説明

養殖魚の血合筋色調を改善および保持する方法ならびに養殖魚用の飼料

【課題】血合筋色調改善あるいは保持機能を有する天然食品素材を用いた魚用飼料を提供する。
【解決手段】養殖魚に、飼料原料100重量部に対して、トウガラシを0.1〜0.3重量部、又はチョウジ油を0.1〜0.25重量部を含有する飼料を給餌させる養殖魚の血合筋色調改善又は保持方法、およびこの方法に用いるトウガラシまたはチョウジ油を含有する養殖魚用飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血合筋色調改善および保持機能を有する魚類飼料に関する。より詳細には本発明は、魚類、特に養殖魚、なかでもブリ類に給餌することにより、刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調させる魚類飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖ブリ類は刺身にしたときに血合筋の色調変化が速い。したがって、たとえ鮮度が良い刺身であっても、血合筋の赤さをなくした刺身は商品価値を著しく低下させてしまう。
一方、マグロ等では一酸化炭素による赤身の色調保持が知られており、養殖魚にも適応できる。この方法は、筋肉色素ミオグロビン(Mb)が一酸化炭素COと結合してカルボニルミオグロビン(MbCO)に変化することで色調変化が止まり、鮮度が変化しても血合筋は変色せず、外観と鮮度が一致しないため、消費者を惑わすため禁止されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、この養殖魚の問題を解決するため、人為的に筋肉色素(ミオグロビン)を変化させるものではなく、魚類の潜在能力を最大に引き出し、刺身の血合筋の色調を保持する養魚飼料を提供することを目的とする。本発明は、単品で何が効くかを押さえることにより、養殖魚の当該天然食品素材に対する給餌行動を観察でき、かつ、刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調しながらゆっくり進行させる機能の血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認でき、その機能がより効果的に発揮される養魚飼料を提供することを目的とする。本発明は、刺身に加工したとき、筋肉色素の酸化によって速やかに進行する血合筋の色調変化を抑制することのできる養魚飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、単品で血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認した天然食品素材を含有することを特徴とする養殖魚用飼料および、この飼料を給餌させることを特徴とする養殖魚の血合筋色調改善または保持方法である。上記の天然食品素材は、給餌することにより、刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調しながらゆっくり進行させる機能の血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認したものである。したがって、本発明は、単品で血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認し、かつ、給餌することにより、刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調しながらゆっくり進行させる機能の血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認した天然食品素材を含有することを特徴とする魚類飼料に係るものであり、以下の技術的手段から構成される。
【0005】
(1)養殖魚に、飼料原料100重量部に対して、トウガラシを0.1〜0.3重量部、又はチョウジ油を0.1〜0.25重量部を含有する飼料を給餌させることを特徴とする養殖魚の血合筋色調改善又は保持方法。
(2)トウガラシが、トウガラシ成分またはトウガラシ粉末である上記(1)の養殖魚の血合筋色調改善又は保持方法。
(3)養殖魚が、ブリ類である上記(1)又は(2)の血合筋色調改善又は保持方法。
(4)飼料原料100重量部に対して、トウガラシを0.1〜0.3重量部、又はチョウジ油を0.1〜0.25重量部を含有し、養殖魚の血合筋色調改善又は保持機能を有することを特徴とする養殖魚用飼料。
(5)養殖魚が、ブリ類である上記(4)の養殖魚用飼料。
【発明の効果】
【0006】
どの単品が効くかが分かった、魚類の血合筋の色調、特に血合筋の色調変化が速い養殖ブリ類の血合筋の色調を保持する養魚飼料を提供することができる。
ただし、鮮度が低下しても血合筋の色調を保持し消費者を惑わすような長時間の色調保持ではなく、血合筋の色調変化が鮮度変化に同調しながら進行する刺身を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】画像解析による飼育54日後の各試験区の刺身加工後27時間の血合筋の色調を示す説明図である。
【図2】色彩色差計による飼育54日後の各試験区の刺身加工後27時間の血合筋の色調を示す説明図である。
【図3】画像解析による飼育36日後の各試験区の刺身加工後24時間の血合筋の色調を示す説明図である。
【図4】トウガラシの血合筋色調改善あるいは保持機能が、最も優れていることを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の単品で血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認した天然食品素材は、トウガラシまたはチョウジであり、上記トウガラシとしてトウガラシ成分を、上記チョウジとしてチョウジ成分をそれぞれ用いることができる。
本発明は、トウガラシまたはチョウジから選ばれる植物、あるいはトウガラシ、チョウジの成分のなかから選ばれる成分を血合筋色調改善あるいは保持剤として含有することを特徴とする魚類飼料である。
より詳細には本発明は、トウガラシまたはチョウジから選ばれる植物、あるいはトウガラシまたはチョウジの成分のなかから選ばれる成分を、給餌することにより、刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調しながらゆっくり進行させる機能の血合筋色調改善あるいは保持剤として含有することを特徴とする魚類飼料である。
【0009】
上記トウガラシ、チョウジのなかから選ばれる植物、あるいはトウガラシ、チョウジの成分のなかから選ばれる成分の中で、実施例で裏付けされているように、上記機能を発揮する効果において最も優れたものである。
したがって本発明の最も好ましい態様は、トウガラシあるいはトウガラシ成分を血合筋色調改善あるいは保持剤として含有することを特徴とする魚類飼料である。より詳細には本発明は、トウガラシあるいはトウガラシ成分を、給餌することにより、刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調しながらゆっくり進行させる機能の血合筋色調改善あるいは保持剤として含有することを特徴とする魚類飼料である。
トウガラシあるいはトウガラシ成分の含有量は、好ましくは飼料原料100重量部に対してトウガラシあるいはトウガラシ成分を0.1〜0.3重量部の割合で含有することができる。特に下限はトウガラシ成分のためのもので、0.1重量部以上含まれていると血合筋色調改善あるいは保持の効果を発揮する。
【0010】
チョウジあるいはチョウジ成分の含有量は、好ましくは飼料原料100重量部に対してチョウジあるいはチョウジ成分を0.1〜0.25重量部の割合で含有することができる。特に下限はチョウジ成分のためのもので、0.1重量部以上含まれていると血合筋色調改善あるいは保持の効果を発揮する。
【0011】
本発明が対照とする魚類は好ましくは養殖魚である。具体的には、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、シマアジ、アジ、マダイ、ティラピア等の魚類が例示されるが、ブリ類が最も好ましい。
【0012】
本発明で用いるトウガラシは、カプサイシン、ビタミンC、カロチノイド等を含み、消化液の分泌促進、鎮痛、血管の収縮および拡張作用を有する。トウガラシは粉末状を用いることができるが、トウガラシ果実をそのまま用いることもできる。
【0013】
本発明で用いるチョウジは、精油成分にオイゲノール、アセチルオイゲノール等を含み、局所麻酔、鎮痛作用を有する。チョウジは粉末状を用いることができるが、蕾をそのまま、あるいはチョウジ油を用いることもできる。
【0014】
(作用)
単品で血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認した天然食品素材について、さらに給餌することにより刺身に加工したときの血合筋の色調変化を鮮度変化に同調しながらゆっくり進行させる機能の血合筋色調改善あるいは保持機能を有することを確認した天然食品素材を給餌させることにより、刺身に加工したとき、筋肉色素の酸化によって速やかに進行する血合筋の色調変化を抑制することができる。血合筋の色調変化は、鮮度変化に同調しながらゆっくり進行するため、まだ高鮮度であるにもかかわらず血合筋表面の肉色のみが先に劣化して、商品価値を損なうことを防ぐことができる。ただし、鮮度低下が進むにつれ色調は相応して低下し、不自然な色調保持により消費者を錯覚させることはない。
【0015】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
ハマチへのトウガラシ添加飼料給餌試験
方法:平均体重1.91kgのハマチを40尾用いた。ハマチを8m×8mの生け簀を4等分した4m×4mの小割生け簀を2槽用い20尾づつ収容した。試験はФ12mmのハマチ用市販EPを給餌したコントロール区、市販EPに0.3%トウガラシ粉末を添加したトウガラシ区とした。
【0017】
給餌は1日1回、飼育は54日間行った。飼育54日後にコントロール区は5尾、トウガラシ区は6尾水揚げし、延髄付近を切断して即殺した。27時間氷蔵してから刺身に加工した。刺身は4℃に保存し、刺身加工から27時間後に各試験区の血合筋の色調変化を比較した。
【0018】
血合筋の色調は、画像解析ソフトPhotoshop(Adobe社)と色彩色差計(ミノルタCR−200)を用いて測定した。
画像解析による測定方法は、CCDカメラ(FOTOVISION FV−10、フジフィルム社)でコンピューターに取り込んだ画像を、画像解析ソフトPhotoshopのLabモードで色調解析し、a/b値を算出した。a/b値は数字が大きいほど鮮やかな赤色で、数字が小さいほど枯草色に近づいていくことを示している。ただし、PhotoshopのL*a*b*は、L値、a値、b値を各々256段階で表示しており、CR−200で得られたL*a*b*値とは数値が異なる。
色彩色差計による測定方法は、1個体につき3箇所の色彩を測定し、各個体毎に平均L*a*b*値を求めた。
【0019】
色彩色差計CR-200は、国際照明委員会(CIE)で規格化されたL*a*b*表色系を採用しており、1回の測定の測定可能範囲が狭いものの、狭い範囲の絶対評価に適している。一方、画像解析による測定は、測定範囲を自由に選択でき、1回の測定の測定可能範囲が広く、色調変化の全体像を把握するのに適している。
【0020】
結果:図1に即殺後27時間氷蔵し、刺身加工から27時間後(即殺54時間)の血合筋の画像解析によるa/b値は、コントロール区が1.04、トウガラシ区が1.15であり、トウガラシ区がコントロール区と比較して赤さが保持されていた。
【0021】
図2に即殺後27時間氷蔵し、刺身加工から27時間後(即殺後54時間)の血合筋の色彩色差計によるa/b値を示した。a/b値は、コントロール区が1.04、トウガラシ区が1.51であり、トウガラシ区がコントロール区と比較して赤さが保持されていた。
【実施例2】
【0022】
ハマチへのトウガラシ添加飼料およびチョウジ油添加飼料給餌試験
方法:平均体重1.84kgのハマチを80尾用いた。ハマチを8m×8mの生け簀を4等分した4m×4mの小割生け簀に20尾づつ収容した。試験はФ12mmのハマチ用市販EPを給餌したコントロール−1区、市販EPに0.3%トウガラシ粉末を添加したトウガラシ区、市販EPに4%イワシフィールドオイルを添加したコントロール−2区、市販EPに0.25%チョウジ油と3.75%イワシフィールドオイルを添加したチョウジ油区の4試験区を設定した。
【0023】
給餌は1日1回、飼育は36日間行った。飼育36日後に各試験区3尾づつ水揚げし、延髄付近を切断して即殺した。即殺後26時間氷蔵してから刺身に加工した。刺身は4℃に保存し、刺し身加工から24時間後に各試験区の血合筋の色調変化を比較した。
【0024】
血合筋の色調は、画像解析ソフトPhotoshop(Adobe社)を用いて測定した。
画像解析による測定方法は、CCDカメラ(FOTOVISION FV−10、フジフィルム社)でコンピュータに取り込んだ画像を、画像解析ソフトPhotoshopのLabモードで色調解析し、a/b値を算出した。a/b値は数字が大きいほど鮮やかな赤色で、数字が小さいほど枯草色に近づいて行くことを示している。
【0025】
結果:図3に即殺後26時間氷蔵し、刺身加工から24時間後(即殺後50時間)の血合筋の画像解析によるa/b値を示した。a/b値は、コントロール−1区が0.97、トウガラシ区が1.08、コントロール−2区が0.98、チョウジ油区が1.04であり、トウガラシ区とチョウジ油区がコントロール−1、−2区と比較して赤さが保持されていた。
【0026】
〔参考例〕
まず、種々の溶液の血合筋の浸漬または塗布することによる色調保持効果を調べた。ハマチ血合筋の色調保持に効果の強かった物質は、緑茶、ローズマリー、バニリン、ヘリガード、オイゲノールであった。特に、オイゲノールの効果が強かった。
《目的》
ハマチの血合筋はカンパチと比較して色調変化が速く、血合筋を露出した状態で保存したとき外観が悪くなりやすい。本試験では、飼料添加物による血合筋の色調を保持あるいは改善するためのスクリーニングとして、血合筋への抗酸化剤等の浸漬や塗布による血合筋の色調保持効果を調べた。
《材料と方法》
試験1
ハマチの血合筋をサイコロ状に切り出し、下記物質の水溶液に3分間浸漬後、10℃に26時間保存し、血合筋の色調保持効果を比較した。試験区は表1(試験1の試験区)に示した様に、何も浸漬しない区をコントロール区とし、アスコルビン酸ナトリウム区、α−トコフェロール区、緑茶区、ローズマリー区、リン酸緩衝液区、ヘリガード区(クロロゲン酸含有製剤、大日本インキ(株))、ヘリアント区〔クロロゲン酸製剤、大日本インキ(株)〕、炭酸水素ナトリウム区、バニリン区の10区を特定した。
【0027】
【表1】

【0028】
試験2
ハマチの血合筋をサイコロ状に切り出し、下記物質の0.2%濃度(w/v)の水溶液にそれぞれ3分間浸漬後、10℃に16時間保持し、血合筋の色調保持効果を比較した。試験区は表2(試験2の試験区)に示した様に、何も浸漬しないコントロール区に加え、炭酸水素ナトリウム区、VE8−α区(ビタミンE製剤、旭電化工業(株))、サンフェノン100S〔カテキン製剤、太陽化学(株)〕、トウガラシ(水懸濁物)区の5区を設定した。
【0029】
【表2】

【0030】
試験3
ハマチの血合筋をサイコロ状に切り出し、下記物質のそれぞれの溶液を薄く塗布し、4℃に保持し2時間後と42時間後に血合筋の色調保持効果を比較した。試験区は表3(試験3の試験区)に示した様に、何も塗布しないコントロール区、オイゲノール/W区、オイゲノール/E区、トウガラシ/E区、αトコフェロール/E区、アスコルビン酸ナトリウム/W区、炭酸水素ナトリウム/W区、緑茶区、オリーブ抽出物/W区、オリーブ抽出物/E区、(α−トコ/E)+(アスコルビン酸/W)区、BHT/E区、エタノール区、蒸留水区の15区を設定した。
【0031】
【表3】

【0032】
《血合筋の色調測定》
血合筋の色調は、画像解析ソフトPhotoshop(Adobe社)を用いて測定し、a/b値で求めた。a/b値は、数値が大きいほど赤色が強く、逆に数値が小さいほど黄色が強いことを示しており、本試験では、a/b値が大きいほど鮮やかな赤、小さいほど血合い筋の色調変化が進んで枯草色になっていることを示している。
画像解析による測定方法は、CCDカメラ(FOTOVISION FV−10、フジフィルム社)でコンピュータに取り込んだ画像を、画像解析ソフトPhotoshopのLabモードで色調解析した。ただし、PhotoshopのL*a*b*は、L値、a値、b値を各々256段階で表示しており、色彩色差計で得られた国際照明委員会で規格化したL*a*b*値とは数値が異なる。
【0033】
《結果》
試験1
10℃に26時間保存したとき、pH7.0のリン酸緩衝液に浸漬下血合筋以外は、すべてコントロールと比較して赤さが保持されていた。特に、緑茶、ローズマリー、バニリン、ヘリガードで顕著であった。
試験2
10℃に16時間保存したとき、市販製剤であるVE8−αやサンフェノン100Sには血合筋の色調保持効果がなかった。また、トウガラシの水懸濁物にも血合筋の色調保持効果がなかった。
試験3
4℃に保存したとき、オイゲノールに血合筋の色調保持効果が認められた。また、アスコルビン酸ナトリウムとα−トコフェロールとの混合物、炭酸水素ナトリウム、緑茶にもオイゲノールより劣るものの効果が認められた。
《考察》
3回の試験結果でハマチ血合筋の色調保持に効果の認められた物質は、緑茶、ローズマリー、バニリン、ヘリガード、オイゲノールであった。特に、オイゲノールの効果が強かった。上記物質にはバニリンを除いて抗酸化作用が知られているが、一般的に抗酸化剤として多用されるアスコルビン酸、トコフェロール、さらに強力な合成抗酸化剤であるBHTと比較して、上記物質は本試験の条件下では血合筋の色調保持効果が強かった。
実施例1および実施例2において、トウガラシ添加飼料に血合筋色調保持効果が示されているが、本試験ではトウガラシの水懸濁物およびエタノール抽出液には血合筋色調保持効果がなかった。しかし、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンの代謝産物であるバニリンに効果が認められた。ラットにおいては、吸収されたカプサイシンは速やかに代謝されて血中から消失することが報告されており、ハマチにおいてもカプサイシンは同様に代謝され、バニリン等の代謝産物が血合筋の色調保持効果を発揮した可能性がある。
【実施例3】
【0034】
ハマチへのトウガラシ添加飼料給餌試験
方法:体重約1.8kgのハマチを40尾用いた。ハマチを8m×8mの生け簀を4等分した4m×4mの小割生け簀を2基用い20尾づつ収容した。試験はФ12mmのハマチ用市販EPを給餌したコントロール区、市販EPに0.3%トウガラシ粉末を添加したトウガラシ区とした。
【0035】
給餌は1日1回、飼育は36日間行った。飼育36日後に各試験5尾づつ水揚げし、延髄付近を切断して即殺した。26時間氷蔵してから刺身に加工した。
【0036】
コントロール区の刺身の血合筋には、0.5%ローズマリー水抽出物(W/W)、0.1%チョウジ抽出物(W/W)、0.5%トウガラシ抽出物(W/W)を塗布した。
刺身は4℃に保存し、刺身加工から24時間後に各試験区の血合筋の色調変化を比較した。
【0037】
血合筋の色調は、画像解析ソフトPhotoshop(Adobe社)を用いて測定した。
画像解析による測定方法は、CCDカメラ(FOTOVISION FV−10,フジフィルム社)でコンピューターに取り込んだ画像を、画像解析ソフトPhotoshopのLabモードで色調解析し、a/b値を算出した。a/b値は数字が大きいほど鮮やかな赤色で、数字が小さいほど枯草色に近づいていくことを示している。ただし、PhotoshopのL*a*b*は、L値、a値、b値を各々256段階で表示しており、国際照明委員会(CIE)で規格化されたL*a*b*表色系とは数値が異なる。
【0038】
《結果》
図4に即殺後26時間氷蔵し、刺身加工から24時間後(即殺後50時間)の血合筋の画像解析によるa/b値を示した。a/b値は、何も塗布しなかったコントロール区が0.83、ローズマリー区が0.99、チョウジ区が0.95、トウガラシ区が0.84であったのに対し、トウガラシ添加飼料区は1.08であり最も血合筋の赤さを保持していた。また、トウガラシの血合筋色調改善あるいは保持機能が、浸漬または塗布による色調保持機能とメカニズムが異なることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖魚に、飼料原料100重量部に対して、トウガラシを0.1〜0.3重量部、又はチョウジ油を0.1〜0.25重量部を含有する飼料を給餌させることを特徴とする養殖魚の血合筋色調改善又は保持方法。
【請求項2】
トウガラシが、トウガラシ成分またはトウガラシ粉末である請求項1の養殖魚の血合筋色調改善又は保持方法。
【請求項3】
養殖魚が、ブリ類である請求項1又は2の血合筋色調改善又は保持方法。
【請求項4】
飼料原料100重量部に対して、トウガラシを0.1〜0.3重量部、又はチョウジ油を0.1〜0.25重量部を含有し、養殖魚の血合筋色調改善又は保持機能を有することを特徴とする養殖魚用飼料。
【請求項5】
養殖魚が、ブリ類である請求項4の養殖魚用飼料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−232864(P2009−232864A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166231(P2009−166231)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【分割の表示】特願平11−17686の分割
【原出願日】平成11年1月26日(1999.1.26)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】