説明

鞍乗り型車両の灯火器組立体

【課題】運転者が乗車状態でポジションライトの明かりを利用しやすくする灯火器の構造提供する。
【解決手段】ポジションライト50が、メータ装置110の周囲を覆うメータカバー55に設けられてメータ装置110の前方に配置される。メータカバー55は、その前面55fが側面視でメータ装置110の前面88fの延在方向と略一致し、かつポジションライト50の前面が、メータカバー55の前面55fと略面一に位置設定される。灯火器50は、メータ装置110の前部に形成される凹部90に対して上下方向および前後方向において重なり合う位置に配置される。メータカバー55に、ポジションライト50を外部に臨ませる灯火器用開口865が形成され、ポジションライト50と、メータ装置110との間に灯火器用開口865よりも大きく設定される遮蔽壁92を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の灯火器組立体に関し、特に、メータ装置を有する鞍乗り型車両用の灯火器組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型車両において、メータ装置を覆うカバー部材内に灯火器であるポジションライトを備えたものが知られる。例えば、特許文献1には、ハンドルカバー内にホーンおよびポジションライトを収容したスクータ型二輪車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3470826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動二輪車は、郵便物、新聞、および宅配便貨物等の配達用として便利に使用される。自動二輪車を配達用に使用する際、ハンドルカバー内に収容されたポジションライトの明かりは、夜間、運転者が書類や地図を見て配達先等を確認するために利用されることがある。しかし、例えば、特許文献1に開示されている自動二輪車のポジションライトはメータ装置よりも前方に配置されているので、書類や地図等にポジションライトの光をあてるためにはメータ装置を越えてポジションライトの前下方まで書類や地図等を持った手を大きく伸ばさなければならないという不便さがある。この不便さは、ポジションライトの位置を運転者側に近付けることで解消されるが、ポジションライトの移動に伴って、その後方に位置するメータ装置を運転者側に接近させるかメータ装置を小さくする必要が生じるので、メータ装置の視認性を犠牲にしてしまう可能性がある。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、メータ装置の視認性を犠牲にすることなく、乗車姿勢の運転者による灯火器(例えば、ポジションライト)の利用性を高めるのに好適な鞍乗り型車両の灯火器組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、メータ装置(110)の周囲を覆うカバー部材(55)と、該カバー部材(55)に設けられて前記メータ装置(110)の前方に配置される灯火器(50)とを有する鞍乗り型車両の灯火器組立体において、前記カバー部材(55)の前面(55f)と前記メータ装置(110)の前面(88f)とが側面視で略同一方向に延在しており、かつ灯火器(50)の前面が、前記カバー部材(55)の前面(55f)と略面一に位置設定されているとともに、前記灯火器(50)が、前記メータ装置(110)の前部に形成される凹部(90)に対して上下方向および前後方向において重なり合う位置に配置される点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記灯火器(50)が、後部にカプラ部(91)を備え、該カプラ部(91)が、前記凹部(90)側に突出して配置される点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記カバー部材(55)に、前記灯火器(50)を外部に臨ませる灯火器用開口(865)が形成されているとともに、前記灯火器(50)と、前記メータ装置(110)との間に、正面視で灯火器用開口(865)よりも大きく設定される遮蔽壁(92)を備え、前記遮蔽壁(92)には、前記カプラ部(91)を挿通する挿通孔(921)が設けられる点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記灯火器(50)が、前記遮蔽壁(92)を介して前記カバー部材(55)に取り付けられる点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記カバー部材(55)が、アッパカバー(85)とロアカバー(86)とからなり、前記灯火器(50)は前記遮蔽壁(92)を介して前記ロアカバー(86)に取り付けられるものであって、前記ロアカバー(86)が上下方向に抜き方向を持つ型成型品であり、前記灯火器(50)は前後方向に抜き方向を持つ型成型品である点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記遮蔽壁(92)の外周が、前記カバー部材(55)の内壁に沿うように形成される点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、車体フレーム(2)の前部に配置されるヘッドパイプを取り囲むレッグシールド(45)と、前記レッグシールド(45)の前方に配置されて背面部(121)および床面部(122)を有する荷台(12)とを備え、前記荷台(12)の背面部(121)が前記レッグシールド(45)の前面(451)に沿うように配置される鞍乗り型車両に搭載され、前記カバー部材(45)は、その前面が側面視で前記レッグシールド(45)の前面(451)にほぼ沿うように形成される点に第7の特徴がある。
【発明の効果】
【0013】
第1、2の特徴を有する本発明によれば、カバー部材に取り付けた灯火器をその後方に位置するメータ装置側により接近させることができるので、運転者はメータ装置の視認性を犠牲にすることなく乗車状態のまま容易に手を伸ばして灯火器の明かりを利用して書類等を見ることができる。
【0014】
第3の特徴を有する本発明によれば、カバー部材の灯火器用開口よりも大きい遮蔽壁をメータ装置と灯火器との間に配置したので、メータ装置自体には水密性や防塵性を上げるための構成を設けることなく灯火器をメータ装置に近付けて配置できる上に、灯火器のカプラ部を挿通する挿通孔を遮蔽壁に設けたので、灯火器の位置をより一層後方寄りに近付けて配置できる。
【0015】
第4の特徴を有する本発明によれば、遮蔽壁の形状を変えるだけで、様々な種類の灯火器をカバー部材に取り付けたり、光軸を変更したりすることができる。
【0016】
第5の特徴を有する本発明によれば、それぞれに型抜き方向の異なる灯火器とロアカバーとを遮蔽壁を介して互いに取り付けるので、灯火器の形状を型成型が容易な単純形状に維持しつつ、灯火器をロアカバーに取り付けることができる。
【0017】
第6の特徴を有する本発明によれば、カバー部材に設けられる灯火器用の開口と灯火器との隙間からメータ装置の方に入る水やほこりを大幅に抑制することができる。
【0018】
第7の特徴を有する本発明によれば、車両前後方向中心側に寄せて荷物を荷台上に載せることで、マスの集中化ができるとともに、荷台背面部より前方に灯火器がはみ出さないので、荷台へ荷物を載せたり下ろしたりする際に灯火器が邪魔になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る灯火器組立体を備えた自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る灯火器組立体を備えた自動二輪車の正面図である。
【図3】自動二輪車の上部正面図である。
【図4】自動二輪車の上部左側面図である。
【図5】自動二輪車の上部を左上前方から見た斜視図である。
【図6】ステアリング軸に対する灯火器組立体の取り付け部を示す前下方から見た斜視図である。
【図7】メータ装置の左側面図である。
【図8】灯火器組立体の車速計の指針軸方向上方から見た上面図である。
【図9】灯火器組立体の正面図である。
【図10】図8の10−10断面図である。
【図11】図8における11−11断面図であり、締結ボス866にライト保持部材92を固定しているネジ99を通るメータ装置110の前後方向に沿った線上での断面図である。
【図12】図8における12−12断面図であり、ライト保持部材92にポジションライト50を取り付けている止めネジ97を通るメータ装置110の前後方向に沿った線上での断面図である。
【図13】アッパカバーを取り外した灯火器組立体の上面図である。
【図14】アッパカバーおよびライト保持部材を取り外した灯火器組立体の上面図である。
【図15】ポジションライトとライト保持部材とが組み立てられたライト組立体の正面図である。
【図16】ライト組立体の左側面図である。
【図17】図15の17−17断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。以下に参照する図1〜図7、図9〜図12、図15〜図17において、自動二輪車1の前方は符号Frで、左右はそれぞれ符号L、Rで、上方は符号Upで示す。また、図8、図13、図14は自動二輪車1に対して後傾斜している灯火器組立体10を示す図であり、図8、図13、図14においては、灯火器組立体10における車速計の指針軸111の軸方向における上方は符号MUpで示し、方向MUpに直交する前方を符号MFrで示す。
【0021】
自動二輪車1は車体フレーム2に懸架される内燃機関である単気筒4サイクルエンジン3を駆動源とする。車体フレーム2は、ヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21に先端が接合されて後端が下方に延びているメインフレーム22と、メインフレーム22から車体幅方向左右にそれぞれ分岐して車体後方寄りに延びている一対のリヤフレーム23と、メインフレーム22の後端部に接合される左右一対のハンガブラケット24とからなる。
【0022】
ヘッドパイプ21には、下端部に車軸4で前輪WFを支持するフロントフォーク5が操舵自在に支持される。フロントフォーク5から上部に延長されてヘッドパイプ21で支持されるステアリング軸6の上部には、ステアリングハンドル7が連結される。ステアリングハンドル7には、左右端にグリップ8L、8Rが取り付けられるとともに、グリップ8L、8Rにそれぞれ隣接して左ミラー9Lおよび右ミラー9Rが取り付けられる。ステアリングハンドル7は、図2から理解できるように、グリップ8L、8Rが設けられている車幅方向両端部が車幅方向中央部より高い位置にあり、このステアリングハンドル7の車幅方向中央部上方に灯火器組立体10が設けられる。灯火器組立体10は最前部に設けられるポジションライト(灯火器)50と、速度計等のメータ装置110(後述)とからなる。
【0023】
ヘッドパイプ21から前方にブラケット11が突出しており、このブラケット11には背面部121と床面部122とからなる荷台12が取り付けられる。本実施形態では、荷台12にはバスケット13が取り付けられている。荷台12の最前部にはヘッドライト14が設けられ、かつ荷台12の左右にはウィンカランプ15L、15Rがそれぞれ設けられる。ヘッドライト14の右下方には荷台12に支持されたホーン16が設けられる。
【0024】
フロントフォーク5の下端部には、車軸4の回転が伝達されるスピードメータケーブル17の一端が連結される。また、車軸4に近接してフロントブレーキを作動させるためのレバー18が設けられ、レバー18にはブレーキケーブル19の一端が連結される。スピードメータケーブル13の他端は灯火器組立体10内の速度計駆動部(図示しない)に連結される。ブレーキケーブル19の他端は右側グリップ8Rに近接して設けられるブレーキレバー20に連結される。
【0025】
エンジン3はシリンダ31とクランク室32とを備え、シリンダ31には吸気管33を介してエアクリーナ34が連結され、吸気管33にはスロットルボディ35が設けられる。シリンダ31の下方には排気管36が連結され、排気管36は後方のマフラ37に連結される。エンジン3の出力回転は図示しない減速機を介して駆動側スプロケット25に連結される。
【0026】
ハンガブラケット24には、車体幅方向に延在している枢軸26が設けられ、この枢軸26によって、後輪WRを支持するスイングアーム27が上下揺動自在に支持される。後輪WRの車軸28には従動側スプロケット29が連結され、駆動側スプロケット25および従動側スプロケット29間には駆動チェーン30が掛け渡されてエンジン3の動力が後輪WRに伝達される。スイングアーム27の後部は、リヤフレーム23に上端部が枢支されるリヤクッション31の下端部に連結されて車体フレーム2に懸架される。駆動チェーン30はチェーンケース32によって覆われる。ハンガブラケット24の下端にはメインスタンド39が取り付けられる。スイングアーム27の側部にはサイドスタンド40が取り付けられる。サイドスタンド40は跳ね上げられて車体に沿った位置に格納されている状態を示す。
【0027】
リヤフレーム23には、燃料タンク41が支持され、燃料タンク41の前下方にはバッテリ42と、エンジン3を制御するためのECU43とが設けられる。外装部品として、フロントフェンダ44、レッグシールド45、センタカバー46、サイドカバー47、およびリヤフェンダ48が設けられる。燃料タンク41の上方には乗員シート49が設けられる。乗員シート49は、燃料タンク41に上部から燃料を補給可能なように、開閉自在である。リヤフレーム23の後部には後部荷台51が取り付けられ、リヤフェンダ48には、テールライトや後部ウィンカランプ等を含むリヤライトユニット52が設けられる。
【0028】
図3は自動二輪車1の上部正面図、図4は同左側面図、図5は自動二輪車1の上部を左上前方から見た斜視図である。図3〜図5において、灯火器組立体10におけるメータ装置110は、駆動部101と表示部102とを備える。メータ装置110は全体が車体後方側で下向きに傾斜されていて、表示部102の表示面103が乗員シート49に座る運転者に指向するように配置される。駆動部101および表示部102はメータケース88に収容され、メータケース88はさらにメータカバー(カバー部材)55によってその周囲、つまり前側および上側が覆われる。メータカバー55の上部は、表示部102の上面を覆うメータレンズ105によって構成される。
【0029】
左右のミラー9L、9Rは、グリップ8L、8Rに対して車幅方向中央部寄りに隣接するスイッチボックス56L、56R上にミラーステム57L、57Rを介してそれぞれ立設される(便宜上、図4ではミラー9Lを、図5ではミラー9Rを図示していない)。ステアリングハンドル7には、少なくともミラー9L、9Rもしくはスイッチボックス56L、56Rと灯火器組立体10との間の範囲においてハンドルカバーは設けられておらず、ステアリングハンドル7がむき出し状態になっており、図3に示すように、ミラー9Rと灯火器組立体10の右上、およびミラー9Lと灯火器組立体10との間には大きい腕通し空間60L、60Rがそれぞれ維持されているので、運転者はこの腕通し空間60L、60Rを通して灯火器組立体10の前方まで容易に腕を伸ばすことができる。これにより、運転者は乗車したままの姿勢で地図や書類等を確認するためにポジションライト50の明かりを利用しやすくなる。
【0030】
灯火器組立体10ならびにスイッチボックス56L、56Rからは、多数の電線や信号線(ハーネス)、ならびにケーブル61等が引き出され、バッテリ42やECU43等、車体の各所に配線される。これら、ハーネスやケーブル等61を下方に案内しつつ保護するため、ハーネスやケーブル等62に直交してメータ装置110の傾斜面とほぼ平行に配置される環状のハーネスガイド62が設けられる。
【0031】
特に、図4に示すように、荷台12は、ヘッドパイプ11に接合されたブラケット11にステー111、112を介して連結され、荷台12に載せられたバスケット13の後部は連結プレート123を介して荷台の背面部121およびステー111に連結される。図4に示すように、ヘッドパイプ21を取り囲むレッグシールド45の前面451は、メータカバー55の前面に沿った線551から前方に突出しないように設定される。つまり、メータカバー55の前面とレッグシールド45の前面は略面一である。また、荷台12の背面部121は、レッグシールド45の前面451に沿い、レッグシールド45に近接して配置される。このように、荷台12をレッグシールド45に接近させて配置することにより、バスケット13に積まれた荷物が車両の前後方向中央部寄り寄せられるので安定感が増す。また、積まれた荷物の安定感が増すとともに、メータカバー55に設けたポジションライト55が荷台12側に出っ張っていないので、荷物の上げ下ろしに際してポジションライト55が邪魔になりにくい。
【0032】
ステアリングハンドル7の中央部は、ステアリング軸6の上部に設けられるハンドル支持プレート64に接合されるハンドル保持ブロック63によって上下から挟まれて保持される。
【0033】
図6はステアリング軸6に対する灯火器組立体10の取り付け部を示す前下方から見た斜視図である。図6において、メータカバー55の底面552には車幅方向左右対称位置に、下面が平坦な凸部である取り付けボス66が設けられる。取り付けボス66と同様の凸部(図示しない)は底面552の中央後部にも設けられる。これら3つの取り付けボス66の下面に上面が当接されてメータ支持プレート67が設けられる。メータ支持プレート67はボス66に当接する上面を含む主部分671と、主部分671の周りに立ち上がっている縁672とからなる。主部分671の裏面(下側)にはナット68が3箇所に溶接されており、メータカバー55の内側から取り付けボス66を貫通させたボルト69をこのナット68に螺合させることにより、メータ支持プレート67はメータカバー55に締め付け、固定される。
【0034】
メータ支持プレート67には、正面視略U字形に棒材を屈曲して形成され、水平部分701と垂直部分702とからなる連結部材70の上端が溶接等によって接合される。連結部材70の下部つまり水平部分701はステアリング軸カバー71の上面に溶接等によって接合される。ステアリング軸カバー71も、メータ支持プレートと同様、主部分711と縁712とを有するとともに、主部分711から下方に延在するスリーブ713を備える。スリーブ713は、ステアリング軸6の上端部分を受け入れる内径を有する筒体であり、このスリーブ713の下端にはフランジ部材714が接合される。
【0035】
フランジ部材714の下方において、ステアリング軸6には軸受けカバー72および軸受け(アンギュラ軸受けがよい)73と、軸受け73を固定するナット74が設けられる。ナット74はステアリング軸6に形成されるネジに螺合する。
【0036】
ステアリング軸カバー71の左右両側にはハーネスガイド62を取り付けるためのステー75が溶接される。ステー75とハーネスガイド62とは止めネジ76とナット77とを使って結合される。フランジ部材714の上面には、ハーネスを案内するための金具(ワイヤ)78が溶接される。メータ装置110の近くでハーネスやケーブル等を保持する部品も必要に応じて設けられる。例えば、ハーネスを固縛するためのファスナ79、80や連結部材70に溶接されている左右一対の金具81等である。
【0037】
図7は灯火器組立体10の左側面図、図8は灯火器組立体10の車速計指針軸111の軸方向上方から見た図、図9は灯火器組立体10の正面図、図10は図8の10−10断面図(車幅方向中央部での断面図)、図11は図8における11−11断面図であり、締結ボス866にライト保持部材92を固定しているネジ99を通るメータ装置110の前後方向に沿った線上での断面図である。また、図12は図8における12−12断面図であり、ライト保持部材92にポジションライト50を取り付けている止めネジ97を通るメータ装置110の前後方向に沿った線上での断面図である。なお、灯火器組立体10のカバー(メータカバー)55は、アッパカバー85およびロアカバー86からなる。アッパカバー85の上部には、外部に臨んでメータレンズ105が設けられる。ロアカバー86は側部から後部にかけた範囲を覆う側壁861と、前部(車体前方部)から前側部にかけた範囲を覆う前壁862と、底部を形成する下壁863とからなる。前壁862は側壁861や下壁863からさらに下方向に延出していて、前壁862および下壁863とのつながり部は下方に突出した顎864を形成している。
【0038】
メータカバー55の内側には、メータ駆動部101と表示部102を収容するメータケース88が配置される。なお、メータ装置110の表示部102は、速度計、燃料残量計、温度計、および距離計等、周知の部分からなり、駆動部101はこれら速度計、燃料残量計、温度計、および距離計等を駆動するための周知の構造を有するが、これらは周知のものを使用できるので、表示部102や駆動部101を収容するメータケース88のみでメータ装置110を示している。
【0039】
メータケース88はケース本体881と、ケース本体881の上部を覆うケースカバー882とからなる。ケース本体881は上部が開放された箱体であり、好ましくは、速度計の指針軸111の延伸方向(図10に符号Cで示す)に沿った方向に抜き方向を有する型成型品で形成される。ケースカバー882は、ケース本体881の開放部を覆う部材であり、メータ装置110の表示情報を外部から見通せるように開口部883を有する環状の部材である。ケース本体881とケースカバー882とが組み合わされたメータケース88にはメータレンズ105が被せられ、メータレンズ105の外周に形成される係合凸部106とケース本体881の外周に形成される係合爪107とが係合されてケース本体881、ケースカバー882およびメータレンズ105は一体に組み合わされる。図7ならびに図9〜図12には、この下壁863にメータ支持プレート67を結合するためのボルト69を下壁863と併せて図示している。
【0040】
メータカバー55の前面(つまりロアカバー86の前面)55fとメータケース88の前面88fとは、側面視で略同一方向に延在しており、かつポジションライト50の前面は前記メータカバー55の前面55fと略面一に位置設定される。これにより、ポジションライト50は指針軸の延伸方向Cに沿った方向に沿って平行に配置され、左右および上方向にはなんら遮るものがないので、運転者はメータ装置110の表示面(メータレンズ105の前面)を回避して、視認性を犠牲にすることなくポジションライト50を利用できる。
【0041】
図10に示すように、メータケース88のケース本体881の前下壁101には、車幅方向中央部領域で前下壁101から上後方に後退した後退壁100により凹部90が形成されており、この凹部90つまり後退壁100とロアカバー86の前壁862との間に形成した空間にポジションライト50が配置される。つまり、ポジションライト50は、上下方向および前後方向で凹部90と重なり合う位置に設けることによって、灯火器組立体10に対して、より上方、かつより後方に配置される。
【0042】
前壁862にはポジションライト50の前部が臨む位置に灯火器用開口865が形成される。ポジションライト50の後部に結合されるカプラ部91を含む。ポジションライト50から後方に延びたカプラ部91の下部には図示しないハーネスが接続されるソケット94が結合可能である。ポジションライト50の背後にはポジションライト50をメータカバー55に取り付けることができるポジションライト保持部材(以下、単に「ライト保持部材」という)92が設けられる。
【0043】
図10〜図12に加えて、図13および図14を参照してライト保持部材92を説明する。図13はメータカバー55のアッパカバー85を取り外した灯火器組立体10の上面図であり、図14はさらにポジションライト保持部材92を取り外した灯火器組立体10の上面図である。
【0044】
ライト保持部材92は灯火器組立体10の前面視で灯火器用開口865よりも大きい部材であり、かつカプラ部91が貫通可能なようにカプラ挿通孔921を有する。ライト保持部材92は、ポジションライト50をメータカバー55の下壁863に取り付けるために用いられるとともに、ポジションライト50の後部とメータケース88との間を区切っている。図13、図14からも理解されるように、ポジションライト50は、ライト保持部材92によって、その後部全体が覆われており、メータ装置110側とポジションライト50との間が隔離される。また、図10、図11、および図13から理解できるように、ライト保持部材92の外周はロアカバー86の内壁面に沿うように形成されている。したがって、ライト保持部材92はメータ駆動部101等を収容しているメータケース88側とポジションライト50との間における「遮蔽壁」として機能し、メータ装置110にまで埃や水が容易に入り込むのを防止する。
【0045】
メータカバー55の顎864にはメータ装置110の車幅方向左右対称に締結ボス866が形成されている。締結ボス866は斜め上後面(つまりボスの正面)に小径部867が形成されており、この小径部867の外周に嵌合する孔923がライト保持部材92に形成される。そして、締結ボス866に形成されたネジ孔に、小径部867より外径が大きいワッシャ868を介在させてネジ99を螺合させることによりライト保持部材92を締結ボス866に固定する。
【0046】
締結ボス866が形成された顎864と前壁862および下壁863を含むロアカバー86はメータ装置110の上下方向に抜き方向を持つ型成型品で形成し、ライト保持部材92はポジションライト50の光軸方向(前後方向)に抜き方向を有する型成型品で形成することができる。このような抜き方向が互いに交差する型成型品であっても、ライト保持部材92に、ロアカバー86に形成された締結ボス866の正面に形成される小径部867に適合する部分(孔923)を設けた形状とすることにより、光軸方向に抜き方向を有する型成型品として製作されるポジションライト50を、単純な連結構造によってロアカバー86に取り付けることができる。
【0047】
次に、ポジションライト50とライト保持部材92との取り付け態様を説明する。図15はポジションライト50とライト保持部材92とが組み立てられたライト組立体の正面図、図16は同左側面図、図17は図15の17−17断面図である。ライト保持部材92には、ポジションライト50の取り付け台となるボス922が形成され、ポジションライト50には側部から左右に張り出したプレート部501を備えている。プレート部501にはボス922の外周に張り出した4箇所のリブ924の前端に段差を形成している小径部925の外周に適合可能な円形部を有する切り欠き502が形成されている。ボス922には、ネジ孔926が形成されており、ネジ孔926にはワッシャ95、96を介して前方から止めネジ97が螺挿され、ワッシャ95で抜け止めされた状態でボス922とプレート部501とが結合される。
【0048】
本発明を、好適な実施形態に従って説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で変形することができる。例えば、メータカバー55に設けられるポジションライト50を灯火器の一例としたが、ポジションライトに代えてヘッドライトをメータカバーに収容した灯火器組立体としてもよい。また、本発明が適用される鞍乗り型車両は二輪車に限らず、かつ内燃エンジンとは別に、あるいは内燃エンジンとともに電動モータを駆動源とする車両であってもよい。また、ライト保持部材92は型成型品に限らない。
【符号の説明】
【0049】
1…自動二輪車、 2…車体フレーム、 3…エンジン、 7…ステアリングハンドル、 10…灯火器組立体、 12…荷台、 14…ヘッドライト、 21…ヘッドパイプ、 27…スイングアーム、 45…レッグシールド、 50…ポジションライト(灯火器)、 55…メータカバー(カバー部材)、 85…アッパカバー、 86…ロアカバー、 88…メータケース、 90…凹部、 91…カプラ部、 92…ライト保持部材(遮蔽壁)、 110…メータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メータ装置(110)の周囲を覆うカバー部材(55)と、該カバー部材(55)に設けられて前記メータ装置(110)の前方に配置される灯火器(50)とを有する鞍乗り型車両の灯火器組立体において、
前記カバー部材(55)の前面(55f)と前記メータ装置(110)の前面(88f)とが側面視で略同一方向に延在しており、かつ灯火器(50)の前面が、前記カバー部材(55)の前面(55f)と略面一に位置設定されているとともに、
前記灯火器(50)が、前記メータ装置(110)の前部に形成される凹部(90)に対して上下方向および前後方向において重なり合う位置に配置されることを特徴とする鞍乗り型車両の灯火器組立体。
【請求項2】
前記灯火器(50)が、後部にカプラ部(91)を備え、該カプラ部(91)が、前記凹部(90)側に突出して配置されることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の灯火器組立体。
【請求項3】
前記カバー部材(55)に、前記灯火器(50)を外部に臨ませる灯火器用開口(865)が形成されているとともに、
前記灯火器(50)と、前記メータ装置(110)との間に、正面視で灯火器用開口(865)よりも大きく設定される遮蔽壁(92)を備え、
前記遮蔽壁(92)には、前記カプラ部(91)を挿通する挿通孔(921)が設けられることを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両の灯火器組立体。
【請求項4】
前記灯火器(50)が、前記遮蔽壁(92)を介して前記カバー部材(55)に取り付けられることを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両の灯火器組立体。
【請求項5】
前記カバー部材(55)が、アッパカバー(85)とロアカバー(86)とからなり、
前記灯火器(50)は、前記遮蔽壁(92)を介して前記ロアカバー(86)に取り付けられるものであって、
前記ロアカバー(86)が上下方向に抜き方向を持つ型成型品であり、前記灯火器(50)は前後方向に抜き方向を持つ型成型品であることを特徴とする請求項4記載の鞍乗り型車両の灯火器組立体。
【請求項6】
前記遮蔽壁(92)の外周が、前記カバー部材(55)の内壁に沿うように形成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の鞍乗り型車両の灯火器組立体。
【請求項7】
車体フレーム(2)の前部に配置されるヘッドパイプを取り囲むレッグシールド(45)と、前記レッグシールド(45)の前方に配置されて背面部(121)および床面部(122)を有する荷台(12)とを備え、前記荷台(12)の背面部(121)が前記レッグシールド(45)の前面(451)に沿うように配置される鞍乗り型車両に搭載され、
前記カバー部材(45)は、その前面が側面視で前記レッグシールド(45)の前面(451)にほぼ沿うように形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鞍乗り型車両の灯火器組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−112258(P2013−112258A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261856(P2011−261856)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)