説明

風力発電装置

【課題】風に対して適応動作しながら発電動作する風力発電装置を提案する。
【解決手段】風車主軸から偏心した偏心位置に保持した第2のリンクを、第1のリンクを保持した風車主軸位置から偏心した位置で風車主軸の周りを旋回させると共に、当該偏心量及び偏心角を風の状態に応じて適応制御するようにしたことにより、回転翼が受けるエネルギーを時々刻々最適化できる風力発電装置を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電装置に関し、特に風を受けながら立設した主軸と対向しながらその周りを回転する回転翼によって回転駆動力を発生する風車機構を有する構成のものに適用するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の風力発電装置として、特許文献1に開示のように、風車主軸から放射状に延長する第1リンクの先端に回転翼を装着するとともに、当該風車主軸から偏心した位置に設けられた偏心点中心から放射状に延長する第2リンクの先端を回転翼に係合する風車機構を有するものが提案されている。
【特許文献1】特開2006−242169公報
【0003】
この風車機構は、風車主軸の回転に応動して偏心点中心が風車主軸から偏位した位置において当該風車主軸の周りを旋回したとき第1リンクに対する第2リンクの相対位置が変動することにより、回転翼の風に対する姿勢が回転に応じて変化して行くことにより、回転翼が受けるエネルギーによって風車主軸に連続的な回転駆動力を与える風力発電手法として実用性が期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、風は自然環境の一要素として、その風向や風速が変化しているのが普通であるから、風車主軸に生ずる回転状態をできる限り安定に保つことが望ましい。
【0005】
特に、風が弱く回転翼が受けるエネルギーが小さいとき又は強風になって回転翼が受けるエネルギーが過大になったときには、適応的に風車を制御できるようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、風の風向や風速に変動が生じたとき、風車主軸に生ずる回転力を最適化できるようにした風力発電装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、回転翼15A〜15Cと、立設した風車主軸12から放射状に突出して先端に回転翼15A〜15Cを保持し、風車主軸12と一体に回転することにより回転翼15A〜15Cを風車主軸12の周りに回転させる第1リンク16AA(16BA)〜16AC(16BC)と、風車主軸12に回動自在に装着されたリンク保持部材13上の風車主軸12とは偏心した偏心点中心から実質上放射状に突出するように、リンク保持部材13に装着されると共に先端を回転翼15A〜15Cに連結され、リンク保持部材13が風車主軸12を中心として当該風車主軸12と一体に回転したとき偏心点中心と回転翼15A〜15Cとの実質上の距離を保ちながら風車主軸12を中心として旋回することにより、回転翼15A〜15Cが1回転する間において回転翼15A〜15Cの風に対する姿勢を変更させる第2リンク21A〜21Cとを有し、リンク保持部材13は、偏心した位置において風車主軸12に回動自在に保持された第1カム35と、偏心した位置において第1カム35を回動自在に保持する第2のカム33と、第1カム35及び第2カム33の回転角度差に基づいて、風車主軸12と偏心点中心との間の偏心量及び風車主軸12を中心とする風向と偏心点中心とのなす偏心角を変更させるカム位置決め手段4、41、42とを具える。
【0008】
また本発明においては、回転翼15A〜15Cと、立設した風車主軸12から放射状に突出して先端に回転翼15A〜15Cを保持し、風車主軸12と一体に回転することにより回転翼15A〜15Cを風車主軸12の周りに回転させる第1リンク16AA(16BA)〜16AC(16BC)と、風車主軸12に回動自在に装着されたリンク保持部材13上の風車主軸12とは偏心した偏心点中心から実質上放射状に突出するように、リンク保持部材13に装着されると共に先端を回転翼15A〜15Cに連結され、リンク保持部材13が風車主軸12を中心として当該風車主軸12と一体に回転したとき偏心点中心と回転翼との実質上の距離を保ちながら風車主軸12を中心として旋回することにより、回転翼15A〜15Cが1回転する間において回転翼15A〜15Cの風に対する姿勢を変更させる第2リンク21A〜21Cとを有し、リンク保持部材13は、回転翼15A〜15Cが受ける風の風速又は風車主軸12の回転数が小さいとき回転翼15A〜15Cから大きいエネルギーを受けるように風車主軸12と偏心点中心との間の偏心量e及び風車主軸12を中心とする風向と偏心点中心とのなす偏心角θpを制御する制御手段54、SP3を有することにより、風車主軸12の回転を始動させる風速を低い値にした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、風車主軸から偏心した偏心点中心に保持した第2リンクを、第1リンクを保持した風車主軸位置から偏心した偏心点中心で風車主軸の周りを旋回させると共に、当該偏心量及び偏心角を風の状態に応じて適応制御するようにしたことにより、回転翼が受けるエネルギーを時々刻々最適化できる風力発電装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0011】
(1)全体構成
図1において、1は全体として風力発電装置を示し、支持架台部2に設置された風車機構部3を発電制御部4によって適応制御することにより安定に風力駆動し、その結果発電機5から風力発電出力PWを得る。
【0012】
(2)風車機構部
この実施の形態の場合、風車機構部3は、図2及び図3に示すように、支持架台部2の上部に設けられた軸受部材11によって風車主軸12が立設され、この風車主軸12にこれと一体に回転するように取り付けられた第1リンク保持部材13に、複数例えば6本の上下2段の第1リンク16AA(16BA)、16AB(16BB)及び16AC(16BC)の根元部分が一体に固着されるとともに、その先端部が放射方向に、外方に延長し、その先端に3枚の回転翼15A、15B及び15Cが軸支されている。
【0013】
この実施の形態の場合、第1リンク16AA及び16BA、16AB及び16BB並びに16AC及び16BCは、図3に示すように、実質上、風車主軸12から三方に互いに角等間隔を保つように設けられている。
【0014】
かくして3組の第1リンク16AA及び16BA、16AB及び16BB並びに16CA及び16BCが、それぞれ3枚の回転翼15A、15B並びに15Cの内側表面の上下位置に軸支されることにより、上下方向に縦長に配設された3枚の回転翼15A、15B並びに15Cが第1リンク保持部材13従って風車主軸12に強固に保持されることによって回転翼15A、15B並びに15Cに生じた回転力を風車主軸12に伝達することにより、風車主軸12を回転駆動するようになされている。
【0015】
この実施の形態の場合、上段及び下段の第1リンク16AA及び16BA、16AB及び16BB、並びに16AC及び16BC間にそれぞれ補強用連結材17AA及び17BA、17AB及び17BB並びに17AC及び17BCが橋架され、これにより第1リンク16AA及び16BA、16AB及び16BB並びに16AC及び16BCの一体的な強度を補強している。
【0016】
第1リンク16AA及び16BA、16AB及び16BB並びに16AC及び16BCの先端はそれぞれ第1リンク翼連結具18AA及び18BA、18AB及び18BB、並びに18AC及び18BCを介して、それぞれ回転翼15A、15B並びに15Cにこれが先端部において回動できるように連結されており、これにより回転翼15A、15B並びに15Cが第1リンク16AA及び16BA、16AB及び16BB並びに16AC及び16BCの先端位置において風車主軸12に対する対向面を仮想水平面内において時計方向又は半時計方向に回動できるようになされ、これにより回転翼15A、15B並びに15Cの風に対する姿勢を必要に応じて変更できるようになされている。
【0017】
風車主軸12の第1リンク保持部材13の下方位置には円盤状の第2リンク保持部材21が風車主軸12に対して回動自在に設けられている。
【0018】
第2リンク保持部材21の円周方向に角等間隔を保つ3つの位置には、第1リンク16AA(16BA)、16AB(16BB)及び16AC(16BC)と対向するように、第2リンク21A、21B及び21Cの内側端が回転できるように連結され、その先端部が放射方向に外方に延長して、その先端が回転翼15A、15B及び15Cにそれぞれ第2リンク翼連結具22A、22B及び22Cを介して軸支され、これにより第2リンク翼連結具22A、22B及び22Cが第2リンク21A、21B及び21Cの先端に回転翼15A、15B及び15Cを軸支している。
【0019】
この第2リンク21A、21B及び21Cの回転翼15A、15B及び15Cに対する保持位置は、図3に示すように、第1リンク16AA(16BA)、16AB(16BB)及び16AC(16BC)の保持位置より時計方向にずれた位置に選定されており、これにより風車主軸12の回転に応じて、第2リンク21A、21B及び21Cの先端位置が、対応する第1リンク16AA(16BA)、16AB(16BB)及び16AC(16BC)の先端位置(図4(A))より図4(B)において矢印a1で示すように、相対的に外側に突き出したり又は図4(C)において矢印a2で示すように内側に引き込んだりすることにより、矢印b1及びb2で示すように、第1リンク16AA(16BA)、16AB(16BB)及び16AC(16BC)の先端を中心として回動し、その結果回転翼15A、15B及び15Cがそれぞれ風の流れる方向に対する姿勢を変更するようになされている。
【0020】
第2リンク保持部材21は、図5(A)及び(B)に示すように、円環状の第2リンク保持部材本体31の内側に軸受32を介して第2カム33を回動自在に保持するとともに、当該第2カム33の内側に軸受34を介して第1カム35を回動自在に保持する。
【0021】
さらに第1カム35は、軸受36を介して風車主軸12を保持する主軸保持筒37を回転自在に保持する。
【0022】
第2リンク保持部材21のリンク保持部材本体31にはそれぞれ第2リンク保持連結部材24A〜24Cの支持軸25A〜25Cを介して第2リンク21A、21B及び21Cの内側端が回動自在に連結されており、これにより第1カム35及び第2カム33をそれぞれ第1カム位置決めモータ41及び第2カム位置決めモータ42によって回動させることにより、風車主軸12に対する第2リンク21A、21B及び21Cの実質上の回転中心の位置を偏心移動できるようになされている。
【0023】
すなわち第2カム33は、その回動中心(これを第2カム偏心位置と呼ぶ)P3とは同心位置ではなく偏心させた位置(これを第1カム偏心位置と呼ぶ)P2を回動中心として第1カム35を回動させるように、第2リンク保持部材本体31に回動自在に保持されている。
【0024】
これに加えて第1カム35はその回動中心P2と同心位置ではなく偏心した位置(これを風車主軸位置と呼ぶ)P1において風車主軸12を回転させるように風車主軸12を保持する。
【0025】
かくして第2カム33の回動中心、すなわち第2カム偏心位置P3には、第2リンク21A、21B及び21Cが円環状の第2リンク保持部材本体31から放射方向に延長していることから、第2リンク21A、21B及び21Cの第2リンク保持部材21への実質的な保持中心点である偏心点中心が、丁度重なる。
【0026】
従って、第2リンク保持部材21を水平に横切るように風車主軸12と直交する平面である第2リンク保持仮想面PLNを考えたとき、図6に示すように、風車主軸12の回転中心(すなわち風車主軸位置P1)から、第1カム35の回動中心(すなわち第1カム偏心位置P2)までのベクトル(その長さをe1とする)と、この第1カム偏心位置P2から第2カム33の回動中心、すなわち第2カム偏心位置P3までのベクトル(その長さをe2とする)との合成ベクトル(すなわち風車主軸位置P1から第2カム偏心位置P3までのベクトルでその長さをeとする)は、風車主軸12から第2カム33の回動中心(すなわち上記偏心点中心)までの偏心量eを表わしていることになる。
【0027】
そしてこの合成ベクトルの偏心量e(風車主軸位置P1が回動すると仮定して作図した)は、第1カム35が第1カム偏心位置P2を中心として回動することにより、矢印cで示すように、回動中心P2に対する風車主軸12の風車主軸位置P1が変化することによって、図8(A)に示すように、相対的に変化する。
【0028】
因に、図6において、第1カム35が回動すると実際には風車主軸12が移動するのではなく、第1カム35が風車主軸12を中心として回動するので、図8(A)に示すように、第1カム35の回転中心(=第1カム偏心位置P2)が風車主軸位置P1を中心として長さe1のベクトルの当該長さe1を半径として回動する。
【0029】
このとき、第2カム33が回動停止しているとすれば、長さe2のベクトルの向きは変化しないので、当該ベクトルの先端位置M1、M2……M8すなわち第2カム33の回動中心(=第2カム偏心位置P3)は、第1カム35の回動中心(=第1カム偏心位置P2)の位置の円軌跡上の移動に応じてこれに対して平行移動して行く。
【0030】
かくして、図8(A)に示すように、第2カム33が回動停止した状態で第1カム35が回動すれば、長さe1のベクトルと長さe2のベクトルとの合成ベクトルでなる長さeのベクトルは、矢印WDで示す風向に対して方向を変えながら、当該長さeを変化させて行く。
【0031】
この実施の形態の場合、図8(B)に示すように、風車主軸12の風車主軸位置P1と、第2カム33の回動中心(第2カム偏心位置P3)とを結ぶ線LXが風WDの風向の方向と一致するときの当該風車主軸位置P1及び第2カム偏心位置P3(従って偏心点中心)間の距離(従って長さeのベクトルの当該長さ)を、「偏心量e」と定義する。
【0032】
この偏心量eを設定するため、図8(A)について上述したように、第1カム35を回動することにより、一点鎖線で示すように当該回動量に応じて第2カム偏心位置P3(従って偏心点中心)を表わす点M1、M2……M8を求めたとき、これと同時又はタイミングをずらせて、第2カム33を第1カム35の回動方向とは逆方向に回動させることにより、二点鎖線で示すように点M1、M2……M8の位置を風WDの風向の一致する線LX上に設定する。
【0033】
かくして第2リンク保持部材21は、第1カム35及び第2カム33の回動量が制御されることにより、第2リンク21A、21B及び21Cの実質的な保持中心点である偏心点中心と風車主軸位置との間の距離である「偏心量e」を、常に風WDの風向と合わせるように設定する。
【0034】
またこの偏心量eを表す合成ベクトルが向う方向は、図6において矢印dで示すように、第2カム33が回動中心P3を中心として回動する(第1カム35も一緒に回動動作させる)ことにより、図9に示すように、実質上風車主軸12の回転中心、すなわち風車主軸位置P1を中心として偏心角θpとして変化する。
【0035】
ここで、第2カム33の回動中心、従って第2カム偏心位置P3は第2リンク21A、21B及び21Cの第2リンク保持部材21への実質的な保持中心点である偏心点中心であるから、第2リンク21A〜21Cの外方へシフトの仕方が第1カム35及び第2カムの回動の仕方によって変化し、これにより図7に示すように、回転翼15A〜15Cの首部が第1リンク16AA(16BA)〜16AC(16BC)によって風車主軸位置P1を中心として移動軌跡R1上を回転したとき、回転翼15A〜15Cの尾部が第2リンク21A〜21Cによって軌跡R1とは偏心した移動軌跡R2上を移動することにより、回転翼15A〜15Cの風WDに対する姿勢が変化し、これにより回転翼15A〜15Cが風WDから受けるエネルギーを、風車主軸12の風車主軸位置P1から第2カム偏心位置P3(すなわち保持中心点)への偏心量e及び偏心角θpによって、制御することができる。
【0036】
(3)偏心量及び偏心角の設定
この実施の形態の場合、図7に示す偏心量eと風下を基準にする偏心角θpの設定は図8及び図9に示す手法によって行う。
【0037】
偏心角eを設定するとき、第1カム35を図5(A)に示す基準状態の位置から、時計方向(又は反時計方向)に回動させ、これと共に第2カム33を第1カム35とは逆方法に回動させる。
【0038】
この場合、第2リンク保持部材21(図5(A))は、第1カム35が第1カム偏心位置P2を中心として例えば時計方向に回動すれば、これに応じて風車主軸12(従って風車主軸位置P1)を中心として時計方向に回動し(実際上風車主軸12は移動しないので)、これにより図8(A)において符号K1、K2……K8で示すように、第1カム偏心位置P2が時計方向に回動する。
【0039】
このとき、第2カム33を回動動作させないように制御すれば、第2カム33の回動中心、従って第2カム偏心位置P3は、図8(A)において符号M1、M2……M8で示すように、第1カム偏心位置P2に追従するように平行移動して行く。
【0040】
従って風車主軸位置P1から第2カム偏心位置P3までの距離は、第1カム35が基準位置にあるとき符号K1及びM1で示す位置が一直線上に並ぶことにより最も大きい値(e=e1+e2)になるのに対して、第1カム35の回動量が大きくなるに従って小さくなって行き、やがて第1カム35が180°回動したとき、第2カム偏心位置P3の回動角度が風車主軸位置P1と重なる(e1=e2に設定すれば両点が丁度重なる)ことにより最も小さい値(e1=e2のときe=0)になる。
【0041】
かかる第1カム35の回動動作に加えて、第2カム33を逆方向に回動させることにより、図8(B)に示すように、第1カム35によって設定された点M1、M2……M8が風WDの風向と一致する基準線LX上に設定し直され、これにより第2リンク保持部材21上の第2リンク21A〜21Cの実質的な保持点である偏心点中心の風車主軸12の風車主軸位置P1との間の「偏心量e」が当該風WDの風向と一致する方向に設定される。
【0042】
かくして偏心量eを、第1カム35の回動に応じて最大量e=e1+e2から最小量e(=0)までの範囲で設定できる。
【0043】
上述においては、第1カム35を時計方向に180°回動させたが、時計方向に180°〜360°回動させ、又は反時計方向に0°〜360°回動させた場合も、同様にして偏心量eを、第1カム35及び第2カム33の回動に応じて最大量e=e1+e2から最小量e(=0)までの範囲で設定できる。
【0044】
また図9において、風下を基準にして、偏心角θpを設定する場合は、第1カム偏心位置P2及び第2カム偏心位置P3が風車主軸位置P1を中心として同じ角度だけ回動するように、第1カム35及び第2カム33を連動して回動動作させ、これにより設定した偏心量eを変更させずに、偏心角θpを必要に応じて設定することができる。
【0045】
かくして風車主軸位置P1に対する第2カム偏心位置P3従って第2リンク21A〜21Cの実質的な保持中心位置の偏心量e及び偏心角θpを、第1カム35及び第2カム33の回動量によって設定できると共に、これを発電制御部4によって制御することにより、回転翼15A〜15Cの姿勢、従って風から得られるエネルギーを適応制御できる。
【0046】
(4)発電制御部
発電制御部4は、図10に示すように、風向風速検出器51から得られる風向風速検出信号S1と、回転数検出器52から得られる風車主軸12の回転数(パルス数/分)を表す回転数検出信号S2とを、バス53を介して中央処理ユニット(CPU)54に受ける。
【0047】
CPU54は、ユーザが表示手段55の表示を見ながら入力手段56を操作することにより入力した設定条件に応じて、当該風向風速検出信号S1及び回転数検出信号S2をプログラムメモリ57に格納されているプログラムに従って、動作メモリ58とデータベース59(図13)に蓄積するデータを用いて演算処理することにより、第1カム位置決めモータ41及び第2カム位置決めモータ42を駆動する第1カム駆動回路60及び第2カム駆動回路61にそれぞれ位置決め回動信号S21及びS22を送出する。
【0048】
かくしてCPU54は、風向風速検出器51によって検出した風の現在の状態と、回転数検出器52によって検出した風車主軸12の回転数に応じて、現状に最適な条件によって風車機構部3の回転翼15A〜15Cの風に対する姿勢を制御し、これにより常に安定性が大きい発電出力PWを得るような制御を行う。
【0049】
CPU54は、ユーザが入力手段56において発電制御開始指令を入力したとき、これに応答して図11に示す発電制御処理手順RT0を実行する。
【0050】
CPU54は、発電制御処理手順RT0に入ると、まずステップSP1において図12に示す初期設定処理手順を実行する。
【0051】
初期設定処理手順SP1に入ると、CPU54は、ステップSP1Aにおいてユーザが入力手段56によって常数の定義をするのに従って、ステップSP1Bにおいて当該入力された常数等の初期化をした後、ステップSP1Cからメインルーチン(図11)に戻る。
【0052】
かくしてCPU54は、上述のステップSP1の初期設定処理手順において、検出データの検出の際に必要となるサンプリング時間Tsmpの設定、平均回数Naveの設定をすることにより、サンプリング時間×平均回数=平均時間TAVEを求めるための初期設定データをデータベース59(図13)の初期設定データメモリ59Aに格納する。
【0053】
続いてCPU54は、ステップSP2に移って、図14に示すように、検出器からのデータの読込み処理手順を実行する。
【0054】
このとき、CPU54は、上述の初期設定処理手順SP1においてデータベース59の初期設定データメモリ59Aに取り込んだ初期設定データを用いて、ステップSP2Aにおいて風速(V(t))を検出し、ステップSP2Bにおいて風向(θ(t))を検出し、ステップSP2Cにおいて回転数N(t)を検出した後、ステップSP2Dにおいてそれぞれ平均化処理を実行した後、当該データをデータベース59の風速データメモリ59B、風向データメモリ59C及び回転数データメモリ59Dに取り込む。
【0055】
かくしてCPU54は、当該検出器からのデータの読込み処理手順SP2を終了してステップSP2Eからメインルーチン(図11)に戻る。
【0056】
続いてCPU54は、次のステップSP3に移って、図15に示すように、最適偏心量の算出処理を実行する。
【0057】
CPU54は、最適偏心量の算出処理手順SP3に入ると、ステップSP3Aにおいて、次式
【0058】
【数1】

【0059】
によって最適偏心量erを最適偏心量関数f1(V,N)から求めてデータベース59の最適偏心データメモリ59Eに取り込む。
【0060】
この(1)式の最適偏心量関数f1(V,N)は、図16に示すように、風速V(t)又は回転数N(t)が大きくなるに従って最適偏心量erを小さくして行くような演算式を有する。
【0061】
この最適偏心量関数f1(V、N)は、風車機構部3の機構上の特性(図7)として、偏心量eが大きいときの回転翼15A〜15Cの姿勢の方が偏心量eが小さいときより大きいエネルギーを風から受ける特徴をもっていることに着目して、風速V(t)又は回転数N(t)が小さいときは最適偏心量erを大きくするように第1カム35の回動量を制御することにより風車主軸12に与えられる回転トルクを大きくして回転翼15A〜15Cの姿勢を最適発電状態になるようにする。
【0062】
かくして、回転数N(t)が低い風車機構3の起動時においては、回転翼15A〜15Cの最適偏心量erを大きい値に演算することにより風車機構3の起動特性を良くし、これにより回転翼15A〜15C、従って風車主軸12の回転数を短時間の間に最適運転状態に起動する。
【0063】
また風が弱くなったときには、最適偏心量関数f1(V、N)によって最適偏心量erを大きい値に演算し直すことにより回転翼15A〜15Cが風から受けるエネルギーを大きくするようにその姿勢を制御し、これにより風車主軸12の回転数を最適値に維持する。
【0064】
これに対して発電運転中に風が強くなったときには、最適偏心量関数f1(V、N)によって最適偏心量erを小さい値に演算し直すことにより回転翼15A〜15Cが風から受けるエネルギーを小さくするようにその姿勢を制御し、これにより風車主軸12の回転数を最適値に維持する。
【0065】
このように時々刻々演算される最適偏心量erのデータは、データベース59の最適偏心量データメモリ59Eに取り込まれ、更新されて行く。
【0066】
かくしてCPU54は、データベース59の風速データメモリ59Bの風速(V(t))データ及び回転数データメモリ59Dの回転数N(t)データを用いて最適偏心量関数f1(V,N)を演算することにより、最適偏心量の算出処理手順SP3の処理を終了してステップSP3Bからメインルーチン(図11)に戻る。
【0067】
続いてCPU54は、次のステップSP4に移って最適偏心角の算出処理を実行する。
【0068】
この最適偏心角の算出処理手順SP4に入ると、CPU54は図17に示すように、ステップSP4Aにおいて関数f2(θ)を演算することにより最適偏心角θprを演算してデータベース59の最適偏心角θprデータメモリ59Fに取り込む。
【0069】
この関数f2(θ)は、図7について上述した第2リンク保持仮想平面PLNにおいて、風WDが風車主軸位置P1を通って風下に抜ける方向(これを風下方向と呼ぶ)から、風車主軸位置P1から第2カム偏心位置P3に向かうベクトル方向との間になす偏心角θpのうち回転翼15A〜15Cが最も大きなエネルギーが得られる角度を最適偏心角θpr(t)として次式
【0070】
【数2】

【0071】
から求める。
【0072】
ここで回転翼15A〜15Cが最も大きなエネルギーを受ける最適偏心角θpr(t)は、風車機構部3の機構的な特徴によって決まるので、風下(θp=0)からの偏心角θpを風向(θp=180°)からの角度に定数θofsを加算した値として表わした最適偏心角θpr(t)を求める。
【0073】
かくしてCPU54は、ステップSP4Aによって現在の風向θ(t)に対して回転翼15A〜15Cが最も大きなエネルギーを得る風向に対する姿勢を、第2リンク21A〜21Cの風車主軸12からの偏心角θpに基づいて算出処理すると共に、そのデータをデータベース59(図13)に取り込み・更新して行く。
【0074】
かくしてCPU54は当該最適偏心角θpr(t)の算出処理手順をSP4を終了してステップSP4Bからメインルーチン(図11)に戻る。
【0075】
続いて、CPU54はステップSP5に移って強風対策稼働条件の成立判断処理を行う。
【0076】
この強風対策稼働条件の確認処理は、常時は回転翼15A〜15Cの風向に対する姿勢を最適条件に設定することにより風車機構部3をより大きいエネルギーを風から受けて稼働させることができるのに対して、強風になった場合には、回転翼15A〜15Cが過大なエネルギーを得ることにより、風車機構部3が稼働条件の限界を越えるおそれがあり、CPU54はこれをSP5の処理によってそれを防止せんとする。
【0077】
強風対策稼働条件の成立判定処理手順SP5に入ると、CPU54は、図18に示すように、ステップSP5Aにおいて次式
【0078】
【数3】

【0079】
によって風速V(t)が過大になったか否かの判断をした後、否定結果が得られたときステップSP5Bにおいて次式
【0080】
【数4】

【0081】
によって風車主軸12の回転数が過大になったか否かの判断をする。
【0082】
このステップSP5A及びSP5Bにおいて共に否定結果が得られたときは、風が強風の状態ではないことを意味し、このときCPU54はステップSP5Cにおいて強風対策稼働条件として否定出力を送出してステップSP5Dからメインルーチン(図11)のステップSP6に戻る。
【0083】
これに対してステップSP5A又はSP5Bにおいて肯定結果が得られたとき、このことは、風車機構部3が風向風速検出器51の検出出力S1に基づく風速の異常か、又は回転数検出器52の検出出力S2に基づく風車主軸12の回転数の異常が生じていることを意味し、このときCPU54はステップSP5Eにおいて強風対策稼働条件として肯定結果を出力した後、ステップSP5Fからメインルーチン(図11)のステップSP7に戻る。
【0084】
CPU54は、メインルーチンのステップSP6に移ったとき、このことは風が異常ではないので風車機構部3を引き続き現在の稼働条件で駆動して良いと判断したことを意味しているので、CPU54は、次式
【0085】
【数5】

【0086】
のように、偏心量偏差ΔerをΔer=0に置くと共に、次式
【0087】
【数6】

【0088】
のように偏心角偏差ΔθrをΔθr=0と置くような処理をして次のステップSP8に移る。
【0089】
これに対してCPU54は、ステップSP5において肯定結果が得られることにより、ステップSP7に移ったとき、図19に示すように、偏心量偏差・偏心角偏差の算出処理手順を実行する。
【0090】
ここでCPU54は先ずステップSP7Aにおいて次式
【0091】
【数7】

【0092】
の演算を実行することにより、予め強風対策用に用意している強風対策用偏心量exと現在の最適偏心量erとの差を偏心量偏差Δerとして求め、これにより最適偏差量erに対して過大と考えられる分の修正値データを偏心量偏差Δerとして求めてデータベース59の偏心量偏差データメモリ59Gに取り込む。
【0093】
実際上、異常強風時には、偏心量eを大きくして回転翼15A〜15Cが受けるエネルギーを小さくするような偏心量偏差を設定し、これにより強風時に風車機構部3における風車主軸12の回転を止めるようにする。
【0094】
これと共にCPU54はステップSP7Bにおいて次式
【0095】
【数8】

【0096】
を演算することにより、偏心角偏差Δθrを関数fgth(N)を演算することにより求めてデータベース59の偏心角偏差データメモリ59Hに取り込んだ後、ステップSP7Cからメインルーチン(図11)のステップSP8に移る。
【0097】
ここで、関数fgth(N)は、風車主軸12の回転数N(t)が異常に大きくなったときには、偏心角θpを例えば90°に制御することにより、回転翼15A〜15Cが受けるエネルギーを小さくするような偏心角偏差を設定し、これにより強風時に風車主軸12の回転を止めるようにする。
【0098】
かくして、偏心量偏差Δer及び偏心角偏差Δθrは、異常強風時に、次のステップSP8において、これをそれぞれ最適偏心量er及び最適偏心角θprと加算することにより目標偏心量erX及び目標偏心角θprXを得たとき、当該目標偏心量erX及び目標偏心角θprXでは、回転翼15A〜15Cが風からエネルギーを受けられない状態になるような値(予め実験により求めておく)に選定されている。
【0099】
ステップSP8において、CPU8は目標偏心量及び目標偏心角の算出処理を実行する。
【0100】
このときCPU54は、図20に示すように、先ずステップSP8Aにおいて次式
【0101】
【数9】

【0102】
のように目標偏心量erXとして最適偏心量erと偏心量偏差Δerとを加算した値として求めてデータベース59の目標偏心量データメモリ59Iに取り込む。
【0103】
さらに、ステップSP8Bにおいて次式
【0104】
【数10】

【0105】
のように、目標偏心角θerXとして、最適偏心角θprに対して偏心角偏差Δθrを加算した値として求めてデータベース59の目標偏心角データメモリ59Jに取り込み、その後ステップSP8Cからメインルーチン(図11)に戻る。
【0106】
かくしてCPU54は強風が生じた異常時と、生じていない平常時との両方について、風車機構部3に対して偏心量及び偏心角について偏心量偏差Δer及び偏心角偏差Δθrを用いた同じ式を用いて目標値を求めることができる。
【0107】
ここで、目標偏心量erX及び目標偏心角θprXは、風が平常状態のときは、上述のステップSP6において、偏心量偏差ΔerがΔer=0に置かれると共に、偏心角偏差ΔθrがΔθ=0に置かれることにより、目標偏心量erX=最適偏心量erになると共に、目標偏心角θprX=最適偏心角θprになることにより、回転翼15A〜15Cを最適条件で駆動できる。
【0108】
これに対して、風が強風状態のときには、上述のステップSP7A及びSP7Bにおいて、回転翼15A〜15Cが風からエネルギーを受けられない偏心量偏差Δer及び偏心角偏差Δθrが求められていることにより、回転翼15A〜15Cは、回転を停止するような目標偏心量erX及び目標偏心角θprXが求められている。
【0109】
続いてCPU54は次のステップSP9おいて、ステップSP8において求めた目標偏心量を2つのカム、すなわち第1カム35及び第2カム33の角度差に換算する。
【0110】
この換算ステップSP9に入ると、CPU54は図21に示すように、ステップSP9Aにおいて次式
【0111】
【数11】

【0112】
のように、関数fth(er)によってカム角度差evrYを算出する。
【0113】
この関数fth(er)は、図22(A)に示すように、第1カム35の風車主軸位置P1と、第1カム偏心位置P2と、第2カム33の第2カム偏心位置P3との関係に基づいて、次式
【0114】
【数12】

【0115】
によって図22(B)に示す2つのカムの角度差θvrYを余弦定理を用いて数学的に換算する。
【0116】
図22(B)において、2つのカムの角度差θvrYは、風車主軸位置P1と第1カム偏心位置P2との距離e1と、第1カム偏心位置P2と第2カム偏心位置P3との距離e2と、風車主軸位置P1と第2カム偏心位置P3との距離すなわち偏心量eとでなる三角形において、第1カム移動角θv1と第2カム移動角θv2との和として求めることができる。
【0117】
ここで第1カム移動角度θv1は、図8について上述したように、風車主軸位置P1を基準にして、第1カム35が第2カム33が回動しない状態で回動動作したとき第1カム偏心位置P2が移動した角度を表しており、また第2カム移動角度θv2は第1カム35の回動動作によって第2カム33が平行移動することにより第2カム偏心位置P3が移動した角度を表している。
【0118】
かくしてCPU54は、この角度差θvrYを三角形P1−P2−P3について成り立つ予弦定理を用いた関数fth(er)によって求めた後、ステップSP9Bからメインルーチン(図11)に戻る。
【0119】
上述の(12)式において、次式
【0120】
【数13】

【0121】
のように、風車主軸位置P1及び第1カム偏心位置P2間の距離e1と、第1カム偏心位置P2及び第2カム偏心位置P3間の距離e2とを互いに等しい値emax/2に選定すれば、特に次式
【0122】
【数14】

【0123】
のように、第1カム移動角度θv1及び第2カム移動角度θv2が互いに等しい値になることにより、一段と簡易な演算によって2つのカムの角度差θvrYを求めることができる。
【0124】
CPU54は、ステップSP9の処理に続いて、ステップSP10に移って目標偏心角とカムの角度差より、2つのカムそれぞれの角度を算出する処理を実行する。
【0125】
このステップSP10の処理に入ると、CPU54は、図23に示すように、先ずステップSP10Aにおいて2つのカムの角度差を2つのカムすなわち第1カム35及び第2カム33それぞれの対応分に分割する処理を実行する。
【0126】
ここで、この処理は、図22の偏心量eとして、上述の(9)式において目標偏心量erxが与えられたとき、この目標偏心量erxを第2リンク保持部材21において実現するために必要な第1カム35及び第2カム33の移動角をそれぞれ対応分として求めるもので、図22において、第1カム偏心位置P2周りの2つのカムの角度差θvrYは、風車主軸位置P1における第1カム移動角度θv1と、第2カム偏心位置P3における第2カム移動角度θv2との和であることから、第1カム移動角度分θv1rと、第2カム移動角度分θv2rとを求めてデータベース59の第1カム及び第2カム移動角度分データベース59L及び59Mに取り込む。
【0127】
ここで、上述のステップSP9における処理と同様に、風車主軸位置P1及び第1カム偏心位置P2間の距離e1と、第1カム偏心位置P2及び第2カム偏心位置P3間の距離e2とを等しくとれば、第1カム移動角度分θv2rは互いに等しい値になるので演算式を単純化できる。
【0128】
続いてCPU54は、次のステップSP10Bにおいて、第1カム35について、次式
【0129】
【数15】

【0130】
の演算をすると共に、第2カム33について次式
【0131】
【数16】

【0132】
の演算をすることにより、第1カム35及び第2カム33の目標位置角度θv1及びθv2を求めてデータベース59の第1カム及び第2カムの目標位置角度データメモリ59N及び59Oに取り込む。
【0133】
ここで、第1カム35及び第2カム33を目標位置角度θv1及びθv2だけ移動させるためには、図9において、偏心角θpとして目標偏心角θprXだけ回動させると共に、偏心量eについて、第1カム35を「+」方向に割り当てられた第1カム移動角度分θv1rだけ回動させると共に、第2カム33を「−」方向に割り当てられた第2カム移動角度分θv2rだけ回動させる必要がある。
【0134】
かくして、CPU54は、目標偏心角θprXと目標偏心量erXとのカム角度換算値により、第1カム35及び第2カム33を移動させるべき位置角度を検出する。
【0135】
ここで上述と同様にして距離e1及びe2を等しくとれば、次式
【0136】
【数17】

【0137】
【数18】

【0138】
【数19】

【0139】
のように演算を単純化できる。
【0140】
CPU54は、第1カム35の目標位置角度θv1及び第2カム33の目標位置角度θv2を算出した後、続くステップSP11に移って、これら第1カム35及び第2カム33に対するモーターサーボ系でなる第1カム駆動回路60及び第2カム駆動回路61にそれぞれの目標位置角度θv1及びθv2を表す位置決め制御信号S11及びS12を出力し、その結果ステップSP12において第1カム35及び第2カム33を駆動し、これにより、偏心量及び偏心角を変更させることによって第2カム偏心位置P3に従って回転翼15A〜15Cの偏心軸位置を変更させる。
【0141】
かくして現在の風の状態に対して最適な条件で回転翼15A〜15Cからエネルギーを得るように回転翼偏心軸を制御するための1サイクル分の制御が終了し、CPU54は次のステップSP13において処理サイクル数iをi=i+1におくことにより上述のステップSP2に戻って次の制御サイクルを実行する。
【0142】
これにより、以後CPU54はステップSP2〜SP13の処理を繰り返すことにより、風の変化に応じて適応動作することによって回転翼15A〜15Cを最適条件に制御する。
【0143】
以上の構成によれば、風車主軸12とは偏心した位置で回動する第1カム35と、第1カム35の中心位置から偏心した位置で回動する第2カム33とを介して回転翼15A〜15Cを風車主軸12から偏心した位置に保持された第2リンク21A〜21Cによって回転翼15A〜15Cの風向に対する姿勢を変更制御できるようにしたことにより、回転翼15A〜15Cを第1カム35及び第2カム33の移動位置を制御することにより回転翼を最適化制御することができる。
【0144】
かくして常時、回転翼15A〜15Cを時々刻々変化する風から大きなエネルギーを得ることができるような姿勢で回転でき、これにより安定性が大きくかつ安全な風力発電装置を実現できる。
【0145】
また、最適偏心量関数f1(V、N)に従って、風車主軸12の回転数N(t)が小さいとき最適偏心量erを大きくして回転翼15A〜15Cが大きいエネルギーを受けるように制御することにより小さい風速で始動する風力発電出力を得ることができる風力発電装置を実現できる。
【0146】
さらに強風の場合には、偏心量eを大きくすると共に偏心角θpを例えば90°に制御して回転翼15A〜15Cが受けるエネルギーを小さくできるようにしたことにより、強風時に風車機構が過大に回転するようなおそれを有効に抑制することができる。
【0147】
(5)発電制御部の機能ブロック構成
CPU54の図12〜図23の各構成要素の処理は、図24に示す発電制御部4の機能ブロックとして置き換えることができる。
【0148】
発電制御部4は、風向風速検出器51から検出した風向θ(t)及び風速V(t)の検出信号を平滑処理部4A1において平滑処理する(ステップSP2の処理に対応する)と共に、回転検出器52から得た回転数Nの検出信号を平滑回路部4A2(ステップSP2)において平滑処理をする。
【0149】
当該平滑処理をして得られた風速検出信号は、回転数検出信号と共に最適偏心量算出部4Bに与えられて最適偏心量erが算出処理される(ステップSP3)。
【0150】
また風向検出信号は、最適偏心角算出部4Cにおいて算出処理されることにより最適偏心角θprが得られる(ステップSP4)。
【0151】
また回転数検出信号は強風対策部4Dの強風対策偏心量制御部4D1及び強風対策偏心角制御部4D2に与えられ、偏心量偏差Δer及び偏心角偏差Δθrが求められる(ステップSP5、SP6、SP7)。
【0152】
かくして得られた最適偏心角θpr及び偏心角偏差Δθrは目標値算出部4Eの目標偏心角算出部4E1に与えられて目標偏心角θprXを得る(SP8)。
【0153】
これとともに目標値算出部4Eの目標偏心量算出部4E2に最適偏心量er及び偏心量偏差Δerが与えられて目標偏心量erXを得(SP8)、この目標偏心量erXは2つのカムの角度換算部4Fに与えられて2つのカムの角度θvrYを得る(SP9)。
【0154】
目標値算出部4Eから得られる目標偏心角θprX及び2つのカムの角度換算部4Fから得られる2つのカムの角度差θvrYはカム位置角度算出部4Gに与えられて第1カム移動角度θv1及び第2カム移動角度θv2を得る(SP10)。
【0155】
このようにしてカム位置角度算出部4Gから得た第1カム移動角度θv1及び第2カム移動角度θv2はカム駆動部4Hの第1カム駆動部4H1及び第2カム4H2に与えられ、これにより風車機構部3の第1カム位置決めモータ41及び第1カム位置決めモータ42を風向に対して最適状態に位置決め駆動する。
【0156】
上述の構成の機能ブロックを有する発電制御部4によっても、図12〜図23によって上述した処理動作と同じ処理を実現できる。
【0157】
(6)他の実施の形態
図16においては、最適偏心量erの算出処理手順SP3を実行する際に用いる最適偏心量関数f1(V,N)として、風速V又は回転数Nが大きくなればこれに応じて連続的に最適偏心量erが低下して行くような関数を用いた場合について述べたが、これに代え、図25に示すように、風速V(t)又は回転数N(t)が切換え点K1、K2にまで上昇したとき、最適偏心量erをそれまでの一定値er1、er2から階段状にer2、er3に低下させるような最適偏心量関数f1X(V,N)を用いるようにしても良い。
【0158】
この場合、一旦風速V又は回転数Nが切換え点K1、K2を通りすぎた後元に戻る場合には、ヒステリシスループを持たせて復帰するようにすることにより、チャタリングを生じさせないようにする。
【0159】
このようにチャタリング防止のためにヒステリシスループを生ずるようにすることに代えて、風速V(t)及び回転数N(t)の切換え条件が揃ったときに切換え動作をさせることによりチャタリング動作を防止するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は立設した風車主軸の周りを回転翼が回転する風車機構を有する風力発電装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明による風力発電装置の一実施の形態を示す略線的ブロック図である。
【図2】図1の風車機構部の詳細構成を示す側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】(A)〜(C)は回転翼の姿勢の説明に供する略線図である。
【図5】(A)は第2リンク保持部材を示す略線的平面図、(B)はその縦断面図である。
【図6】第2リンク保持部材の第1カム及び第2カムの回動位置決め動作の説明に供する略線図である。
【図7】回転翼の回転動作の説明に供する略線図である。
【図8】(A)及び(B)は偏心量設定処理動作の説明に供する略線図である。
【図9】偏心角設定処理動作の説明に供する略線図である。
【図10】図1の発電制御部の構成を示すブロック図である。
【図11】発電制御部の発電制御処理手順RT0を示すフローチャートである。
【図12】図11の初期設定処理手順SP1の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図1のデータベース59の詳細構成を示す略線図である。
【図14】図11の検出器からのデータの読込み処理手順SP2の処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図11の最適偏心量の算出処理手順SP3の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】最適偏心量関数を示す特性曲線図である。
【図17】図11の最適偏心角の算出処理手順SP4の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】図11の強風対策稼動条件の成立判定処理手順SP5の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】図11の偏心量偏差・偏心角偏差の算出処理手順SP7の処理手順を示すフローチャートである。
【図20】図11の目標偏心量・目標偏心角算出処理手順SP8の処理手順を示すフローチャートである。
【図21】図11の目標偏心量を2つのカムの角度差に換算する処理手順SP9の処理手順を示すフローチャートである。
【図22】(A)及び(B)は2つのカムの角度差θvryの説明に供する略線図である。
【図23】図11の2つのカムの角度の算出処理手順SP10の処理手順を示すフローチャートである。
【図24】図1の発電制御部4の機能ブロック構成を示すブロック図である。
【図25】図16の他の実施の形態を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
【0162】
1……風力発電装置、2……支持架台部、3……風車機構部、4……発電制御部、11……軸受部材、12……風車主軸、13……第1リンク保持部材、15A〜15C……回転翼、16AA(16BA)〜16AC(16BC)……第1リンク、17AA(17BA)〜17AC(17BC)……補強用連結材、18AA(18BA)〜18AC(18BC)……第1リンク翼連結具、21……第2リンク保持部材、21A〜21C……第2リンク、22A〜22C……第2リンク翼連結具、24A〜24C……第2リンク保持連結具、31……リンク保持部材本体、32、34、36……軸受、33……第2カム、35……第1カム、41……第1カム位置決めモータ、42……第2カム位置決めモータ、51……風向速度検出器、52……回転数検出器、53……バス、54……中央処理ユニット(CPU)、55……表示手段、56……入力手段、57……プログラムメモリ、58……動作メモリ、59……データベース、60……第1カム駆動回路、61……第2カム駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼と、
立設した風車主軸から放射状に突出して先端に上記回転翼を保持し、上記風車主軸と一体に回転することにより上記回転翼を上記風車主軸の周りに回転させる第1リンクと、
上記風車主軸に回動自在に装着されたリンク保持部材上の上記風車主軸とは偏心した偏心点中心から実質上放射状に突出するように、上記リンク保持部材に装着されると共に先端を上記回転翼に連結され、上記リンク保持部材が上記風車主軸を中心として当該風車主軸と一体に回転したとき上記偏心点中心と上記回転翼との実質上の距離を保ちながら上記風車主軸を中心として旋回することにより、上記回転翼が1回転する間において上記回転翼の風に対する姿勢を変更させる第2リンクと
を有し、
上記リンク保持部材は、
偏心した位置において上記風車主軸に回動自在に保持された第1カムと、
偏心した位置において上記第1カムを回動自在に保持する第2のカムと、
上記第1カム及び第2カムの回動角度差に基づいて、上記風車主軸と上記偏心点中心との間の偏心量及び上記風車主軸を中心とする風向と上記偏心点中心とのなす偏心角を変更させるカム位置決め手段と
を具える
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
上記カム位置決め手段は、上記回転翼が受ける風の風速又は上記風車主軸の回転数に対する偏心量を最適偏心量関数に従って規定することにより、上記風速又は上記回転数が大きくなるに従って上記偏心量を小さくするように上記第1カム及び上記第2カムの回動角度差を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
上記カム位置決め手段は、上記回転翼が受ける風の風向に対して上記回転翼が最もエネルギーを受ける角度に上記偏心角を決める最適偏心角関数に従って上記偏心角を規定することにより、上記回転翼の上記風の風向に対する姿勢を最適状態になるように上記第1カム及び上記第2カムの回動位置を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項4】
上記回転翼が受ける風の風速又は上記風車主軸の回転数が強風対策稼動風速又は強風対策稼動回転数以上になったとき、上記偏心量を上記最適偏心量から上記回転翼が過大なエネルギーを受けない目標偏心量に変更する強風対策手段を具える
ことを特徴とする請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項5】
上記回転翼が受ける風の風速又は上記風車主軸の回転数が強風対策稼動風速又は強風対策稼動回転数以上になったとき、上記偏心角を上記最適偏心角から上記回転量が過大なエネルギーを受けない目標偏心角に変更する強風対策手段を具える
ことを特徴とする請求項3に記載の風力発電装置。
【請求項6】
回転翼と、
立設した風車主軸から放射状に突出して先端に上記回転翼を保持し、上記風車主軸と一体に回転することにより上記回転翼を上記風車主軸の周りに回転させる第1リンクと、
上記風車主軸に回動自在に装着されたリンク保持部材上の上記風車主軸とは偏心した偏心点中心から実質上放射状に突出するように、上記リンク保持部材に装着されると共に先端を上記回転翼に連結され、上記リンク保持部材が上記風車主軸を中心として当該風車主軸と一体に回転したとき上記偏心点中心と上記回転翼との実質上の距離を保ちながら上記風車主軸を中心として旋回することにより、上記回転翼が1回転する間において上記回転翼の風に対する姿勢を変更させる第2リンクと
を有し、
上記リンク保持部材は、上記回転翼が受ける風の風速又は上記風車主軸の回転数が小さいとき上記回転翼から大きいエネルギーを受けるように上記風車主軸と上記偏心点中心との間の偏心量及び上記風車主軸を中心とする風向と上記偏心点中心とのなす偏心角を制御する制御手段を有することにより、上記風車主軸の回転を始動させる風速を低い値にした
ことを特徴とする風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−215994(P2009−215994A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61256(P2008−61256)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(505384449)株式会社別川製作所 (2)
【出願人】(803000045)株式会社キャンパスクリエイト (41)
【Fターム(参考)】