説明

面発光表示盤および標識装置

【課題】小電力で作動し、高輝度で均整度の優れた面発光表示盤および標識装置を提供する。
【解決手段】面発光表示盤は、導光板の一端面に列状に配置され且つ複数の組に分割された複数の発光ダイオード(LED)10と、複数の組の各組毎にLEDを同一位相でパルス点灯し且つ各組のパルス点灯する位相をずらしてパルス点灯させるタイミングを発生するタイミング発生回路15を備えており、各組は複数のLEDを電気的に直列接続した回路を含み、各組のLEDは列状に分散して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導光板の一端面に発光ダイオード(LED)列を配置した面照明光源をもつ面発光表示盤およびこの面発光表示盤を備える標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路標識・案内標識・広告塔などに面発光表示盤が用いられており、この光源には発光ダイオード(LED)が使用されている。例えば、特許文献1に示されるように、LEDを光源とするエッジライト型のバックライトを形成した照明装置および案内表示装置が知られている。この装置は、直列に接続したLEDを択一的に選択して順次に電源に接続し点灯するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−321020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の照明装置および案内表示装置では、50cmないし1m角の寸法の面積を持つ標識について、発光効率の高いLEDを使用して照明を行っても、昼間の太陽電池による発電で夜間の全点灯を行うと、遠方から識別できるような高い輝度を持つことができない、あるいは表示面のチラツキが発生する、あるいは照度ムラ(均整度=最大照度/最小照度)が大きいなどの課題がある。
【0005】
また、これらの課題を軽減するために充分な大きさの太陽電池パネルを設置すると、面発光表示盤の面積と同程度以上の大きさの太陽電池パネルが必要となり、そのような太陽電池パネルを面発光表示盤の近くに配置すると標識などの表示に支障を生じ、コスト高になるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題にかんがみ、小電力で作動し、高輝度でちらつきの少ない、均整度の優れた面発光表示盤およびこの面発光表示盤を備える標識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の面発光表示盤は、導光板の少なくとも一端面に列状に配置され且つ複数の組に分割された複数の発光ダイオード(LED)と、複数の組の各組毎にLEDを同一位相でパルス点灯し且つ各組のパルス点灯する位相をずらしてパルス点灯させるタイミングを発生するタイミング発生回路とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記構成において、前記各組は、複数のLEDを電気的に直列接続した回路を含むことを特徴とする。
【0009】
また、各組のLEDは、列状に分散して配置することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の標識装置は、上記面発光表示盤と、太陽電池と、太陽電池の発電する電力を蓄える蓄電池と、蓄電池と太陽電池の出力を切り替える電源制御器とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成の本発明の面発光表示盤および標識装置では、LEDをパルス点灯するので、連続点灯よりもLEDの電流を上げて高輝度で発光し、発光効率を改善することができる。さらに、LEDを同一位相で点灯する複数のLEDの組に分割して各組の位相をずらせながら点灯するので、チラツキを防止して省電力が可能となる。
【0012】
また、各組は複数のLEDを電気的に直列接続した回路を含むので、制限抵抗やスイッチング素子による一灯あたりの電力損失を単独のLED駆動時よりも下げることができる。
【0013】
さらに、各組を構成するLEDを列状に分散配置しているので、他の組の点灯も重なる部分では、連続点灯と類似する輝度パターンとなり、優れた均整度を得ることができる。
【0014】
これによって、本発明の面発光表示盤はパルス点灯制御によってLEDの省電力を実現できるので、道路標識としての性能を満たし、全点灯可能な表示を小さく安価な太陽電池で表示できるようになる。さらに、本発明の標識装置は、省電力で、夜間に遠方から充分識別できるような高い輝度を持ち、表示面のチラツキが少なく、照度ムラの小さい面発光表示盤を備えるので、道路標識・案内標識・広告塔等に広く利用できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から理解されるように、本発明の面発光表示盤および標識装置では、表示面積よりも小さい安価な太陽電池パネルで全点灯でき、省電力で、夜間に遠方から充分識別できるような高い輝度を有するとともに、表示面のチラツキが少なく、照度ムラの小さい面発光表示盤を実現することができ、道路標識・案内標識・広告塔等に広く利用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る標識装置の構成図である。図1の標識装置1は、一般的な道路標識性能を満足する道路標識の例であって、夜間に発光する面発光表示盤2、太陽光を受けて発電する太陽電池3および面発光表示盤2と太陽電池3を制御する制御装置4を備えている。制御装置4は蓄電池および電気回路を内蔵する。
【0017】
図2は本発明の実施形態に係る面発光表示盤の構成図であって、面発光表示盤2の一部を図2(a)に示し、図1の面発光表示盤2のA−Aの断面を図2(b)に示す。面発光表示盤2は、LED10の光を導く導光板5、導光板5の裏面に反射機能を持つ網点6を備え、裏面には反射板7を備え、表面には拡散板8およびその上に透光性があるパターン9を備え、また側面には、発光する光を導光板5のエッジに入射するように取り付けてあるLED10と、LED10を駆動するLED駆動回路11を備えている。網点6の印刷状態はLED10に近い側で低密度とし、LED10から離れるほど高密度とし、LED10からの光がLED10からの距離によらず、ほぼ均一にパターン9を照明するようになっている。
【0018】
図3は本発明の実施形態に係る標識装置の回路構成図である。昼間に太陽光を受けて発電する太陽電池3の電力を、電源制御器13によって蓄電池12に蓄える。夜間に太陽電池3が発電しなくなると、蓄電池12の電力を、電源制御器13によって電源線17および直流・直流変換器14に供給する。直流・直流変換器14は、マイクロコンピュータなどを内蔵するタイミング発生回路15およびLED駆動回路11に所定の電圧の電源18を供給するために電源線17の電圧を所定の電圧に変換する。タイミング発生回路15が発生する信号19に従って、LED駆動回路11は所定のLED10に電流制限抵抗器20を介して電流を流してLED10を点灯する。
【0019】
図4は本発明の実施形態に係るLEDを直列接続して省電力化する技術を説明する図である。図4(a)に示すように、単独のLED10を駆動素子36によりパルス駆動する際に、電流値の増大によるLEDの破損を防止し、LED10に流れる電流を一定値IFにするために電流制限抵抗器20を用いる。LED10の点灯時にこの電流制限抵抗器20にかかる電圧電流(図の斜線部に相当)は電力損失となる。図4(b)に示すように、電源電圧をVaからVbに上げて、例えば3個のLED10を直列に接続し、各LEDに共通の電流制限抵抗器20を設けることで、LED一個あたりの抵抗による電力損失は1/3となり、点灯のための電力を節約することができる。
【0020】
図5は本発明の実施形態に係るLEDのパルス点灯するタイミングを説明する第1の図である。図5(a)および図5(b)は導光板5を正面から見た図であり、導光板5の側面に配置したLED10を丸印で示し、黒丸は点灯しているLEDを、白丸は消灯しているLEDを示す。また斜線部はLED点灯時に導光板5を照明している範囲を示す。図5(c)および図5(d)は各LEDの発光輝度を示す時間波形であり、図5(a)および図5(b)の点灯状態と対応するように時間軸の長さを調整しかつ時間軸を折り返して示している。
【0021】
図5(a)は、全LEDを周期Taでパルス幅τaの区間だけ点灯する場合の例を示す図である。図5(b)は、LEDを同一位相で点灯する3組のLED組に分割して、各組の位相遅れを周期の3分割となるように点灯制御する場合の例を示す図である。LED列のうち、LEDのNo.L1,L4,L7は繰り返し周期Tbでパルス点灯する。LEDのNo.L2,L5,L8は周期Tb/3の位相遅れで同様にパルス点灯する。LEDのNo.L3,L6(L9以下は図示省略)はさらに周期Tb/3の位相遅れでパルス点灯する。導光板面を周期Tb/3で照明し、それが残像効果範囲内のときには盤面のチラツキがなく連続点灯しているように見える。LEDの輝度Pbとパルス幅τbを調整することによって、必要な表示盤面の照度を得ることができる。
【0022】
同じ組のLEDは導光板内で同時に発光し導光板を分担して照明するので、導光板が大型化してもLEDの輝度を変えずに必要な照度を得ることができる。位相3分割で点灯する各LEDの点灯周期は、導光板が照明される周期が同じであっても、図5(a)に示す同一位相で点灯するLEDの点灯周期(Ta)の3倍にとることができるので、LED発光の効率を改善し、同じ表示盤面の照度を得るのに消費電力を低減することができる。
【0023】
同一周期で点灯させるLED組の分割数は、2組(周期の2分割)としてもよいが、電力の消費を改善する割合が低下する可能性がある。また、4組以上(周期を4分割以上)にした場合に電力消費をより改善する場合もあるが、表示盤面輝度が不足する可能性がある。最適な分割数は設計条件に応じて試験によって決定し、タイミング発生回路15に内蔵されたマイクロコンピュータなどによりプログラマブルに設定する。
【0024】
図6は本発明の実施形態に係るLEDのパルス点灯するタイミングを説明する第2の図である。4個の直列LED群を3つの組に分けて点灯させる場合の例で説明する。単純に同じ群のLEDのNo.A1〜A4、No.B1〜B4およびNo.C1〜C4(C1〜C4は図示を省略)をその順に並べて配置すると図6(a)に示す照明状態となる。このとき、導光板のLEDに近い側の任意点(△印)と、LEDから遠い側の任意点(×印)の明るさを見ると、図6(e)に示すように、両者は類似のパターンで照明されることになる。ところが、通常導光板は網点反射体の特性を調整してLEDからの距離が離れても均一な輝度で発光するように調整している。従ってこの場合、発光面内の均整度が低下する。
【0025】
LEDの光が導光板に入射するとき、板内の進行方向に拡散があり、拡散の角度によっては、遠い位置の輝度が近い位置に比べて低下し、導光板の均整度が低下してしまうことがある。図6(b)に示すように、同じ組のLEDを分散して配置しておくと、近傍の点(△印)の輝度パターンは図6(e)と同じであるが、遠方の点(×印)の輝度パターンは他の群のLEDによっても照明されるので、繰り返し周期における輝度パターンは図6(f)のようになり、連続点灯と類似する。このようなLEDの分散配置によって導光板の発光の均整度を改善することができる。なお、最適な分散配置位置は、LEDの光の広がり角度や、群・組の数に応じて図面上での検討や実験によって決定し、タイミング発生回路15に内蔵のマイクロコンピュータなどによりプログラマブルに設定する。
【0026】
次に、本発明の標識装置の実施例について説明する。
面発光表示盤2は、内寸法90×90cm、外形寸法100cm×100cm×5cm厚で、導光板5、網点6、反射板7、拡散板8およびパターン9からなる面照明光源には(株)荒川製のバランスボードを使用する。中央の導光板5は、0.2mm厚さのプラスチック板(アクリル樹脂製)であり、その両側に白色発光するLED10(日亜化学製NSPW500S−R型)を6mmピッチで一列に各144個配置し、発光した光が透明板のエッジに入射するように取り付けてある。
【0027】
図7は本発明の実施例に係るLED駆動回路を示す図である。図7の回路を1ブロックとして計4ブロック、すなわち72×4=288個のLEDを同時並行して点滅する。並列に接続するLEDのうち、上側のLED(LEDのNo.3,4,7,8・・・,71,72)は導光板5の一方の側面に、下側のLED(LEDのNo.1,2,5,6・・・,69,70)は、導光板の他方の側面に、それぞれ対角線上で同時点灯するように配置する。
【0028】
LED2個を直列に接続し、1つの群をなすLEDを、低電力のMOS型駆動用集積回路(ローム社製BA829型)に電流制限抵抗20を通して接続する。点滅信号30をクロック信号31と同期して配送し、シフトレジスタ32で1クロック毎に右方向へ転送する。シフトレジスタ32の内容をラッチ信号34によりラッチ33で保持し、点灯信号が1の場合にストロボ信号35の幅だけ駆動素子36が動作し、LEDを点灯する。即ち、クロック信号に同期して、任意のLED組数で任意の周期・パルス幅の点灯動作が可能になっている。これらLED駆動回路11の点滅信号30、クロック信号31、ラッチ信号34、ストロボ信号35の発生タイミングは設定可能なものであって、タイミング発生回路15に内蔵されたマイクロコンピュータなどにより発生し、信号19から与える。
【0029】
図8は本発明の実施例に係るLEDの配置と動作タイムチャートを示す図である。図8は、パルス繰り返し周期T1、パルス幅T2で点灯するLED群を、同一位相で点灯する4組のLEDに分割し、各組を(T1)/4の位相遅れで点灯する場合を示している。図8の上部に示した横軸はLEDの配置位置を表し、LED.Noは図7のLED.Noに対応する。タイムチャートは時間軸である。分かりやすくするために配置位置と点灯時刻が一致するように表現している。
【0030】
均整度を良好とするように直列LED群を配置する。本実施例の場合、直列2個のLEDを分散配置しなくとも、均整度=1.3が得られる。ちなみに蛍光灯を用いたバックライト表示盤の場合、使用時の均整度は3〜4程度であるから、上記均整度は極めて良い値である。
【0031】
また、パルス繰り返し周期(T1)とデューティ比DTR=T2/T1は、表示のチラツキがなく、輝度が良好となるようにタイミング発生回路15において設定する。本実施例の場合、直列接続したLEDを80mAのピーク電流で点灯し、パルス繰り返し周波数2kHz、DTR=1/18(即ちパルス幅=500μs/18=27.8μs)のとき、表示面全体に亘ってチラツキのない表示と道路標識に適する面発光表示盤上の照度120〜150ルックスを得ることができた。道路標識に最低必要な照度は63ルックス程度といわれているので、上記照度は十分な値である。
【0032】
上に述べた実施例の標識装置では、照明時の消費電力は8. 9ワットとなり、面発光表示盤よりも小さな面積の太陽電池を用いた昼間の充電で夜間に照明する電力を十分まかなうことができる。本実施例と同じ288個のLEDを同じ輝度で連続点灯させるときは37. 5ワットの電力が必要であり、本実施例ではその1/4〜1/5の消費電力となっている。
【0033】
また、照明時の照度120〜150ルックス、均整度(発光面内の最大照度と最小照度との比)=1.3の性能が得られた。30×40cmの太陽光パネルにより発電し、制御装置内の小型蓄電池に蓄えられた電力で、無日照日が2日間続いても、1日約13時間の全点灯を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る標識装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る面発光表示盤の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る標識装置の回路構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るLEDを直列接続して省電力する技術を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係るLEDのパルス点灯するタイミングを説明する第1の図である。
【図6】本発明の実施形態に係るLEDのパルス点灯するタイミングを説明する第2の図である。
【図7】本発明の実施例に係るLED駆動回路を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係るLEDの配置と動作タイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 標識装置
2 面発光表示盤
3 太陽電池
4 制御装置
5 導光板
6 網点
7 反射板
8 拡散板
9 パターン
10 LED
11 LED駆動回路
12 蓄電池
13 電源制御器
14 直流・直流変換器
15 タイミング発生回路
20 電流制限抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板の少なくとも一端面に列状に配置され且つ複数の組に分割された複数の発光ダイオードと、
該複数の組の各組毎に発光ダイオードを同一位相でパルス点灯し且つ該各組のパルス点灯する位相をずらしてパルス点灯させるタイミングを発生するタイミング発生回路とを備えることを特徴とする、面発光表示盤。
【請求項2】
前記各組は、複数の発光ダイオードを電気的に直列接続した回路を含むことを特徴とする、請求項1に記載の面発光表示盤。
【請求項3】
前記各組の発光ダイオードは、列状に分散して配置したことを特徴とする、請求項1に記載の面発光表示盤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の面発光表示盤と、太陽電池と、この太陽電池の発電する電力を蓄える蓄電池と、この蓄電池と上記太陽電池の出力を切り替える電源制御器とを備えることを特徴とする、標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−233396(P2007−233396A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68970(P2007−68970)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【分割の表示】特願2001−397128(P2001−397128)の分割
【原出願日】平成13年12月27日(2001.12.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2001年9月28日 配布の「平成13年度 電気・情報関連学会中国支部第52回連合大会 講演論文集」に発表
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】