説明

食品の押出成形方法及び押出成形装置

【課題】 チョコレート等の油脂性菓子生地を比較的細い棒状に成形すると共に、その外周にも食品素材を付着させて、凹凸模様を付すことができるようにした押出成形方法及び押出成形装置を提供する。
【解決手段】
本発明の押出成形装置10は、ギヤポンプA、Bを備え、ギヤポンプは、ケーシング13と、駆動軸(第1軸)23及び従動軸(第2軸)24と、駆動ギヤ(第1ギヤ)26と、従動ギヤ(第2ギヤ)27と、隔壁28によって画成されたギヤ室と、各ギヤ室に連通する複数の流出口とを有し、ギヤポンプAの流出口に連通して中心ノズル53が取付けられ、ギヤポンプBの流出口に連通して環状ノズルが取付けられ、かつ、切欠き部を有するリング板が設けられている。そして、第1食品素材を中心ノズル53から押出し、第2食品素材をリング板の切欠き部から押出して、第1食品素材の外周に、第2食品素材を線状に付着した製品を製造可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチョコレート等の油脂性菓子生地に好適な食品の押出成形方法及び押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出成形は、従来より様々な食品の製造に利用されている。例えばチョコレート等の油脂性菓子、焼菓子、飴やキャンディー類、冷菓、魚肉練製品、食肉加工品等、数多くの製品が押出成形で製造されている。
【0003】
このような押出成形装置の一つとして、下記特許文献1には、共通の駆動軸によって駆動する複数の歯車ポンプを、食品を投入するためのホッパ下部に配設するとともに、前記各歯車ポンプの吐出口を個別に並設してなる、クリーム、ジャム等の流動性のある食品の吐出装置が開示されている。
【特許文献1】実開昭51−136397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チョコレート等の食品を、比較的細い棒状に成形すると共に、その外周に色違い等の食品素材を付着させて、凹凸模様を付そうとした場合、比較的コンパクトな装置で生産性よく製造できるようにすることは困難であった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、比較的細い棒状に成形すると共に、その外周にも食品素材を付着させて、凹凸模様を付すことができるようにした押出成形方法及び押出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の食品の押出成形方法は、原料供給手段に連結されたケーシング内に、第1軸と、第2軸とを平行に配設し、前記第1軸には複数の第1ギヤを所定間隔で装着し、前記第2軸には複数の第2ギヤを所定間隔で装着して、対応する前記第1ギヤと前記第2ギヤとを歯合させ、かつ、軸方向に隣接する第1ギヤ及び第2ギヤ同士の間に隔壁を配置して、複数のギヤ室を形成し、各ギヤ室に連通する複数の流出口を設けたギヤポンプを2つ並設し、
前記ギヤポンプのうち、第1のギヤポンプには、第1の食品素材を供給し、第2のギヤポンプには、第2の食品素材を供給し、
第1の食品素材を前記第1のギヤポンプの各流出口に連通された複数の中心ノズルから押出すと同時に、第2の食品素材を前記第2のギヤポンプの各流出口に連通された、前記中心ノズルを囲む環状ノズルに供給し、前記環状ノズルの吐出口を覆うように配置されたリング板の内周切欠き部を通して押出すことにより、
前記中心ノズルから押出されて棒状に成形された第1の食品素材の外周に、前記リング板の切欠き部から押出された第2の食品素材を線状に付着させることを特徴とする。
【0007】
本発明の食品の押出成形方法によれば、第1軸及び第2軸を共通にして、隔壁によって仕切られた複数のギヤ室に配置された第1ギヤ及び第2ギヤにより、それぞれのギヤ室の流出口及びそれに連通する吐出口を通して食品素材を押出すようにしたので、個々の製品の吐出圧をほぼ一定にして、製品の大きさや形状のばらつきを少なくすることができる。
【0008】
また、複数の吐出口から押出して同時に複数の製品を成形することが可能となり、しかも、第1軸及び第2軸を共通にして、隔壁によって仕切られた複数のギヤ室を設けたことにより、装置をコンパクトにすることができる。
【0009】
更に、第1のギヤポンプと、第2のギヤポンプとを並設し、第1のギヤポンプを用いて第1の食品素材を中心ノズルから押出し、第2の食品素材を環状ノズルの吐出口に設けたリング板の切欠き部から押出すことにより、棒状に成形された第1の食品素材の外周に、第2の食品素材を線状に付着した、形状の変化に富む製品を、生産性良く製造することが可能となる。
【0010】
本発明の押出成形方法の好ましい態様の1つにおいては、前記リング板を回転させて、前記第2の食品素材を螺旋状に付着させることができる。これによれば、棒状に押出された第1の食品素材の外周に、第2の食品素材が螺旋状に付着した製品を得ることができる。
【0011】
また、更に好ましい態様においては、前記第1の食品素材及び前記第2の食品素材が、色違いの油脂性菓子生地であってもよい。これによれば、棒状に押出された第1の食品素材の外周に、色違いの第2の食品素材が線状に付着するので、より見栄えのする概観の製品を得ることができる。
【0012】
一方、本発明の食品の押出成形装置は、並設された第1のギヤポンプと、第2のギヤポンプとを備え、
前記第1のギヤポンプ及び前記第2のギヤポンプは、原料供給手段に連結されたケーシングと、このケーシング内に平行に配設された第1軸及び第2軸と、前記第1軸に所定間隔で装着された複数の第1ギヤと、前記第2軸に所定間隔で装着されて前記第1ギヤの対応するものに歯合する複数の第2ギヤと、軸方向に隣接する第1ギヤ及び第2ギヤ同士の間に配置された隔壁によって画成された複数のギヤ室と、各ギヤ室に連通するようにそれぞれ形成された複数の流出口とを有しており、
前記第1のギヤポンプの各流出口に連通して、中心ノズルが取付けられ、前記第2のギヤポンプの各流出口に連通して、前記中心ノズルを囲む環状ノズルが取付けられ、かつ、前記環状ノズルの吐出口を覆うように配置されて内周に切欠き部を有するリング板が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の食品の押出成形装置によれば、前述したように、コンパクトな装置で、棒状に成形された第1の食品素材の外周に、第2の食品素材を線状に付着した、形状の変化に富む製品を、生産性良く製造することができる。また、個々の製品の吐出圧をほぼ一定にして、製品の大きさや形状のばらつきを少なくすることができる。
【0014】
本発明の食品の押出成形装置の好ましい態様においては、前記リング板に回転駆動機構が設けられている。これによれば、リング板を回転させることにより、棒状に押出された第1の食品素材の外周に、第2の食品素材が螺旋状に付着した製品を得ることができる。
【0015】
また、本発明の食品の押出成形装置は、前記第1のギヤポンプ及び前記第2のギヤポンプの前記流出口に当接する第1のプレートと、該第1のプレートに重ねられた第2のプレートとを有し、
前記第1のプレートは、前記第1のギヤポンプの前記流出口に連通する凹溝と、この凹溝の端部に形成された流出口と、前記第2のギヤポンプの前記流出口に連通する貫通孔とを有し、前記凹溝の流出口には、前記中心ノズルの基端部が連結され、前記中心ノズルの先端部は、前記第2のプレートに設けられた挿通孔を通して突出されており、
前記第2のプレートは、前記第1のプレートの前記貫通孔に連通する凹溝と、この凹溝の端部に設けられた前記挿通孔とを有し、前記環状ノズルの基端部が前記挿通孔に連結され、前記中心ノズル外周と前記挿通孔内周との間隙に連通していることが好ましい。
【0016】
これによれば、第1のギヤポンプに供給された第1の食品素材は、第1のプレートの凹溝と、その端部に形成された流出口とを通り、更に第1のプレートに連結されて第2のプレートの挿通孔に挿通された中心ノズルを通って吐出される。
【0017】
また、第2のギヤポンプに供給された第2の食品素材は、第1のプレートの貫通孔を通り、第2のプレートの凹溝とその挿通孔とを通り、第2のプレートに連結された環状ノズルを通って、その吐出口に配置されたリング板の切欠き部を通して吐出される。
【0018】
このように、重ねられた一対のプレートによって、第1の食品素材及び第2の食品素材の流路を形成することができるので、装置をコンパクトにすることができる。
【0019】
更に、第1のギヤポンプの第1ギヤ、第2ギヤ及び隔壁の厚さと、第2のギヤポンプの第1ギヤ、第2ギヤ及び隔壁の厚さとを変えることにより、第1のギヤポンプのギヤ室の容積と、第2のギヤポンプのギヤ室の容積とが異なるようにしてもよい。
【0020】
これによれば、第1の食品素材と第2の食品素材との吐出量に差を設けることができ、例えば中心ノズルから吐出される第1の食品素材に対して、環状ノズルから吐出される第2の食品素材の量を少なくすることができる。
【0021】
なお、本発明においては、前記第1軸が駆動軸であり、該駆動軸に装着された第1ギヤが駆動ギヤをなし、前記第2軸が従動軸であり、該従動軸に装着された第2ギヤが従動ギヤをなすことが好ましいが、第1軸及び第2軸のいずれもが駆動軸をなし、第1ギヤ及び第2ギヤのいずれもが駆動されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンパクトな装置で、棒状に成形された第1の食品素材の外周に、第2の食品素材を線状に付着した、形状の変化に富む製品を、生産性良く製造することができる。また、個々の製品の吐出圧をほぼ一定にして、製品の大きさや形状のばらつきを少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明による食品の押出成形装置の一実施形態を説明する。 図1〜3に示すように、この押出成形装置10は、上面に第1ホッパ11と、第2ホッパ12を設置されるケーシング13を備えている。ケーシング13は、上壁14と、底壁15と、それらの両端面に設置される端板16、17とで構成されている。
【0024】
上壁14には、一対のスリット状の開口19a、19bが形成されており、開口19aは第1ホッパ11に連通し、開口19bは第2ホッパ12に連通している。
【0025】
上壁14の下面には両側及び中央部に合わせて3つのリブ14a、14b、14cが形成されている。同様に、底壁15にはその上面に両側及び中央部に、合わせて3つのリブ15a、15b、15cが形成されている。
【0026】
上壁14のリブ14a、14b、14cと、底壁15のリブ15a、15b、15cとは、互いに当接する位置にあり、これらのリブが当接することによって、ケーシング13内には第1ポンプ室21と、第2ポンプ室22とが形成されている。
【0027】
底壁15の第1ポンプ室21の下面をなす部分には、所定間隔をおいて複数の流出口20aが形成されている。同様に、底壁15の第1ポンプ室22の下面をなす部分にも、所定間隔をおいて複数の流出口20bが形成されている。
【0028】
各ポンプ室21、22には、端板16、17を貫通して、本発明の第1軸をなす駆動軸23と、本発明の第2軸をなす従動軸24とが平行に配設されている。駆動軸23及び従動軸24の両端部は、各ポンプ室21、22の内周形状に適合し、それぞれの軸23、24を挿通する孔が形成された軸受25によって支持されている。
【0029】
駆動軸23には、本発明の第1ギヤをなす駆動ギヤ26が所定間隔をおいて複数装着されている。同様に、従動軸24には、本発明の第2ギヤをなす従動ギヤ27が所定間隔をおいて複数装着されており、それぞれの従動ギヤ27は、対応する駆動ギヤ26と歯合している。また、互いに歯合する一対の駆動ギヤ26及び従動ギヤ27の隣接する組同士の間には、各ポンプ室21、22の内周形状に適合する外周を有し、駆動軸23及び従動軸24が挿通される孔が形成された隔壁28が配置されている。
【0030】
なお、軸方向に隣接する駆動ギヤ26同士の間、及び従動ギヤ27同士の間には、円筒状のスペーサ28a(図4参照、図1では図示せず)が配置されている。この円筒状のスペーサ28aは、隔壁28の厚さよりも僅かに厚くされ、隔壁28の孔の内周に配置されている。このため、駆動ギヤ26及び従動ギヤ27が、隔壁28と擦れ合うのを防止することができる。
【0031】
図4、5に示すように、これらの隔壁28によって第1ポンプ室21内は、軸方向に並ぶ複数の第1ギヤ室34が画成され、第2ポンプ室22内も同様に、軸方向に並ぶ複数の第2ギヤ室35が画成されている。
【0032】
この実施形態の場合、第1ポンプ室21の駆動ギヤ26及び従動ギヤ27は、比較的厚く、隔壁28は比較的薄く形成されている。一方、第2ポンプ室22の駆動ギヤ26及び従動ギヤ27は比較的薄く、隔壁28は比較的厚く形成されている。その結果、第1ギヤ室34の容積は比較的大きく、第2ギヤ室35の容積は比較的小さくなっている。なお、第1ギヤ室34及び第2ギヤ室35は、横方向に対応して同列に同数ずつ形成されている。
【0033】
第1ホッパ11に連通する開口19aは第1ギヤ室34に連通し、各第1ギヤ室34の底部には流出口20aがそれぞれ形成されている。同様に、第2ホッパ12に連通する開口19bは第2ギヤ室35に連通し、各第2ギヤ室35の底部には、流出口20bがそれぞれ形成されている。
【0034】
再び、図1、2を参照すると、底壁15の下面には横断面L字状をなす一対の枠体18が両側部に取付けられている。
【0035】
そして、この枠体18は、第1プレート41及び第2プレート51を上下に重ねて保持している。また、枠体18は、ジャケット構造を有しており、第1プレート41及び第2プレート51を保温している。
【0036】
ケーシング13の両サイドには、L字形のブラケット30が装着されており、ケーシング13は、このブラケット30を介して、フレーム29上に設置されている。
【0037】
フレーム29の上面には、第1ポンプ室21及び第2ポンプ室22に対応して、第1駆動モータ31及び第2駆動モータ32が設置されている。そして、第1駆動モータ31はカップリング33を介して、第1ポンプ室21の駆動軸23に連結されている。また、第2駆動モータ32はカップリング33を介して、第2ポンプ室22の駆動軸23に連結されている。
【0038】
第1駆動モータ31及び第2駆動モータ32の作動により、各駆動ギヤ26とそれに歯合する各従動ギヤ27は、図5の矢印で示す方向に回転し、第1ギヤ室34及び第2ギヤ室35に導入された食品素材を、対応する流出口20a、20bから定量ずつ流出するようになっている。
【0039】
図6に示すように、第1プレート41の上面には、長さの短い凹溝42と、長さの長い凹溝43とが交互に複数形成されている。それぞれの凹溝42、43の一端部42a、43aは、前記各第1ギヤ室34の流出口20aに対応した位置にあり、流出口20aから流出する食品素材が、対応する凹溝42、43に導入されるようになっている。
【0040】
凹溝42、43の他端部には、下方に抜ける流出口44が形成されている。流出口44は、この実施形態の場合、千鳥状に配列されて複数並んで形成されている。また、第1プレート41には、第2ギヤ室35の流出口20bに対応して、複数の貫通孔45が形成されている。第1プレート41の周縁には、第2プレート51と連結するための、複数のネジ挿通孔47が形成されている。
【0041】
第2プレート51の上面には、長い凹溝48と短い凹溝49とが交互に複数形成されている。各凹溝48、49の一端部48a、49aは、前記第1プレート41の貫通孔45に対応した位置にあり、第2ギヤ室35の流出口20bを通して、流出した食品素材が貫通孔45を通り、各凹溝48、49の一端部48a、49aに導入されるようになっている。
【0042】
凹溝48、49の他端部には、ネジ孔50が形成されており、このネジ孔50は、第1プレート41の流出口44に対応して千鳥状に配列されている。第2プレート51の周縁には、前記第1プレート41のネジ挿通孔47に対応するネジ孔52が形成されている。
【0043】
図8に示すように、この押出成形装置10のノズルは、中心ノズル53と、その外周を囲む環状ノズル63とで構成されている。
【0044】
図9に示すように、中心ノズル53は、拡径した基部54と、中間のテーパ部55と、径の細い先端部56とを有している。中心ノズル53の上端はテーパ状に開口しており、下端は吐出口57となっている。基部54には、フランジ60と、その下方にネジ部61とが形成されている。そして、基部54の前記フランジ60、ネジ部61が形成された部分に、周方向に対向して、一対の面取り部62が形成されている。
【0045】
更に、中心ノズル53の上端部外周には、環状溝58(図8参照)が形成され、この環状溝58内にシールリング59が嵌合して装着されている。したがって、中心ノズル53の上端部を第1プレート41の流出口44に挿入すると、シールリング59によってシールされ、凹溝42、43に対して、中心ノズル53の上端開口部が気密的にシールされて連通するようになっている。
【0046】
図8に示すように、環状ノズル63は、上端部内周に雌ネジ部66が形成されており、この雌ネジ部66に中心ノズル53のネジ部61が螺着されて、中心ノズル53と環状ノズル63とが一体化されている。また、環状ノズル63の上端部外周には、雄ネジ部65が形成されている。この雄ネジ部65は、第2プレート51のネジ孔50内周に螺着され、環状ノズル63及び中心ノズル53を第2プレート51に固定している。
【0047】
中心ノズル53と環状ノズル63との間には、環状の通路70が形成されている。そして、第2プレート51の凹溝48、49は、中心ノズル53の前記面取り部62によって、ネジ孔50の内周との間に形成された隙間を通り、前記環状の通路70に連通している。
【0048】
環状ノズル63の中間部外周には環状凹部72が形成されており、この環状凹部72にベアリング71が装着されている。そして、このベアリング71を介して回転体75が回転可能に装着されている。
【0049】
図10を併せて参照すると、回転体75は、円筒部77と、その下端面に設けられたリング板76とで構成されている。円筒部77の外周には環状溝78が形成され、この環状溝78に後述するベルト82が張設されるようになっている。なお、環状溝78には、ベルト82に対して滑り止め作用をなすための表面処理が施されている。
【0050】
リング板76の中央には円形開口80が設けられ、この円形開口80の周縁の対向する2箇所に、円弧状の切欠き部81が形成されている。リング板76の円形開口80は、中心ノズル53の吐出口57外周に当接し、環状ノズル63の吐出口69を閉塞すると共に、切欠き切欠き部81の部分でのみ、開口させるようになっている。このため、中心ノズル53と環状ノズル63との間に形成された通路70は、前記切欠き部81の部分で開口している。
【0051】
図8に示すように、中心ノズル53の下端面は、リング板76の下端面に対して、距離Xだけ短く形成されている。この距離Xとしては、0〜3mmが好ましく、0.1〜2.0mmがより好ましい。
【0052】
回転体75のリング板76に隣接する内周部分には、環状のシール材79が配設され、このシール材79は、環状ノズル63の下端部外周に周設して、各ノズルから流出する食品素材が、回転体75の内部方向へ回り込むのを防止している。
【0053】
図11に示すように、第2プレート51の下面に千鳥状に配列された各回転体75の前記環状溝78には、ベルト82が当接するように周回されている。ベルト82は、回転体75の外側に配設された複数の押えローラ84によって、回転体75に圧接されている。
【0054】
図3に示すように、フレーム29には、第3モータ85がその回転軸を下方に向けて突出するように設置されている。そして、図示しない回転軸に前記プーリ83の一方が連結され、第3モータ85の作動によって一方のプーリ83が回転するようになっている。したがって、各回転体75はベルト82の走行によって、同一方法にそれぞれ回転するようになっている。
【0055】
次に、上記押出成形装置10を用いた本発明による食品の押出成形方法の一実施形態について説明する。
【0056】
本発明の成形方法が適用できる食品としては、例えば、チョコレート等の油脂性菓子、ビスケット、クッキー等の焼き菓子、飴やキャンディー類、アイスクリーム等の冷菓、かまぼこ、さつまあげ等の魚肉練り製品、ソーセージ等の食肉加工品等、様々な食品が挙げられる。特に好ましいのは、チョコレート等の油脂性菓子である。
【0057】
この場合、チョコレート原料としては、従来より一般的に用いられているものを、適宜選択して使用することができ、例えば、カカオマス、カカオバター、その他の植物性油脂、粉等、全脂粉乳、乳化剤等が用いられる。この場合、油脂や乳化剤等の量によって、溶融させたときのチョコレート生地の粘度をある程度調整することができる。
【0058】
また、ビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート等、いずれの種類のチョコレートでもよく、規約に定められた純チョコレート、純ミルクチョコレートに限らず、準チョコレート等であってもよい。更には、粒状、粉状のナッツ類やフルーツ類やキャンディー類等を含有するものであってもよい。これらの原料を用いたチョコレート生地は、常法によって調整すればよい。
【0059】
本発明において、食品素材としては、第1ホッパ11から供給され、第1ポンプ室21に導入される第1食品素材と、第2ホッパ12から供給され、第2ポンプ室22に導入される第2食品素材とが用いられる。第1食品素材及び第2食品素材は同じものであってもよく、また異なるものであってもよい。デザイン的な効果を高めるために、第1食品素材及び第2食品素材は、互いに接合可能な色違いの食品素材であることが好ましい。
【0060】
例えば、第1食品素材としては、通常のミルクチョコレートを用い、第2食品素材としてホワイトチョコレートを使用すれば、ミルクチョコレート生地からなる、棒状のチョコレートの外周にホワイトチョコレートの生地からなる線状のチョコレートを螺旋状に付着させることができる。
【0061】
なお、第1ホッパ11、第1ギヤ室34、該第1ギヤ室34に配設される駆動軸23、従動軸24及びそれらに装着された駆動ギヤ26、従動ギヤ27、隔壁28が本発明における第1ギヤポンプAを構成している。
【0062】
同様に、第2ホッパ12、第2ギヤ室35、該第2ギヤ室35内に配設される駆動軸23、従動軸24、駆動ギヤ26、従動ギヤ27、隔壁28が本発明における第2ギヤポンプBを構成している。
【0063】
第1ギヤポンプAに投入される第1食品素材、例えば、ミルクチョコレートは、第1ホッパ11にそのチョコレート生地を投入され、ケーシング13の開口19aを通して、第1ギヤ室34に投入される。第1ギヤ室34において、駆動ギヤ26及び従動ギヤ27の回転により、チョコレート生地は所定の圧力で流出口20aから流出する。
【0064】
各第1ギヤ室34の流出口20aから流出したチョコレート生地は、第1プレート41の凹溝42、43の一端部42a、43aに導入される。そして、それぞれの凹溝42、43を通って、それらの他端部にある流出口44から落下する。この流出口44には図8に示すように、中心ノズル53の上端部がシールリング59を介して装着されている。このため、チョコレート生地は流出口44を通って、中心ノズル53内に導入され、該中心ノズル53の下端部にある吐出口57から柱状をなして押出される。
【0065】
一方、第2のギヤポンプBに供給される第2食品素材、例えば、ホワイトチョコレート生地は第2ホッパ12に投入される。このチョコレート生地は、ケーシング13の開口19bを通って、第2ギヤ室35に導入される。そして、第2ギヤ室35内で回転する駆動ギヤ26及び従動ギヤ27によって、所定の圧力で流出口20bから流出する。
【0066】
流出口20bから流出した該チョコレート生地は、第1プレート41の貫通孔45を通り、第2プレート51の凹溝48、49の一端部48a、49aに導入される。更に、チョコレート生地は、凹溝48、49を通り、それらの他端部にあるネジ孔50に導入される。このネジ孔50には図8に示すように、環状ノズル63の上端部が螺着されている。
【0067】
図9に示すように、中心ノズル53には面取り部62が設けられているので、中心ノズル53と環状ノズル63との間には隙間が形成されている。このため、ネジ孔50に到達したチョコレート生地は上記隙間を通って、中心ノズル53と環状ノズル63との間に形成された通路70に導入される。また、環状ノズル63の下端面にある吐出口69は、回転体75のリング板76によって閉塞されている。そして、リング板76の切欠き部81を通して、中心ノズル53から押出された棒状の第1食品素材の外周に、線状をなして付着する。
【0068】
回転体75は、図3に示した第3モータ85により回転するプーリ83及び該プーリ83に張設されたベルト82により、所定方向に回転している。このため、リング板76の切欠き部81は回転体75の回転に伴って回転し、該切欠き部81から押出される第2食品素材の第1食品素材に対する付着位置が変化する。
【0069】
その結果、中心ノズル53から押出されて、棒状に成形された第1食品素材の外周に、第2食品素材が線状をなして、螺旋状に付着する。こうして成形された食品生地は、図示しないベルトコンベヤ等に載せられ、必要に応じて所定長さにカットされた後、冷却固化、加熱焼成等の固化処理がなされる。
【0070】
なお、上記において、第1ポンプ室21に配設される駆動ギヤ26及び従動ギヤ27は比較的厚く、かつ、隔壁28は比較的薄く形成されているため、第1ギヤ室34の容量が比較的大きくなっている。これに対して、第2ポンプ室22に配設される駆動ギヤ26及び従動ギヤ27は比較的薄く形成され、かつ、隔壁28は比較的厚く形成されている。このため、第2ギヤ室35は第1ギヤ室34よりも小さな容量とされている。このように、第1ポンプ室21と第2ポンプ室22とでそれぞれのギヤ26、27や、隔壁28の厚さを変更させることにより、第1ギヤ室34と第2ギヤ室35の容積比を変更させ、目的とするそれぞれの食品素材の吐出量を調整することができる。なお、それぞれの食品素材の吐出量は、第1駆動モータ31及び第2駆動モータ32の回転数を変えることによっても調整することができる。
【0071】
また、共通の駆動軸23、従動軸24に装着された駆動ギヤ26及び従動ギヤ27によって、各ギヤ室からそれぞれ食品素材が押出されるため、製品ごとの吐出圧のばらつきがなく、製品の大きさや形状のばらつきを防ぐことができる。
【0072】
図12には、このような押出成形方法によって得られたチョコレートの一例が示されている。このチョコレート90は、ミルクチョコレート生地からなる棒状本体91と、この棒状本体91の外周に螺旋状をなして付着されたホワイトチョコレート生地からなる線状部92とで構成されている。なお、底面93は、ベルトコンベヤ等に載置された際のつぶれによって、扁平な面をなしている。
【0073】
前記実施形態では、第2食品素材が、回転体75の吐出口69を通して吐出し、棒状に成形された第1食品素材の外周に螺旋状に付着するようにしたが、リング板76を固定し、吐出口69が回転しないようにして、棒状に成形された第1食品素材の外周に、第2食品素材が直線状をなして付着するようにしてもよい。
【0074】
更に、吐出口69の数は1個以上であればいくつでもよく、棒状に成形された第1食品素材の外周に、第2食品素材からなる線状部が1本、或いは3本、4本等の数で付着するようにしてもよい。このように、本発明によれば、棒状に成形された第1食品素材の外周に、第2食品素材が線状をなして付着した変化に富む形状の成形品をコンパクトな装置で生産性よく、製造することが可能となる。
【0075】
なお、本発明においては、第2軸をなす上記従動軸24も、図示しないモータを接続して駆動軸とし、図示しないキー構造を設けて、第2ギヤをなす従動ギヤ27も直接駆動されるようにしてもよい。2つの軸を駆動させることにより、具が含まれている原料などにおいて、噛み込みによるすべりを無くして、安定して原料を押出すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、チョコレート等の油脂性菓子生地を比較的細い棒状に成形すると共に、その外周にも食品素材を付着させて、凹凸模様を付すことができるようにした押出成形方法及び押出成形装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による押出成形装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同押出成形装置のホッパーを取外した状態の平面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図2のIV-IV線に沿った断面図であって、従動軸と従動ギヤは切断しないで示した図である。
【図5】同押出成形装置のケーシングの断面図である。
【図6】同押出成形装置の第1プレートの平面図である。
【図7】同押出成形装置の第2プレートの平面図である。
【図8】同押出成形装置のノズル部の断面図である。
【図9】同押出成形装置の中心ノズルの斜視図である。
【図10】同押出成形装置の環状ノズルの斜視図である。
【図11】同押出成形装置のリング板の回転機構を示す底面図である。
【図12】本発明の押出成形方法で得られたチョコレートを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
A 第1ギヤポンプ
B 第2ギヤポンプ
10 押出成形装置
11 第1ホッパ
12 第2ホッパ
13 ケーシング
14 上壁
14a、14b、14c リブ
15 底壁
15a、15b、15c リブ
16,17 端板
18 枠体
19a、19b 開口
20a、20b 流出口
21 第1ポンプ室
22 第2ポンプ室
23 駆動軸
24 従動軸
25 軸受
26 駆動ギヤ
27 従動ギヤ
28 隔壁
29 フレーム
31 第1駆動モータ
32 第2駆動モータ
33 カップリング
34 第1ギヤ室
35 第2ギヤ室
41 第1プレート
42,43 凹溝
42a、43a 一端部
44 流出口
45 貫通孔
47 ネジ挿通孔
48、49 凹溝
48a、49a 一端部
50 ネジ孔
51 第2プレート
52 ネジ孔
53 中心ノズル
54 基部
55 テーパ部
56 先端部
57 吐出口
58 環状溝
59 シールリング
60 フランジ
61 ネジ部
62 面取り部
63 環状ノズル
64 基部
65 雄ネジ部
66 雌ネジ部
68 先端部
69 吐出口
70 通路
71 ベアリング
72 環状凹部
75 回転体
76 リング板
77 円筒部
78 環状溝
79 シール材
80 円形開口
81 切欠き部
82 ベルト
83 プーリ
84 押えローラ
85 第3モータ
90 チョコレート
91 棒状本体
92 線状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料供給手段に連結されたケーシング内に、第1軸と、第2軸とを平行に配設し、前記第1軸には複数の第1ギヤを所定間隔で装着し、前記第2軸には複数の第2ギヤを所定間隔で装着して、対応する前記第1ギヤと前記第2ギヤとを歯合させ、かつ、軸方向に隣接する第1ギヤ及び第2ギヤ同士の間に隔壁を配置して、複数のギヤ室を形成し、各ギヤ室に連通する複数の流出口を設けたギヤポンプを2つ並設し、
前記ギヤポンプのうち、第1のギヤポンプには、第1の食品素材を供給し、第2のギヤポンプには、第2の食品素材を供給し、
第1の食品素材を前記第1のギヤポンプの各流出口に連通された複数の中心ノズルから押出すと同時に、第2の食品素材を前記第2のギヤポンプの各流出口に連通された、前記中心ノズルを囲む環状ノズルに供給し、前記環状ノズルの吐出口を覆うように配置されたリング板の内周切欠き部を通して押出すことにより、
前記中心ノズルから押出されて棒状に成形された第1の食品素材の外周に、前記リング板の切欠き部から押出された第2の食品素材を線状に付着させることを特徴とする食品の押出成形方法。
【請求項2】
前記リング板を回転させて、前記第2の食品素材を螺旋状に付着させる請求項1記載の食品の押出成形方法。
【請求項3】
前記第1の食品素材及び前記第2の食品素材が、色違いの油脂性菓子生地である請求項1又は2記載の食品の押出成形方法。
【請求項4】
前記第1軸が駆動軸であり、該駆動軸に装着された第1ギヤが駆動ギヤをなし、前記第2軸が従動軸であり、該従動軸に装着された第2ギヤが従動ギヤをなす請求項1〜3のいずれか1つに記載の押出成形方法。
【請求項5】
並設された第1のギヤポンプと、第2のギヤポンプとを備え、
前記第1のギヤポンプ及び前記第2のギヤポンプは、原料供給手段に連結されたケーシングと、このケーシング内に平行に配設された第1軸及び第2軸と、前記第1軸に所定間隔で装着された複数の第1ギヤと、前記第2軸に所定間隔で装着されて前記第1ギヤの対応するものに歯合する複数の第2ギヤと、軸方向に隣接する第1ギヤ及び第2ギヤ同士の間に配置された隔壁によって画成された複数のギヤ室と、各ギヤ室に連通するようにそれぞれ形成された複数の流出口とを有しており、
前記第1のギヤポンプの各流出口に連通して、中心ノズルが取付けられ、前記第2のギヤポンプの各流出口に連通して、前記中心ノズルを囲む環状ノズルが取付けられ、かつ、前記環状ノズルの吐出口を覆うように配置されて内周に切欠き部を有するリング板が設けられていることを特徴とする食品の押出成形装置。
【請求項6】
前記リング板に回転駆動機構が設けられている請求項5記載の食品の押出成形装置。
【請求項7】
前記第1のギヤポンプ及び前記第2のギヤポンプの前記流出口に当接する第1のプレートと、該第1のプレートに重ねられた第2のプレートとを有し、
前記第1のプレートは、前記第1のギヤポンプの前記流出口に連通する凹溝と、この凹溝の端部に形成された流出口と、前記第2のギヤポンプの前記流出口に連通する貫通孔とを有し、前記凹溝の流出口には、前記中心ノズルの基端部が連結され、前記中心ノズルの先端部は、前記第2のプレートに設けられた挿通孔を通して突出されており、
前記第2のプレートは、前記第1のプレートの前記貫通孔に連通する凹溝と、この凹溝の端部に設けられた前記挿通孔とを有し、前記環状ノズルの基端部が前記挿通孔に連結され、前記中心ノズル外周と前記挿通孔内周との間隙に連通している請求項5又は6記載の食品の押出成形装置。
【請求項8】
第1のギヤポンプの第1ギヤ、第2ギヤ及び隔壁の厚さと、第2のギヤポンプの第1ギヤ、第2ギヤ及び隔壁の厚さとを変えることにより、第1のギヤポンプのギヤ室の容積と、第2のギヤポンプのギヤ室の容積とが異なるようにした請求項5〜7のいずれか1つに記載の食品の押出成形装置。
【請求項9】
前記第1軸が駆動軸であり、該駆動軸に装着された第1ギヤが駆動ギヤをなし、前記第2軸が従動軸であり、該従動軸に装着された第2ギヤが従動ギヤをなす請求項5〜8のいずれか1つに記載の押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−158282(P2006−158282A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353826(P2004−353826)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】