説明

音量制限装置及び集音器

【課題】単純な回路構成でありながら外部の音声レベルに応じて突発音を制限することが可能な音量制限装置及び集音器を提供することを目的とする。
【解決手段】音量制限装置50a、50b及び集音器80は、減衰部から音量制限装置外部へと出力される信号を検出し、その検出したレベルと時間的なレベルの変化とに応じて、減衰部の動作を制御する。よって、突発音Sが入力したときの周囲の音声レベルに応じて突発音Sの制限レベルを変化させることができる。従って、周囲の音声レベルがいかなる場合であっても突発音によるユーザのショックを効果的に軽減することができる。また、回路構成が単純であるため装置自体を安価で提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間的に大音量が入力したときに生じる突発音を抑制する音量制限装置及び、同音量制限装置を備えた集音器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
補聴器等の集音器は、周囲の外部音声を集音しイヤホン等を介してユーザ等に伝えるものであり、特に高齢者等が衰えた聴覚を補うために使用する。このような集音器は、自動車の警笛や物がぶつかった際に生じる衝撃音などの突発的でかつ大音量の外部音声をも増幅してイヤホンから出力する。これら突発音がイヤホンから突然出力されたときに感じるユーザのショックは並々ならぬものであり、集音器の使用を躊躇させるほどのものである。
【0003】
このため集音器には、突発音が入力しても予め定められた制限レベル以上の音声が出力されないよう出力制限回路やAGC(Automatic Gain Control)回路等の音量制限装置が組み込まれているものが多い。ここで[特許文献1]には、高音域の周波数成分のみを抑制する音量制限装置を備えた補聴器に関する発明が開示されている。
【0004】
ただし、これら音量制限装置の制限レベルは基本的に固定されている。このような制限レベルが固定されている従来の音量制限装置では、図18(a)に示すように、会話音声や周囲の雑音が比較的高い音声レベルVhの状態で突発音Sが入力した場合、この突発音Sを固定された制限レベルVhsにまで減衰、抑制して出力する。この様に比較的高い音声レベルVhの状態では、制限レベルVhsと音声レベルVhとのレベル差は比較的小さく、音量制限装置は有効に機能しユーザはさほどのショックを受けることはない。しかしながら、図18(b)に示すように、周囲が静寂で音声レベルが比較的低いVLの状態で突発音Sが入力した場合でも、従来の音量制限装置は突発音Sを固定された制限レベルVhsにまでしか減衰、抑制しない。このような場合、音声レベルVLと制限レベルVhsとのレベル差は大きく、音量制限装置が機能したとしてもユーザはショックを受けることとなる。
【0005】
この点に関して、下記[特許文献2]では、制限レベルの上限が固定された音量制限装置に加え、入力信号における一定時間内の平均振幅に応じて突発音の判定閾値を変化させる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−058999号公報
【特許文献2】特開平6−276599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、[特許文献2]に記載の発明は、入力信号をデジタル信号化して処理しており回路構成が複雑で高コストであるという問題点がある。また、入力信号を時間遅延させた上で突発音の抑制を行うため、集音器からの音声と実際の音声とにタイムラグが生じて音声が二重に聞こえたり、会話相手の口の動きと聞こえる音声とがずれるなどして、ユーザが違和感を覚えるという問題点がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、単純な回路構成でありながら外部の音声レベルに応じて突発音を制限することが可能な音量制限装置及び集音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)入力された音声信号を所定の条件のときに減衰させる減衰部30と、
前記減衰部30から出力される信号を検出し、前記音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する第1の状態のときは、前記減衰部30が前記音声信号を減衰させるように前記減衰部30を制御し、前記第1の状態のときよりも前記音声信号のレベルが時間経過とともに緩やかに増大する第2の状態のときは、前記減衰部30が前記音声信号を減衰させないように、または、前記減衰部30が前記音声信号を減衰させる減衰量が前記第1の状態のときよりも少なくなるように前記減衰部30を制御する減衰制御部20と、を有することを特徴とする音量制限装置50a、50bを提供することにより、上記課題を解決する。
(2)前記減衰制御部20は、検出感度制御部36と、前記減衰部30から出力され前記検出感度制御部36を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じて前記減衰部30の減衰を制御するための制御信号を出力するレベル検出部38と、前記制御信号を所定の時間遅延させる遅延部34と、を有し、
前記検出感度制御部36は、前記遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えた場合、前記減衰部30から前記レベル検出部38へと出力される信号のレベルを減衰させ、
前記第1の状態は、前記遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えない状態、かつ、前記制御信号が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた状態であることを特徴とする上記(1)記載の音量制限装置50aを提供することにより、上記課題を解決する。
(3)前記減衰制御部20は、検出感度制御部36と、前記減衰部30から出力される音声信号のレベルに応じて、前記減衰部30の減衰を制御するための制御信号を出力するレベル検出部38と、前記検出感度制御部36を経た前記制御信号を所定の時間遅延させる遅延部34と、を有し、
前記検出感度制御部36は、前記遅延部34によって遅延された前記制御信号が第1の閾値を超えた場合、前記制御信号のレベルを減衰させ、
前記第1の状態は、前記遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えない状態、かつ、前記制御信号が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた状態であることを特徴とする上記(1)記載の音量制限装置50aを提供することにより、上記課題を解決する。
(4)前記減衰制御部20は、遅延部34と、検出感度制御部36と、前記減衰部30から出力され前記検出感度制御部36を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じて前記減衰部30の減衰を制御するための制御信号を出力するレベル検出部38と、を有し、
前記検出感度制御部36は、前記制御信号が第1の閾値を超えた後に、前記減衰部30から前記レベル検出部38へと出力される信号のレベルを前記第1の閾値まで減衰させ、
前記遅延部34は、前記検出感度制御部36が、信号を第1の時間かけて前記第1の閾値まで減衰させるように、前記検出感度制御部36の減衰動作を遅延し、
前記第1の状態は、前記検出感度制御部36が信号のレベルを前記第1の閾値まで減衰させている間に、前記制御信号が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた状態であることを特徴とする上記(1)記載の音量制限装置50aを提供することにより、上記課題を解決する。
(5)前記減衰制御部20は、検出感度制御部36と、
前記減衰部20から出力され前記検出感度制御部36を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じた信号を第1の時間遅延させた信号である第1制御信号を前記検出感度制御部36に出力する第1の遅延部34aと、
前記減衰部30から出力され前記検出感度制御部36を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じた信号を第1の時間よりも短い第2の時間遅延させた信号である第2制御信号を前記減衰部30に出力する第2の遅延部34bと、を有し、
前記検出感度制御部36は、前記第1制御信号が第1の閾値を超えた場合、前記減衰部30から前記第2の遅延部34bへと出力される信号のレベルを減衰させ、
前記第1の状態は、前記第2制御信号が第2の閾値を超えた状態であり、
前記検出感度制御部36は、前記第1制御信号が第1の閾値を超えた場合に、前記第2制御信号が前記第2の閾値を超えないように、前記減衰部30から前記第2の遅延部34bへと出力される信号のレベルを減衰させることを特徴とする上記(1)記載の音量制限装置50bを提供することにより、上記課題を解決する。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の音量制限装置50a、50bと、外部の音声を電気的な音声信号に変換し前記音量制限装置50a、50bの減衰部30に入力する集音部42と、前記音量制限装置50a、50bの前記減衰部30から出力される音声信号を音声に変換する音声出力部40と、を有することを特徴とする集音器80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る音量制限装置及び集音器は、外部の音声レベルに応じて突発音を制限するため、突発音によるユーザへのショックを常に軽減することができる。また、回路構成が単純であるため装置自体を安価で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る第1の形態の音量制限装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1の形態の音量制限装置を示す回路図である。
【図3】本発明に係る第1の形態の音量制限装置の変形例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る第1の形態の音量制限装置の変形例を示す回路図である。
【図5】本発明に係る第1の形態の音量制限装置の動作を説明する図である。
【図6】本発明に係る第1の形態の音量制限装置の動作を説明する図である。
【図7】本発明に係る第2の形態の音量制限装置を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る第2の形態の音量制限装置を示す回路図である。
【図9】本発明に係る第2の形態の音量制限装置の変形例を示す図である。
【図10】本発明に係る第2の形態の音量制限装置の変形例を示す図である
【図11】本発明に係る第2の形態の音量制限装置の動作を説明する図である。
【図12】本発明に係る第2の形態の音量制限装置の信号波形を示す図である。
【図13】本発明に係る第2の形態の音量制限装置の動作を説明する図である。
【図14】本発明に係る第2の形態の音量制限装置の信号波形を示す図である。
【図15】本発明に係る音量制限装置の突発音抑制効果を示す図である。
【図16】本発明に係る集音器を示すブロック図である。
【図17】本発明に係る音量制限装置の突発音抑制効果を説明する図である。
【図18】従来技術における突発音の抑制を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る音量制限装置及び集音器の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示す第1の形態に係る音量制限装置50aは、音声信号が入力する入力端10と、入力された音声信号を所定の条件のときに減衰させる減衰部30と、減衰部30から出力する信号を検出し音声信号の状態に応じて減衰部30を制御する減衰制御部20と、減衰部30からの出力信号を後述の音声出力部40側に出力する出力端12と、を有している。
【0013】
また、減衰制御部20は、検出感度制御部36と、減衰部30から出力し検出感度制御部36を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じて減衰部30の減衰を制御する制御信号を出力するレベル検出部38と、制御信号を所定の時間遅延させる遅延部34と、を有している。
【0014】
次に、音量制限装置50aの構成を更に詳しく説明する。図2は音量制限装置50aの一実施の形態を示す回路図である。尚、図2中の点P1における信号が減衰部30から出力され検出感度制御部36を経た音声信号であり、点Pにおける信号が制御信号である。また、点Qにおける信号が遅延部34によって遅延された制御信号である。
【0015】
また、図2における減衰制御部20の検出感度制御部36とレベル検出部38は、図3に示すように検出感度制御部36の前段にレベル検出部38を配置しても良い。検出感度制御部36の後段にレベル検出部38が位置する場合、音声信号に瞬間的な突発音が入力した場合にレベル検出部38のコンデンサ素子がこの突発音の音声信号により充電される。そして、このコンデンサ素子に充電された電荷はその後、レベル検出部38のリリース時定数に従って放電される。この放電時間は数秒間となる場合があり、この間、減衰部30が動作し続けて音量制限装置50aの出力が一時的に無音状態となる可能性がある。しかしながら、図3の構成によれば、レベル検出部38の後段に検出感度制御部36と遅延部34とが配置されるため、コンデンサ素子からの放電時には検出感度制御部36が機能してレベル検出部の出力電圧を急速に低下させる。このため、減衰部30の動作時間は著しく短くなり、よって無音状態の時間を大幅に短縮することができる。尚、図3の音量制限装置50aにおけるバッファアンプQ3の位置は検出感度制御部36と遅延部34との間に設けても良いし、検出感度制御部に可変利得増幅回路を用いバッファアンプQ3の機能を兼ねるようにしても良い。
【0016】
また、音量制限装置50aは図4に示すように検出感度制御部36と遅延部34とを組み合わせて構成しても良い。トランジスタ素子を大振幅の交流信号の減衰制御に用いると歪が増大し制御の直線性が損なわれるが、図4の構成によればトランジスタ素子Q2は直流電流だけを扱うため理想的な制御を行う事ができる。
【0017】
次に、図2、図5、図6を用いて、音量制限装置50aの動作を説明する。尚、図5、図6においては、説明の都合上、増幅部14とバッファアンプQ3による増幅等の影響は無視するものとする。尚、図5(a),図6(a)は入力端10に入力する音声信号を示し、図5(b) ,図6(b)は、図2の点Pにおける制御信号を示し、図5(c),図6(c)は出力端12における出力信号を示している。
【0018】
先ず、入力端10に入力する音声信号のレベルが、図5(a)に示すように、時間経過とともに緩やかに増大する状態の場合を説明する。なお、入力端10に入力する音声信号のレベルが時間経過とともに緩やかに増大する状態とは、制御信号(点Pにおける信号)が減衰部30の減衰開始レベルVbを超える前に、遅延部34によって遅延された制御信号(点Qの制御信号)が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVa(<Vb)を超える状態であるとする。
【0019】
検出感度制御部36のトランジスタ素子Q2の動作電圧をVaとすると、検出感度制御部36における第1の閾値としての感度変更開始レベルもVaとなる。つまり、検出感度制御部36は、遅延部34を経た制御信号(点Qにおける制御信号)がVaに達すると動作する。
【0020】
尚、図2では検出感度制御部36のトランジスタ素子Q2と減衰部30のトランジスタ素子Q1とを同じ動作電圧のものとした例を示している。ただし、トランジスタ素子Q1の前段には抵抗器R1、R2で構成される信号減衰部が存在するため、減衰部30としてみた場合その動作電圧である第2の閾値としての減衰開始レベルVbは、検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaよりも大きくなる。よって、領域aにおいては減衰部30も動作しない。つまり、検出感度制御部36は、遅延部34を経ていない制御信号がVbに達すると動作する。尚、上記の減衰部30の回路構成は最も単純で好ましいものではあるが、特にこの構成に限定されるわけではなく、トランジスタ素子Q1にトランジスタ素子Q2の動作電圧より大きい動作電圧の素子を用いたり、他の回路構成を用いても良い。
【0021】
そして、音声信号が小さく、この音声信号に応じた制御信号が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaよりも小さい領域aでは検出感度制御部36は動作しない。従って、減衰部30に入力した音声信号はそのまま増幅部14で増幅された後、出力信号として出力端12と検出感度制御部36とに出力される。そして検出感度制御部36に入力した出力信号は減衰部30から検出感度制御部36を経て、減衰されることなくレベル検出部38に出力される。レベル検出部38はこの減衰部30から出力され検出感度制御部36を経た音声信号(点P1における信号)のレベルを検出し、そのレベルに応じた制御信号として減衰部30に出力する。また、この制御信号は遅延部34によって遅延され検出感度制御部36に入力される。尚、前述のように領域aの音声信号のレベルでは検出感度制御部36及び減衰部30は動作することはない。よって出力端12における出力信号は、図5(c)の領域aに示すように音声信号の増加に伴い増加する。
【0022】
次に、音声信号がさらに増加して、この音声信号に応じた点Qの制御信号が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaを超えた場合、検出感度制御部36が動作して点P1の信号に対するAGC制御を行なう。このAGC制御により、例えば図2の点Pにおける制御信号は、図5(b)の領域bに示すようにほぼ一定の値で推移する。そして、この制御信号は減衰部30に入力される。ただし、減衰部30の減衰開始レベルVbは検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaよりも大きいから減衰部30は動作せず、出力端12の出力信号は図5(c)の領域bに示すように音声信号の増加に伴い増加する。
【0023】
音声信号がさらに増加すると、検出感度制御部36に設置された抵抗器R3によりトランジスタ素子Q2が飽和に至り点P1の信号に対するAGC制御が終了する。これに伴い制御信号は、図5(b)の領域cに示すように音声信号の増加に伴い増加する。尚、このときの制御信号の傾きは、図4の例を除き音声信号の傾きよりも小さくなる。この領域cにおける制御信号も減衰部30の減衰開始レベルVbより小さいから、減衰部30は動作せず出力端12の出力信号は図5(c)の領域cに示すように音声信号の増加に伴い増加する。
【0024】
音声信号がさらに増加すると、点P1における信号も増加する。これに伴い制御信号も増加し、この制御信号が減衰開始レベルVbを超えると減衰部30が動作する。そしてこれ以降の領域dでは、減衰部30による出力信号へのAGC制御が行なわれる。これにより、出力信号は図5(c)の領域dに示すようにほぼ一定の制限レベルVmaxに制御される。またこれに伴い、制御信号も図5(b)の領域dに示すようにほぼ一定で推移する。
【0025】
次に、図6(a)に示すように、音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する状態、つまり、突発音S1〜S4が入力する場合を説明する。なお、入力端10に入力する音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する状態とは、遅延部34によって遅延された制御信号(点Qの制御信号)が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVa(<Vb)を超える前に、制御信号(点Pにおける信号)が減衰部30の減衰開始レベルVbを超える状態であるとする。
【0026】
ここで、突発音により生じ、レベルが時間経過とともに急峻に増大する制御信号の成分を突発音成分とし、音声信号のレベルが時間経過とともに緩やかに増大し、検出感度制御部36に入力される制御信号の成分を通常音声成分とする。尚、図5においては、突発音が存在しない例を示しているから、図5(b)に示す制御信号は通常音声成分とほぼ同等となる。
【0027】
先ず、領域aにおいて突発音S1が入力した場合、図6(b)に示すように制御信号には突発音S1によって生じる突発音成分Sa1が含まれる。ただし、この突発音成分Sa1は遅延部34により検出感度制御部36への伝達が遅れる。このため、突発音成分Sa1が感度変更開始レベルVaを超えていたとしても検出感度制御部36がすぐに動作することはない。これに対して、減衰部30には突発音成分Sa1を含む制御信号がそのまま入力する。よって、遅延部34によって遅延された制御信号(点Qの制御信号)が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVa(<Vb)を超える前に、この突発音成分Sa1を含む制御信号が減衰開始レベルVbに達する場合には減衰部30が動作し突発音S1を含む音声信号を減衰する。つまり、図2中における点Qの遅延された制御信号が感度変更開始レベルVaに達する前に、制御信号が減衰開始レベルVbに達する場合、検出感度制御部36が動作することなしに減衰部30が減衰動作する。これにより、突発音S1は図6(c)中の制限レベルVm1に減衰される。尚、このとき突発音成分Sa1及び後述の突発音成分Sa2、Sa3の立下りはレベル検出部38の時定数により穏やかになる。
【0028】
次に点P1の信号に対するAGC制御が行なわれている領域bにおいて突発音S2、S3が入力した場合、突発音S2、S3はそれらの発生時における検出感度制御部36の減衰量に応じて減衰され、図6(b)の突発音成分Sa2、Sa3として制御信号中に出現する。このときも、制御信号中の突発音成分Sa2、Sa3は遅延部34により伝達が遅れる。従って、検出感度制御部36の減衰量は大きく変動せず、制御信号中の通常音声成分にも大きな変動は生じない。これに対して、減衰部30には突発音成分Sa2、Sa3を含む制御信号が入力するため、この突発音成分Sa2、Sa3を含む制御信号が減衰開始レベルVbに達している場合には減衰部30が動作し、突発音S2、S3を含む音声信号を減衰する。これにより、突発音S2、S3は図6(c)中の制限レベルVm2、Vm3にそれぞれ減衰される。ただし、制限レベルVm2、Vm3がVmaxを超える事は無い。
【0029】
次に、領域dにおいて音量レベルVsの突発音S4が入力した場合、この領域dにおいて減衰部30は、出力信号に対するAGC制御を行うのに加え、図6(c)に示すように、突発音S4を減衰させるように動作する。このように音量制限装置50aは、入力される音声信号のレベルに応じて突発音S1〜S4に対する制限レベルVm1〜Vm3を変化させる。
【0030】
即ち、音量制限装置50aの減衰制御部20は、音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する第1の状態のときは減衰部30が減衰動作するように制御する。また、音声信号のレベルが時間経過とともに緩やかに増大する第2の状態のときは減衰部30を減衰動作させないか、もしくは、上記領域dの場合のように減衰部30を第1の状態のときよりも小さい減衰量で動作するように制御する。
【0031】
また、減衰制御部20の感度制御部36は、遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値である感度変更開始レベルVaを超えた場合に、減衰部30からレベル検出部38へと出力する信号のレベルを減衰させる。ただし、音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する第1の状態では遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値(感度変更開始レベルVa)を超えない状態で、かつ、減衰部30に入力する制御信号が第1の閾値よりも大きい第2の閾値(減衰開始レベルVb)を超えた状態となり減衰部30が減衰動作する。
【0032】
なお、図3に係る本実施形態の音量制限装置50aのレベル検出部38は検出感度制御部36を経ていない音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じた制御信号を出力する。そして、図3の音量制限装置50aの検出感度制御部36は、遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えた場合、制御信号を減衰させる。そして、図3の減衰部30は、遅延部34によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えない場合、かつ、制御信号が第2の閾値を超えた場合に、入力される音声信号を減衰させる。
【0033】
また、図4に係る本実施形態の音量制限装置50aのトランジスタ素子Q3の出力(制御信号)が第1の閾値を超えた場合、検出感度制御部36は、制御信号が第1の閾値Vaになるように減衰させる。
【0034】
ただし、図4に係る本実施形態の音量制限装置50aにおいて、遅延部34は、検出感度制御部36が、所定の時間かけて制御信号を第1の閾値Vaまで減衰させるよう制御する。つまり、制御信号は、第1の閾値Vaを超えてもすぐには減衰されず、所定の時間かけて緩やかに、第1の閾値Vaになるように減衰させられる。そして、この所定の時間の間に、制御信号が減衰部30の動作電圧Vbに達すると、減衰部30は入力される音声信号を減衰させる。
【0035】
次に、本発明の第2の形態に係る音量制限装置50bを図7に示す。第2の形態に係る音量制限装置50bの遅延部34は、第1の遅延部34aと第2の遅延部34bとを有している。そして、第1の遅延部34aは検出感度制御部36を経た音声信号(図7中の点P1における信号)に応じた信号を比較的長い時定数による第1の時間だけ遅延し、第1制御信号として検出感度制御部36に出力する。これにより、点P1の信号中の突発音成分の検出感度制御部36への伝達を遅らせる。また、第2の遅延部34bは点P1の信号に応じた信号を比較的短い時定数によって、第1の時間よりも短い第2の時間遅延し、第2制御信号として減衰部30に伝達する。この第2制御信号には点P1における信号の突発音成分が含まれている。尚、第1の遅延部34aと第2の遅延部34bとは点P1の信号のレベルを検出する第1レベル検出部38aと第2レベル検出部38bとを個々に備えている。尚、この第1レベル検出部38aは第1の遅延部34aと一体になっていなくても良く、第2レベル検出部38bは第2の遅延部34bと一体になっていなくても良い。また、検出感度制御部36と遅延部34とは協働して減衰制御部20として動作する。
【0036】
次に、音量制限装置50bの構成を更に詳しく説明する。図8は音量制限装置50bの一実施の形態を示す回路図である。尚、図8中の点P1における信号が減衰部30から出力され検出感度制御部36を経た音声信号であり、点Q1における信号が第1制御信号であり、点P2における信号が第2制御信号である。
【0037】
図8に示す音量制限装置50bの第1の遅延部34aは、ダイオード素子D2、コンデンサ素子C2、抵抗器R5とで主に構成され、これらの回路が第1レベル検出部38aとしての機能と遅延回路としての機能とを兼ね備えている。また、第2の遅延部34bはダイオード素子D1、コンデンサ素子C1、抵抗器R4とで主に構成され、これらの回路が第2レベル検出部38bとしての機能と遅延回路としての機能とを兼ね備えている。尚、第1の遅延部34aと第2の遅延部34bとの時定数の長短、即ち第1の時間及び第2の時間の長短は主にコンデンサ素子C1、C2の容量値によって決定する。
【0038】
また、第2の遅延部34bには、抵抗器R1、R2で構成される信号減衰部が設けられている。この信号減衰部の動作により減衰部30の側に伝達される第2制御信号は、検出感度制御部36の側に伝達される第1制御信号よりもそのレベルが小さくなる。従って、減衰部30のトランジスタ素子Q1の動作電圧と検出感度制御部36のトランジスタ素子Q2の動作電圧とが同等であっても、第1、第2の遅延部34a、34bにそれぞれ入力する信号のレベルを基準とすれば、減衰部30の動作に要する点P1の信号のレベルは検出感度制御部36が動作するレベルよりも高くなる。従って、点P1における信号を基準とした場合、減衰部30の減衰開始レベルVbは検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaよりも大きくなる。
【0039】
尚、図8に示す抵抗器R1、R2で構成される信号減衰部を第2の遅延部34bに設ける構成は最も単純で好ましいものではあるが、特にこの構成に限定されるわけではなく、トランジスタ素子Q1にトランジスタ素子Q2の動作電圧より大きい動作電圧の素子を用いたり、他の回路構成を用いても良い。また、図9、図10に示すように、比較的増幅率の小さい増幅器A1を第2の遅延部34bの信号ラインに、比較的増幅率の大きい増幅器A2を第1の遅延部34aの信号ラインに設置しても良い。
【0040】
尚、音量制限装置50bの検出感度制御部36と減衰部30とには個別にバッファアンプQ3を備えていても良い。
【0041】
次に、図8、図11、図13を用いて、音量制限装置50bの動作を説明する。尚、説明の都合上、増幅部14とバッファアンプQ3による増幅等の影響は無視するものとする。尚、図11(a),図13(a)は入力端10に入力する音声信号を示し、図11(b) は第1制御信号(図8の点Q1における信号)を示し、図13(b)は第2制御信号(図8の点P2における信号)を示している。また、図11(c),図13(c)は出力端12における出力信号を示している。
【0042】
先ず、入力端10に入力する音声信号のレベルが、図11(a)に示すように、時間経過とともに緩やかに増大する場合について説明する。先ず、入力される音声信号が小さく、この音声信号に応じた第1制御信号が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaよりも小さい領域aでは、減衰部30に入力した音声信号はそのまま出力信号として出力端12と検出感度制御部36とに出力される。また、領域aでは、第1制御信号がVaよりも小さいため検出感度制御部36は動作しない。そのため、検出感度制御部36に入力した出力信号は、検出感度制御部36を経た音声信号として図8中の点P1に出力される。そして、点P1の信号は増幅部14で増幅された後、第1の遅延部34aと第2の遅延部34bとに出力される。
【0043】
第1の遅延部34aと第2の遅延部34bとに入力された点P1の信号は第1レベル検出部38aと第2レベル検出部38bとでそれぞれレベル検出される。尚、前述のように第2の遅延部34bには第2レベル検出部38bの前段に信号減衰部が設置されているから、第2レベル検出部38bで検出される信号のレベルは第1レベル検出部38aで検出される信号のレベルよりも小さくなる。
【0044】
そして、第1の遅延部34aは、この点P1の信号を第1の時間遅延して、第1制御信号として検出感度制御部36に出力する。また、第2の遅延部34bは、この点P1の信号を第1の時間よりも短い第2の時間遅延して、第2制御信号として減衰部30に出力する。ただし、前述のように領域aでは検出感度制御部36及び減衰部30は動作しない。よって出力端12における出力信号は図11(c)の領域aに示すように、音声信号の増加に伴い増加する。尚、図11においては、突発音成分が存在しない例を示しているから、図11(b)に示す制御信号は通常音声成分と同等となる。
【0045】
次に、音声信号がさらに増加して、この音声信号による第1制御信号が検出感度制御部36の感度変更開始レベルVaを超えた場合、検出感度制御部36が動作して点P1の信号に対するAGC制御を行なう。このAGC制御により、第1制御信号は、図11(b)の領域bに示すようにほぼ一定の値で推移する。尚、このとき第2制御信号も第1制御信号より小さい値でほぼ一定に推移する。
【0046】
また、このときの第2制御信号は第2の遅延部34bを介して減衰部30に入力する。しかしながら、第2制御信号は第1制御信号よりそのレベルが小さいから減衰開始レベルVbに満たないようになっており、よって減衰部30は動作しない。このため、出力端12の出力信号は図11(c)の領域bに示すように音声信号の増加に伴い増加する。
【0047】
ここで、図12に音声信号が入力端10に入力される音声信号のレベルが緩やかに増大する場合の各部の信号波形を示す。図12(a)、(b)の上段に示す信号波形は音量制限装置50bに入力する音声信号を示している。また、図12(a)の中段に示す信号波形は出力端12から出力する出力信号を示している。また、図12(a)の下段に示す信号波形は検出感度制御部36から出力する点P1における信号を示している。また、図12(b)の中段に示す信号波形は第2の遅延部34bから出力する第2制御信号を示している。また、図12(b)の下段に示す信号波形は第1の遅延部34aから出力する第1制御信号を示している。
【0048】
図12(a)、(b)の上段に示すように音声信号が入力端10に入力される音声信号のレベルが増大する場合、図12(b)の下段に示す第1制御信号は、音声信号の増加の初期段階から増加し始める。そして、第1制御信号が所定のレベルに到達するとほぼ一定に推移する。また、図12(a)の下段に示す点P1における信号も、音声信号の増加の初期段階(図12(a)中の○印)で若干増加した後、ほぼ一定で推移する。これらの信号変化は図11(b)と同様の傾向を示している。また、図12(b)の中段に示す第2制御信号も第1制御信号と同様の波形を示している。ただし、抵抗器R1、R2で構成される信号減衰部の効果により第2制御信号のレベルは第1制御信号のレベルより全ての範囲に亘って小さくなっている。この第2制御信号のレベルは減衰開始レベルVb以下にしてあるため、減衰部30は動作せず、図12(a)の中段に示す出力信号は図12(a)、(b)の上段に示す音声信号とほぼ同様のものとなる。この信号変化は図11(c)と同様の傾向を示している。
【0049】
次に、図13(a)に示すように、入力端10に入力される音声信号にそのレベルが時間経過とともに急峻に増大する突発音S1〜S3が入力する場合を説明する。先ず、領域aにおいて突発音S1が入力した場合、図13(b)に示すように、第2制御信号には突発音S1によって生じる突発音成分Sa1が含まれる。尚、図13(b)は図11(b)とVaの位置が一致するよう縦軸の尺度を拡大して示している。また、第1制御信号の突発音成分のレベルと第2制御信号の突発音成分のレベルとは、抵抗器R1、R2で構成される信号減衰部の効果によりその値が異なっているため、以下は便宜的に第2制御信号の突発音成分をSa1とし、第1制御信号の突発音成分をSa1’と記す。
【0050】
突発音成分S1は時定数の長い第1の遅延部34aで第1の時間遅延される。これに対して、この突発音成分S1を含む点P1の信号は時定数の短い第2の遅延部34bに入力され突発音成分Sa1を含む第2制御信号として減衰部30に伝達される。このときの突発音成分Sa1を含む第2制御信号が減衰開始レベルVbに達した場合、減衰部30は動作し突発音S1を含む音声信号を減衰する。つまり、第1制御信号が感度変更開始レベルVaに達する前に、第2制御信号が減衰開始レベルVbに達する場合、検出感度制御部36が動作することなしに減衰部30が減衰動作する。これにより、突発音S1は図13(c)中の制限レベルVm1に減衰される。即ち、第1の時間遅延された突発音成分が感度変更開始レベルVaを超える前に、第1の時間よりも短い第2の時間遅延された突発音成分がVbに達する場合は検出感度制御部36は動作しない。
【0051】
次に、点P1の信号に対するAGC制御が行なわれている領域bにおいて突発音S2、S3が入力した場合について説明する。
【0052】
領域bの突発音がない状態において、第2制御信号は、点P1における信号が検出感度制御部36によってAGC制御されているため、Vbを超えないレベルに保たれている。この状態で、突発音S2、S3が発生すると、検出感度制御部36の減衰量に応じて減衰され、突発音成分Sa2’、Sa3’として点P1における信号に出現する。この突発音成分Sa2’、Sa3’は時定数の長い第1の遅延部34aでは比較的長い第1の時間遅延される。これに対して、この突発音成分Sa2’、Sa3’を含む点P1の信号は時定数の短い第2の遅延部34bに入力され、比較的短い時間遅延され、突発音成分Sa2、Sa3を含む第2制御信号として減衰部30に伝達される。このときの突発音成分Sa2、Sa3を含む第2制御信号が減衰開始レベルVbに達すると、減衰部30は動作し突発音S2、S3を含む音声信号を減衰する。これにより、突発音S2、S3は図13(c)中の制限レベルVm2、Vm3にそれぞれ減衰される。即ち、第1の時間遅延された突発音成分が感度変更開始レベルVaを超える前に、第1の時間よりも短い第2の時間遅延された突発音成分がVbに達する場合は検出感度制御部36は動作しない。
【0053】
ここで、図14に、音声信号が比較的低いレベルから比較的高いレベルに急激に増加した場合の各部の信号波形を示す。図14(a)、(b)の上段に示す信号波形は減衰部30に入力する音声信号を示している。また、図14(a)の中段に示す信号波形は出力端12から出力する出力信号を示している。また、図14(a)の下段に示す信号波形は検出感度制御部36から出力する点P1における信号を示している。また、図14(b)の中段に示す信号波形は第2の遅延部34bから出力する第2制御信号を示している。また、図14(b)の下段に示す信号波形は第1の遅延部34aから出力する第1制御信号を示している。
【0054】
図14(a)、(b)の上段に示すように音声信号が急激に増加すると、その増加した瞬間に突発音Sが生じる。この突発音Sは点P1の信号中に突発音成分を生じさせる。この突発音成分により、図14(b)の中段に示す第2制御信号は突発音S発生直後に速やかに増加する。これは第2の遅延部34bの遅延時間が比較的短いためである。しかしながら、時定数の長い第1の遅延部34aはこの突発音成分の検出感度制御部36への伝達を遅らせるように機能するから、図14(b)の下段に示す第1制御信号には突発音成分が出現しない。よって、この突発音S発生時において、第2制御信号のレベルは第1制御信号のレベルよりも大きくなると同時に減衰開始レベルVbを超え、これにより減衰部30が動作して音声信号の突発音Sを所定の制限レベルに減衰する。
【0055】
そして、音声信号のレベルが大きいまま継続する、これにより、検出感度制御部36に入力される第1制御信号が図14(b)の下段に示すように徐々に増加する。そして、この第1制御信号の増加に伴い検出感度制御部36が減衰動作を開始し、図14(b)の中段に示す第2制御信号は徐々に減少する。第2制御信号が減少すると減衰部30の減衰量が低下して、図14(a)の中段に示す出力信号は徐々に増加する。そして時間tにおいて、第2制御信号のレベルは第1制御信号のレベルよりも小さくなるとともに減衰開始レベルVbに満たなくなる。これにより、減衰部30の減衰動作は停止し、音声信号と出力信号とは同等のレベルとなる。また、第1、第2制御信号はほぼ一定に推移する。
【0056】
以上のように、音量制限装置50bの感度制御部36は、第1の遅延部34aによって遅延された第1制御信号が第1の閾値である感度変更開始レベルVaを超えた場合に、減衰部30からレベル検出部38へと出力する信号のレベルを減衰させる。ただし、音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する第1の状態では第1制御信号が第1の閾値(感度変更開始レベルVa)を超えない状態で、第2の遅延部34aによって遅延された第2制御信号が第1の閾値よりも大きい第2の閾値(減衰開始レベルVb)を超えた状態となり減衰部30が減衰動作する。
【0057】
次に、音声信号に突発音Sが入力したときの音量制限装置50a、50bの出力信号を図15に示す。図15から、音量制限装置50a、50bの出力信号は、音声信号において突発音Sが生じた領域のみ図15中の破線で示す制限レベルに抑制され、その他の領域では音声信号とほぼ同等であることが分かる。このことから、音量制限装置50a、50bは突発音Sの発生時のみに減衰動作を行うことが分かる。
【0058】
次に、本発明に係る集音器の実施の形態を図16を用いて説明する。本発明に係る集音器80は、各実施形態の音量制限装置50aもしくは50bと、外部音声を音声信号に変換し音量制限装置50a、50bの入力端10に出力するマイク等の集音部42と、音量制限装置50a、50bの出力端12からの出力信号を音声に変換するイヤホン、ヘッドホン、スピーカ等の音声出力部40と、を有している。尚、集音器80にはその他の構成として、音量制限装置50a、50bからの出力信号を増幅するアンプ部や、出力信号の音量レベルを増減するボリューム部、出力信号をユーザの好みに変化させるイコライザ部、集音器80のオン、オフを切換るスイッチ等を適宜設けても良い。
【0059】
以上のように、音量制限装置50a、50bを有する集音器80は、減衰部から音量制限装置外部へと出力される信号を検出し、その検出したレベルと時間的なレベルの変化とに応じて、減衰部の動作を制御するため、図17に示すように、会話音声や周囲の雑音が比較的高い音声レベルVhの状態で突発音Sが入力した場合には、この突発音Sを制限レベルVhsに減衰、抑制して出力する。また、会話音声や周囲の雑音が比較的低い音声レベルVLの状態で突発音Sが入力した場合には、この突発音Sを比較的低い制限レベルVLsに減衰、抑制して出力する。なお、VLsとVLの比率やVhsとVhの比率は回路の特性で決まる。よって、会話音声や周囲の雑音レベルがどのようなレベルであっても、ユーザが体感する相対的な突発音のレベル増加はほぼ同等となる。つまり、本実施の形態に係る音量制限装置50a、50b及び集音器80は、突発音Sに対する制限レベルが固定されておらず、突発音Sが入力したときの周囲の音声レベルに応じて突発音Sの制限レベルを変化させる。よって、周囲の音声レベルが比較的小さい場合でも突発音による急激な音量増加を防止することができる。また、図14の例のように、自動車の警笛等の突然の大音量が継続する場合には、この音声の発生直後に生じる突発音を効果的に減衰、抑制した後、徐々に減衰量が減少するよう動作する。従って、周囲の音声レベルがいかなる場合であっても突発音によるユーザのショックを効果的に軽減することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る音量制限装置50a、50b及び集音器80は、回路構成が単純であるため装置自体を安価で提供することができる。特に音量制限装置50a及びそれを備えた集音器80は、一般的な集音器が備えているAGC回路を音量制限装置50aに流用することができるため、極めて低コストで提供できる他、小型化、軽量化に対しても有用である。さらに、音量制限装置50b及びそれを備えた集音器80は、2つの遅延部の時定数を独立して設計できるため、比較的容易に誤作動の少ない安定した回路を設計することができる。また、音量制限装置50bは装置の入出力間にAGC特性がないことに加えて入出力間に増幅器(増幅部14)が存在しない。このため、増幅器が飽和する事がなく、広い入力電圧範囲で突発音の制限を行なうことができる。また、各実施形態における遅延部は信号を時間的に遅延させるとともに、信号をスムージングする動作も行うが、スムージングすることは必須ではなく、各実施形態においては、より望ましい構成としてスムージングも行う遅延部を例としている。
【0061】
さらに、本実施の形態に係る音量制限装置50a、50b及び集音器80は、減衰部から音量制限装置外部へと出力される信号を検出し、その検出したレベルと時間的なレベルの変化とに応じて、減衰部の動作を制御するため、出力する音声信号そのものに対する遅延は行なわない。このため、音声と実際の音声とにタイムラグが生じることがなくユーザが違和感を覚えることもない。
【0062】
尚、上記の音量制限装置50aでは検出感度制御部36の最大減衰量に限界を設ける事で装置の入出力間にAGC特性を備えた例を示したが、検出感度制御部36の最大減衰量に限界を設けずにAGC特性を備えない構成としても良い。また、上記の音量制限装置50bでは装置の入出力間にAGC特性を備えていない例を示したが、検出感度制御部36の最大減衰量に限界を設け装置の入出力間にAGC特性を備えた構成としても良い。
【0063】
また、上記の音量制限装置50a、50bはデジタル回路で構成しても良い。尚、上記の音量制限装置50a、50b及び集音器80は本発明の好適な一例であるから、各部の回路構成は無論のこと、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
20 減衰制御部
30 減衰部
34 遅延部
34a 第1の遅延部
34b 第2の遅延部
36 検出感度制御部
38 レベル検出部
40 音声出力部
42 集音部
50a、50b 音量制限装置
80 集音器
Va 第1の閾値(感度変更開始レベル)
Vb 第2の閾値(減衰開始レベル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声信号を所定の条件のときに減衰させる減衰部と、
前記減衰部から出力される信号を検出し、前記音声信号のレベルが時間経過とともに急峻に増大する第1の状態のときは、前記減衰部が前記音声信号を減衰させるように前記減衰部を制御し、前記第1の状態のときよりも前記音声信号のレベルが時間経過とともに緩やかに増大する第2の状態のときは、前記減衰部が前記音声信号を減衰させないように、または、前記減衰部が前記音声信号を減衰させる減衰量が前記第1の状態のときよりも少なくなるように前記減衰部を制御する減衰制御部と、
を有することを特徴とする音量制限装置。
【請求項2】
前記減衰制御部は、
検出感度制御部と、
前記減衰部から出力され前記検出感度制御部を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じて前記減衰部の減衰を制御するための制御信号を出力するレベル検出部と、
前記制御信号を所定の時間遅延させる遅延部と、を有し、
前記検出感度制御部は、前記遅延部によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えた場合、前記減衰部から前記レベル検出部へと出力される信号のレベルを減衰させ、
前記第1の状態は、前記遅延部によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えない状態、かつ、前記制御信号が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた状態であることを特徴とする請求項1記載の音量制限装置。
【請求項3】
前記減衰制御部は、
検出感度制御部と、
前記減衰部から出力される音声信号のレベルに応じて、前記減衰部の減衰を制御するための制御信号を出力するレベル検出部と、
前記検出感度制御部を経た前記制御信号を所定の時間遅延させる遅延部と、を有し、
前記検出感度制御部は、前記遅延部によって遅延された前記制御信号が第1の閾値を超えた場合、前記制御信号のレベルを減衰させ、
前記第1の状態は、前記遅延部によって遅延された制御信号が第1の閾値を超えない状態、かつ、前記制御信号が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた状態であることを特徴とする請求項1記載の音量制限装置。
【請求項4】
前記減衰制御部は、
遅延部と、
検出感度制御部と、
前記減衰部から出力され前記検出感度制御部を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じて前記減衰部の減衰を制御するための制御信号を出力するレベル検出部と、を有し、
前記検出感度制御部は、前記制御信号が第1の閾値を超えた後に、前記減衰部から前記レベル検出部へと出力される信号のレベルを前記第1の閾値まで減衰させ、
前記遅延部は、前記検出感度制御部が、信号を第1の時間かけて前記第1の閾値まで減衰させるように、前記検出感度制御部の減衰動作を遅延し、
前記第1の状態は、前記検出感度制御部が信号のレベルを前記第1の閾値まで減衰させている間に、前記制御信号が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えた状態であることを特徴とする請求項1記載の音量制限装置。
【請求項5】
前記減衰制御部は、
検出感度制御部と、
前記減衰部から出力され前記検出感度制御部を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じた信号を第1の時間遅延させた信号である第1制御信号を前記検出感度制御部に出力する第1の遅延部と、
前記減衰部から出力され前記検出感度制御部を経た音声信号のレベルを検出し、そのレベルに応じた信号を第1の時間よりも短い第2の時間遅延させた信号である第2制御信号を前記減衰部に出力する第2の遅延部と、を有し、
前記検出感度制御部は、前記第1制御信号が第1の閾値を超えた場合、前記減衰部から前記第2の遅延部へと出力される信号のレベルを減衰させ、
前記第1の状態は、前記第2制御信号が第2の閾値を超えた状態であり、
前記検出感度制御部は、前記第1制御信号が第1の閾値を超えた場合に、前記第2制御信号が前記第2の閾値を超えないように、前記減衰部から前記第2の遅延部へと出力される信号のレベルを減衰させることを特徴とする請求項1記載の音量制限装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の音量制限装置と、
外部の音声を電気的な音声信号に変換し前記音量制限装置の減衰部に入力する集音部と、
前記音量制限装置の前記減衰部から出力される音声信号を音声に変換する音声出力部と、
を有することを特徴とする集音器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図12】
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【図14】
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