飼料タンク用換気装置およびそれを取り付けた飼料タンク
【課題】 飼料タンク内外の温度差を低減する換気装置を提供すること。
【解決手段】 上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンクに用いる換気装置であって、飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成された飼料タンク用換気装置。換気口に、防虫網を設置した。飼料投与口より上部であって換気口より下部に換気扇を納めた。飼料タンク用蓋部が開口部覆う傘で構成された。傘に設けた風車または動力で換気扇を作動する。飼料投与時に、引掛具をはずし、取付具を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに飼料を補給するようになっている。
【解決手段】 上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンクに用いる換気装置であって、飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成された飼料タンク用換気装置。換気口に、防虫網を設置した。飼料投与口より上部であって換気口より下部に換気扇を納めた。飼料タンク用蓋部が開口部覆う傘で構成された。傘に設けた風車または動力で換気扇を作動する。飼料投与時に、引掛具をはずし、取付具を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに飼料を補給するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料タンク内の空気の換気を実施するための装置およびそれを取り付けた飼料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼料は、牧草や稲わらなどの粗飼料と穀類などを配合した濃厚飼料に大別される。
畜産農家は、飼料会社から購入した濃厚飼料を畜舎周辺の屋外に設置された飼料タンクに一時貯蔵する(図5A)。飼料タンクは通常グラスファイバー強化プラスチックのホッパーからなり、上部に設けられた供給口から飼料を供給し、下部に設けられた取出口から飼料を取り出す。飼料の供給などの作業時を除いては雨水の浸入を防ぐために供給口は蓋が被せられている(図5B,図16)。飼料タンクは、材質がプラスチック製であることなどから、外気温に大きく影響される。また、屋外にある飼料タンクは、雨水の浸入を防ぐために空気の換気口がないことから、気温の影響を多く受ける。このため、気温の上昇とともに飼料タンク内の温度は急激に上昇し、濃厚飼料は、熱を持つ。熱を持った濃厚飼料は、酸化が促進される。酸化した濃厚飼料は家畜の健康に悪影響を及ぼす問題がある。
【0003】
1日の気温の変動は、飼料タンク内の空気の温度変動に大きく影響する。飼料タンク内の濃厚飼料は、飼料タンク内の急激な温度の変化により温度差が生じる(図9、10参照)。この温度差は、結露の発生につながる(図11,12参照)。結露は、カビや害虫の発生につながり、濃厚飼料の品質の変敗や飼料養分の損耗となり濃厚飼料の品質の低下となる。品質の劣化した濃厚飼料の給与は、家畜や畜産物の生産性が低下するなどの問題がある。
【0004】
飼料タンクの飼料投与口と投与口の隙間からは、ネズミの侵入が可能で、ネズミが侵入することで糞による汚染や臭気が生じ衛生的に濃厚飼料を管理することができない欠点がある。
【0005】
変敗や品質の低下した飼料が、家畜の健康に悪影響を与えることはよく分かっており (図1参照)、これらの改善策として畜産農家が取り得る対応は、濃厚飼料の長期間の貯蔵を避けるため、飼料会社からの配送を小刻みにすることで、飼料の品質保持を保つことであり、飼料タンクに貯蔵している濃厚飼料の品質の低下を防ぐ技術はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、(1)飼料タンクには、雨水の浸入を防ぐために空気の換気口がないことから、飼料タンク内の温度は、昼間の気温の上昇とともに飼料タンク内の温度が気温よりも急激に上昇し、飼料タンク内に貯蔵されている濃厚飼料が熱を持ち、この熱により、濃厚飼料の酸化が進み品質の低下を防ぐことができない点、(2)気温の低下により、飼料タンク内で気温より上昇した温度が下がり、熱伝導率が低い濃厚飼料は、気温が低下しても熱を持ち続け温度差から結露が生じカビや害虫の発生を誘引し、品質の劣化を防ぐことができない点(3)気温の低下とともに、飼料タンク内の湿度は、飼料タンク内で上昇した温度が高いほど急激に上昇する。湿度が高くなった飼養タンク内での濃厚飼料の貯蔵は、品質の劣化を防ぐことができない点、(4)飼料タンク用の蓋の隙間からは、ネズミの侵入が容易でネズミの侵入により、衛生的に濃厚飼料の品質を保てない点である。
【0007】
夏期の飼料タンク内の温湿度の上昇による飼料の品質の劣化を緩和するため、飼料タンク内の温湿度の上昇や昼夜の温湿度差の影響を低減し、飼料の品質保持を図る必要がある。このため、本発明は、外気温の影響を受け、気温の上昇とともに飼料タンク内の温度が上昇することを低減することを可能とし、飼料タンク内に貯蔵される濃厚飼料の熱による酸化や結露が生じる原因である飼料タンク内外の温度差を低減する飼料タンク用換気装置を提供することを目的とする。
また、温湿度の上昇した空気の換気機能と換気にともなう雨水、ネズミ等の侵入を防止し、簡易に既存の飼料タンクに設置することが可能な飼料タンク用換気装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)〜(7)の飼料タンク用換気装置を要旨とする。
(1)上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンク用換気装置であって、飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成された飼料タンク用換気装置。飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するために、飼料タンクの上部に設置してある飼料タンク用の蓋に少なくとも1つの空気を抜き入れるための換気口を設け、この換気口から雨水の浸入を防止するための筒を有する。
(2)換気口に、虫の侵入を防ぐための防虫網を設置した(1)の飼料タンク用換気装置。
(3)飼料投与口より上部であって換気口より下部に飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に換気するための換気扇を納めた(1)または(2)の飼料タンク用換気装置。空気の換気口により、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に排気させ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を低減させる。また、空気の換気口により、飼料タンク内の温度が上昇した空気を強制的に排気させることにより、飼料タンク内の急激な湿度の上昇を低減させる。さらにまた、空気の換気口により、飼料タンク自体が飼料タンク内で温度の高くなった空気の排気を行い飼料タンク内外の温度を平衡に保つ。
(4)飼料タンク用蓋部が開口部覆う傘で構成された(1)、(2)または(3)の飼料タンク用換気装置。
(5)傘に設けた風車または動力で換気扇を作動する(4)の飼料タンク用換気装置。空気の換気を効果的に行うために風車又は動力で換気扇を作動し、効率的な換気を特徴とする。
(6)飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部を有し、この筒部には一方には引掛具、他方に取付具を設け、この引掛具で飼料タンクに引掛け、飼料投与時には、この引掛具をはずし、取付具を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに飼料を補給するようになっている(1)ないし(5)のいずれかの飼料タンク用換気装置。換気装置を飼料タンクから取り外すことなく飼料を補給することができることを特徴とする。
(7)飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部に、ネズミの侵入を防ぐための網を設置した(6)の飼料タンク用換気装置。ネズミの侵入を防ぐための網を設置し、ネズミの侵入を防止する。
【0009】
本発明は、以下の(8)および(9)の飼料タンクを要旨とする。
(8)(1)から(7)のいずれかの飼料タンク用換気装置を取り付けた飼料タンク。
(9)既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて取り付けた(8)の飼料タンク。既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて使用することが可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施例では、気温が31.3℃の時に飼料タンク内の温度は、49.8℃に達したが、本発明の飼料タンク用換気装置を設置した飼料タンク内の温度は、30.1℃であり、本発明の飼料タンク用換気装置を設置することにより、19.7℃の温度の上昇を防止した。また、本発明の実施例では、外気の湿度が40%の時に飼料タンク内の湿度は、74%に達したが、本発明の飼料タンク用換気装置を設置した飼料タンク内のこの時点での湿度は、50%であり、本発明の飼料タンク用換気装置を設置することにより、24%の湿度の上昇を防止した。このことから、上記のように構成された飼料タンク用換気装置は、飼料タンク内の温度や湿度の上昇の防止し、雨水の浸入や害虫並びにネズミの侵入によるによる被害はなかった。
【0011】
雨水やネズミの侵入により濃厚飼料の品質が劣化することなく、飼料タンク内外の温度差と湿度差を低下する目的を、既存の飼料タンクに飼料タンクの蓋と本発明の装置と交換して利用することを実現した。既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて使用することが可能である。装置を飼料タンクから取り外すことなく濃厚飼料を補給することができる(図13, 21)。
本発明により、飼料タンクに貯蔵中の濃厚飼料が暑熱による影響で品質の劣化を防止させることにより、家畜の生産性並びに畜産物の品質の低下を低減させる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
濃厚飼料は、飼料会社から濃厚飼料運搬専用車で配送される。このため、飼料タンクは濃厚飼料運搬専用車から簡易に濃厚飼料を移し変えられる構造となっている。そのため、飼料タンクは、濃厚飼料を一時的に貯蔵するための付帯施設として屋外に設置(図5A)されており、これまで、貯蔵している濃厚飼料の品質保持のための機能はない。飼料タンク内に貯蔵している濃厚飼料は、熱などの影響で酸化や変敗を招き品質が劣化する。品質が劣化した濃厚飼料を家畜に給与した場合は、家畜の生産性や畜産物の品質が低下する。
【0013】
本発明は、飼料タンクに貯蔵中の濃厚飼料が暑熱による影響で品質の劣化を防止させることにより、家畜の生産性並びに畜産物の品質の低下を低減させる装置とするものであり、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に換気するために、飼料タンクの上部に設置してある飼料タンク用の蓋に少なくとも1つの空気を抜き入れるための換気口を設け、この換気口から雨水の浸入を防止するための筒を有することを特徴とする飼料タンク用換気装置である。飼料タンク内で温度の上昇した空気は、自然対流で飼料タンク内上部に貯留する。このことから飼料タンク上部に換気機能をもたらす機能を有することで効果的に飼料タンク内の温度の高くなった空気の排気を行うことが可能である。空気の換気口により、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に排気させ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を低減させる。
【0014】
濃厚飼料を補給する飼料投与口は、飼料タンク上部に設けられている。このことから、飼料タンクの飼料投与口の蓋に換気機能を持たせ、飼料タンク内に雨水の浸入を防止する構造とすることで、新たに飼料タンクに換気口を開ける必要がなく、飼料投与口の蓋を本発明の装置と交換することで既存の飼料タンクに設置することが可能である。
【0015】
空気の換気を効果的に行うために風車又は動力で換気扇を作動し、効率的な換気を特徴とする。空気の換気口により、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に排気させ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を低減させる。この飼料タンク用の装置には、自然風を活用する風車又は動力により換気扇を設置し、飼料タンク内の空気を強制的に換気する構造とする。
【0016】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されることがない。
【実施例1】
【0017】
本発明の飼料タンク用換気装置およびそれを取り付けた飼料タンクについて、図面を参照しながら説明する。
本発明の飼料タンク用換気装置(以下、「本発明装置」と称することがある。)は、上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンクに用いる換気装置である。飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口7と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒3を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成さる。
図2は、本発明装置の断面図であって、自然風を動力とした風車1の設置により換気扇8が回転し、飼料タンク内の空気を強制的に換気することが可能である(図14参照)。この時、換気扇8を動力で作動するようにすれば(図18〜20参照)、風車1は、必要でない。換気扇を動力で作動するようにしたものは、図21のように小型ファンの風を飼料タンクの下部まで送風するようにホースの設置も有効である。
【0018】
また、雨水の浸入を防ぐための傘2、換気口7からの雨水の浸入を防ぐ筒3を有し、飼料タンクに引掛ける引掛具4で、濃厚飼料投与時には、この引掛具4をはずし、飼料タンク取付具9を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに濃厚飼料を補給する用に構成されている。飼料タンクの濃厚飼料投与口に接合する筒5に、ネズミの侵入を防ぐための網6を設置し、換気口7には、虫の侵入を防ぐための防虫網10を設置し、筒5には飼料タンクと接合するための飼料タンク取付具9が取り付けられている。飼料タンク内で温度が上昇した空気は、飼料タンクから筒5を通過し、換気口7から飼料タンク外に放出される。
【0019】
図3は、本発明装置の下面図である。6は、飼料タンクと飼料タンク用の蓋の隙間からネズミが侵入することを防止するための網である(図7,15参照)。
【0020】
図4は、本発明装置を飼料タンクに設置した側面図である。飼料タンク引掛具4で、飼料タンク取付具9が支点となり開閉する。開封時には、飼料タンクの濃厚飼料投与口から濃厚飼料を補給することが可能である(図13,21参照)。換気扇を動力で作動するようにしたものは、図19に示すような換気扇(小型ファン)の風を飼料タンクの下部まで送風するようにホースを設置することが可能である(図21参照)。
【0021】
本発明の飼料タンク用換気装置およびそれを取り付けた飼料タンクの性能調査について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
新たに考案したかざぐるま式飼料タンク冷却除湿換気蓋
(以下、「かざぐるま式蓋」と略す。)は、雨水やネズミ等の侵入防止と換気機能がある蓋で、電力が必要でなく、飼料タンク内の最高温度を下げ、昼夜の飼料タンク内の温度差の変動を低減させる。そのうえ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を緩和し、温度が上昇している時間帯も短縮する効果がある。更に、昼夜の湿度変化の低減や飼料タンク内で温度の上昇した空気の排気により、夜間から早朝にかけての飼料タンク内の湿度を下げる効果もある。これらのことから、かざぐるま式蓋は、飼料タンク内の飼料の変敗や品質低下を低減させることに有効であると示唆される。
【0023】
(性能調査結果)
換気効果を調査するために亜鉛メッキ鉄板で試作したかざぐるま式蓋は、図に示す構造とした(図7、図8A,B)。換気扇の動力は、飼料タンク内の空気の排気のみを行うために自然風で一定方向のみ回転する4枚羽のサボニウス型風車とし、換気扇は、プロペラ羽根5枚とした。
【0024】
それぞれ約1tの市販の濃厚飼料が入った通常の飼料タンク(高さ約320cm、幅約180cm)とかざぐるま式蓋を設置した飼料タンクの上部(飼料投与口から20cm下)と中部(飼料投与口上部から160cm下)の温湿度の変化を1時間ごとに5日間調査した。調査した5日間の平均気温は、24.2℃(最高31.1℃、最低15.8℃)で、平均湿度が、55.6%(最高82.0%、最低28.0%)であった。
【0025】
1)飼料タンク内の上部で5日間測定した1時間ごとの平均温度変化(図9)
通常の飼料タンク内の上部温度は、気温の上昇とともに温度が上昇し、8時以降からは、気温よりも飼料タンク内の温度が高くなった。その後、飼料タンク内の最高温度は、45.8℃まで達し、気温よりも16.3℃も高くなった。19時以降は、気温より飼料タンク内の温度の方が低くなり、最低温度は、18.1℃であった。
かざぐるま式蓋を設置した飼料タンクも、同様の推移を示したが、通常の飼料タンクが気温よりも16.3℃も温度が高かった14時の時点では、10.9℃の上昇で抑えることができ、かざぐるま式蓋の設置で飼料タンク内の温度を5.4℃下げる効果があった。
また、かざぐるま式蓋と通常の飼料タンク内の温度と最も差があった12時では、14.6℃も温度が低く、飼料タンク内の急激な温度の上昇を緩和する効果があり、飼料タンク内の温度が上昇している時間帯も短縮された。更に、1日の飼料タンク内の最高と最低温度の差は、通常の飼料タンクでは、27.7℃であったが、かざぐるま式蓋を設置すると22.1℃となり、5.6℃の温度変動を低減した。
【0026】
2)飼料タンク内の中部で5日間測定した1時間ごとの平均温度変化(図10)
飼料タンク内の中部温度も上部と同様な傾向で、通常の飼料タンク内の温度は、気温の上昇とともに温度が上昇し、9時以降からは、気温よりも飼料タンク内の温度が高くなり、飼料タンク内の最高温度は、39.6℃に達し、気温より10.5℃も高くなった。19時以降は、気温より飼料タンク内の温度の方が低くなり、最低温度は、18.2℃であった。
かざぐるま式蓋を設置した飼料タンクも、同様の推移を示したが、通常の飼料タンクが気温よりも10.5℃も高かった16時の時点では、6.1℃の上昇で抑えることができ、かざぐるま式蓋の設置で飼料タンク内の温度を4.4℃下げる効果があった。
また、かざぐるま式蓋の設置により飼料タンク内の急激な温度の上昇を緩和する効果も見られ、通常の飼料タンク内の温度と最も差があった12時では、5.4℃も低く、飼料タンク内の温度が上昇している時間帯も短縮された。更に、1日の飼料タンク内の最高と最低温度の差は、通常の飼料タンクでは、21.4℃であったが、かざぐるま式蓋を設置することにより16.7℃となり、4.7℃の温度変動を低減した。
【0027】
3)飼料タンク内の上部で5日間測定した1時間ごとの平均湿度変化(図11)
通常の飼料タンク内の上部湿度は、夕方から翌朝まで、外気の湿度よりも高くなる傾向にあり、飼料タンク内の湿度は、最高で21.4%も外気の湿度よりも上昇した。また、1日の最高と最低湿度は、それぞれ77.4%と19.6%で、湿度の変動が57.8%もあった。
通常の飼料タンク内の最高湿度は5時の時点で77.4%であり、外気の湿度74.6%に比べ2.8%高かったのに対して、かざぐるま式蓋を設置した飼料タンク内の湿度は66.4%で、外気の湿度に比べ8.2%下げる効果があった。また、最低湿度は、26.4%で、1日の湿度差が40.0%で、17.8%も湿度の変動が低減された。更に、夜間から早朝にかけて湿度が高くなる時間帯では、最高で湿度がかざぐるま式蓋の設置により14.6%も低くなり、湿度の高くなる時間は、大幅に短縮された。
【0028】
4)飼料タンク内の中部で5日間測定した1時間ごとの平均湿度変化(図12)
通常の飼料タンク内の中部湿度は、上部と同様に夕方から翌朝まで、外気の湿度より高くなる傾向にあり、飼料タンク内の湿度は、外気の湿度よりも最高で18.8%も上昇した。また、1日の最高と最低湿度は、それぞれ74.2%と34.8%で、湿度の変動が39.4%もあった。
通常の飼料タンク内の最高湿度は5時の時点で74.2%であり、外気の湿度74.6%とほとんど同じ湿度であったのに対して、かざぐるま式蓋を設置した飼料タンク内の湿度は67.6%で、外気の湿度よりも7.0%下げる効果があった。また、最低湿度は、40.8%で、1日の湿度差が26.8%で湿度の変動が、12.6%も低減された。更に、夜間から早朝にかけて湿度が高くなる時間帯では、かざぐるま式蓋を設置することで、最高で10.8%も湿度が低くなった。
これらのことから、飼料タンク内の上昇温度による影響に加えて、湿度の上昇も低下させるかざぐるま式蓋は、飼料の変敗や品質低下を低減させることに有効であると示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
飼料タンク内の熱気を自然対流で効果的に換気する場所として飼料投与口を利用するものであり、新たに飼料タンクに換気口を開ける必要もなく、また、効率よく飼料タンク内の空気を換気するために強制的に空気を排気する機能と雨水等の浸入を防止し、従来の蓋と容易に交換が可能な構造の蓋であり、効率的に換気するための動力は、自然風力として電気が必要でなく、山間部の畜舎にも容易に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】飼料タンク内の温度上昇による濃厚飼料の変性について説明する図面である。
【図2】本発明による飼料タンク用の蓋の断面図である。(実施例1)
【図3】本発明による飼料タンク用の蓋の下面図である。(実施例1)
【図4】本発明による飼料タンク用の蓋を設置した側面図である。(実施例1)
【図5】一般的に用いられている飼料タンクが屋外に設置されているのを写した写真である。 A:飼料タンク B:飼料タンク上部(蓋)
【図6】本発明による飼料タンク用の蓋の構造を説明する図面である。
【図7】実施例2のかざぐるま式蓋を説明する模式面である。
【図8】実施例2のかざぐるま式蓋を説明する写真である。 A:かざぐるま式蓋内部(5枚の換気扇) B:飼料タンクに設置したかざぐるま式蓋(右)と上部のサボニウス型風車
【図9】飼料タンク内の上部温度変化(5日間の平均)である。
【図10】飼料タンク内の中部温度変化(5日間の平均)である。
【図11】飼料タンク内の上部湿度変化(5日間の平均)である。
【図12】飼料タンク内の中部湿度変化(5日間の平均)である。
【図13】飼料タンク用の蓋の濃厚飼料補給方法を説明する図面である。
【図14】風車と換気扇の軸を説明する装置断面図である。
【図15】ネズミ侵入防止網と飼料タンクとの関係を説明する装置透過図である。
【図16】飼料タンクに設置してある既存の蓋の概要を説明するための写真である。
【図17】本発明装置(風車あり)を飼料タンクに設置したところを説明するための写真である。
【図18】太陽エネルギーを動力とした本発明装置(風車なし)のコードを飼料タンクに沿わして垂らした状態を示す写真である。
【図19】中央部に電気で動作する換気扇(小型ファン)を設置したところを説明するための写真である。
【図20】太陽エネルギーで動作する換気扇は、日の出から日の入りまでを動作するようにしたところを説明するための写真である。
【図21】飼料タンクに濃厚飼料を補給するために開いたところを説明するための写真である。
【符号の説明】
【0031】
1 風車
2 雨水の浸入を防ぐための傘
3 雨水浸入防止筒(雨よけ)
4 飼料タンク引掛具
5 円筒
6 防ネズミ網
7 換気口
8 換気扇
9 飼料タンク取付具
10 防害虫網(防虫網)
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料タンク内の空気の換気を実施するための装置およびそれを取り付けた飼料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜の飼料は、牧草や稲わらなどの粗飼料と穀類などを配合した濃厚飼料に大別される。
畜産農家は、飼料会社から購入した濃厚飼料を畜舎周辺の屋外に設置された飼料タンクに一時貯蔵する(図5A)。飼料タンクは通常グラスファイバー強化プラスチックのホッパーからなり、上部に設けられた供給口から飼料を供給し、下部に設けられた取出口から飼料を取り出す。飼料の供給などの作業時を除いては雨水の浸入を防ぐために供給口は蓋が被せられている(図5B,図16)。飼料タンクは、材質がプラスチック製であることなどから、外気温に大きく影響される。また、屋外にある飼料タンクは、雨水の浸入を防ぐために空気の換気口がないことから、気温の影響を多く受ける。このため、気温の上昇とともに飼料タンク内の温度は急激に上昇し、濃厚飼料は、熱を持つ。熱を持った濃厚飼料は、酸化が促進される。酸化した濃厚飼料は家畜の健康に悪影響を及ぼす問題がある。
【0003】
1日の気温の変動は、飼料タンク内の空気の温度変動に大きく影響する。飼料タンク内の濃厚飼料は、飼料タンク内の急激な温度の変化により温度差が生じる(図9、10参照)。この温度差は、結露の発生につながる(図11,12参照)。結露は、カビや害虫の発生につながり、濃厚飼料の品質の変敗や飼料養分の損耗となり濃厚飼料の品質の低下となる。品質の劣化した濃厚飼料の給与は、家畜や畜産物の生産性が低下するなどの問題がある。
【0004】
飼料タンクの飼料投与口と投与口の隙間からは、ネズミの侵入が可能で、ネズミが侵入することで糞による汚染や臭気が生じ衛生的に濃厚飼料を管理することができない欠点がある。
【0005】
変敗や品質の低下した飼料が、家畜の健康に悪影響を与えることはよく分かっており (図1参照)、これらの改善策として畜産農家が取り得る対応は、濃厚飼料の長期間の貯蔵を避けるため、飼料会社からの配送を小刻みにすることで、飼料の品質保持を保つことであり、飼料タンクに貯蔵している濃厚飼料の品質の低下を防ぐ技術はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、(1)飼料タンクには、雨水の浸入を防ぐために空気の換気口がないことから、飼料タンク内の温度は、昼間の気温の上昇とともに飼料タンク内の温度が気温よりも急激に上昇し、飼料タンク内に貯蔵されている濃厚飼料が熱を持ち、この熱により、濃厚飼料の酸化が進み品質の低下を防ぐことができない点、(2)気温の低下により、飼料タンク内で気温より上昇した温度が下がり、熱伝導率が低い濃厚飼料は、気温が低下しても熱を持ち続け温度差から結露が生じカビや害虫の発生を誘引し、品質の劣化を防ぐことができない点(3)気温の低下とともに、飼料タンク内の湿度は、飼料タンク内で上昇した温度が高いほど急激に上昇する。湿度が高くなった飼養タンク内での濃厚飼料の貯蔵は、品質の劣化を防ぐことができない点、(4)飼料タンク用の蓋の隙間からは、ネズミの侵入が容易でネズミの侵入により、衛生的に濃厚飼料の品質を保てない点である。
【0007】
夏期の飼料タンク内の温湿度の上昇による飼料の品質の劣化を緩和するため、飼料タンク内の温湿度の上昇や昼夜の温湿度差の影響を低減し、飼料の品質保持を図る必要がある。このため、本発明は、外気温の影響を受け、気温の上昇とともに飼料タンク内の温度が上昇することを低減することを可能とし、飼料タンク内に貯蔵される濃厚飼料の熱による酸化や結露が生じる原因である飼料タンク内外の温度差を低減する飼料タンク用換気装置を提供することを目的とする。
また、温湿度の上昇した空気の換気機能と換気にともなう雨水、ネズミ等の侵入を防止し、簡易に既存の飼料タンクに設置することが可能な飼料タンク用換気装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)〜(7)の飼料タンク用換気装置を要旨とする。
(1)上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンク用換気装置であって、飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成された飼料タンク用換気装置。飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するために、飼料タンクの上部に設置してある飼料タンク用の蓋に少なくとも1つの空気を抜き入れるための換気口を設け、この換気口から雨水の浸入を防止するための筒を有する。
(2)換気口に、虫の侵入を防ぐための防虫網を設置した(1)の飼料タンク用換気装置。
(3)飼料投与口より上部であって換気口より下部に飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に換気するための換気扇を納めた(1)または(2)の飼料タンク用換気装置。空気の換気口により、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に排気させ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を低減させる。また、空気の換気口により、飼料タンク内の温度が上昇した空気を強制的に排気させることにより、飼料タンク内の急激な湿度の上昇を低減させる。さらにまた、空気の換気口により、飼料タンク自体が飼料タンク内で温度の高くなった空気の排気を行い飼料タンク内外の温度を平衡に保つ。
(4)飼料タンク用蓋部が開口部覆う傘で構成された(1)、(2)または(3)の飼料タンク用換気装置。
(5)傘に設けた風車または動力で換気扇を作動する(4)の飼料タンク用換気装置。空気の換気を効果的に行うために風車又は動力で換気扇を作動し、効率的な換気を特徴とする。
(6)飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部を有し、この筒部には一方には引掛具、他方に取付具を設け、この引掛具で飼料タンクに引掛け、飼料投与時には、この引掛具をはずし、取付具を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに飼料を補給するようになっている(1)ないし(5)のいずれかの飼料タンク用換気装置。換気装置を飼料タンクから取り外すことなく飼料を補給することができることを特徴とする。
(7)飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部に、ネズミの侵入を防ぐための網を設置した(6)の飼料タンク用換気装置。ネズミの侵入を防ぐための網を設置し、ネズミの侵入を防止する。
【0009】
本発明は、以下の(8)および(9)の飼料タンクを要旨とする。
(8)(1)から(7)のいずれかの飼料タンク用換気装置を取り付けた飼料タンク。
(9)既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて取り付けた(8)の飼料タンク。既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて使用することが可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施例では、気温が31.3℃の時に飼料タンク内の温度は、49.8℃に達したが、本発明の飼料タンク用換気装置を設置した飼料タンク内の温度は、30.1℃であり、本発明の飼料タンク用換気装置を設置することにより、19.7℃の温度の上昇を防止した。また、本発明の実施例では、外気の湿度が40%の時に飼料タンク内の湿度は、74%に達したが、本発明の飼料タンク用換気装置を設置した飼料タンク内のこの時点での湿度は、50%であり、本発明の飼料タンク用換気装置を設置することにより、24%の湿度の上昇を防止した。このことから、上記のように構成された飼料タンク用換気装置は、飼料タンク内の温度や湿度の上昇の防止し、雨水の浸入や害虫並びにネズミの侵入によるによる被害はなかった。
【0011】
雨水やネズミの侵入により濃厚飼料の品質が劣化することなく、飼料タンク内外の温度差と湿度差を低下する目的を、既存の飼料タンクに飼料タンクの蓋と本発明の装置と交換して利用することを実現した。既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて使用することが可能である。装置を飼料タンクから取り外すことなく濃厚飼料を補給することができる(図13, 21)。
本発明により、飼料タンクに貯蔵中の濃厚飼料が暑熱による影響で品質の劣化を防止させることにより、家畜の生産性並びに畜産物の品質の低下を低減させる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
濃厚飼料は、飼料会社から濃厚飼料運搬専用車で配送される。このため、飼料タンクは濃厚飼料運搬専用車から簡易に濃厚飼料を移し変えられる構造となっている。そのため、飼料タンクは、濃厚飼料を一時的に貯蔵するための付帯施設として屋外に設置(図5A)されており、これまで、貯蔵している濃厚飼料の品質保持のための機能はない。飼料タンク内に貯蔵している濃厚飼料は、熱などの影響で酸化や変敗を招き品質が劣化する。品質が劣化した濃厚飼料を家畜に給与した場合は、家畜の生産性や畜産物の品質が低下する。
【0013】
本発明は、飼料タンクに貯蔵中の濃厚飼料が暑熱による影響で品質の劣化を防止させることにより、家畜の生産性並びに畜産物の品質の低下を低減させる装置とするものであり、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に換気するために、飼料タンクの上部に設置してある飼料タンク用の蓋に少なくとも1つの空気を抜き入れるための換気口を設け、この換気口から雨水の浸入を防止するための筒を有することを特徴とする飼料タンク用換気装置である。飼料タンク内で温度の上昇した空気は、自然対流で飼料タンク内上部に貯留する。このことから飼料タンク上部に換気機能をもたらす機能を有することで効果的に飼料タンク内の温度の高くなった空気の排気を行うことが可能である。空気の換気口により、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に排気させ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を低減させる。
【0014】
濃厚飼料を補給する飼料投与口は、飼料タンク上部に設けられている。このことから、飼料タンクの飼料投与口の蓋に換気機能を持たせ、飼料タンク内に雨水の浸入を防止する構造とすることで、新たに飼料タンクに換気口を開ける必要がなく、飼料投与口の蓋を本発明の装置と交換することで既存の飼料タンクに設置することが可能である。
【0015】
空気の換気を効果的に行うために風車又は動力で換気扇を作動し、効率的な換気を特徴とする。空気の換気口により、飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に排気させ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を低減させる。この飼料タンク用の装置には、自然風を活用する風車又は動力により換気扇を設置し、飼料タンク内の空気を強制的に換気する構造とする。
【0016】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されることがない。
【実施例1】
【0017】
本発明の飼料タンク用換気装置およびそれを取り付けた飼料タンクについて、図面を参照しながら説明する。
本発明の飼料タンク用換気装置(以下、「本発明装置」と称することがある。)は、上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンクに用いる換気装置である。飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口7と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒3を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成さる。
図2は、本発明装置の断面図であって、自然風を動力とした風車1の設置により換気扇8が回転し、飼料タンク内の空気を強制的に換気することが可能である(図14参照)。この時、換気扇8を動力で作動するようにすれば(図18〜20参照)、風車1は、必要でない。換気扇を動力で作動するようにしたものは、図21のように小型ファンの風を飼料タンクの下部まで送風するようにホースの設置も有効である。
【0018】
また、雨水の浸入を防ぐための傘2、換気口7からの雨水の浸入を防ぐ筒3を有し、飼料タンクに引掛ける引掛具4で、濃厚飼料投与時には、この引掛具4をはずし、飼料タンク取付具9を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに濃厚飼料を補給する用に構成されている。飼料タンクの濃厚飼料投与口に接合する筒5に、ネズミの侵入を防ぐための網6を設置し、換気口7には、虫の侵入を防ぐための防虫網10を設置し、筒5には飼料タンクと接合するための飼料タンク取付具9が取り付けられている。飼料タンク内で温度が上昇した空気は、飼料タンクから筒5を通過し、換気口7から飼料タンク外に放出される。
【0019】
図3は、本発明装置の下面図である。6は、飼料タンクと飼料タンク用の蓋の隙間からネズミが侵入することを防止するための網である(図7,15参照)。
【0020】
図4は、本発明装置を飼料タンクに設置した側面図である。飼料タンク引掛具4で、飼料タンク取付具9が支点となり開閉する。開封時には、飼料タンクの濃厚飼料投与口から濃厚飼料を補給することが可能である(図13,21参照)。換気扇を動力で作動するようにしたものは、図19に示すような換気扇(小型ファン)の風を飼料タンクの下部まで送風するようにホースを設置することが可能である(図21参照)。
【0021】
本発明の飼料タンク用換気装置およびそれを取り付けた飼料タンクの性能調査について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
新たに考案したかざぐるま式飼料タンク冷却除湿換気蓋
(以下、「かざぐるま式蓋」と略す。)は、雨水やネズミ等の侵入防止と換気機能がある蓋で、電力が必要でなく、飼料タンク内の最高温度を下げ、昼夜の飼料タンク内の温度差の変動を低減させる。そのうえ、飼料タンク内の急激な温度の上昇を緩和し、温度が上昇している時間帯も短縮する効果がある。更に、昼夜の湿度変化の低減や飼料タンク内で温度の上昇した空気の排気により、夜間から早朝にかけての飼料タンク内の湿度を下げる効果もある。これらのことから、かざぐるま式蓋は、飼料タンク内の飼料の変敗や品質低下を低減させることに有効であると示唆される。
【0023】
(性能調査結果)
換気効果を調査するために亜鉛メッキ鉄板で試作したかざぐるま式蓋は、図に示す構造とした(図7、図8A,B)。換気扇の動力は、飼料タンク内の空気の排気のみを行うために自然風で一定方向のみ回転する4枚羽のサボニウス型風車とし、換気扇は、プロペラ羽根5枚とした。
【0024】
それぞれ約1tの市販の濃厚飼料が入った通常の飼料タンク(高さ約320cm、幅約180cm)とかざぐるま式蓋を設置した飼料タンクの上部(飼料投与口から20cm下)と中部(飼料投与口上部から160cm下)の温湿度の変化を1時間ごとに5日間調査した。調査した5日間の平均気温は、24.2℃(最高31.1℃、最低15.8℃)で、平均湿度が、55.6%(最高82.0%、最低28.0%)であった。
【0025】
1)飼料タンク内の上部で5日間測定した1時間ごとの平均温度変化(図9)
通常の飼料タンク内の上部温度は、気温の上昇とともに温度が上昇し、8時以降からは、気温よりも飼料タンク内の温度が高くなった。その後、飼料タンク内の最高温度は、45.8℃まで達し、気温よりも16.3℃も高くなった。19時以降は、気温より飼料タンク内の温度の方が低くなり、最低温度は、18.1℃であった。
かざぐるま式蓋を設置した飼料タンクも、同様の推移を示したが、通常の飼料タンクが気温よりも16.3℃も温度が高かった14時の時点では、10.9℃の上昇で抑えることができ、かざぐるま式蓋の設置で飼料タンク内の温度を5.4℃下げる効果があった。
また、かざぐるま式蓋と通常の飼料タンク内の温度と最も差があった12時では、14.6℃も温度が低く、飼料タンク内の急激な温度の上昇を緩和する効果があり、飼料タンク内の温度が上昇している時間帯も短縮された。更に、1日の飼料タンク内の最高と最低温度の差は、通常の飼料タンクでは、27.7℃であったが、かざぐるま式蓋を設置すると22.1℃となり、5.6℃の温度変動を低減した。
【0026】
2)飼料タンク内の中部で5日間測定した1時間ごとの平均温度変化(図10)
飼料タンク内の中部温度も上部と同様な傾向で、通常の飼料タンク内の温度は、気温の上昇とともに温度が上昇し、9時以降からは、気温よりも飼料タンク内の温度が高くなり、飼料タンク内の最高温度は、39.6℃に達し、気温より10.5℃も高くなった。19時以降は、気温より飼料タンク内の温度の方が低くなり、最低温度は、18.2℃であった。
かざぐるま式蓋を設置した飼料タンクも、同様の推移を示したが、通常の飼料タンクが気温よりも10.5℃も高かった16時の時点では、6.1℃の上昇で抑えることができ、かざぐるま式蓋の設置で飼料タンク内の温度を4.4℃下げる効果があった。
また、かざぐるま式蓋の設置により飼料タンク内の急激な温度の上昇を緩和する効果も見られ、通常の飼料タンク内の温度と最も差があった12時では、5.4℃も低く、飼料タンク内の温度が上昇している時間帯も短縮された。更に、1日の飼料タンク内の最高と最低温度の差は、通常の飼料タンクでは、21.4℃であったが、かざぐるま式蓋を設置することにより16.7℃となり、4.7℃の温度変動を低減した。
【0027】
3)飼料タンク内の上部で5日間測定した1時間ごとの平均湿度変化(図11)
通常の飼料タンク内の上部湿度は、夕方から翌朝まで、外気の湿度よりも高くなる傾向にあり、飼料タンク内の湿度は、最高で21.4%も外気の湿度よりも上昇した。また、1日の最高と最低湿度は、それぞれ77.4%と19.6%で、湿度の変動が57.8%もあった。
通常の飼料タンク内の最高湿度は5時の時点で77.4%であり、外気の湿度74.6%に比べ2.8%高かったのに対して、かざぐるま式蓋を設置した飼料タンク内の湿度は66.4%で、外気の湿度に比べ8.2%下げる効果があった。また、最低湿度は、26.4%で、1日の湿度差が40.0%で、17.8%も湿度の変動が低減された。更に、夜間から早朝にかけて湿度が高くなる時間帯では、最高で湿度がかざぐるま式蓋の設置により14.6%も低くなり、湿度の高くなる時間は、大幅に短縮された。
【0028】
4)飼料タンク内の中部で5日間測定した1時間ごとの平均湿度変化(図12)
通常の飼料タンク内の中部湿度は、上部と同様に夕方から翌朝まで、外気の湿度より高くなる傾向にあり、飼料タンク内の湿度は、外気の湿度よりも最高で18.8%も上昇した。また、1日の最高と最低湿度は、それぞれ74.2%と34.8%で、湿度の変動が39.4%もあった。
通常の飼料タンク内の最高湿度は5時の時点で74.2%であり、外気の湿度74.6%とほとんど同じ湿度であったのに対して、かざぐるま式蓋を設置した飼料タンク内の湿度は67.6%で、外気の湿度よりも7.0%下げる効果があった。また、最低湿度は、40.8%で、1日の湿度差が26.8%で湿度の変動が、12.6%も低減された。更に、夜間から早朝にかけて湿度が高くなる時間帯では、かざぐるま式蓋を設置することで、最高で10.8%も湿度が低くなった。
これらのことから、飼料タンク内の上昇温度による影響に加えて、湿度の上昇も低下させるかざぐるま式蓋は、飼料の変敗や品質低下を低減させることに有効であると示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
飼料タンク内の熱気を自然対流で効果的に換気する場所として飼料投与口を利用するものであり、新たに飼料タンクに換気口を開ける必要もなく、また、効率よく飼料タンク内の空気を換気するために強制的に空気を排気する機能と雨水等の浸入を防止し、従来の蓋と容易に交換が可能な構造の蓋であり、効率的に換気するための動力は、自然風力として電気が必要でなく、山間部の畜舎にも容易に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】飼料タンク内の温度上昇による濃厚飼料の変性について説明する図面である。
【図2】本発明による飼料タンク用の蓋の断面図である。(実施例1)
【図3】本発明による飼料タンク用の蓋の下面図である。(実施例1)
【図4】本発明による飼料タンク用の蓋を設置した側面図である。(実施例1)
【図5】一般的に用いられている飼料タンクが屋外に設置されているのを写した写真である。 A:飼料タンク B:飼料タンク上部(蓋)
【図6】本発明による飼料タンク用の蓋の構造を説明する図面である。
【図7】実施例2のかざぐるま式蓋を説明する模式面である。
【図8】実施例2のかざぐるま式蓋を説明する写真である。 A:かざぐるま式蓋内部(5枚の換気扇) B:飼料タンクに設置したかざぐるま式蓋(右)と上部のサボニウス型風車
【図9】飼料タンク内の上部温度変化(5日間の平均)である。
【図10】飼料タンク内の中部温度変化(5日間の平均)である。
【図11】飼料タンク内の上部湿度変化(5日間の平均)である。
【図12】飼料タンク内の中部湿度変化(5日間の平均)である。
【図13】飼料タンク用の蓋の濃厚飼料補給方法を説明する図面である。
【図14】風車と換気扇の軸を説明する装置断面図である。
【図15】ネズミ侵入防止網と飼料タンクとの関係を説明する装置透過図である。
【図16】飼料タンクに設置してある既存の蓋の概要を説明するための写真である。
【図17】本発明装置(風車あり)を飼料タンクに設置したところを説明するための写真である。
【図18】太陽エネルギーを動力とした本発明装置(風車なし)のコードを飼料タンクに沿わして垂らした状態を示す写真である。
【図19】中央部に電気で動作する換気扇(小型ファン)を設置したところを説明するための写真である。
【図20】太陽エネルギーで動作する換気扇は、日の出から日の入りまでを動作するようにしたところを説明するための写真である。
【図21】飼料タンクに濃厚飼料を補給するために開いたところを説明するための写真である。
【符号の説明】
【0031】
1 風車
2 雨水の浸入を防ぐための傘
3 雨水浸入防止筒(雨よけ)
4 飼料タンク引掛具
5 円筒
6 防ネズミ網
7 換気口
8 換気扇
9 飼料タンク取付具
10 防害虫網(防虫網)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンクに用いる換気装置であって、飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成された飼料タンク用換気装置。
【請求項2】
換気口に、虫の侵入を防ぐための防虫網を設置した請求項1の飼料タンク用換気装置。
【請求項3】
飼料投与口より上部であって換気口より下部に飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に換気するための換気扇を納めた請求項1または2の飼料タンク用換気装置。
【請求項4】
飼料タンク用蓋部が開口部覆う傘で構成された請求項1、2または3の飼料タンク用換気装置。
【請求項5】
傘に設けた風車または動力で換気扇を作動する請求項4の飼料タンク用換気装置。
【請求項6】
飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部を有し、この筒部には一方には引掛具、他方に取付具を設け、この引掛具で飼料タンクに引掛け、飼料投与時には、この引掛具をはずし、取付具を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに飼料を補給するようになっている請求項1ないし5のいずれかの飼料タンク用換気装置。
【請求項7】
飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部に、ネズミの侵入を防ぐための網を設置した請求項6の飼料タンク用換気装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの飼料タンク用換気装置を取り付けた飼料タンク。
【請求項9】
既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて取り付けた請求項8の飼料タンク。
【請求項1】
上部に飼料投与口、下部に飼料取出口が設けられた飼料タンクに用いる換気装置であって、飼料タンク内で温度が上昇した空気を換気するための換気口と、この換気口から雨水の浸入を防止する雨水浸入防止筒を有する、飼料投与口に設けた飼料タンク用蓋部で構成された飼料タンク用換気装置。
【請求項2】
換気口に、虫の侵入を防ぐための防虫網を設置した請求項1の飼料タンク用換気装置。
【請求項3】
飼料投与口より上部であって換気口より下部に飼料タンク内で温度が上昇した空気を強制的に換気するための換気扇を納めた請求項1または2の飼料タンク用換気装置。
【請求項4】
飼料タンク用蓋部が開口部覆う傘で構成された請求項1、2または3の飼料タンク用換気装置。
【請求項5】
傘に設けた風車または動力で換気扇を作動する請求項4の飼料タンク用換気装置。
【請求項6】
飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部を有し、この筒部には一方には引掛具、他方に取付具を設け、この引掛具で飼料タンクに引掛け、飼料投与時には、この引掛具をはずし、取付具を支点して、本装置が半回転することで飼料タンクに飼料を補給するようになっている請求項1ないし5のいずれかの飼料タンク用換気装置。
【請求項7】
飼料タンクの飼料投与口に接合する筒部に、ネズミの侵入を防ぐための網を設置した請求項6の飼料タンク用換気装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの飼料タンク用換気装置を取り付けた飼料タンク。
【請求項9】
既存の飼料タンク用の蓋と取り替えて取り付けた請求項8の飼料タンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図8】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図8】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−252307(P2007−252307A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82704(P2006−82704)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(592167411)香川県 (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(592167411)香川県 (40)
【Fターム(参考)】
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