説明

食品の冷温蔵装置

【課題】カートがステーションから出ている場合にカート内に異物が侵入することを簡単にかつ確実に防止する。
【解決手段】ステーション70の天井部には、冷却器91Hとヒータ101とを装備した第1熱交換室75Hと、冷却器91Cを装備した第2熱交換室75Cとが水平方向に並んで区画形成され、カート10がステーション70内に収納された場合に、第1熱交換室75Hと温蔵室20Hの間と、第2熱交換室75Cと冷蔵室20Cの間とに、個別の空気循環路117H,117Cが形成され、各空気循環路117H,117Cに循環ファン105が設けられる。温蔵室20Hと冷蔵室20Cの天井壁17に設けられた吸込路32と吹出路37とを開閉するシャッタ機構50がカート10に対して一体的に装備されており、同シャッタ機構50は常には閉じ、カート10がステーション70内に収納されると開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍保存してあった食品を再加熱又は低温保存したのち取り出すことができる冷温蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院等の給食において、一枚のトレイに温食と冷食とを盛った場合に、温食は温かい状態で冷食は冷たい状態で供するようにしたサービスが普及しつつある。そのうち特に、朝食提供時において提供者側の時間的負担を軽減するために、例えば前日に調理等の準備をした温食と冷食とを一枚のトレイに載せた状態でチルド保存しておき、朝食提供時の所定時間前になったらトレイごと移し替えて、温食は再加熱し、冷食は低温(10℃程度)解凍して引き続き低温保存したのち、配膳に供するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このものは具体的には、トレイを収納するキャスタ付きのカートと、冷却手段と加熱手段とを装備して上記のカートを出し入れ可能に収納する固定のステーションとから構成される。
【0003】
カートは、断熱箱からなる扉付きの本体内が、断熱性の仕切壁を挟んで温蔵室と冷蔵室とに左右に分けられ、トレイは、仕切壁を貫通して複数段に亘って収納され、各トレイの温食載置部が温蔵室側に、冷食載置部が冷蔵室側にそれぞれ配される。
ステーションは、上記したカートを出し入れするべく一面が開口された略箱形をなし、その奥壁側において、2つの熱交換室が例えば上下に区画形成されて設けられている。第1熱交換室には冷却器からなる冷却手段とヒータからなる加熱手段とが装備され、第2熱交換室には冷却手段のみが装備されている。両熱交換室にはファンが装備されている。
また、両熱交換室並びに温蔵室、冷蔵室とには所定箇所に通口が形成され、カートが上記したステーション内に収納されると、対応する通口同士が接続されつつ、第1熱交換室と温蔵室の間、並びに第2熱交換室と冷蔵室の間に、それぞれ空気の循環路が形成されるようになっている。
【0004】
使用例としては、前日の夕方等に、調理等の準備をした温食と冷食とをトレイに盛って、冷凍庫内においてチルド保存する。翌朝になったら、冷凍庫からトレイを取り出して、各トレイをカートの温蔵室と冷蔵室とに亘って複数段に収納し、同カートをステーションに入れる。初めは、両熱交換室とも冷却手段が作動され、温蔵室と冷蔵室とには共に冷気が循環供給されることで、トレイに載せられた温食と冷食が共に低温解凍される。所定時間が経過すると、タイマの作動により、第1熱交換室において冷却手段から加熱手段の作動に切り替わる。一方、第2熱交換室では、引き続き冷却手段が作動状態とされる。これにより、温蔵室内には暖気が循環されることで解凍された温食が再加熱され、一方、冷蔵室側では庫内設定温度が少し下げられて、冷食は引き続いて冷蔵保存される。配膳時刻となったら、カートがステーションから引き出され、トレイが取り出されて配膳に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−539412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで従来のものでは、カートがステーションから出されているときには、空気の循環路を構成するべく温蔵室と冷蔵室に設けられた通孔が露出した状態となり、同通孔から埃や虫等の異物が侵入するおそれがあって衛生面等で芳しくない。そのため、カートがステーションの外に出されたときには、シート等のカバーを被せて通孔を塞ぐようにしていたが、その作業が結構煩わしく、その改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、カートがステーションから出ている場合にカート内に異物が侵入することを簡単にかつ確実に防止するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、側面が開口された断熱箱からなるカート本体と、同カート本体内を温蔵室と冷蔵室とに仕切る断熱性の仕切壁と、前記カート本体の前記開口部を開閉する扉とを備え、トレイが前記仕切壁を貫通して前記温蔵室と前記冷蔵室とに亘る形態で複数段に収納されるキャスタ付きのカートと、冷却手段と加熱手段とを設けて前記カートを出し入れ可能に収納するステーションとからなる冷温蔵装置であって、前記ステーションの天井部には、冷却手段と加熱手段とを装備した第1熱交換室と、冷却手段を装備した第2熱交換室とが水平方向に並んで区画形成され、前記各熱交換室の底面にはそれぞれ導入口と導出口とが設けられる一方、前記温蔵室と前記冷蔵室の天井壁にはそれぞれ吸込路と吹出路とが設けられ、前記カートが前記ステーション内に収納された場合に、前記第1熱交換室と前記温蔵室の間と、前記第2熱交換室と前記冷蔵室の間において、対応する前記導入口と前記吸込路同士並びに前記導出口と前記吹出路同士がそれぞれ連通することによって、個別の空気循環路が形成され、前記各空気循環路にはそれぞれファンが設けられるとともに、前記冷却手段と前記加熱手段との作動を制御する制御手段が具備され、かつ、前記温蔵室と前記冷蔵室の天井壁に設けられた前記吸込路と前記吹出路とを開閉するシャッタ機構が前記カートに対して一体的に装備されているところに特徴を有する。
【0008】
使用例としては、チルド保存されていた温食と冷食とを分けて盛ったトレイを、カート内の温蔵室と冷蔵室とに亘って複数段に収納する。カートをステーションに入れるまでは、温蔵室と冷蔵室の天井壁に設けられた吸込路と吹出路がシャッタ機構により閉じられている。そののち、吸込路と吹出路とが開放された状態でカートがステーション内に収納されると、両熱交換室に対して個別の空気循環路が構成される。初めは、両熱交換室とも冷却手段が作動され、ファンの駆動に伴い温蔵室と冷蔵室とには共に冷気が循環供給されることで、トレイに載せられた温食と冷食が共に低温解凍される。所定時間が経過すると、第1熱交換室では冷却手段から加熱手段の作動に切り替わり、第2熱交換室では、引き続き冷却手段が作動状態とされ、温蔵室内には暖気が循環されることで、解凍された温食が再加熱される一方、冷食は引き続いて冷蔵される。そののち、カートをステーションから出してトレイを取り出すと、温食は暖められ冷食は冷やされた状態で配膳に供することができる。カートが取り出された時点で、温蔵室と冷蔵室の吸込路と吹出路とは閉じられる。
カートがステーションから出されているときには、シャッタ機構によって温蔵室と冷蔵室の吸込路と吹出路とが閉じられるから、埃や虫等の異物が侵入することが防止され、衛生面等で良好となる。しかもシャッタ機構は、カートに対して一体的に装備されているから、開閉操作も簡単に行うことができる。
【0009】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記シャッタ機構は、前記温蔵室と前記冷蔵室の前記吸込路と前記吹出路とにそれぞれ連通した第1吸込口と第1吹出口とを設けた固定板に対して、前記第1吸込口と前記第1吹出口とにそれぞれ整合する第2吸込口と第2吹出口とを設けた可動板が摺動可能に重ねて設けられ、前記可動板が、両吸込口同士と両吹出口同士が整合する開放位置と、両吸込口同士と両吹出口同士が外れて当該可動板で前記固定板の前記第1吸込口と前記第1吹出口とを塞ぐ閉鎖位置との間で往復移動可能となっている。
【0010】
(2)前記温蔵室と前記冷蔵室の天井壁に設けられる前記吸込路と前記吹出路とは、前記吸込路が、前記温蔵室と前記冷蔵室における前記仕切壁側に寄った位置でかつ奥行方向のほぼ中央位置に形成される一方、前記吹出路が、前記温蔵室と前記冷蔵室における前記仕切壁とは反対側の側縁に沿うようにして奥行のほぼ一杯に形成されており、かつ、前記ファンが、前記各熱交換室の前記導入口に設けられている。
ファンが駆動されると、温蔵室並びに冷蔵室の庫内空気が仕切壁に寄った側に流れつつ吸込路から対応する熱交換室に吸い込まれ、熱交換後の空気は、吹出路を通って温蔵室並びに冷蔵室における仕切壁とは反対の端部側の奥行ほぼ一杯の領域から打ち込まれる。断面積がある程度限定された吸込路のほぼ真上の位置にファンが配されることとなるから、庫内空気を効率良く吸い込みすなわち効率良く循環させることができ、また熱交換後の空気は、隣りの部屋の温度の影響を受けることなく、温蔵室並びに冷蔵室の奥行一杯にわたって打ち込まれるから、トータルして、温蔵室では効率良く冷却と加熱とが行え、冷蔵室では効率良く冷却することができる。
【0011】
(3)前記固定板と前記可動板に設けられた前記第1吸込口と前記第2吸込口とは、それぞれ前記可動板の移動方向において複数に分割されている。
第1と第2の吸込口が単一である場合と比べると、可動板の閉鎖位置と開放位置との間の移動ストロークを小さく留めた上で、第1と第2の吸込口同士が整合した場合における開口面積を大きく取ることができる。
【0012】
(4)前記カート本体の天井壁は、内装板上に前記吸込路と前記吹出路を構成するべくダクトが立てられて、その回りに断熱材が充填されているとともに、同断熱材の上方に所定間隔を開けて前記シャッタ機構を構成する前記固定板が張設され、かつ前記可動板は前記固定板の下面に重なった状態で前記ダクト上で摺動可能に支持されている。吸込路と吹出路とを構成するダクトを利用して可動板を摺動可能に支持する構造としたから、部品点数の少ない簡単な構造でもってシャッタ機構を形成することができる。
【0013】
(5)前記シャッタ機構を構成する前記可動板は、常にはばね弾力により閉鎖位置に移動付勢されている一方、前記ステーションには、前記カートが前記ステーション内に収納されることに伴い前記可動板に設けられた被係合部と係合して前記可動板を前記ばね弾力に抗して開放位置まで移動させる係合部が設けられている。シャッタ機構の開閉が自動的に行われるから、さらに使い勝手に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カートがステーションから出されているときにはシャッタ機構によって温蔵室と冷蔵室の吸込路と吹出路とが閉じられるから、埃や虫等の異物が侵入することが防止され、しかもシャッタ機構はカートに対して一体的に装備されているから開閉操作も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷温蔵装置のカートが外に出ている状態の側面図
【図2】カートがステーション内に収納された状態の側断面図
【図3】その正断面図
【図4】カートの天井壁の分解斜視図
【図5】内装板とダクトとの分解平面図
【図6】吸込ダクトの分解斜視図
【図7】吹出ダクトの分解斜視図
【図8】内装板と蓋板の平面図
【図9】蓋板が被着された内装板と可動板の平面図
【図10】可動板の組み付け途中を示す平面図
【図11】固定板を組み付ける前のシャッタ機構の平面図
【図12】可動板が開放位置に移動した状態の固定板を除去した平面図
【図13】シャッタ機構が開状態にある場合の平面図
【図14】図12のXIV−XIV線断面図
【図15】熱交換室における下部室内の構造を示す平面図
【図16】同上部室内の構造を示す平面図
【図17】図16のXVII−XVII線断面図
【図18】冷凍回路図
【図19】循環ファンの配設構造を示す概略平面図
【図20】その側面図
【図21】シャッタ機構が閉状態にある場合の平面図
【図22】その開状態にある場合の平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図22によって説明する。この実施形態では、病院等で給食を配膳する場合に用いて好適な冷温蔵装置を例示しており、図1ないし図3に示すように、トレイTを収納するカート10と、トレイTに載せられた給食を冷却、加熱する手段を備えて上記のカート10を出し入れ可能に収納するステーション70とから構成されている。
【0017】
カート10は、左右両面が開放された断熱箱からなるカート本体11を備えており、左右の開口部12にはそれぞれ観音開き式の断熱扉13が装着されているとともに、底面にはキャスタ14が装備され、カート本体11における前面(図1の右面)に設けられた把手15を持って引き又は押すことによって移動可能とされている。
カート本体11内における長さ方向の中央部には、図2に示すように、単位仕切壁16Aを複数個積み上げて形成された断熱性の仕切壁16が設けられ、同仕切壁16の前側に温蔵室20Hが、後側に冷蔵室20Cがそれぞれ形成されている。両室20H,20Cにおける仕切壁16とは反対側の面には、熱交換後の空気の流通路21を形成するパネル22が張られており、各パネル22には、通気口22Aが複数段に亘って形成されているとともに、両パネル22の内面にトレイ受け23が設けられている。
【0018】
トレイTは、合成樹脂等で横長の矩形状に形成され、横幅の中央部よりも少し一方に寄った位置に境界部Taが設けられ、境界部Taを挟んだ広い方が温食載置部Th、狭い方が冷食載置部Tcとなっている。
トレイTは、境界部Taが仕切壁16を貫通し、かつ両端部がトレイ受け23で受けられつつ左右両面から挿入され、左右両側において、温食載置部Thが温蔵室20H側に、冷食載置部Tcが冷蔵室20C側にそれぞれ配された状態で、複数段に亘って収納されるようになっている。
【0019】
カート本体11内に区画形成された温蔵室20Hと冷蔵室20Cとには、詳しくは後記するように、ステーション70側で生成された冷気または暖気が個別に循環供給されるようになっており、そのためカート本体11の天井壁17には、温蔵室20Hと冷蔵室20Cに対する吸込路32と吹出路37とがそれぞれ形成されている。
続いて、天井壁17の構造を詳細に説明する。この天井壁17は大まかには、図4及び図14に示すように、天井面となる内装板25の上面に間隔を開けて蓋板26が張られ、両板25,26の間に断熱材27が充填されて断熱壁28が形成され、同断熱壁28に吸込路32と吹出路37が形成されており、その上面に、吸込路32と吹出路37とを開閉するシャッタ機構50が装備されている。
【0020】
さらに詳細に説明する。内装板25には、図5に示すように、左右方向の中間位置で、かつ前後方向の中心線を挟んだ両側に、前後方向に細長い長方形をなす一対の吸込用窓孔30が形成されている。同吸込用窓孔30は、温蔵室20Hと冷蔵室20Cの各幅の半分弱の長さを有している。一方、内装板25の前後両縁部すなわち温蔵室20Hと冷蔵室20Cの側壁に設けられた流通路21の上面と対応する位置には、流通路21のほぼ全長に亘る左右方向に細長い帯状なす一対の吹出用窓孔31が形成されている。
【0021】
各吸込用窓孔30の口縁には吸込ダクト33が立てられている。この吸込ダクト33は、図6に示すように、左右及び前後の計4枚のダクト板34,35から構成され、吸込用窓孔30における長寸側の左右の口縁には、外開きの傾斜状となった左右ダクト板34が立てられるとともに、短寸側の前後の口縁に沿うようにして、両左右ダクト板34の上端の間隔に匹敵する長さを持った前後ダクト板35が立てられることで形成され、その内部が吸込路32となっている。
特に傾斜した左右ダクト板34が立てられていることで、同吸込路32は、左右の側面が上方に向かうに従って次第に外側に広がった上開きの形状となっている。また、吸込ダクト33を構成する左右及び前後の各ダクト板34,35の上縁は同一高さに達し、かつそれぞれ外側に直角曲げされたフランジ34A,35Aが形成されており、これらのフランジ34A,35Aが、後記するシャッタ機構50を構成する可動板60を摺動可能に受ける支持面となっている。
【0022】
各吹出用窓孔31の口縁には吹出ダクト38が立てられている。吹出ダクト38は、図7に示すように、左右及び前後の計4枚のダクト板39,40から構成されている。吹出用窓孔31における短寸側の左右の口縁には、短寸の左右ダクト板39が立てられている。左右ダクト板39の上縁は、上記した吸込ダクト33の上縁と同じ高さ位置に達し、同様に外側に直角曲げされたフランジ39Aが形成されている。
一方、長寸側の前後の口縁には前後ダクト板40が立てられており、この前後ダクト板40は、チャンネル材を仰向けたような形状であって、内側の側面板41が左右ダクト板39と同じ高さを持ち、外側の側面板42が内側の側面板41よりも所定寸法背が低くなっており、両側面板41,42の上縁には、それぞれ外側に直角曲げされたフランジ41A,42Aが形成されている。
【0023】
吹出ダクト38が立てられることにより、その内部に、全高に亘って吹出用窓孔31と同じ断面形状を持った吹出路37が形成されている。また、吹出ダクト38を構成する左右ダクト板39の上縁のフランジ39Aと、前後ダクト板40の各内側の側面板41の上縁のフランジ41Aとが、同様にシャッタ機構50を構成する可動板60を摺動可能に受ける支持面とされている。
なお、前後ダクト板40における各外側の側面板42の上縁のフランジ42Aが、次述する蓋板26を張る場合にこれを受ける受け面となっている。また、各外側の側面板42には、同側面板42が立てられた内装板25と、同側面板42で受けられた蓋板26との間の熱伝導を抑えるために複数の長孔43が列設されている。
【0024】
上記のように、吸込ダクト33と吹出ダクト38とが立てられた内装板25の上面側には、蓋板26が所定間隔を開けて張られるようになっている。
蓋板26には、図8に示すように、その中央部に、両吸込ダクト33を揃って挿通可能な逃がし窓孔45が開口されるとともに、前後両側縁部に、前後の吹出ダクト38を個別に挿通可能とした逃がし窓孔46が開口されている。
蓋板26は、吸込ダクト33と吹出ダクト38とを対応する逃がし窓孔45,46に通して逃がしつつ内装板25の上方に被せられ、前後の逃がし窓孔46の長寸側の側縁が、吹出ダクト38を構成する前後ダクト板40における各外側の側面板42のフランジ42A(受け面)で受けられ、また、周縁部が、内装板25の周縁部に立てられた周壁25Aで受けられることにより、図14に参照して示すように、内装板25の上面側に所定間隔を開けて張られている。吸込ダクト33と吹出ダクト38の上縁は、蓋板26の上方に所定寸法突出する。
この状態から、内装板25と蓋板26の間で、かつ吸込ダクト33と吹出ダクト38の回りの空間に、断熱材27が設けられる。これにより断熱壁28が形成され、併せて同断熱壁28内に吸込路32と吹出路37とが形成される。
【0025】
次に、シャッタ機構50を説明する。シャッタ機構50は、図4に示すように、上記した蓋板26の上面の全面を覆って張設される固定板51と、この固定板51の下面側において前後方向の摺動可能に装着された可動板60とから構成されている。
固定板51は合成樹脂製であって、図11にも示すように、全体として蓋板26に倣った平面正方形の浅皿を伏せたような形状であり、その下面における厚肉の周縁部が、蓋板26の周縁部に載せられて固定されるようになっている。固定板51の前後両縁部には、上記した吹出ダクト38の上面開口の直上に対応する位置に第1吹出口55が形成されている。
【0026】
一方、固定板51における中央部には、上記した各吸込ダクト33の上面開口の上方に対応する位置に、第1吸込口52が形成されている。第1吸込口52は詳細には、前側吸込口53Aと後側吸込口53Bに2分割されている。各吸込口53A,53Bは、吸込ダクト33の上面開口の左右方向の長さよりも少し大きい長さ寸法と、第1吹出口55とほぼ同じ幅寸法を持った短寸の帯状に形成されている。両吸込口53A,53Bは、第1吹出口55と同じく左右方向に延びた姿勢で、かつ各吸込口53A,53Bの幅よりも少し大きい間隔を開けて形成されている。言い換えると、第1吸込口52を構成する前後の吸込口53A,53Bは、図13に示すように、対応する吸込ダクト33の上面開口の前端寄りと後端寄りの位置をそれぞれ左右方向に横切り、かつ前後の吸込口53A,53Bの間に、各吸込口53A,53Bの幅よりも少し大きい間隔が開けられた形態となる。
【0027】
前側の第1吸込口52における後側の吸込口53Bと、後側の第1吸込口52における前側の吸込口53Aとの間には、上記と同じ間隔が開けられているとともに、前側の第1吸込口52における前側の吸込口53Aと、前側の第1吹出口55との間、並びに後側の第1吸込口52における後側の吸込口53Bと、後側の第1吹出口55との間には、それぞれ上記の間隔よりもさらに大きい間隔が開けられている。
前後の第1吸込口52の形成領域と、前後の第1吹出口55の形成領域とはそれぞれ、一段下がった凹部56となっている。
【0028】
可動板60は、図9に示すように、上記した固定板51よりも左右方向の寸法が短く、かつ後縁側が所定寸法切除された平面略長方形をなし、さらに左右両側縁の後端寄りの位置には張出部61が形成されている。
可動板60には、上記した固定板51に設けられた第1吸込口52と第1吹出口55とに整合した大きさを持った第2吸込口62(前後の吸込口63A,63Bからなる)と第2吹出口65とが、第1吸込口52と第1吹出口55と対応した配置で形成されている。
【0029】
上記した蓋板26の上面には、左右の側縁部に沿うようにして帯状をなす一対の受け板47が設けられている。両受け板47は、吸込ダクト33の上縁のフランジ34A,35Aと、吹出ダクト38の上縁のフランジ39A,41Aと同じ高さにあって、可動板60の左右の側縁を摺動可能に受けるように機能する。また、両受け板47の手前側の半分強の領域には、可動板60の手前側の側縁を嵌めるガイド溝47Aが形成されている。
従って可動板60は、図10に示すように、吸込ダクト33のフランジ34A,35A、吹出ダクト38のフランジ39A,41A並びに受け板47に載せられ、また左右両側縁をガイド溝47Aに嵌めて前後方向の摺動可能に支持されている。
また上記したように、固定板51における第1吸込口52と第1吹出口55の形成領域は凹部56となっており、第1吸込口52と第1吹出口55の形成領域は、可動板60の上面と重なるようになっている。
【0030】
蓋板26における左右の受け板47の内側の位置には、図9に示すように、前後中央部から少し後方に寄った位置に掛止板49が立てられているとともに、可動板60には、左右の側縁から内に入った位置に前後方向に長い逃がし溝66が切れられ、同逃がし溝66における前端寄りの位置の下面にもう一方の掛止板67が設けられている。そして、前後の掛止板67,49の間に引張コイルばね68が装着され、その引張コイルばね68の弾縮力により可動板60に対して後方への移動力が付勢され、一方、受け板47の後端における同受け板47の外側の位置には、図11に示すように、ストッパ48が設けられ、可動板60の張出板61の後縁がストッパ48に当たって、後方へ移動が停止されるようになっている。この停止位置が、可動板60の閉鎖位置になる。
なお、可動板60の両張出部61には、それぞれピン69が立てられている一方、固定板51の左右両側縁の後端寄りの位置には、上記したピン69を貫通して前後方向の移動を許容するスリット57が切られている。このスリット57が切られた箇所から後縁に至る領域は、一段下がった凹部となっていて、後記するように、ステーション70側に設けられた係合板118が後方から進入可能な進入路58となっており、ピン69の先端がその進入路58に突出している。
【0031】
上記したように、可動板60は常には引張コイルばね68の付勢力で閉鎖位置に保持されており、このとき、図21に示すように、可動板60の第2吸込口62(前後の吸込口63A,63Bからなる)と第2吹出口65とが、固定板51に設けられた対応する第1吸込口52(前後の吸込口53A,53Bからなる)と第1吹出口55と整合する位置から所定寸法後方に外れて、固定板51の第1吸込口52と第1吹出口55とが可動板60で塞がれ、すなわちシャッタ機構50が閉じた状態となり、固定板51の第1吸込口52と第1吹出口55と、対応する吸込路32と吹出路37との連通が断たれている。
【0032】
後記するように、カート10がステーション70内の正規位置まで押し込まれると、同ステーション70に設けられた係合板118が、シャッタ機構50のピン69を後方から押すことにより、図12に示すように、可動板60が引張コイルばね68の付勢力に抗して所定長さ前方に移動し、第2吸込口62と第2吹出口65とが、それぞれ吸込路32と吹出路37の上面開口と連通する位置に移動する。この位置が、可動板60の開放位置となる。
可動板60が開放位置に移動したときには、図13及び図22に示すように、可動板60の第2吸込口62(前後の吸込口63A,63Bからなる)と第2吹出口65とが、固定板51の対応する第1吸込口52(前後の吸込口53A,53Bからなる)と第1吹出口55と整合し、すなわちシャッタ機構50が開いた状態となり、固定板51の第1吸込口52と第1吹出口55と、対応する吸込路32と吹出路37とが連通することになる。
【0033】
続いて、ステーション70側の構造を説明する。ステーション70は、図1ないし図3に示すように、正面と底面とが開口された箱形をなし、常には定位置に設置されて使用されるが、設置位置を変える場合等に便利なように、底部にキャスタ71が設けられてステーション70自体も移動可能となっている。ステーション70内には、上記したカート10を正面の出入口から出し入れしてすっぽりと収納可能な収納室72が設けられている。この収納室72の天井部分に、熱交換部73が構築されている。
【0034】
収納室72の天井板の裏面側には、下面開放の箱体をなす外郭74がそれぞれ設置されることによって、前後2つの第1熱交換室75Hと第2熱交換室75Cとが形成されており、図2に示すように、収納室72内にカート10が正規に収納された場合において、手前側の第1熱交換室75Hは、カート10内の前側の領域に区画形成された温蔵室20Hの直上に対応し、奥側の第2熱交換室75Cは、カート10内の後側に区画形成された冷蔵室20Cの直上に対応するようなっている。なお以下では、第1熱交換室75Hと第2熱交換室75Cについて共通の構造を説明する場合には、両熱交換室75という場合がある。
両熱交換室75には、詳しくは後記するように、全高の1/4弱の高さ位置に水平な仕切板76が張られることによって、それぞれ上部室77と下部室78との2層に仕切られている。
【0035】
両熱交換室75の下部室78の底面には、図15に示すように、隣りの熱交換室75に近い側の端縁寄りで、かつ左右方向の中央位置、すなわちカート10の温蔵室20Hと冷蔵室20Cの吸込路32の上面開口と対応する位置に、各上面開口よりも一回り大きい方形の導入口80が形成されている。一方、両熱交換室75の下部室78の底面における反対側の端縁寄りの位置、すなわち温蔵室20Hと冷蔵室20Cの吹出路37の上面開口と対応する位置に、各上面開口より一回り大きい帯状の導出口81が形成されている。これらの導入口80と導出口81の下面側の口縁部には、それぞれシールパッキン82が装着されている(図2参照)。
【0036】
両熱交換室75の下部室78の内底面には、各導入口80の回りを囲むようにして背の低い仕切ダクト83が立てられている。各仕切ダクト83は、野球のホームベースを2つ割したような形状であって、各熱交換室75における隣りの熱交換室75に近い側の側面のうち、導入口80よりも奥側から見た左側の位置から内部に延び、続いて右側に向けて直角に屈曲されたのち、同側面における導入口80よりも右側の位置に向けて斜め姿勢で延出された配置となっている。また、各導出口81のほぼ全長にわたる外側の位置には、上記の仕切ダクト83と同じ背の低い風向ダクト84が、導出口81の左端から反対側の側面に至る斜め姿勢で配置されている。仕切ダクト83と風向ダクト84の上縁にはフランジ83A,84Aが直角曲げされて形成されている。
【0037】
各熱交換室75内には、一部既述したように、奥から見て左端縁から右端縁の少し手前の位置に亘り、仕切板76が両ダクト83,84のフランジ83A,84Aに載置されて水平姿勢で張られ、同仕切板76の下面側に上記した下部室78が形成されている。各下部室78において、仕切ダクト83の内側に導入室85が形成され、その底面の広い領域に亘って導入口80が開口された形態となる。一方、仕切ダクト83の外側が導出室86となり、その導出室86の底面における導入室85のすぐ外側の位置に、導出口81が開口された形態となる。
上記したように仕切板76の上面側が上面室77となる。図16に示すように、各仕切板76における奥行方向のほぼ中央部で、左右方向の中央部から少し左方に寄った位置には、丸孔からなる流入側接続口87が形成されている。同流入側接続口87は、図15に示すように、導入室85における左外側の隅部と対応し、また、導入口80の左外側の隅部と一部がラップした形態を取る。
一方、仕切板76の右側の切除端と、各熱交換室75における右側面(以下、対向壁面89)との間隙が、流出側接続口88となる。
【0038】
第1熱交換室75H及び第2熱交換室75Cの各上部室77内には、奥から見た右側の領域に、それぞれ冷却手段である第1冷却器91H及び第2冷却器91Cが配置されている。両冷却器91H,91Cは、図18に示すように、並列に接続された上で、圧縮機92、凝縮器ファン93A付きの凝縮器93及び膨張弁94からなる冷凍装置95と冷媒配管96により循環接続されることにより冷凍回路90が構成されている。冷却器91H,91Cの下面には、それぞれドレンパン99が配されている。また、冷凍装置95については、図3に示すように、熱交換部73の上に設けられた機械室100内に設置されている。
各冷却器91H,91Cへの冷媒流入管96H,96Cには、コントロール用の開閉弁97が設けられているとともに、第1冷却器91Hへの冷媒流入管96Hには、切替弁98が設けられている。
【0039】
従って、冷凍装置95が駆動された場合において、切替弁98が開放されていれば、両冷却器91H,91Cが冷却機能を発揮可能な状態にあり、切替弁98が閉鎖されていれば、第2冷却器91Cのみが冷却機能の発揮可能な状態となる。
また、各冷却器91H,91Cの冷媒流入管96H,96Cに設けられた開閉弁97を個々に制御することにより、それぞれの冷却器91H,91Cへの冷媒の流通とその停止、すなわち冷却機能の発揮とその停止とが制御されるようになっている。
第1熱交換室75Hの上部室77には、冷却器91Hに加えて加熱手段であるヒータ101が装備されている。ヒータ101は全体として円筒形状に形成され、上記した流入側接続口87の上方に、同心に設置されている。ヒータ101のリード線102は機械室100側に導かれている。
【0040】
両熱交換室75H,75Cには、それぞれ循環ファン105が装備されている。この循環ファン105はターボ式のファンモータであって、図20に示すように、出力軸107が下方を向いて取り付けられるモータ106と、同出力軸107に設けられたファン108とからなり、同ファン108は、下面側に吸引口109が、周面に吐出口110が設けられた構造となっている。そして駆動時には、ファン108の下面の吸引口109から吸引された空気が、周面の吐出口110から放射状に吐出されるように機能する。
上記のような構造になる循環ファン105のファン108が、各熱交換室75の上部室77内において、流入側接続口87の直上で同心に設けられている。第1熱交換室75Hの上部室77では、ヒータ101の内側に配されている。なお、モータ106は、機械室100内に設置されている。
【0041】
各熱交換室75の上部室77には、図16に示すように、各循環ファン105のファン108の同図の左側を閉じるようにして、風向ダクト112が全高に亘って設けられている。各風向ダクト112は、六角形の半分をなすような配置を取り、対向した前後の壁面の一方から斜め左方に延び、前後方向に屈曲されたのち、斜め右方に延びて他方の壁面に達するようになっている。
また、仕切板76の右端部が切除されることで形成されている流出側接続口88には、風向板115が配されている。この風向板115は、各熱交換室75における流出側接続口88が形成された側の対向壁面89の内側において、奥行のほぼ全長並びにほぼ全高に亘るように設けられている。その断面形状は、図17に示すように、断面コ字形の上下の角部がC面116とされた形状である。
【0042】
循環ファン105が駆動されると、各熱交換室75の下面側の空気が、導入口80から導入室85内に導入され、続いて流入側接続口87からファン108に吸引されたのち、図16の矢線に示すように、同ファン108の吐出口110から、上部室77内を流出側接続口88に向けて右方に流通し、そののち図17の矢線に示すように風向板115で案内されつつ下部室78の導出室86に回り込み、引き続き図15の矢線に示すように導出室86内を流通して導出口81から、その下面側に導出されるようになっている。
そして、第1熱交換室75Hの導入口80と導出口81が、それぞれ温蔵室20Hの吸込路32と吹出路37と連通されることで、第1熱交換室75Hから温蔵室20Hに至る空気循環路117Hが構成され、同様に、第2熱交換室75Cの導入口80と導出口81が、それぞれ冷蔵室20Cの吸込路32と吹出路37と連通されることで、第2熱交換室75Cから冷蔵室20Cに至る空気循環路117Cが構成されるようになっている。
なお機械室100内には、図示はしないが、タイマ等を備えて、冷凍装置95やヒータ101等の運転を制御する制御部113が設けられている。
【0043】
また、ステーション70には、上記したカート10に設けられたシャッタ機構50の開閉を切り替える手段が装備されている。
図21に示すように、ステーション70の収納室72における左右の側壁には、シャッタ機構50を構成する可動板60に立てられたピン69の上端と係合可能な高さ位置で、奥壁から手前に所定寸法離間した位置に、上記したピン69を押圧する係合板118が対向して突設されている。
後記するように、カート10がステーション70の収納室72に入れられ、その終盤近くになると、係合板118がピン69と当たって手前側に相対的に押すことで、可動板60が引張コイルばね68を弾拡しつつ開放位置に向けて移動し、正規位置まで入れられたところで、可動板60が開放位置に至りすなわちシャッタ機構50が開放された状態となる。
【0044】
続いて、本実施形態の作動を説明する。
朝食を配膳する場合を例に挙げて説明する。例えば前日の夕方等に、調理等の準備をした温食と冷食とをトレイTに盛り、冷凍庫に入れてチルド保存する。翌朝になったら、冷凍庫からトレイTを取り出し、図1に示すように、ステーション70から出されているカート10に対し、各トレイTを温蔵室20Hと冷蔵室20Cとに亘るようにして複数段に収納する。カート10がステーション70から出されている限りは、シャッタ機構50が閉じているから、カート10の天井壁17に開口された吸込路32や吹出路37から塵や虫等の異物が混入するおそれはない。
【0045】
トレイTの収納が完了したら、図1の矢線に示すように、カート10を押してステーション70の収納室72内に入れる。カート10の温蔵室20Hと冷蔵室20Cの天井壁17に設けられた吹出路37と吸込路32とが、ステーション70の対応する熱交換室75H,75Cの底面に設けられた導入口80と導出口81の直下に対応する正規位置まで入れられたらカート10が停止し、この間に、図22に示すように、係合板118がピン69を押すことによりシャッタ機構50が開放し、シャッタ機構50の吸込口52,62と吹出口55,65を介して、温蔵室20Hと冷蔵室20Cの吸込路32と吹出路37とが、対応する熱交換室75の導入口80と導出口81と連通する。なお、熱交換室75の導入口80と導出口81の下面の口縁部に装着されたシールパッキン82が、シャッタ機構50(固定板51)の上面における吸込口52と吹出口55の形成領域の回りに密着されるから、空気漏れは生じない。
【0046】
カート10がステーション70の収納室72内の正規位置に収納されたら、初めは、温食、冷食ともに低温解凍される。そのためには、冷凍回路90の切替弁98が開放された状態で冷凍装置95が駆動され、それとともに両循環ファン105が駆動される。これにより、温蔵室20H並びに冷蔵室20Cの庫内空気が吸込路32から吸い上げられて、対応する熱交換室75H,75Cにおける下部室78の導入室85に導入され、流入側接続口87から上部室77に流入して、図16の矢線に示すように流通して冷却器91H,91Cを通過する間に冷気が生成される。この冷気が、風向板115で案内されつつ流出側接続口88を通って下部室78の導出室86に回り込んだのち、導出口81から温蔵室20Hまたは冷蔵室20Cの流通路21に打ち込まれ、同流通路21を流下しつつ温蔵室20Hまたは冷蔵室20Cに流入するといった循環流が生じ、温蔵室20Hと冷蔵室20Cが共に冷却される。ここで、温蔵室20Hと冷蔵室20Cの冷却温度は、例えば「10℃」程度に設定され、トレイTに載せられた温食と冷食が共に低温解凍される。
【0047】
低温解凍が始まってから所定時間経過すると、温蔵室20H側が加熱状態に切り替わり、冷蔵室20C側では、解凍時よりも少し低い冷却温度(3℃程度)による冷蔵状態となる。すなわち所定のタイミングになると、タイマの作動によって、切替弁98が閉じられて第1冷却器91Hが非作動状態となり、それに代わってヒータ101に通電される。そうすると、温蔵室20Hから引かれた空気が、第1熱交換室75Hの上部室77に流入してヒータ101を通過する間に暖気が生成され、その暖気が温蔵室20Hの流通路21に打ち込まれて、同流通路21を流下しつつ温蔵室20Hに流入するといった循環流が生じ、トレイTに載せられた温食が再加熱されることになる。この間、温蔵室20Hの庫内温度の検知温度に基づいてヒータ101への通断電を制御することにより、温蔵室20H内の加熱温度をほぼ設定温度に維持するようにしてもよい。一方、冷蔵室20C側では、庫内設定温度が3℃程度に下げられた上で引き続いて冷却状態とされ、冷食については冷蔵状態とされる。
配膳時刻となったら、冷凍装置95、ヒータ101及び循環ファン105の運転が停止される。そののち、カート10を引っ張ってステーション70から出すと、温食は暖められ、冷食は冷やされた状態でそれぞれ盛られたトレイTが取り出され、配膳に供することができる。
【0048】
本実施形態によれば、以下のように利点を得ることができる。
まず、カート10をステーション70に入れるまでは、温蔵室20Hと冷蔵室20Cの天井壁17に設けられた吸込路32と吹出路37がシャッタ機構50により閉じられており、カート10がステーション70内に収納されると、シャッタ機構50が開くことで、両熱交換室75H,75Cに対して個別の空気循環路117H,117Cが構成されるようになっている。
カート10がステーション70から出されているときには、シャッタ機構50によって温蔵室20Hと冷蔵室20Cの吸込路32と吹出路37とが閉じられるから、埃や虫等の異物が侵入することが防止され、衛生面等で良好となる。しかも、シャッタ機構50はカート10に対して一体的に装備されており、なおかつシャッタ機構50の開閉も自動的に行われるから、使い勝手に優れたものとなる。
【0049】
本実施形態の空気循環路117H,117Cは、以下のような構造となっている。カート10の温蔵室20Hと冷蔵室20Cの天井壁17に設けられる吸込路32と吹出路37とは、吸込路32が、温蔵室20Hと冷蔵室20Cにおける仕切壁16側に寄った位置でかつ奥行方向のほぼ中央位置に形成される一方、吹出路37が、温蔵室20Hと冷蔵室20Cにおける仕切壁16とは反対の側壁側に設けられた流通路21に沿うようにして奥行のほぼ一杯に形成されており、かつ、ターボ式の循環ファン105が、吸引口109を下に向けた姿勢で各熱交換室75H,75Cの導入口80のほぼ真上に対応して設けられている。
ここで、循環ファン105が駆動されると、温蔵室20H並びに冷蔵室20Cの庫内空気が仕切壁16に寄った側に流れつつ吸込路32から対応する熱交換室75H,75Cに吸い込まれ、熱交換後の空気は、吹出路37を通って温蔵室20H並びに冷蔵室20Cにおける仕切壁16とは反対の端部側の奥行ほぼ一杯の領域から打ち込まれる。断面積がある程度限定された吸込路32のほぼ真上の位置に循環ファン105が配されることになるから、庫内空気を効率良く吸い込みすなわち効率良く循環させることができ、また熱交換後の空気は、隣りの部屋20H,20Cの温度の影響を受けることなく、温蔵室20H並びに冷蔵室20Cの奥行一杯にわたって打ち込まれるから、トータルして、温蔵室20Hでは効率良く冷却と加熱とが行え、冷蔵室20Cでは効率良く冷却することができる。
【0050】
温蔵室20Hと冷蔵室20Cの吸込路32を開閉する機能を果たす部分において、吸込路32を上面に向けて先開きとなる形状とする一方、シャッタ機構50を構成する固定板51と可動板60の第1吸込口52と第2吸込口62とが、吸込路32の広がった上面開口の領域内において、可動板60の移動方向に間隔を開けて2個に分割して設けられた形状となっている。
例えば、シャッタ機構50の開放時に、吸込路32の上面開口の実質的な開口面積を上記実施形態と同じ面積とする条件の下で、固定板51と可動板60の第1吸込口52と第2吸込口62とを各1個ずつで賄った場合は、両吸込口52,62が整合した開放位置と、両吸込口52,62がずれた閉鎖位置との間で可動板60を移動させるストロークを大きく採る必要があるが、本実施形態では、第1吸込口52と第2吸込口62とを2個ずつに分割したことにより、両吸込口52,62が整合した開放位置と、両吸込口52,62がずれた閉鎖位置との間の可動板60の移動ストロークが小さく抑えられる。
すなわち、シャッタ機構50を構成する可動板60の移動ストロークを小さく留め、言い換えるとシャッタ機構50をコンパクトに纏めた上で、シャッタ機構50の開放時における吸込路32の開口面積を大きく採ることができる。
【0051】
また、シャッタ機構50の可動板60は、その中央部分が、吸込路32と吹出路37とを構成するべく吸込ダクト33と吹出ダクト38の上縁に設けられたフランジ34A,35A並びに39A,41Aで受けられて、摺動可能に支持された構造としてある。吸込路32と吹出路37とを構成するダクト33,38を利用して可動板60を摺動可能に支持する構造としたから、部品点数の少ない簡単な構造でもってシャッタ機構50を形成することができる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、シャッタ機構を構成する固定板と可動板とに設けられる吸込口が、可動板の移動方向に2分割された構造を例示したが、3以上に分割された構造としてもよい。
(2)逆に吸込口が単一であってもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(3)上記実施形態では、シャッタ機構が自動開閉される場合を例示したが、同シャッタ機構がカートに対して一体的に装備されている限り、手動で開閉する構造のものであってもよい。
【0053】
(4)カートの温蔵室と冷蔵室の天井壁に設けられる吸込路と吹出路の位置は、上記実施形態に例示したものに限らず任意に設定できる。
(5)空気循環路に設けられる循環ファンは、上記実施形態に例示したターボ式のファンモータに限らず、他の形式のファンであってもよく、また、空気循環路に空気を循環させ得る限り、配置箇所も任意に設定できる。
(6)上記実施形態では、カートの形式として、トレイが左右両面の開口部から出し入れできる形式のものを例示したが、左右いずれか一方の面のみに開口部を設けた形式のものであってもよい。
(7)本発明の冷温蔵装置は、病院での朝食配膳に限らず、他の療養施設や工場の食堂等へ給食を提供する場合や、取り出し時間の設定等も含めて、さらに広範囲の使用形態に亘って適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
T…トレイ 10…カート 11…カート本体 13…断熱扉(扉) 14…キャスタ 16…仕切壁 17…天井壁 20H…温蔵室 20C…冷蔵室 21…流通路 25…内装板 32…吸込路 33…吸込ダクト 34A,35A…フランジ 37…吹出路 38…吹出ダクト 39A,41A…フランジ 50…シャッタ機構 51…固定板 52…第1吸込口 53A,53B…(前後の)吸込口 55…第1吹出口 60…可動板 62…第2吸込口 63A,63B…(前後の)吸込口 65…第2吹出口 68…引張コイルばね 69…ピン(被係合部) 70…ステーション 75H…第1熱交換室 75C…第2熱交換室 80…導入口 81…導出口 91H,91C…冷却器(冷却手段) 101…ヒータ(加熱手段) 105…循環ファン 112…制御部 117H,117C…空気循環路 118…係合板(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面が開口された断熱箱からなるカート本体と、同カート本体内を温蔵室と冷蔵室とに仕切る断熱性の仕切壁と、前記カート本体の前記開口部を開閉する扉とを備え、トレイが前記仕切壁を貫通して前記温蔵室と前記冷蔵室とに亘る形態で複数段に収納されるキャスタ付きのカートと、
冷却手段と加熱手段とを設けて前記カートを出し入れ可能に収納するステーションとからなる冷温蔵装置であって、
前記ステーションの天井部には、冷却手段と加熱手段とを装備した第1熱交換室と、冷却手段を装備した第2熱交換室とが水平方向に並んで区画形成され、
前記各熱交換室の底面にはそれぞれ導入口と導出口とが設けられる一方、
前記温蔵室と前記冷蔵室の天井壁にはそれぞれ吸込路と吹出路とが設けられ、
前記カートが前記ステーション内に収納された場合に、前記第1熱交換室と前記温蔵室の間と、前記第2熱交換室と前記冷蔵室の間において、対応する前記導入口と前記吸込路同士並びに前記導出口と前記吹出路同士がそれぞれ連通することによって、個別の空気循環路が形成され、
前記各空気循環路にはそれぞれファンが設けられるとともに、
前記冷却手段と前記加熱手段との作動を制御する制御手段が具備され、
かつ、前記温蔵室と前記冷蔵室の天井壁に設けられた前記吸込路と前記吹出路とを開閉するシャッタ機構が前記カートに対して一体的に装備されていることを特徴とする食品の冷温蔵装置。
【請求項2】
前記シャッタ機構は、前記温蔵室と前記冷蔵室の前記吸込路と前記吹出路とにそれぞれ連通した第1吸込口と第1吹出口とを設けた固定板に対して、前記第1吸込口と前記第1吹出口とにそれぞれ整合する第2吸込口と第2吹出口とを設けた可動板が摺動可能に重ねて設けられ、前記可動板が、両吸込口同士と両吹出口同士が整合する開放位置と、両吸込口同士と両吹出口同士が外れて当該可動板で前記固定板の前記第1吸込口と前記第1吹出口とを塞ぐ閉鎖位置との間で往復移動可能となっていることを特徴とする請求項1記載の食品の冷温蔵装置。
【請求項3】
前記温蔵室と前記冷蔵室の天井壁に設けられる前記吸込路と前記吹出路とは、前記吸込路が、前記温蔵室と前記冷蔵室における前記仕切壁側に寄った位置でかつ奥行方向のほぼ中央位置に形成される一方、前記吹出路が、前記温蔵室と前記冷蔵室における前記仕切壁とは反対側の側縁に沿うようにして奥行のほぼ一杯に形成されており、かつ、前記ファンが、前記各熱交換室の前記導入口に設けられていることを特徴とする請求項2記載の食品の冷温蔵装置。
【請求項4】
前記固定板と前記可動板に設けられた前記第1吸込口と前記第2吸込口とは、それぞれ前記可動板の移動方向において複数に分割されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の食品の冷温蔵装置。
【請求項5】
前記カート本体の天井壁は、内装板上に前記吸込路と前記吹出路を構成するべくダクトが立てられて、その回りに断熱材が充填されているとともに、同断熱材の上方に所定間隔を開けて前記シャッタ機構を構成する前記固定板が張設され、かつ前記可動板は前記固定板の下面に重なった状態で前記ダクト上で摺動可能に支持されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の食品の冷温蔵装置。
【請求項6】
前記シャッタ機構を構成する前記可動板は、常にはばね弾力により閉鎖位置に移動付勢されている一方、前記ステーションには、前記カートが前記ステーション内に収納されることに伴い前記可動板に設けられた被係合部と係合して前記可動板を前記ばね弾力に抗して開放位置まで移動させる係合部が設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の食品の冷温蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−43309(P2011−43309A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193100(P2009−193100)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】