説明

【課題】 甲バンドの微調整機能を高めること
【解決手段】所定の幅および長さを有し、面ファスナーの雌面を接合した雌面接合固着部材5をタング2の一方の側部3の所定の位置に固着し、雌面接合固着部材5と着脱自在に契合し、面ファスナーの雄面を接合した雄面接合可動部材6をフリーの状態とし、締結片12の一方の端部9を、雄面接合可動部材6の爪先側端部10に固着し、延長部をループ7の中を挿入し反転し、他方の端部11は自由端にし、締結片13の一方の端部を雌面接合固着部材5の踵側端部に固着し、締結片13の延長部をループ8の中を挿入し、締結片13の他方の端部14を雄面接合可動部材6の踵側端部16に固着し、締結片12の自由端部11の裏面16に面ファスナーの雄面を接合し、締結片12が締結片12の自由端部11と対向する面17に面ファスナーの雌面を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴に関する。より詳細に述べれば、本発明は、甲のタングの一方の側部から対向する側部へタングを跨ぐ状態で装着されている甲バンドを改良した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明で使用する用語「甲バンド」は、靴ひも、或いは尾錠等に代えて、布帛に面ファスナーを固着して、面ファスナーの雄面と雌面を契合して甲を締めるものと定義する。
【0003】
面ファスナーの代表的な商品としては、プラスチック製繊維製の小さなループが密接状態で植え付けられたループ面、即ち雌面と、先端が細かなカギ状になているフック面、即ち雄面から構成されている、いわゆる「マジックテープ」((株)クラレの登録商標)が代表的であるが、その他に、同じ面にフックとループを並べた「フリーマジック」、フック面がマッシュループ形状になっている「マジタッチ」或いは「マジックハード」、フックが矢尻状になっている「マジロック」、フック及びループの両面がマッシュルーム形状になっている「マルチロック」等がある。本発明の用語「面ファスナー」はこれらを包含する。
【0004】
甲バンドは、靴の甲のタングの一方の側部から対向する側部へ跨がせ、ループへ挿入して反転して、対向する面ファスナーの雄面と雌面を契合して甲を締めるものである。甲バンドに使用する面ファスナーは、雄面と雌面の契合は容易にできるが、一旦契合すると強力に結合し、紐のように歩行時にゆるむこともなく、靴の着脱が容易になり、紐を結ぶことの煩わしさから解放されたため、幼児、高齢者のみならず、靴の締結具として広く普及している。
【0005】
本発明で使用する用語「タング」は、左右の腰が山形に盛り上がった箇所で、靴ひもで締結するタイプの靴の鳩目脇に相当する箇所と定義する。
【0006】
本発明で使用する用語「雌面接合固着部材」は、表面にファスナーの雌面が接合され、タングの所定位置に固着されている甲バンドの部材と定義する。
【0007】
本発明で使用する用語「雄面接合固着部材」は、表面にファスナーの雄面が接合された甲バンドの部材と定義する。
【0008】
従来の甲バンドの構成および欠点を図2を参照して説明する。図2は、従来の甲バンド11を装着した右足用の靴の斜視図である。
【0009】
従来の甲バンド11は、
(1)タング2の一方の側18に固着され所定の幅および長さを有する雌面接合固着部材19と、
(2)締結片20であって、その端部21を、固着部材19の爪先方向端部22に固着させ、その延長部23をタング2を遊架させ、タング2の左側に固着させた金属製または合成樹脂製のループ24の中を挿入させ反転さえた締結片20と、
(3)締結片25であって、その端部26を、固着部材19の踵方向端部27に固着させ、その延長部28をタング2を遊架させ、タング2の左側に固着させた金属製または合成樹脂製のループ29の中を挿入させ反転させた締結片25と、
(4)締結片20の端部30と締結片25の端部31に固着された雄面接合可動部材32とから構成されていて、
(5)雌面接合固着部材19の表面には面ファスナーの雌面が接合されていて、雄面接合可動部材32が雌面接合固着部材19と対向する面には面ファスナーの雄面が接合されている構造になっている。
【0008】
この従来の甲バンドを使用して甲を締めるには、足を入れた後、雄面接合可動部材32を指で夾んで、締結片20及び締結片25を、希望する位置まで緩め、或いは締めてから、雄面接合可動部材32の裏面に接合されている面ファスナーの雄面と、
雌面接合固着部材22の表面に接合されている面ファスナーの雌面とを契合して行う。
【0009】
この従来の甲バンドの特徴は、締結片20及び締結片25が、それらの端部30と31が一緒に雄面接合可動部材32に固定されているので、雄面接合可動部材32を動かすと、雄面接合可動部材32が動いた距離だけ、締結片20及び締結片25が同時に動くようになっていることである。
【0010】
従って、この従来の甲バンドの欠点は、一旦甲バンドを締めたあとで、甲の爪先側だけを微調整して強く締め直すか又は緩めたいと思っても、締結片20か締結片25のどちらか一方だけを動かす事が不可能なため、雄面接合可動部材32を雌面接合固着部材19から引き剥がして、再度やり直さなければならない点である。即ち、微調整が不可能なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明が解決しようとする主たる課題は、甲のタングの一方の側部から対向する側部へタングを跨ぐ状態で装着されていて、面ファスナーの雄面と雌面を契合させて甲を締めるタイプの甲バンドの微調整機能を高めることである。
【0012】
発明が解決しようとする特定的な課題は、甲のタングの一方の側部から対向する側部へタングを跨ぐ状態で装着されていて、面ファスナーの雄面と雌面を契合させて甲を締めるタイプの甲バンドを構成する少なくとも2個の締結片の一方を着脱自在に装着し、それにより随時微調整を可能ならしめることである。
【0013】
発明が解決しようとするその他の課題および利点は以下逐次明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段は、たとえば右足の靴の場合、甲のタングの右側に固着させる雌面接合固着部材と、雌面接合固着部材と契合させる雄面接合可動部材と、少なくとも2個の締結片から構成される甲バンドの、少なくとも1個の締結片の端部と雄面接合可動部材を着脱自在に接合し、そのことにより、少なくとも1個の締結片をフリー状態にしておき、随時希望する位置で面ファスナーを契合できるようにすることである。
【0015】
すなわち、上記課題を解決するための手段は、靴の甲のタングの一方の側部から対向する側部へタングを跨ぐ状態で装着されていて、面ファスナーの雄面と雌面を契合して甲を締めるための甲バンドであって、イ。タングの一方の側部の所定の位置に固着され所定の幅および長さを有する雌面接合固着部材と、ロ。雌面接合固着部材と着脱自在に契合する雄面接合可動部材と、ハ。タングの他方の側部の所定の位置に固着された少なくも2個のループと、ニ。端部が雄面接合可動部材の爪先側端部に固着されていて、延長部がループの中を挿入され反転されて端部が自由端になっている締結片と、ホ。端部が雌面接合固着部材の踵側端部に固着されていて、延長部がループの中を挿入されていて、その端部が雄面接合可動部材の踵側端部に固着されている締結片とを備えていて、(1)雌面接合固着部材の表面に面ファスナーの雌面が接合されていること、(2)雌面接合固着部材と対向していて雌面接合固着部材と契合する雄面接合可動部材の裏面に面ファスナーの雄面が接合されていること、(3)締結片の自由端部の裏面に面ファスナーの雄面が接合されていること、(4)締結片が締結片の自由端部と対向するに面ファスナーの雌面が接合されていること、を特徴とする甲バンドである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した発明により、靴の履用時には、甲バンドの雌面接合固着部材と雄面接合可動部材を契合して大まかな締め付けを行い、次いで締結片の自由端部の裏面に接合されている面ファスナーの雄面と、締結片が締結片の自由端部と対向する面に接合されているファスナーの雌面を随時自在に契合することができるので、歩行時にも雌面接合固着部材と雄面接合可動部材を契合を解除せずに、締結片の自由端部と自由端部と対向する面の契合だけで甲バンドの締付け力を微調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の甲バンドを装着した靴の斜視図である。図1に示したように、本発明の甲バンドは、靴1の甲のタング2の一方の側部3から対向する側部4へタング2を跨ぐ状態で装着されていて、雌面接合固着部材5と、雌面接合固着部材5と着脱自在に契合する雄面接合可動部材6と、タング2の他方の側部4の所定の位置に固着された少なくも2個のループ7,8と、締結片12,13とから主として構成されている。
【0019】
所定の幅および長さを有する雌面接合固着部材5は、タング2の一方の側部3の所定の位置に固着されていて、その表面には面ファスナー、たとえば「マジックテープ」((株)クラレの登録商標)の雌面が接合されている。
【0020】
雌面接合固着部材5と着脱自在に契合する雄面接合可動部材6は、全体がフリーの状態である。雄面接合可動部材6の裏面には、面ファスナー、たとえば「マジックテープ」((株)クラレの登録商標)の雄面が接合されている。
【0021】
締結片12の一方の端部9は、雄面接合可動部材6の爪先側端部10に固着されている。締結片12の延長部はループ7の中を挿入され、反転されてその他方の端部11は自由端になっている。
【0022】
締結片13の一方の端部(図番なし)は、雌面接合固着部材5の踵側端部(図番なし)に固着されている。締結片13の延長部はループ8の中を挿入されている。締結片13の他方の端部14は雄面接合可動部材6の踵側端部16に固着されている。
【0023】
そして、締結片12の自由端部11の裏面16には面ファスナー、たとえば「マジックテープ」((株)クラレの登録商標)の雄面が接合されていて、締結片12が締結片12の自由端部11と対向する面17には、面ファスナー、たとえば「マジックテープ」((株)クラレの登録商標)の雌面が接合されていることを特徴とする。
【0024】
この構成により、靴の履用時には、甲バンドの雌面接合固着部材5と雄面接合可動部材6を契合して大まかな締め付けを行い、次いで締結片12の自由端部11の裏面に接合されている面ファスナーの雄面と、締結片12が締結片12の自由端部11と対向する面17に接合されているファスナーの雌面を随時自在に契合することができるので、歩行時にも雌面接合固着部材5と雄面接合可動部材6の契合を解除せずに、締結片12の自由端部11と自由端部11と対向する面17の契合だけで甲バンドの締付け力を微調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上詳述したように、本発明の甲バンドは、靴の履用時には、甲バンドの雌面接合固着部材5と雄面接合可動部材6を契合して大まかな締め付けを行い、次いで締結片12の自由端部11の裏面に接合されている面ファスナーの雄面と、締結片12が締結片12の自由端部11と対向する面17に接合されているファスナーの雌面を随時自在に契合することができるので、歩行時にも雌面接合固着部材5と雄面接合可動部材6の契合を解除せずに、締結片12の自由端部11と自由端部11と対向する面18の契合だけで甲バンドの締付け力を微調整することができるので、通常の健常者はもとより、幼児、高齢者も簡単に靴の甲への締め付けを調整することができるので、甲バンドの用途が拡大される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の甲バンドの一例を示す斜視図。
【図2】従来技術の甲バンドの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
1 靴
2 タング
3 タングの一方の側部
4 タングの他方の側部
5 雌面接合固着部材
6 雄面接合可動部材
7 ループ
8 ループ
9 締結片12の一方の端部
10 雄面接合可動部材6の爪先側端部
11 締結片12の自由端部
12 締結片
13 締結片
14 締結片13の他方の端部
15 接合可動部材6の踵側端部
16 自由端部11の裏面
17 自由端部11と対向する面
18 タング2の一方の側
19 雌面接合固着部材
20 締結片
21 締結片20の端部
22 固着部材19の爪先方向端部
23 延長部
24 ループ
25 締結片
26 締結片25の端部
27 固着部材19の踵方向端部
28 延長部
29 ループ
30 締結片20の端部
31 締結片25の端部
32 雄面接合可動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴1の甲のタング2の一方の側部3から対向する側部4へタング2を跨ぐ状態で装着されていて、面ファスナーの雄面と雌面を契合して甲を締めるための甲バンドであって、
イ。バンプ2の一方の側部3の所定の位置に固着され所定の幅および長さを有する雌面接合固着部材5と、
ロ。雌面接合固着部材5と着脱自在に契合する雄面接合可動部材6と、
ハ。タング2の他方の側部4の所定の位置に固着された少なくも2個のループ7、8と、
ニ。一方の端部9が雄面接合可動部材6の爪先側端部10に固着されていて、延長部がループ7の中を挿入され反転されて他方の端部11が自由端になっている締結片12と、
ホ。一方の端部(図番なし)が雌面接合固着部材5の踵側端部(図番なし)に固着されていて、延長部がループ8の中を挿入されていて反転され他方の端部14が雄面接合可動部材6の踵側端部15に固着されている締結片13とを備えていて、
(1)雌面接合固着部材5の表面に面ファスナーの雌面が接合されていること、
(2)雌面接合固着部材5と対向していて雌面接合固着部材5と契合する雄面接合可動部材6の裏面に面ファスナーの雄面が接合されていること、
(3)締結片12の自由端部11の裏面16に面ファスナーの雄面が接合されていること、
(4)締結片12が締結片12の自由端部11と対向する面17に面ファスナーの雌面が接合されていること、を特徴とする甲バンド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−110310(P2006−110310A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332426(P2004−332426)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】