説明

飛行時間型の有能な高分解能PET用検出器

【課題】ポジトロン放出型断層撮影イメージング及び同様な手法のために使用することができる位置検知性アバランシェ・フォトダイオードのアレイとを持つ検出器を提供する。
【解決手段】アレイ30の各フォトダイオード32の隅部からの出力信号接点を読出しのために共通にグループ化する。各フォトダイオードは単一のウェーハ又はチップ上に設けることができ、フォトダイオード相互は溝によって隔てる。各フォトダイオードの隅部は、隣接のシンチレータ28内のガンマ線入射事象から生じる信号を読み出すための接点を含む。シンチレータ結晶内のガンマ線入射事象の位置突止めを可能にしながら、接点を共通の出力チャンネルにグループ化して、出力チャンネルの数を減らす。フォトダイオード・アレイ30はシンチレータの1つの面に隣接して配置し、光電子増倍管24を別の面に隣接して配置する。光電子増倍管24からはタイミング情報を得ている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、フォトン検出器アレイ及びこのようなアレイからの信号の取得についての分野に関するものである。より具体的には、本発明はPETイメージング用のような位置検知性(position-sensitive)アバランシェ・フォトダイオード・アレイから信号を抽出するための新規な構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオード・アレイについては、特にイメージング機器において、広範な用途が存在する。様々なこのようなフォトダイオードが知られていて、現在使用されている。典型的には位置検知性アバランシェ・フォトダイオード(PSAPD)と称される特定の一形式のフォトダイオードでは、フォトンを検出して、該フォトンがアレイに衝突する位置を突き止めることができる。PSAPDは、ポジトロン放出型断層撮影(PET)イメージングのような医学的及び他のイメージング用途に現在使用されている。このような用途でのそれらの使用は、それらがアレイに衝突するフォトンの位置を検知する能力を持っているので特に関心が持たれている。
【0003】
PETイメージング・システムでは、シンチレータとの(核崩壊事象によって発生される)放射線の衝突に基づいて画像が作成される。被検体内でのポジトロンと対応する電子との相互作用から生じるガンマ線がシンチレータの中へ入って、光センサによって検出することのできるフォトンに変換される。例えば、被検体内の特定の位置から放出された光は、PSAPD、又は光電子増倍管(PMT)のような他の光検出器を使用して、検出することができる。
【0004】
データを同時に検出するためにPSAPD及び高速単一チャンネルPMTを含むデュアルエンド読出し装置を使用するPET検出器が実証されている。このような装置では、高い空間分解能及び相互作用深さ(DOI;depth-of-interaction)に加えて、優れたタイミング分解能が飛行時間(time-of-flight)型PETイメージングのために得ることができる。このような位置、タイミング及びエネルギ情報は被検体内で放出されてシンチレータによって受け取られる各ガンマ線について生成される。
【0005】
しかしながら、実験用PETイメージング・システムで使用されているPSAPDは比較的小さく、例えば14mm×14mm程度である。このようなPSAPDは位置情報を供給するためにシンチレータ・アレイの一方の端部に取り付けられ、また反対側の端部にはタイミング情報を供給するために単一チャンネルPMTが取り付けらている。エネルギ情報はPSAPD及びPMTからの信号を組み合わせることによって決定され、これらの2つの検出器の相対的な信号レベルがDOI情報を提供する。
【0006】
しかしながら、典型的なPETイメージング・システムは多数のこのような検出器アレイを含んでいる。従って、実証の際に用いられたもののような小さいPSAPDでは、実用化のためには多数のフロントエンド電子チャンネルが必要になり、時間のかかる組み立て及び試験が必要となる。その上、実際のイメージング・システムにグループ化されるとき、PSAPDからの出力信号の抽出には、比較的高密度の配線、信号を処理するための高密度の電子回路等々が必要とされる。その結果として動作温度が上昇して、ノイズ・レベルの増加によってPSAPDの性能が劣化していく恐れがある。これらの寸法をより小さくすることによる更なる改良には、温度を室温より充分低い温度に下げる必要があり、これは一般的に実用上避けるべきである。
【特許文献1】米国特許第6781133号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記のような欠点を無くすようにPSAPDアレイからの位置信号抽出技術を改良することが要望されている。特に、検知したデータについての出力チャンネルの数を大幅に増やすことなくシンチレータにおける入射放射線フォトンの位置を識別することのできる寸法のより大きい改良したPSAPDアレイが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような要望に応じて設計されたPSAPDアレイでデータを検出するためのシステム及び方法を提供する。本技術は或る範囲のシステムで用いることができるが、PETイメージング、単一フォトン放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)イメージング、光学的イメージングなどに特に良く適している。本システムは、単一の半導体チップ又はウェーハ上に配列した複数のPSAPDを使用することに基づいている。各々のPSAPDはその隅部において出力信号を発生し、それらの信号を処理することにより、フォトンがアレイに衝突したPSAPD内の象限又は領域を決定することができる。個々のPSAPDは隣接したPSAPDから小さい境界部によって隔てることができる。そこで、PSAPDの隅部における導体からの出力をグループ化することにより、アセンブリの全出力チャンネルの数を少なくする。
【0009】
PSAPDシステムは、PETシステムに使用するためのような検出器を形成するために他の構成要素と関連させることができる。特に、グループ化した出力を持つ複数のPSAPDをシンチレータと、また希望により位置、タイミング及びエネルギを表すデータの検出のためのPMTと関連させることができる。
【0010】
PSAPDシステムからの出力チャンネルの数は、各PSAPDの4つの隅部の各々に別々の出力チャンネルを設けた場合に生じる最大数から大幅に減らすことが可能である。例えば、一構成では、4つのPSAPDより成るアセンブリは僅か6つの出力チャンネルにより良好な分解能を提供することができる。しかしながら、以下に詳しく述べるように出力をグループ化することによって、様々な数の出力チャンネルを設けることができる。
【0011】
本発明はまた、他の形式及び構造のフォトダイオードにも適用することができる。例えば、本書で述べる共通出力チャンネル技術は、電荷分割を使用する位置検知性多陽極型光電子増倍管(PMT)、(アバランシェ利得動作のない)位置検知性フォトダイオード、電荷を共有するシリコン光電子増倍器、等々のような、電荷共有式(charge sharing)位置検知性光センサに適用することができる。
【0012】
本発明の上記の及び他の特徴、側面及び利点は、添付の図面を参照した以下の詳しい説明を読むことによりよりよく理解されよう。図面においては、全図にわったって同様な部品は同じ参照符号で表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここで図面を参照して説明すると、先ず図1には、本発明技術の様々な面に従って動作する模範的なPETシステム10を例示する。PETシステム10は、検出器アセンブリ12と、検出器取得回路14と、画像再構成及び処理回路16とを含んでいる。検出器アセンブリ12は典型的には、図1に示されているように、1つ以上のリングを成すように配列された多数の検出器モジュール(全体を参照数字18で表す)を含む。PETシステム10はまた、オペレータ・ワークステーション20及び画像表示ワークステーション22も含む。例示した実施形態では、検出器取得回路14及び画像再構成及び処理回路16は検出器アセンブリ12及びオペレータ・ワークステーション20の外部にあるものとして示されているが、他の実施形態では、これらの回路の幾つか又は全てを検出器アセンブリ12及び/又はオペレータ・ワークステーション20の一部として設けることができる。上記の構成要素の各々については以下により詳しく説明する。
【0014】
上記の模範的なPETシステム10又は他の形式の核イメージング・システムの対応する構成要素に留意して、本発明技術の更なる説明を容易にするためにこのようなシステムの機能について簡単に説明する。PETイメージングは、主に、組織及び器官内で生じる代謝活動を測定するために使用される。具体的に述べると、PETイメージングは、典型的には、磁気共鳴イメージング(MRI)及びコンピュータ断層撮影法(CT)のようなイメージング・モダリティによって生成される構造的画像とは異なり、生物及び代謝活動についての機能画像を生成する。
【0015】
PETイメージングでは、典型的には放射性トレーサを含有する溶液が患者に注射される。溶液は身体の全体にわたって分布して、用いられるトレーサと器官及び組織の機能とに依存して異なる程度で吸収される。例えば、腫瘍は、同じ種類の健康な組織よりも多量のグルコースを処理する。従って、放射性トレーサを含有するグルコース溶液が腫瘍によって不釣り合いに代謝されることがあり、このため、放射性放出物によって腫瘍を突き止めて視覚化することができる。具体的に述べると、放射性トレーサがポジトロンを放出し、ポジトロンは相補的な電子と相互作用して消滅し、ガンマ線を発生する。各消滅反応において、反対向きに進行する2つのガンマ線が放出される。PETイメージング・システム10では、この一対のガンマ線が検出器アセンブリ12によって検出され、検出器アセンブリ12は、時間的に充分接近して検出された2つのガンマ線が同じ消滅反応によって発生されたことを確認するように構成されている。消滅反応の性質に起因して、このような一対のガンマ線の検出は、これらのガンマ線が検出器に衝突する前に進行する応答線を決定するために使用することができ、消滅事象の位置をその線に限定することができる。このようなガンマ線の対を多数検出して、これらの対が進行する対応する線を計算することによって、身体内の異なる部分における放射性トレーサの濃度を決定することができ、これによって腫瘍を検出することができる。従って、ガンマ線の正確な検出及び位置突止めがPETシステム10の基本的で最も重要な目的である。
【0016】
これらの注釈を考慮して、図1に戻って説明すると、検出器取得回路14は、検出器アセンブリ12の検出器モジュール18から、ガンマ線に応答して発生された信号を読み出すように構成されている。検出器取得回路14によって取得された信号は、画像再構成及び処理回路16に供給される。画像再構成及び処理回路は、導き出されたガンマ線放出位置に基づいた画像を生成する。記載されている構成要素の幾つか又は全てに制御命令を供給するため、及びデータ取得及び画像生成に役立つ様々な動作パラメータを形成するために、システム・オペレータによってオペレータ・ワークステーション20が利用される。作動用のワークステーション20はまた、生成された画像を表示することができる。代替態様では、生成された画像は、画像表示ワークステーション22のような遠隔の観察用ワークステーションで表示することができる。
【0017】
検出器アセンブリ12は多数の検出器モジュール18を含むことができる。例えば、本構成では、このようなモジュールの数個のリングを設けることができ、各リング当りのモジュールの数はイメージング対象の患者又は被検体を取り囲むのに充分な数とする。本発明では、検出器モジュールは従来の構成よりも寸法が大きく、単一のチップ又はウェーハ上に配列された複数のPSAPDを有する。更に、検出器モジュールは、図2に例示されているように、PSAPDをPMTと共に含むことができる。
【0018】
図2に示されているように、模範的な実施形態における検出器モジュール18は、PMT24と、随意選択による導波器26と、シンチレータ28と、PSAPDアレイ30とを含む。当業者には、シンチレータ28がイメージング対象の被検体内の崩壊する放射性材料から放出されるガンマ線を受け取って、これらのガンマ線をフォトンに変換し、それらのフォトンはPMT24及びPSAPDアレイ30によって検知できることが認識されよう。導波器26は単純に、フォトンをPMTへ通すために使用され、本質的にアダプタとして作用する。PMT24がシンチレータ28に直接付設することができる場合、導波器26はアセンブリから省くことができる。オキシオルト珪酸ルテチウム−イットリア(LYSO)シンチレータのような任意の適当なシンチレータ・アレイをモジュールに用いることができる。勿論、他のシンチレータ材料を用いることができる。当業者には分かるように、シンチレータは、ガンマ放射線を光学的フォトンに変換する複数の並列の結晶を有する。結晶の特定の寸法は、典型的には、シンチレータ用に使用される材料の性質と用途における空間分解能の要件とに依存する。更に、以下に述べるように、或る数のシンチレータが典型的にはPSAPDアレイ30の各PSAPD32に関連付けられる。この数は(本書で述べられているように)各PSAPDについて2×2から4×4まで、更には用途における空間分解能及び使用されるシンチレータ材料によって必要とされるときにはそれより大きい数に変えることができる。
【0019】
使用中、シンチレータ・アレイ28に衝突するガンマ線は光学的フォトンに変換され、これらの光学的フォトンはPMT24とアレイ30のPSAPDとの両方に伝達される。個々のシンチレータ結晶内の事象の位置を突き止める出力信号は、以下により詳しく説明するように全出力チャンネルの数を減らすためにグループ化された出力チャンネルによって収集される。当業者に理解されるように、飛行時間型PETシステムでは、以下に説明するように、PSAPDからの出力に基づいてフォトンが検出された場所又は位置が処理回路により決定される。シンチレータの反対側の面上の単一チャンネルPMTはタイミング情報を供給する。エネルギ情報は、PSAPD及びPMTからの信号を組み合わせることによって決定され、また2つの検出器についての相対的な信号レベルがDOI情報を供給する。
【0020】
図3は、4−PSAPDアレイをより詳しく示す図であり、該アレイでは、各PSAPDが4つのシンチレータ結晶の端部又は面に隣接して配置されている。再び、任意の数のグループ化したPSAPDを用いることができ、また各PSAPDに対して様々な数のシンチレータ結晶を付設することができる。ほんの一例として、グループ内に4つのPSAPD、及び各PSAPD当り4つの結晶を設けた場合を例示して説明する。
【0021】
図3に例示されているPSAPDアレイ30は4つのPSAPD(参照数字34、36、38及び40で表されている)を含む。境界部42が単一のチップ又はウェーハ上のPSAPDを分離する。しかしながら、境界部42は極めて薄く、すなわち、アセンブリにおいてグループ化された別々のPSAPDにより生じるような境界部よりも実質的に薄い。シンチレータ結晶44はPSAPDアレイから延在する。現在考えられる実施形態では、境界部は、ウェーハ上のPSAPDを分離する堀又は溝である。しかしながら、以下に概要を説明する接続及び処理方式により互いに隣接した別々のチップ上に形成されたPSAPDを並置することによって適切な結果を得ることが可能なことがある。
【0022】
PSAPDは、以上に示したように複数のシンチレータ結晶の面に対応する面積にわたって延在する。図3に示されている実施形態では、各々のPSAPDが4つのシンチレータ結晶44の面を覆うので、各々のPSAPDは4つの隣接した領域46を含むものとして見なすことができる。当業者に理解されるように、各領域は動作中にガンマ線入射事象の位置を突き止めるために参照することができる。このような事象の位置突止めを容易にするために、4つの接点48が各PSAPDの隅部に設けられる。図には示されていないが、薄い抵抗層を各PSAPDの上に全体的に設けて、隅部の接点の各々の間での電荷の分割を可能にすることが当業者には理解されよう。図3にはPSAPDの隣接した隅部の接点が直接並置されるものとして示されているが、実際にはこれらの間には境界部42が延在して、各PSAPDの接点を電気的に隔離する。
【0023】
当業者に理解されるように、各PSAPDの接点は、ガンマ線がシンチレータ結晶44に入射した(その結果、フォトンがPSAPDアレイに入射した)位置についての決定を行うことを可能にする。具体的に述べると、アンガー論理(Anger logic) を使用することによって、ガンマ線を受け取ったシンチレータ結晶に対応する各PSAPD上の領域46を決定することができる。PSAPD上の(PSAPDの隅部にある)4つの接点の各々を時計回りの順にそれぞれA、B、C、Dで表すと、ガンマ線入射事象のおおよそのX及びY座標は次の関係式によって決定することができる。
【0024】
X=[(A+B)−(C+D)]/[A+B+C+D] (式1)
Y=[(A+D)−(B+C)]/[A+B+C+D] (式2)。
【0025】
従って、ガンマ線瞬時事象が生じた特定の象限又は領域を識別することができる。また当業者によって理解されるように、異なる数の領域、特に例示した4つの領域よりも多い領域を用いて入射事象及びフォトンの位置を突き止めるために同様な論理を用いることができる。
【0026】
ガンマ線入射事象の位置の識別のための上記の論理では、一般に、出力信号が各PSAPDの4つの隅部全部から取得されることが必要とされる。しかしながら、本発明によれば、アレイ内の異なるPSAPDの接点に対する共通な接続部を使用することによって、特定の出力接点が結合される。図4は、4−PSAPDアレイにおける別々の出力チャンネルの数が16から8へ減らされることを表す。図4に見られるように、各々のPSAPD34、36、38及び40の接点48は読出しのためにグループ化される。図示の実施形態では、第1の共通出力チャンネル50がPSAPD34及び36の隅部に結合され、また同様な共通出力チャンネル52がPSAPD38及び40の接点に結合される。同様にして、共通出力チャンネル54がPSAPD34及び40の接点に、また共通出力チャンネル56がPSAPD36及び38の接点に結合される。更に、PSAPD36及び38のの隅部の間、並びにPSAPD34及び40の隅部の間に、それぞれ参照数字58及び60で表した同様な共通接続部が設けられる。最後に、PSAPD34及び36の接点が出力チャンネル62に共通であり、またPSAPD38及び40の接点が出力チャンネル64に共通である。
【0027】
動作について説明すると、図4の構成では、様々なチャンネルからの出力、すなわち、16チャンネルよりも少ないチャンネルを持つPSAPDからの出力の読取りが可能であり、且つガンマ線入射事象についての各PSAPDの領域内の位置の区別が可能である。図5は、PSAPDに関連したシンチレータ結晶の8×8アレイの位置に対するPSAPDからの出力での検出位置の模範的な写像66を示す。図5に示されているように、複数の領域64、68、70及び72は図4の異なるそれぞれのPSAPDに対応する。図5に示されている楕円は、一シンチレータ結晶内のガンマ線入射事象のモデル位置に対応する。当業者に理解されるように、写像の「ピン・クッション」状の外観は一般的に、衝突の点から隅部の接点の各々までの距離に依存した、PSAPDの高抵抗率層の抵抗値による電荷共有の変化から生じる。参照数字74で表されるような楕円の相対的な違いは、ガンマ線入射事象の位置を識別して動作中に充分な位置感度を与えることができることを示す。
【0028】
図6は、図4に示されているものと同様であるが、4−PSAPDアレイに対して7つの出力チャンネルを持つ共通出力接続構成を表す略図である。図4の構成とは対照的に、図6の構成は4つの全てのPSAPDの中央の接点を出力チャンネル76にグループ化する。図7は図5のものと同様なシミュレーションによる写像であり、図6のチャンネルからの出力の分析によるガンマ線入射事象の良好な空間分解能を示す。
【0029】
出力チャンネルの数は図8に図式的に示すように更に減らすことができる。図8の実施形態では、アレイのPSAPDの4つの中央の接点が再び共通の出力チャンネル76にグループ化されるが、しかしPSAPDの4つの全ての外側の隅部もまた共通の出力チャンネル78にグループ化される。従って、図8の構成では6つの出力チャンネルのみを参照することによって入射事象の位置突き止めを行うことができる。図9に例示されたシミュレーションは、出力チャンネルの総数が減じられるにつれて入射事象の位置を突き止める際の不確実さの程度が比較的小さく増大するが、アレイの各PSAPDの領域においてこのような事象を依然として区別することができることを示している。
【0030】
前に述べたように、アレイには任意の数のPSAPDを含ませることができ、また各PSAPDはそれに隣接して配置されるシンチレータ結晶の数に対応する任意の数の部分領域に細分することができる。図8を参照して引き続き説明すると、位置80にガンマ線(及び対応するフォトン)が衝突したとき、様々なチャンネルの出力に基づいてガンマ線入射事象が生じたシンチレータ結晶の位置を突き止めるための模範的な論理は、以下のように進行することができる。最初に、チャンネル54及び56からの出力を比較する。チャンネル54からの出力がチャンネル56からの出力よりも大きいので、事象はアレイの左側に位置していることになる。同様に、チャンネル50及び52からの出力を比較することができ、出力チャンネル50からの信号の方が大きいことにより、事象の位置がアレイの上半分内に定められる。その後。チャンネル50、54、76及び78からの信号を前述のアンガー論理と共に使用して、PSAPD34の右上の象限内の位置80を突き止めることができる。
【0031】
また信号処理により、ガンマ線入射事象の位置突止めを改善するために出力信号内のノイズの相関を可能にすることができることに注意されたい。例えば、図8の位置80で事象が生じた場合、チャンネル56からの出力はPSAPD34内の事象の位置についての上述のアンガー論理には直接関係しないことを注記することができる。しかしながら、チャンネル56からのノイズは、アンガー論理による位置決定に関係するチャンネルからの信号、例えばチャンネル50からの信号を部分的に是正するために使用することが可能である。実際には、各出力チャンネルからのノイズは典型的には同じではなく、このためこのような是正は部分的にしかできないことがある。
【0032】
また、前に述べたように、本発明による共通接続及び読出し技術はPSAPD以外の装置にも使用することができることに注意されたい。例えば、同じ接続方式は、電荷分割を使用する位置検知性多陽極型光電子増倍管(PMT)、(アバランシェ利得動作のない)位置検知性フォトダイオード、電荷を共有するシリコン光電子増倍器のアレイ、等々のような、電荷共有式位置検知性光センサに使用することができる。
【0033】
一例として、或る特定の位置検知性光電子増倍管では、出力が抵抗回路網に結合されている。このような抵抗回路網からの出力チャンネルの総数は、本発明を適用することによって減らすことができる。すなわち、これらの出力は一部の出力と共通に接続することができ、またセンサ・アレイ内の様々な位置からの信号を区別するために前述の論理を使用することができる。
【0034】
本書では本発明の或る特定の特徴を例示し説明したが、当業者には種々の修正および変更をなし得よう。従って、特許請求の範囲は本発明の真の精神内にあるこの様な全ての修正及び変更を含むものであることを理解されたい。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明技術の様々な面に従ってPSAPDアレイを用いる模範的なPETイメージング・システムの概略図である。
【図2】図1に示されている形式のシステムに使用するための模範的な検出器モジュールの斜視図である。
【図3】図2に示されている形式のモジュールに使用するためのPSAPDアレイの詳細図である。
【図4】図3に示されている形式のPSAPDアレイから信号を抽出するための第1の模範的な構成の概略図であり、この場合、出力チャンネルの数が8つに低減されている。
【図5】図4の構成から出力された信号に基づいて、8×8シンチレータ結晶アレイを用いたフォトンの衝突事象の位置のシミュレーションによる写像を表す線描画である。
【図6】図4と同様であるが、7つの出力チャンネルを持つPSAPDアレイから信号を抽出するための模範的な構成の概略図である。
【図7】図5と同様であるが、図6の構成に基づいたシミュレーションによる写像の線描画である。
【図8】6つの出力チャンネルを使用する模範的なPSAPDアレイから信号を抽出するための別の代替構成の概略図である。
【図9】図5及び図7と同様であるが、図8の構成を使用したシミュレーションによる写像の線描画である。
【符号の説明】
【0036】
10 PET(ポジトロン放出型断層撮影)システム
12 検出器アセンブリ
18 検出器モジュール
24 PMT(光電子増倍管)
26 導波器
28 シンチレータ
30 PSAPD(位置検知性アバランシェ・フォトダイオード)アレイ
32、34、36、38、40 PSAPD
42 境界部
44 シンチレータ結晶
46 4つの隣接した領域
48 接点
50、52、54、56 共通出力チャンネル
58、60 共通接続部
62、64 出力チャンネル
64、68、70、72 複数の領域
66 写像
74 楕円
76 出力チャンネル
78 共通の出力チャンネル
80 ガンマ線の衝突位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がその隅部に出力接点(48)を含んでいる複数の位置検知性アバランシェ・フォトダイオード(32)を含むフォトダイオード・アレイ(30)と、
前記フォトダイオードの出力接点に電気的に結合された複数の出力接続部(58、60、62、64)であって、当該出力接続部の内の少なくとも1つが少なくとも2つ異なるフォトダイオードの出力接点に共通である複数の出力接続部と、
を有している光検出器。
【請求項2】
前記光検出器は単一のウェーハ上に複数のフォトダイオード(32)を含んでおり、これらのフォトダイオードの各々が溝によって隔てられている、請求項1記載の光検出器。
【請求項3】
前記の共通の接続部(58、60、62、64)が3つ以上の異なるフォトダイオード(32)の出力接点に共通である、請求項1記載の光検出器。
【請求項4】
前記の共通の接続部(58、60、62、64)が4つの異なるフォトダイオード(32)の出力接点(48)に共通である、請求項1記載の光検出器。
【請求項5】
複数の出力接続部(58、60、62、64)が少なくとも2つ異なるフォトダイオード(32)のそれぞれの出力接点に共通である、請求項1記載の光検出器。
【請求項6】
前記フォトダイオード・アレイ(30)はシンチレータ(28)の1つの面に隣接して配置されている、請求項1記載の光検出器。
【請求項7】
更に、前記シンチレータ(28)の反対側の面に隣接して配置された光電子増倍管(24)を含んでいる請求項6記載の光検出器。
【請求項8】
更に、前記シンチレータ(28)と前記光電子増倍管(24)との間に配置された導波器(26)を含んでいる請求項7記載の光検出器。
【請求項9】
各々がその隅部に出力接点(48)を含んでいる複数の位置検知性アバランシェ・フォトダイオード(32)と、前記フォトダイオードの出力接点に電気的に結合された複数の出力接続部(58、60、62、64)とを含むフォトダイオード・アレイ(30)であって、前記出力接続部の内の少なくとも1つが少なくとも2つ異なるフォトダイオードの出力接点に共通であるようなフォトダイオード・アレイ(30)からの出力信号を検出する段階と、
前記出力信号を分析して、前記アレイ(30)内の、放射線入射事象が生じた場所に近いフォトダイオード(32)を決定する段階と、
を有している、光検出器読出し方法。
【請求項10】
放射線入射事象が生じた場所に近いフォトダイオードを決定するために、複数の共通出力接続部(58、60、62、64)からの出力信号が比較される、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−147598(P2007−147598A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287383(P2006−287383)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】