説明

面状照明装置、及びそれを用いた表示装置

【課題】被照明体である表示パネルの画面上に黒線が視認される現象を抑制し、優れた表示品位を達成可能な面状照明装置及びそれを用いた表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】表示パネル30を照明するための面状照明装置10は、導光板12の互いに対向する2つの入光面13、15に沿って配置され、交互に点灯される第1及び第2の光源17、18と、導光板12の一主面である出射面19側に配置される両面プリズムシート14とを備えるとともに、両面プリズムシート14と表示パネル30との間に、両面プリズムシート14からの出射光の配光分布における正面輝度の最大輝度に対する割合を増大させるための、拡散シート22が配置されており、面状照明装置10と表示パネル30とから表示装置1が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライト、特に、裸眼3D表示システムに用いられる液晶表示装置用のバックライトとして好適な面状照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、観察者が、眼鏡等の専用の器具を使用することなく、立体(3D)画像を視認することが可能な裸眼3D表示装置が注目されている。従来、このような裸眼3D表示装置において、液晶パネルに表示される左眼用画像及び右眼用画像を、バックライトからの照明光の配光制御によって、それぞれ左眼のみ及び右眼のみに供給し、それによって、裸眼3D表示を実現する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような表示装置110は、図3に示すように、液晶パネル120、液晶パネル120に光を供給するバックライト130、液晶パネル120とバックライト130との間に配置された両面プリズムシート140を含む。バックライト130は、導光板125と、導光板125の第1の光入力面131に配置された右眼用画像固体光源132と、第2の光入力面133に配置された左眼用画像固体光源134を含む。また、導光板125の裏面136には、その全面に光路変更手段としてリニアプリズムが形成されている。
【0004】
両面プリズムシート140は、導光板125の光出力面135側の面に、第1、第2の光入力面131、133と略平行に延びる三角プリズム列を備え、液晶パネル120側の面に、第1、第2の光入力面131、133と略平行に延びる円筒レンズ列を備えており、この構成をもって、第1の光入力面131から導光板125に入射して光出力面135から出射した光の方向を、観察者の右眼101b方向に変換し、第2の光入力面133から導光板125に入射して光出力面135から出射した光の方向を、観察者の左眼101a方向に変換するように機能する。
【0005】
そして、表示装置110は、液晶パネル120に右眼用画像と左眼用画像を交互に表示するとともに、右眼用画像の表示時には、右眼用画像固体光源132を点灯(同時に、左眼用画像固体光源134を消灯)し、左眼用画像の表示時には、左眼用画像固体光源134を点灯(同時に、右眼用画像固体光源132を消灯)することによって、観察者の右眼101b及び左眼101aに、それぞれ右眼用画像及び左眼用画像を選択的に供給するものである。尚、表示システム110は、このような動作を可能にするための同期駆動素子150及び画像ソース160を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−541020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、本発明者等の研究により、図3に示す表示装置110のような裸眼3D表示装置には、画面に対する視覚者の視点が移動すると、両面プリズムシートに形成されたプリズム列の稜線に平行な黒線が、画面上を移動するように視認される現象が発生するという問題があることが分かった。特に、このような裸眼3D表示装置をポータブルゲーム機器や携帯情報端末等の携帯型電子機器の表示装置として用いた場合、視覚者の手に保持された電子機器の揺れ(平行移動及び回転)によって、画面に対する視覚者の視点の移動が助長されるため、このような黒線の視認を抑制することは、画像の表示品位を向上させる上で重要な課題となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、被照明体である表示パネルの画面上に黒線が視認される現象を抑制し、優れた表示品位を達成可能な面状照明装置及びそれを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0010】
(1)表示パネルを照明するための面状照明装置において、互いに対向する2つの側端面をそれぞれ入光面とし、互いに対向する2つの主面のいずれか一方を出射面とする導光板と、該導光板の2つの入光面に沿ってそれぞれ配置され、交互に点灯される第1及び第2の光源と、前記導光板の出射面側に配置される両面プリズムシートとを備え、前記両面プリズムシートと前記表示パネルとの間に、拡散シートが配置されていることを特徴とする面状照明装置(請求項1)。
【0011】
本項に記載の面状照明装置によれば、面状照明装置の被照明体である表示パネルの視覚者の視点が画面に対して移動した場合に、画面上に黒線が視認される現象が抑制され、本項に記載の面状照明装置を使用した表示装置において、その表示パネルに表示される画像の表示品位を向上させることが可能となる。
【0012】
(2)(1)項に記載の面状照明装置において、前記第1及び第2の光源をそれぞれ独立に点灯させたときの、前記拡散シートからの出射光の配光分布における前記拡散シートの前記表示パネル側の主面の法線方向の輝度の、前記配光分布における最大輝度に対する割合の和は、80%以上であることを特徴とする面状照明装置(請求項2)。
【0013】
本項に記載の面状照明装置において、好ましくは、前記第1及び第2の光源をそれぞれ独立に点灯させたときの、前記拡散シートからの出射項の配光分布における前記拡散シートの前記表示パネル側の主面の法線方向の輝度の、前記配光分布における最大輝度に対する割合は、それぞれ40%以上である。
【0014】
(3)(1)項に記載の面状照明装置において、前記拡散シートのヘイズ値は2%以上であることを特徴とする面状照明装置(請求項3)。
【0015】
(2)及び(3)項に記載の面状照明装置によれば、上記黒線が視認される現象を、より効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載の面状照明装置において、前記拡散シートのヘイズ値は10%以下であることを特徴とする面状照明装置(請求項4)。
【0017】
本項に記載の面状照明装置によれば、面状照明装置のクロストーク特性を良好に維持しつつ、上記黒線が視認される現象を抑制することが可能となる。
【0018】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載の面状照明装置において、前記両面プリズムシートは、1方向に延びるプリズムを備えており、前記拡散シートは、前記プリズムが延びる方向と直交する方向に光を拡散し、かつ、前記プリズムが延びる方向には光を拡散させないように構成されていることを特徴とする面状照明装置(請求項5)。
【0019】
本項に記載の面状照明装置によれば、上記黒線が視認される現象を抑制するために必要なヘイズ値の下限が低減し、かつ、クロストーク特性を良好に維持するために必要なヘイズ値の上限が増大することにより、本発明に係る面状照明装置に適用可能な拡散シートのヘイズ値の範囲を、拡大することが可能となる。
【0020】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載の面状照明装置と、表示パネルとを備えた表示装置(請求項6)。
本項に記載の表示装置によれば、面状照明装置の被照明体である表示パネルの視覚者の視点が画面に対して移動した場合に、画面上に黒線が視認される現象が抑制されるため、表示パネルに表示される画像の表示品位を向上させることが可能となる。
【0021】
(7)(6)項に記載の表示装置において、前記拡散シートは、前記表示パネルの裏面に固着されていることを特徴とする表示装置(請求項7)。
本項に記載の表示装置によれば、拡散シートと表示パネルとの間に空気層が介在しないことにより、拡散シートと空気層との界面、及び、表示パネルと空気層との界面における反射損失を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る面状照明装置は、以上のように構成したことにより、表示パネルの画面上に黒線が視認される現象を発生させることなく、優れた表示品位を達成可能な面状照明装置及びそれを用いた表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態における表示装置の要部を分解して示す斜視図である。
【図2】図1に示す表示装置で使用される面状照明装置において、両面プリズムシートからの出射光の輝度角分布の典型的な例を示すグラフである。
【図3】従来の裸眼3D表示装置の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。尚、面状照明装置の全体または部分を示す各図は、いずれも説明のために特徴を強調して示す模式図であって、図示された各部分の相対的な寸法は、必ずしも実際の縮尺を反映するものではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態における表示装置1の要部を示す斜視図である。
図1に示す表示装置1は、表示パネル30と、表示パネル30を照明するための面状照明装置10とを備えており、面状照明装置10は、導光板12と、点状光源17、18とを備えるサイドライト型の面状照明装置である。導光板12は、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂材料を成形してなる平板状の導光体であり、導光板12の対向する2つの側端面(以下、入光面ともいう)13、15に沿って、第1及び第2の光源17、18が配置されている。本実施形態において、第1及び第2の光源17、18のそれぞれは、入光面13、15の長手方向に沿って配列された複数の発光ダイオードからなる。
【0026】
また、本実施形態において、表示パネル30は、典型的には、透過型の液晶表示パネルからなり、この場合、面状照明装置10は、表示パネル30のバックライトとして、表示パネルの背面34側に配置されている。表示パネル30は、視覚者が表示パネル30の表面32側から画面を臨むように構成されており、面状照明装置10からの出射光が、表示パネル30の背面34側から、図示を省略する表示領域(画面)を通過して表面32側に供給されることにより、視覚者に画像が視認される。
【0027】
表示装置1において、面状照明装置10の第1及び第2の光源17、18からそれぞれ入光面13、15を通じて導光板12へと入射した光は、導光板12の一主面である出射面19と出射面19とは反対側の面(以下、裏面ともいう)20との間で全反射を繰返しつつ、それぞれ対向する入光面15、13側へ向けて伝播し、その過程で、裏面20に設けられた光路変更手段(図示は省略する)によって、裏面20に入射した光の一部が反射され、臨界角以下の入射角でもって出射面19に到達することにより、伝播光が出射面19からの出射光として均一に取り出される。
【0028】
ここで、以下の説明において、導光板12の入光面13、15の一方から他方に向かう方向(図1において、紙面左右方向)を導光方向という。導光板12において、入光面13、15は互いに平行に対向する平面であるため、この場合、導光方向は、入光面13、15に直交する方向ともいえる。
【0029】
表示装置1において、面状照明装置10の導光板12の出射面19側には、両面プリズムシート14が配置されている。この両面プリズムシート14は、例えば、図3に示す両面プリズムシート140と同様の構成を備えるものである。但し、本発明は、両面プリズムシート14の構成によって限定されるものではなく、導光方向に直交する方向に延びるプリズムを備えて、両面プリズムシート140と同様の機能を果たす限り、そのプリズム形状の詳細等は、任意の適切な構成とすることができる。
【0030】
さらに、面状照明装置10では、両面プリズムシート14と面状照明装置10の被照明体である表示パネル30との間に、拡散シート22が配置されている。本実施形態において、拡散シート22は、好ましくは、そのヘイズ値(全透過光に対する拡散透過光の割合)が2%以上かつ10%以下となるように構成されているものである。
【0031】
尚、面状照明装置10の導光板12の裏面20側には、光学シート16が配置されている。この光学シート16は、反射シート(例えば、反射率98%以上)であってもよく、あるいは、光吸収部材を含んでなり、これによって、光学シート16に入射した光の反射(ひいては、この反射光の導光板12への入光)を防止するもの(例えば、反射率30%以下)であってもよい。
【0032】
表示装置1では、導光板12の出射面19からの出射光は、両面プリズムシート14を透過してその拡散シート22側の主面(以下、出射面ともいう)から出射し、次いで、拡散シート22を透過してその表示パネル30側の主面(同様に、以下、出射面ともいう)から出射した後、背面34側から表示パネル30に入射することになる。ここで、表示装置1において、導光板12の出射面19、両面プリズムシート14の出射面、拡散シート22の出射面、及び表示パネル30の表面32の各面の法線方向は共通(各面に垂直であって、かつ、導光板12側から表示パネル30側に向かう方向)であり、以下、この方向を正面方向ともいう。
【0033】
以上のように構成された表示装置1は、第1及び第2の光源17、18を、次のように交互に点灯することによって、図3を参照して上述した表示装置110と同様な裸眼3D表示装置して機能する。例えば、第1の光源17を右眼用光源、第2の光源18を左眼用光源とした場合、表示装置1は、表示パネル30に右眼用画像と左眼用画像とを高速に切替えつつ交互に表示し、その際、表示パネル30における画像の切替えと同期して、右眼用画像表示時には、右眼用光源17の点灯と左眼用光源18の消灯を実施し、左眼用画像表示時には、右眼用光源17の消灯と左眼用光源18の点灯を実施する。これによって、視覚者の右眼及び左眼に、それぞれ右眼用画像及び左眼用画像が選択的に供給される。
尚、図示及び説明は省略するが、表示装置1は、表示パネル30と第1及び第2の光源17、18のこのような同期駆動を実施するための任意の適切な駆動装置を備えるものである。
【0034】
次に、図2を参照して、面状照明装置12の両面プリズムシート14からの出射光の配光分布と、それに関連して、画面上に黒線が視認される現象が発生するメカニズムについて説明する。
図2は、左眼用光源18を点灯し、かつ右眼用光源17を消灯したとき(以下、左側点灯時という)、右眼用光源17を点灯し、かつ、左眼用光源18を消灯たとき(以下、右側点灯時という)、及び、左眼用光源18と右眼用光源17の両方を点灯したとき(以下、両側点灯時という)の3通りの場合について、両面プリズムシート14の出射光の、出射面の正面方向を含みかつ導光方向に平行な平面における配光分布を示したグラフである。
【0035】
図2において、横軸に示す極角は、上記平面内における正面方向からの角度であり、極角0°は正面方向、負の極角は正面方向からそれぞれの角度(の絶対値)分だけ左側(入光面15側)に傾いた方向、正の極角は、正面方向からそれぞれの角度分だけ右側(入光面13側)に傾いた方向を示す。
【0036】
図2に示すように、左側点灯時の配光分布は、正面方向から左側に傾いた方向(約−5°方向)に最大輝度(約9900[cd/m])を取る分布となり、0°方向の輝度(以下、正面輝度ともいう)は、最大輝度の3分の1程度(約3500[cd/m]にまで落ち込んでいる。右側点灯時の配光分布は、左側点灯時の配光分布と、正面方向に対して略左右対称な分布となり、両側点灯時には、左側点灯時の配光分布と右側点灯時の配光分布とが重畳された双峰性の配光分布となる。
【0037】
ここで、図3に示すような従来の表示装置110においても、その両面プリズムシート140からの出射光の配光分布は、図2に示すよう配光分布と同様のものである。そして、従来の表示装置110では、両面プリズムシート140からの出射光が、その配光分布を保ったまま液晶パネル120を透過して、液晶パネル120から出射される。この際、表示装置110の動作時には、左側点灯時と右側点灯時の配光分布が高速で切り替わるため、視覚者は、両側点灯時の配光分布に従って、画面の明るさを認識することになる。
【0038】
表示装置110では、液晶パネル120からの出射光が、このような配向分布を有することにより、上述したような左眼用画像及び右眼用画像の、それぞれ左眼及び右眼への選択的供給が行われるものの、液晶パネル120の画面に対する視覚者の視点が、設計上許容される範囲を超えてずれた場合、視点の位置に応じた画面上の特定箇所が視覚者の左眼及び/または右眼に対して正面方向を向くような角度で、視覚者が画面を臨むような状況も発生し得る。
【0039】
そして、視覚者によって認識される双峰性の配光分布では、図2に示すように、最大輝度を取る2方向の間の正面方向において輝度が極小値を取ることになり、2つの最大輝度方向から正面方向に向かって急峻に輝度が落ち込んでいる。
したがって、視覚者の視点が設計上許容される範囲を超えてずれた場合には、画面上の上記特定箇所を通る線状領域が、隣接する領域と比較して極端に輝度が低いことにより暗部(黒線)として視覚者に認識され、また、この黒線は、視覚者の視点の移動に伴う上記特定箇所の位置の変化に応じて、画面上を移動するように認識されることが考えられる。
【0040】
本発明者等は、画面上に黒線が視認される現象の発生メカニズムに関するこのような知見に基づいて鋭意研究の結果、表示装置1のように、表示パネル30と両面プリズムシート14との間に拡散シート22を配置することにより、画面上に黒線が視認される現象を効果的に抑制可能であることを見出したものである。
【0041】
これは、拡散シート22からの出射光の配光分布では、透過光の一部を拡散させる拡散シート22の作用によって、両面プリズムシート14からの出射光の配光分布と比較して、視覚者に認識される双峰性の配光分布において、最大輝度と正面輝度の差が小さくなり、また、最大輝度から正面輝度への落ち込みの急峻性も緩和されるため、視覚者の視点が画面に対して移動した場合でも、上記特定箇所が暗部として認識され難くなるためであると考えられる。但し、拡散シート22を配置した構成では、その拡散作用のクロストークへの影響について考慮することも重要であり、以下、本実施形態における表示装置1の作用効果を、拡散シート22のクロストークへの影響とともに、実測例に基づいて説明する。
【0042】
【表1】

【0043】
上表は、それぞれ異なるヘイズ値(全透過光に対する拡散透過光の割合)を有する拡散シート22を配置した表示装置のサンプルを使用して、拡散シート22からの出射光の、出射面の正面方向を含みかつ導光方向に平行な平面内の配光分布において、その比正面輝度とクロストークとを測定した結果を示す表である。
但し、上表において、サンプルS1(ヘイズ値:0%)は、拡散シート22が配置されていない従来の表示装置に相当し、サンプルS2〜S7が、拡散シート22が配置された表示装置1の構成例である。
【0044】
上表に示す比正面輝度は、右眼用光源17及び左眼用光源18をそれぞれ独立に点灯したときの、それぞれの配光分布における最大輝度に対する正面輝度の割合の和であり、具体的には、
比正面輝度[%]=[{(右側点灯時正面輝度/右側点灯時最大輝度)+(左側点灯時正面輝度/左側点灯時最大輝度)}]×100
により定義されている。この比正面輝度は、表示装置1の実際の使用時において、右眼用光源17及び左眼用光源18を高速に切替えつつ交互に点灯した際に視覚者に認識される双峰性の配光分布の、最大輝度に対する正面輝度の割合に相当する。
【0045】
また、3D表示システムにおいて、クロストークとは、右眼用画像と左眼用画像の分離が完全には行われず、右眼用光源17からの光の一部が左眼に供給され、また、左眼用光源18からの光の一部が右眼に供給される現象をいい、これが増大すれば、3D表示から立体感が失われて、3D表示画像の表示品位を損なう要因となるものである。
【0046】
上表では、このようなクロストークを、
クロストーク[%]=[{(左側点灯時右眼輝度/右側点灯時右眼輝度)+(右側点灯時左眼輝度/左側灯時左眼輝度)}/2]×100
により定義した。
但し、左側点灯時左眼輝度は、左側点灯時の左眼方向(最大輝度方向)の輝度、右側点灯時左眼輝度は、右側点灯時の同方向の輝度である。同様に、右側点灯時右眼輝度は、右側点灯時の右眼方向(最大輝度方向)の輝度、左側点灯時右眼輝度は、左側点灯時の同方向の輝度である。
【0047】
本発明者等は、サンプルS1〜S7を用いた測定及び観察により、拡散シート22を配置した場合(サンプルS2〜S7)には、配置しない場合(サンプルS1)よりも比正面輝度が大きく、拡散シート22を用いたサンプルS2〜S7では、拡散シート22を用いていないサンプルS1と比較して、画面上に黒線が視認される現象が抑制されることを確認した。
【0048】
さらに、拡散シート22を用いたサンプルS2〜S7の比較によれば、比正面輝度は、上表に示すように、拡散シート22のヘイズ値が増大するにつれて増大し、それに伴って、画面上に黒線が視認される現象の抑制効果が向上することも確認された。
特に、比正面輝度を80%以上(サンプルS3〜S7)とすることによって、仮に黒線が視認される場合でも、その見え方を、表示装置1の使用に際してほぼ無視し得る程度にまで改善することが可能であり、このような比正面輝度は、拡散シート22のヘイズ値を2%以上とすることにより達成されることが分かった。
【0049】
このように、本実施形態における表示装置1では、表示パネル30のバックライトと使用される面状照明装置10が、両面プリズムシート14と表示パネル30との間に配置された拡散シート22を備えていることによって、表示パネル30の視覚者の視点が、画面に対して(典型的には、表示パネル30の表面32に対して)移動した場合でも、画面上に黒線が視認される現象が抑制され、画像の表示品位を向上させることが可能となる。
【0050】
特に、ポータブルゲーム機器や携帯情報端末等の携帯型電子機器では、視覚者の手に保持された電子機器の揺れ(平行移動及び回転)によって、機器に装備された表示装置の画面に対する視覚者の視点の移動が助長され、黒線が視認される可能性の高い状況が比較的頻繁に発生するため、表示装置1は、このような携帯型電子機器に装備される表示装置として、有利に適用されるものである。
【0051】
さらに、表示装置1において、面状照明装置10は、2%以上のヘイズ値を有する拡散シート22を備え、拡散シート22からの出射光における比正面輝度を80%以上とすることが好ましく、これによって、表示パネル30の画面上に黒線が視認される現象を、より効果的に抑制して、画像の表示品位を一層向上させることが可能となる。
さらに、右側点灯時及び左側点灯時の配光分布の対称性の観点から、このような比正面輝度において、「右側点灯時正面輝度/右側点灯時最大輝度」、及び、「左側点灯時正面輝度/左側点灯時最大輝度」は、それぞれ40%以上であることが好ましい。
【0052】
一方、拡散シート22を用いたサンプル(サンプルS2〜S7)では、ヘイズ値が増大するにつれてクロストークも増大するため、3D表示の表示品位をクロストーク特性の観点から良好に維持するためには、拡散シート22のヘイズ値は、所定の上限を超えないことが好ましい。一般に、クロストークのこのような上限は、10%であることが知られており、上表に示すように、このようなクロストークを達成するためには、拡散シート22のヘイズ値を、10%以下(サンプルS2〜S5)とすればよいことが分かった。
【0053】
したがって、表示装置1において、面状照明装置10は、10%以下のヘイズ値を有する拡散シート22を備えることが好ましく、これによって、クロストーク特性を良好に維持することが可能となる。
さらに好ましくは、表示装置1において、面状照明装置10は、2%以上かつ10%以下のヘイズ値を有する拡散シート22を備えるものであり(サンプルS3〜S5に相当)、これによって、クロストーク特性を良好に維持しつつ、画面上に黒線が視認される現象を確実に抑制することが可能となる。
【0054】
ここで、上表にその結果示す測定では、拡散シート22として、拡散透過光の配光特性に異方性のない等方性の拡散シートが用いられた。但し、表示装置1における上述したような作用効果は、拡散シート22からの出射光の、出射面の正面方向を含みかつ導光方向に平行な面内における配光分布において、比正面輝度を増大させることにより発揮されるものであるため、拡散シート22として、導光方向(言い換えれば、両面プリズムシート14のプリズムが延びる方向と直交する方向)に光を拡散し、かつ、導光方向と直交する方向(上記プリズムが延びる方向)には光を拡散させないように構成された、異方性拡散シートを用いるものであってもよい。
【0055】
拡散シート22として、異方性拡散シートを使用した場合、拡散透過光の配光における上述したような異方性により、拡散シート22からの拡散透過光に含まれる、比正面輝度の増大に寄与しない方向に拡散される光は、同等のヘイズ値を有する等方性拡散シートを使用した場合と比較して半減することになる。したがって、拡散シート22として異方性拡散シートを使用した場合には、そのヘイズ値を1%以上とすることにより、黒線の視認を抑制する上で、等方性拡散シートのヘイズ値を2%以上とした場合と同等の作用効果を奏するものである。
【0056】
同様に、拡散シート22として、上述したような異方性拡散シートを使用した場合には、拡散シート22からの拡散透過光に含まれる、クロストークの増大に寄与する方向に拡散される光が、同等のヘイズ値を有する等方性拡散シートを使用した場合と比較して半減するため、異方性拡散シートは、そのヘイズ値20%以下とすることにより、クロストーク特性を良好に維持する上で、等方性拡散シートのヘイズ値を10%以下とした場合と、同等の作用効果を奏するものである。
【0057】
また、表示装置1において、拡散シート22は、表示パネル30の背面34に固着させて配置されるものであってもよく、その際、適切な粘着手段または接着手段を用いて、拡散シート22を表示パネル30の背面に固定するものであってもよい。この構成では、拡散シート22と表示パネル30との間に空気層が介在しないことにより、拡散シート22からの出射光が、拡散シート22の出射面と空気層との界面、及び、表示パネル30の背面34と空気層との界面において反射されることによる損失を低減することが可能となる。
【0058】
尚、面状照明装置10において、クロストークを低減させるためには、導光板12の裏面20側に配置される光学シート16を、光学シート16に入射した光の反射(ひいては、この反射光の導光板12への入光)を防止するもの(例えば、反射率30%以下)とした構成が有利であり、面状照明装置10の輝度向上のためには、光学シート16を反射シート(例えば、反射率98%以上)とした構成が有利なものである。光学シート16として、いずれの反射特性を有する光学部材を用いるかは、表示装置1に要求される仕様等に応じて、適切に選択されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1:表示装置、10:面状照明装置、12:導光板、13,15:入光面、14:両面プリズムシート、16:光学シート、17:第1の光源、18:第2の光源、19:出射面、20:裏面、22:拡散シート、30:表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを照明するための面状照明装置において、互いに対向する2つの側端面をそれぞれ入光面とし、互いに対向する2つの主面のいずれか一方を出射面とする導光板と、該導光板の2つの入光面に沿ってそれぞれ配置され、交互に点灯される第1及び第2の光源と、前記導光板の出射面側に配置される両面プリズムシートとを備え、前記両面プリズムシートと前記表示パネルとの間に、拡散シートが配置されていることを特徴とする面状照明装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の光源をそれぞれ独立に点灯させたときの、前記拡散シートからの出射光の配光分布における前記拡散シートの前記表示パネル側の主面の法線方向の輝度の、前記配光分布における最大輝度に対する割合の和は、80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の面状照明装置。
【請求項3】
前記拡散シートのヘイズ値は2%以上であることを特徴とする請求項1に記載の面状照明装置。
【請求項4】
前記拡散シートのヘイズ値は10%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の面状照明装置。
【請求項5】
前記両面プリズムシートは、1方向に延びるプリズムを備えており、前記拡散シートは、前記プリズムが延びる方向と直交する方向に光を拡散し、かつ、前記プリズムが延びる方向には光を拡散させないように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の面状照明装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の面状照明装置と、表示パネルとを備えた表示装置。
【請求項7】
前記拡散シートは、前記表示パネルの裏面に固着されていることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−84438(P2013−84438A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223354(P2011−223354)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】