説明

非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物

【課題】非粘着性、低摩擦性のフッ素ゴム組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を達成するため、3元系フッ素ゴム100重量部に対し、受酸剤として、酸化亜鉛2〜10重量部および酸化マグネシウム1〜5重量部を配合したことを特徴とする。さらに前記3元系フッ素ゴムがフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン−4フッ化エチレンであることを特徴とし、好ましくは酸化亜鉛は前記3元系フッ素ゴム100重量部に対して4〜8重量部、酸化マグネシウムは2〜4重量部配合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ゴムは圧縮永久歪性、耐熱性、耐薬品性が良好で、種々の分野で用いられており、ハードディスクのディスクドライバーを覆うガスケットあるいはプリント配線シールに用いられるシールコネクタ、O−リング等のシール材、自動車用部品などの用途が知られている。
【0003】
フッ素ゴムは、一般に架橋時にフッ素ゴム表面にカルボニル基が酸化反応によって生じ、このため粘着性が大きいという欠点がある。このため、たとえばバルブのシール材などに使用する場合には、ゴム表面に結合力を抑制する表面処理(非粘着層を形成する)を行なうのが一般的である。
【0004】
しかしながら、このような表面処理は、耐久性の観点で欠点がある。
【特許文献1】特開2003−301072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の欠点を解決することを課題とする。すなわちフッ素ゴム単独の非粘着性、低摩擦性のフッ素ゴム組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明による非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物は、3元系フッ素ゴム100重量部に対し、受酸剤として、酸化亜鉛2〜10重量部および酸化マグネシウム1〜5重量部を配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物によれば、上述のようなフッ素ゴムは、粘着性及び摩擦係数を低減できるという利点を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物は、前述のように3元系フッ素ゴム100重量部に対し、受酸剤として、酸化亜鉛2〜10重量部および酸化マグネシウム1〜5重量部を配合したことを特徴としている。
【0009】
本発明による3元系フッ素ゴムとしては、たとえばフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン−4フッ化エチレン等を挙げることができ、ポリオール架橋のものが好ましい。3元系フッ素ゴムは圧縮永久歪性、耐熱性、耐薬品性が優れており、O−リングなどのシール材として最適である。
【0010】
本発明においては、受酸剤として酸化亜鉛と酸化マグネシウムを配合している。受酸剤はポリオール架橋時に発生するフッ化水素を吸収するために使用され、ポリオール架橋の場合には必須の成分である。従来はこのような受酸剤として、水酸化カルシウムと酸化マグネシウムを使用していた。本発明においては水酸化カルシウムに代わって酸化亜鉛を使用している。
【0011】
このような酸化亜鉛はフッ素ゴム100重量部に対して、2〜10重量部添加される。この範囲を逸脱すると非粘着性及び摩擦係数の低減が実現できない恐れがある。好ましくは4〜8重量部である。
【0012】
この酸化亜鉛とともに使用される酸化マグネシウムは、フッ素ゴム100重量部に対し1〜5重量部、好ましくは2〜4重量部、さらに好ましくは3重量部前後である。酸化マグネシウムは酸化亜鉛と協働して非粘着性の改善及び摩擦係数の低減を行うが、この範囲を逸脱すると、同様に非粘着性及び摩擦係数の低減が実現できない恐れがある。
【0013】
本発明による非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物は、好ましくは芳香族ポリオールなどのようなポリオール系加硫剤を含み、さらに従来この種のフッ素ゴムに含まれる配合剤を配合することが可能である。たとえば4級オニウム塩などの加硫促進剤、高級脂肪酸類、天然ワックス類などの加工助剤(フッ素ゴム100重量部に対し2重量部以下)、カーボンブラック、硫酸バリウム、シリカ、珪藻土、タルクなどの充填剤(フッ素ゴム100重量部に対し60重量部以下)、滑剤などを添加することができる。
【実施例】
【0014】
実施例1
フッ素ゴム(ダイエル G−671;商標名) 100重量部
酸化亜鉛 6重量部
酸化マグネシウム 3重量部
カーボンブラック(N990;商標名) 5重量部
滑剤(ストラクトールWS280;商標名) 0.3重量部

実施例2
フッ素ゴム(ダイエル G−671;商標名) 100重量部
酸化亜鉛 4重量部
酸化マグネシウム 3重量部
カーボンブラック(N990;商標名) 5重量部
滑剤(ストラクトールWS280;商標名) 0.3重量部

実施例3
フッ素ゴム(ダイエル G−671;商標名) 100重量部
酸化亜鉛 8重量部
酸化マグネシウム 3重量部
カーボンブラック(N990;商標名) 5重量部
滑剤(ストラクトールWS280;商標名) 0.3重量部

比較例1
フッ素ゴム(ダイエル G−671;商標名) 100重量部
水酸化カルシウム 6重量部
酸化マグネシウム 3重量部
カーボンブラック(N990;商標名) 5重量部
滑剤(ストラクトールWS280;商標名) 0.3重量部

比較例2
フッ素ゴム(ダイエル G−671;商標名) 100重量部
水酸化カルシウム 4重量部
酸化マグネシウム 3重量部
カーボンブラック(N990;商標名) 5重量部
滑剤(ストラクトールWS280;商標名) 0.3重量部

比較例3
フッ素ゴム(ダイエル G−671;商標名) 100重量部
水酸化カルシウム 8重量部
酸化マグネシウム 3重量部
カーボンブラック(N990;商標名) 5重量部
滑剤(ストラクトールWS280;商標名) 0.3重量部

上述のダイエル G−671中には、ポリオール系架橋剤が含まれている。上記の配合のフッ素ゴム組成物を一次加硫180℃、10分、二次加硫230℃、16時間行って架橋させ、フッ素ゴムを製造した。このようなフッ素ゴムの物性を測定した結果を、下記の表1に示す。
表1
【0015】
【表1】

次に実施例1及び比較例1の摩擦状態を測定した。測定は、株式会社レスカ製の摩擦摩耗試験機FPR−2100を使用して行った。すなわち試料ゴム片を用意し、荷重50gで前記ゴム試料片に回転半径3.0mmの円を速度15rpmで描かせ、測定時間3600秒で摩擦係数の測定を行った。
【0016】
結果を図1に示す。図1より明らかなように、本発明によるフッ素ゴムは、比較例1に比較して1/6程度低くなっており、著しく改良された。
【0017】
次に、実施例2,実施例3,比較例2及び比較例3として上記の組成のフッ素ゴム組成物を作製し、実施例1と同様な条件で加硫してフッ素ゴムを製造した。
【0018】
上述の実施例1から3及び比較例1から3の試料片を使用して張り付き状態を測定した。
【0019】
測定法は、株式会社レスカ製のタッキング試験機TAC−IIを使用して行った。すなわち、試料ゴム片を100gfの荷重で荷重時間3秒間押し付け、600mm/分の速度で引き離した。試料の厚さは2mm、測定時の温度は23℃であった。試料数は5個である。結果を下記の表2及び表3に示す。
表2
【0020】
【表2】

表3
【0021】
【表3】

本発明によれば、張り付き力は比較例の2桁以上低くなっており、良好な非粘着性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物によれば、上述のようなフッ素ゴムの特性を損なうことなく、粘着性及び摩擦係数を低減できるという利点を生じる。特に摺動用のO−リングに最適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物、比較例1のフッ素ゴム組成物によるフッ素ゴムの摩擦係数を測定したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3元系フッ素ゴム100重量部に対し、受酸剤として、酸化亜鉛2〜10重量部および酸化マグネシウム1〜5重量部を配合したことを特徴とする非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物。
【請求項2】
前記3元系フッ素ゴムがフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン−4フッ化エチレンであることを特徴とする請求項1記載の非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物。
【請求項3】
酸化亜鉛は前記3元系フッ素ゴム100重量部に対して4〜8重量部、酸化マグネシウムは2〜4重量部配合される請求項1または2記載の非粘着性・低摩擦性フッ素ゴム組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284608(P2007−284608A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115452(P2006−115452)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】