説明

靴下の製造方法及び靴下

【課題】 熟練を要することなく容易に製造することができ、可及的に廉価に製造することができる靴下の製造方法及び靴下を提供する。
【解決手段】 伸張した状態で着用者の足の甲が露出するようになした環状の口ゴム部を編成する工程と、前記口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成する工程と、この踵部に続けて前記土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成する工程と、この土踏まず部に続けて、前記足先部になすための袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成する工程とを丸編機を用いて実施し、次いで、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成する工程を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下の製造方法、及び当該方法によって製造された靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に靴下は、適宜の緊締力を有する環状の口ゴム、着用者の足首までの寸法の筒状の身、踵、足甲及び足底からなる筒状の胴部、爪先をこの順に丸編機にて編成した後、爪先側の開口を縫合して構成されている。
【0003】
このような靴下にあっては、前述した身を踝まで達しない僅かな長さ寸法だけ編成することによって、スニカーを履いた際に当該靴下が外部から見えないようにした、所謂スニーカーソックスが開発されている。
【0004】
ところが、かかるスニーカーソックスであっても、使用者の足甲部を覆わないパンプスに適用した場合は、当該スニーカーソックスの足甲が露出してしまうため、パンプスであっても可及的に外部に露出しない靴下の開発が要求されていた。
そのため、例えば、後記する特許文献1には次のような靴下が開示されている。
【0005】
図7は、特許文献1に開示された靴下の製造手順を示すフローチャートであり、図中、80は仕掛品を、また7は製品を示している。なお、図7(A)は仕掛品80の平面図であり、図7(B)は前記(A)に示した仕掛品80の側面図であり、図7(C)は製品7の平面図である。
【0006】
図7(A)及び(B)に示した如く、丸編機を用いて開始側口部81から筒状の組織の編成を開始し、適宜位置で半回転編を行うことによって踵部73及び爪先部74を編成し、終了側口部82にて編成を終了することによって、側面視が略短寸U字筒状の仕掛品80得る。
【0007】
次に、図7(B)に示した如く、仕掛品80の所定高さ位置に設定した切断線90に沿って当該仕掛品80を切断することによって、仕掛品80の開始側口部81、終了側口部82及びU字状の内側底部を含む所定領域を除去した袋状体70を形成する。
【0008】
そして、図7(C)に示した如く、その袋状体70の開口部の縁部に弾性体を適当に伸張させた状態で環状に配置しつつ、その状態で袋状体70の開口縁部を縫製することによって口ゴム部72を形成し、製品7を得る。
【0009】
このような靴下にあっては、口ゴム部72が大きく開口しており、着用された足の外形に応じて口ゴム部72が伸張するため、使用者の足甲部が露出され、従って、パンプスを履いた場合であっても、パンプスから当該靴下が露出することが可及的に防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−140403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の靴下にあっては、仕掛品80の切断作業、及び口ゴム部72の縫製作業に多くの手間を要するという問題があった。特に、切断後に実施される後者の作業にあっては手作業で行わなければならず、また当該作業には熟練を要するので、製造コストが増大する。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、熟練を要することなく容易に製造することができ、可及的に廉価に製造することができる靴下の製造方法、及び当該方法によって製造された靴下を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る靴下の製造方法は、適宜の締め付け力を有する口ゴム部、着用者の踵を被覆する踵部、着用者の土踏まずを被覆する土踏まず部、及び着用者の足先を被覆する足先部を備え、着用された際に前記口ゴム部から着用者の甲が露出するようになした靴下を製造する方法において、伸張した状態で着用者の足の甲が露出するようになした環状の口ゴム部を編成する口ゴム部編成工程と、前記口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成する踵部編成工程と、この踵部に続けて前記土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成する工程と、この土踏まず部に続けて前記足先部になすべく、開放された縁部を具備する袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成する足先仕掛部編成工程とを丸編機を用いて実施し、次いで、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成する工程を実施することを特徴とする。
【0014】
本発明の靴下の製造方法にあっては、口ゴム部編成工程を実施して、伸張した状態で着用者の足の甲が露出するようになした環状の口ゴム部を編成し、続いて踵部編成工程を実施して、前記口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成する。踵部の深さ寸法は対象とする靴の深さに応じて定めることができ、着用者の踵の全領域を覆わない深さ寸法であってもよい。
【0015】
このように口ゴム部から連続して踵部を編成することによって、対象とする靴が浅いものであっても、靴の踵部分の上縁から、靴下の口ゴム部、踵部等が突出することが回避される。
【0016】
次に、前記踵部に続けて土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成する工程を実施する。これによって、縦断面視が略U字状の土踏まず部が形成される。
また、土踏まず部の深さ寸法は、縦断面視が略U字状となる土踏まず部の幅寸法によって調整することができ、対象とする靴の深さに応じて定めればよい。
【0017】
更に、前記土踏まず部に続けて、着用者の足先を被覆する足先部になすべく、開放された縁部を具備する袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成する足先仕掛部編成工程を実施する。
これら各工程は丸編機を用いて実施する。
そして、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成する工程を実施することによって靴下を得る。
【0018】
このように本発明の靴下の製造方法では、口ゴム部以外のいずれの部分にあっても環状又は筒状の編成組織は存在せず、従って切断操作が不要なため、一台の丸編機によって口ゴム部を含む全領域を機械的に編成することができる。そのため、靴下の製造に熟練を要することなく容易に実施することができ、靴下を可及的廉価に製造することができる。
【0019】
なお、口ゴム部の第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合する場合も、これらの部分が環状の口部になっているため、靴下の製造で一般的に用いられている縫合機を用いることができ、かかる縫合作業も機械的に行うことができるので、熟練を要することなく容易に実施することができる。
【0020】
(2)本発明に係る靴下の製造方法は必要に応じて、前記第1部分として、口ゴム部の周方向の半分程度の部分に設定し、前記踵部編成工程は、口ゴム部の前記第1部分から延設され、着用者の踵の上位部分を被覆する踵上部を編成する工程と、該踵上部から延設され、前記第1部分の寸法より短い幅寸法を有し、着用者の踵の角部分を被覆する踵角部を編成する工程と、該踵角部から延設され、着用者の踵の底部分を被覆する踵底部を編成する工程とを実施することを特徴とする。
【0021】
本発明の靴下の製造方法にあっては、前述した第1部分として、口ゴム部の周方向の半分程度の部分に設定し、踵部編成工程を構成する踵上部編成工程によって、口ゴム部の前記第1部分から延設され、着用者の踵の上位部分を被覆する踵上部が編成される。
【0022】
次に、踵上部から延設され、前記第1部分の寸法より短い幅寸法を有し、着用者の踵の角部分を被覆する踵角部を編成し、該踵角部から延設され、着用者の踵の底部分を被覆する踵底部を編成することによって袋状の踵部を形成する。
このような踵部にあっては、袋状であるため着用者の踵に密に係合し、着用者の踵が靴下の踵部から抜出することが防止される。
【0023】
一方、前述したように第1部分は口ゴム部の周方向の半分程度の部分に設定してあり、踵上部を編成する工程によって、口ゴム部の前記第1部分から延設されて踵上部が編成される。このように踵上部は、口ゴム部の周方向の半分程度の部分に設定された第1部分から延設されているため、かかる靴下を着用した場合、踵上部は踵角部より伸張される。そのため、踵上部及び踵角部によって底引き網状の構造が形成され、踵角部には、足先部方向であって口ゴム部方向へ向かう引っ張り力が作用し、これによって踵角部が着用者の踵の角部分により密に係合し、着用者の踵が靴下の踵部から抜出することが更に防止される。
【0024】
一方、踵角部は口ゴム部とは直接連結していない浮いた状態になっているため、靴下を着用した場合であっても口ゴム部の伸張力が踵角部に殆ど作用せず、従って踵角部に余裕ができ、これによって踵部の寿命が向上する。また、着用者の踵の角部分に過大な引っ張り力が作用することが防止される。
【0025】
(3)本発明に係る靴下の製造方法は必要に応じて、前記足先仕掛部編成工程は、前記土踏まず部から延設され、着用者の足指根元部分を被覆する踏みつけ部を編成する工程と、該踏み付け部から目減らしして、着用者の爪先底側部を被覆する爪先底部を編成する工程と、該爪先底部から目増やしして、着用者の爪先上側部を被覆する爪先上部を編成する工程とを実施することを特徴とする。
【0026】
本発明の靴下の製造方法にあっては、前述した足先仕掛部編成工程は、土踏まず部から延設され、着用者の足指根元部分を被覆する踏みつけ部を編成し、この踏み付け部から目減らしして、着用者の爪先底側部を被覆する爪先底部を編成し、この爪先底部から目増やしして、着用者の爪先上側部を被覆する爪先上部を編成する。このとき、各編成工程にあっては、口ゴムの目を拾うことなく実施され、これによって前述したように、第3部分及び足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部が形成される。
【0027】
前述した爪先底部及び爪先上部の長さ寸法は、着用者の足指の長さ寸法に応じて定めることができ、爪先底部及び爪先上部の長さ寸法の長さ寸法を短くするに従って、口ゴム部が伸張するため、着用者の足の甲がより広く露出される。
【0028】
一方、踏みつけ部は着用者の足の長さ寸法に応じて定めることができ、着用者の爪先に過大な引っ張り力が作用しないように調整することができる。
これによって、着用者の足の甲をより広く露出させる場合であっても、着用者の爪先に過大な引っ張り力が作用することが防止される。
【0029】
(4)本発明に係る靴下は、適宜の締め付け力を有する口ゴム部、着用者の踵を被覆する踵部、着用者の土踏まずを被覆する土踏まず部、及び着用者の足先を被覆する足先部を備え、着用された際に前記口ゴム部から着用者の甲が露出するようになした靴下において、丸編機によって、伸張した状態で着用者の足の甲が露出するようになした環状の口ゴム部を編成し、該口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成し、この踵部に続けて前記土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成し、この土踏まず部に続けて前記足先部になすべく、開放された縁部を具備する袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成し、次いで、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成してなることを特徴とする。
【0030】
本発明の靴下にあっては、前述した如く、丸編機によって、着用者の足の甲が露出する寸法になした環状の口ゴム部を編成し、該口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成し、この踵部に続けて前記土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成し、この土踏まず部に続けて、前記足先部になすべく開放された縁部を具備する袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成し、その後、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成してなる。
従って、前同様の各作用・効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る靴下の製造手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る靴下の製造手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る靴下の製造手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る靴下の製造手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る靴下を製造する丸編機に備えられたシリンダにおける編成操作を説明する説明図である。
【図6】本発明に係る靴下を着用した状態を示す模式的部分斜視図である。
【図7】特許文献1に開示された靴下の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(本発明の実施形態)
図1〜図4は、本発明に係る靴下の製造手順を示すフローチャートであり、各製造工程を靴下の部分側面図又は側面図を用いて示してある。本発明の靴下は靴下製造用の丸編機によって編成してある。
【0033】
また、図5は、本発明に係る靴下を製造する丸編機に備えられたシリンダにおける編成操作を説明する説明図であり、図5中に付した各記号は、図1中に示した各製造工程を示す記号に対応させてある。
【0034】
図1(a)に示した如く、靴下を製造するための丸編機を用いて環状の口ゴム部2を編成する。この場合、図5(a)に示した如く、丸編機のシリンダSの全周を用いて編成されている。
【0035】
かかる口ゴム部2は丸編機にて、例えばゴム編しつつゴム糸を複数コース挿入する流し込みによって形成することができる。
なお、口ゴム部2の丈及びゴム糸のコース数は適宜に設定することができ、例えば4〜10mm程度の丈にゴム糸を3〜10コース程度挿入する。
【0036】
次に、図1(b)に示した如く、着用者の踵であって踵角部より上位側の領域を被覆する踵上部30の口ゴム部2側の部分である第1踵上部31を編成する。この場合、図5(b)に示した如く、前記シリンダSの半周程度の部分を用いた第1領域S1において正逆回転編を行うことによって第1踵上部31を編成する。従って、第1踵上部31は環状の口ゴム部2の半周程度の部分である第1部分21から、当該第1部分21と同じ幅寸法で延設されている。
【0037】
続いて、図1(c)に示した如く、踵上部30の踵角部35(図2(e)参照)側の部分である第2踵上部32を編成する。この場合、図5(c)に示した如く、前記シリンダSの前記第1領域S1から、当該第1領域S1の略中央位置であって、前記第1領域S1より狭い第2領域S2まで漸次、目減らしを行う。この第2領域S2の寸法は、着用者の踵角部における幅寸法に応じて定めてある。
【0038】
次に、図1(d)に示した如く、着用者の踵の角部分を被覆する踵角部35の口ゴム部2側の部分である第1踵角部33を編成する。この場合、図5(d)に示した如く、シリンダSの前記第2領域S2から第1領域S1まで漸次、目増やしを行う。この際、第1踵角部33の両側縁において前記第2踵上部32の両側縁の対応する目を適宜拾いながら編成する。これによって、図1(d)に示した如く、第2踵上部32の側縁と第1踵角部33の側縁との境を示すゴアラインGL1が形成される。
【0039】
続いて、図2(e)に示した如く、踵角部35の土踏まず部4(図2(g)参照)側の部分である第2踵角部34を編成する。この場合、図5(d)に示した如く、前記シリンダSの前記第1領域S1から第2領域S2まで漸次、目減らしを行う。
【0040】
このように第1踵角部33及び第2踵角部34を備える踵角部35にあっては、背面視が略菱型をなしており、着用者の踵の角部分の形状に対応して当該角部分に密に係合する。
【0041】
次に、図2(f)に示した如く、着用者の踵の底側領域を被覆する踵底部36を編成する。この場合、図5(f)に示した如く、シリンダSの前記第2領域S2から第1領域S1まで漸次、目増やしを行う。この際、踵底部36の両側縁において前記第2踵上部32の両側縁の対応する目を適宜拾いながら編成する。これによって、図2(f)に示した如く、第2踵角部34の側縁と踵底部36の側縁との境を示すゴアラインGL2が形成される。
【0042】
このように図1(b)〜図2(f)までの編成操作を行うことによって、側面視が略L字形をなした袋状の踵部3が形成される。この踵部3は着用者の踵に密に係合し、当該踵部3を備える靴下から着用者の踵が抜出することを防止する。
【0043】
このようにして踵部3の編成が終了すると、図2(g)に示した如く、着用者の略土踏まずを被覆する土踏まず部4を編成する。この場合、図5(g)に示した如く、丸編機のシリンダSの前記第1領域S1から、当該第1領域S1を略中央位置にして第1領域S1より広い第3領域S3まで漸次、目増やしを行う。この際、土踏まず部4の両側縁であって前記第1踵上部31に対応する部分は、当該第1踵上部31の両側縁の対応する目を適宜拾いながら編成し、土踏まず部4の両側縁であって前記口ゴム部2の前記第1部分21の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分22(22)に対応する部分は、当該第2部分22の対応する目を適宜拾いながら編成する。これによって、縦断面視が略U字状の土踏まず部4が形成される。
【0044】
ところで、前述した第3領域S3の寸法は、着用者の足幅に応じて定められており、口ゴム部2が着用者の土踏まずの両側に僅かに掛かるようになしてある。
土踏まず部4の編成が終了すると足先仕掛部50(図3(j)参照)の編成を次のようにして実施する。
【0045】
まず、図3(h)に示した如く、着用者の爪先と土踏まずとの間に位置し、着用者の足指の根元に相当する部分を被覆する踏みつけ部51を編成する。この場合、図5(h)に示した如く、シリンダSの前記第3領域S3を用いて適宜の長さ寸法だけ編成する。この踏みつけ部51の長さ寸法は、着用者の足指の根元に相当する部分の長さ寸法に応じて定めてあり、踏みつけ部51は前述した口ゴム部2の目を拾うことなく編成されている。
【0046】
次に、図3(i)に示した如く、着用者の爪先の底側領域を被覆する爪先底部52を編成する。この場合、図5(i)に示した如く、シリンダの第3領域S3から、当該第3領域S3の中央位置より少し一端側の位置であって、第3領域S3の寸法より狭い適宜寸法になした第4領域S4まで漸次、目減らしを行う。この第4領域S4は着用者の爪先の幅寸法に応じて定めてある。
【0047】
そして、図3(j)に示した如く、着用者の爪先の上側領域を被覆する爪先上部53を編成する。この場合、図5(j)に示した如く、シリンダSの第4領域S4から前述した第3領域S3まで漸次、目増やしを行う。この際、爪先上部53の両側縁であって前記爪先底部52に対応する部分は、当該爪先底部52の両側縁の対応する目を適宜拾いながら編成する。これによって、爪先底部52の側縁と爪先上部53の側縁との境を示すゴアラインGL3が形成される。
【0048】
このようにして開放された縁部を具備する足先仕掛部50が編成されると、前述した土踏まず部4の縁部及び爪先上部53の縁部、並びに口ゴム部2の第2部分22(22)の間であって、前記土踏まず部4の縁部が連結してない第3部分23は環状の口部6になっているので、口ゴム部2の第3部分23と爪先上部53の縁部とが対向するように二つ折りして互いに当接させ、その当接部分を縫合することによって口部6を閉じ、図4(k)に示した如く、縫合部Nが形成された足先部5が形成される。これによって靴下1が製造される。
【0049】
なお、かかる靴下1は、適宜の伸縮性を有する組織に編成してあり、伸張させた状態で着用者の足に装着させることによって、着用者の足に密着するようになしてある。また、口ゴム部2以外の各部分は、延設方向への伸縮性より延設方向と直交する方向への伸縮性を大きくなしてあり、これによって種々の足周り寸法に拘らず、足先部5及び踵部3に所要の引っ張り力を作用させることができる。
【0050】
以上のように、本発明に係る靴下1の製造方法では、口ゴム部2以外のいずれの部分にあっても環状又は筒状の編成組織は存在せず、従って切断操作が不要なため、一台の丸編機によって口ゴム部2を含む全領域を機械的に編成することができる。そのため、本靴下1は熟練を要することなく容易に製造することができ、可及的に廉価に製造することができる。
【0051】
なお、口ゴム部2の第3部分23及び足先仕掛部50の縁部を縫合する場合も、これらの部分が環状の口部6になっているため、靴下の製造で一般的に用いられている縫合機を用いることができ、かかる縫合作業も機械的に行うことができるので、熟練を要することなく容易に実施することができる。
【0052】
図6は、本発明に係る靴下を着用した状態を示す模式的部分斜視図である。なお、図中、図1に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
図6に示した如く、靴下1は着用者の足に倣って伸張された状態で、靴下1の足先部5が着用者の足先に外嵌され、靴下1の踵部3が着用者の踵に外嵌されている。このとき、靴下1の伸張に伴って口ゴム部2も着用者の足の長手方向及び幅方向へ伸張しており、口ゴム部2から着用者の甲ISの略全領域が露出している。
【0053】
また、図6から明らかなように着用時において、口ゴム部2の第2部分22,22は着用者の足Fの側部に僅かに係合する程度であり、土踏まず部4にの深さ寸法は非常に浅い。
【0054】
なお、足先仕掛部50の口部6(共に図3(j)参照)を閉じた際に形成された縫合部Nが口ゴム部2の第3部分23に倣って延設されている。
このような靴下1にあっては、当該口ゴム部2から着用者の甲ISの略全領域が露出しており、着用者がパンプスを履いた場合であっても、当該パンプスから靴下1が露出することが可及的に防止される。
【0055】
一方、踵部3が袋状になしてあるため、踵部3が着用者の踵に密に係合し、着用者の踵が靴下の踵部3から抜出することが防止される。
また、前述したように踵部3を編成するに当たって、第1部分21が口ゴム部2の周方向の半分程度の部分に設定してあり、踵上部30が、口ゴム部2の前記第1部分21から延設されている。このように踵上部30は、口ゴム部2の周方向の半分程度の部分に設定された第1部分21から延設されているため、かかる靴下1を着用した場合、踵上部30は踵角部35より伸張される。そのため、踵上部30及び踵角部35によって底引き網状の構造が形成され、踵角部35には、足先部5方向であって口ゴム部2方向へ向かう引っ張り力が作用し、これによって踵角部35が着用者の踵の角部分により密に係合し、着用者の踵が靴下の踵部から抜出することが更に防止される。
【0056】
一方、踵角部35は口ゴム部2とは直接連結していない浮いた状態になっているため、靴下1を着用した場合であっても口ゴム部2の伸張力が踵角部35に殆ど作用せず、従って踵角部35に余裕ができ、これによって踵角部35の寿命が向上する。また、着用者の踵の角部分に過大な引っ張り力が作用することが防止される。
【0057】
ところで、前述した爪先底部52及び爪先上部53(共に図3(j)参照)の長さ寸法は、着用者の足指の長さ寸法に応じて定めることができ、爪先底部52及び爪先上部53の長さ寸法の長さ寸法を短くするに従って、口ゴム部が伸張するため、着用者の足の甲がより広く露出される。
【0058】
一方、踏みつけ部51(図3(j)参照)は着用者の足の長さ寸法に応じて定めることができ、着用者の爪先に過大な引っ張り力が作用しないように調整することができる。これによって、着用者の足の甲ISをより広く露出させる場合であっても、着用者の爪先に過大な引っ張り力が作用することが防止される。
【符号の説明】
【0059】
1 靴下
2 口ゴム部
3 踵部
4 土踏まず部
5 足先部
30 踵上部
31 第1踵上部
32 第2踵上部
33 第1踵角部
34 第2踵角部
35 踵角部
36 踵底部
50 足先仕掛部
51 踏み付け部
52 爪先底部
53 爪先上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜の締め付け力を有する口ゴム部、着用者の踵を被覆する踵部、着用者の土踏まずを被覆する土踏まず部、及び着用者の足先を被覆する足先部を備え、着用された際に前記口ゴム部から着用者の甲が露出するようになした靴下を製造する方法において、
伸張した状態で着用者の足の甲が露出するようになした環状の口ゴム部を編成する口ゴム部編成工程と、
前記口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成する踵部編成工程と、
この踵部に続けて前記土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成する工程と、
この土踏まず部に続けて前記足先部になすべく、開放された縁部を具備する袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成する足先仕掛部編成工程と
を丸編機を用いて実施し、
次いで、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成する工程を実施する
ことを特徴とする靴下の製造方法。
【請求項2】
前記第1部分として、口ゴム部の周方向の半分程度の部分に設定し、
前記踵部編成工程は、
口ゴム部の前記第1部分から延設され、着用者の踵の上位部分を被覆する踵上部を編成する工程と、
該踵上部から延設され、前記第1部分の寸法より短い幅寸法を有し、着用者の踵の角部分を被覆する踵角部を編成する工程と、
該踵角部から延設され、着用者の踵の底部分を被覆する踵底部を編成する工程と
を実施する
請求項1記載の靴下の製造方法。
【請求項3】
前記足先仕掛部編成工程は、前記土踏まず部から延設され、着用者の足指根元部分を被覆する踏みつけ部を編成する工程と、該踏み付け部から目減らしして、着用者の爪先底側部を被覆する爪先底部を編成する工程と、該爪先底部から目増やしして、着用者の爪先上側部を被覆する爪先上部を編成する工程とを実施する請求項1又は2記載の靴下の製造方法。
【請求項4】
適宜の締め付け力を有する口ゴム部、着用者の踵を被覆する踵部、着用者の土踏まずを被覆する土踏まず部、及び着用者の足先を被覆する足先部を備え、着用された際に前記口ゴム部から着用者の甲が露出するようになした靴下において、
丸編機によって、伸張した状態で着用者の足の甲が露出するようになした環状の口ゴム部を編成し、該口ゴム部の周方向の所定部分に設定した第1部分から袋状の踵部を編成し、この踵部に続けて前記土踏まず部を、口ゴム部の前記第1部分の周方向の両側に適宜寸法ずつ設定した第2部分の目を適宜拾いつつ編成し、この土踏まず部に続けて前記足先部になすべく、開放された縁部を具備する袋状の足先仕掛部を編成することによって、口ゴム部の前記両第2部分の間に位置する第3部分及び前記足先仕掛部の縁部にて構成される環状の口部を形成し、
次いで、口ゴム部の前記第3部分及び足先仕掛部の縁部を縫合して前記口部を閉じ、前記足先部を形成し
てなることを特徴とする靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−174425(P2010−174425A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21955(P2009−21955)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(593065110)イイダ靴下株式会社 (22)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【Fターム(参考)】