説明

食品製造装置

【課題】
粘性の低い食品原料を成形する際に、清掃作業などの回数をできるだけ少なくして生産性を向上できる食品製造装置を提供する。
【解決手段】
食品原料34を貯留する原料溜り部29をドラム2内に設け、このドラム2のステンシル3に形成された型孔3aに食品原料34を充填し、スクレーパ28ですり切ると共に、その外側に接触する搬送ベルト1に、型孔3aに充填された食品原料34を貼着させて成形品を得る。この際、型孔3aに充填された食品原料34が、保温プレート26とステンシル3の間に入りこみ、ステンシル3の外周面に食品原料34が付着するが、この付着した食品原料34を、ステンシル3に圧接された弾性板50により擦り取ることにより、搬送ベルト1に食品原料34が転写されることを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチョコレート生地などの流動性を有する食品生地を所定形状に成形するための食品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流動性を有する食品原料を、円盤形など予め決められた形状に連続形成する装置として、種々のものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1(実開昭53−144897号公報)、特許文献2(実開昭53−116793号公報)には、食品原料を搬送するベルト上に、複数の型孔が穿設されているドラムを配設し、このドラムを搬送ベルトと接して移動させながら、このドラムの接触部位に穿設されている型孔に、その内周側から食品原料を充填し、この型孔からはみ出た食品原料を掻き取り、ドラムが搬送ベルトから離脱したときに、搬送ベルト上に型孔を通り所定形状に成形された食品原料を貼着させる技術が開示されている。
【0004】
また、同様に、特許文献3(特開平9−289865号公報)には、上述したドラムをエンドレスベルトに代え、このエンドレスベルトに穿設されている複数の型孔からはみ出た菓子原料を搬送ベルトに順次貼着させる技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭53−144897号公報
【特許文献2】実開昭53−116793号公報
【特許文献3】特開平9−289865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した各文献に開示されている技術では、例えばチョコレート生地のような粘性の低い食品原料を用いる場合、型孔を有する回転体の外周面へ食品原料が流れ込んで付着し、付着した食品原料が搬送ベルトへ転着されて、搬送ベルトが汚れてしまうという問題があった。
【0006】
このため、上記従来技術では、回転体の外周面や搬送ベルトに付着した食品原料を定期的に除去するために、ラインを止めて清掃作業を行う必要が生じ、生産性を低下させると共に、食品原料の無駄な消費を招くという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、例えばチョコレート生地のような粘性の低い食品原料を成形する際に、清掃作業などの回数をできるだけ少なくして生産性を向上できると共に、原料の無駄な消費を少なくすることができる食品製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の食品製造装置は、回転中心が水平に支持され、周面に複数の型孔が形成された回転体と、この回転体の回転中心から垂下して回転体内周面に摺接するスクレーパと、前記回転体の回転中心から垂下した位置から周方向片側の所定の高さまで覆うカバーと、前記回転体、前記スクレーパ及び前記カバーで囲まれた空間部に設けられた食品原料溜り部と、この食品原料溜り部に食品原料を供給する供給手段と、前記回転体の下面外周に接触する搬送ベルトとを備え、前記回転体の型孔に充填された食品原料を前記スクレーパですり切りつつ、前記搬送ベルトに貼着させて成形するようにした食品製造装置において、前記回転体の回転軸と平行に配置され、前記回転体の外周面に圧接される弾性板を、前記カバーの下端部に設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の食品製造装置によれば、食品供給手段によって食品原料溜り部に食品原料を供給し、回転体を食品原料溜り部からスクレーパに向かう方向に回転させることにより、食品原料溜り部において回転体の型孔に充填された食品原料が、スクレーパですり切られて搬送ベルトに貼着され、型孔の形状をした一定厚さの成形品として搬送ベルト上に載って送出させることができる。そして、回転体の回転軸と平行に配置され、回転体の外周面に圧接される弾性板を、カバーの下端部に設けたので、回転体外周面に付着した食品原料が弾性板によって擦り取られ、搬送ベルトに付着することが防止されるので、回転体や搬送ベルトの清掃作業の回数を減らすことができ、生産性を向上させることができると共に、食品原料の無駄な消費を低減することができる。
【0010】
本発明の食品製造装置においては、前記弾性板の材料が前記回転体の材料よりもやわらかい材料であることが好ましい。これによれば、弾性板の材料が回転体の材料よりもやわらかい材料であるため、弾性板によって回転体が削られたり、切子(金属くず)が発生することがない。
【0011】
また、前記回転体がステンレスからなり、前記弾性板が、リン青銅、ベリリウム銅,チタン銅から選ばれた1種からなる金属板であることが好ましい。これによれば、弾性板が適度な圧接力で回転体の周面に隙間無く圧接されるため、回転体の回転動作に支障をきたすことなく、外周面に付着した食品原料を効果的に擦り取ることができる。
【0012】
また、前記弾性板を前記回転体に当てる力が0.6〜15.0g/mmであることが好ましい。0.6〜15.0g/mmの力の範囲で弾性板を回転体に当てることで、弾性板が切子(金属くず)を生じることなく、回転体外周面についた食品を効率よく掻き取ることができる。
【0013】
また、前記食品原料がチョコレート生地であることが好ましい。チョコレート生地は粘性が比較的低く、回転体とカバーとの隙間に入り込みやすいので、本発明の製造装置が特に有効である。
【0014】
また、前記周方向片側の所定の高さまで覆うカバーが前記回転体の周面に施されていることが好ましい。カバーを回転体の周面に施すことで、食品原料溜り部の容積を小さくすることができ、食品原料の自重による圧力を軽減し、引いては食品原料の漏れを軽減することができる。このことは、食品原料がチョコレート生地のように比較的粘性が低い場合に有利である。
【0015】
また、前記弾性板の板厚が0.2〜0.5mmであることが好ましい。これによれば、弾性板が適度な圧接力で回転体の周面に隙間無く圧接されるため、回転体の回転動作に支障をきたすことなく、外周面に付着した食品原料を効果的に擦り取ることができる。
【0016】
また、前記回転体の板厚が0.8〜4.0mmであることが好ましい。回転体の板厚は、型孔に埋め込まれた食品生地が搬送ベルト上に貼着されて成形されるときの厚さに影響を与えるが、この厚さが上記範囲よりも薄いと、一定の厚さの成形品を安定して生産することが難しくなり、上記範囲よりも厚い場合には、回転体の型孔に埋め込まれた食品生地が自重によって型孔から離れて搬送ベルト上に落下するため、回転体と搬送ベルトを接触させる必要性がなくなり、搬送ベルトの汚染の問題があまり生じないので、本発明の装置を適用する必要性が少なくなる。
【0017】
更に、本発明の食品製造装置においては、前記食品原料溜り部に貯留された食品原料の液面レベルを検出するレベル検出手段を設け、このレベル検出手段によって検出された液面レベルが一定範囲となるように、前記供給手段による食品原料の供給量を制御するように構成することが好ましい。
【0018】
これによれば、レベル検出手段により、食品原料溜り部に貯留された食品原料の液面レベルを検出し、この液面レベルが一定範囲となるように供給手段による食品原料の供給量を制御することができるので、型孔を通して搬送ベルト上に貼着されるときの食品原料の圧力を一定の範囲にして、成形品の厚さをできるだけ一定にすることができる。
【0019】
また、前記回転体の回転位置を前記型孔の通過によって検出するタイミング用近接スイッチを設け、前記レベル検出手段による液面レベルの検出を、前記タイミング用近接スイッチによって前記型孔が通過するタイミングに合わせて、前記回転体の外側から前記回転体の型孔を通して行うように構成することが好ましい。これによれば、レベル検出装置を回転体の外側に配置して型孔を通して液面レベルを測定することが可能となる。
【0020】
また、前記スクレーパを回動させる手段を設けると共に、前記搬送ベルトに貼着された食品原料の厚さを検出する厚さ検出センサを設け、前記厚さ検出センサによって検出された厚さに応じて前記スクレーパを回動させて、前記食品原料の厚さが一定範囲になるようにすり切り位置を制御するように構成することが好ましい。これによれば、搬送ベルト上に送出される成形品の厚さをリアルタイムで測定し、その厚さに応じてスクレーパを回動させてすり切り位置を制御するため、厚さの変動を直ちに是正して一定の厚さに維持することができ、成形品の厚さのばらつきをより小さくすることができると共に、製造ロスを少なくすることができる。
【0021】
更に、前記回転体の回転位置を前記型孔の通過によって検出するタイミング用近接スイッチを設け、前記厚さ検出センサによる厚さの検出を、前記タイミング用近接スイッチによって前記回転体の型孔から前記搬送ベルトに食品原料が貼着されるタイミングに合わせて行うように構成することが好ましい。これによれば、回転体から搬送ベルト上に貼着されて送出される成形品と厚さ検出センサの検出スポットとが整合するように、検出タイミングを合わせることができる。
【0022】
更に、前記カバーが保温プレートをなしていることが好ましい。これによれば、例えばチョコレートのように温度によって粘度が変化したり、固化したりする食品原料であっても、温度を一定に維持することにより、粘度を一定に保ち、固化を防ぐことができる。
【0023】
更に、前記ドラムの周囲を下方開口を残して囲むケースを設け、このケース内に温風を吹込む温風供給手段を設けることが好ましい。これによれば、例えばチョコレートのように温度によって粘度が変化したり、固化したりする食品原料であっても、回転体等に付着して移動する間に粘度が変化したり固化したりすることを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明の食品製造装置によれば、例えばチョコレート生地のような粘性の低い食品生地を成形する際に、食品生地が回転体の外周面に回り込んで付着しても、回転体の回転軸と平行に配置され、回転体の外周面に圧接される弾性板を、カバーの下端部に設けたことにより、回転体外周面に付着した食品原料が弾性板によって擦り取られ、搬送ベルトに付着することが防止されるので、回転体や搬送ベルトの清掃作業の回数を減らすことができ、生産性を向上させることができると共に、食品原料の無駄な消費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は食品製造装置の要部分解斜視図、図2は食品製造装置の正面図、図3は食品製造装置の側面図、図4は図3のIV-IV断面図、図5は図2のV-V断面図、図6は食品原料の厚さを計測する方法を示す説明図、図7は弾性板、回転体、ベルトの位置関係を示す図2のV-V要部断面図である。図8は弾性板の板厚、幅、長さを示した概念図である。なお、この食品製造装置では、食品原料を薄板状に形成する。
【0026】
図1〜3に示すように、この食品製造装置は搬送ベルト1を有している。この搬送ベルト1の上流側に、本発明における回転体としてのドラム2の下面が密着され、また、下流側がクールトンネル(図示せず)内に挿通されている。ドラム2から供出されて搬送ベルト1に貼着された薄板状の食品原料は、クールトンネルを通過する際に固化されて、食品菓子となる。
【0027】
また、搬送ベルト1の上流側には、図7に示すように、ローラ1aとその斜め下方にローラ1bが配置され、これらローラの外周に張設するように搬送ベルト1が巻きつけられ、ローラの回転により搬送ベルト1が上流から下流に向けて食品原料を搬送する。ローラ1a、1bのように、半径の小さいローラを用いることにより、搬送ベルト1の回転半径が小さくなり、ローラが一つである場合よりも、ドラム2の下面に搬送ベルト1をより密着させることができる。
【0028】
なお、搬送ベルト1は、本発明の食品製造装置が稼動するときにドラム2の下面に密着する必要があるものの、製造をしていないときには、搬送ベルト1とドラム2を密着から開放することもできる。
【0029】
図4を併せて参照すると、ドラム2は、薄板を円筒状に巻いて形成されたステンシル3と、このステンシル3の両端を保持するサイドカバー4a,4bとを有し、一方のサイドカバー4aが、ドラム2の中心に挿通された支軸5の先端部に軸受け6を介して回動自在に支持されている。また、他方のサイドカバー4bは、支軸5に外挿されている駆動中空軸7の先端面に固設されている。この駆動中空軸7は、架台12に立設されている支柱13に固設された支持プレート11に水平に取付けられた外筒9内に挿入され、軸受け10を介して回動可能に支持されている。したがって、ドラム2は、水平配置された駆動中空軸7及び支軸5を介して、支持プレート11に回転可能に支持されている。
【0030】
また、ステンシル3に、複数の型孔3aが一定の間隔を開けて複数穿設されている。なお、本実施形態では、型孔3aを丸形にしているが、形状はこれに限定されるものではなく、角形、星形などであっても良く、更に、異なる形状の型孔3aが複数穿設されていても良い。なお、角形や、星形等のように形状に角がある場合、食品の入り込み易さを考慮して角にrをつける方が好ましい。
【0031】
また、駆動中空軸7にチェーンスプロケット14が軸着されており、このチェーンスプロケット14が支柱13に固設されているモータ15にチェーン16を介して連設されている(図2参照)。そして、モータ15が回転すると、このモータ15にチェーン16を介して連設するチェーンスプロケット14が回転し、このチェーンスプロケット14を軸着する駆動中空軸7を介してドラム2が回転する。このドラム2の回転方向は、搬送ベルト1と同じ方向であり、しかも、ドラム2の回転速度と搬送ベルト1の移動速度とが同じか、或いは搬送ベルト1の移動速度が若干速くなるように設定される。
【0032】
更に、支軸5の基端側に回動レバー17の基部が固設され、この回動レバー17の、前記ドラム2の回転方向側の先端側面に、モータの回転によって軸方向移動するネジ軸21が当接している。このネジ軸21は、支柱13にブラケット19を介して固設されている可逆性モータ20の回転軸に、継手20aを介して連結されており、モータの回転方向に係合し、軸方向にはスライド可能である。また、ネジ軸21は、図示しないフレームに設けられたナットに螺挿されている。
【0033】
したがって、モータ20が正逆回転すると、継手20aを介してネジ軸が回転し、軸方向に進退移動するようになっている。レバー17は、ドラム2の回転に伴って、支軸5を介して同方向に回転しようとするが、前記ネジ軸21が当接していることにより、その回動は制止されている。一方、ネジ軸21が軸方向に移動すると、それとともにレバー17が回動し、支軸5も回動する。
【0034】
また、ドラム2内の支軸5の外周に、支持軸22が固着されており、この支持軸22の両端に対向一対のサイドプレート24a,24bが軸着されている。この両サイドプレート24a,24bの外周がシールリング25を介して、ステンシル3の内周に摺接されている。なお、このシールリング25が摺接されているステンシル3の位置に型孔3aは穿設されていない。
【0035】
更に、図3、図5に示すように、このステンシル3の外周の、下部から反時計回り方向へおおよそ90°開いた位置までの間に、保温プレート26が摺接されている。また、この保温プレート26の両端が支柱13から延出する外枠(図示せず)に固設されている。なお、この保温プレート26が、本発明における、ドラム2の回転中心から垂下した位置から周方向片側の所定の高さまで覆うカバーをなしている。また、このカバーは、保温プレート26だけからなる必要はなく、保温プレートに他のプレート等の部材を固着して保温プレートと一体にしてカバーとすることもできる。
【0036】
この保温プレート26は、アルミニウムなど、比較的熱伝導率の高い材質で形成されており、その内部にジャケット27(図1参照)が形成されている。保温プレート26の一側に、ジャケット27に連通する流入口27aと流出口27bとが形成されている。なお、図示しないが、この流入口27aと流出口27bとが、循環ポンプとヒータなどの温水供給源を介装する循環パイプに接続されている。
【0037】
更に、両サイドプレート24a,24b間にスクレーパ28が配設されている。図4、図5に示すように、スクレーパ28は、その両側を両サイドプレート24a,24bに密着された状態で固設されており、また、スクレーパ28の下端がドラム2の回転中心から垂直方向へ延出されている。更に、このスクレーパ28の下端にブレード28aが固設され、このブレード28aの先端がステンシル3の内周に摺接されている。
【0038】
スクレーパ28は、その両端が両サイドプレート24a,24bに固定されているため、この両サイドプレート24a,24bと一体となって回転する。この両サイドプレート24a,24bが支持軸22を介して支軸5に固設されているため、この支軸5の軸端に固設されている回動レバー17を回動させることで、スクレーパ28を回動させることができる。この場合、図4に示すように、スクレーパ28の下端に設けたブレード28aが垂直方向へ延出された状態にあるときは、ブレード28aの下端がステンシル3の内面に摺接され、また、ステンシル3の外周の、図5における下側右半分に保温プレート26が摺接されているため、この保温プレート26、両サイドプレート24a,24b、スクレーパ28で囲まれた領域に原料溜り部29が形成される。
【0039】
この実施形態においては、前記可逆性モータ20、継手20a、ネジ軸21、回動レバー17等がスクレーパ28の回動手段を構成しているが、スクレーパ28を回動させる手段としては、他の構造からなる駆動機構も採用可能である。
【0040】
この原料溜り部29の上方でステンシル3の外側に、支柱13から延出する外枠(図示せず)に固設されているホッパー30が対設されている。更に、図1に示すように、このホッパー30の上部開口端に、原料供給ホース31の吐出口と温風ホース32の開口端とが臨まされている。原料供給ホース31は、供給手段としての原料供給ポンプ33に連通されている。この原料供給ポンプ33は原料タンク(図示せず)に貯留されている、所定の粘度に調整された食品原料34を吸い上げるもので、原料タンクから吸い上げられた食品原料34は、原料供給ホース31からホッパー30に供給され、ホッパー30からステンシル3に穿設されている型孔3aを経て原料溜り部29に貯留される(図5参照)。
【0041】
また、温風ホース32は、温風供給手段としての図示しない温風ブロワに連通されており、この温風ブロワから送給される温風を、ホッパー30を介してドラム2内に送風するようになっている。更に、図2,3に示すように、ドラム2の周囲は下方開口を除いてケース41で覆われており、このケース41の前面側にも図示しない温風ホースが連結されていて、温風がケース41の前面からも導入されるようになっている。こうして、ドラム2内外の雰囲気を、食品原料34の流動性を維持するに最適な温度に設定することができる。
【0042】
更に、図3、図5に示すように、ステンシル3の外周で、保温プレート26の上方に、外側スクレーパ35が摺接されている。この外側スクレーパ35は、ステンシル3に穿設されている型孔3aからはみ出た食品原料34をステンシル3の内部へ戻すものである。
【0043】
また、ホッパー30の内壁に、レベル検出手段としてのレベルセンサ36が固設されている。このレベルセンサ36は、原料溜り部29に貯留される食品原料34の液面レベルを検出する非接触式センサであり、光学式や超音波式等がある。レベルセンサ36が光学式の場合、このレベルセンサ36には発光部と受光部とが設けられており、発光部から食品原料34の液面に照射された検出信号としての光の反射光を受光部で受光することで、液面レベルを検出する。一方、レベルセンサ36が超音波式の場合、このレベルセンサ36から出射されて液面から反射された検出信号である超音波を受波することで、液面レベルを検出する。
【0044】
また、ホッパー30の前方でステンシル3の外周の位置にタイミング用近接スイッチ37が配設されている。このタイミング用近接スイッチ37はステンシル3に穿設されている型孔3aの通過を、接触式或いは非接触式により検出するもので、レベルセンサ36から検出信号(光或いは超音波等)を発信させるタイミングを設定して、検出信号が型孔3aを透過できるようにするものである。
【0045】
更に、このタイミング用近接スイッチ37は、ドラム2の回転を停止させるタイミングを決定するリミットスイッチを兼用している。すなわち、食品製造装置の動作を停止させたとき、ドラム2の回転は直ちに停止されず、タイミング用近接スイッチ37によってタイミングをとることにより、ドラム2の回転中心を通る鉛直方向が、ステンシル3に穿設されている型孔3a,3a間、すなわち、型孔3aのない部位に必ず臨まされる位置となるように設定されている。なお、スクレーパ28も、その先端に設けられているブレード28aが、必ず鉛直方向に位置した状態で停止されるように設定されている。
【0046】
その結果、ドラム2の回転が停止されると、ブレード28aは必ず、ステンシル3に穿設されている型孔3a,3a間の内周に摺接されるので、原料溜り部29に食品原料34が保持され、外部に漏出することはない。なお、原料溜り部29に貯留されている食品原料34は、保温プレート26に形成されているジャケット27を流れる温水によってほぼ一定温度に保温されており、したがって、食品原料34は流動性が一定状態に保たれている。
【0047】
また、図1,6に示すように、ステンシル3の前方に一対の厚さ検出センサ38,39が、支柱から延出する外枠(図示せず)に固設された状態で配列されている。この厚さ検出センサ38,39は、それぞれから出射され反射した検出信号(光或いは超音波等)を受信することで、型孔3aによって所定形状に成形された食品原料34の板厚を測定するものである。すなわち、一方の検出センサ38が成形された食品原料34の上面とセンサ38までの距離を検出し、他方の検出センサ39がベルト1の上面とセンサ39までの距離を検出して、両者の距離の差を求めることによって、成形品の厚さを算出するようになっている。そして、図6に示すように、食品原料34の板厚は、P1、P2、P3の3箇所測定する。
【0048】
そして、本発明の特徴とする部分は、図1、7に示すように、保温プレート26の下端部に沿って弾性板50を取付け、この弾性板50をドラム2のステンシル3の外周面に圧接させたことにある。この実施形態の場合、弾性板50は、0.4mmの厚さのリン青銅の板からなり、保温プレート26の下端部に沿ってドラム2の支軸5と平行に配置され、押さえ板51を介してボルト52によって保温プレート26に固定され、弾性板50の一側辺がステンシル3の外周面に弾性的に圧接されている。
【0049】
なお、弾性板50としては、回転体の材料よりもやわらかい材料であることが好ましく、リン青銅、ベリリウム銅,チタン銅から選ばれた1種がより好ましく用いられ、リン青銅が特に好ましく用いられる。これらの弾力性を有する金属板を用いることで、ステンシル3に弾性板50が隙間なく圧接し、ステンシル3外周面に付着した食品原料34をより効果的に擦り取ることができる。
【0050】
また、弾性板50を、回転体であるドラム2のステンシル3に当てる力は、0.6〜15.0g/mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.4g/mmとする。
【0051】
この場合、弾性板50を回転体に当てる力(F)は、まず下記(I)、(II)式より荷重W(N)を求め、その後、荷重W(N)を下記(III)式に代入することで求めることができる。
【0052】
【数1】

【0053】
(式中、δは弾性板の最大たわみ(mm)、Lは弾性板の、回転体の周方向に沿った撓み可能な長さ(mm)、Wは荷重(N)、Eは弾性板の弾性係数(N/mm)、Iは断面2次モーメントを表す。)
ここで、Iは下記(II)式より求められる。
【0054】
【数2】

【0055】
(式中、bは弾性板の幅(mm)、hは弾性板の板厚(mm)、Iは断面2次モーメントを表す。)
【0056】
【数3】

【0057】
(式中、bは弾性板の、回転体の軸方向に沿った長さ(mm)、Wは荷重(N)、Fは弾性板を回転体に当てる力(g/mm)を表す。)
なお、上記式中の弾性板の最大たわみδ(mm)、弾性板の、回転体の周方向に沿った撓み可能な長さL(mm)、弾性板の幅b(mm)、弾性板の板厚h(mm)は、それぞれ図8のδ、L、b、hで示される値である。
【0058】
ここで、弾性板50の厚さbは、0.2〜0.5mmであることが好ましい。上記弾性板50の板厚bが、0.2mmより薄い場合は、弾性板50のステンシル3外周面への圧接力が不足し、ステンシル3外周面に付着した食品原料34を効果的に擦り取ることができず、0.5mmよりも厚い場合は、ドラム2の回動抵抗が増大するため好ましくない。
【0059】
一方、前記ステンシル3の板厚は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。ステンシル3の板厚は、成形される食品生地の厚さに反映されるものであるが、この厚さが0.8mmよりも薄いと、安定した成形が困難となる。また、4.0mmを超える場合には、型孔3aから自重で落下させて搬送ベルト1に載置することができるので、ステンシル3を搬送ベルト1に接触させる必要性が乏しくなり、搬送ベルト1に食品生地が転写されることを防止できるので、本発明の製造装置を適用する必要性が少なくなる。
【0060】
次に、上記食品製造装置を用いてチョコレート生地を製造する方法について説明する。
【0061】
チョコレート原料は、図示しない調温装置によって予めテンパリング処理された後、原料供給ホース31からホッパー30内に供給する。この場合、ホッパー30内に供給するチョコレート原料は、粘度80〜170ポイズに調整されたものであることが好ましく、粘度130〜150ポイズに調整されたものであることがより好ましい。
【0062】
なお、本発明において、チョコレートの粘度は、いわゆるB型粘度計を用いて測定することができるが、具体的には次の方法によって測定した値である。すなわち、粘度計としては、株式会社トキメック(本社:東京都大田区南蒲田2−16−46)製のViscometer(型式BL)を用いた。この粘度計を雰囲気温度31±1℃で一昼夜以上放置し、併せて測定で用いるロータ(ロータ番号No.4)も同じく一昼夜以上同じ雰囲気温度に放置した。試料チョコレートは、シードテンパリング処理若しくはマーブルテンパリング処理をし、又はテンパリング処理をせずに、測定温度である30℃にして、内径64mmの容器に約193ml注ぎ入れて、容器の内底面から60mmの高さになるようにした。この状態で、直ちに測定容器の試料中にロータを35mmの深さまで挿入し、回転数12rpmで3分間粘度を測定した。なお、測定に際して、ロータの周りにはガイドを取付けないようにした。
【0063】
こうして、ドラム2内に設けられている原料溜り部29に、テンパリングされたチョコレート原料34が貯留される。このとき、ドラム2の周辺がケース41に流入する温風によって保温され、原料溜り部29のステンシル3側が保温プレート26で覆われ、この保温プレート26に形成したジャケット27に温水が流されているため、ドラム2内のチョコレート原料34は所定の温度に保温されて、一定の流動性が保持される。なお、ドラム2内の温度は、28〜38℃に保たれることが好ましく、30〜36℃に保たれることが更に好ましい。
【0064】
そして、保温プレート26はステンシル3の外側に摺接されているため、保温プレート26に対向するステンシル3に穿設されている型孔3aにはチョコレート原料34が充填される。
【0065】
この状態で、モータ15の駆動によりドラム2を回転させると、原料溜り部29の型孔3aに充填されているチョコレート原料34が搬送ベルト1側へ移動される。そして、型孔3aが保温プレート26の先端面に達すると、ステンシル3の内周に配設されているスクレーパ28の下端に設けたブレード28aによって、余分なチョコレート原料34がすり切られる。したがって、スクレーパ28を通過した型孔3aには、丁度、この型孔3aを埋める形状、及び厚さのチョコレート原料34が充填されていることになる。
【0066】
また、このとき、ステンシル3の下面が搬送ベルト1に密着され、この搬送ベルト1がドラム2と、同方向へ同期された速度で移動され、或いはドラム2の回転速度よりも若干速い速度で移動されているため、この型孔3aに充填されているチョコレート原料34は搬送ベルト1に貼着されると共に型孔3aから剥離される。その結果、搬送ベルト1上には、型孔3aと同じ形状、厚さ、すなわち、型孔3aが円形の本形態では、円盤形のチョコレート原料34が貼着される。
【0067】
この場合、チョコレート原料を原料溜り部29に供給して、チョコレート原料のテンパリングから15分以内に搬送ベルト1に貼着させて成形するように管理することにより、チョコレート原料の粘度変動を防ぐことができ、それによって成形品の厚さをより一定にすることができる。
【0068】
ところで、保温プレート26はステンシル3の外側に摺接されているが、チョコレート原料34のような比較的粘度の低い食品生地の場合には、原料溜り部29の型孔3aに充填されているチョコレート原料34が保温プレート26とステンシル3の間に入り込み、ステンシル3の外周面にチョコレート原料34が付着する。
【0069】
しかしながら、本発明では、ステンシル3の外周面に圧接された弾性板50により、ステンシル3の外周面に付着したチョコレート原料34が擦り取られ、ステンシル3内部に押し戻されて、再利用される。このため、ステンシル3が搬送ベルト1に接触する時点では、ステンシル3の外周面にチョコレート原料34が付着しておらず、搬送ベルト1にチョコレート原料34が転写されることがない。その結果、ドラム2や搬送ベルト1の清掃作業の回数を減らすことができ、生産性を向上させることができると共に、チョコレート原料34の無駄な消費を低減することができる。
【0070】
また、この実施形態の製造装置によれば、以下のような作用によって、成形されるチョコレート菓子の厚さを一定に保つことができる。まず、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の残量が多いと、自重により型孔3aに充填されるチョコレート原料34の圧力が高くなる。一方、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の残量が少ないと、自重が軽くなるため、型孔3aに充填されるチョコレート原料34の圧力が低くなる。この圧力の変動によって成形されるチョコレートの厚さが変動することになる。
【0071】
したがって、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の残量は、常に一定に保持しておく必要がある。原料溜り部29に貯留されるチョコレート原料34は、ホッパー30から供給される。このホッパー30には、原料供給ポンプ33によりチョコレート原料34が連続的に供給されている。原料供給ポンプ33によるチョコレート原料34の単位時間当たりの供給量は、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の単位時間当たりの減少量を基準量として、常時はこの基準量で供給されるが、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料3の液面レベルが変動すると、所定の割合だけ増大又は減少されるようになっている。
【0072】
原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の液面レベルはレベルセンサ36により常時監視されている。レベルセンサ36はマイコンを内蔵しており、ホッパー30の前方に配設されているタイミング用近接スイッチ37がステンシル3に穿設されている型孔3aを検出し、その型孔3aがレベルセンサ36の下方を通過するタイミングをトリガとして、そのときのレベルセンサ36で検出したチョコレート原料34の液面レベルを読込む。このように、型孔3aがレベルセンサ36の下方を通過するタイミングをとって、レベルセンサ36から検出信号を発するようにしたことにより、検出信号がステンシル3の外周に阻害されることなく型孔3aを透過して、チョコレート原料34の液面レベルを精度良く検出することができる。
【0073】
レベルセンサ36は、検出した液面レベルと予め設定される液面上限レベルとを比較し、液面レベルが上限レベルを越えたときは、シーケンサを介して原料供給ポンプ33をローレベルモードで駆動させる。原料供給ポンプ33は、上記基準値の他に、供給量が基準量よりも数%増量されたハイモードと、供給量が基準量よりも数%減量されたローモードとに切換え可能であり、シーケンサからのローモード信号により、単位時間当たりのチョコレート原料34の供給量が減量される。
【0074】
そして、レベルセンサ36で検出したチョコレート原料34の液面レベルが予め設定した液面下限レベルに達したとき、シーケンサを介して原料供給ポンプ33にハイモード信号を出力する。すると、原料供給ポンプ33はハイモードとなり、単位時間当たりのチョコレート原料34の供給量が増加される。なお、本形態では、液面下限レベルと液面上限レベルとは、基準レベルを中心値として±1[mm]程度に設定されている。
【0075】
その結果、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の液面レベルが常に一定に保持されるため、型孔3aから搬送ベルト1へ供出されるチョコレート原料34の圧力が常に一定となり、均一な厚さのチョコレート菓子を製造することができる。
【0076】
また、搬送ベルト1に貼着された円盤形のチョコレート原料34は、各厚さ検出センサ38,39によって厚さが検出され、内蔵するマイコンにより厚さが適正かどうかが判定される。各厚さ検出センサ38,39によって検出した厚さが適正かどうかの判定は、例えば図6に示すように、1枚のチョコレート原料34の前後縁P1,P3と中央部P2の三点を検出する。これを3枚のチョコレート原料34について各々計測し、各計測値の中で、厚さが予め設定される規定値よりも大きい値(厚い)或いは小さい値(薄い)を示す計測値が、連続してN回(例えば6回)以上検出された場合、スクレーパ28を回動させて、厚さを調整する。
【0077】
すなわち、円盤形チョコレート原料34の厚さが薄いと判定された場合は、その値に応じて可逆性モータ20を駆動させ、ネジ軸21の回転による軸方向移動により回動レバー17を回動させて、スクレーパ28を、図5の時計回り方向へ回動させることで、チョコレート原料34のすり切る位置をベルト1に対して相対的に離れることによって、型孔3aから剥離されるチョコレート原料34の厚さを増加させる。
【0078】
一方、円盤形チョコレート原料34の厚さが厚いと判定された場合は、その値に応じた可逆性モータ20の駆動により、回動レバー17を、上述と逆の方向へ回動させて、スクレーパ28を、図5の反時計回り方向へ回動させる。すると、スクレーパ28によるチョコレート原料34のすり切る位置がベルト1に対して相対的に近づくことによって、型孔3aから剥離されるチョコレート原料34の厚さが減少する。
【0079】
このように、本形態では、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34の液面レベルを常に監視し、一定レベルを維持するように調整しているので、搬送ベルト1上に常に一定圧力でチョコレート原料34を貼着させることができる。また、搬送ベルト1に貼着されたチョコレート原料34の厚さも常時監視し、厚さが変化した場合は、スクレーパ28を揺動させて、すり切るチョコレート原料34の厚さを調整するようにしたので、チョコレート原料34の厚さを常に一定の状態に保持することができる。
【0080】
その結果、例えば比較的薄いシート状の成形品であっても、均一な厚さで製造することができ、製造ロス等に起因する生産性の低下が抑制され、常に安定した品質のチョコレート菓子を連続的に製造することができる。また、これまでになかったような薄いシート状のチョコレート菓子とすることが可能となるため、口に含んだときに速やかに溶けて味わい深いチョコレート菓子を提供できる。
【0081】
また、チョコレート原料34が剥離された後の型孔3aの縁部には、チョコレート原料34がバリ状に残されるが、この型孔3aの縁部に付着されたチョコレート原料34は、外側スクレーパ35を通過する際に、このスクレーパ35によりステンシル3内部に押し戻されて、原料溜り部29に貯留されて、再利用される。
【0082】
ところで、食品製造装置を停止させても、ドラム2の回転は直ちに停止されず、タイミング用近接スイッチ37が、ステンシル3に穿設されている型孔3aを検出し、或いはこの型孔3aの通過を検出した後、所定タイミング、すなわち、ドラム2の回転中心を通る垂直方向にステンシル3の型孔3aのない部位が臨まされる位置で停止させる。また、スクレーパ28も垂直位置で停止させる。
【0083】
その結果、スクレーパ28の先端に設けたブレード28aがステンシル3内周の上記型孔3aのない部分に密着されるので、原料溜り部29に貯留されているチョコレート原料34が外部に漏出することがなく保持される。
【0084】
なお、上記実施形態では、カバーを構成する保温プレート26が、回転体の周面となるステンシル3に摺接した状態で配置されているが、本発明におけるカバーは、回転体の周面に摺接している必要は必ずしもなく、例えばメレンゲやビスッケットの生地等の食品原料に適用する場合には、図9に示すような態様のものであってもよい。すなわち、図9においては、ステンシル3の回転中心から垂下した位置から反時計回り方向へおおよそ90°の高さまでカバー60で覆われているが、このカバー60は、ステンシル3の周面に接しておらず、ステンシル3との間に空隙61を有して配置されている。ただし、カバー60の両側及び下端部は、いずれもステンシル3に密接しており、下端部には、前述した弾性板50が押さえ板51によって取付けられている。この態様では、食品原料がステンシル3の外周に流出し、上記空隙61に溜まることになるが、弾性板50によってステンシル3に密接しているので、空隙61に流出した食品原料が搬送ベルト上に流出することはない。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
カカオマス30部、砂糖45部、全脂粉乳10部、ココアバター15部、レシチン0.5部の原料から、常法によりチョコレート原液を製造した。このチョコレート原液に対して、0.3%の量でテンパリングシード(不二製油製、商品名「チョコシードA」)を添加して、チョコレート原液をテンパリングした。テンパリング後、直ちに前記実施形態で説明した製造装置(以下「本件装置」とする)のホッパーにテンパリングしたチョコレート原液を投入した。投入したときのチョコレート原液の温度は30℃であり、粘度は、152ポイズであった。なお、粘度の測定は、前述した方法で行った。
【0086】
ホッパーにチョコレート原液を投入する前に、本件装置は、チョコレート原液が固化しないように予め温めておいた。具体的には、本件装置のケース内にあるドラム内外の雰囲気温度を33〜34℃になるように、温風ブロアから33℃の温風を2.75m/分の風速で予め1時間暖め、更に、ジャケットの水温を33℃で1時間温水を還流しながら本件装置を温めた。本件装置が温まった後に、ホッパーにチョコレート原液を約3リットル投入し、残りのチョコレート原液をポンプによってホッパーに投入されるチョコレート原液を溜めるタンクに投入した。
【0087】
数回試運転をした後、チョコレート成型品の厚さを決め、直径40mmで厚さ1.3mmの円盤状のチョコレートの製造を開始した。そして、本件装置で、製造したチョコレート成形品を得た。
【0088】
この成形品を無作為に5つ抽出し、直径及び厚さの測定を行った。その結果、下記表1のようになった。
【0089】
【表1】

【0090】
この結果から、成形品の厚さは、1.28±0.06となり、その振れを表すCV値は、0.05と低い値であった。このように、本件装置を用いることにより、厚さがほぼ均一な薄いチョコレート成型品を製造することができた。
【0091】
また、原料溜り部29において、ステンシル3の表面に付着したチョコレート原液は、保温プレート26から露出するときに弾性板50によって十分に擦り取られるため、搬送ベルト1の表面にチョコレート原液が転着されることはなかった。
【0092】
(実施例2)
弾性板の板厚0.5mmの場合において、以下の条件で、弾性板を回転体に当てる力(F)を下記式より求めた。なお、弾性板の板厚、幅、長さはそれぞれ図8のh、b、Lで示される長さである。
【0093】
弾性板材料をリン青銅とし、弾性板の板厚(h)0.5mm、長さ(L)29mm、幅(b)280mm、最大たわみ(δ)1.02mm、弾性係数(E)98×10N/mmの条件で、断面2次モーメント(I)を前記式(II)より求めたところ、I=35/12となった。
【0094】
こうして得られた断面2次モーメント(I)を前記式(I)に代入し、荷重(W)を求めたところ、W=35.86Nとなった。この荷重(W)を前記式(III)に代入し、弾性板を回転体に当てる力F=13.1g/mmが求められた。
【0095】
この弾性板を用いて、上記食品製造装置を構成したところ、搬送ベルト1の表面にチョコレート原液が転着されることはなかった。
【0096】
(実施例3)
弾性板の板厚が0.2mmの場合において、実施例2と同様の方法で、弾性板を回転体に当てる力(F)を求めた。なお、弾性板の板厚、幅、長さは、それぞれ図8のh、b、Lで示される長さである。
【0097】
弾性板材料をリン青銅とし、弾性板の板厚(h)0.2mm、長さ(L)29mm、幅(b)280mm、最大たわみ(δ)1.02mm、弾性係数(E)98×10N/mmの条件で、断面2次モーメント(I)を前記式(II)より求めたところ、I=0.1867となった。
【0098】
こうして得られた断面2次モーメント(I)を前記式(I)に代入し、荷重(W)を求めたところ、W=2.296Nとなった。この荷重(W)を前記式(III)に代入し、弾性板を回転体に当てる力F=0.836g/mmが求められた。
【0099】
上記計算結果より、弾性板厚が0.2mmの場合においては、弾性板を回転体に当てる力(F)を0.836g/mmとすることで、弾性板が切子(金属くず)を生じることなく、回転体外周面についた食品を効率よく掻き取ることができる。
【0100】
この弾性板を用いて、上記食品製造装置を構成したところ、搬送ベルト1の表面にチョコレート原液が転着されることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、チョコレート原料以外に、例えばビスケット、キャンディー、キャラメル、グミ等の砂糖菓子、ゼリー、プリン、餡子などの流動性を有する食品原料を形成する技術に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の食品製造装置の要部分解斜視図である。
【図2】同食品製造装置の正面図である。
【図3】同食品製造装置の側面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】図2のV-V断面図である。
【図6】型孔から押し出された食品原料の厚さを計測する方法を示す説明図である。
【図7】弾性板、回転体、搬送ベルトの位置関係を示す図2のV-V要部断面図である。
【図8】弾性板の板厚、幅、長さを示した概念図である。
【図9】カバーが回転体の周面と接していない別の態様を示した説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1 搬送ベルト
1a 、1b ローラ
2 ドラム
3 ステンシル
3a 型孔
4a,4b サイドカバー
5 支軸
6,8,10 軸受け
7 スリーブ
15 モータ
17 回動レバー
20 可逆性モータ
24a,24b サイドプレート
26 保温プレート
27 ジャケット
28 スクレーパ
28a ブレード
29 原料溜り部
30 ホッパー
31 原料供給ホース
32 温風ホース
33 原料供給ポンプ
34 食品原料
35 外側スクレーパ
36 レベルセンサ
37 タイミング用近接スイッチ
38,39 厚さ検出センサ
50 弾性板
51 押さえ板
52 ボルト
60 カバー
h 弾性板の板厚
b 弾性板の幅
L 弾性板の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心が水平に支持され、周面に複数の型孔が形成された回転体と、この回転体の回転中心から垂下して回転体内周面に摺接するスクレーパと、前記回転体の回転中心から垂下した位置から周方向片側の所定の高さまで覆うカバーと、前記回転体、前記スクレーパ及び前記カバーで囲まれた空間部に設けられた食品原料溜り部と、この食品原料溜り部に食品原料を供給する供給手段と、前記回転体の下面外周に接触する搬送ベルトとを備え、前記回転体の型孔に充填された食品原料を前記スクレーパですり切りつつ、前記搬送ベルトに貼着させて成形するようにした食品製造装置において、前記回転体の回転軸と平行に配置され、前記回転体の外周面に圧接される弾性板を、前記カバーの下端部に設けたことを特徴とする食品製造装置。
【請求項2】
前記弾性板の材料が前記回転体の材料よりもやわらかい材料である請求項1記載の食品製造装置。
【請求項3】
前記回転体がステンレスからなり、前記弾性板が、リン青銅、ベリリウム銅,チタン銅から選ばれた1種からなる金属板である請求項1又は2記載の食品製造装置。
【請求項4】
前記弾性板を前記回転体に当てる力が0.6〜15.0g/mmである請求項1〜3のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項5】
前記食品原料がチョコレート生地である請求項1〜4のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項6】
前記周方向片側の所定の高さまで覆うカバーが前記回転体の周面に施されている請求項5記載の食品製造装置。
【請求項7】
前記弾性板の板厚が0.2〜0.5mmである請求項1〜6のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項8】
前記回転体の板厚が0.8〜4.0mmである請求項1〜7のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項9】
前記食品原料溜り部に貯留された食品原料の液面レベルを検出するレベル検出手段を設け、このレベル検出手段によって検出された液面レベルが一定範囲となるように、前記供給手段による食品原料の供給量を制御するように構成した請求項1〜8のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項10】
前記回転体の回転位置を前記型孔の通過によって検出するタイミング用近接スイッチを設け、前記レベル検出手段による液面レベルの検出を、前記タイミング用近接スイッチによって前記型孔が通過するタイミングに合わせて、前記回転体の外側から前記回転体の型孔を通して行うように構成した請求項9記載の食品製造装置。
【請求項11】
前記スクレーパを回動させる手段を設けると共に、前記搬送ベルトに貼着された食品原料の厚さを検出する厚さ検出センサを設け、前記厚さ検出センサによって検出された厚さに応じて前記スクレーパを回動させて、前記食品原料の厚さが一定範囲になるようにすり切り位置を制御するように構成した請求項1〜10のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項12】
前記回転体の回転位置を前記型孔の通過によって検出するタイミング用近接スイッチを設け、前記厚さ検出センサによる厚さの検出を、前記タイミング用近接スイッチによって前記回転体の型孔から前記搬送ベルトに食品原料が貼着されるタイミングに合わせて行うように構成した請求項11記載の食品製造装置。
【請求項13】
前記カバーが保温プレートをなしている請求項1〜12のいずれか1つに記載の食品製造装置。
【請求項14】
前記ドラムの周囲を下方開口を残して囲むケースを設け、このケース内に温風を吹込む温風供給手段を設けた請求項1〜13のいずれか1つに記載の食品製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−222077(P2007−222077A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47130(P2006−47130)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】