説明

頭部装着型画像表示装置

【課題】低コストで様々な状況に応じて映像表示方法を選択することができ、かつ、モバイル環境や常時装着しての使用に対応できるように視界を確保した頭部装着型画像表示装置を提供する。
【解決手段】頭部装着型画像表示装置1は、使用者の頭部に固定するための眼鏡フレーム10aと、眼鏡フレーム10aに固定され、表示すべき映像の映像光を出射する映像射出部を有する本体部2と、映像射出部から出射した映像光を入射し、眼鏡フレーム10aを使用者の頭部に装着した状態で、入射した映像光を使用者の対応する眼球へ導光し、使用者の視野内に映像射出部の映像の拡大像を虚像として表示する接眼光学部3と、本体部に接眼光学部3を交換可能に取付ける取付手段4とを備える。接眼光学部3は、光学特性の異なる少なくとも第1の接眼光学部および第2の接眼光学部より選択された一の接眼光学部であり、前記取付手段4は正面視のときの中心視野を遮らない位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着型画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部装着型画像表示装置は、映像鑑賞やモバイルでの使用等様々な用途に応じて最適な光学的仕様が異なり、用途に応じて、別個の装置を準備する必要があった。例えば、映像鑑賞用であれば、視野内の正面に大画面の映像を表示できる仕様が好ましく、モバイル用途であれば、外界視野を確保しつつ視野内の端などに映像を表示する仕様が好ましい。
【0003】
しかし、必要な用途の数に応じて、異なる頭部装着型画像表示装置を揃えるのは、コストがかかりまた、持ち運ぶうえでも不便である。特に、今後重要になる日常生活やモバイル用途での使用を考えると、使用者の使い方はより多様になり、それら多様な用途に対応できる装置が必要である。
【0004】
そこで、異なる用途に対応するために、接眼光学系をパッケージ状として複数用意し、使用者の眼の前に配置された頭部搭載用の筐体内に、パッケージ状になった接眼光学系を適宜選択して配置することで、用途に応じて視野角を変える技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2957071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置は、頭部搭載器具が選択交換する接眼レンズパッケージ全体を覆うようにして保持する構造であり、さらにディスプレイ画面から接眼レンズを経由して目に至る光軸は直線で結ばれている。このため、パッケージの形状を同一形状にする必要があって、この結果、目から接眼レンズシステムの最初のレンズ表面までの距離、さらに接眼レンズユニットの最初のレンズ表面からディスプレイ画面までの距離の両方とも一定にする必要があった。また明細書には明記されていないが、接眼レンズシステムのパッケージおよび、同最初のレンズ表面の目とは、単に距離だけではなく上下・左右の位置関係も含めて、一定にする必要があることは明らかである。そしてこのことは次の課題を生じせしめる。
【0007】
一つ目は、どのような接眼レンズシステムを選択したとしても、そのパッケージとそれを覆う頭部搭載器具が装置利用者の眼前を大きく覆ってしまい、外界視界を常に妨げる。
二つ目は、レンズ表面と目の位置関係が固定されているために、設計可能な接眼レンズの焦点距離範囲が限定的となり、すなわち観察可能な画面サイズの変更が制限される。
三つ目は、接眼レンズ全体を接眼レンズパッケージで覆い、さらにそれ全体を頭部搭載器具が覆うというレンズ筐体の2重構造が原因で、装置全体を大型化し重量を重くし、コストも高くする。
【0008】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、低コストで様々な状況に応じて映像表示方法を選択することができ、かつ、モバイル環境や常時装着しての使用に対応できるように外界視界を確保した頭部装着型画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する請求項1に係る頭部装着型画像表示装置の発明は、
使用者の頭部に固定するための支持部と、
該支持部に固定され、表示すべき映像の映像光を出射する映像射出部を有する本体部と、
前記映像射出部から出射した映像光を入射し、前記支持部を使用者の頭部に固定した状態で、入射した該映像光を使用者の対応する眼球へ導光し、使用者の視野内に前記映像射出部の前記映像の拡大像を虚像として表示する接眼光学部と、
前記本体部に前記接眼光学部を交換可能に取付ける取付手段と
を備え、
前記接眼光学部は、光学特性の異なる少なくとも第1の接眼光学部および第2の接眼光学部より選択された一の接眼光学部であり、前記取付手段は正面視のときの中心視野を遮らない位置に配置したことを特徴とするものである。
【0010】
このようにすれば、接眼光学部を、画像光の光路を異ならせた少なくとも第1の接眼光学部および第2の接眼光学部より選択的に取付可能とし、取付手段を正面視のときの中心視野(視線を中心とする30度の視野範囲)を遮らない位置に配置したので、低コストで様々な状況に応じて映像表示方法を選択することができ、かつ、視界が確保できるのでモバイル環境での使用や常時装着しての使用が可能になる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記支持部は眼鏡フレームであり、前記本体部は前記眼鏡フレームに固定、または、着脱自在に装着され、前記取付手段は使用者が眼鏡レンズを通して見える視野を遮らない位置に配置したことを特徴とするものである。
【0012】
このようにすれば、眼鏡型の頭部装着型画像表示装置において、取付手段を眼鏡レンズの視野内に入らないように配置したので、外界を視認する際に眼鏡を通して見える視野が妨げられず、日常生活やモバイル環境でも使用することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の頭部装着型画像表示装置において、前記取付手段は前記接眼光学部の入射側近傍の一部を保持することを特徴とするものである。
【0014】
このようにすれば、取付け手段が接眼光学部を入射側近傍で保持するので、取付手段により使用者の視界が妨げられず、また、接眼光学部は取付部を介して使用者の頭部に固定された本体部に安定して支持される。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1−3のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、前記眼球に対して前記映像光を出射させる射出窓の位置が異なることを特徴とするものである。
【0016】
このようにすれば、第1の接眼光学部を用いた場合と第2の接眼光学部を用いた場合とで、使用者の眼球内に入射する映像光の入射角度を異ならせることができるので、例えば、虚像として表示される表示映像の見やすさを優先する場合は表示映像を視野の中心に表示させ、外界視界確保を優先する場合は表示映像を視野の端に表示させるように、接眼光学部を交換することができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1−4のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、使用者の前記眼球の視野における虚像表示位置を互いに異ならせるように構成したことを特徴とするものである。
【0018】
このようにすれば、第1の接眼光学部を用いた場合と第2の接眼光学部を用いた場合とで、使用者の視野内で表示される虚像として表示される表示映像の表示位置を異ならせることができるので、例えば、表示映像の見やすさを優先する場合は視野の中心に表示させ、外界視界確保を優先する場合は視野の端に表示させるように、接眼光学部を交換することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項1−5のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部は、使用者の前記眼球の視野の垂直中心線を含む位置に虚像が表示され、前記第2の接眼光学部は、使用者の視野の垂直中心線を含まない位置に虚像が表示されるように構成したことを特徴とするものである。
【0020】
このようにすれば、映像が見やすい視野の垂直中心線を含む位置と、外界視界を確保できる視野の垂直中心線を避けた位置とで虚像として表示される表示映像の表示位置を変更できる。これにより、外界視界確保を優先する場合と、見やすい表示映像を優先する場合とで、視野における虚像表示の位置を変更できる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項1−6のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、前記映像射出部から入射した映像光を、それぞれの接眼光学部の内部で異なる回数反射させた後、前記眼球へ出射させるように構成したことを特徴とするものである。
【0022】
このようにすれば、接眼光学部内部での反射回数を異ならせたことにより、光路長、接眼光学部の外形の大きさ等の光学特性を異ならせることが可能である。これによって、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部との間で、射出窓位置、接眼光学部に含まれる接眼レンズの焦点距離、および/または、表示映像の視野角等を異ならせることができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項1−7のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、形状および大きさの双方またはいずれか一方が異なることを特徴とするものである。
【0024】
このようにすれば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部とを、長さ、太さ、および/または形状、において異なるものとしたので、使用者が映像の外界視界確保を優先する場合、または、見やすい表示映像を優先する場合に応じて、好ましい長さ、太さ、および/または、形状の接眼光学部に交換して使用することができる。
【0025】
請求項9に係る発明は、請求項1−8のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、前記眼球から前記映像射出部をのぞむ視野角が異なることを特徴とするものである。
【0026】
このようにすれば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学との交換により、使用者の観察する表示映像の視野角を変更することができる。したがって、使用者が外界視界確保を優先する場合は、より小さい視野角となる接眼光学部を使用し、見やすい表示映像を優先する場合は、より大きい視野角となる接眼光学部を使用することができる。
【0027】
請求項10に係る発明は、請求項1−9のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部および前記第2の接眼光学部の少なくとも一方は、前記映像射出部から入射した映像光を所定の角度回転させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0028】
このようにすれば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部とでは、使用者の視野内に表示される表示映像を異なる回転角度により回転させて表示することができる。また、一方の接眼光学部による表示映像を横長画像とし、他方の表示映像をこれを90度回転させた縦長画像とすれば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部との交換により、表示すべき映像の表示内容に応じて縦長画像と横長画像とを切替えて表示することができる。
【0029】
請求項11に係る発明は、請求項1−10のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部および前記第2の接眼光学部の少なくとも一方は、縦方向と横方向とで前記虚像の拡大率が異なることを特徴とするものである。
【0030】
このようにすれば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部とを交換することにより、表示画面のアスペクト比を切り替えることが可能となり、映像射出部を出射する映像光のアスペクト比を変えることなく、表示コンテンツに応じて最適なアスペクト比の表示画面に切替えることができる。
【0031】
請求項12に係る発明は、請求項1−11のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、それぞれ接眼レンズを有し、各接眼レンズの焦点距離を異ならせたことを特徴とするものである。
【0032】
このようにすれば、接眼光学部の交換により視度を切り替えることが可能となるので、
各使用者個人の眼の視度や、利用状況に応じた好ましい虚像の表示距離に基づいて視度を切り替えることができる。
【0033】
請求項13に係る発明は、請求項1−12のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、それぞれ接眼レンズを有し、各接眼レンズと前記映像射出部との相対位置関係を異ならせたことを特徴とするものである。
【0034】
このようにすれば、接眼光学部の交換により視度を切り替えることが可能となるので、
各使用者個人の眼の視度や、利用状況に応じた好ましい虚像の表示距離に基づいて視度を切り替えることができる。
【0035】
請求項14に係る発明は、請求項1−13のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部は、使用者の視野内にシースルー映像として虚像が表示され、前記第2の接眼光学部は、使用者の視野内に非シースルー映像として虚像が表示されるように構成したことを特徴とするものである。
【0036】
このようにすれば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部とを交換することにより、使用者の視野内に虚像として表示される表示映像をシースルー表示と非シースルー表示との間で切替えることができ、使用者は、表示映像の見やすさを優先する場合は表示映像を非シースルー表示させ、外界視界確保を優先する場合は、表示映像をシースルー表示させることができる。なお、シースルー表示と非シースルー表示との切替えは、使用環境における瞳孔径に対応した所定の幅以下およびこの所定の幅を超える幅の接眼光学部を切替えて使用し、または、透明部材により形成される接眼光学部と外部から不透明な接眼光学部とを切替えて使用することにより実施可能である。
【0037】
請求項15に係る発明は、請求項1−14のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記第1の接眼光学部は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下であり、前記第2の接眼光学部は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mmを越えていることを特徴とするものである。
【0038】
このようにすれば、第1の接眼光学部は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅を人間の通常の作業環境下での平均的な瞳孔径サイズである4mm以下としたので、表示映像を使用者の視野内にシースルー表示し、第2の接眼光学部は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅を人間の平均的な瞳孔径サイズである4mm以上としたので、使用者の視野内に表示映像を非シースルー表示する。これら第1の接眼光学部と第2の接眼光学部とを交換することによって、使用者は、表示映像の見やすさを優先する場合は表示映像を非シースルー表示させ、外界視界確保を優先する場合は、表示映像をシースルー表示させることができる。
【0039】
請求項16に係る発明は、請求項1−15のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置において、
前記本体部は前記第1の接眼光学部に対応した第1の表示映像と、前記第2の接眼光学部に対応した第2の表示映像とを切り替える映像切替手段を有することを特徴とするものである。
【0040】
このようにすれば、映像射出部を出射する映像光を、接眼光学部の特性に応じた映像表示に切り替えて、使用者の視野内に適切な表示映像を表示することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、様々な状況に応じて映像表示方法を選択することができ、かつ、モバイル環境や常時装着しての使用に対応できるように視界を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置を眼鏡に装着した状態を示す図である。
【図2】図1に示した頭部装着型画像表示装置に使用する第1および第2の接眼光学部の構成およびその光学系を説明するための模式図である。
【図3】図1に示した本体部の構成と本体部に対する接眼光学部の取付けとを説明するための模式図である。
【図4】図1に示した本体部の制御系の機能ブロック図である。
【図5】第1実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置の第1および第2の接眼光学部を使用した場合のそれぞれの光学系を説明する図である。
【図7】図6に示したそれぞれの接眼光学部の仕様を示す図である。
【図8】図6に示したそれぞれの接眼光学部の光学系を説明する図である。
【図9】第1および第2の接眼光学部のそれぞれと眼球との位置および大きさの関係を説明する図である。
【図10】図9のそれぞれの接眼光学部を用いた場合の眼球方向へ向かう外界光の光路を説明する図である。
【図11】図6に示した頭部装着型画像表示装置による表示映像のイメージ図である。
【図12】本発明の第3実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置に適用される第2の接眼光学部の構成および作用を説明する図である。
【図13】本発明の第4実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置に適用される第2の接眼光学部の構成および作用を説明する図である。
【図14】図13の接眼光学部を使用しないでアスペクト比の異なる画像を表示するための表示パネルの表示映像を説明する図である。
【図15】本発明の第5実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置を用いた場合の、使用者の眼幅に応じた接眼光学部の選択を説明する図である。
【図16】本発明の頭部装着型画像表示装置の光学系を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0044】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置を眼鏡に装着した状態を示す図である。
【0045】
頭部装着型画像表示装置1は、主として本体部2および接眼光学部3を含む。本体部2は、使用者の頭部に装着される支持部である眼鏡10の眼鏡フレーム10aの右側テンプル部分に眼鏡固定部2aを介して固定支持される。したがって、支持部は眼鏡固定部2aを含んで構成される。
【0046】
本体部2は眼鏡フレーム10aに沿い使用者の前方へ延び、その先端は、右側眼鏡レンズの側方で後述する取付部4を介して接眼光学部3の鏡枠3aに取付けられている。接眼光学部3は、眼鏡10の右側眼鏡レンズ10bの前方を、取付部4から使用者の視野内まで略水平に延びている。取付部4は接眼光学部3の先端部分と比べると太く、使用者が眼鏡レンズを通して見える視野(中心視野を含む)を遮らない位置に配置される。
【0047】
本実施の形態では、接眼光学部は第1の接眼光学部および第2の接眼光学部から選択した一の接眼光学部を取り付ける。図2は、図1に示した頭部装着型画像表示装置に使用する第1の接眼光学部および第2の接眼光学部の構成を説明するための模式図であり、図2(a)は第1の接眼光学部3−1、図2(b)は第2の接眼光学部3−2にそれぞれ対応している。
【0048】
また、図2(a)および(b)に示すように、本体部2は映像射出部である表示パネル2bを備え、この表示パネル2bを出射した映像光は、接眼光学部3−1,3−2の両端に反射面である斜面を有する断面が矩形の棒状の導光部3b,3bに一端の側面から入射して、上記斜面の1つで反射され、この導光部3b,3b内を導光され、さらに他の斜面で反射されて、接眼レンズ3c,3cから使用者の右側眼球11に向けて出射される。この映像光は、使用者の視野内で表示パネル2bに表示された映像を拡大した虚像として観察される。
【0049】
図2において、第1の接眼光学部3−1は、視野の正面方向に映像を表示するための接眼光学部であり、その導光部3bの先端は眼球11の正面まで延びている。図1の接眼光学部3は、第1の接眼光学部3−1を図示したものである。一方、第2の接眼光学部3−2は視野の端に映像を表示するための接眼光学部であり、その導光部3bの先端は眼球11から見て正面右側まで延び、従って、第1の接眼光学部よりも短くなっている。
【0050】
図3は、図1に示した本体部の構成と本体部に対する接眼光学部の取付けとを説明するための模式図である。本体部2は先端に開口または透明部材により構成される射出窓2cを備えた本体側取付部2dを有する。射出窓2cは表示パネル2bの発光面に面しており表示パネル2bからの映像光を透過させる。
【0051】
一方、第1および第2の接眼光学部3−1,3−2の入射端に設けられた鏡枠3a,3aは、それぞれ、開口または透明部材により構成される入射窓3d,3dを備えた接眼光学部側取付部3e,3eを有する。この接眼光学部側取付部3e,3eは、本体側取付部2dの有する溝に沿って摺動可能に嵌合することができ、これによって接眼光学部3-1,3−2が本体部2に取り付けられ保持される。すなわち、本体側取付部2dとそれぞれの接眼光学部側取付部3e,3eとは、取付手段である取付部4を構成する。その際、射出窓2cとそれぞれの入射窓3d,3dとが対向して接し、表示パネル2bの映像光が接眼光学部3-1,3−2内へ入射可能になる。また、接眼光学部3−1,3−2と本体部2とは取り外しも可能であり、使用者は適宜第1の接眼光学部3−1と第2の接眼光学部3−2とを選択して使用することができる。
【0052】
図4は、図1に示した本体部の制御系の機能ブロック図である。映像制御部2gは、表示すべき映像の映像信号をドライブ回路2fに供給する。ドライブ回路2fは、映像表示部2eを駆動し、これによって表示パネル2bから映像光を出射させる。また、映像切替手段2hは、第1の接眼光学部に応じた第1の表示映像と第2の接眼光学部に応じた第2の表示映像とを切り替えるための切換え信号を映像制御部2gに供給する。例えば、使用者が最適な映像表示を選択して映像切替手段2hに入力したり、映像切替手段2hが取付けられている接眼光学部3−1,3−2を識別して最適な表示映像を選択したりすることによって、表示映像を切替えることができる。
【0053】
以上のような構成によって、使用者は、第1の接眼光学部3−1と第2の接眼光学部3−2とから、用途に応じて適した接眼光学部を選択して、取外し、取付けを行うことにより切替えて使用することができる。第1の接眼光学部3−1を使用した場合は、表示パネル2bを出射した映像光は、第1の接眼光学部3−1の導光部3bの内部を通り、接眼レンズ3cから使用者の右眼眼球11に対して正面から入射する。これによって、使用者の右眼視野内の正面に表示映像が表示される。
【0054】
一方、第2の接眼光学部3−2を使用した場合は、表示パネル2bを出射した映像光は、第2の接眼光学部3−2の導光部3bの内部を通り、接眼レンズ3cから使用者の右眼の正面より斜め右方向より入射する。これによって、使用者の右眼視野内の右端に表示映像が表示される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、接眼光学部を交換することにより容易に表示映像の視野位置を選択することができ、かつ、別途頭部装着型画像表示装置全体を用意する必要がないのでコスト面でも優れている。例えば、映像を注視し続ける用途では、視野正面に映像を配置し、モバイル環境などの外界視野を優先し適時映像を確認する用途では、視野の端に映像を表示させることができる。また、接眼光学部3−1,3−2の取付け、取外しは、本体側取付部2dに対し接眼光学部側取付部3e,3eをスライドさせて行うことができるので、使用者が自分で間単に接眼光学部3−1,3−2を交換することが可能である。なお、取付部の両窓部は透明部材で保護されていることが好ましく、それによって、汚れたときの清掃が可能である。
【0056】
さらに、本体部2の映像切替手段2hにより映像表示の選択が可能なので、装着された接眼光学部3に応じて、映像を選択して使用することができる。
【0057】
また、眼鏡レンズ視野を妨げない位置に取付部4を配置したので、比較的サイズの大きい取付部により外界を視認する際に眼鏡を通して見える視野が大きく妨げられることなく、日常生活やモバイル環境でも使用できる。さらに、不使用時には接眼光学部3−1,3−2を外してしまえば、眼鏡視野内で視野が全く妨げられることがない。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、低コストで様々な状況に応じて映像表示方法を選択することができ、かつ、モバイル環境での使用や常時装着しての使用に対応できるように視界を確保することができる。
【0059】
(変形例)
図5は、第1実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置の変形例を示す図である。この変形例では、本体部2に鏡枠2iが結合しており、接眼光学部3と鏡枠2iとの間に取付部4が設けられている点で、第1実施の形態と異なっている。取付部4は、正面視のときの視線を中心とする30度の視野範囲である中心視野を遮らない位置に設けられている。その他の構成、作用は、第1実施の形態と同様なので、同一構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0060】
一般に、人間の眼には観察対象の物を細部にわたって認識できる「中心視野」とその周囲の「周辺視野」が存在する。中心視野の範囲は、正面視したときの視線を中心とする約30度の範囲(視線の中心から各方向へ約15度の範囲)と言われている。本変形例によれば、中心視野を妨げない位置に取付部4が配置されているため、外界視界を確保することができ、モバイル環境や日常生活においても使用することができる。
【0061】
(第2実施の形態)
本実施の形態では、モバイル用途の第1の接眼光学部と映像観賞用の第2の接眼光学部とを交換可能としたものである。図6は、本発明の第2実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置の第1の接眼光学部および第2の接眼光学部を使用した場合のそれぞれの光学系を説明する図であり、図6(a)、(b)は、それぞれ第1の接眼光学部3−1および第2の接眼光学部3−2を眼鏡に装着した状態での表示パネル2bおよび接眼光学部3−1,3−2を含む部分を上から見た図、および、それぞれの導光部3b,3bの形状を、眼球11から見た図(図の上部に示されている)である。
【0062】
第1の接眼光学部3−1は、図6(a)に示すように、導光部3b、接眼レンズ3cおよび入射窓3dを有し、表示パネル2bから入射窓3dに入射した映像光は、導光部3bの内部を反射しつつ伝播して接眼レンズ3cから、眼球に対して正面の右側から斜め方向に入射する。
【0063】
導光部3bは、入射面および出射面を除き、映像光が内側面で反射するように構成され、入射した映像光は、この導光部3b内で5回ジグザグに反射して、眼球11に向けて出射する。また、導光部3bを使用者から視軸方向に見た鉛直方向の幅は、映像光の入射側から出射側にかけて細くなっており、先端部では2.6mmとなっている。
【0064】
一方、第2の接眼光学部3−2は、図6(b)に示すように、出射面に接眼レンズは設けずに、導光部3bの中間部に正のパワーをもつレンズを配置している。正のパワーを持つレンズは、例えば2枚の凸レンズ3f、3f’を向かい合わせた構成となる。導光部3bは使用者の眼球11の正面まで延びており、表示パネル2bを出射した映像光は、導光部3bを通り眼球11に対して正面から入射する。
【0065】
表示パネル2から導光部3bに入射した映像光は、導光部3bの入射側の斜面で反射され、導光部3b内を長手方向に進み、レンズ3f、3f’により屈折され、さらに導光部3bを長手方向に進み、出射側の斜面で反射されて、眼球11に向けて出射する。従って、映像光は、導光部3b内で入射側と出射側の斜面で合計2回反射した後出射する。図6(b)に示すように、導光部3bの使用者から視軸方向に見た鉛直方向の幅は、入射側と出射側とで略等しく、約8mmとなっている。
【0066】
本実施の形態における、第1の接眼光学部および第2の接眼光学部の仕様の一例を、図7(a)、7(b)にそれぞれ示している。
【0067】
図8は、図6および図7に示したそれぞれの接眼光学部の光学系を説明する図であり、光学系を水平方向に見た図を、光路上での反射を考慮せず直線状に表示している。モバイル用の第1の接眼光学部3−1は、眼球から表示パネル2bをのぞむ視野角が小さいため、焦点距離の長い接眼レンズ3cを、表示パネル2bから一番遠い位置である導光部3bの射出窓に設けている。さらに、導光部3bの内部で5回反射させることで、実質的に光路長を長くしている。一方、第2の接眼光学部3−2は、視野角が大きいので、焦点距離の短い正のパワーを有するレンズ3f、3f’を導光部3bの中間部に配置している。このように、第1の接眼光学部3−1と第2の接眼光学部3−2とは、接眼レンズと前記映像射出部との相対位置関係を異ならせている。
【0068】
次に、接眼光学部の視軸方向への投影断面の幅に応じて、シースルー画像または非シースルー画像が表示されることを図9および10を用いて説明する。図9は、頭部装着型画像表示装置を使用者が装着した状態での、シースルー表示用および非シースルー表示用の接眼光学部と眼球との位置および大きさの関係を説明する図である。簡単のため、図9では、シースルー用接眼光学部31および非シースルー用接眼光学部32は、眼球に対する先端部の位置を等しいものとしている。図9(a)に示したシースルー表示用接眼光学部31は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅(図において上下方向の幅)が、人間の瞳孔径よりも小さく、図9(b)に示した非シースルー表示用接眼光学部32は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅が、人間の瞳孔径よりも大きくなっている。
【0069】
図10は、図9のそれぞれの接眼光学部を用いた場合の眼球へ向かう外界光の光路を説明する図である。シースルー表示用接眼光学部31を使用した場合は、図10(a)に示すように、正面方向からの外界光のうち接眼光学部31の上下を通過した光が瞳孔11aを通り網膜11cに到達することが可能である。このため、使用者の視野内には、接眼光学部31の射出窓から出射した表示映像に、接眼光学部31の前方に位置する背景も重畳されたシースルー画像が表示される。一方、非シースルー表示用接眼光学部32を使用した場合は、図10(b)に示すように、接眼光学部32の幅が、瞳孔11aよりも大きくなっているため、接眼光学部の前方位置からの外界光が眼球11へ侵入できず、接眼光学部31の射出窓から出射した表示映像に背景が重畳されない非シースルー画像として表示される。
【0070】
人間の平均的な瞳孔径が4mm程度なので、シースルー用接眼光学部31は先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅を4mm以下とし、非シースルー用の第2の接眼光学部32は先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅を4mm以上とすることが好ましい。本実施の形態では、先端部の幅が2.6mmの第1の接眼光学部を用いるとシースルー表示となり、同じく8mmの第2の接眼光学部を用いると非シースルー表示となる。
【0071】
また、本体部2は図4の第1実施の形態における本体部2と同様の制御系を有する。第1の接眼光学部3−1では映像光が導光部3b内で5回反射し、第2の接眼光学部3−2では映像光が導光部3b内で2回反射することから、第1の接眼光学部3−1を使用した場合と第2の接眼光学部3−2を使用した場合とでは映像が左右反転する。このため、第1の接眼光学部3−1の使用時には、映像切替手段2hが、使用者の操作により、または、装着された接眼光学部を検出して、映像制御部2g、ドライブ回路2fを介して、映像表示部2eが表示パネル2bに表示させる映像(第2の表示映像)の左右を反転させることができる。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0072】
以上のような構成によって、第1の接眼光学部3−1を用いた場合は、図11(a)にイメージ図で例示するように、視野の中心線を避けた視野内の右側に、小さい画面で映像6aが表示される。また、先端部の幅が人間の通常環境における瞳孔径である4mmよりも細い接眼光学部3−1を使用するため、映像は背景が透けて見えるシースルー映像として表示される。一方、第2の接眼光学部3−2を用いた場合は、図11(b)に示すように、大きな画面で視野の中心線を含む位置に映像6bが表示される。また、先端部が瞳孔径の4mmよりも太い接眼光学部3を使用するため、非シースルーで背景が遮られ背景に邪魔されない映像を観察することができる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態によれば、様々な状況、用途に応じて、2種類の頭部装着型画像表示装置を持ち歩くことなく、1台の頭部装着型画像表示装置1の接眼光学部3−1,3−2の交換だけで、視界確保を優先したモバイル用と映像観賞用とのそれぞれの用途に使用することが可能である。モバイル用は、シースルー表示によって常時装着しての使用に適しており、映像観賞用は非シースルー表示により、落ち着いた環境で綺麗な映像を鑑賞したい場合に適している。
【0074】
さらに、第1の接眼光学部3−1は、導光部3b内で5回ジグザグに反射する光路を採用したことにより、射出瞳径を大きくとりながら接眼光学部の薄型化が可能であり、内部でジグザグに反射することにより光路を長くし、焦点距離の長いレンズを用いることで視野角を小さくすることができるという効果もある。さらに、光路を確保しながら使用者の視野内の右側に表示映像を表示させるため接眼光学部3−1の全長を短くすることもできる。一方、第2の接眼光学部3−2は、反射回数を2回として導光部3b内に長手方向に沿って光路を通し、入射端と出射端との間の光路を最短とすることで、接眼光学部3−2の全長を相対的に長くすることを可能にしている。すなわち、通常であれば視野角の小さなレンズを使用した場合は光路長が長く、視野角の大きなレンズを使用した場合は光路長が短くなるところを、本実施の形態では、視野角が小さいレンズを用いながら接眼光学部の長さをより短くし、視野角の大きいレンズを用いながら接眼光学部の長さをより長くした光学系を実現している。
【0075】
なお、第1の接眼光学部3−1の導光部3b内で映像光が反射する回数は5回としたが、これに限られず、第2の接眼光学部3−2の導光部3b内での反射回数よりも多い回数、すなわち3回以上とすれば光学系を適切に構成することにより同様の効果が得られる。また、接眼光学部3−1,3−2を切替える際は、表示パネル2bの大きさ、位置を固定のまま、接眼光学部3−1,3−2のみを交換し映像を観察できることが好ましい。その場合、使用者は接眼光学部3の交換のみで余計な調整作業を必要としない。また、パネルの使用表示領域もそのままであれば、解像度が低下しないので好ましい。
【0076】
(第3実施の形態)
図12は、本発明の第3実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置に適用される第2の接眼光学部の構成および作用を説明する図である。本実施の形態では、第1実施の形態における第2の接眼光学部を、図12に示した本実施の形態の第2の接眼光学部3−2に置き換えるものとする。なお、置き換える接眼光学部は第1の接眼光学部としても良い。
【0077】
図12に示す第2の接眼光学部3−2は、導光部3bと接眼レンズ3cを有する。導光部3bは、水平方向に配置され両端に斜面(反射面3j,3k)が形成された断面が矩形の棒状の導光部の入射側の上部に、本体2に取り付けた際に表示パネル2bと対向する入射面3hと、この入射面3hから入射した映像光を下方向に90度反射させる反射面3iを有する三角プリズム状の部分(プリズム状部分3g)が付加された形状となっている。
【0078】
この導光部3bの入射側端部は、図示しない鏡枠に嵌め込まれており、この鏡枠に設けられた図示しない接眼光学部側取付部と、図3と同様の本体側取付部とを摺動嵌合させることによって本体に対して取付けることができる。その他の構成は第1実施の形態と同様なので同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0079】
この第2の接眼光学部3−2によれば、表示パネル2bから水平に入射した映像光は、反射面3iで下向きに反射された後、反射面3jで反射され導光部3b内を長手方向に進み、反射面3kで再び反射され、接眼レンズ3cから使用者の眼球11に向けて出射される。ここで、使用者が正面を向いた状態で、眼球の視軸方向をx軸、導光部3bの長手方向をy軸、鉛直方向をz軸とすると、反射面3iはy軸に平行かつx軸およびz軸に対して45度の角度を成し、反射面3jはx軸に平行かつy軸及びz軸に対して約45度の角度を成し、反射面3kはz軸に平行かつx軸およびy軸に対して約45度の角度をなす。これら3つの反射面3i,3j,3kにより順次反射されることにより、映像光は約90度回転する。
【0080】
そこで、映像切替手段2hにより、横長の表示パネル2bに、第2の表示映像として、縦長画像を上述の回転方向とは反対方向に90度回転させて表示させれば、携帯電話やスマートフォン等の情報端末に用いられるものと同様な縦長画像の表示が可能になる。
【0081】
したがって、テレビや映画等の横長の映像を見る場合には、第1の接眼光学部3−1を使用して横長画像として観察し、携帯電話やスマートフォン等の情報端末用のコンテンツを表示させる場合には、接眼光学部3−1を第2の接眼光学部3−2に交換するとともに、映像切替手段2hにより表示を上述のように切替えて、横長の表示パネル2bの全表示領域を有効に利用しながら、縦長画像として観察することができる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態によれば、横長画像を表示する第1の接眼光学部3−1と、横長画像を縦長画像に変換する第2の接眼光学部3−2とを切替えて使用することにより、頭部装着型画像表示装置そのものを交換することなく、接眼光学部の交換のみで縦長画像と横長画像との表示を切替えて使用することができ、コンテンツごとの画面の向きにあった表示を行うことができる。
【0083】
なお、映像光を回転させるのは上述のような反射面の構成に限られず、結果的に映像光が回転する他の光学系の構成を用いても良い。また、表示映像の回転は、横長映像から縦長映像に限られず、その逆であっても良く、また回転角は90度以外となるようにしても良い。
【0084】
(第4実施の形態)
図13は、本発明の第4実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置に適用される接眼光学部の構成および作用を説明する図である。本実施の形態では、第1実施の形態における第2の接眼光学部を、図13に示した本実施の形態の第2の接眼光学部3−2に置き換えるものとする。なお、置き換える接眼光学部は第1の接眼光学部としても良い。
【0085】
図13に示す第2の接眼光学部3−2の導光部3bは、出射側の先端部3mと主要部3lとが別体として分離され、主要部3lの出射側先端には横方向のパワーを持つレンズ(例えばシリンドリカルレンズ)3nが形成されている。また、先端部3mは入射面と出射面とが90度を成す三角プリズム状の形状を有し、出射面の出射側にはレンズ3nと異なる焦点距離を有する縦方向のパワーを持つレンズ3pが配置されている。これら主要部3lと先端部3mとは、図示しない同一の保持部材(ケースなど)で相互に位置固定され保持される。その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0086】
本実施の形態の第2の接眼光学部3−2を用いることにより、表示パネル2bから入射した映像光は、導光部3bの主要部3lの入射端に形成された斜面に反射して、導光部3bの長手方向に伝播する。映像光は、レンズ3nで横方向にのみ屈折し、先端部3mに入射し先端部3mの斜面に形成された反射面で反射して、レンズ3pにより縦方向にのみ屈折され、使用者の眼球11に向けて出射する。その際、横方向に正のパワーを持つレンズ3nと縦方向に正のパワーを持つレンズ3pとを焦点距離を異なるようにし、位置をずらして配置したことにより、表示パネル2bに表示される映像に対する虚像として表示される表示映像の拡大率を、縦よりも横を大きくすることが可能となる。
【0087】
そこで、表示パネル2bのアスペクト比が例えば4:3の場合に、映像切替手段2hにより、第2の表示映像として、アスペクト比16:9の映像を表示パネル2bに横方向に圧縮して4:3のアスペクト比の画像として表示させ、これをレンズ3nおよび3pの焦点距離を適切に選択した本実施形態の第2の接眼光学部3−2を利用して、使用者の視野内にアスペクト比16:9の映像として表示させることができる。
【0088】
仮に、このようなアスペクト比の変換を行わない場合は、アスペクト比16:9の映像を表示するには、表示パネル2bには図14(a)に示すような黒帯を上下に表示した映像か、図14(b)のように映像の左右をカットした映像を表示することになる。しかし、図14(a)の場合は表示パネル2bの全画素を有効に利用できないため解像度が低下し、図14(b)の場合は映像が一部欠落するという問題がある。
【0089】
なお、アスペクト比の変換は、4:3から16:9への変換に限られず、16:9から4:3へ変換する構成も可能である。さらに、レンズ3n、レンズ3pおよびそれらの配置を調整することによって、種々の縦横倍率による変換が可能である。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アスペクト比を変換する第2の接眼光学部を設けたので、アスペクト比の異なる表示パネルを持つ2種類の頭部装着型画像表示装置を準備することなく、1台の装置で接眼光学部のみを交換することにより、使用者が容易に切替えて適切なアスペクト比の映像を鑑賞することができる。
【0091】
(第5実施の形態)
図15は、本発明の第5実施の形態に係る頭部装着型画像表示装置を用いた場合の、使用者の眼幅に応じた接眼光学部の選択を説明する図である。第2実施の形態の第1の接眼光学部と同様の接眼光学部であって、映像光の入射部から出射部までの距離が相対的に短いものを第1の接眼光学部3−1とし、相対的に長いものを第2の接眼光学部3−2とする。導光部3b,3bの斜面の角度や接眼レンズ3c,3cの焦点距離等を調整することによって、長さの異なる接眼光学部3−1,3−2を設けることが可能である。
【0092】
図15(a)は、眼幅の広い使用者に対して、第1の接眼光学部3−1を適用した例である。接眼光学部3−1の長さが相対的に短いので、接眼レンズ3cは第2の接眼光学部3−2を使用した場合よりも外側に位置し、接眼レンズ3cからの映像光が、使用者の眼球中心方向に向け出射され、好ましくは使用者の眼球中心11bを通る。同様に、図15(b)では、眼幅の狭い使用者に対して、第1の接眼光学部より長い第2の接眼光学部3−2を使用して、映像光が使用者の眼球中心方向に向け出射され、好ましくは眼球中心11bを通る。人の眼幅(瞳孔間距離)は様々であり、女性で56mm〜62mm、男性で60mm〜68mm程度とされる。それぞれの個人の眼幅に対応した接眼光学部に交換することにより、好適な位置で映像を見ることができる。
【0093】
本実施の形態によれば、長さの異なる接眼光学部を用意することによって、個人ごとに眼幅の異なる頭部装着型画像表示装置を用意することなく、接眼光学部のみを交換することにより、低コストで最適な視認環境を使用者に提供することができる。
【0094】
ここで、上述の各実施の形態において、使用者の眼球の視野内に表示される映像の視度を切替える方法について説明する。図16は、頭部装着型画像表示装置の光学系を説明する図である。表示パネル2bに表示される映像が、レンズ3cにより使用者の視野内に虚像として表示される。例えば、適切な条件下で表示映像6cが近距離表示される光学系の構成と比較して、接眼レンズ3cの焦点距離を短くすると、使用者の眼球視野内にはより遠距離の表示位置の表示映像6dが表示される。
【0095】
従って、例えば、第1の接眼光学部と第2の接眼光学部との接眼光学部の接眼レンズの焦点距離を異ならせた2つの接眼光学部を用意すれば、視度の異なる接眼光学部の間で切換えが可能になる。
【0096】
これによって、使用者の眼の視度や使用している眼鏡の視度に合わせて、接眼光学部の視度を選ぶことにより、無理なくボケの無い映像を表示させることができる。また、使用環境に応じて虚像が表示される距離を切替えることで、例えば、デスクワークをしながら時折映像を確認する際には、50cm〜1m程度前方に像を表示させることで、眼の焦点距離の移動が少なくなり、見やすい映像として表示できる。また、家庭でテレビ等を見ながら時折映像を確認する際には1m〜3m程度、屋外で風景を見ながら時折映像を確認する際には2m〜無限遠方に像を表示させることが好ましい。
【0097】
なお、接眼レンズ3cの焦点距離を変えるだけでなく、接眼レンズ3cと表示パネル2bとの位置関係を変えることによっても視度を変換することができる。
【0098】
このように異なる視度に対応可能にすれば、複数の頭部装着型画像表示装置を準備することなく、接眼光学部を交換するだけで、各個人や各眼鏡の視度への対応や、使用状況に応じた像距離の切替えなどを、使用者が容易に行うことができる。視度の調整機構を内蔵する技術もあるが、調整範囲が制限されたり、設計基準から大きく外れると性能が落ちたりする等の問題がある場合がある。視度調整を接眼光学部の交換により行えば、調整範囲の制約が少なく、最適に設計されたものを交換して使用することができる点で優れている。
【0099】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、頭部装着型画像表示装置は、眼鏡装着型に限られず、ヘルメットに装着するものや、レンズ無しの眼鏡フレームに装着されたものであっても良い。また、眼鏡装着型の場合は、眼鏡に固定された一体型であっても良く、眼鏡に着脱式のものであっても良い。また、映像を表示する眼は、右眼に限られず、左眼用や両眼に同一または異なる画像を表示するものであっても良い。本体部を固定するのは、眼鏡のテンプルに限られず、ヒンジ等他の部分でも良い。また、取付部の機構としては、それぞれ溝を有する本体と接眼光学部とを摺動嵌合させる方法に限られず、取付用の金具を設けたり、嵌め込み式にしたりするなど種々の方法が使用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 頭部装着型画像表示装置(眼鏡型)
2 本体部
2a 眼鏡固定部
2b 表示パネル
2c 射出窓
2d 本体側取付部
2e 映像表示部
2f ドライブ回路
2g 映像制御部
2h 映像切替手段
2i 鏡枠
3 接眼光学部
3−1 第1の接眼光学部
3−2 第2の接眼光学部
3a 鏡枠
3b,3b 導光部
3c,3c,3c 接眼レンズ
3d,3d 入射窓
3e,3e 接眼光学部側取付部
3f、3f’ レンズ
3g プリズム状部分
3h 入射面
3i,3j,3k 反射面
3l 主要部
3m 先端部
3n レンズ
4 取付部
6 表示映像
6a 表示映像(モバイル用映像)
6b 表示映像(映像観賞用)
6c 表示映像(近距離表示)
6d 表示映像(遠距離表示)
7 遮られた背景
10 眼鏡
10a 眼鏡フレーム(テンプル)
10b 眼鏡レンズ
11 眼球
11a 瞳孔
11b 眼球中心
31 シースルー表示用接眼光学部
32 非シースルー表示用接眼光学部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に固定するための支持部と、
該支持部に固定され、表示すべき映像の映像光を出射する映像射出部を有する本体部と、
前記映像射出部から出射した映像光を入射し、前記支持部を使用者の頭部に固定した状態で、入射した該映像光を使用者の対応する眼球へ導光し、使用者の視野内に前記映像射出部の前記映像の拡大像を虚像として表示する接眼光学部と、
前記本体部に前記接眼光学部を交換可能に取付ける取付手段と
を備え、
前記接眼光学部は、光学特性の異なる少なくとも第1の接眼光学部および第2の接眼光学部より選択された一の接眼光学部であり、前記取付手段は正面視のときの中心視野を遮らない位置に配置したことを特徴とする頭部装着型画像表示装置。
【請求項2】
前記支持部は眼鏡フレームであり、前記本体部は前記眼鏡フレームに固定、または、着脱自在に装着され、前記取付手段は使用者が眼鏡レンズを通して見える視野を遮らない位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項3】
前記取付手段は前記接眼光学部の入射側近傍の一部を保持することを特徴とする請求項1または2に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項4】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、前記眼球に対して前記映像光を出射させる射出窓の位置が異なることを特徴とする請求項1−3のいずれか一項2に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項5】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、使用者の前記眼球の視野における虚像表示位置を互いに異ならせるように構成したことを特徴とする請求項1−4のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項6】
前記第1の接眼光学部は、使用者の前記眼球の視野の垂直中心線を含む位置に虚像が表示され、前記第2の接眼光学部は、使用者の視野の垂直中心線を含まない位置に虚像が表示されるように構成したことを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項7】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、前記映像射出部から入射した映像光を、それぞれの接眼光学部の内部で異なる回数反射させた後、前記眼球へ出射させるように構成したことを特徴とする請求項1−6のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項8】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、形状および大きさの双方またはいずれか一方が異なることを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項9】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、前記眼球から前記映像射出部をのぞむ視野角が異なることを特徴とする請求項1−8のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項10】
前記第1の接眼光学部および前記第2の接眼光学部の少なくとも一方は、前記映像射出部から入射した映像光を所定の角度回転させるように構成されていることを特徴とする請求項1−9のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項11】
前記第1の接眼光学部および前記第2の接眼光学部の少なくとも一方は、縦方向と横方向とで前記虚像の拡大率が異なることを特徴とする請求項1−10のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項12】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、それぞれ接眼レンズを有し、各接眼レンズの焦点距離を異ならせたことを特徴とする請求項1−11のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項13】
前記第1の接眼光学部と前記第2の接眼光学部とは、それぞれ接眼レンズを有し、各接眼レンズと前記映像射出部との相対位置関係を異ならせたことを特徴とする請求項1−12のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項14】
前記第1の接眼光学部は、使用者の視野内にシースルー映像として虚像が表示され、前記第2の接眼光学部は、使用者の視野内に非シースルー映像として虚像が表示されるように構成したことを特徴とする請求項1−13のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項15】
前記第1の接眼光学部は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mm以下であり、前記第2の接眼光学部は、先端部の使用者の視軸方向への投影断面の幅が4mmを越えていることを特徴とする請求項1−14のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。
【請求項16】
前記本体部は前記第1の接眼光学部に対応した第1の表示映像と、前記第2の接眼光学部に対応した第2の表示映像とを切り替える映像切替手段を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の頭部装着型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−203380(P2011−203380A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68784(P2010−68784)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】