説明

飲料容器包装材

【課題】購入者に応じた広告を提供することができるとともに、結露によって不快感を生じさせることがなく、しかも、店員等の手間を軽減できる飲料容器包装材の提供。
【解決手段】飲料容器包装材1は、飲料容器Cの周面における周方向の長さと略一致する長さを長辺とし、飲料容器Cの高さよりも短い長さを短辺とする略長方形状のシート材からなり、広告が印刷された広告表示領域31を表面に有し、裏面全体に接着剤が塗布されるとともに、長辺方向に区分けされた第一接着領域及び第二接着領域を有する表示層2と、表示層2の第二接着領域に対して剥離可能に貼着された第一剥離紙5と、厚み方向に対して弾性力を有し、表示層2と同じ大きさの長辺を有する長方形部材であって、一方の短辺側端部を第一接着領域及び第二接着領域の境界線に合わせた状態で、第一接着領域に重ね合わされた裏打層3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器包装材に関し、特に飲料容器の周面を包装する飲料容器包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンビニエンスストア等の小売店において、缶入り飲料や樹脂製容器入り飲料(以下、缶入飲料等とする)を対面販売する際、購入者が自ら冷蔵庫や保温器から缶入飲料等を取出し、精算所に携行して購入するという販売方式が採用されている。
【0003】
ところで、包装紙は、精算済みを示すこと、及び商品を保護することが、その主な機能であるが、商品や企業の情報を伝達する媒体としても用いられ、包装紙に店名を印刷したり、内容物に関する表示を行ったりすることが一般的に行われている。具体的には、飲料容器の周面に包装紙を粘着テープなどで接着する包装方法が行われる場合がある。
【0004】
なお、上記の従来技術は、当業者にとって当然なされている一般的事項であり、出願人は、この従来技術を特定するに適した文献を、特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、飲料容器の周面に包装紙を粘着テープなどで接着する方法では、資材と店員の手間が増大するにも拘らず、広告等の表示領域としては面積が小さい上、飲料容器を把持したときに包装紙が剥がれたり破れたりして飲料容器が滑落する不安を想起させるため、購入者に好感を与えることができなかった。
【0006】
また、結露によって包装紙が浸潤され、包装紙の破損や変形の原因となり、購入者に不快感を生じさせる虞があった。詳しく説明すると、保冷された缶入飲料等は、冷蔵ケースから取出され外気に触れると、容器表面の温度が外気の露点温度よりも低いために結露する場合が多い。特に夏季においては、飲料容器表面と外気温との温度差が大きく、且つ、相対湿度が高いため、ほとんどの場合に結露が生じる。なお、薄紙の包装紙を飲料容器の周面に巻き付けた場合、その周面は外気に直接接しなくなることから包装紙の熱抵抗により若干の保温効果を発生させることができるが、従来の包装紙は極めて薄いため、次第に飲料容器表面と包装紙との間、または包装紙表面に結露が生じることとなり、その結果、包装紙が浸潤され、包装紙の破損や変形の原因となっていた。
【0007】
また、近年では、使用後の飲料容器の再生利用が広範に浸透しているため、粘着テープや接着剤を用いて包装紙を直接接着した場合には、飲料容器の廃棄時に除去する必要が生じ、余計な手間を強いることとなる。つまり、この手間は、缶入飲料等の主な長所のひとつである簡便性を損なうものであった。また、飲料容器の周面に包装紙を接着すると、容器の周面に表示された商品名、内容分の説明、製造者・販売者による注記及び広告等の情報が視認できなくなるため、購入者がこれらの情報を確認する際には、わざわざ包装紙を剥がさなければならず、使い勝手が一層悪いものとなっていた。
【0008】
なお、缶入飲料等を一品だけ購入する場合には、店名入りのテープ等を貼着して精算済みであることを表示することも行われている。しかしながら、これによれば、表示領域として利用可能な面積は極めて少ないことから、広告等の表示を行うことは困難であり、広告媒体として有効に活用することはできない。
【0009】
また、最近では、飲料容器の周面に広告を直接印刷した缶入飲料等もある。具体的には、商品名や商品に関連した情報の表示に加え、商品とは全く無関係の広告を印刷することにより、缶入飲料等を購入する人々に対して、飲料とは無関係の宣伝を行うものである。これによれば、飲料容器の周面に広告が直接印刷されているので、店員等の手間を要することなく宣伝を行うことが可能である。また、飲料容器に予め広告を印刷することにより、広告収入を得ることができるとともに、その広告によって購買意欲をある程度高めることが可能になる。ところが、これによれば、広告が飲料容器に予め印刷されているため、対面販売の機会があっても、複数の広告を夫々の購入者に応じて提供することができず、広告の効果が半減していた。
【0010】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、購入者に応じた広告を提供することができるとともに、結露によって不快感を生じさせることがなく、しかも、店員等の手間を軽減できる飲料容器包装材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる飲料容器包装材は、「包装対象物である飲料容器の周面における周方向の長さと略一致する長さを長辺とし、前記飲料容器の高さまたはその高さよりも短い長さを短辺とする略長方形状のシート材からなり、広告が印刷された広告表示領域を表面に有し、裏面全体に接着剤が塗布されるとともに、前記長辺方向に区分けされた第一接着領域及び第二接着領域を有する表示層と、
該表示層の前記第二接着領域に対して剥離可能に貼着された第一剥離紙と、
厚み方向に対して弾性力を有し、前記表示層と同じ長さの長辺と、前記表示層の短辺と同じ長さ又は前記表示層の短辺より短い長さの短辺とを有する長方形部材であって、一方の短辺側端部を前記第一接着領域及び前記第二接着領域の境界線に合わせた状態で、前記第一接着領域に重ね合わされた裏打層と
を具備する」ことを特徴とする。
【0012】
ここで、「飲料容器」としては、上端から下端まで同一径である円筒状の容器であってもよく、上部側に逆漏斗形の口細部を有する容器であってもよい。また、容器の断面形状は円形であってもよく多角形であってもよい。また、飲料容器の材質も特に限定されるものではない。また、「飲料容器の高さよりも短い長さ」とは、例えば、飲料容器包装材を飲料容器に巻いた際、飲み口に接する唇が、飲料容器包装材の上端に触れることのない長さを例示することができる。また、「広告表示領域」は、表示層の表面全体に亘って設けられていてもよいが、部分的に設けられていてもよい。また、「第一接着領域」及び「第二接着領域」は、同等の大きさになるように二分されていてもよいが、いずれか一方の面積が他方の面積よりも大きくなるように区分けされていてもよい。さらに、「第一接着領域及び第二接着領域の境界線」とは、第一接着領域と第二接着領域とを区画するための線である。なお、境界線の位置は、表示層の裏面に印刷されることによって認識可能としてもよく、第一剥離紙の縁部を目印として認識させるようにしてもよい。
【0013】
本発明によれば、長辺が互いに同じ長さの表示層及び裏打層が重ねられている。特に、裏打層は、表示層の裏面に接着剤を介して接着される際、一方の短辺側端部を表示層の第一接着領域及び第二接着領域の境界線に合わせた状態で、第一接着領域に重ね合わされる。このため、裏打層の他方の短辺側端部は、表示層の端部(第一接着領域側の端部)から突出した状態となる。換言すれば、裏打層の端部側には表示層が被さっていない部分、すなわち表面側から見て露出された部分が生じることとなる。また、その部分の反対側の端部は、第一剥離紙が貼付けられた表示層が裏打層から延出された状態で設けられている。
【0014】
この飲料容器包装材を飲料容器に包装する際には、表示層の広告表示領域を表面として、裏打層及び表示層を飲料容器の周面に巻きつける。特に、裏打層が露出された部分から巻き始め、延出された表示層の端部まで巻きつける。この際、表示層及び裏打層における長辺の長さは、飲料容器の周方向の長さと略一致するため、裏打層から延出された表示層の端部は、露出されている裏打層と重なり合い、裏打層及び表示層はともに円筒状に形成される。つまり、第一剥離紙を剥離し、裏打層の端部と表示層の端部とを接着することにより、裏打層及び表示層を飲料容器の周面に巻きつけた状態で保持することが可能になる。
【0015】
この状態では、裏打層及び表示層はいずれも飲料容器に対して接着されていないため、飲料容器包装材を飲料容器の高さ方向に変位させるように力を加えれば、飲料容器包装材を飲料容器から取外すことが可能となる。すなわち、飲料容器と飲料容器包装材とを容易に分離させることが可能となる。
【0016】
また、裏打層同士または表示層同士が重なることがないため、飲料容器の全周に亘って飲料容器包装材の厚みが均一となり、段差を生じさせることなく巻きつけることができる。したがって把持感が良好となり、快適に使用することが可能になる。また、表示層の一端側と他端側が突き合わせられるため、例えば、全面に広告が印刷されている場合であっても、表示層の始端または終端によって広告が途切れることを意識させず、全周に亘って連続性のある広告を提供することが可能になる。
【0017】
また、裏打層は、厚み方向に弾力性を有することから、飲料容器包装材を伸張し飲料容器の周面に圧接しながら巻きつけると、裏打層が厚み方向に変形し飲料容器の周面に密着した状態となる。そのため、裏打層と飲料容器との間の摩擦力が大きくなり、飲料容器が滑落し難い状態となる。
【0018】
また、飲料容器包装材は、表示層及び裏打層からなる二層構造を有するため、その断熱作用により結露が生じ難くなる。また、結露が生じた場合でも、薄紙一枚の包装紙と比較すると耐久性を高めることができる。
【0019】
本発明の飲料容器包装材において、「前記裏打層は、発泡材または波板状の紙と平面状の紙とが貼合わされて形成され、内部に空隙を有する」構成とすることができる。ここで、「裏打層」としては片面ダンボールを例示することができる。
【0020】
これによれば、裏打層の内部に空隙があるため、厚み方向の押圧に対して一層高い弾力性を有する。特に、波板状の紙は、波形の振幅方向に対しては剛性を持ち、波形の進行方向に対しては柔軟性を持つことから、撓ませることにより容易に円筒形を形成することができるとともに、略円筒形の飲料容器に圧接させた場合には、飲料容器の周面がなじみ易く、且つ緊密に巻きつけることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、飲料容器包装材が裏打層及び表示層を具備して構成されるため、断熱効果が高くなり、結露の発生による不快感を防止することができる。また、裏打層によって飲料容器に対する摩擦抵抗が大きくなり、飲料容器の滑落を抑制することができる。さらに、裏打層から延出された表示層の端部を、露出された裏打層と重ねるだけで、裏打層及び表示層が円筒状に形成されるため、店員等の手間を要することなく飲料容器包装材を飲料容器に巻きつけることができる。特に、手間を要しないことから、対面販売時においては、購入者に適した広告が印刷された飲料容器包装材を選択し、その場で容易に巻きつけることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である飲料容器包装材について、図1乃至図3に基いて説明する。図1は本発明の一実施形態である飲料容器包装材の構成を示す概略構成図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は右側面図である。図2は飲料容器包装材の使用状態を示す説明図である。図3は飲料容器包装材を利用して広告を行う方法の概略を示す説明図である。
【0023】
図1に示すように、飲料容器包装材1は、互いに貼着された表示層2及び裏打層3を具備して構成されている。表示層2は、例えばミラーコートのタック紙で形成されており、包装対象物である飲料容器C(図2参照)の周面における周方向の長さと略一致する長さを長辺とし、飲料容器Cの高さよりも短い長さを短辺とする略長方形状のシート材からなる。また、表示層2の表面には、広告が印刷された広告表示領域31が形成されている。表示層2の裏面には全面に亘って弱粘性接着剤が塗布されており、裏面の長辺方向が、第一接着領域10と第二接着領域11とに区分けされている。第一接着領域10は裏打層3が重ね合わされた部分であり、表示層2の裏面の一端側を残した大部分がこの領域となっている。一方、第二接着領域11は、表示層2の裏面の一端側に相当する部分であり、この領域には第一剥離紙5が剥離可能に貼着されている。
【0024】
一方、裏打層3は、厚み方向に対して弾力性を有し、且つ表示層2と同じ長さの長辺及び短辺を有する長方形部材である。なお、本例の裏打層3は、厚みが0.8〜1.8mm程度の、いわゆる片面段ボールで構成されており、片側表面が平滑面、裏面が波形面となっている。また、裏打層3は、一方の短辺側端部を第一接着領域10及び第二接着領域11の境界線に合わせた状態で、第一接着領域10に接着されている。
【0025】
つまり、裏打層3の他方の短辺側端部は、表示層2の端部(第一接着領域10側の端部)から突出した状態となっており、裏打層3の端部側には表示層2によって被覆されていない部分、すなわち表面側から見て露出された部分が形成されている。なお、詳細は後述するが、飲料容器包装材1を飲料容器Cに巻きつける際、この露出された部分に対して表示層2が貼着されることから、本例ではこの部分を貼付余地6と称する。また、その部分の反対側の端部には、第一剥離紙5を貼着した表示層2が裏打層3から延出された状態で形成されている。なお、この部分は、飲料容器包装材1を飲料容器Cに巻きつける際、貼付余地6に貼り合わせられることから、本例では貼合部4と称する。
【0026】
また、表示層2の底部側の長辺中央部分には、帯状の底面保持帯7が下方に延出して形成されている。底面保持帯7の裏面には、全面に亘って弱粘性接着剤が塗布された底面貼合部7aが設けられている。底面貼合部7aには、底面保持帯部7の末端側を被覆する第二剥離紙8と、それ以外の部分を被覆する保護紙9とが夫々貼着されている。
【0027】
次に、飲料容器包装材1の使用方法について図2を基に説明する。本例の飲料容器包装材1は、平板状に展開された状態で小売店(例えばコンビニエンスストア)に配布され保管される。飲料容器Cの包装に使用する際には、購入者に適した広告が印刷された飲料容器包装材1を一枚選択し、その飲料容器包装材1の下縁が飲料容器Cの底面周縁に位置するように、貼付余地6付近を飲料容器Cの周面に当接させる。その後、貼付余地6付近を指で支えつつ、飲料容器包装材1の残りの部分を飲料容器Cの周面に沿って圧接させながら巻きつける。そして、飲料容器Cの略全周に亘って巻きつけた後、第一保護紙5を剥離し、貼合部4を貼付余地6上に重ね合わせる。すると、糊付部4aが貼付余地6に貼着され、表示層2及び裏打層3は夫々円筒状に形成された状態で保持される。
【0028】
その後、第二剥離紙8を剥離し、飲料容器Cの底面を径方向に跨ぐように底面保持帯7を曲折し、貼付余地6近辺に糊付部7aを貼着する。これにより、略円筒形を形成した飲料容器包装材1の底面開口部が底面保持帯7によって塞がれ、飲料容器Cの滑落を防止することが可能になる。
【0029】
なお、本例の裏打層3における波形面は、波形の振幅方向には曲がりにくく剛性を保つのに対し、波形の進行方向にはしなやかに曲がりやすいため、容易に円筒形を構成することが可能である。また、厚み方向に押圧した場合に弾力性を有するため、飲料容器Cの周面に密着しやすく、包装時に飲料容器包装材1を飲料容器Cに押圧したり伸張したりする力を低減でき、より速やか且つ緊密に包装することが可能である。
【0030】
次に、飲料容器包装材1を使用して広告活動を行う方法について、図1及び図3に基いて説明する。広告配布を希望する広告発注企業21は、直接に、又は広告代理店等22を経由して広告製造者23に広告入り缶入飲料等包装材1の製造及び配布を発注する。注文を受けた広告製造者23は、注文内容に応じた広告が印刷された飲料容器包装材1を製造し、コンビニエンスストア等の小売店24に配送する。小売店24は、保冷又は保温された缶入飲料等を販売するにあたって、精算時において飲料容器Cを飲料容器包装材1にて包装する。
【0031】
飲料容器包装材1の表示層2の表面には、広告表示領域31及び複数のクーポン予定領域32が形成されている。ここで、表示層2の表面全体が広告表示領域31に割当てられているが、その広告表示領域31内で、且つ、広告の伝達情報や審美的価値を妨げない箇所、すなわち、文字や図像の隙間などの余地を利用してクーポン予定領域32が形成されている。特に、クーポン予定領域32は少なくとも2箇所形成されるようになっている。また、クーポン予定領域32は、略方形であり、広告表示領域31に表示される広告等と比較して面積が小さく、且つ、隣接する広告表示領域31の境界部分と同色又は同系統の色や模様を用いて印刷されており、視覚的に目立たないようになっている。ところで、クーポン33は、いずれか一つのクーポン予定領域32内に印刷されている。つまり、クーポン予定領域32が複数個所形成されているのに対し、クーポン33は一箇所のみであるため、クーポン33が印刷されたクーポン予定領域32と、クーポンの無いクーポン予定領域32とが形成されることとなる。飲料容器包装材1における広告の印刷版の派生形は、一枚の飲料容器包装材1に構成されたクーポン予定領域32の数と同数用意されており、これらによって全体的構成は類似しているがクーポン33の位置のみが異なる複数種類の飲料容器包装材1が製作されるようになっている。クーポン33の形状や色彩等については後述する。
【0032】
小売店24に配送される飲料容器包装材1の種類は単一ではなく、例えば、自動車メーカーの広告が印刷された飲料容器包装材1と、化粧品メーカーの広告が印刷された飲料容器包装材1とが小売店24にて配布されるというように、複数の広告発注企業21による広告に応じて多種の飲料容器包装材1が配布用に並行して用意される。
【0033】
小売店24は、飲料容器包装材1を配布する際に、購入者Pの性別や年齢層等に応じて広告を選定する。広告の選定基準は、広告製造者23が予め制作した選定基準等のマニュアルに従う。例えば、中高年の女性用化粧品の広告を、高校生とみられる購入者に対して配布しても広告効果は乏しいと考えられる。この場合には、新しい携帯電話サービスの広告等を配布する方が望ましい。購入者の広告に対するニーズに応じて、配布すべき広告を予め指定することで、広告効果を高めるとともに、不適切な広告の配布に伴う無駄から生じる損失を未然に防ぐ効果も期待できる。
【0034】
次に、クーポン33についての説明を行う。缶入飲料等の販売時に飲料容器包装材1は包装として配布される。飲料容器包装材1は飲料容器Cの包装として利用されるとともに、購入者Pに対して表示層2の広告表示領域31内に印刷された広告等の情報を提供する。広告表示領域31内には、図像や文字の隙間等の余地にクーポン33が印刷されており、その広告等に関心を惹かれた購入者Pの注意をさらに喚起する。
あるいは、購入者Pは、小売店24の店頭に掲示された掲示物や雑誌広告等の情報により、飲料容器包装材1にクーポン33が印刷されていることを知り、飲料容器包装シート1上にクーポン33を探すために広告表示領域31を注視するようになる。
【0035】
いずれの場合においても、クーポン33を利用する場合には、クーポン33を捜索するために広告表示領域31を注視することになる。クーポン33は、複数のクーポン予定領域32のいずれか1箇所に印刷されており、その箇所は広告の印刷版に応じて異なるため、広告表示領域31の特定の一箇所に常にクーポン33が印刷されている場合と比較すると、広告表示領域31のより広い範囲を注意深く観察する必要が生じている。すなわち、クーポン33を入手するには広告を全体的に見る必要があるので、クーポン33の位置を複数個所に設けることで、広告効果を高める効果が期待できる。
【0036】
各小売店24には懸賞応募用葉書25を多数用意し、入手を希望する購入者Pには無償で配布可能とする。飲料容器包装材1を受け取った購入者Pは、飲料容器包装材1に印刷されたクーポン33を切り取り、懸賞応募葉書25に貼着して広告製造者23の担当部署等、所定の宛先に送付する。この時、懸賞応募葉書25に購入者Pの住所、氏名、年齢等の記載を求めることで、飲料容器包装材1を受取った購入者Pの属人的情報の傾向を調査することができる。これにより、広告発注企業21は、広告製造者23より調査結果の報告を得て、商品企画や販売促進計画等の種々の企業活動に活用することができる。
【0037】
さらに、クーポン33の色彩や形状に複数のパターンを用意し、配布時期や購入商品に応じて異なるパターンのクーポン33を配布するようにする。時期や購入商品等の条件に応じて異なったパターンの飲料容器包装材1を配布することで、購入商品の傾向や、購入時期に関する情報を収集することも可能である。例えば、コーヒー飲料について、ミルクと砂糖が含まれるものを購入した場合は赤いクーポン33が印刷された飲料容器包装材1を配布し、ミルクも砂糖も含まないブラックコーヒーの場合は青い飲料容器包装材1を配布するといった具合に商品に応じてクーポン33を対応させることにより、懸賞応募葉書25でクーポンを回収したときに、購入者Pの属性と商品の購入傾向との関係を詳細に調査することが可能となる。
【0038】
また、応募にあたって貼着すべきクーポン数は1点とは限らず、所定の複数枚数の貼着を応募条件とすることで、クーポン33を収集する消費者に缶入飲料等の購買意欲を喚起すると共に、クーポン収集者に対してより多くの広告を配布することで広告効果を高めることが期待できる。複数のクーポン33を収集させると、例えば販売月ごとに異なるパターンにした場合に特定の缶入飲料等の購入頻度を推定できる。このように、クーポン33と懸賞応募葉書25を飲料容器包装材1に組み合わせることで、広告効果について精度の高い情報を得ることができる。
【0039】
クーポン33の色彩や形状については、上記のパターンの区別のために、色彩や形状を複数種類用意して組み合わせる。上記のようにクーポン33の色を変える方法だけでなく、例えば、特定の動物等をモチーフとしたキャラクターとしてクーポン33のデザインに使用し、その表情、仕草、衣服の色などの相違によって、上記のパターンの区別を行うものが挙げられる。
【0040】
以上のように、本例の飲料容器包装材1によれば、裏打層3及び表示層2を具備して構成されるため、断熱効果が高くなり、結露の発生による不快感を防止することができる。また、裏打層3から延出された表示層2の端部である貼合部4を、裏打層2の露出された部分である貼付余地6に重ねるだけで、裏打層3及び表示層2が円筒状に形成されるため、店員等の手間を要することなく飲料容器包装材1を飲料容器Cに巻きつけることができる。特に、手間を要しないことから、対面販売時においては、購入者に応じた広告が印刷された飲料容器包装材1を、その場で容易に装着させることが可能である。
【0041】
また、本例の飲料容器包装材1によれば、裏打層3及び表示層2は飲料容器Cに対して接着されていないため、飲料容器包装材1を飲料容器Cの下方から引き抜けば、飲料容器包装材1を飲料容器Cから取外すことが可能となる。すなわち、飲料容器Cと飲料容器包装材1とを容易に分離させることが可能となり、資源のリサイクルに対しての余分な手間が軽減される。
【0042】
また、本例の飲料容器包装材1によれば、裏打層3同士または表示層2同士が重なることがないため、飲料容器Cの全周に亘って飲料容器包装材1の厚みを均一にするとともに、段差を生じさせることなく巻きつけることができる。したがって把持感が良好となり、快適に使用することが可能になる。また、表示層2の一端側と他端側が突き合わせられるため、例えば、全周に亘って広告が印刷されている場合であっても、始端または終端によって広告が途切れることを意識させず、連続性のある広告を提供することが可能になる。しかも、表示層2同士が重なることがないため、表示層2の表面全体に広告表示領域31を設けた場合であっても、その広告表示領域31を全て露出させることができ、ひいては無駄な印刷によるコストの増加を抑制することができる。
【0043】
また、本例の飲料容器包装材1によれば、裏打層3は、厚み方向に弾力性を有することから、飲料容器包装材1を伸張し、飲料容器Cの周面に圧接しながら飲料容器Cに巻きつけると、裏打層3が厚み方向に変形し飲料容器Cの周面に密着した状態となる。そのため、裏打層3と飲料容器Cとの間の摩擦力が大きくなり、飲料容器Cを滑落し難い状態とすることができる。また、弾力性があることから、飲用時や運搬時に手で握ったり、指先でつまんだりすると表面が凹んで滑りにくくなり、把持しやすいという効果も期待できる。また、裏打層3は片面段ボールで形成されているため、空気層を有し断熱効果にも優れる。つまり、飲料容器包装材1を保温材として使用することも可能となる。
【0044】
さらに、本例の飲料容器包装材1によれば、飲料容器包装材1の短辺側の寸法は、飲料容器Cの高さよりも短いため、飲料容器Cの上面に形成された飲み口から直接飲む場合でも、唇が飲料容器包装材1に触れることを防止できる。
【0045】
以上、本発明について好適な一実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0046】
上記実施形態の飲料容器包装材1では、表示層2の材質としてミラーコートのタック紙を用いるものを示したが、広告の内容や費用対効果等に応じて変更してもよい。すなわち、ミラーコート紙の代りに、上質紙、合成紙、または和紙等を用いても良い。また、紙に限定せず、プラスティックフィルム、綿布等繊維質などでもよい。さらに、表示層2を一枚の紙片で構成するのではなく、二枚以上の紙片や合成樹脂シート等で構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態の飲料容器包装材1では、裏打層3の材質として、片面段ボールを用いるもの示したが、片面段ボールの代りに厚紙等を用いてもよい。また、スチロール樹脂等を原料とする発泡材を用いてもよい。同様にポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を素材としてもよい。
【0048】
また、上記実施形態の飲料容器包装材1によれば、表示層2は、裏打層3と同じ長さの長辺及び短辺を有する長方形部材であるが、図4に示すように表示層2の短辺の長さを裏打層3の短辺より長くしてもよい。つまり、裏打層3の長辺側両端、又はいずれか一辺の端より、表示層2の長辺側端部が突出する構成としてもよい。これにより、表示層2の上辺を、裏打層3の上辺を覆うように裏面に巻き込んで貼着し、裏打層3の上辺側木口端面を隠蔽して美観を高めることができる。
【0049】
また、上記実施形態の飲料容器包装材1では、底面保持帯7を備えるものを示したが、飲料容器Cの底面を支持するための部材を備えない飲料容器包装材であってもよい。これによれば、一層安価に製造できるとともに、店員等の手間をさらに軽減することができる。
【0050】
また、底面保持帯7を表示層2と一体に形成するものを示したが、図5に示すように別部材で構成し必要に応じて用いるようにしてもよい。以下、図5に基づいて説明すると、底面保持部材40は、略円形の底面盤41と4箇所の略長方形の貼着片42とによって構成されており、底面盤41の外周を四分する位置に略長方形の貼着片42が延出され、一体的に形成されている。貼着片42の裏面は弱粘性接着剤が塗布されており、第三剥離紙43によって被覆されている。飲料容器の側面に飲料容器包装材1を装着した後、略円筒形を形成した飲料容器包装材1の底部側の開口端を塞ぐように底面盤41を当接し、第三剥離紙43を剥離し、貼着片42を曲折して表示層2の表面に貼着する。これにより、飲料容器包装材1の底面開口部が底面盤41によって塞がれ、飲料容器Cの滑落を防止することが可能になる。
【0051】
さらに、懸賞応募葉書25は、葉書の形態に限らず、封筒や、封筒の展開図を印刷した用紙等の形態としてもよい。また、クーポン予定領域32の周囲にミシン目等の切断線を形成し表示層2から容易に切取ることができるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態である飲料容器包装材の構成を示す概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は右側面図である。
【図2】飲料容器包装材の使用状況を示す説明図である。
【図3】飲料容器包装材を利用して広告を行う方法の概略を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態である飲料容器包装材の使用状況を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態の底面保持部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 缶入飲料等包装材
2 表示層
3 裏打層
5 第一剥離紙
10 第一接着領域
11 第二接着領域
31 広告表示領域
C 飲料容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装対象物である飲料容器の周面における周方向の長さと略一致する長さを長辺とし、前記飲料容器の高さまたはその高さよりも短い長さを短辺とする略長方形状のシート材からなり、広告が印刷された広告表示領域を表面に有し、裏面全体に接着剤が塗布されるとともに、前記長辺方向に区分けされた第一接着領域及び第二接着領域を有する表示層と、
該表示層の前記第二接着領域に対して剥離可能に貼着された第一剥離紙と、
厚み方向に対して弾性力を有し、前記表示層と同じ長さの長辺と、前記表示層の短辺と同じ長さ又は前記表示層の短辺より短い長さの短辺とを有する長方形部材であって、一方の短辺側端部を前記第一接着領域及び前記第二接着領域の境界線に合わせた状態で、前記第一接着領域に重ね合わされた裏打層と
を具備することを特徴とする飲料容器包装材。
【請求項2】
前記裏打層は、発泡材または波板状の紙と平面状の紙とが貼合わされて形成され、内部に空隙を有することを特徴とする請求項1に記載の飲料容器包装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−238159(P2007−238159A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66079(P2006−66079)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(301051839)日比野化学工業株式会社 (3)
【出願人】(306010082)有限会社シグマ (1)
【Fターム(参考)】