説明

駆動モジュール及び電子機器

【課題】部品点数の削減化、組立工程の低減化を図ることができ効率良く製造することができるうえ、歩留まりの向上化及びより安定した実装を行うこと。
【解決手段】被駆動体6を支持体5に対して移動可能に弾性保持する一対の板ばね部材7、8と、被駆動体の係止部64に係止され、伸縮により被駆動体を駆動させる形状記憶合金ワイヤと、支持体を支持するベース基板9と、を備え、一方の板ばね部材7と外装カバーとの間にはワイヤに電力を供給し、その端部を保持する一対の給電部材13A、13Bが設けられ、給電部材が、一方の板ばね部材を間に挟んだ状態で支持体の上面に積層された導電板130A、130Bと、導電板に連設されると共にベース基板に向けて折曲された外部接続端子131と、導電板に連設されると共に外装カバーの頂壁部に向けて折曲され、ワイヤの端部を保持するワイヤ保持端子132と、を備えている駆動モジュールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モジュール及び電子機器に関するものである。
特に、光学系や可動部材を駆動して、焦点位置調整を行ったり、アクチュエータとして用いたりするのに好適な駆動モジュール及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラ機能付き携帯電話等の小型電子機器において、撮像レンズユニット等の被駆動体を駆動してオートフォーカスやズーム等を行うために、形状記憶合金ワイヤの伸縮を利用して駆動を行う駆動モジュールが種々提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載された駆動モジュールは、モジュール下板の上面側に加締め固定されたモジュール枠(支持体)と、該モジュール枠に対して一定方向に沿って往復移動可能なレンズ枠(被駆動体)と、このレンズ枠を弾性保持する板ばね部材と、レンズ枠を板ばね部材の弾性復元力に抗して駆動させる形状記憶合金ワイヤと、該ワイヤに電力を供給するための給電部材と、を備えている。
【0004】
形状記憶合金ワイヤの両端部には、導電性のワイヤ端子部が加締めによってそれぞれ取り付けられている。これらワイヤ端子部は、形状記憶合金ワイヤの略中間部をレンズ枠の係止部に引っ掛けた状態でモジュール枠の側壁部に加締めによって固定されている。
これにより、形状記憶合金ワイヤに電力を供給して温度上昇させ、それにより形状記憶合金ワイヤを収縮させることで、レンズ枠を移動させることが可能とされている。その逆に、形状記憶合金ワイヤへの電力供給を停止させて温度低下させ、それにより形状記憶合金ワイヤを伸長させることでレンズ枠を逆方向に移動させることが可能とされている。
【0005】
給電部材は、一対のリード端子(電極)を備えており、モジュール下板の下面側に加締めによって固定されている。各リード端子は、外部接続端子、及び上記ワイヤ端子部に電気的接続される導電接続部をそれぞれ備えている。そして、一対のリード端子の外部接続端子間に電圧を印加することで、形状記憶合金ワイヤに電力を供給することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−20177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の駆動モジュールには製造上改善の余地がまだ残されている。
即ち、形状記憶合金ワイヤを固定する場合には、両端部に固定されているワイヤ端子部をモジュール枠の側壁部にそれぞれ固定しなければならないが、異なる2つの側壁部に対してそれぞれワイヤ端子部を固定する必要がある。そのため、それぞれのワイヤ端子部を加締め作業する度に、モジュール枠の姿勢を水平方向に90度回転させて変化させる手間が必要となってしまい、組立工程の増加に繋がっていた。
【0008】
また、一対のリード端子からなる給電部材を固定する場合には、モジュール下板の下面に加締めによって固定しなければならないが、その加締め方向が上記ワイヤ端子部の加締め方向とは略90度異なってしまう。そのため、ワイヤ端子部の加締め作業と同時に行うことが難しく、やはりモジュール枠の姿勢を上下方向に90度回転させた後、ワイヤ端子部の加締め作業とは別工程で給電部材の加締め作業を行わなければならない。従って、この点においても組立工程の増加に繋がっていた。
しかもこの際、リード端子の導電接続部をワイヤ端子部に対して確実に接触させ、両者を良好に電気的接続させる必要があるので、加締め作業を慎重に行う必要があり効率の良い組立を行うことが難しかった。また、加締め作業を慎重に行ったとしても、ワイヤ端子部と導電接続部との接触状況によっては確実な導通が確保できない場合があり、歩留まりが低下する要因となっていた。
【0009】
更に、モジュール下板の下面には、リード端子を収容するための収容スペースを削り加工等して形成する必要があった。これは、通常モジュール下板の下面は、駆動モジュールを実装基板等に実装する際の取付基準面として機能しており、この取付基準面の平坦度をリード端子が阻害してしまうことを防ぐために収容スペース内に収容させる必要があるからである。ところが、この収容スペースを形成しているために取付基準面を広く確保することが難しく、駆動モジュールを安定して実装し難かった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、部品点数の削減化、組立工程の低減化を図ることができ効率良く製造することができるうえ、歩留まりの向上化及びより安定した実装を行うことができる駆動モジュール、及びそれを備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る駆動モジュールは、被駆動体と、該被駆動体を内側に収容する支持体と、一定方向に前記被駆動体を挟むように配設され、該被駆動体を前記支持体に対して一定方向に沿って移動可能に弾性保持する一対の板ばね部材と、前記被駆動体の係止部に係止され、通電時の発熱により収縮することで該被駆動体を前記一対の板ばね部材の復元力に抗して一方の板ばね部材側に駆動させる形状記憶合金ワイヤと、前記一対の板ばね部材のうち他方の板ばね部材を前記支持体との間に挟みながら該支持体を支持するベース基板と、該ベース基板に被着され、前記支持体、前記被駆動体、前記一対の板ばね部材及び前記形状記憶合金ワイヤを覆う外装カバーと、を備え、前記一方の板ばね部材と前記外装カバーとの間、又は前記他方の板ばね部材と前記ベース基板との間には、前記形状記憶合金ワイヤに電力を供給すると共に該ワイヤの端部をそれぞれ保持する一対の給電部材が設けられ、前記一対の給電部材が、前記一方の板ばね部材を間に挟んだ状態で前記支持体の上面に積層、又は前記他方の板ばね部材を間に挟んだ状態で前記支持体の下面に積層され、連結ピンを介して支持体に一体的に固定される導電板と、前記導電板に一体的に連設されると共に前記ベース基板に向けて折曲された外部接続端子と、前記導電板に一体的に連設されると共に前記外装カバーの頂壁部に向けて折曲され、前記形状記憶合金ワイヤの端部を保持するワイヤ保持端子と、をそれぞれ備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る駆動モジュールによれば、導電板に外部接続端子及びワイヤ保持端子がそれぞれ連設され、両端子が一体化された給電部材を備えているので、効率良く製造組み立てを行うことができる。
つまり、製造組み立て段階にて、一方の板ばね部材を間に挟んだ状態で支持体の上面側に導電板を積層、又は他方の板ばね部材を間に挟んだ状態で支持体の下面側に導電板を積層し、連結ピンを利用して積層した導電板を支持体に対して例えば加締め固定することで、支持体に対する外部接続端子及びワイヤ保持端子の組み付けが同時に終了する。
【0013】
従って、従来とは異なり、支持体等の姿勢を適宜変化させながら、外部接続端子及びワイヤ保持端子の組み付け作業をそれぞれ行う必要がない。よって、組立工程の低減化を図ることができ、効率の良い製造組み立てを行うことができる。
特に、支持体の姿勢変更が不要で、一方向からの組み付けで外部接続端子及びワイヤ保持端子の組み付けを同時に行えるので、組立工程の低減化を効果的に奏効することができる。
【0014】
また、従来とは異なり、外部接続端子とワイヤ保持端子とが一体化されているので、部品点数の削減化を図ることができるうえ、両端子の導通具合を注意しながら組み付け作業を行う必要もない。しかも、外部接続端子とワイヤ保持端子との導通が確実であるので、歩留まりの向上を期待することができる。
更に、導電板を支持体の上面又は下面に積層することで給電部材を組み付けることができるので、ベース基板の下面(実装時における取付基準面)に給電部材の収容スペースを確保する必要がなくなり、該下面を広範囲に亘ってフラット面にし易い。従って、駆動モジュールをより安定して実装することができる。
【0015】
(2)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記導電板が、前記支持体の上面に積層された状態で固定され、前記外部接続端子が、前記支持体の側壁部に接すると共に、その先端部が前記ベース基板の外縁部に形成された保持溝に保持され、前記ワイヤ保持端子が、前記支持体の上面よりも上方に突出し、加締められることで前記形状記憶合金ワイヤの端部を保持するワイヤ保持部を備えていることを特徴とする。
【0016】
この場合には、導電板が支持体の上面に積層された状態で固定されているので、ワイヤ保持端子全体の折曲長さを極力短くすることができる。よって、ワイヤ保持端子の剛性低下を抑制することができ、形状記憶合金ワイヤを安定して保持して被駆動体の駆動性能の信頼性を高めることができる。また、ワイヤ保持部を加締めるだけの簡単な作業で形状記憶合金ワイヤの端部を強固に保持できるので、組み立てが容易である。
また、外部接続端子は、支持体の側壁部に接し、且つその先端部がベース基板の外縁部に形成された保持溝に保持されているので、ガタツキが少なく安定している。従って、外部との電気的接続の安定性を図り易く、作動信頼性を高めることができる。
【0017】
(3)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記導電板が、前記ワイヤ保持端子との連設部分近傍において前記連結ピンを介して前記支持体に固定されていることを特徴とする。
【0018】
この場合には、ワイヤ保持端子と導電板との連設部分近傍を固定できるので、被駆動体の駆動時に、導電板の浮き上がりやワイヤ保持端子の変形等を抑制することができる。従って、より安定して形状記憶合金ワイヤの端部を保持でき、該ワイヤを高精度に伸縮させて被駆動体を正確に駆動させることができる。
【0019】
(4)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記導電板と前記一方の板ばね部材との間には、絶縁シートが積層されていることを特徴とする。
【0020】
この場合には、絶縁シートにより導電板と一方の板ばね部材との直接的な接触を規制して両者が電気的接続してしまうことを防止できるので、一対の板ばね部材を金属材料で形成することが可能である。従って、板ばね部材の材料選択性を広げることができるうえ、耐久性を向上させ易い。また、板ばね部材を金属製にしても、該板ばね部材と導電板との接触に起因する電気的不具合が生じ難い。
【0021】
(5)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記絶縁シートの一部が、前記外装カバーの被着に伴って折曲可能とされ、前記外部接続端子と外装カバーとの間に介在される折曲シート部とされていることを特徴とする。
【0022】
この場合には、折り曲げシート部により外部接続端子と外装カバーとの直接的な接触を規制できるので、外装カバーの装着時に外部接続端子に傷等が付き難い。また、外装カバーの少なくとも一部を金属材料で形成したとしても、外部接続端子と外装カバーとが電気的接続してしまうことを折り曲げシート部で防止できるので、接触に起因する電気的な不具合が生じ難い。
【0023】
(6)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記導電板が、前記支持体の下面に積層された状態で固定され、前記外部接続端子が、その先端部が前記ベース基板の外縁部に形成された保持溝に保持され、前記ワイヤ保持端子が、前記支持体の側壁部に固定される端子板と、該端子板に連設されると共に支持体の上面よりも上方に突出し、加締められることで前記形状記憶合金ワイヤの端部を保持するワイヤ保持部と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
この場合には、ワイヤ保持端子が支持体の側壁部に固定される端子板を有しているので、ガタツキが少なく安定している。そのため、形状記憶合金ワイヤを安定して保持でき、被駆動体の駆動性能の信頼性を高めることができる。また、ワイヤ保持部を加締めるだけの簡単な作業で形状記憶合金ワイヤの端部を強固に保持できるので、組み立てが容易である。
また、外部接続端子は、その先端部がベース基板の外縁部に形成された保持溝に保持されているので、ガタツキが少なく安定している。従って、外部との電気的接続の安定性を図り易く、作動信頼性を高めることができる。
【0025】
(7)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記導電板と前記他方の板ばね部材との間には、絶縁シートが積層されていることを特徴とする。
【0026】
この場合には、絶縁シートにより導電板と他方の板ばね部材との直接的な接触を規制して両者が電気的接続してしまうことを防止できるので、一対の板ばね部材を金属材料で形成することが可能である。従って、板ばね部材の材料選択性を広げることができるうえ、耐久性を向上させ易い。
【0027】
(8)本発明に係る駆動モジュールは、上記本発明の駆動モジュールにおいて、前記絶縁シートの一部が、前記外装カバーの被着に伴って折曲可能とされ、前記外部接続端子と外装カバーとの間に介在される折曲シート部とされていることを特徴とする。
【0028】
この場合には、上記と同様の作用効果を奏効することができる。即ち、外装カバーの装着時に外部接続端子に傷等が付き難く、また、外装カバーの少なくとも一部を金属材料で形成したとしても、接触に起因する電気的な不具合が生じ難い。
【0029】
(9)本発明に係る電子機器は、上記本発明の駆動モジュールを備えていることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る電子機器によれば、上述した駆動モジュールを備えているので、高品質で安価な電子機器にすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る駆動モジュールによれば、部品点数の削減化、歩留まりの向上化を図ることができると共に、組立工程の低減化を図って効率良く製造することができるうえ、より安定した実装を行うことができる。
また、本発明に係る電子機器によれば、上記駆動モジュールを備えているので、高品質で安価な電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る駆動モジュールの実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す駆動モジュールの分解斜視図である。
【図3】図2に示す駆動ユニットの分解斜視図である。
【図4】図2に示す状態において、駆動ユニットにスペーサーを組み合わせた状態を示す斜視図である。
【図5】駆動モジュールの部分断面図である。
【図6】本発明に係る電子機器の実施形態を示す図であり、(a)はカメラ付き携帯電話の操作面側からの斜視図であり、(b)はカメラ付き携帯電話の裏面側からの斜視図であり、(c)はカメラ付き携帯電話のカメラ部分を模式的に表した断面図である。
【図7】本発明に係る変形例を示す駆動モジュールの分解斜視図である。
【図8】本発明に係る別の変形例を示す駆動モジュールの分解斜視図である。
【図9】図8に示す駆動ユニットとモジュール下板との斜視図である。
【図10】図8に示す駆動モジュールを裏面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る駆動モジュール及び電子機器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0034】
[駆動モジュール]
本実施形態では、カメラにおける図示せぬレンズユニットの駆動モジュールを例にして説明する。また、レンズユニットを駆動するアクチュエータの一例として、形状記憶合金ワイヤを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0035】
図1に示す本実施形態の駆動モジュール1は、全体として箱型に構成されている。
この駆動モジュール1は、組み立て完成後、駆動モジュール1に制御信号や電力を供給する基板上に固定されて電子機器等に取り付けられるものであり、この駆動モジュール1の概略構成としては、図2に示すように、図示せぬアダプタ上に配設される駆動ユニット2と、駆動ユニット2に被着されて駆動ユニット2を覆う有頂筒状のカバー3(外装カバー)と、後述する駆動ユニット2のレンズ枠6(被駆動体)を付勢するコイルスプリング4と、を備えている。
【0036】
なお、図中の鎖線Oは、後述する駆動ユニット2のモジュール枠5(支持体)の中心軸線を示しており、この軸線Oは、図示せぬレンズユニットの光軸に一致する駆動モジュール1の軸線であり、駆動モジュール1は図示せぬレンズユニットを軸線Oに沿って駆動するものである。
以下の説明では、分解された各構成品の説明においても、組立時の軸線Oとの位置関係に基づいて、位置や方向を参照する場合がある。例えば、構成品に明確な円、円筒面が存在しない場合でも、誤解の恐れのない限り、軸線Oに沿う方向を単に「軸方向」と称し、軸線Oを中心とする円の径方向を単に「径方向」と称し、軸線Oを中心とする円の周方向を単に「周方向」と称する場合がある。また、特に断らない限り、軸方向一方側(図1における上側)を「上」とし、軸方向他方側(図1における下側)を「下」とする。
【0037】
[駆動ユニット]
図3に示すように、駆動ユニット2には、筒状のモジュール枠5と、モジュール枠5の内側に収容されてモジュール枠5と同軸に配設された筒状のレンズ枠6と、モジュール枠5及びレンズ枠6の上に配設された上板ばね7(一方の板ばね部材)と、モジュール枠5及びレンズ枠6の下に配設された下板ばね8(他方の板ばね部材)と、下板ばね8の下に配設されたモジュール下板9(ベース基板)と、モジュール下板9と下板ばね8との間に介在された中間部材10と、レンズ枠6をモジュール枠5に対して相対的に上下方向(モジュール枠5の軸方向)に沿って往復移動させる駆動手段11(図2参照)と、が備えられている。
【0038】
上記したレンズ枠6はモジュール枠5の内方に上下方向に移動可能に緩挿されている。そして、これらモジュール枠5及びレンズ枠6の上面には、下から順に上板ばね7、絶縁部材14及び一対の給電部材13A,13Bが積層されており、また、モジュール枠5及びレンズ枠6の下面には、上から順に下板ばね8、中間部材10及びモジュール下板9が積層されている。
また、上記した駆動手段11は、モジュール枠5の外周面に沿って延設されていると共にレンズ枠6に係合する図2に示す形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下、SMAと略称する)ワイヤ12と、上板ばね7の上方に配設された一対の給電部材13A,13Bと、給電部材13A,13Bと上板ばね7との間に介在された絶縁部材14と、を備えている。
【0039】
次に、上記した駆動ユニット2の各構成品について詳細に説明する。
モジュール枠5は、図3に示すように、内側にレンズ枠6を収容する環状部材であって、そのレンズ枠6を上板ばね7及び下板ばね8を介して支持する支持体である。モジュール枠5全体の外形は平面視略矩形状に形成されており、このモジュール枠5の上端面(及び下端面)の四隅部分の近傍には、軸方向に沿って延在する固定ピン51(52)がそれぞれ突設されている。
また、モジュール枠5の上端面(及び下端面)のうち、平面視略矩形状のモジュール枠5における一方の対角部分には、軸方向に沿って延在する位置決めピン54(55)がそれぞれ突設されている。また、モジュール枠5の上端面(及び下端面)のうち、平面視略矩形状のモジュール枠5における他方の対角部分の片方、つまり、位置決めピン54(55)が突設されていない隅部には、軸方向に延在する切欠き部50が形成されている。
【0040】
また、モジュール枠5の内周部は、平面視略円形状に形成されており、このモジュール枠5の内周面には、モジュール枠5の下端面から上端面にかけて延在する4つの平面視略円弧状のガイド溝53が形成されている。これら4つのガイド溝53は、軸線O周りに略90度の間隔をおいて回転対称に配設されている。
なお、モジュール枠5は、熱加締め又は超音波加締めが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂等により一体成形されている。
【0041】
レンズ枠6は、駆動手段11によって駆動する被駆動体であり、モジュール枠5に対して相対的に軸方向に往復移動可能な部材である。また、レンズ枠6は、鏡筒の内側にレンズ又はレンズ群が保持された図示せぬレンズユニットを保持する筒状部材であり、図3に示すように全体として略円筒形状に形成されている。このレンズ枠6の内周面には図示せぬ雌ネジが形成されており、この雌ねじに上記した図示せぬ鏡筒の外周面に形成された雄ネジが螺合されることでレンズ枠6の内側に図示せぬレンズユニットが装着される。
【0042】
レンズ枠6の外周面には、径方向外側に突出すると共に軸方向に沿って延在した4つの凸条部60が設けられている。これら4つの凸条部60は、モジュール枠5のガイド溝53に嵌め込まれるガイド部であり、レンズ枠6の外周面のうちのガイド溝53に対応する位置、つまり、軸線O周りに略90度の間隔をおいた4箇所に凸条部60がそれぞれ配設されている。
この凸条部60の上端面(及び下端面)はレンズ枠6の上端面(下端面)と面一に形成されており、その凸条部60の上端面(及び下端面)には、軸方向に沿って延在する固定ピン61(62)が突設されている。
【0043】
また、レンズ枠6の外周面には、レンズ枠6の径方向外側に突出した突出部63が突設されている。この突出部63は、レンズ枠6の移動方向を案内するガイド部であると共にコイルスプリング4の下端に係合してコイルスプリング4の反力を受けるコイル係合部である。
突出部63は、複数の凸条部60のうちの1つの凸条部60Aの側方から突出されており、モジュール枠5の切欠き部50の内側に嵌め込まれている。また、突出部63の上端面はレンズ枠6の上端面よりも下方に形成されており、突出部63の先端部はレンズ枠6の下端面よりも下方に垂下されている。
【0044】
上記した突出部63の先端面には、SMAワイヤ12の中間部を掛ける引掛部64が形成されている。引掛部64は下向きに開いた切り込み部であり、この引掛部64にはSMAワイヤ12の中間部が下方から引っ掛けられている。
また、突出部63の先端部の上端面には、コイルスプリング4の内側に挿通されるコイルガイドピン65が突設されている。このコイルガイドピン65は、軸方向に沿って延在する円柱形状のピンであり、コイルガイドピン65の先端部は上方に向かって漸次縮径された円錐台形状に形成されている。
なお、レンズ枠6は、熱加締め又は超音波加締めが可能な熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)や液晶ポリマー(LCP)樹脂等により成形されている。
【0045】
上板ばね7及び下板ばね8は、図3に示すように、レンズ枠6を軸方向に移動可能に弾性保持する平板状の板ばね部材であり、平面視略同一形状に打ち抜かれた例えばステンレス(SUS)鋼板等の金属板からなる。上板ばね7(及び下板ばね8)の外形は、モジュール枠5の上端部(下端部)の外形とほぼ同様な平面視略矩形状に形成されている。また、上板ばね7(及び下板ばね8)は、全体としてリング状に形成されており、上板ばね7(及び下板ばね8)の中央部には、軸線Oと同軸でレンズ枠6の内側より僅かに大きな円状の開口77(87)が形成されている。
【0046】
詳しく説明すると、上板ばね7(及び下板ばね8)は、モジュール枠5の上端面(下端面)に重ねて連結された枠状の枠体部70(80)と、その枠体部70(80)の径方向内側に配設された状態でレンズ枠6の上端面(下端面)に重ねて連結されたリング部71(81)と、枠体部70(80)とリング部71(81)とに両端部がそれぞれ接続され、両者を連結するばね部72(82)と、を備えている。
【0047】
枠体部70(80)の四隅部近傍には、モジュール枠5の上側の固定ピン51(下側の固定ピン52)の配置位置に対応して、各固定ピン51(52)がそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔73(83)が形成されている。また、略矩形状の枠体部70(80)における一方の対角部分には、モジュール枠5の位置決めピン54(55)が挿通可能な位置決め孔74(84)がそれぞれ形成されている。
【0048】
リング部71(81)は、その外周から半径方向外側に張り出した4つの張出部75(85)を備えている。各張出部75(85)は、リング部71(81)の周方向に等角度間隔で配置されている。各張出部75(85)には、レンズ枠6の上側の固定ピン61(下側の固定ピン62)の配置位置に対応して、各固定ピン61(62)にそれぞれ挿通可能な貫通孔76(86)が形成されている。
【0049】
ばね部72(82)は、略円弧状に形成された帯状部であり、リング部71(81)と枠体部70(80)との間に配設されている。そして、ばね部72(82)の一端部は張出部75(85)においてリング部71(81)に接続され、他端部は隣接する張出部75(85)の近傍で枠体部70(80)に接続されている。
【0050】
上記した上板ばね7は、リング部71側の貫通孔76の内側にレンズ枠6の上側の固定ピン61を挿通させた状態でその固定ピン61の上端部を熱や超音波で潰して加締めることでレンズ枠6に固定されている。また、上記した下板ばね8は、リング部81側の貫通孔86の内側にレンズ枠6の下側の固定ピン62を挿通させた状態で固定ピン62の下端部を熱や超音波で潰して加締めることでレンズ枠6に固定されている。
【0051】
モジュール下板9は、図3に示すように、電気絶縁性及び遮光性を有する樹脂材料で形成された板材であり、その外形はモジュール枠5の外形よりも一回り大きい平面視略矩形状に形成されている。また、モジュール下板9は、全体としてリング状に形成されており、モジュール下板9の中央には、図示せぬレンズユニットを出し入れ可能な大きさの平面視円形の開口90が形成されている。
【0052】
モジュール下板9の四隅には、モジュール枠5の下側の固定ピン52が挿入される貫通孔91と、レンズ枠6の下側の固定ピン62との干渉を回避する凹部92とが形成されている。また、略矩形状のモジュール下板9における一方の対角線の両端部には、モジュール枠5の下側の位置決めピン55と嵌合する一対の位置決め孔93が形成されている。また、モジュール下板9の四辺のうちの1辺における外縁部には、後述する外部接続端子131の先端部側を保持する保持溝94が形成されている。
なお、モジュール下板9の下面は、駆動モジュール1を実装する際の基準取付面として機能する。
【0053】
中間部材10は、図3に示すように、下板ばね8とモジュール下板9との間に介在された板材であり、その外形は下板ばね8の外形とほぼ同様な平面視略矩形状に形成されている。また、中間部材10は、全体としてリング状に形成されており、中間部材10の中央部には、下板ばね8の開口87とほぼ同様な平面視略円形状の開口101が形成されている。中間部材10の厚さは、下板ばね8の厚さより厚く形成されている。そして、モジュール下板9の硬度より中間部材10の硬度の方が下板ばね8の硬度に近くなるように、中間部材10が形成されている。
本実施形態では、モジュール下板9が樹脂材料で形成されているのに対して、中間部材10および下板ばね8はともにステンレス等の金属材料で形成されている。すなわち中間部材10の硬度は、下板ばね8の硬度と同じであり、モジュール下板9の硬度より高くなっている。なお各部材の硬度は、日本工業規格(JIS)G0202に規定されたロックウエル硬さで定義することができる。
【0054】
また、中間部材10の内縁には、レンズ枠6の下側の固定ピン62との干渉を回避する平面視略円弧状の切欠き部102が形成されている。この切欠き部102は、中間部材10の内縁のうちのレンズ枠6の下側の固定ピン62に対応する位置、つまり、軸線O周りに略90度の間隔をおいた4箇所にそれぞれ配設されている。
また、中間部材10の四隅部近傍には、モジュール枠5の下側の固定ピン52の配置位置に対応して、各固定ピン52がそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔103が形成されている。また、略矩形状の中間部材10における一方の対角部分には、モジュール枠5の下側の位置決めピン55が挿通可能な位置決め孔104がそれぞれ形成されている。
【0055】
なお、上記した下板ばね8の枠体部80側の貫通孔83、中間部材10の貫通孔103及びモジュール下板9の貫通孔91はそれぞれ平面視において互いに一致する位置に配設されており、これらの貫通孔83,103,91は連通されている。そして、これらの貫通孔83,103,91の内側にモジュール枠5の下側の固定ピン52を挿通させた状態で、その固定ピン52の下端部を熱や超音波で潰して加締めることで、下板ばね8、中間部材10及びモジュール下板9が積層された状態で纏めてモジュール枠5に固定されている。
【0056】
一対の給電部材13A,13Bは、図2に示すように上板ばね7とカバー3との間に配設され、SMAワイヤ12に電力を供給すると共に該SMAワイヤ12の端部をそれぞれ保持する部材である。これら給電部材13A,13Bは、図3に示すように上板ばね7及び絶縁部材14を間に挟んだ状態でモジュール枠5の上端面に積層された板状の導電板130A,130Bと、導電板130A,130Bに一体的に連設されると共にモジュール下板9に向けて略90度折曲された外部接続端子131と、導電板130A,130Bに一体的に連設されると共に上方(後述する外装体30の頂壁部32側)に向けて略90度折曲され、SMAワイヤ12の端部を保持するワイヤ保持端子132と、をそれぞれ備えている。
【0057】
本実施形態では、一対の給電部材13A,13Bの導電板130A,130Bの形状がそれぞれ異なっている。具体的には、一方の導電板130Aはモジュール枠5の上端面の形状に沿い、且つ大きく2回屈曲した平面視略コ形状に形成され、他方の導電板130Bはモジュール枠5の上端面の形状に沿い、且つ屈曲の無い平面視略ストレート形状に形成されている。
そして、これら一対の導電板130A,130Bは、モジュール枠5の上端面のうち、一方の対角部分を結ぶ対角線L(位置決めピン54A、54Bを結ぶ線)を挟んで略半分の領域側(切欠き部50が形成されていない側)だけに積層されている。
【0058】
一方の導電板130Aには、モジュール枠5における切欠き部50の対角側(切欠き部50に対して軸線Oを挟んで径方向の反対側)の隅部に位置する固定ピン51Aと、上記対角線L近傍に位置する一方の固定ピン51Bと、をそれぞれ貫通させる2つの貫通孔133が形成されていると共に、上記対角線L上に位置する一方の位置決めピン54Aを貫通させる位置決め孔134が形成されている。
他方の導電板130Bには、上記対角線L近傍に位置する他方の固定ピン51Cを貫通させる貫通孔133が形成されていると共に、上記対角線L上に位置する他方の位置決めピン54Bを貫通させる位置決め孔134が形成されている。そして、これら一対の導電板130A,130Bは、上述した各固定ピン51A〜51C(連結ピン)を利用してモジュール枠5に一体的に固定される。
【0059】
外部接続端子131は、周方向に間隔を開けて平行に並ぶように各導電板130A,130Bにそれぞれ連設されている。これら外部接続端子131は、モジュール枠5における切欠き部50の対角側の隅部と上記した他方の位置決めピン54Bが配設された隅部との間に位置するモジュール枠5の側壁部56Aの外面に接すると共に、その先端部がモジュール下板9の外縁部に形成された保持溝94内に入り込んで嵌合保持されている。
なお、外部接続端子131は、モジュール下板9よりも下方に突出するように長さ調整されている(図4参照)。
【0060】
ワイヤ保持端子132は、モジュール枠5の4つの側壁部56A〜56Dのうち切欠き部50を挟んで周方向に隣接する2の側壁部56B,56Cの上方に位置するように各導電板130A,130Bにそれぞれ連設されている。つまり、ワイヤ保持端子132は、位置決め孔54A,54B近傍にて導電板130A,130Bに連設されている。
また、ワイヤ保持端子132の先端部は、モジュール枠5の上端面よりも上方に突出した位置で折り返され、加締められることでSMAワイヤ12の端部を保持するワイヤ保持部132a(保持部)とされている。
【0061】
絶縁部材14は、図3に示すように、上板ばね7と一対の導電板130A,130Bとの間に積層される絶縁シートであり、一対の導電板130A,130Bを2つ合わせた形状に形成されている。
そして、この絶縁部材14には、一対の導電板130A,130Bにそれぞれ形成された貫通孔133及び位置決め孔134に対応して、モジュール枠5の固定ピン51A〜51Cを貫通させる3つの貫通孔141と、2つの位置決めピン54A,54Bを貫通させる2つの位置決め孔142と、がそれぞれ形成されている。
【0062】
また、絶縁部材14には、カバー3を構成する外装体30の被着に伴って折曲されて外部接続端子131と外装体30との間に介在される折曲シート部144が形成されている。この折曲シート部144は、折曲前の状態において、一対の外部接続端子131の間の間隔よりも幅狭とされた連結部143を介して外部接続端子131よりも径方向外側に配設されており、これら連結部143及び折曲シート部144は、全体として平面視略T字状に形成されている。
そして、外装体30の被着時に、一対の外部接続端子131のうちモジュール枠5の側壁部56Aの外面に接する部分を覆い隠して保護し、外装体30と外部接続端子131との直接的な接触を規制している(図4参照)。
【0063】
SMAワイヤ12は、通電時の発熱によって収縮変形するワイヤであり、上記した一対のワイヤ保持部132aによって両端部が保持されていると共に、中間部がレンズ枠6の引掛部64に下方から係止されており、モジュール枠5の外周面に沿って略V字状に屈曲されている。
【0064】
[カバー]
図2に示すように、カバー3には、駆動ユニット2の外周を覆う金属製の外装体30と、その外装体30に取り付けられていると共にモジュール枠5の軸方向上側に配設された樹脂製のスペーサー31と、が備えられている。
【0065】
外装体30は、駆動ユニット2を内側に収容する有頂筒状の金属製部材であり、例えばステンレス(SUS)鋼板からなる。この外装体30は、軸線Oに対して垂直に配設された平面視矩形状の頂壁部32と、頂壁部32の外縁から垂下されて軸方向に沿って延設された角筒状の周壁部33と、を備えている。頂壁部32の中央には、図示せぬレンズユニットを出し入れ可能な大きさの平面視円形の開口34が形成されている。また、頂壁部32の四隅部近傍には、後述するスペーサー31の固定ピン37の配置位置に対応して、各固定ピン37がそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔35が形成されている。
なお、周壁部33の下端部の内側にモジュール下板9が位置している。
【0066】
スペーサー31は、外装体30の内側に嵌合されて外装体30の頂壁部32の下面と駆動ユニット2の上面との間に介在された樹脂製部材であり、例えばポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)樹脂等の熱可塑性樹脂からなる。
詳しく説明すると、スペーサー31の外形は、外装体30の周壁部33の内周部と略同形状の平面視略矩形状に形成されている。また、スペーサー31は、全体としてリング状に形成されており、スペーサー31の中央には、図示せぬレンズユニットを出し入れ可能な大きさの平面視円形の開口39が形成されている。また、スペーサー31には、駆動ユニット2の上面に係止される係止部36が下向きに突設されている。
【0067】
また、スペーサー31の四隅部分の近傍には、外装体30の貫通孔35の配置位置に対応して、軸方向に沿って延在する固定ピン37がそれぞれ突設されていると共に、モジュール枠5の上側の固定ピン51の配置位置に対応して、各固定ピン51がそれぞれ挿通可能な4つの貫通孔38が形成されている。また、スペーサー31の隅部のうち、レンズ枠6のコイルガイドピン65に対応する位置の隅部には、コイルスプリング4を収容するコイルガイド孔40が形成されている。このコイルガイド孔40は上端及び下端がそれぞれ開口された平面視円形の貫通孔である。
なお、スペーサー31の上面の四隅部分の近傍には、段差状に窪んだ窪み部41が形成されており、この窪み部41の底面において、上記した貫通孔38の上端及びコイルガイド孔40の上端がそれぞれ開口されている。また、上記した貫通孔38の下端及びコイルガイド孔40の下端は、上記した係止部36の下面においてそれぞれ開口されている。
【0068】
また、スペーサー31の外周部には、SMAワイヤ12の両端部を保持する一対のワイヤ保持部132aをそれぞれ収容する収容部42が形成されている。この収容部42は、ワイヤ保持部132aの位置に対応する部分、つまり、平面視略矩形のスペーサー31における一方の対角部分の側面にそれぞれ形成されている。
この収容部42は、SMAワイヤ12の中間部側を前方とし、SMAワイヤ12の端側を後方とすると、ワイヤ保持部132aの後方、上方及び側方をそれぞれ囲う壁面で形成された空間であり、ワイヤ保持部132aが下方から嵌め込み可能となっている。
【0069】
上記した構成のスペーサー31は、カバー3(外装体30)の軸方向の位置決めを行う位置決め部材であり、係止部36の下面が駆動ユニット2の上面に当接されると共にスペーサー31の上面が外装体30の頂壁部32の下面に当接することで、カバー3(外装体30)の軸方向の位置が位置決めされる。
【0070】
なお、上記したスペーサー31の貫通孔38、一対の給電部材13A,13Bの貫通孔133、絶縁部材14の貫通孔141及び上板ばね7の枠体部70側の貫通孔73はそれぞれ平面視において互いに一致する位置に配設されており、これらの貫通孔38,133,141,73は連通されている。そして、これらの貫通孔38,133,141,73の内側にモジュール枠5の上側の固定ピン51を挿通させた状態で、その固定ピン51の上端部を図4に示すように熱や超音波で潰して加締めることで、上板ばね7、絶縁部材14、給電部材13及びスペーサー31が積層された状態で纏めてモジュール枠5に固定されている。
また、上記したスペーサー31の固定ピン37を上記した外装体30の貫通孔35の内側に挿通させた状態でその固定ピン37の上端部を図1に示すように熱や超音波で潰して加締めることで、外装体30がスペーサー31に固定されている。
【0071】
[コイルスプリング]
コイルスプリング4は、レンズ枠6をモジュール枠5に対して相対的に軸方向に沿って付勢する付勢部材であり、軸方向に沿って延設された公知のコイルバネからなる。このコイルスプリング4は、図5に示すように、上記したコイルガイド孔40の内側に挿通されており、その内側にはレンズ枠6のコイルガイドピン65が下方から挿入されている。また、コイルスプリング4の下端は、レンズ枠6の突出部63の先端部の上面に係止され、コイルスプリング4の上端は、外装体30の頂壁部32の下面に係止されており、これら突出部63と頂壁部32との間にコイルスプリング4が軸方向に圧縮された状態で介装されている。
なお、このコイルスプリング4は、図4に示すように、駆動ユニット2にスペーサー31を装着させた後、コイルガイド孔40の上端からコイルガイド孔40内に挿入し、その後、外装体30を被せることで突出部63と頂壁部32との間に介装される。
【0072】
[駆動モジュールの動作]
次に、上記した構成の駆動モジュール1の動作について説明する。
【0073】
はじめに、一対の給電部材13A,13Bの外部接続端子131に電力が供給されていない状態では、レンズ枠6に対してコイルスプリング4からの付勢力のみが作用している。このとき、レンズ枠6の下方への移動は、モジュール下板9によって規制されている。このコイルスプリング4の働きにより、周囲環境温度に起因してSMAワイヤ12が収縮したとしても、レンズ枠6の浮き上がりを抑制することができると共にレンズ枠6を駆動の基準位置に位置決めさせることができる。
【0074】
次に、一対の給電部材13A,13Bの外部接続端子131にスタンバイ用の電力を供給すると、SMAワイヤ12が所定温度に発熱して収縮する。これにより、レンズ枠6が上方に移動し、SMAワイヤ12の張力とコイルスプリング4の付勢力とが釣り合った所定位置(スタンバイ位置)で停止する。
続いて、給電部材13に駆動用の電力を供給すると、電力量に応じてSMAワイヤ12が発熱して伸縮する。これにより、SMAワイヤ12の張力とコイルスプリング4の付勢力とが釣り合う位置まで、レンズ枠6をZ方向に移動させることができる。
【0075】
すなわち、給電部材13に電力を供給すると、SMAワイヤ12に電流が流れてジュール熱が発生し、SMAワイヤ12の温度が上昇する。そして、SMAワイヤ12の温度が変態開始温度を超えると、SMAワイヤ12が温度に応じた長さに収縮する。SMAワイヤ12の両端部が、モジュール枠5の上端面より上方に位置する一対の給電部材13A,13Bのワイヤ保持部132aにそれぞれ保持され、SMAワイヤ12の中間部が、レンズ枠6の突出部63に係止されているので、SMAワイヤ12の収縮によって突出部63に発生力(駆動力)を及ぼし、レンズ枠6を軸方向に沿って上方に移動させることができる。
【0076】
また、レンズ枠6が移動すると、コイルスプリング4が変形し、この変形量に応じた弾性復元力がレンズ枠6に作用する。この弾性復元力がSMAワイヤ12の張力と釣り合う位置で、レンズ枠6の移動が停止する。そして、給電部材13への電力供給量を調整し、SMAワイヤ12の発熱量を制御することで、レンズ枠6を上下方向に移動させ、所定位置で停止させることができる。
【0077】
(駆動モジュールの組み立て)
次に、上記した駆動モジュール1の組立方法について、以下に説明する。
【0078】
まず、モジュール枠5の内側に下方からレンズ枠6を挿入し、モジュール枠5の上端面と、レンズ枠6の上端面とを同一高さに揃えた状態で、レンズ枠6とモジュール枠5とを仮固定しておく。
続いて、モジュール枠5の上端面及びレンズ枠6の上端面に上板ばね7を積層する。この際、レンズ枠6の上側の固定ピン61に上板ばね7のリング部71側の貫通孔76を挿通すると共に、モジュール枠5の上側の固定ピン51及び位置決めピン54に上板ばね7の枠体部70側の貫通孔73及び位置決め孔74をそれぞれ挿通しながら、上板ばね7を積層する。これにより、モジュール枠5及びレンズ枠6に対して、上板ばね7を正確に位置決めしながら積層できる。
【0079】
その後、上板ばね7の貫通孔76を貫通して上方に突き出されたレンズ枠6の上側の固定ピン61の先端部を加締め、レンズ枠6と上板ばね7とを組み合わせる。この際、レンズ枠6の上端面とモジュール枠5の上端面とは、同一平面上に整列されており、平板状の上板ばね7を変形させることなく配置して加締め作業を行うことができる。そのため、変形する上板ばね7を押さえる必要がないので、加締め作業を容易に行うことができると共に、上板ばね7の変形による浮き等の発生を防止することができる。
【0080】
続いて、モジュール枠5の下端面及びレンズ枠6の下端面に下板ばね8を積層する。この際、レンズ枠6の下側の固定ピン62に下板ばね8のリング部81側の貫通孔86を挿通させ、モジュール枠5の下側の固定ピン52に下板ばね8の枠体部80側の貫通孔83を挿通させ、モジュール枠5の下側の位置決めピン55に下板ばね8の位置決め孔84を挿通させながら、下板ばね8を積層する。これにより、モジュール枠5及びレンズ枠6に対して、下板ばね8を正確に位置決めしながら積層できる。
【0081】
その後、下板ばね8の貫通孔86を貫通して下方に突き出されたレンズ枠6の下側の固定ピン62の先端部を加締め、レンズ枠6と下板ばね8とを組み合わせる。この際、レンズ枠6の上端面と下端面との間の軸線方向距離と、モジュール枠5の上端面と下端面との間の軸線方向距離とは等しいため、モジュール枠5及びレンズ枠6の下端面同士は同一平面上に整列されており、平板状の下板ばね8を変形させることなく加締め作業を行える。
【0082】
続いて、レンズ枠6に組み合わされた下板ばね8に対して中間部材10及びモジュール下板9をさらに積層する。この際、下板ばね8の下方に突き出されたモジュール枠5の固定ピン52に中間部材10及びモジュール下板9の貫通孔103,91を挿通させ、下板ばね8の下方に突き出されたモジュール枠5の位置決めピン55に中間部材10及びモジュール下板9の位置決め孔104,93を挿通させながら、中間部材10及びモジュール下板9を積層する。これにより、モジュール枠5に対して、中間部材10及びモジュール下板9を正確に位置決めしながら積層できる。
【0083】
その後、モジュール下板9の貫通孔91を貫通して下方に突き出されたモジュール枠5の下側の固定ピン52の先端部を加締める。これにより、モジュール枠5と下板ばね8と中間部材10とモジュール下板9とを一体的に組み合わせることができる。
なお、モジュール下板9には凹部92が形成されているため、先ほど下板ばね8を固定するために加締められたレンズ枠6の下側の固定ピン62は、モジュール下板9に接触することがない。また、モジュール下板9の下面に凹部が形成され、その凹部内にモジュール下板9の貫通孔91の下端が開口されており、モジュール枠5の下側の固定ピン52の先端部が上記凹部内に収まっているため、加締め後の固定ピン52の先端部がモジュール下板9の下面よりも下方に突出することがない。
【0084】
続いて、レンズ枠6に組み合わされた上板ばね7に対して絶縁部材14及び一対の給電部材13A,13Bの導電板130A,130Bをさらに積層する。この際、上板ばね7の上方に突き出されたモジュール枠5の上側の固定ピン51に、絶縁部材14及び給電部材13A,13Bの貫通孔141,133を挿通させ、上板ばね7の上方に突き出されたモジュール枠5の上側の位置決めピン54に、絶縁部材14及び給電部材13A,13Bの位置決め孔142,134を挿通させながら絶縁部材14及び一対の導電板13A,13Bを積層する。
これにより、モジュール枠5に対して、絶縁部材14及び一対の給電部材13A,13Bを正確に位置決めしながら積層できる。この際、一対の給電部材13A,13Bの外部接続端子131の先端部は、モジュール下板9の外縁部に形成された保持溝94内に嵌め込んでおく。
【0085】
続いて、SMAワイヤ12の固定作業を行う。
具体的には、SMAワイヤ12の中間部をレンズ枠6の突出部63に形成された引掛部64に引っ掛けた状態で、SMAワイヤ12の端部をそれぞれ一対の給電部材13A,13Bのワイヤ保持部132aに適宜巻きつける。この際、SMAワイヤ12が所定の張力となるようにテンション調整しながら行う。そして、ワイヤ保持部132aを加締めて、SMAワイヤ12の両端部を保持する。これにより、図2に示す状態となり、駆動ユニット2の組み立てが完了する。
【0086】
続いて、駆動ユニット2に対してスペーサー31を被せて積層する。この際、一対の給電部材13A,13Bの上方に突き出されたモジュール枠5の上側の固定ピン51に、スペーサー31の貫通孔38を挿通させながらスペーサー31を積層する。スペーサー31を積層した後、窪み部41の底面から突き出た固定ピン51の先端部を加締める。これにより、図4に示すように、駆動ユニット2とスペーサー31とを一体的に組み合わせることができる。
【0087】
続いて、スペーサー31のコイルガイド孔40内にコイルスプリング4を挿入してコイルガイドピン65にコイルスプリング4を被せた後、スペーサー31の上方から外装体30を被せて、外装体30とモジュール下板9とを組み合わせる。この際、スペーサー31の固定ピン37が頂壁部32に形成された貫通孔35を挿通するように外装体30を被せる。そして、スペーサー31の固定ピン37の先端部を加締めて、外装体30を固定する。これにより、駆動モジュール1の組み立てが完了し、図1に示す駆動モジュール1を得ることができる。
【0088】
なお、駆動モジュール1を実装する場合には、モジュール下板9の下面に図示しないアダプタを取り付け、該アダプタを介して図示しない制御基板上等に実装すれば良い。制御基板上への取り付けは、接着、嵌め込み等の固定手段を採用することができる。
【0089】
[駆動モジュールの作用効果]
特に、本実施形態の駆動モジュール1によれば、下記の作用効果を奏効することができる。
まず、金属製の外装体30によって駆動ユニット2が覆われているので、外部からの電磁場の影響が遮断される。従って、電磁シールドの要求に対応することができる。
また、外装体30に取り付けられた樹脂製のスペーサー31を複雑な形状に容易に成形することができるので、駆動ユニット2に係止する係止部36やコイルガイド孔40などを形成することが可能である。
また、上記したスペーサー31の係止部36が駆動ユニット2に係止されることでカバー3の軸方向位置が位置決めされるので、駆動ユニット2に対するカバー3の組み付け精度が安定する。
【0090】
また、スペーサー31を被せた際に、ワイヤ保持部132aに保持されているSMAワイヤ12の端部が該スペーサー31の収容部42に収容されるので、ワイヤ保持部132aから突出したSMAワイヤ12の端部を収容部42内に閉じ込めておくことができる。そのため、SMAワイヤ12の端部と金属製の外装体30との接触が防止される。従って、SMAワイヤ12が外装体30に接触することによる電気的な不具合を防止することができる。
【0091】
また、コイルスプリング4がコイルガイド孔40の内側に収容されることでコイルスプリング4の倒れが規制されるので、外装体30を組み付ける際、コイルスプリング4が外装体30に干渉してコイルスプリング4が外れたり、コイルスプリング4が曲がった状態で組み込まれたりすることが防止される。これにより、駆動モジュール1の組立時の作業性を向上させることができる。
【0092】
駆動ユニット2にスペーサーを組み付けた後、コイルガイド孔40の上端からコイルスプリング4を挿入し、その後、外装体30を被せることで、駆動モジュール1が組み立てられるので、スペーサー31を組み付ける際に、コイルスプリング4がスペーサー31に干渉することがなく、スペーサー31の組み付け作業が容易である。また、コイルスプリング4をコイルガイド孔40に挿入するだけであるので、コイルスプリング4の組み付け作業も容易である。したがって、駆動モジュールの組立時の作業性をより向上させることができる。
【0093】
更に、導電板130A,130Bに外部接続端子131及びワイヤ保持端子132がそれぞれ連設され、両端子131,132が一体化された給電部材13A,13Bを備えているので、効率良く製造組み立てを行うことができる。
つまり、製造組み立て段階にて、モジュール枠5の上端面に積層した導電板130A,130Bを固定ピン51を利用して固定するだけで、モジュール枠5に対する外部接続端子131及びワイヤ保持端子132の組み付けが同時に終了する。従って、従来とは異なり、モジュール枠5等の姿勢を適宜変化させながら、外部接続端子131及びワイヤ保持端子132の組み付け作業をそれぞれ行う必要がない。よって、組立工程の低減化を図ることができ、効率の良い製造組み立てを行うことができる。
特に、モジュール枠5の姿勢変更が不要で、一方向(上方向)からの組み付けで外部接続端子131及びワイヤ保持端子132の組み付けを同時に行えるので、組立工程の低減化を効果的に奏効することができる。
【0094】
また、外部接続端子131とワイヤ保持端子132とが一体化されているので、部品点数の削減化を図ることができるうえ、両端子131,132の導通具合を注意しながら組み付け作業を行う必要もない。しかも、外部接続端子131とワイヤ保持端子132との導通が確実であるので、歩留まりの向上を期待することができる。
また、外部接続端子131は、モジュール枠5の側壁部56Aに接し、且つその先端部がモジュール枠5の保持溝94に保持されているので、ガタツキが少なく安定している。従って、外部との電気的接続の安定性を図り易く、作動信頼性を高めることができる。
【0095】
また、ワイヤ保持端子132と導電板130A,130Bとの連設部分近傍を固定ピン51で固定できるので、レンズ枠6の駆動時に、導電板130A,130Bの浮き上がりやワイヤ保持端子132の変形等を抑制することができる。従って、より安定してSMAワイヤ12の端部を保持でき、該SMAワイヤ12を高精度に伸縮させてレンズ枠6を正確に駆動させることができる。
【0096】
また、絶縁部材14により導電板130A,130Bと上板ばね7との直接的な接触を規制して両者が電気的接続してしまうことを防止しているので、接触に起因する電気的不具合が生じ難い。更に、折曲シート部144により外部接続端子131と外装体30との直接的な接触を規制できるので、外装体30の装着時に外部接続端子131に傷等が付き難いうえ、金属製の外装体30と外部接続端子131との接触に起因する電気的不具合も生じ難い。
【0097】
[電子機器]
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、電子機器の一例として、上記実施形態の駆動モジュール1を備えたカメラ付き携帯電話を例に挙げて説明する。
【0098】
図6は、カメラ付き携帯電話300の説明図である。なお、図6(a)は、カメラ付き携帯電話300の表側(操作面側)の外観斜視図である。図6(b)は、カメラ付き携帯電話300の裏側の外観斜視図である。図6(c)は、図6(b)のA−A線における断面図である。図6(a)に示すように、本実施形態のカメラ付き携帯電話300は、受話部310と、送話部320と、操作部330と、液晶表示部340と、アンテナ部350と、不図示の制御回路部等の周知の携帯電話の電子部と、をハウジング360内外に備えている。
【0099】
図6(b)に示すように、液晶表示部340が設けられた側の裏面側のハウジング360には、外光を透過させる窓361が設けられている。
そして、図6(c)に示すように、駆動モジュール1のカバー3の開口34が、ハウジング360の窓361を臨み、この窓361の法線方向に軸線Oが沿うように駆動モジュール1が設置されている。なお、駆動モジュール1は、基板370に機械的及び電気的に接続されている。基板370は、不図示の制御回路部に接続され、駆動モジュール1に電力を供給できるようになっている。
【0100】
このように構成されているので、窓361を透過した光を駆動モジュール1の不図示のレンズユニットで集光し、撮像素子380上に結像することができる。そして、駆動モジュール1に制御回路部から適宜の電力を供給することで、レンズユニットを軸方向に駆動し、焦点位置調整を行って、撮影を行うことができる。
【0101】
特に、本実施形態のカメラ付き携帯電話300は、電磁シールドの要求に対応可能な駆動モジュール1を備えているので、駆動モジュール1に対する外部からの電磁場の影響が遮断され、カメラ機能の動作の信頼性に優れたカメラ付き携帯電話300を提供することができる。
また、上記駆動モジュール1は、部品点数の削減化、歩留まりの向上化を図ることができると共に組立工程の低減化を図って効率良く製造することができ、且つ安定した実装を行えるものであるので、高品質で安価なカメラ付き携帯電話300とすることができる。
【0102】
以上、本発明に係る駆動モジュール及び電子機器の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0103】
例えば、上記した実施形態では、駆動モジュール1をレンズユニットの焦点位置調整機構に用いる場合の例で説明したが、駆動モジュール1の用途はこれに限定されない。例えば、被駆動体を目標位置に移動させる適宜のアクチュエータとして他の部分に用いても良い。例えば、レンズユニットに代えて、ロッド部材等を螺合したり、レンズ枠6を他の形状に変えたりして、適宜のアクチュエータとして用いることができる。即ち、被駆動体は、筒状の部材に限定されず、柱状の部材であっても良い。
【0104】
また、上記した実施形態では、駆動モジュール1を用いた電子機器として、カメラ付き携帯電話300の例で説明したが、電子機器の種類はこれに限定されない。例えば、デジタルカメラ、パソコン内蔵のカメラ等の光学機器に用いても良いし、情報読取記憶装置やプリンタ等の電子機器において、被駆動体を目標位置に移動させるアクチュエータとしても用いることができる。
【0105】
また、上記した実施形態では、モジュール枠5の上側の固定ピン51の4本全てが、スペーサー31の上で加締めているが、本発明は、スペーサー31を被せる前の段階、具体的にはSMAワイヤ12の固定作業を行う前に、図7に示すように、モジュール枠5の4つの固定ピン51のうち位置決めピン54の近傍に位置する2つの固定ピン51B,51Cを加締めて、一対の給電部材13A,13Bの導電板130A,130Bをそれぞれモジュール枠5に対して固定しても構わない。
このようにすることで、SMAワイヤ12の固定時にワイヤ保持端子132をより安定させることができるので、SMAワイヤ12の固定作業をよりスムーズに行い易い。特に、ワイヤ保持端子132と導電板130A,130Bとの連設部分近傍を固定できるので、ワイヤ保持端子132の安定化を図り易い。
【0106】
また、上記した実施の形態では、スペーサー31の4つの固定ピン37を利用して外装体30を固定したが、固定ピン37の数は4つに限定されるものではなく自由に設計して構わない。
更には、固定ピン37を利用せずに外装体30を固定しても構わない。例えば外装体30の周壁部33の下端部とモジュール下板9の外縁部とを接着剤によって接着固定しても構わないし、周壁部33の下端部に爪部を設け、該爪部をモジュール下板9の下面側に折り返して係合させることで固定しても構わない。
【0107】
また、上記した実施の形態では、SMAワイヤ12を用いた駆動手段11が備えられているが、本発明における駆動手段は適宜変更可能であり、例えば、ラック・ピニオンを用いた駆動手段にすることも可能である。
【0108】
また、上記した実施の形態では、一対の給電部材13A、13Bを上板ばね7とカバー3との間に配設した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、下板ばね8とモジュール下板9との間に配設しても構わない。
この場合の駆動モジュールについて以下に詳細に説明する。
【0109】
図8及び図9に示すように、駆動モジュール200は、駆動ユニット201と、スペーサー240及び外装体30からなるカバー202と、コイルスプリング4と、を備えている。
駆動ユニット201は、モジュール枠5と、レンズ枠6と、上板ばね7と、下板ばね8と、モジュール下板9と、モジュール枠5とモジュール下板9との間に下板ばね8側から順に積層された、中間部材10、絶縁部材203(絶縁シート)及び一対の給電部材205A、205Bと、を備えている。
【0110】
一対の給電部材205A、205Bは、下板ばね8、中間部材10及び絶縁部材203を間に挟んだ状態でモジュール枠5の下端面に積層される板状の導電板210と、導電板210に一体的に連設されると共にモジュール下板9に向けて略90度折曲された外部接続端子211と、導電板210に一体的に連設されると共に上方に向けて略90度折曲され、SMAワイヤ12の端部を保持するワイヤ保持端子212と、をそれぞれ備えている。
【0111】
一対の給電部材205A、205Bの導電板210は、共にモジュール枠5の下端面の形状に沿い、且つ大きく2回屈曲した平面視略コ形状に形成されている。両導電板210には、モジュール枠5の下端面に形成された固定ピン52及び位置決めピン55を貫通させるための、2つの貫通孔213及び位置決め孔214がそれぞれ形成されている。
外部接続端子211は、周方向に間隔を開けて平行に並ぶように各導電板210にそれぞれ連設されており、その先端部はモジュール枠5の外縁部に形成された保持溝94内に入り込んで嵌合保持されている。
【0112】
ワイヤ保持端子212は、位置決め孔214近傍にて導電板210に連設されており、モジュール枠5の4つの周壁部のうち2つの周壁部56B、56Cにそれぞれ固定される端子板212aと、該端子板212aに連設されると共にモジュール枠5の上端面よりも上方に突出した位置で折り返され、加締められることでSMAワイヤ12の端部を保持するワイヤ保持部212bと、で構成されている。
端子板212aには、モジュール枠5の上記周壁部56B、56Cにそれぞれ形成されたサイド固定ピン220が嵌め込まれるピン溝212cが形成されている。そして、このピン溝212cにサイド固定ピン220を嵌め込んだ後、サイド固定ピン220の先端部を加締めることで、端子板212aをモジュール枠5に対して位置決めしながら強固に固定できるようになっている。
【0113】
絶縁部材203は、リング状に形成されていると共に、その外形は中間部材10の外形とほぼ同様の外形に形成されている。また、この絶縁部材203には、モジュール枠5の下端面に形成された固定ピン52及び位置決めピン55をそれぞれ貫通させるための2つの位置決め孔231及び4つの貫通孔230が形成されている。
更に、この絶縁部材203には、カバー202を構成する外装体30の被着に伴って折曲され、外部接続端子211と外装体30との間に介在される折曲シート部232が形成されている。この場合の折曲シート部232は、外部接続端子211のうち保持溝94内に入り込む部分を覆い隠して保護し、外装体30と外部接続端子211との直接的な接触を規制している。
【0114】
また、この駆動モジュール200は、スペーサー240を被着させる前に、モジュール枠5の4つの固定ピン51のうち位置決めピン54の近傍に位置する2つの固定ピン51B,51Cを加締めて、上板ばね7をモジュール枠5に対して固定し、その後、スペーサー240を被着する構成とされている。
そのため、スペーサー240には、モジュール枠5の残り2つの固定ピン(切欠き部50の近傍に位置する固定ピン51と、その対角に位置する固定ピン51A)を貫通させる2つの貫通孔241が形成されている。なお、これら2つの貫通孔241は、スペーサー240の上面から窪んだ窪み部242内に形成されている。これにより加締められた固定ピン52は、窪み部242内に収まり、スペーサー240の上面から外装体30側に突出しないようになっている。
【0115】
また、外装体30は、対向する2つの周壁部33の下端部に形成された爪部250を利用して、モジュール下板9に固定されている。具体的には、外装体30の対向する2つの周壁部33の下端部には、周方向に間隔を開けて2つの爪部250が下方に向けて突設されている。一方、モジュール下板9の外縁部には、図8から図10に示すように、これら爪部250が嵌め込まれる凹部251が形成されている。そして、爪部250が凹部251内に嵌め込まれた状態でモジュール下板9の下面側に折り曲げられることで、外装体30がモジュール下板9に固定されている。
【0116】
なお、爪部250と凹部251との間に図示しない接着剤を塗布し、上記折り曲げに加え、該接着剤を利用して爪部250と凹部251とを固定しても構わない。こうすることで、外装体30とモジュール下板9とをより強固に固定することが可能である。
更には、爪部250の先端を折り曲げずに、上記接着剤による接着力のみで爪部250と凹部251とを固定しても構わない。
【0117】
なお、モジュール下板9の上面には、図8及び図9に示すように、下板ばね8の枠体部80を介してレンズ枠6を安定させるための4つの第1台座部252が形成されている。これら第1台座部252は、開口90に沿って円弧状に形成され、且つ周方向に一定間隔を開けて配設されている。
また、モジュール下板9の上面には、一対の給電部材205A、205Bの導電板210を安定して積層させるための第2台座部253が複数形成されている。これら第2台座部253は、モジュール下板9に形成された貫通孔91を囲むように形成されている。また、モジュール下板9の下面には、図10に示すように、モジュール下板9の貫通孔91を囲むように凹部254が形成されている。これにより、加締めされたモジュール枠5の固定ピン52は、モジュール下板9から突出しないようになっている。
【0118】
このように構成された駆動モジュール200の場合であっても、一対の給電部材205A、205Bの積層位置がモジュール枠5の下面側になり、モジュール枠5の下端面に形成された固定ピン52(連結ピン)により固定される点が異なるだけで、上記実施形態と同様の作用効果を奏効することができる。
また、この場合には、一対の給電部材205A、205Bのワイヤ保持端子212の折曲長さが長くなるが、モジュール枠5のサイド固定ピン220を利用して端子板212aを強固に固定できるので、ワイヤ保持端子212を同様にガタツキなく安定化させることができる。従って、SMAワイヤ12を安定に保持することができる。
【0119】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0120】
O…軸線
1、200…駆動モジュール
3、202…外装カバー
5…モジュール枠(支持体)
6…レンズ枠(被駆動体)
7…上板ばね(一方の板ばね部材)
8…下板ばね(他方の板ばね部材)
9…モジュール下板(ベース基板)
12…SMAワイヤ(形状記憶合金ワイヤ)
13A、13B、205A、205B…給電部材
14、203…絶縁部材(絶縁シート)
32…外装カバーの頂壁部
51、52…固定ピン(連結ピン)
64…レンズ枠の引掛部(被駆動体の係止部)
94…保持溝(ベース基板の保持溝)
130A、130B、210…導電板
131、211…外部接続端子
132、212…ワイヤ保持端子
132a、212b…ワイヤ保持部
144、232…折曲シート部
300…カメラ付き携帯電話(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体と、
該被駆動体を内側に収容する支持体と、
一定方向に前記被駆動体を挟むように配設され、該被駆動体を前記支持体に対して一定方向に沿って移動可能に弾性保持する一対の板ばね部材と、
前記被駆動体の係止部に係止され、通電時の発熱により収縮することで該被駆動体を前記一対の板ばね部材の復元力に抗して一方の板ばね部材側に駆動させる形状記憶合金ワイヤと、
前記一対の板ばね部材のうち他方の板ばね部材を前記支持体との間に挟みながら該支持体を支持するベース基板と、
該ベース基板に被着され、前記支持体、前記被駆動体、前記一対の板ばね部材及び前記形状記憶合金ワイヤを覆う外装カバーと、を備え、
前記一方の板ばね部材と前記外装カバーとの間、又は前記他方の板ばね部材と前記ベース基板との間には、前記形状記憶合金ワイヤに電力を供給すると共に該ワイヤの端部をそれぞれ保持する一対の給電部材が設けられ、
前記一対の給電部材は、
前記一方の板ばね部材を間に挟んだ状態で前記支持体の上面に積層、又は前記他方の板ばね部材を間に挟んだ状態で前記支持体の下面に積層され、連結ピンを介して支持体に一体的に固定される導電板と、
前記導電板に一体的に連設されると共に前記ベース基板に向けて折曲された外部接続端子と、
前記導電板に一体的に連設されると共に前記外装カバーの頂壁部に向けて折曲され、前記形状記憶合金ワイヤの端部を保持するワイヤ保持端子と、をそれぞれ備えていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動モジュールにおいて、
前記導電板は、前記支持体の上面に積層された状態で固定され、
前記外部接続端子は、前記支持体の側壁部に接すると共に、その先端部が前記ベース基板の外縁部に形成された保持溝に保持され、
前記ワイヤ保持端子は、前記支持体の上面よりも上方に突出し、加締められることで前記形状記憶合金ワイヤの端部を保持するワイヤ保持部を備えていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動モジュールにおいて、
前記導電板は、前記ワイヤ保持端子との連設部分近傍において前記連結ピンを介して前記支持体に固定されていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の駆動モジュールにおいて、
前記導電板と前記一方の板ばね部材との間には、絶縁シートが積層されていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記絶縁シートの一部は、前記外装カバーの被着に伴って折曲可能とされ、前記外部接続端子と外装カバーとの間に介在される折曲シート部とされていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項6】
請求項1に記載の駆動モジュールにおいて、
前記導電板は、前記支持体の下面に積層された状態で固定され、
前記外部接続端子は、その先端部が前記ベース基板の外縁部に形成された保持溝に保持され、
前記ワイヤ保持端子は、前記支持体の側壁部に固定される端子板と、該端子板に連設されると共に支持体の上面よりも上方に突出し、加締められることで前記形状記憶合金ワイヤの端部を保持するワイヤ保持部と、を備えていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動モジュールにおいて、
前記導電板と前記他方の板ばね部材との間には、絶縁シートが積層されていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動モジュールにおいて、
前記絶縁シートの一部は、前記外装カバーの被着に伴って折曲可能とされ、前記外部接続端子と外装カバーとの間に介在される折曲シート部とされていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の駆動モジュールを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−133227(P2012−133227A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286680(P2010−286680)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】