説明

靴下

【課題】長時間、歩いたり走ったりすることによる足の骨格のアーチ構造の機能の低下をより確実に抑制することができる靴下を提供する。
【解決手段】本発明の靴下1は、つま先部10と、足底部20と、足甲部30と、踵部40と、足首部50とを備えた靴下1であって、足底部20がX字型のサポート部24を有し、足甲部30がサポート部24のつま先部10側を固定する第1の固定部34をつま先部10側に有し、足甲部30がサポート部24の踵部側を固定する第2の固定部38を足首部50側に有し、および/または足首部50がサポート部24の踵部側を固定する第3の固定部52,54を足甲部30側に有し、サポート部24、第1の固定部34、第2の固定部38および第3の固定部52,54が高弾性材から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足のアーチ構造の機能を保持する靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は人の右足の骨格を足の裏側から見た状態を示す図であり、図5(b)は人の右足の骨格を内側(親指側)から見た状態を示す図である。人間の足の骨格500は、第一中足骨510の種子骨512と踵骨530の踵骨隆起532とを結ぶ線552に沿って、内側縦アーチ構造R1を有し、第五中足骨520の種子骨522と踵骨530の踵骨隆起532とを結ぶ線554に沿って、外側縦アーチ構造R2を有し、第一中足骨510の種子骨512と第五中足骨520の種子骨522とを結ぶ線556に沿って、横アーチ構造R3を有する。これらの足の骨格のアーチ構造は、人が歩いているとき、または人が走っているときの着地したときの足への衝撃を吸収する。しかし、人が長時間、歩いたり走ったりすると、足の骨格のアーチ構造の機能が低下し、足への衝撃を吸収する能力が低下する場合がある。
【0003】
このような足への衝撃を吸収する能力の低下を抑制するために、足の骨格のアーチ構造の機能を保持する靴下が従来技術と知られている(特許文献1〜19)。たとえば、特許文献1には、靴下の踵部付近の爪先方向寄りの位置に周方向の伸縮性に富む第1締付け部を周設するとともに、靴下のつま先部付近の踵方向寄りの位置に周方向の伸縮性に富む第2締付け部を周設した靴下であって、靴下の足底部に、第1締付け部と前記第2締付け部を連結するように、靴下の足甲部と比較して靴下の長手方向の伸縮性が低い連結部を設けた靴下が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−50744号公報
【特許文献2】特開2007−277779号公報
【特許文献3】特開2006−348406号公報
【特許文献4】実用新案登録第3157243号公報
【特許文献5】特開2009−41141号公報
【特許文献6】特開2008−161344号公報
【特許文献7】特開2008−111224号公報
【特許文献8】特開2007−100240号公報
【特許文献9】特開2005−312512号公報
【特許文献10】特開2005−42213号公報
【特許文献11】特開2003−299685号公報
【特許文献12】特許第4040671号公報
【特許文献13】実用新案登録第3137194号公報
【特許文献14】特開2010−116654号公報
【特許文献15】特開2006−225833号公報
【特許文献16】特開2002−69701号公報
【特許文献17】国際公開第2007/074735号パンフレット
【特許文献18】特開2009−155763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の靴下は、足の裏の前後方向に引っ張り応力が発生し、足の骨格のアーチ構造の機能を保持することができるものの、2つのアーチ構造、すなわち内側縦アーチ構造および外側縦アーチ構造のそれぞれに向けて引っ張り応力が働いていないので、足の骨格のアーチ構造の機能が低下するのを防止する効果が弱くなるという問題点がある。
【0006】
一方、スポーツ医学の分野で、足の骨格のアーチ構造の機能が低下するのを防止して、足の疲れを軽減させる土踏まずのテーピングが知られている。土踏まずのテーピングの一例を図6に示す。このテーピングでは、最初に、親指のつけ根と小指のつけ根を通る足の外周部分にアンカーテープ610を貼り付ける。そして、アンカーテープ610上を始点として、テープ620にテンションをかけながら、テープ620が小指のつけ根から、踵の内側、踵の後ろ側および踵の外側を順次通り、親指のつけ根に至るようにテープ620を足に貼り付ける。これにより、このテーピングは、内側縦アーチ構造および外側縦アーチ構造のそれぞれに向けて引っ張り応力が働いて、それぞれのアーチ構造の機能を保持することができる。靴下は、テーピングテープのように足に貼り付くものではないので、この効果を靴下で実現することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、つま先部と、足底部と、足甲部と、踵部と、足首部とを備えた靴下であって、足底部がX字型のサポート部を有し、足甲部がサポート部のつま先部側を固定する第1の固定部をつま先部側に有し、足甲部がサポート部の踵部側を固定する第2の固定部を足首部側に有し、および/または足首部がサポート部の踵部側を固定する第3の固定部を踵部側に有し、サポート部、第1の固定部、第2の固定部および第3の固定部が高弾性材から構成される。好ましくは、サポート部が、足の親指のつけ根に対応する位置から踵の外側に対応する位置に延びる第1のX字構成要素および足の小指のつけ根に対応する位置から踵の内側部分に対応する位置に延びる第2のX字構成要素を有し、第1の固定部が、足甲部の足の親指のつけ根に対応する位置から小指のつけ根に対応する位置に延びる部分に配置され、第2の固定部が、足甲部の足首部に近接する足の甲の後部を覆う領域に配置され、第3の固定部が、足首部の外周の踵部側に配置される。また、本発明の靴下は、サポート部とつま先部とに囲まれた三角領域部とをさらに含み、三角領域部の弾性率が、サポート部および第1の固定部の弾性率よりも低くてもよい。また、本発明の靴下は、サポート部と踵部とに囲まれた三角領域部とをさらに含み、三角領域部の弾性率が、サポート部および第2の固定部の弾性率よりも低くてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内側縦アーチ構造および外側縦アーチ構造のそれぞれに向けて引っ張り応力を作用させることができ、長時間、歩いたり走ったりすることによる足の骨格のアーチ構造の機能の低下をより確実に抑制することができる靴下を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の靴下を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態の靴下におけるX字型サポート部の引っ張り応力を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の靴下における第1〜3固定部および踵後ろ部の引っ張り応力を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態の靴下における前方および後方三角領域部を説明するための図である。
【図5】図5は、足の骨格を説明するための図である。
【図6】図6は、足の骨格のアーチ構造の機能が低下するのを防止するテーピングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜3を参照して、本発明の一実施形態における靴下1を説明する。この靴下1は、ユーザが長時間歩いたり走ったりしても、足の骨格のアーチ構造の機能が低下するのを抑制することができる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の靴下を示す図である。図1(a)は、右足用の靴下を横方向から見た状態を示す図であり、図1(b)は、靴下の足底を示した図である。本発明の一実施形態の靴下1は、つま先部10、足底部20、足甲部30、踵部40および足首部50を備える。足底部20は、前方三角領域部22、X字型サポート部24、後方三角領域部26を有する。足甲部30は、指つけ根メッシュ部32、第1固定部34、メッシュ部36および第2固定部38を有する。足首部50は、第3固定部52、踵後ろ部54および口ゴム部56を有する。ここで、足のつま先方向を足の前方とし、足の踵方向を足の後方とし、足の底側を足の下とし、足の甲側を足の上とする。また、足の親指側を足の内側とし、足の小指側を足の外側とする。
【0012】
つま先部10は、つま先を覆う袋状の、靴下1の構成部分である。
【0013】
X字型サポート部24は、足の底の親指のつけ根に対応する部分から踵の外側に対応する部分へ延びるX字型サポート部構成要素24aと、小指のつけ根に対応する部分から踵の内側に対応する部分へ伸びるX字型サポート部構成要素24bとからなる。X字型サポート部24は、足の底の方から見るとX字状に見える。構成要素24aと構成要素24bとからなるX字型部分は、1つのX字形状の生地で構成するようにしてもよいし、I字型の2枚の生地を組み合わせて構成するようにしてもよい。前方三角領域部22は、つま先部10とX字型サポート部24とで囲まれた、靴下1の構成部分であり、前方に辺を有し後方に頂角を有する略三角形の形状を有する。後方三角領域部26は、X字型サポート部24と後述の踵部40とで囲まれた、靴下1の構成部分であり、前方に頂角を有し後方に辺を有する略三角形の形状を有する。
【0014】
踵部40は、少なくとも踵の下側を覆う、靴下1の構成部分である。
【0015】
指つけ根メッシュ部32は、足の指のつけ根部分を上方から覆う、靴下1の構成部分である。第1固定部34は、親指のつけ根に対応する部分から足の甲側を通って小指のつけ根に対応する部分に延びる、靴下1の構成部分である。第1固定部34は、X字型サポート部24の親指のつけ根に対応する部分および小指のつけ根に対応する部分と連結し、X字型サポート部24のつま先部10側の部分を固定している。メッシュ部36は、第1固定部34と後述の第2固定部38とX字型サポート部24とに囲まれた、足の甲の部分および足の裏の部分を覆う、靴下1の構成部分である。第2固定部38は、足の甲の部分のうち、足首に近接する足の甲の後部を覆う、靴下1の構成部分である。第2固定部38は、X字型サポート部24の踵の内側に対応する部分および踵の外側に対応する部分と連結し、X字型サポート部24の踵部40側の部分を固定している。
【0016】
第3固定部52は、足首の前方のうち、足の甲に近接する部分を覆う、靴下1の構成部分である。踵後ろ部54が、アキレス腱の下の踵の後ろを少なくとも覆う、靴下1の構成部分である。第3固定部52および踵後ろ部54で、足首の踵部40側の外周は覆われる。第3固定部52および踵後ろ部54は、X字型サポート部24の踵の内側に対応する部分および踵の外側に対応する部分と連結し、X字型サポート部24の踵部40側の部分を固定している。口ゴム部56は、足首を覆う筒状の、靴下1の構成部分である。
【0017】
次に、靴下1の各構成部分の弾性率について説明する。靴下1では、X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54の弾性率は他の構成部分、すなわち、つま先部10、前方三角領域部22、後方三角領域部26、踵部40、指つけ根メッシュ部32、メッシュ部36および口ゴム部56の弾性率よりも高い。さらに、前方三角領域部22および後方三角領域部26の弾性率は、つま先部10、踵部40、指つけ根メッシュ部32、メッシュ部36および口ゴム部56の弾性率よりも高い。
【0018】
X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54には、それぞれの構成部分の弾性率を高める編み組織および素材を有する高弾性材が使用される。高弾性材の編み組織は、たとえば、弾性糸が挿入されたタック編み(引き上げ編み)である。高弾性材のグランド(地)糸には、たとえば、表側ではナイロンおよびポリエステルが使用され、裏側ではポリエステルが使用されている。弾性糸にはポリウレタンが使用されている。
【0019】
なお、高弾性材の編み組織は、靴下1の構成部分の弾性率を高める編み組織であれば、とくに限定されないが、たとえば、弾性糸が挿入された浮き編みでもよいし、弾性糸が挿入されたタック編みと浮き編みとの混合でもよい。また、高弾性材の素材としては、弾性率の高い繊維であればとくに限定されないが、ナイロンやポリエステルのほかに弾性率の高いポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどを使用してもよい。また、編み組織が他の構成部分と同じであっても、他の構成部分に比べて、弾性糸の構成比率を高くする、弾性糸の繊度を太くする、弾性率の高い素材の弾性糸を使用する、樹脂をコーティングする、生地を張り合わせるなどして、高弾性材を形成してもよい。また、編み組織が他の構成部分と同じであっても、編みこむ糸を増やし、編み密度を高くする、度目などを詰め、編み密度を高くするなどして、高弾性材を形成してもよい。
【0020】
X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54のそれぞれの高弾性材は、それぞれ同じものであってもよいし、異なったものでもよい。
【0021】
前方三角領域部22および後方三角領域部26の編み組織は、弾性糸が挿入されたタック編み(引き上げ編み)であり、前方三角領域部22および後方三角領域部26にはボス柄が形成されている。グランド糸には、ポリエステルが使用されており、弾性糸にはポリウレタンが使用されている。前方三角領域部22および後方三角領域部26のタック編みにおける弾性糸の挿入量を、X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54のタック編みにおける弾性糸の挿入量に比べて減らすことによって、X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54の弾性率よりも前方三角領域部22および後方三角領域部26の弾性率を小さくしている。
【0022】
つま先部10および踵部40の編み組織は、パイル編みであり、表側のグランド糸の素材はナイロンであり、裏側のグランド糸の素材は、ポリウレタン繊維にポリエステルをカバーリングしたFTYである。このような編み組織および素材を選択することによって、つま先部10および踵部40の伸縮性は高められ、靴下1のつま先部10および踵部40をユーザの足のつま先および踵にフィットさせることができる。
【0023】
指つけ根メッシュ部32およびメッシュ部36の編み組織は、メッシュ編みであり、表側のグランド糸の素材はポリエステルであり、裏側のグランド糸の素材は、ポリエステルおよびポリウレタンである。指つけ根メッシュ部32およびメッシュ部36の編み組織をメッシュ編みにすることによって、指のつけ根ならびに足の甲および足の裏の通気性がよくなり、足ムレを防止することができる。また、このような編み組織および素材を選択することによって、指つけ根メッシュ部32およびメッシュ部36の伸縮性は高められ、靴下1の指つけ根メッシュ部32およびメッシュ部36をユーザの足の甲にフィットさせることができる。
【0024】
口ゴム部56の編み組織はゴム編み(リブ編み)であり、表側のグランド糸の素材はポリエステルであり、裏側のグランド糸の素材は、ポリエステルおよびポリウレタンである。このような編み組織および素材を選択することによって、口ゴム部56のズレ落ちを防止することができる。
【0025】
以上のような構成部分を有する靴下1をユーザが履くと、靴下1には、引っ張り応力が生ずる。ここで、引っ張り応力とは、ユーザが靴下をはいたときの伸長に対する構成部分の抵抗力である。図2および図3を参照して、靴下1に生ずる引っ張り応力を説明する。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態の靴下1におけるX字型サポート部24の引っ張り応力を説明するための図である。図2(a)は、ユーザが右足に履いた靴下1を内側から見た状態を示す図であり、図2(b)は、ユーザが右足に履いた靴下1を下側から見た状態を示す図である。X字型サポート部24には、高弾性材が使用されているので、ユーザが靴下1を履いても図2に示す矢印110〜140の方向にX字型サポート部24はあまり伸びない。このため、図2に示す矢印110〜140の方向に伸びようとする力に抵抗して2方向の引っ張り応力が生ずる。それぞれの方向の引っ張り応力は、足の内側縦アーチ構造R1および外側縦アーチ構造R2(図5参照)がそれぞれ機能が低下する方向に対して抵抗する方向に働くので、足の骨格のアーチ構造の機能が低下するのを抑制することができる。とくにX字型サポート部24は、踵後ろ部54で踵の後部分に保持されているので、踵部40が伸びて、X字型サポート部24の踵の内側部分および踵の内側部分が前方に移動して、X字型サポート部24の引っ張り応力が弱まることはない。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態の靴下1における第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54の引っ張り応力を説明するための図であり、ユーザが右足に履いた靴下1を内側から見た状態を示す図である。第1固定部34には、高弾性材が使用されているので、図3に示す矢印210の方向に第1固定部34が伸びようとする力に抵抗して引っ張り応力が生ずる。この引っ張り応力により、足の横アーチ構造R3(図5参照)の機能が低下する方向に対して抵抗する方向の応力に生ずるので、足の骨格のアーチ構造の機能が低下するのを抑制することができる。また、第1固定部34の引っ張り応力により、X字型サポート部24の親指のつけ根部分および小指のつけ根部分が足に固定されるので、X字型サポート部24の親指のつけ根部分および小指のつけ根部分が後方にずれてX字型サポート部24の引っ張り応力が弱まるのを抑制することができる。
【0028】
第2固定部38には、高弾性材が使用されるので、図3に示す矢印220の方向に第2固定部38が伸びようとする力に抵抗して引っ張り応力が生ずる。これにより、第2固定部38で足が締め付けられ、X字型サポート部24の踵部40側が固定される。
【0029】
第3固定部52および踵後ろ部54には、高弾性材が使用されるので、図3に示す矢印230の方向に第3固定部52および踵後ろ部54が伸びようとする力に抵抗して引っ張り応力が生ずる。これにより、第3固定部52および踵後ろ部54で足首が締め付けられ、X字型サポート部24の踵部40側が固定される。
【0030】
踵後ろ部54が図3に示す矢印240の方向にずれ落ちると、X字型サポート部24がゆるみ、X字型サポート部24の引っ張り応力が弱くなる。とくに、足首50の口ゴム部56は伸縮性が高いので、踵後ろ部54が図3に示す矢印240の方向にずれ落ちてしまう可能性がある。しかし、第3固定部52の引っ張り応力により、それを防止することができる。また、第3固定部52がない場合であっても、第2固定部38の引っ張り応力によってもそれを防止することができる。
【0031】
靴下1のX字型サポート部24および踵後ろ部54は、図1および図2に示すように、図6のテーピングと同様に、親指のつけ根部分から、踵の外側部分、踵の後ろ側部分、踵の内側部分を順次通り、小指のつけ根部分に至る。すわわち、X字型サポート部24および踵後ろ部54は、テーピングのテープ620の位置に対応する位置に設けられている。しかし、X字型サポート部24および踵後ろ部54は靴下1の構成部分であり、足に貼り付かないので、動いてしまう。このため、X字型サポート部24および踵後ろ部54だけでは、靴下1を履くことにより、図6に示すテーピングと同様な効果を得ることは難しい。しかし、靴下1の第1固定部34、第2固定部38および第3固定部52により、X字型サポート部24および踵後ろ部54は足に固定されるので、靴下1は、図6に示すテーピングと同様の効果を足に対して与えることができる。
【0032】
X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3固定部52および踵後ろ部54のそれぞれの弾性率は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
上述したように、前方三角領域部22の弾性率は、第1固定部34の弾性率よりも小さい。このために、前方三角領域部22は、図4の矢印310の方向に広がることにより、親指のつけ根部分と小指のつけ根部分を通る靴下の外周部分を全て第1固定部34で形成した場合に比べて、親指のつけ根と小指のつけ根を通る足の外周部分における靴下1の締め付けを弱くすることができる。これにより、親指のつけ根と小指のつけ根を通る足の外周部分がきつくなりすぎることがなくなり、足の血流が悪くなるのを抑制することができる。なお、親指のつけ根と小指のつけ根を通る足の外周部分がきつくなりすぎなければ、前方三角領域部34の弾性率を、X字型サポート部24および/または第1固定部34の弾性率と同じにしてもよいし、高くしてもよい。
【0034】
後方三角領域部26の弾性率は、第2固定部38の弾性率よりも小さい。このために、後方三角領域部26は、図4の矢印320に示すように足の踵の形状に合わせて足の幅方向に広がることができる。これにより、X字型サポート部24を足の土踏まずにフィットさせることができ、心地よい着用感が得られる。
【0035】
以上の一実施形態による靴下1は、次のような作用効果を奏する。
(1)靴下1は、つま先部10と、足底部20と、足甲部30と、踵部40と、足首部50とを備え、足底部20がX字型のX字型サポート部24を有し、足甲部30がX字型サポート部24のつま先部10側を固定する第1固定部34をつま先部10側に有し、足甲部30がX字型サポート部24の踵部40側を固定する第2固定部38を足首部50側に有し、足首部50がX字型サポート部24の踵部側を固定する第3固定部52および踵後ろ部54を足甲部30側に有し、X字型サポート部24、第1固定部34、第2固定部38、第3の固定部52および踵後ろ部54が高弾性材から構成されるようにした。これにより内側縦アーチ構造および外側縦アーチ構造のそれぞれに向けて引っ張り応力を作用させることができ、長時間、歩いたり走ったりすることによる足の骨格のアーチ構造の機能の低下をより確実に抑制することができる靴下を提供することができる。また、足の裏でX字型にテープを配置するテーピングの効果と同様な効果を、靴下1を履くことによって、ユーザは受けることができる。
【0036】
(2)X字型サポート部が、足の親指のつけ根に対応する位置から踵の外側に対応する位置に延びるX字型サポート部構成要素24aおよび足の小指のつけ根に対応する位置から踵の内側部分に対応する位置に延びるX字型サポート部構成要素24bを有し、第1固定部34が、足甲部の足の親指のつけ根に対応する位置から小指のつけ根に対応する位置に延びる部分に配置され、第2固定部38が、足甲部30の足首部50に近接する足の甲の後部を覆う領域に配置され、第3固定部52および踵後ろ部51が、足首部50の外周の足甲部30側に配置されるようにした。これにより内側縦アーチ構造および外側縦アーチ構造のそれぞれに向けて引っ張り応力を作用させることができ、長時間、歩いたり走ったりすることによる足の骨格のアーチ構造の機能の低下をより確実に抑制することができる靴下を提供することができる。また、足の裏でX字型にテープを配置するテーピングの効果と同様な効果を、靴下1を履くことによって、ユーザは受けることができる。
【0037】
(3)靴下1は、X字型サポート部24とつま先部10とに囲まれた前方三角領域部22とをさらに含み、前方三角領域部22の弾性率が、X字型サポート部24および第1固定部34の弾性率よりも低くするようにした。これにより、親指のつけ根と小指のつけ根を通る足の外周部分がきつくなって、足の血流が悪くなるのを抑制することができる。
【0038】
(4)靴下1は、X字型サポート部24と踵部40とに囲まれた後方三角領域部26とをさらに含み、後方三角領域部26の弾性率が、X字型サポート部24および第2固定部38の弾性率よりも低くするようにした。これにより、X字型サポート部24を足の土踏まずにフィットさせることができ、心地よい着用感が得られる。
【0039】
以上の一実施形態の靴下1を次のように変形することができる。
X字型サポート部24の踵部50側を固定できれば、第2固定部26、第3固定部52および踵後ろ部54のうち、第2固定部26のみを靴下1に形成してもよい。また、X字型サポート部24の踵部50側を固定できれば、第2固定部26、第3固定部52および踵後ろ部54のうち、第3固定部52および踵後ろ部54のみを靴下1に形成してもよい。さらに第2固定部26、第3固定部52および踵後ろ部54のうち、第2固定部26および踵後ろ部54のみを靴下1に形成してもよい。
【0040】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることは可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0041】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成になんら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 靴下
10 つま先部
20 足底部
22 前方三角領域部
24 X字型サポート部
26 後方三角領域部
30 足甲部
32 指つけ根メッシュ部
34 第1固定部
36 メッシュ部
38 第2固定部
40 踵部
50 足首部
52 第3固定部
54 踵後ろ部
56 口ゴム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つま先部と、足底部と、足甲部と、踵部と、足首部とを備えた靴下であって、
前記足底部がX字型のサポート部を有し、
前記足甲部が前記サポート部のつま先部側を固定する第1の固定部をつま先部側に有し、
前記足甲部が前記サポート部の踵部側を固定する第2の固定部を足首部側に有し、および/または前記足首部が前記サポート部の踵部側を固定する第3の固定部を足甲部側に有し、
前記サポート部、前記第1の固定部、前記第2の固定部および前記第3の固定部が高弾性材から構成される靴下。
【請求項2】
前記サポート部が、足の親指のつけ根に対応する位置から踵の外側に対応する位置に延びる第1のX字構成要素および足の小指のつけ根に対応する位置から踵の内側部分に対応する位置に延びる第2のX字構成要素を有し、
前記第1の固定部が、前記足甲部の足の親指のつけ根に対応する位置から小指のつけ根に対応する位置に延びる部分に配置され、
前記第2の固定部が、前記足甲部の足首部に近接する足の甲の後部を覆う領域に配置され、
前記第3の固定部が、前記足首部の外周の前記踵部側に配置される請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記サポート部と前記つま先部とに囲まれた三角領域部とをさらに含み、
前記三角領域部の弾性率が、前記サポート部および前記第1の固定部の弾性率よりも低い請求項2に記載の靴下。
【請求項4】
前記サポート部と前記踵部とに囲まれた三角領域部とをさらに含み、
前記三角領域部の弾性率が、前記サポート部および前記第2の固定部の弾性率よりも低い請求項2に記載の靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−46838(P2012−46838A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188113(P2010−188113)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(594137960)株式会社ゴールドウイン (19)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【Fターム(参考)】