説明

食品生産施設

【課題】簡易な構成で効果的に害虫の侵入を防ぐことができる食品生産施設を提供する。
【解決手段】外部との出入り口が設けてある第1の暗室と、前記第1の暗室との出入り口が形成された仕切り壁を介して前記第1の暗室に隣接する第2の暗室と、を備えた出入り部と、食品生産設備が設置してある食品生産室を備えた食品生産部と、を備えており、前記第第2の暗室には、前記食品生産部との出入り口が設けてあり、前記第2の暗室内の気温は前記第1の暗室内の気温より低く設定されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構造で害虫の侵入を効果的に防ぐことができる食品生産施設に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、食品の安全性に対する消費者の要求の高まりと共に、農作物に関して言えば、健康志向と相まって無農薬作物に対する需要が増加している。このため、人工光を利用した閉鎖型の植物栽培施設を利用した野菜工場が注目されている。
【0003】
しかしながら、このような植物栽培施設は昼夜を問わず照明装置から光を照射して植物を栽培するので、正の走光性を有する害虫を誘引してしまうという問題がある。このような害虫が植物栽培施設に侵入すると当該害虫が病原菌を媒介して、施設内の植物が病原菌に汚染される恐れがあるが、施設内の作業員及び出荷された植物を食する消費者への安全を確保する観点から、殺虫剤の使用は避けることが望ましい。
【0004】
特許文献1には、ハウスに出入り用暗室を設けて害虫の侵入を阻止することが開示されているが、単に暗室を設けただけでは、ひとたび害虫が暗室内に侵入してしまうと、ハウス内部への害虫の侵入を拒むことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−125481
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、簡易な構造で効果的に害虫の侵入を防ぐことができる食品生産施設を提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る食品生産施設は、外部との出入り口が設けてある第1の暗室と、前記第1の暗室との出入り口が形成された仕切り壁を介して前記第1の暗室に隣接する第2の暗室と、を備えた出入り部と、食品生産設備が設置してある食品生産室を備えた食品生産部と、を備えており、前記第第2の暗室には、前記食品生産部との出入り口が設けてあり、前記第2の暗室内の気温は前記第1の暗室内の気温より低く設定されていることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、外部との出入り口が第1の暗室に設けられていることにより、正の走光性を有する害虫が食品生産施設内に侵入しにくくなり、仮に外部との出入り口から第1の暗室内に害虫が侵入しても、害虫が食品生産部内に侵入するためには、第2の暗室を通過することが必要であり、前記第2の暗室内の気温は前記第1の暗室内の気温より低く設定されているので、第2の暗室内で害虫の活動を低下させることができ、その奥に位置する食品生産室に害虫が侵入することを効果的に阻止することができる。
【0009】
また、外部との出入り口から第1の暗室内に害虫が侵入しても、害虫の直進を阻み、それ以上先への侵入を阻止するために、前記外部との出入り口は、前記第1の暗室と前記第2の暗室との仕切り壁に設けられた出入り口に対向する位置を避けて設けられていることが好ましい。
【0010】
前記出入り部が、食品出荷用である場合、出荷を控えた食品を鮮度を維持しつつ貯留することができるように、前記第2の暗室との出入り口が形成された仕切り壁を介して前記第2の暗室に隣接する冷温貯留室を更に備えていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る食品生産施設は、食品を生産するための施設であれば特に限定されないが、害虫の侵入を阻止することにより、それに媒介される病原菌の侵入も阻止でき、施設内において無農薬での植物の栽培が可能となることより、食用の植物栽培施設として好適である。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明によれば、施設内への害虫の侵入を害虫の習性を利用して効果的に防ぐことができるので、殺虫剤の使用が不要となり、害虫が媒介する病原菌が施設内に持ち込まれることも防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る植物栽培施設1は、食用の植物を人工光を利用して栽培するための施設であって、図1に示すように、植物栽培部2と、作業員用出入り部3と、出荷用出入り部4と、を備えたものである。
【0015】
以下に各部を詳述する。植物栽培部2は、植物に人工光を照射して水耕栽培を行うための領域であって、当該植物栽培部2内には、上下方向に多段に積み上げた栽培棚を備える栽培台が複数設置されており、各栽培棚の上部には植物に光を照射するための人工照明設備が設けてあり、植物栽培部2全体の温度・湿度条件が植物の生育に適するものに維持されている。なお、本実施形態では、植物栽培部2全体が植物栽培室として用いられているが、植物栽培部2内には植物栽培室以外に、更に、作業員の居室や、種子や試薬等が保管されている倉庫や、液肥の調製等を行う準備室等が設けられていてもよい。
【0016】
作業員用出入り部3は、外部との出入り口33が設けてある常温暗室31と、出入り口34が設けられた仕切り壁を介して常温暗室31に隣接する低温暗室32と、からなり、低温暗室32には植物栽培部2との出入り口35が設けられている。各暗室31、32内の気温は、害虫の活動が活発になる春〜初秋においては、例えば、常温暗室31内は外気温と略等しく、低温暗室32内は16℃程度に設定されている。
【0017】
外部との出入り口33、常温暗室31と低温暗室32との出入り口34、及び、低温暗室32と植物栽培部2との出入り口35は、いずれも相互に対向しておらず、他の出入り口33、34、35に対向する位置を避けて設けられている。
【0018】
各出入り口33、34、35には開閉自在な扉が設けてある。各出入り口33、34、35に設けた扉は、害虫の侵入を防ぐために、同時に開放しないことが好ましい。
【0019】
また、同一の暗室31、32、41、42や冷温貯留室43に設けられた複数の出入り口(出入り口33及び34、出入り口34及び35、出入り口44及び45、出入り口45、46及び47、出入り口47及び48)を同時に開放するという人為的ミスをより確実に防ぎ、出入り口の開閉を厳密に管理するためには、インターロック機構を採用し、同一の暗室31、32、41、42や冷温貯留室43に設けられた複数の出入り口を同時に開放することはできず、いずれか1つの出入り口の扉しか開けられないように設定してもよい。なお、このようなインターロック機構を採用した場合であっても、上記の設定を解除することにより、複数の出入り口を同時に開放することが可能であるのは言うまでもない。
【0020】
出荷用出入り部4は、外部との出入り口44が設けてある常温暗室41と、出入り口45が設けられた仕切り壁を介して常温暗室41に隣接する低温暗室42と、出入り口47が設けられた仕切り壁を介して低温暗室42に隣接する冷温貯留室43と、からなり、低温暗室42及び冷温貯留室43には、それぞれ植物栽培部2との出入り口46、48が設けられている。各暗室41、42内の気温は、害虫の活動が活発になる春〜初秋においては、常温暗室41内は外気温と略等しく、低温暗室42内は16℃程度に設定されており、冷温貯留室43内の気温は8℃程度に設定されている。
【0021】
外部との出入り口44、常温暗室41と低温暗室42との出入り口45、低温暗室42と植物栽培部2との出入り口46、低温暗室42と冷温貯留室43との出入り口47、及び、冷温貯留室43と植物栽培部2との出入り口48は、いずれも相互に対向しておらず、他の出入り口44、45、46、47、48に対向する位置を避けて設けられている。
【0022】
各出入り口44、45、46、47、48には開閉自在な扉が設けてある。各出入り口44、45、46、47、48に設けた扉は、害虫の侵入を防ぐために、同時に開放しないことが好ましい。
【0023】
このような実施形態に係る植物栽培施設1であれば、外部との出入り口33、44が常温暗室31、41に設けられていることにより、正の走光性を有する害虫が施設1内に侵入しにくくなり、仮に外部との出入り口33、44から常温暗室31、41内に害虫が侵入しても、害虫が植物栽培部2内に侵入するためには、低温暗室32、42を通過することが必要であるので、低温暗室32、42内で害虫の活動を低下させることができ、その奥に位置する植物栽培部2に害虫が侵入することを効果的に阻止することができる。
【0024】
また、仮に外部との出入り口33、44から常温暗室31、41内に害虫が侵入した場合であっても、外部との出入り口33、44、常温暗室31、41と低温暗室32、42との出入り口34、45、低温暗室32、42と植物栽培部2との出入り口35、46、低温暗室42と冷温貯留室43との出入り口47、及び、冷温貯留室43と植物栽培部2との出入り口48は、他の出入り口33、34、35、44、45、46、47、48に対向する位置を避けて設けられているので、害虫は直進できず、それ以上奥への侵入が効果的に妨げられる。
【0025】
更に、出荷用出入り部4には冷温貯留室43が設けてあるので、出荷を控えた植物をしばらくここに留め置き、生体活動が低下した状態にすることにより、輸送中に植物が劣化することを防ぎ、高い鮮度を保ったまま消費者に届けることができる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0027】
例えば、各暗室31、32、41、42は、更に複数の暗室に仕切られていてもよい。
【0028】
常温暗室31、41には、外部との出入り口33、44近辺に虫忌避ランプが設けてあってもよい。
【0029】
各出入り口33、34、35、44、45、46、47、48に設けてある扉は二重扉であってもよい。
【0030】
本発明に係る食品生産施設は、植物を栽培する施設に限られず、他の生鮮食料品や加工食品を生産するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る植物栽培施設の模式的平面図。
【符号の説明】
【0032】
1・・・植物栽培施設(食品生産施設)
3・・・作業員用出入り部
4・・・出荷用出入り部
31、41・・・常温暗室(第1の暗室)
32、42・・・低温暗室(第2の暗室)
33、44・・・外部との出入り口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との出入り口が設けてある第1の暗室と、前記第1の暗室との出入り口が形成された仕切り壁を介して前記第1の暗室に隣接する第2の暗室と、を備えた出入り部と、
食品生産設備が設置してある食品生産室を備えた食品生産部と、を備えており、
前記第第2の暗室には、前記食品生産部との出入り口が設けてあり、
前記第2の暗室内の気温は前記第1の暗室内の気温より低く設定されていることを特徴とする食品生産施設。
【請求項2】
前記外部との出入り口は、前記第1の暗室と前記第2の暗室との仕切り壁に形成された出入り口に対向する位置を避けて設けられている請求項1記載の食品生産施設。
【請求項3】
前記出入り部は、前記第2の暗室との出入り口が形成された仕切り壁を介して前記第2の暗室に隣接する冷温貯留室を更に備えている請求項1又は2記載の食品生産施設。
【請求項4】
食用植物栽培施設である請求項1、2又は3記載の食品生産施設。

【図1】
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【公開番号】特開2010−161948(P2010−161948A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5087(P2009−5087)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(505302502)株式会社フェアリーエンジェル (11)
【Fターム(参考)】