説明

首装具

首装具(10)は、着用者の首の周りに配されるカラー部材(12)と、このカラー部材(12)から延在して着用者の背中に当接する後方部材(14)とを有している。この装具は、カラー部材を後方部材に留めるための取り外し可能な留め手段(74,75,88a,88b,92)をさらに具え、カラー部材および後方部材もまた取り外し可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者、特にスポーツ活動、例えば自動車レースにおける乗員の頭部および首に対してヘルメットにより与えられる保護を強化するために用いられる首装具に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車レースの如きスポーツ活動における当事者にとって予期しない事故での彼らの頭部を保護するためにヘルメットを着用することが必須である。
【0003】
着用者に対する付加的な保護を確実にするため、弾力のある材料、一般的には硬質発泡体で作られて着用者の胴体上部とヘルメットの基部との間に配されるカラーの使用が提案されている(例えば特許文献1を参照のこと)。その目的は、ヘルメットが動く可能性のある隙間を減少させることにより、衝突の際の頭部の動きをある程度制限することにある。
【0004】
他の首装具は、この首装具の安定性を最大にするため、着用者の胸および背中まで延在している。
【0005】
従って、特許文献2は、2つの硬質部品、前方部分と後方部分とから作られ、相互に首の周りに締結可能な頸部カラーを開示する。
【0006】
特許文献3は、カラー部材と後方部材とを持った首装具を開示する。このカラー部材は2つの部分に蝶番式に取り外し可能であって、これらの間に首を挿入するために横に開くのに対し、後方部材は2つの部分の一方に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6058517号明細書
【特許文献2】米国特許第6494854号明細書
【特許文献3】国際公開WO2005051252号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらのカラーは、既定の形状を有していて使用者に合わせた変更ができないため、着用性が良くない可能性がある。
【0009】
この種の首装具は、これらが人の身体に適合させるのに困難であって、着用しにくいという大きな欠点を有する。さらに、これらの装具は、過度の拘束性を持ち、利用者がそのスポーツに参加するために着用しなければならない可能性がある防護衣料の他の特徴と容易には協調しない。
【0010】
[発明の目的]
本発明の主たる目的は、上述した欠点のいくつかを克服することができる首装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、
着用者の首の周りに配されるカラー部材と、
このカラー部材から延在して着用者の背中に当接する後方部材と
を有し、前記カラー部材を前記後方部材に留めるための取り外し可能な留め手段をさらに具え、前記カラー部材および前記後方部材もまた取り外し可能なようになっていることを特徴とする首装具によって得られる。
【0012】
好ましくは、前記取り外し可能な留め手段が単一動作の取り外し可能な留め部材を具え、この留め部材は前記カラー部材および前記後方部材を取り外すために利用者によって行われる単一動作で操作可能である。これは、この装具の着用性と快適性とを高める。
【0013】
好ましくは、前記カラー部材が前記取り外し可能な留め部材によって相互に連結される2つの別々な部分を具え、単一動作の取り外し可能な留め部材であることが好都合な可能性がある。これは、単純かつ容易な動きを伴ってこの装具を迅速に装着することを可能にする。
【0014】
好ましくは、前記取り外し可能な留め部材が前記2つの部分を旋回するように取り付けられ、これらを広げるためにこれらが前記取り外し可能な留め部材に対して回転できるようになっている。これは、単純かつ容易な動きを伴ってこの装具を迅速に装着することをさらに可能にする。
【0015】
好ましくは、前記取り外し可能な留め部材が対応する受け座に固定可能な横方向突起を持つ回転可能なピン部材である(後者を前記カラー部材または前記後方部材の何れかに形成することができる)。
【0016】
変形例として、前記回転可能なピン部材は、前記カラー部材の一方の部分と一体に取り付け可能な孤立部品であり、前記対応する受け座が前記後方部材にて得られる。この場合、一方の部分は、孤立したピン部材に設けられた平坦な頭部を相補的に収容可能な多角形の凹部を有することができる。これは単純であるが、前記回転可能なピン部材と前記カラー部材とを結合する有効な方法である。さもなければ、前記回転可能なピン部材は前記カラー部材の一方の部分と常に一体であってよい。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照しつつ以下のいくつかのその実施形態の説明からさらに良好に見えてこよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】首装具の部品の分解図を示す。
【図2】図1の首装具の主要な基本部品のさらなる分解図を示す。
【図3】図1の組み立てた首装具の底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、添字「a」および「b」付きの参照符号が、この首装具において同等または対応する部品であることを理解すべきである。
【0020】
最初に図1を参照すると、参照符号10で概ね示される首装具は、使用中に着用者の首の周りに延在するカラー部材12と、使用中に着用者の背中に載る後方部材14とを有する。
【0021】
カラー部材12は、2つの半円形の部分16,18を具え、閉鎖手段、例えば取り外し可能なバックル20を介して正面で(すなわち着用者のあごで)連結される。これら半円形の部分16,18は、より詳細に以下に記述されるように、取り外し可能な留め手段により着用者のうなじにて相互におよび後方部材14に結合される。
【0022】
2つの部分16,18は、使用中にヘルメット(図示せず)の下面に対して当接することができる上面29a,29bと、カラー部材12から器具の肩および胸の上部へと下方に延在するパッド入りの突起24a,24bとを有する。これらの突起24a,24bは、衝突によって僅かに変形する硬質材料、例えば高密度発泡体などや、より軟質の材料で作られることができ、使用中に着用者の肩および胸の上部にもたせ掛けるようになっている。
【0023】
2つの部分16,18は、これらの後部に特定な形状を有している。これらの後端部17,19は、互いの方に曲げられ、湾曲し、カラー部材12から外側に突出するリップ84a,84bで縁取られた円形の平坦な領域82a,82bで終わる。各平坦な領域82a,82bの中央部には、その中心に円形の拡大部を持つ長方形の横方向溝88a,88bがある(全体的な形状が鍵穴に似ている)。平坦な領域82bは、僅かな奥行のある四角形の(または概ね多角形の)凹部83を有し、その対角に溝88bが得られる。凹部83の設備は、横方向突出ピン96を持った円筒状の本体94を有する独立した固定キー92に設けられた平坦な頭部90のそれに対応する。ピン96の長さは、溝88a,88bのそれと同じである。あるいは、固定キー92を個別部品に代えて一方の部分18に同様に一体成形可能であり、領域82bおよび溝88bに対する必要性を排除する。
【0024】
2つの丸い端部17,19は、相互に重なり合って相互に回転できるように形成されている。これは、上部領域82bをぴったりと収容するように僅かにへこませた下側の支持平坦領域82aの結果である。2つの丸い端部17,19を重ね合わせて取り付けた場合、溝88a,88bの中心の円形の拡大部が整列する。しかしながら、溝88a,88bの向きが同じではない、すなわちこれらはカラー部材12の相対的片方の部分16,18の長手方向軸線が異なる角度に形成されているため、両方の部分16,18が所定の開き角度位置にある場合にのみ、溝88a,88bを整列させることができることに注意しなければならない。
【0025】
両方の部分16,18が平行(カラー部材12を閉じた形状)な場合に溝88a,88bは整列せず、これに対して両方の部分16,18を所定量(カラー部材12を開いた形状)だけ広げた場合にこれらが必ず整列することが望ましい。このカラー部材12の使用および着用方法が以下に与えられよう。
【0026】
後方部材14は、乗員の衣服にある複数のスタッドと協力してこれをその上に固定することができる複数の開口34(1つのみ示している)を持った半楕円形のベース板60(任意の適当な種類のプラスチックまたは金属材料から作られる)を有する。この固定のためにベルクロも同様に用いることができる。
【0027】
ベース板60を流線形の隆起部45に収容することができるように、2つのアーチ状の脚部72a,72bと上板74とによって構成され、蝶番式に取り付けられる支持部材70がある。脚部72a,72bは板74の下から突出してベース板60に当接するのに対し、上板74は縁部に設けられてピン78が貫通する2つの円筒状ブシュ76a,76bを有する。支持部材70の底面図に関する図2の破線の円を参照のこと。
【0028】
ピン78はまた、ベース板60の縁部にある3つのブシュ80a,80b,80cに係合し、それによって後者を支持部材70に対して蝶番式に取り付けている。
【0029】
上板74は、寸法が溝88a,88bと等しいけれども両方の部分16,18が平行の場合にこれらに対して異なる向きを持った横方向溝75を有する。脚部72a,72bに面する上板74の表面の溝75のそばには、2つのレンズ状くぼみ98a,98bがある。
【0030】
首装具10を以下のように着用することができる。
【0031】
板60は、スタッド留め具とベルクロとを用いて乗員の衣服に装着され、支持部材70がピン78を用いてこれに装着される。板60の端縁に脚部72a,72bを当接させることにより、支持部材70はカラー部材12の後方への自由度を規定し、そして異なる寸法の脚部72a、72bを持った交換部品70により、この装具の角度を調整できることに注意すべきである。次に、流線形であって外観を整える目的のためのパッド入りの隆起部45が板60の後部に装着される。
【0032】
固定キー92が溝88bに挿入され、その頭部90が相補的な凹部83に嵌合され、それによってこれを片方の部分18と一体に回転できるようにする。
【0033】
次に、2つの部分16,18が広げられて重ね合わされ、溝88a,88bを整合させる。次に、固定キー92のピン96が同様に片方の部分16の溝88aに挿入される。
【0034】
次に、カラー部材12を装着するため、使用者はこれを背中から首越しに前部まで滑るように動かす。次に、使用者は2つの部分16,18を閉じずにカラー部材12を後方に下げ動かし、ピン96を支持部材70の溝75に係合させる。次に、使用者はこの時点で両方の部分16,18を回して首の近くにこれらを引き寄せ、これらを前部のバックル20で締結する。この単一動作は、固定キー92、それゆえピン96を支持部材70の下側に回転させる。従って、ピン96はくぼみ98a,98bを飛び越えてその他方側に固定されて留まる。このように、2つの部分16,18は回転後に溝75から脱出できないピン96によって支持部材70に(それゆえ乗員の衣服に)結合される。
【0035】
カラー部材12を取り外すため、使用者はバックル20を開き、両方の部分16,18を引き離す。これは、ピン96が溝75と整合するように固定キー92を回転させると共に両方の部分16,18がこれらから解放されよう。支持部材70から自由になると、両方の部分16,18は、ピン96が溝88aと整合して2つの部分16,18が別々になることができるように、切り離し続けることができる。これは、この装具10の全体的な寸法を減少させ、これの保管および運搬をより容易にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の首の周りに配されるカラー部材(12)と、
このカラー部材(12)から延在して着用者の背中に当接する後方部材(14)と
を有する首装具(10)であって、
前記カラー部材を前記後方部材に留めるための取り外し可能な留め手段(74,75,88a,88b,92)をさらに具え、前記カラー部材および前記後方部材もまた取り外し可能なようになっていることを特徴とする首装具。
【請求項2】
前記取り外し可能な留め手段は単一動作の取り外し可能な留め部材(92)を具え、この留め部材は前記カラー部材および前記後方部材を取り外すために利用者によって行われる単一動作で操作可能であることを特徴とする請求項1に記載の首装具(10)。
【請求項3】
前記カラー部材(12)は、前記取り外し可能な留め部材(92)によって相互に連結される2つの別々な部分(16,18)を具えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の首装具(10)。
【請求項4】
前記取り外し可能な留め部材(92)は、前記2つの部分(16,18)を旋回するように取り付けられ、これらを広げるためにこれらが前記取り外し可能な留め部材(92)に対して回転できるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の首装具(10)。
【請求項5】
前記取り外し可能な留め部材が対応する受け座(75)に固定可能な横方向突起(96)を持つ回転可能なピン部材(92)であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の首装具(10)。
【請求項6】
前記回転可能なピン部材(92)は、前記カラー部材(12)の一方の部分(18)と一体に取り付け可能な孤立部品であり、前記対応する受け座(75)が前記後方部材(14)にて得られることを特徴とする請求項5に記載の首装具(10)。
【請求項7】
一方の部分(18)は、孤立したピン部材(92)に設けられた平坦な頭部(90)を相補的に収容可能な多角形の凹部(83)を有することを特徴とする請求項6に記載の首装具(10)。
【請求項8】
前記回転可能なピン部材(92)が前記カラー部材(12)の一方の部分(18)と常に一体であり、前記対応する受け座(75)が後方部材(14)にて得られることを特徴とする請求項5に記載の首装具(10)。
【請求項9】
前記2つの部分(16,18)は、それらの後端部(17,19)において互いの方に曲げられると共にそこに平坦な領域(82a,82b)を有し、前記2つの部分(16,18)の少なくとも一方が通過溝(88a、88b)を有し、前記横方向突起(96)は前記対応する受け座(75)に達するように後方部材(14)に差し込み可能であり、前記溝(88a,88b)および前記横方向突起(96)は、前記2つの部分(16,18)の所与の広がりのために調整されるが如く、角度を合わせて配されていることを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の首装具(10)。
【請求項10】
前記後方部材(14)は、流線形の隆起部(45)に最終的に収容できるベース板(60)と、これに蝶番式に取り付けられた支持部材(70)とを具えていることを特徴とする請求項5から請求項9の何れかに記載の首装具(10)。
【請求項11】
ベース板(60)がこれを乗員の衣服に留めるための取り外し可能な留め手段を具えていることを特徴とする請求項10に記載の首装具(10)。
【請求項12】
前記ベース板(60)に前記取り外し可能な留め手段は、衣服に設けたスタッドに係合可能な複数の開口および/またはベルクロ片を具えていることを特徴とする請求項11に記載の首装具(10)。
【請求項13】
前記支持部材(70)は、横方向溝(75)が前記横方向突起(96)に係合するような寸法に形成された上板(74)を具えていることを特徴とする請求項10から請求項12の何れかに記載の首装具(10)。
【請求項14】
前記上板(74)は、突出すると共に前記ベース板(60)に当接するアーチ状の脚部(72a,72b)を具えていることを特徴とする請求項13に記載の首装具(10)。
【請求項15】
前記上板(74)の表面には、その溝(75)の近傍に前記横方向突起(96)を所定位置に固定可能な凸レンズ状くぼみ(98a,98b)があることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の首装具(10)。
【請求項16】
前記カラー部材(12)には利用者の頭部の後方移動を制止するための後方リップ(84a,84b)が設けられていることを特徴とする請求項3から請求項13の何れかに記載の首装具(10)。
【請求項17】
前記後方リップは、前記2つの部分(16,18)から外側に突出する突出リム(84a,84b)を具えていることを特徴とする請求項16に記載の首装具(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519978(P2010−519978A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551944(P2009−551944)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000152
【国際公開番号】WO2008/105009
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(502016471)アルパインスターズ リサーチ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (9)