説明

靴下

【課題】 本発明は、先端の接合線周囲での破損をできるだけ避けるのみならず、足指と靴下との摩擦抵抗を増大させ、踏ん張りが利き、歩行や転倒阻止が行いやすい靴下を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の靴下は、指先先端相当部に上下辺を一体化した接合線が存在する靴下であって、前記接合線より上側にある上辺の収縮力が基本的な生地収縮力より強いか、若しくは、基本的な生地弾性より小さくされた少伸縮部とされ、当該少伸縮部により、前記接合線が装着状態で、その指先の爪先相当箇所に位置するようにしてあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先先端相当部に上下辺を一体化した接合線が存在する靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
この種靴下は、先端に接合線を設けることで、足裏や甲等の敏感な箇所での接触による違和感を無くす上で極めて有効である。
しかし、当該接合線(21a‘)は、図7に示すように、その周辺に応力集中が生じやすいために、当該接合線周辺、特に図中(P)で示す爪先近くからの破損が生じていた。
このような破損は、例えば特許文献1に示されるように、足指の下半部(足裏部)にふくらみ部を形成して、足指の締め付けをなくすようにすることで軽減されるように思われるが、しかし、足指の裏は、床面や靴内面と接触して、歩行力を伝達する重要な場所であり、このようなふくらみ部の存在は、足裏と靴下との接触摩擦を低下させ、すべりを生じさせて歩行力の伝達を妨げることとなる。
その結果、歩行しにくいものとなるのみならず、同様な理由で、踏ん張りが効かなくなり、転倒などを起こしやすい危険性をも有することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような実情に鑑み、先端の接合線周囲での破損をできるだけ避けるのみならず、足指と靴下との摩擦抵抗を増大させ、踏ん張りが効き、歩行や転倒阻止が行いやすい靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明1の靴下は、接合線より上側にある上辺の収縮力が基本的な生地収縮力より強いか、若しくは、基本的な生地弾性より小さくされた少伸縮部とされ、当該少伸縮部により、前記接合線が装着状態で、その指先の爪先相当箇所に位置するようにしてあることを特徴とする。
発明2は、発明1の靴下において、前記少伸縮部が、指の爪相当箇所に形成されていることを特徴とする。
発明3は、発明1又は2の靴下において、一本以上の指を挿入することができる複数の指袋部に形成されていて、各指袋部には、前記接合線と少伸縮部とが形成されていることを特徴とする。
発明4は、発明3の靴下において、各指をそれぞれ挿入する5個の指袋部が設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、接合線周囲の破損は、単に当該箇所に応力集中するのみならず、爪先の硬質部分と靴内面との間に当該周辺部分が挟まれることによって生じるものとの知見によるものである。
このような知見に基づき、上記構成を採用したもので、このようにすることで、接合線が靴内面と足指先端との間に介在し、その周囲の挟み込みを極力避けることができるようになった。これによって、当該箇所での破損を軽減できた。
さらに、足指の上側にある少伸縮部の存在は、足指の下側に靴下を押し付けることとなり、相互の摩擦抵抗を増大して、踏ん張りが利き、歩行や転倒阻止が行いやすい靴下を提供するものとなった。
また、指袋部全体の伸縮性を小さくすることで、靴下と足指との摩擦抵抗を増加することも想定できるが、このようにした場合は、指袋部への足指の挿入が極めて困難となり、履き難い靴下となる。特に、通称5本指靴下のように各指を、それぞれ異なる指袋に挿入する靴下では、装着が極めて困難とならざるを得ないが、本発明では、足指の上側にのみ少伸縮部を形成することで、指袋部全体の伸縮性を装着しやすい程度の維持することも可能である。
特に、爪部に相当する箇所に少伸縮部を設けることで、指袋部の付け根の伸縮性は従前に変わらず大きく保持することができるので、装着時に強い摩擦を指裏に与えながらも、各指の挿入がスムーズである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例1の靴下の要部を示す平面図
【図2】実施例1の靴下の装着状態の要部を示す平面図
【図3】実施例1の靴下の装着状態の要部を示す左側面図
【図4】実施例1の靴下の編み構造を示す図であり、(A)は、少伸縮部のタック編みを示し、(B)は、少伸縮部以外の横編み構造を示す。
【図5】実施例2の靴下の要部を示す平面図
【図6】実施例1の図3の基と成った装着状態の写真。
【図7】従来の靴下の要部を示す左側面図
【図8】図7の基と成った従来の靴下の装着状態を示す写真。
【図9】実施例1の接合線の編み構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、靴下の上下辺を結合する結合線周囲で生じる損傷を防止するために、この結合線自体の強度を積極的に利用しようとしたものである。
つまり、結合線を、装着時に足先で最も硬質な爪先相当位置に配置するようにした点に最大の特徴を有するものである。
このようにすることで、接合線部分が、爪先部分と靴内面との間に介在して、緩衝作用を発揮することで、当該箇所の破損を軽減することができた。
【0008】
そして、このように結合線を配置するために、少伸縮部を指部の結合線から上方の辺に形成することで、これにより、装着時に、指先部分の下側(結合線よりも下の側)は、従来に比べ、上方に引き寄せられ、指裏における靴下との接触摩擦を増加して、足裏と靴下とのすべりを防止し、歩行や静止などの動作が確実となり、転倒を防止することができた。
さらに、このような少伸縮部を上部にのみ設けることで、足先挿入時の案内作用を発現させ、ちょうど靴べらを使用しているような状態となり、足指の靴下先端への挿入を容易にすることができた。
また、5本指などの指袋部を設けた靴下では、このような機能は特に顕著に発現させることができる。
【0009】
さらに、このような指袋部を持つ靴下では、前記少伸縮部の先端を結合線とし、その手前側を、指裏面の突出部分から指袋部の入り口の間位置させることで、指先先端を指袋部に挿入する際には、圧迫を受けずに容易に挿入でき、その後に少伸縮部の案内作用で、さらなる挿入を助け、最後に、指裏面の突出部分が、少伸縮部の手前側を通過すると、指袋部の入り口部での収縮により、指先をさらに挿入する力が働くこととなる。
これにより、指袋部への指の挿入を容易にするのみならず、指袋部の奥にまで指を確実に挿入することが容易になった。
なお、下記実施例では、少伸縮部をタック編みにより構成したが、此れに限らず、フィルムの付着、熱処理により、生地の有する伸縮性を低下することも可能である。もしくは少伸縮部の目を小さくすることにより、編目を詰めることにより構成することも可能である。
【0010】
このような少伸縮部は、靴下の部分的な伸縮性の調整によって得られるが、その一例を以下の実施例に示す。
しかし、本発明はこれに限らず、従来より靴下の部分的な伸縮性を制限する手段として知られた各種の方法を用いることを除外するものではない。
また、本発明において、基本的な生地弾性とは、このような部分的な伸縮性の調整がなされていない箇所の平均的な弾性及び伸縮性をいうものである。
接合線とは上下辺を結合した線のことのみならず、上下辺が実質的に一体化された状態にあるときの上下辺が互いに接する線のことである。
例えば、下記実施例において接合線(21a)〜(21e)は上下辺と連続した編目となっている。
【実施例1】
【0011】
5本指に相当する5本の指袋部(20a)〜(20e)を有する横編み靴下を例にして説明する。
横編み靴下では、指先部先端から編み出し、その先端部には、上下が接合された接合線(21a)〜(21e)が形成される。
そして、各指部の上辺は、図4に示すようにしたタック編みを施し、図1、2、3に示す少伸縮部(23a)〜(23e)を形成する。
当該少伸縮部(23a)〜(23e)は、前記接合線(21a)〜(21e)から始まり、各指の下面突出部分(A)〜(E)と指袋部(20a)〜(20e)の入り口との間にまで形成してある。
このようにして前述したような指挿入時の効果を発揮させたものである。
なお、図4(A)は、前記少伸縮部(23a)〜(23e)を構成するタック編みを示す図であって、表糸(30)と裏糸(31)により構成してある。表糸(30)には、32/1の綿とアクリルの混紡糸を、裏糸(31)には、スパンテックス糸を用いた。
(40)は、タック部を示す。当該タック部により構成された少伸縮部(23a)〜(23e)は、縦方向の伸びを止めて収縮させ、タック部(40)を有さない他の箇所の伸びを助長することで、図2、3、6に示すように、接合線(21a)〜(21e)を爪先に、位置させることができた。
このような機能を発現させる糸として、表糸(30)としては、32/1の綿とアクリルの混紡糸や、1/35のアクリルとウールの混紡糸などが用いることが可能である。
また、裏糸としては、芯糸がポリウレタンのナイロンカバーリング糸(20×70、40×70、40×140)や、芯糸がポリウレタンのポリエステルカバーリング糸(20×75、30×75、40×75)が使用可能である。
なお、これらの糸のほか、これらと同様な機能を発現する糸も使用可能である。
【0012】
図9は指袋部の先端部分の編み組織を示すもので、上辺部(10A)と下辺部(10B)とを構成する編み針により、編まれたのが接合線(21a)〜(21e)である。そして、その左右両端は、角をできるだけ滑らかにする為に、それぞれの辺において編目を構成させずに編み上げた止め編み部(10CA)、(10CB)により構成してある。
このようにして、接合線(21a)〜(21e)が、装着時に、指先の先端の丸みにできるだけ沿うように形成してある。
【実施例2】
【0013】
本実施例は、親指のみの指袋部(20a)と他の4本の指を一括収納する指袋部(20bcde)とにより、爪先を構成した例を示す。(図5参照)
親指の指袋部(20a)の上辺には、前記実施例1と同様に、接合線(21a)から始まる少伸縮部(23a)が設けてある。
他の指袋部(20bcde)には、前記少伸縮部(23a)のようなものを設けずに、従来と同様なものとした。
足の踏ん張りが主に親指の接地摩擦によることは、当該業界では広く知られた事実であることから、本発明を親指にのみ適用した例である。
実施例1のように、本発明の構成を全ての指に適用せずとも、主要な箇所に適用することで、本発明の目的を達成できる一例である。
その他は、実施例1と同様なので説明を省略する。
【符号の説明】
【0014】
(10) 靴下
(10A) 上辺部
(10B) 下変部
(10CA)(10CB) 止め編み部
(20) 指挿入部
(20a)〜(20e)、(20bcde) 指袋部
(21a)〜(21e) 接合線
(21a‘) 従来の接合線
(22a)〜(22e) 手前側終端部
(23a)〜(23e) 少伸縮部
(30) 表糸
(31) 裏糸
(40) タック部
(A)〜(E) 各指の下面突出部分(足裏特出部分)
(P) 爪先部分
(FA) 親指
(FB) 人差し指
(FC) 中指
(FD) 薬指
(FE) 小指
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3883553号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指先先端相当部に上下辺を一体化した接合線が存在する靴下であって、前記接合線より上側にある上辺の収縮力が基本的な生地収縮力より強いか、若しくは、基本的な生地弾性より小さくされた少伸縮部とされ、当該少伸縮部により、前記接合線が装着状態で、その指先の爪先相当箇所に位置するようにしてあることを特徴とする靴下。
【請求項2】
請求項1に記載の靴下において、前記少伸縮部が、指の爪相当箇所に形成されていることを特徴とする靴下。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の靴下において、一本以上の指を挿入することができる複数の指袋部に形成されていて、各指袋部には、前記接合線と少伸縮部とが形成されていることを特徴とする靴下。
【請求項4】
請求項3に記載の靴下において、各指をそれぞれ挿入する5個の指袋部が設けてあることを特徴とする靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−256509(P2011−256509A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142047(P2010−142047)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(390019806)コーマ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】