく、t1〜t6までの工程を1度実施した後、t3〜t6までの工程を繰返し実施してもよい。
【0110】
このようにして得られた非球形粒子を粉体として利用する場合には、濾過、遠心分離などの一般的な分離手段によって固液分離し、非球形粒子の乾燥を行う。
【0111】
(2)−2、乳化重合凝集法
乳化重合凝集法は、一般に、乳化重合などによって作製した樹脂分散液に、溶媒に着色剤を分散させて作製した着色剤分散液などを混合し、次いで、この混合液中で、所望の粒子径に相当する凝集物を形成し、これを加熱することによって融合合一して所望の非球形粒子を製造する方法である。
【0112】
より具体的なプロセスは次のようなものである。まず、イオン性界面活性剤を用いて乳化重合などによって得られた樹脂分散液と、反対極性のイオン性界面活性剤で分散された顔料の分散液とを混合した混合液中でヘテロ凝集を生じさせることによって、所望の粒子径の大きさの凝集物を形成する。次いで、多量のイオン性界面活性剤を添加して凝集物の粒径成長を停止させる。続いて、凝集物を構成する樹脂のガラス転移温度以上に加熱して凝集物を融合合一する融合工程を経て所望の非球形粒子を製造する。
【0113】
樹脂および顔料を分散させている液媒体としては、前述のスラリー調製工程t2の(液媒体)に記載した液媒体を用いることができる。樹脂分散液に含まれるイオン性界面活性剤としては、前述のスラリー調製工程t2の(分散安定剤)に記載の高分子分散剤を用いることができ、顔料の分散液に含まれるイオン性界面活性剤としては、前述の凝集工程t6の(凝集剤)に記載のカチオン系分散剤を用いることができる。
【0114】
本発明の第1の実施形態である非球形粒子は、たとえば、そのまま乾式および湿式トナーとして利用することができ、また所望のサイズまでさらに凝集させてから乾式トナーとして用いることもできる。
【0115】
2、トナー
本発明の第2の実施形態であるトナーは、少なくとも樹脂を含む本発明の第1の実施形態である非球形粒子を含む。トナーが、少なくとも樹脂を含む本発明の第1の実施形態である非球形粒子を含むことによって、乾式および湿式のどちらのプロセスにおいても、クリーニング性と転写性とを両立することができるので、クリーニング不良または転写不良による画像欠損がなく、高画質な画像を安定して形成することができる。
【0116】
本発明の第1の実施形態である非球形粒子をさらに凝集させ本発明の第2の実施形態であるトナーを製造する方法としては、特に制限されないけれども、たとえば、前述の凝集工程t6で説明した方法と同様にして本発明の第1の実施形態である非球形粒子を凝集させることで、本発明の第2の実施形態であるトナーを製造することができる。
【0117】
(結着樹脂)
本実施の形態であるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含む。結着樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、前述の非球形粒子の原料の(樹脂)で記載した樹脂を用いることができるが、トナー用途としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などを好適に使用することができる。これらの樹脂の中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂がさらに好適である。これらの樹脂は透明性に優れ、得られるトナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与することができるので、カラートナーの結着樹脂に好適である。さらに、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とをグラフト化したものも好適に用いることができる。
【0118】
造粒操作を容易に実施すること、着色剤との混練性ならびに得られるトナー粒子の形状および大きさを均一にすることなどを考慮すると、軟化点が150℃以下の結着樹脂が好ましく、60℃以上150℃以下の結着樹脂が特に好ましい。また、結着樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上70℃以下であり、重量平均分子量が10,000以上300,000以下であることが好ましい。ガラス転移温度が40℃未満であると、保存性などのトナーの物性が著しく低下する。ガラス転移温度が70℃を超えると、低温定着性が低下する。重量平均分子量が10,000未満であると、重量平均分子量が10,000以上である場合と比べて、定着後のトナー像の機械的な強度が低いので、たとえば、形成された画像が記録媒体から欠落する画像欠落が起こるおそれがある。重量平均分子量が300,000を超えると、低温定着性が低下する。ガラス転移温度および重量平均分子量が前述の範囲である結着樹脂を用いることによって、前述の範囲以外の結着樹脂を用いる場合より定着可能温度幅を大きく広げることができ、保存性などのトナーの物性を良好にすることができ、画像欠落を防止することができ、高画質な画像をより安定して形成することができる。
【0119】
結着樹脂は、1種を単独で使用でき、または、異なる2種以上を併用できる。さらに、同じ樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれかまたは全部が異なるものを複数種用いることができる。
【0120】
着色剤としては、前述の非球形粒子の原料の(着色剤)に記載の着色剤を用いることができる。着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下が好ましい。マスターバッチは、たとえば粒子径2〜3mm程度に粉砕されて用いられる。
【0121】
トナーにおける着色剤の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して2重量部以上20重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、本発明のトナーにおける着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤を前記範囲で用いることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
【0122】
本実施形態において、トナーは、非球形粒子が離型剤を含むことが好ましい。非球形粒子が離型剤を含むことによって、離型剤を含まない場合と比べて、定着工程において、定着手段と記録媒体との離型性を高めることができ、定着性を改良することができる。したがって、定着可能温度幅をより大きく広げることができ、高画質な画像をより一層安定して形成することができる。
【0123】
離型剤としては、前述の非球形粒子の原料の(離型剤)に記載した離型剤を使用できる。離型剤の使用量は特に限定されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部以上20重量部以下である。離型剤が20重量部よりも多く含まれると、感光体上へのフィルミング、キャリアへのスペントが起こりやすくなるおそれがあり、0.2重量部未満であると、離型剤の機能を十分発揮できないおそれがある。
【0124】
離型剤の融点は特に制限されないけれども、融点が高すぎると定着性の改良、すなわち離型性の改良に効果がなく、融点が低すぎると保存性などを悪化させてしまうので、離型剤の融点は、30℃以上120℃以下であることが好ましい。
【0125】
本実施の形態において、トナーは、帯電制御剤を含んでもよい。帯電制御剤としては、前述の非球形粒子の原料の(帯電制御剤)に記載した帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。相溶性の帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生し、非相溶性の帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに充分な帯電特性を付与することができない。
【0126】
(1)乾式トナー
本実施の形態のトナーを乾式トナーとして用いる場合には、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤をトナーに外添させてもよい。
【0127】
(外添剤)
外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤およびその他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましい。前記処理剤は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0128】
外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響およびトナーの環境特性などを考慮して、トナー100重量部に対し1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下がより好ましい。
【0129】
外添剤は、一次粒子の個数平均粒子径が10nm以上500nm以下であることが好ましい。このような粒子径の外添剤を用いることによって、トナーの流動性向上効果が一層発揮され易くなる。
【0130】
(2)湿式トナー
湿式トナーとして用いる場合には、たとえば、本実施形態のトナーを絶縁性液体中に分散させた湿式トナー分散液を調製する。湿式トナー分散液の調製方法は、特に限定されず、一般的な方法で調製できる。
【0131】
(絶縁性液体)
本発明で用いられる絶縁性液体としては、公知のものを使用でき、たとえば液状のn−パラフィン系炭化水素、iso−パラフィン系炭化水素、またはその混合物、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、およびシリコーンオイルなどが挙げられる。これらの中でも、シリコーンオイルを用いることが好ましい。シリコーンオイルを用いることによって、トナー粒子を記録媒体に定着する際に離型剤の働きをするため、オフセットが発生するのを効果的に防止することができる、すなわち、耐オフセット性が向上する。
【0132】
シリコーンオイルは、ポリシロキサン骨格を有し、一般式:−[O−SiR1(R2)]n−で表される高分子で構成されており、R1、R2がメチル基、フェニル基、または水素であるストレートシリコーンオイル、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などを側鎖および末端の少なくとも一方に有する反応性変性シリコーンオイル、ならびにポリエーテル基、メチルスチリル基、アルキル基、高級脂肪酸エステル基、親水性特殊基、高級脂肪酸基、フッ素などを側鎖および末端の少なくとも一方に有する非反応性変性シリコーンオイル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、非反応性に変性したポリシロキサン(非反応性変性シリコーン)を主成分とするものを用いることがより好ましい。非反応性に変性したポリシロキサンを主成分とすると、シリコーンオイルの熱安定性がより高いので、より安定した特性の湿式現像剤を得ることができる。
【0133】
湿式トナー分散液の調製において、絶縁性液体に可溶な分散剤、たとえば界面活性剤を用いてもよい。絶縁性液体に可溶な分散剤を用いることによって、本発明の湿式トナーの絶縁性液体中での分散性を向上させることができる。
【0134】
湿式トナー分散液中における本発明の湿式トナーの含有率は、特に限定されないが、1wt%以上30wt%以下であることが好ましく、5wt%以上20wt%以下であることがより好ましい。
【0135】
湿式トナー分散液中には、上記以外に帯電制御剤、磁性粉末などの成分が含まれていてもよい。帯電制御剤としては、たとえば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。また磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたものなどが挙げられる。
【0136】
また、分散液中には、上記のような材料のほかに、たとえば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウムなどが添加されていてもよい。
【0137】
3、現像剤
本発明の第3の実施形態である現像剤は、本発明の第2の実施形態であるトナーを含む。現像剤が本発明の第2の実施形態のトナーを含むことによって、乾式および湿式のどちらのプロセスにおいても、クリーニング性および転写性の良好な現像剤とすることができる。また、乾式プロセスにおいては、トナー粒子の形状が非球形であり、画像形成装置内のフィルタに飛散したトナー粒子が捕集されやすいので、人体への悪影響を抑えることができる現像剤とすることができる。
【0138】
(1)乾式現像剤
本実施形態において、現像剤は、たとえば本発明の第1の実施形態である非球形粒子を凝集させて得られるトナーを含む乾式の現像剤である。現像剤が第1実施形態の非球形粒子を凝集させて得られるトナーを含むので、クリーニング性を良好にすることができる。したがって、クリーニング不良による画像欠損がなく、高画質な画像を安定して形成することができる。また凝集後のトナー粒子の形状を非球形に制御すれば、現像剤に含まれるトナー粒子の中で粒子径の小さいトナー粒子のクリーニング性を良好にすることができる。このように形状が非球形で粒子径の小さいトナー粒子は、飛散しても画像形成装置内のフィルタに捕集されやすいので、トナーが画像形成装置外に飛散することを抑えることができ、人体への悪影響を抑えることができる。
【0139】
前述のように、必要に応じてトナー粒子に外添剤が外添される乾式トナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して2成分現像剤として使用することができる。
【0140】
1成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。また1成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブでトナーを摩擦帯電させ、スリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。
【0141】
2成分現像剤として使用する場合、本発明のトナーをキャリアとともに用いる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトをキャリアコア粒子とし、キャリアコア粒子表面を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアが挙げられる。
【0142】
樹脂被覆キャリアの被覆物質としては、公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアシド、ポリビニルラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。
【0143】
樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としては、特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。樹脂被覆キャリアの被覆物質および樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0144】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。
キャリアの粒子径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0145】
キャリアの体積抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの体積抵抗率は、キャリアを0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められたキャリアにおもりによって1kg/cm2の荷重を掛け、おもりと底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。キャリアの抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0146】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g以上、60emu/g以下、さらに好ましくは15emu/g以上、40emu/g以下である。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0147】
2成分現像剤における乾式トナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、乾式トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm)に例をとれば、現像剤中に、乾式トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、乾式トナーを用いればよい。また2成分現像剤において、乾式トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
【0148】
(2)湿式現像剤
本実施形態において、現像剤は、たとえば湿式の現像剤である。湿式現像剤は、前述の湿式トナー分散液を湿式現像剤として用いることができる。本実施形態の湿式現像剤に含まれるトナー粒子は、粒子径が3μm以下と小さく、形状が揃っている。このような湿式現像剤を用いて画像を形成すると、画像の高画質化を実現することができる。また、トナー粒子の形状が非球形なので、クリーニング工程において、クリーニング手段、たとえばクリーニングブレードに引っかかりやすく、良好なクリーニング性を得ることができる。
【0149】
4、画像形成装置
本発明の第4の実施形態である画像形成装置は、本発明の第3の実施形態である現像剤を用いる。
【0150】
(1)乾式プロセスの画像形成装置
前述の乾式現像剤は、たとえば、図1に示す乾式プロセスの画像形成装置で使用することができる。図1は、本発明の第5Aの実施形態である乾式プロセスの画像形成装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。乾式プロセスの画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録材にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、乾式プロセスの画像形成装置1は、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、後述する制御部によって、印刷モードが選択される。
【0151】
乾式プロセスの画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録材供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0152】
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。帯電手段12および露光ユニット13は、潜像形成手段に相当する。
【0153】
像担持体である感光体ドラム11は、図示しない駆動手段によって、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属およびこれらの2種以上の合金、樹脂フィルム、金属フィルムまたは紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、ならびに導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0154】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であってもよい。
【0155】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上200重量部以下である。
【0156】
電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミドおよびポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0157】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することによって形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2.5μm以下である。
【0158】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニルおよびベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10重量部以上300重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上150重量部以下である。
【0159】
電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0160】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、ならびに有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下である。
【0161】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することによって形成できる。このようにして得られる電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
【0162】
なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0163】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコーンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
【0164】
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、たとえば、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
【0165】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0166】
図2は、本発明の第4の実施形態である現像装置14の構成を模式的に示す概略断面図である。
【0167】
現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容し、かつ現像ローラ110、供給ローラ111、撹拌ローラ112などのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部114が形成され、この開口部114を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ110が回転駆動可能に設けられる。
【0168】
現像ローラ110は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において、感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ110表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ110表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、トナー付着量、すなわち静電潜像に供給されるトナー量を制御できる。
【0169】
供給ローラ111は現像ローラ110を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ110周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ112は供給ローラ111を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ111周辺に送給する。
【0170】
トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられる図示しないトナー補給口と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられる図示しないトナー受入口とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
【0171】
クリーニングユニット15は、記録材にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本発明の画像形成装置1において、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0172】
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0173】
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
【0174】
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
【0175】
駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
【0176】
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録材の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
【0177】
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部、すなわち転写ニップ部において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されるトナー像が、後述する記録材供給手段5から送給される記録材に転写される。トナー像を担持する記録材は、定着手段4に送給される。
【0178】
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録材に転写される。
【0179】
定着手段4は、転写手段3より記録材の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録材に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録材に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。
【0180】
加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録材に定着する際に、トナーと記録材とを押圧することによって、トナー像の記録材への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
【0181】
定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録材が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録材に押圧されることによって、トナー像が記録材に定着され、画像が形成される。
【0182】
記録材供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録材を貯留する容器状部材である。記録材には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録材を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録材をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録材を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録材を画像形成装置1内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録材は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録材供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録材を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0183】
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録材を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録材を、乾式プロセスの画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録材を貯留する。
【0184】
乾式プロセスの画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、乾式プロセスの画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、乾式プロセスの画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、乾式プロセスの画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録材判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。
【0185】
外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ乾式プロセスの画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0186】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ、すなわち、画像形成命令、検知結果、画像情報など、および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、乾式プロセスの画像形成装置内部における各装置にも電力を供給する。
【0187】
(2)湿式プロセスの画像形成装置
前述の湿式現像剤は、たとえば、図3に示す湿式プロセスの画像形成装置201で使用することができる。図3は、本発明の第5Bの実施形態である湿式プロセスの画像形成装置201の構成を模式的に示す概略断面図である。画像形成装置201は、感光体ドラム211と帯電装置212とトナー像形成手段202と現像装置214と転写装置203とクリーニングローラ215とを含む。感光体ドラム211は、像担持体に相当する。
【0188】
感光体ドラム211の周囲には、トナー像形成手段202と現像装置214と転写装置203とクリーニングローラ215とがこの順で配置されている。感光体ドラム211は、矢符211aで示すように、時計回りに図示しない駆動機構によって回転可能である。この回転動作によって、静電潜像またはトナー像を担持する感光体ドラム211表面の像担持面は、クリーニングローラ215、トナー像形成手段202、現像装置214および転写装置203などに対して相対的に移動する。
【0189】
感光体ドラム211は、導電性表面を有する基体と、その導電性表面上に形成された感光体層とを含む。感光体層は、たとえば、光照射によって帯電状態などに変化を生ずる材料、たとえばアモルファスシリコーン系の感光性材料を含有している。この感光体層は、後述する帯電装置212によって正極性に帯電される。また、感光体層は、図示しない離型層で被覆することができる。
【0190】
トナー像形成手段202は、図示しない除電装置と、帯電装置212と、書込装置213とを含む。
【0191】
除電装置は、感光体ドラム211の感光体層のうち、除電装置の正面に位置した部分を一様に除電する。すなわち、除電装置は、転写工程後の感光体層から静電潜像を消去する。
【0192】
帯電装置212は、たとえば、コロトロン帯電器、スコロトロン帯電器に代表されるコロナ帯電器である。帯電装置212は、感光体ドラム211の感光体層のうち、帯電装置212の正面に位置した部分を一様に正極性に帯電させる。
【0193】
書込装置213は、レーザ露光器またはLEDのような光源と、それが放射する光を感光体層へと導く光学系とを含む。書込装置213は、画像情報に対応して感光体層に光を照射し、感光体層の光照射部を除電する。これによって、低電位部である照射部と高電位部である非照射部とで構成される静電潜像を得ることができる。
【0194】
現像装置214は、感光体ドラム211の像担持面に本発明の湿式トナーを供給する。現像装置214は、たとえば、湿式トナーを収容する容器220と、像担持面とわずかな間隙を隔てて回転可能に配置された現像ローラ210と、現像ローラ210を図中反時計回りに回転させる図示しない回転機構と、現像ローラ210に電圧を印加する図示しない電圧印加機構とを含む。
【0195】
現像ローラ210を図中反時計回りに回転させることによって、現像ローラ210と感光体ドラム211との間に湿式トナーからなるトナー層を形成することができる。このとき、現像ローラ210の電位を感光体ドラム211の照射部における表面電位と非照射部における表面電位との間の電位に設定する。こうすることで、現像ローラ210と感光体ドラム211との間に形成されたトナー層中で、正に帯電したトナー粒子は感光体層の光照射部に向けて移動する。その結果、感光体ドラム211の像担持面には、静電潜像に対応したパターンでトナー像が形成される。
【0196】
転写装置203は、中間転写ローラ226とバックアップローラ230とを含む。転写装置203は、感光体ドラム211表面のトナー像を、中間転写ローラ226を介して、記録媒体235へと転写する。転写装置203は、感光体ドラム211から中間転写ローラ226へのトナー像の転写には、感光体ドラム211と中間転写ローラ226とを圧接することによる圧力を利用する。中間転写ローラ226から用紙およびOHPシートなどの記録媒体235へのトナー像の転写には、中間転写ローラ226とバックアップローラ230とを圧接することによる圧力を利用する。
【0197】
中間転写ローラ226は、その転写面が感光体ドラム211の像担持面と接するように、感光体ドラム211に対して押圧されている。中間転写ローラ226は、感光体ドラム211の回転に伴い、矢符226の方向に回転する。
【0198】
バックアップローラ230は、その加圧面が、記録媒体235を介して中間転写ローラ226の転写面と接するように、中間転写ローラ226に対して押圧される。バックアップローラ230は、中間転写ローラ226の回転に伴い、矢符230aの方向に回転する。
【0199】
転写装置203は、さらにヒータを含んでもよい。すなわち、転写装置203には、感光体ドラム211から中間転写ローラ226へのトナー像の転写、中間転写ローラ226から記録媒体235235へのトナー像の転写に、圧力および熱を利用可能な構成としてもよい。また、転写装置203は、記録媒体235を矢符235aの方向へと移動させる搬送機構などを含んでいてもよい。
【0200】
中間転写ローラ226は、中間転写ベルトであってもよい。
クリーニングローラ215は、転写後の像担持面から、そこに残留したトナーなどを除去する。
【0201】
本発明のトナーを含む現像剤を用いて画像を形成することにより、安定して高画質な画像を得ることができる。
【0202】
本発明の第5Aおよび第5Bの実施の形態において、現像装置14,214は本発明の現像剤を用いて現像を行う。本発明の現像剤は、良好なクリーニング性を有することができるので、感光体ドラム11,211にクリーニング不良による画像欠損のないトナー像を安定して形成することができる。
【0203】
このようにして、前述のように感光体ドラム11,211にクリーニング不良による画像欠損のないトナー像を形成可能な本発明の現像装置14,214を備えて画像形成装置1,201が実現される。このような画像形成装置1,201で画像を形成することによって、クリーニング不良による画像欠損のない高画質画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0204】
実施例および比較例における各物性は、次のようにして測定した。
〔微粒子および非球形粒子の体積平均粒子径と変動係数CV〕
レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)を用いて測定を行った。測定試料(微粒子や非球形粒子)の凝集を防ぐため、ファミリーフレッシュ(花王株式会社製)の水溶液中に測定試料(微粒子や非球形粒子)が分散した分散液を投入・撹拌後、装置に注入し、2回測定を行い、平均を求めた。測定条件は、測定時間:30秒、粒子屈折率:1.4、粒子形状:非球形、溶媒:水、溶媒屈折率:1.33とした。測定試料(微粒子や非球形粒子)の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒径側からの累積体積が50%になる粒径を粒子の体積平均粒子径(μm)として算出した。また、体積粒度分布における標準偏差(μm)を求め、下記式(1)に基づいて変動係数CV(%)を算出した。変動係数は、その値が小さいほど、粒度分布幅が狭いことを意味する。
変動係数CV(%)={(体積粒度分布の標準偏差)/(体積平均粒子径)}×100
…(1)
【0205】
〔非球形粒子の形状係数SF−1および形状係数SF−2〕
100mlビーカーに、非球形粒子2.0g、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlおよび純水50mlを加えて良く撹拌し、非球形粒子の分散液を調製した。この分散液を、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)によって出力50μAにて5分間処理し、さらに分散させた。6時間静置して上澄み液を取り除いた後、純水50mlを加え、マグネチックスターラにて5分間撹拌した後、メンブランフィルタ(口径1μm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブランフィルタ上の洗浄物をシリカゲル入りデシケータにて約一晩、真空乾燥した。
【0206】
このようにして表面を洗浄した非球形粒子の表面に、スパッタ蒸着により金属膜(Au膜、膜厚0.5μm)を形成した。この金属膜被覆非球形粒子について、走査型電子顕微鏡(商品名:S−570、株式会社日立製作所製)により、加速電圧5kVで、また1000倍の倍率で、無作為に500個程度を抽出して写真撮影を行った。この電子顕微鏡写真データを、画像解析ソフト(商品名:A像くん、旭化成エンジニアリング株式会社製)で画像解析した。画像解析ソフト「A像くん」の解析パラメータは、小図形除去面積:100画素、収縮分離:回数1;小図形:1;回数:10、雑音除去フィルタ:無、シェーディング:無、結果表示単位:μmとした。これにより得られた非球形粒子の最大長MXLNG、周囲長PERI、図形面積AREAから、下記の式(2)、(3)によって形状係数SF−1、SF−2を得た。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(100π/4) …(2)
SF−2={(PERI)2/AREA}×(100/4π) …(3)
【0207】
〔結着樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用いて、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
【0208】
〔結着樹脂のフローテスター流出開始温度(Ti)〕
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重10kgf/cm(9.8×10Pa)を与えて結着樹脂1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、溶融した結着樹脂がダイ穴から出始めたときの温度を求め、結着樹脂のフローテスター流出開始温度(以下単に「流出開始温度」ともいう)(Ti)とした。
【0209】
〔結着樹脂の分子量Mw〕
GPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)を用い、温度40℃において、試料の0.25重量%のテトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)溶液を試料溶液とし、試料溶液の注入量を200μLとして、分子量分布曲線を求めた。得られた分子量分布曲線のピークの頂点の分子量をピークトップ分子量として求めた。また得られた分子量分布曲線から、重量平均分子量Mwを求めた。なお、分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
【0210】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、離型剤1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0211】
(実施例1)
[粗粉調製工程t1]
ポリエステル(結着樹脂、ガラス転移温度(Tg)58℃、流出開始温度(Ti)87℃、Mw=77000)81.8重量部、マスターバッチ(C.I.Pigment Red122を40重量%含有)12重量部、パラフィンワックス(離型剤、商品名:HNP11、日本精鑞株式会社製、融点68℃)4.2重量部、およびアルキルサリチル酸金属塩(帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)1.5重量部を、ヘンシェルミキサによって10分間混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)を用いて溶融混練を行い、溶融混練物を得た。
【0212】
[スラリー調製工程t2]
粗粉調製工程t1で得られた溶融混練物900重量部を、分散剤(商品名:ニューコール10N、日本乳化剤株式会社製)90重量部、湿潤剤(商品名:エアロール、東邦化学工業株式会社製)2重量部、イオン交換水2008重量部とともにPUCコロイドミル(商品名、日本ボールバルブ株式会社製)へ投入し、湿式粉砕して溶融混錬物のスラリーを得た。
【0213】
[微粒子化工程t3、冷却工程t4、減圧工程t5]
次に、高圧ホモジナイザnano3000で、以下の処理条件において、溶融混練物のスラリーに含まれる溶融混練物を微粒子化し、冷却し、減圧することによって微粒子のスラリーを得た。
【0214】
<処理条件>
圧力 210Mpa
設定温度 200℃
ノズル径 0.07mm
[凝集工程t6]
微粒子化工程t3から減圧工程t5を経て得られた微粒子のスラリー600重量部に凝集剤(1級塩化ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)12重量部を加え、クレアミックスWモーションを用いて以下の凝集条件で微粒子のスラリーに含まれる微粒子を凝集させることで、非球形粒子の水分散体を作製した。
【0215】
<凝集条件>
設定温度 62℃
回転数(ロータ/ステータ) 18000rpm/16200rpm
設定温度保持時間 10分間
【0216】
上記のようにして得られる非球形粒子の水分散体を、イオン交換水で充分に洗浄した後乾燥させることで非球形粒子を得て、この非球形粒子を実施例1のトナーとした。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 1.34 変動係数(%) 21
【0217】
(実施例2)
凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から9重量部に変更し、設定温度を62℃から65℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 1.41 変動係数(%) 20
【0218】
(実施例3)
凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から15重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例3のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 2.93 変動係数(%) 20
【0219】
(実施例4)
結着樹脂として、実施例1で用いられたポリエルテルの代わりに、ガラス転移温度(Tg)が55℃であり、流出開始温度(Ti)が84℃であり、重量平均分子量(Mw)が52000であるポリエステルを用い、凝集工程t6において、回転数を18000rpm/16200rpmから15000rpm/13500rpmに変更し、設定温度を62℃から58℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 1.53 変動係数(%) 22
【0220】
(実施例5)
結着樹脂として、実施例1で用いられたポリエルテルの代わりに、ガラス転移温度(Tg)が65℃であり、流出開始温度(Ti)が96℃であり、重量平均分子量(Mw)が198000であるポリエステルを用い、微粒子化工程t3において、設定温度を200℃から245℃に変更し、凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から8.4重量部に変更し、設定温度を62℃から68℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例5のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 2.01 変動係数(%) 24
【0221】
(実施例6)
実施例1で作製したイオン交換水で洗浄前の粒子の水分散体600重量部に、さらに凝集剤(1級塩化ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)18重量部を加え、クレアミックスWモーションを用いて以下の凝集条件で凝集させることによって、凝集粒子の水分散体を作製した。
【0222】
<凝集条件>
設定温度 62℃
回転数(ロータ/ステータ) 18000rpm/0rpm
設定温度保持時間 10分間
【0223】
上記のようにして得られた凝集粒子の水分散体をイオン交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることで非球形粒子を得て、この非球形粒子を実施例6のトナーとした。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 5.14 変動係数(%) 20
【0224】
(比較例1)
凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から21重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 3.12 変動係数(%) 20
【0225】
(比較例2)
凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から8.4重量部に変更し、設定温度を62℃から70℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 1.82 変動係数(%) 21
【0226】
(比較例3)
凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から14重量部に変更し、設定温度を62℃から58℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 1.43 変動係数(%) 31
【0227】
(比較例4)
結着樹脂として、実施例1で用いられたポリエルテルの代わりに、ガラス転移温度(Tg)が39℃であり、流出開始温度(Ti)が80℃であり、重量平均分子量(Mw)が9800であるポリエステルを用い、凝集工程t6において、設定温度を62℃から56℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例4のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 2.03 変動係数(%) 23
【0228】
(比較例5)
結着樹脂として、実施例1で用いられたポリエルテルの代わりに、ガラス転移温度(Tg)が71℃であり、流出開始温度(Ti)が98℃であり、重量平均分子量(Mw)が302000であるポリエステルを用い、微粒子化工程t3において、設定温度を200℃から245℃に変更し、凝集工程t6において、凝集剤の添加量を12重量部から10重量部に変更し、設定温度を62℃から68℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例4のトナーを得た。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 2.45 変動係数(%) 28
【0229】
(比較例6)
微粒子化工程t3において、設定温度を200℃から185℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例4の非球形粒子の水分散体を得た。この非球形粒子の水分散体に含まれる非球形粒子のフロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
【0230】
体積平均粒子径(μm) 2.3 変動係数(%) 48
イオン交換水で洗浄前の非球形粒子の水分散体600重量部に、さらに凝集剤(1級塩化ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)18重量部を加え、クレアミックスWモーションを用いて、以下の凝集条件で凝集させ、凝集粒子の水分散体を作製した。
【0231】
<凝集条件>
設定温度 62℃
回転数(ロータ/ステータ) 18000rpm/0rpm
設定温度保持時間 10分間
【0232】
上記のようにして得られた凝集粒子の水分散体をイオン交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることで非球形粒子を凝集させた凝集粒子を得て、この凝集粒子を比較例6のトナーとした。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 5.4 変動係数(%) 38
【0233】
(比較例7)
比較例2で作製したイオン交換水で洗浄前の粒子の水分散体600重量部に、さらに凝集剤(1級塩化ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)15重量部を加え、クレアミックスWモーションを用いて以下の凝集条件で凝集させることによって、凝集粒子の水分散体を作製した。
【0234】
<凝集条件>
設定温度 62℃
回転数(ロータ/ステータ) 18000rpm/0rpm
設定温度保持時間 10分間
【0235】
上記のようにして得られた凝集粒子の水分散体をイオン交換水で充分に洗浄した後、乾燥させることで非球形粒子を得て、この非球形粒子を比較例7のトナーとした。フロー式粒子像分析装置(FPIA−2000型)で測定した体積平均粒子径および変動係数は次のようになった。
体積平均粒子径(μm) 5.09 変動係数(%) 22
【0236】
[湿式トナーの作製]
実施例1〜5および比較例1〜5のトナー3重量部に、アイソパーL(商品名、昭和シェル石油株式会社製)97重量部をそれぞれ加えてよく馴染ませることで、実施例1〜5、比較例1〜5のトナーを含む湿式トナーを得て、これを湿式現像剤とした。
【0237】
[乾式トナーの作製]
実施例6および比較例6のトナー100重量部に対して、外添剤としてシリカ微粒子(商品名:R972、日本アエロジル株式会社製)をそれぞれ1.5重量部外添することで、実施例6のトナーを含む乾式トナーおよび比較例6のトナーを含む乾式トナーを得た。
【0238】
[2成分現像剤の作製]
キャリアとして、体積平均粒子径45μmのフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対する実施例6のトナーを含む乾式トナーおよび比較例6のトナーを含む乾式トナーの被覆率がそれぞれ60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)で20分間混合することによって、実施例6のトナーを含む2成分現像剤および比較例6のトナーを含む2成分現像剤を作製した。
【0239】
実施例1〜6および比較例1〜6で得られる微粒子、非球形粒子に関する物性の一覧を表1に示す。
【0240】
【表1】

【0241】
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたトナーで作製した湿式現像剤をそれぞれ用いて、図3に示す画像形成装置201で以下のようにして画像を出力し、その画像で画像再現性、クリーニング性、定着性、定着強度および転写性の評価を行った。
【0242】
画像形成には、感光体ドラム211を20cm/s〜100cm/sの速度で時計回り方向に回転させ、表面が約−500Vの電位になるように感光体ドラム211を均一に帯電させた。次に画像データに基づいたレーザービームを感光体ドラム211に照射することで、感光体ドラム211表面に静電潜像を形成し、この上に湿式トナーを現像させることで静電潜像を顕在化した。この時の感光体ドラム211と現像ローラ210とのギャップは100μm程度であり、湿式トナーの付着を促進するため、現像ローラ210表面には、約−400Vのバイアスを印加した。顕在化されたトナー像は、搬送されてきた紙に転写させた。このとき、転写ローラには、+1000V程度の電圧を印加した。トナー像を転写させた紙は、中間転写ローラ226から分離された後、熱定着ローラによる熱と圧力とでトナー像を定着させた。このとき、熱定着ローラ温度は、150℃程度に熱した。印字された紙が排紙された後は、感光体ドラム211表面に残量した現像剤はウレタンスクレイパーのようなクリーナーによって取り除き、感光体ドラム211表面は光で除電した。
【0243】
〔画像再現性〕
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたトナーで作製した湿式現像剤を前記複写機にそれぞれ充填し、画像濃度が0.3であり、直径が5mmであるハーフトーン画像を画像濃度0.3以上0.5以下で複写できる条件において、線幅が正確に100μmである細線のオリジナル画像が形成されている原稿を記録媒体に複写し、得られたコピー画像を測定サンプルとした。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)によって測定される光学反射濃度である。
【0244】
この測定サンプルに形成された細線を粒子アナライザ(商品名:ルーゼックス450、株式会社ニレコ製)によって100倍に拡大し、100倍に拡大された細線が映し出されたモニタ画像から、インジケータによって、コピー画像に形成された細線の線幅を測定した。
【0245】
コピー画像に形成された細線には凹凸があり、その細線の線幅は測定位置によって異なるので、複数の測定位置において線幅を測定して、線幅の平均値を算出し、この線幅の平均値をコピー画像に形成された細線の線幅とした。このとき、転写不良などで100μmに満たない線幅はカウントせず、線幅の平均値を算出する際に100μm未満である線幅の値は用いなかった。コピー画像に形成された細線の線幅を、オリジナル画像の線幅である100μmで除し、得られた値を100倍したものを細線再現性の値とした。細線再現性の値が100に近いほど、細線の再現性がよく、画像再現性に優れ、解像性に優れるので、画像再現性が良好であることを示す。
【0246】
○:良好。細線再現性の値が100以上105未満である。
△:可。細線再現性の値が105以上110未満である。
×:不良。細線再現性の値が110以上である。
【0247】
〔クリーニング性〕
上記の画像再現性で用いたハーフトーン画像を出力し、潜像のあった付近のクリーニング後の感光体表面を光学顕微鏡で観察した。判定は以下の基準で行った。
○:良好。残留トナー粒子が確認できない。
△:可。残留トナー粒子が僅かに確認できる。
×:不良。残留トナー粒子が散見される。
【0248】
〔定着性〕
未定着状態でのべた画像部における記録用紙へのトナーの付着量が0.3mg/cmになるように調整し、上述の画像再現性の評価方法と同様にして、画像濃度が0.3であり、直径が5mmであるハーフトーン画像の代わりに、縦20mm、横50mmの長方形状のシアン色べた画像部を含むサンプル画像を形成し、これを評価用画像とした。外部定着器の定着ローラ温度をモニタしながら定着ローラと加圧ローラとの間に未定着画像を形成した記録用紙を通し、非オフセット温度から5℃刻みで定着ローラ温度を上げていき、初めてオフセットが発生する温度をホットオフセット発生温度とした。また外部定着器の定着ローラ温度をモニタしながら定着ローラと加圧ローラとの間に未定着画像を形成した記録用紙を通し、非オフセット温度から5℃刻みで定着ローラ温度を下げていき、初めてオフセットが発生する温度をコールドオフセット発生温度とした。ホットオフセットまたはコールドオフセットの発生の有無は、前記評価用画像を用いて判断した。ホットオフセットとコールドオフセットとの間の温度の幅を定着可能温度幅とし、定着可能温度幅でトナーの定着性を評価した。
定着性を以下の評価基準に基づいて評価した。
○:良好。定着可能温度幅が80℃を超える。
△:可。定着可能温度幅が50℃を超え、80℃以下である。
×:不良。定着可能温度幅が50℃以下である。
【0249】
〔耐ブロッキング性評価〕
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたトナーで作製した湿式現像剤を10mLのサンプル管へ5g入れ、50℃、95%RH条件下で18時間放置し、その後、目視にてトナーの凝集の有無を観察し、耐ブロッキング性を評価した。
耐ブロッキング性は以下の評価基準に基づいて評価した。
○:良好。トナーの凝集なし。
×:不可。トナーの凝集あり。
【0250】
〔定着強度〕
分光光度計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用いて、上記の定着性試験の評価用画像と同じ方法で得られた評価用画像のべた画像部の反射率濃度を画像濃度として測定し、これを粘着テープ貼付け前の画像濃度とした。次いで、評価用画像のべた画像部に粘着テープを貼付けた後、粘着テープを剥離し、粘着テープが貼付けられていた部分の画像濃度を前述の分光光度計によって測定し、これを粘着テープ剥離後の画像濃度とした。測定結果の値を用い、下記式(4)に基づいて、粘着テープ貼付け前の画像濃度に対する粘着テープ剥離後の画像濃度の比率をトナー残存率として求めた。
(トナー残存率)=(テープ剥離後の画像濃度)/(テープ貼付け前の画像濃度)
…(4)
【0251】
求めたトナー残存率を評価指標として用い、以下の評価基準に基づいて定着強度を評価した。
○:良好。トナー残存率が0.80以上である。
△:可。トナー残存率が0.60以上0.80未満である。
×:不良。トナー残存率が0.60未満である。
【0252】
〔転写性〕
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたトナーで作製した湿式現像剤を用いて転写性を評価した。転写性は、転写効率を用いて評価した。転写効率は、1次転写において、感光体ドラム表面のトナー量に対する感光体ドラム表面から中間転写ベルトに転写するトナー量の割合である。転写前の感光体ドラム表面のトナー量は、溶媒が完全に乾燥した状態で帯電量測定装置(商品名:210HS−2A、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて感光体ドラム表面のトナーを吸引し、この吸引したトナーの量を測定することによって得た。また中間転写ベルトに転写されたトナー量も、同様にして得た。
転写効率は、下記式(5)によって算出した。
転写効率〔%〕=(中間転写ベルトに転写されたトナー量
/転写前の感光体ドラム表面のトナー量)×100 …(5)
【0253】
評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。転写効率が98%以上である。
○:良好。転写効率が95%以上98%未満である。
△:実使用上問題なし。転写効率が90%以上95%未満である。
×:不良。転写効率が90%未満である。
【0254】
〔総合評価〕
上述の評価の評価結果に基づき、本発明の湿式トナーの総合評価を行った。
総合評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良好。全ての評価結果が○である。
○:良好。△の評価結果が2つ未満であり、かつ×の評価結果がない。
△:可。△の評価結果が2つ以上であり、かつ×の評価結果がない。
×:不良。×の評価結果がある。
【0255】
実施例1〜5および比較例1〜5で得られたトナーの評価結果および総合評価結果を表2に示す。
【0256】
【表2】

【0257】
実施例6および比較例6で得られたトナーを含む2成分現像剤をそれぞれ用いて、トナー飛散、感光体フィルミング、画像再現性、定着性、定着強度および転写性を下記の方法で評価した。
【0258】
〔トナー飛散〕
カラー複写機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)の現像槽に実施例6および比較例6,7で得られたトナーを含む2成分現像剤をそれぞれ充填し、温度35℃、相対湿度80%の高温高湿環境中で3時間現像槽を空転させた。空転前の2成分現像剤中のトナー濃度と空転後の2成分現像剤中のトナー濃度との差が小さいほど、トナー飛散がなく良好であると判断した。空転前後のトナー濃度の差の指標としてトナー濃度差を用い、トナー濃度差は、下記式(6)を用いて算出した。
トナー濃度差(%)={(空転前のトナー濃度−空転後のトナー濃度)
/空転前のトナー濃度}×100 …(6)
【0259】
評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。トナー濃度差が0.5%未満である
○:良好。トナー濃度差が0.5%以上1.0%未満である。
△:可。トナー濃度差が1.0%以上1.5%未満である。
×:不良。トナー濃度差が1.5%以上である。
【0260】
〔感光体フィルミング〕
前記カラー複写機に、実施例6および比較例6,7で得られたトナーを含む2成分現像剤をそれぞれ充填して、現像ローラへのトナー付着量を0.6mg/cm〜0.7mg/cmとして、記録媒体に形成される未定着トナー画像の単色ソリッド部におけるトナー付着量を0.5mg/cmに調整し、各トナー単色で、画像ソリッド部および文字部を含む原稿濃度5%の評価チャートを記録媒体10000枚に形成する連続実写テストを行なった。10000枚の連続実写テスト後、現像ローラおよび感光体部材の長手方向において、実際に使用される長さに相当するソリッド画像を出力させ、得られたソリッド画像を目視によって観察し、ソリッド画像への筋またはフィルミング痕の発生の有無を判断することによって、感光体へのフィルミングを評価した。評価基準は次のとおりである。
【0261】
○:良好。ソリッド画像への筋および感光体表面のフィルミング痕がない。
△:可。ソリッド画像への筋はないが、感光体表面にフィルミング痕が確認される。
×:不良。ソリッド画像への筋および感光体表面にフィルミング痕が確認される。
【0262】
〔画像再現性〕
前記カラー複写機に、実施例6および比較例6,7で得られたトナーを含む2成分現像剤をそれぞれ充填し、画像濃度が0.3であり、直径が5mmであるハーフトーン画像を画像濃度0.3以上0.5以下で複写できる条件において、線幅が正確に100μmである細線のオリジナル画像が形成されている原稿を記録媒体に複写し、得られたコピー画像を測定サンプルとした。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)によって測定される光学反射濃度である。
【0263】
この測定サンプルに形成された細線を粒子アナライザ(商品名:ルーゼックス450、株式会社ニレコ製)によって100倍に拡大し、100倍に拡大された細線が映し出されたモニタ画像から、インジケータによって、コピー画像に形成された細線の線幅を測定した。
【0264】
コピー画像に形成された細線には凹凸があり、その細線の線幅は測定位置によって異なるので、複数の測定位置において線幅を測定して、線幅の平均値を算出し、この線幅の平均値をコピー画像に形成された細線の線幅とした。このとき、転写不良などで100μmに満たない線幅はカウントせず、線幅の平均値を算出する際に100μm未満である線幅の値は用いなかった。コピー画像に形成された細線の線幅を、オリジナル画像の線幅である100μmで除し、得られた値を100倍したものを細線再現性の値とした。細線再現性の値が100に近いほど、細線の再現性がよく、画像再現性に優れ、解像性に優れるので、画像再現性が良好であることを示す。
画像再現性を以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:非常に良好。細線再現性の値が100以上105未満である。
○:良好。細線再現性の値が105以上115未満である。
△:可。細線再現性の値が115以上125未満である。
×:不良。細線再現性の値が125以上である。
【0265】
〔定着性〕
未定着状態でのべた画像部における記録用紙へのトナーの付着量が0.3mg/cmになるように調整し、上述の画像再現性の評価方法と同様にして、画像濃度が0.3であり、直径が5mmであるハーフトーン画像の代わりに、縦20mm、横50mmの長方形状のシアン色べた画像部を含むサンプル画像を形成し、これを評価用画像とした。外部定着器の定着ローラ温度をモニタしながら定着ローラと加圧ローラとの間に未定着画像を形成した記録用紙を通し、非オフセット温度から5℃刻みで定着ローラ温度を上げていき、初めてオフセットが発生する温度をホットオフセット発生温度とした。また外部定着器の定着ローラ温度をモニタしながら定着ローラと加圧ローラとの間に未定着画像を形成した記録用紙を通し、非オフセット温度から5℃刻みで定着ローラ温度を下げていき、初めてオフセットが発生する温度をコールドオフセット発生温度とした。ホットオフセットまたはコールドオフセットの発生の有無は、前記評価用画像を用いて判断した。ホットオフセットとコールドオフセットとの間の温度の幅を定着可能温度幅とし、定着可能温度幅でトナーの定着性を評価した。
定着性を以下の評価基準に基づいて評価した。
○:良好。定着可能温度幅が80℃を超える。
△:可。定着可能温度幅が50℃を超え、80℃以下である。
×:不良。定着可能温度幅が50℃以下である。
【0266】
〔定着強度〕
分光光度計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用いて、上記の定着性試験の評価用画像と同じ方法で得られた評価用画像のべた画像部の反射率濃度を画像濃度として測定し、これを粘着テープ貼付け前の画像濃度とした。次いで、評価用画像のべた画像部に粘着テープを貼付けた後、粘着テープを剥離し、粘着テープが貼付けられていた部分の画像濃度を前述の分光光度計によって測定し、これを粘着テープ剥離後の画像濃度とした。測定結果の値を用い、下記式(4)に基づいて、粘着テープ貼付け前の画像濃度に対する粘着テープ剥離後の画像濃度の比をトナー残存率として求めた。
(トナー残存率)=(テープ剥離後の画像濃度)/(テープ貼付け前の画像濃度)
…(4)
【0267】
求めたトナー残存率を評価指標として用い、以下の評価基準に基づいて定着強度を評価した。
○:良好。トナー残存率が0.80以上である。
△:可。トナー残存率が0.60以上0.80未満である。
×:不良。トナー残存率が0.60未満である。
【0268】
〔転写性〕
実施例6および比較例6,7で得られたトナーを含む2成分現像剤を用いて転写性を評価した。転写性の評価には、転写効率を用いた。転写効率は、1次転写において、感光体ドラム表面のトナー量に対する感光体ドラム表面から中間転写ベルトに転写するトナー量の割合である。転写前の感光体ドラム表面のトナー量は、帯電量測定装置(商品名:210HS−2A、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて吸引し、この吸引したトナーの量を測定することによって得た。また中間転写ベルトに転写されたトナー量も、同様にして得た。
転写効率は、下記式(5)によって算出した。
転写効率〔%〕=(中間転写ベルトに転写されたトナー量
/転写前の感光体ドラム表面のトナー量)×100 …(5)
【0269】
評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。転写効率が98%以上である。
○:良好。転写効率が95%以上98%未満である。
△:実使用上問題なし。転写効率が90%以上95%未満である。
×:不良。転写効率が90%未満である。
【0270】
〔総合評価〕
総合評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良好。トナー飛散、感光体フィルミング、画像再現性、定着性、定着強度および転写性の評価結果に△および×がない。
○:良好。トナー飛散、感光体フィルミング、画像再現性、定着性、定着強度および転写性の評価結果に×がなく、△が1個である。
△:可。トナー飛散、感光体フィルミング、画像再現性、定着性、定着強度および転写性の評価結果に×がなく、△が2個以上である。
×:不良。トナー飛散、感光体フィルミング、画像再現性、定着性、定着強度および転写性の評価結果に少なくとも1つ×がある。
【0271】
実施例6および比較例6,7で得られたトナーの評価結果および総合評価結果を表3に示す。
【0272】
【表3】

【0273】
表1に示すように、本発明の非球形粒子は、形状が非球形であり、粒度分布が狭く、粒子径が3μm以下の粒子を得ることができる。
【0274】
本発明の非球形粒子を含む本発明のトナーは、表2および表3に示すように、高画質な画像を安定して形成することができる。また、乾式トナーとして用いる場合、トナー飛散を抑制できるので、人体への悪影響を防止できる。
【0275】
実施例4は、結着樹脂のガラス転移温度Tgが低く、重量平均分子量が小さいので、定着性および定着強度が少し低下した。
【0276】
比較例1は、トナー粒子の粒子径が比較的大きいので、画像再現性が低下した。特許文献1の非球形粒子に該当する比較例2は、粒子径が小さく、トナー粒子の形状が比較的丸めなので、クリーニング性が低下した。比較例3は、トナー粒子の形状が比較的いびつなので、現像槽内でトナー粒子の微粉が発生し、画像再現性が低下した。比較例4のトナーは、凝集工程t6での設定温度が他の実施例および比較例より低いが、結着樹脂のガラス転移温度Tgが低く、重量平均分子量が小さいので、比較的丸めの粒子が製造され、クリーニング性が低下した。また結着樹脂のガラス転移温度Tgが低く、重量平均分子量が小さいので、定着性、耐ブロッキング性および定着強度が不良となった。比較例5のトナーは、凝集工程t6での設定温度が他の実施例および比較例より高いが、結着樹脂のガラス転移温度Tgが高く、重量平均分子量が大きいので、比較的いびつな粒子が製造され、転写不良が発生し、画像再現性が低下した。また結着樹脂のガラス転移温度Tgが高く、重量平均分子量が大きいので、定着性および定着強度が不良となった。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】本発明の第5Aの実施形態である乾式プロセスの画像形成装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。
【図2】本発明の第4の実施形態である現像装置14の構成を模式的に示す概略断面図である。
【図3】本発明の第5Bの実施形態である湿式プロセスの画像形成装置201の構成を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0278】
1 乾式プロセスの画像形成装置
2 トナー像形成手段
3 転写手段
4 定着手段
5 記録材供給手段
6 排出手段
201 湿式プロセスの画像形成装置
211 感光体ドラム
212 帯電装置
202 トナー像形成手段
214 現像装置
203 転写装置
215 クリーニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径が0.1μm以上3μm以下であり、形状係数SF−1が125以上145以下であり、形状係数SF−2が115以上140以下であることを特徴とする非球形粒子。
【請求項2】
形状係数SF−1が130以上140以下であり、かつ形状係数SF−2が120以上130以下であることを特徴とする請求項1に記載の非球形粒子。
【請求項3】
少なくとも樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の非球形粒子。
【請求項4】
少なくとも着色剤を含むことを特徴とする請求項3に記載の非球形粒子。
【請求項5】
請求項3または4に記載の非球形粒子を含むことを特徴とするトナー。
【請求項6】
樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上70℃以下であり、重量平均分子量が10,000以上300,000以下であることを特徴とする請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記非球形粒子が離型剤を含むことを特徴とする請求項5または6に記載のトナー。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1つに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の非球形粒子を凝集させて得られるトナーを含む乾式の現像剤であることを特徴とする現像剤。
【請求項10】
湿式の現像剤であることを特徴とする請求項8に記載の現像剤。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1つに記載の現像剤を用いて、像担持体に形成される潜像を現像してトナー像を形成することを特徴とする現像装置。
【請求項12】
潜像が形成される像担持体と、
像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
請求項11に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−249580(P2009−249580A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101965(P2008−101965)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】